Q熱とは
・・・名前は原因不明の病気Query(謎の)Fever(熱)に由来します。
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Q熱はCoxiella burnetii というリケッチャによる人獣共通感染症です。
リケッチャは、細菌に近い病原体ですが、細菌とは異なりたとえ環境中に充分な栄養があっても独自では生きてくけなく、生きた動物細胞の中でないと生息できないというウイルスの性格も持っています。
同じようにリケッチャが病原体となる病気には、ツツガムシ病や発疹チフス、それに(日本)紅斑熱などがあります。これらの病気は節足動物(ダニやノミなど)により媒介されますが、Q熱の病原体は、様々な環境に対して抵抗力がとても強いため、Q熱に感染したウシ、ヒツジなどの分泌物の中でも生きていて、これらの動物の分泌物で汚染されたほこりなどを吸い込んだヒトに直接感染し、発症させる可能性のある感染力の高い病原体です。ごく稀に、未殺菌の乳製品を飲食することによっても感染します。
Q熱の病原体であるCoxiella burnetiiは我が国にも常在し、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの動物体内に存在し、これらの動物では流産などを起こすこともありますが、多くは無症状と考えられます。
また、感染した人の約半数の人しか症状は出ませんが、
- ● 急性の場合、2~4週の潜伏期の後、40℃前後の高熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、咽頭痛、発汗、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛、など多様な症状が急激に出現し、初発症状出現2週目には乾いた咳、胸痛(胸部レントゲン写真上では肺炎の像)が出現し、高熱は多くの場合1~3週間持続します。治療をしなくても数ヶ月の内に、患者の大多数は健康を回復します。また、全快した人は、終生にわたる免疫を獲得します。
- ● 慢性(6ヶ月以上の感染)の場合、急性のQ熱となった患者が、最初の感染から1年後に慢性のQ熱を発症することもあれば、20年経ってから発症する場合もあります。重症の合併症は、心内膜炎で、心臓の弁が侵されることがあり、致死率が高いので注意が必要です。また、慢性肝炎、骨髄炎なども起こします。
原因不明の高熱、非流行期のインフルエンザ様症状、異型肺炎、ウイルス検査陰性の肝炎、細菌検査陰性の心内膜炎などは、Q熱の可能性も疑われます。
特に動物との接触がある場合には、必ずその旨を伝えた上で医療機関で診察を受けてください。万一感染が確認された場合でも、有効な抗生物質がありますから、適切な治療を受ければ心配は要りません。
外国では予防のために、ヒト用・動物用のワクチンが開発されていますが、日本には存在しませんし、今のところ予防接種を必要とする人はないものと考えられます。