委員会情報
委員会審査状況
アジア・アジアパラ競技大会推進特別委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年7月18日(火) 午後0時58分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
松川浩明、谷口知美 正副委員長
鈴木喜博、伊藤辰夫、近藤裕人、藤原ひろき、杉浦哲也、中村貴文、
横田たかし、日比たけまさ、細井真司、岡 明彦、園山康男、下奥奈歩
各委員
髙橋 義雄 参考人(筑波大学人間総合科学学術院 准教授)
スポーツ局長、スポーツ局顧問、アジア・アジアパラ競技大会推進監、
関係各課長等
<議 題>
国際スポーツ大会における現状と課題
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
私、筑波大学で社会人向けのスポーツマネジメントの授業を夜間で行っておりまして、そういう意味でいうと、社会人の方々にスポーツビジネス、スポーツマネジメントはどういうことなのかという話を授業で行っております。
それをベースに、今日は国際スポーツイベントが現状、どうなっているのかという話と、その課題、さらには、アジア・アジアパラ大会に向けての私が伺っている話での現状と、それに向けての課題、もしくは可能性についてお話ができればいいかなと思っております。
本日の内容は大体1時間ということを伺っていますけれども、3点、考えております。
アジア・アジアパラ大会ではありますけれども、同様に、総合的なスポーツ競技大会というのはオリンピックというものがありまして、そのオリンピックシステムを、まず、どのようなものかということを知らないと、アジア大会のこともなかなか分からないということで、オリンピックの仕組みについて、最初お話ししたいと思います。
2番目に、大会をどのように運営するのかということで、大会運営の課題についてお話ししたいと思います。
3点目は、その課題を乗り越えた先にあるであろう可能性について、私なりの意見を述べさせていただきまして、皆様からの質問を受けたいと思っております。
まず、オリンピックシステム。
国際的な総合的なスポーツ競技大会は、オリンピック、アジア大会になります。つまり、ほかの競技団体が単体で行う競技、例えば、サッカーであればサッカーワールドカップ、ラグビーであればラグビーワールドカップとか、現在、福岡で水泳であれば世界水泳とか、世界陸上とか、世界卓球というように、単体で行われる国際スポーツ大会はありますが、総合的に1か所に集まり、大体2週間程度の間に行われる仕組みはオリンピックがつくりました。
オリンピックは129年前、IOC(国際オリンピック委員会)が創設されて、スタートしています。IOCやアジア・オリンピック大会をつかさどるOCA(アジアオリンピック評議会)というのはどういう法人かといいますと、個人的なメンバーシップを持つメンバーによって運営されている、スイスの国内法人ということになります。
彼らは非常に大きな財源を持っており、かつ、感情的なつながり、スポーツを通じてという、表面的にはスポーツを通じてつながっていますけれども、多くの委員は皇族、貴族、もしくは軍人、いわゆる将軍と言われる軍人のトップクラス、もしくは政治家、さらには、商工業で活躍している、いわゆる財閥と言われるような方が委員となっています。そればかりであると問題だということで、一部はオリンピックのメダリストのようなスポーツ選手などが委員を構成しています。
一方で、非常に壊れやすい仕組みでもありまして、例えば、ボイコットの問題だとか、政治的な問題に触れると、非常に今まで強固に結びついていた人たちが分裂して参加しないというような、政治的な判断で大会が中止になるということが起きる組織でもあります。
これから述べていきますけれども、単に国際的なスポーツ大会とはいっても、公的、私的なステークホルダー、利害関係者が今は集まっていまして、彼らの力が非常に強くなってきているというのが現実です。
それから、大会運営ですけれども、大会運営は大会組織委員会というものが運営をするんですけれども、こちらの組織は非常に臨時的な組織でありますので、臨時的な組織をどう構成するかということは毎回問題になります。
実質的に、大会は複数の種目が同時多発的に同じ都市もしくは近隣の都市で開催されますので、その開催を運営するのは、誰かといいますと、表上はIFと言われる国際スポーツ競技連盟が運営を仕切って、その下で、その国、日本でやる場合は、日本の日本何々協会といった組織が実質運営を担当します。
ということなので、競技団体ごとに世界選手権を運営したことがあるようなスポーツ競技団体は手際よく運営しますけれども、世界大会を運営したことのないようなマイナーな競技団体などは国内団体ではその任が賄えないということで、国際団体が直接的に運営する場合があります。2020年のオリンピックの場合、例えばボクシングなんかは、IFが直接運営していたと思います。
というような形で、それぞれの競技ごとに運営の仕方も多少異なっていまして、この辺りをコントロールするのが大会組織委員会のゲームズ・デパートメントという、ゲームを運営する側の非常に大事な点になります。
オリンピックのメインのステークホルダーは先ほどから出ています、開催都市がつくります大会組織委員会です。こちらは都市と、オリンピックの場合は、日本の場合は日本オリンピック委員会と、あとはIOCで3者の連携をしながらつくるものですけれども、その開催都市の人々が担う大会組織委員会がメインになります。これをオリンピックだとすると、IOCがいて、各国のオリンピック委員会がいて、国際的なスポーツ競技団体がいて、日本の国の競技団体がいて、選手がいると、この五つがメインの利害関係者ということになります。
そのため、本来は、この五つがうまく機能すれば、大会というのは成立するわけですけれども、これから述べるように、いろんな人たちがこの大会の意義、価値を感じて近づいてくるのが現在の形になります。
先ほど言った五つの輪で五つのステークホルダーなので各色に分けて配置すると、真ん中に大会組織委員会がいて、国際的にIOCが上からいて、右上が国際的なところですけれども、IOC、それから国際的な競技連盟、国際サッカー連盟とか、世界野球ソフトボール連盟とか、IFがいて、左側に日本オリンピック委員会とか、中国オリンピック委員会とか、NOC(国内オリンピック委員会)がいて、下に日本サッカー協会、日本卓球協会とか、日本何々協会がいて、選手がいると。この五つが古典的なステークホルダーと言われる、昔はこういう形でオリンピックが運営されていました。
アジア大会も基本的に古典的な仕組みでやろうとすれば、このような形のステークホルダーで十分ですけれども、オリンピックの場合、1970年代以降に様々な力を及ぼすようになったのが開催国の政府になります。
開催国の政府が、ちょうど東西冷戦ということもありましたけれども、国の意向をオリンピック大会に反映させるということを意識して、NOC、日本政府が日本オリンピック委員会をコントロールし始めるという流れが出てくるわけです。
政府もIOCに対して強気に出られるかというと、IOCはIOCで、立候補国が、立候補都市が幾つか複数にある場合は選べる立場にあるので、非常に政府に対しても強い。上から来るわけです。そのため、政府はIOCに対しては弱腰であるというのが一般的です。
ただ、これもつい最近は立候補都市がオリンピック、アジア大会も含めて少なくなってきていますので、なかなか開催の権利を持っているIOCやOCAもそこまでは強くないというのが現状かと思います。
オリンピックのメダルや組織に対しては非常に関心が高いのが政府だということで、そういう意味でいうと政府はかなりオリンピック大会やアジア大会を支援する立場にあるはずで、愛知・名古屋の大会でいえば、日本政府がどれだけその大会に意義を持って支援するかというのは、ここは駆け引きになるかなと思います。
それから、スポーツの問題に関心があるのは政府です。つまりスポーツ自身のガバナンスというようなこともありますし、一方で、今、スポーツは高齢化を迎える日本において、例えば、高齢者の体を動かす運動というものがスポーツというようなゲーム性を持つことで、無理やりやって義務的にやる運動よりは、楽しくやっているうちに健康が維持できる取組に変わらないかということで、高齢者のスポーツ推進という形でトップレベルのスポーツと草の根のスポーツをいかに結びつけて、高齢者の健康維持・増進につなげるかというところに非常に関心があります。
IOCは政府と協力して当たる方向にありますので、IOCのバッハ会長の行動を見ればよく分かるように、来日すればすぐ首相官邸に行ったりするような形で、いかに政府をうまく使って、オリンピック大会を成功に導くかというようなところに関心があるというのが一つあります。
国内の政府ですので、IOC等組織委員会とNOCに影響を与えるということで、左上にグレーな形でマークを置いてみました。
続いて、1980年代以降の大きな流れは、国内もしくは国際的な協賛企業がスポンサーやメディアとして、オリンピックやアジア大会に協力を及ぼすようになってきたということです。
1974年にIOCがオリンピック憲章を改正しまして、アマチュアリズム、アマチュアという言葉を外しました。それ以降のオリンピックでは、プロ選手が参加可能になりました。
当時は東西冷戦でしたので、東側諸国が公務員という形で選手を雇って、ステートアマということを言われますけれども、強化をしてきて、西側諸国が勝てなくなってきたというところもあります。
一方で、西側諸国は、トップ選手は大体プロ選手になってプロ化するので、プロが出場できないオリンピック大会では、東側諸国に勝てないということになったわけです。
そういう意味で、プロ化が促進されて、プロが解禁されると同時に、プロの周りには企業が結びついていますので、そうした協賛企業が一気にIOCやアジア大会にも入ってきたという流れがあります。
企業は各国の代表チームを応援するようになり、それこそプロスポーツクラブ以外のスポーツクラブに対しても応援します。日本何々協会という協会も支援したり、大きな国際的な企業であれば、IFのスポンサーになります。国際サッカー連盟(FIFA)のスポンサーになるということにもなってきます。大会自体には財政的な支援をするのがこうした企業のスポンサーになってきますので、彼らの存在抜きには大会が開けなくなる規模に拡大してきました。
それから、メディアについて言いますと、メディアも当時は、ヨーロッパの多くは国営放送です。国営放送で、かつ放送局が少ない中で行っていたんですけれども、日本は国営のNHKと民放があります。アメリカの場合は、ケーブルテレビという形で、民放の放送局をケーブルテレビが一括、中間に入って、視聴料を取ってケーブルで見せるという仕組みで、実は各国、テレビの仕組みも違っていましたので、それぞればらばらであったんですけれども、視聴者が増えれば増えるほど、見たいという人がいればいるほど、要は、番組を見る視聴率が上がってきますので、その視聴率が上がればスポンサーがつくという形でテレビ局に収入が入る時代が、70年代以降、日本でいうと70年代から80年代以降、なってきました。
そうなってくると、スポーツ側もそれだけの視聴率が稼げるのであれば、テレビを放映する権利を一括してテレビ局に売ろうということで、1984年のロサンゼルスオリンピックでは、アメリカのABCが買い切ったわけですけれども、1社のテレビ局に多額のお金を提示して、放映権を一括して放映させるという仕組みが出来上がったのが80年代以降です。
この結果、テレビ局は独占的に放送が可能になりましたので、他社に流れていたスポンサーを独占的に牛耳られるということで、多少金額が高くても放映権を競って買うような時代がやってきまして、その結果、テレビ放映権の金額が右肩上がりで上がっていくということになりました。
一方で、オリンピックと同じように放映権が上がり続けたのはサッカーのワールドカップですけれども、サッカーのワールドカップについていいますと、2002年の日韓のワールドカップの時点の放映権に関しては、それを買った代理店が集め切れないということで倒産する事態が起きています。要は、上がり過ぎたとことも一つあって、その額で売り切れないという事態も発生していまして、現状、スポーツ側とテレビ局側の駆け引きが続いているという状況になっています。
ただ、日本のテレビ局の仕組みでいうと、多くの民放のテレビ局は視聴者からは一銭のお金も取らずに、CMという形でスポンサー企業からお金を取って行っていますので、スポンサーのCMの時間というのは限られていますから、そのCMの時間をいかに高く買ってくれる企業がいるのかいないのかで、その番組に支払える制作コストが決まってくるという仕組みになります。
制作コスト以上の額を放映権料として払わなければいけなくなると、短いCM枠の中では回収ができないということで、昨今のスポーツイベントに関しては、民放のテレビ局が二の足を踏むという状況になっています。これから開かれる女子のサッカーワールドカップ、ニュージーランド・オーストラリア大会ですけれども、民放レベルでは買えない額になりまして、NHKがぎりぎり買っているという状況になっていまして、アジア大会もどれぐらいの額に上がるかというのは、アジア大会の試合を見る各国の人たちがどれだけ見たいかということになりますので、それが上がってくれば、それなりの額で、いわゆる放映権の提示がなされ、その額で交渉がされていくということが起きてきています。
ただ、日本のようなテレビCMで視聴者からお金をもらわないという仕組みは、逆に、非常に日本独特なものでして、海外はかなりペイテレビといいまして、お金を払って見るものですから、アジア大会、もしくはサッカーワールドカップとか、オリンピックに対して、その番組に対して幾らというふうにお金を払うと、別にCMを集める必要はなくて、見たい人が多ければ多いほど物すごい大きな収入になりますので、テレビ局も大きな額が払えるという仕組みで、放映権獲得のベットしてくるわけです。
だから、日本は、昨今でいうとサッカーワールドカップでAbemaTVが巨額な価格で、ベットして買いましたけれども、なかなかDAZNとか、ABEMA以外に、いわゆるインターネット系の会社でお金をかけてコンテンツを買うという会社がまだ出そろっていないという状況もあってちょうど端境期ぐらいで、恐らく、これは私の意見ですけれども、アジア大会の2026年ぐらいが本当に切り替わる時期の可能性があるかなと感じています。
つまり、民放のテレビ局から多くの人たちがタブレットやインターネットで見る時代、もしくは、テレビであってもチャンネルでインターネット、今、テレビチャンネルのボタンは、地上波、インターネットの全部がボタンにありますので、ユーチューブとか、アマゾンとか、家庭のテレビで見る時代になるのかなという感じがしています。
そのため、お金を払ってアマゾンプライムに入らなければ見れないというのはおかしいという意見もあるとは思いますが、そういった時代の大きな転換点にアジア大会が位置してくるのではないかと思っています。
ちなみに、テレビの広告料は電通が発表されていますけれども、2019年にテレビとインターネットに対する広告の出稿料は逆転していまして、インターネットが、テレビより上になっています。多くの企業は、テレビにCMを流すよりはインターネットにCMを流すという時代に入っています。
それから、放映権の次がマーケティングに関しても、ロサンゼルスオリンピック以降はトップマーケティングということでTOPプログラムというのをやっていまして、1業種1社、その業界の企業は1社に絞るという形で、協賛金を軒並み上げるという形を行っています。
これも実は、ある意味、出来上がったシステムとして見られていますけれども、今回のアジア大会はこの仕組みをどう変えるかという時代ではないかと感じがしています。実は、東京大会はそれにチャレンジをして、銀行、ファイナンスというところで複数の銀行が入ったり、メディアというところで複数のメディアが入ったりという形で、複数の企業が一つのカテゴリーにお金を、スポンサー料を払うという仕組みを日本では実施しています。
これは、日本的な特徴かもしれませんけれども、1社独占よりは複数社でお祭り的に全ての競合する会社がみんなで支え合いましょうという発想で、東京オリンピック大会はスポンサーを集めたということですけれども、このパターンが日本であればできるのかなという感じもしています。ただ、世界は本当に1業種1社という形で、物すごい額で1社に押しつけるという形になっています。
企業のほうはリターンに対する意識が非常に強いので、スポンサーのフィーを払ったら、その額の大体1.5倍から2倍ぐらいのお金をかけてアクティベーションというのをやります。
つまり、買っただけでは、権利を買っただけですから、街中にバナーを貼るとか、まちで仮店舗を仕切って、全部ある電器会社のブースにするみたいなお金は別料金になるわけです。その別料金も用意して入ってきますので、実際は恐らく、例えばアジア大会でそういう状況になると、栄の大通りはスポンサー企業の看板がたくさん並ぶような、1階は全部スポンサー企業がガラス張りのところを借り取るみたいな、景気がいいときですよ、景気がいいときはそのような状況になる流れになります。
つまり、アクティベーションしない限りは価値がないのです。高級車を買っても乗らなければ価値がないのと一緒で、買ったらアクティベーションをするというのが大事になります。
実は、先ほど申しませんでしたが、政府もアクティベーションというのをやっていまして、コロナ禍で2020年は開催できなかったので、我々、あまり認識はないのですけれども、リオ大会、それから、その前の大会、12年、ロンドンもそうなのですけれども、私、視察していますが、各国政府はいわゆるパビリオン的なハウスというのを建てます。サウジアラビアなんかは、アジア大会でもサウジアラビアハウスという形で公園を借り切って、サウジアラビア一色の建物を建てて、みんなをただで呼んでサウジアラビアの食事を出すというような、ハウスという形でパビリオンを展開します。
もしコロナがなければ東京大会も、私、スイスのサポートをしていて、原宿と渋谷の間のファイヤーストリートにスイスハウスを造って、スイス料理を振る舞う空間まで用意していたんですけど、コロナで一切駄目になってしまったという経験がありますが、各国、今、東南アジアも含めてアジアの国が中産階級も含めて非常にお金持ちになってきているので、その国のPRをするハウスが、セールスさえすれば来るだろうなという予測はしています。
そのため、企業もアクティベーションする、政府もアクティベーションするというのが今の国際的なスポーツ大会の現状です。それを先ほどのスポンサーを足すと、国際的なスポンサーは右上に、国内的なスポンサーは左下にという形で配置すると、こうやって灰色の組織が五つの輪を取り巻いてきたなということが分かると思います。
さらに、右下が欠けているところですけれども、国際連盟と国内連盟、それから選手と、実は、ここで駆け引きをしているのがプロフェッショナルリーグになります。1990年以降、プロフェッショナルリーグが国際戦略を練ったり、国際的な選手を集めて、これ、東西冷戦が終わったからということになるんですけれども、89年以降、特にアメリカが世界中の選手たちを借り集めるかのごとく、プロリーグをつくって集めています。
彼らはプロリーグを中断してまでオリンピックやアジア大会に選手を出場することはナンセンスだと思っています。つまり、リーグのほうが、プライオリティーが高いのです。プロ選手をオリンピックに出場させる、アジア大会に出場させるときに、恐らく一つネックになるのはこういったプロリーグに参加している選手です。
野球の日本代表に大谷が来るかといったときに、恐らくメジャーリーグ側は駄目ですよということになるわけです。お金を払っているのはメジャーリーグのチームなので、そういうチームからすると、アジア大会、オリンピックに出て、怪我されたら困るわけです。そのため、プロリーグ側は選手を供出しないということが90年以降、起きてきていまして、特にバスケットボール、それからアイスホッケー、テニス、ゴルフあたりは大きいです。
NPBも書きましたけど、日本のプロ野球ですら、例えばワールドベースボールクラシックにうちの選手は出さないという球団があったりするわけです。何で3月のキャンプの間に、リーグ戦の前に、あんな過激なつらいことをさせるんだと、うちのチームから出さないということになってきています。
かなりプロリーグが今後、非常に大きな交渉相手になってくるのは確かと思います。アジア大会もプロの選手たちが、例えばサッカーなんかは徐々に、日本のJリーグに東南アジアの選手がいたりしますので、Jリーグが協力してくれないと、各国、東南アジアの国側からクレームが来る可能性があります。
うちのトップ選手を何でJリーグ側が出さないのだと、アジア大会のときだけ試合をやめて、出してくれといったことになると、Jリーグと交渉して、アジア大会期間中のリーグ戦を中止してくださいとか、野球もそういうような交渉が必要になります。ゴルフもトーナメントがあると、アジア大会のゴルフをやっていられないということになってきますので。
ここも一つ大きなステークホルダーとして右下に書きましたけど、こういった形で古典的な国際的な総合スポーツ競技大会は、政府やスポンサー、メディア、プロリーグによって、彼らによって、実は今、コントロールされているのが現状だと分かっていると、非常に理解がしやすいと思います。逆に言うと、彼らをどう使うかということが大会の成功に結びつくということになるわけです。
スポーツ界の組織として、この9個の輪を作りましたけど、その上に国際スポーツ仲裁裁判所と世界アンチ・ドーピング機構という二つが近年できまして、彼らが実はその上に乗っかっているというのが現状です。
このアンチ・ドーピング機構(WADA)というのはドーピング関連です。今、選手たちが一番警戒しているのは、ドーピング検査によってドーピングと認定されて、選手資格剝奪、メダル剝奪ということが起きることです。そのため、一般的な薬や食事を含めて、非常にコントロールがされています。
後ほど述べますが、今回のアジア大会で選手村がないとすると、選手村の食事は絶対ドーピングがないぐらいコントロールされていますのであり得ないのですけれども、選手たちがホテルでそういうしっかりとした食事が出るのか確認をしなければいけないし、もし選手たちが町なかで、栄で食事をしたときに、大丈夫かみたいなこともチェックすることが起きるのではないかという心配を少し感じています。
それから、CASというのはスポーツ仲裁裁判所で、こちらも選手と競技団体、例えば、代表の選考の仕方がおかしいということを訴えたりすることができます。そうなると、代表選考がもめるということで、なかなか代表が決まらなかったり、世界的なランキングでもめごとが起きると、アジア大会で出場する選手は誰までにしていいのかということがぎりぎりまで決まらないということがあったりします。
そのため、WADAやCASの動きもしっかりとケアしながら、総合的なスポーツ大会というのはコントロールされているというふうにすると、かなり大会組織委員会は様々なステークホルダーをにらみつつ、意見や情報交換しながらマネジメントする、大変な業務だということがよく分かると思います。
そのほかにもいろいろ、実はあります。ANOCというのはNOCが集まった組織、GAISFは今、解散に向かっていますけれども、国際的なスポーツ競技団体が集まった組織、それから、夏のオリンピック大会で選ばれる競技だけが集まった組織、冬の大会だけ集まった組織、スポーツのオリンピック種目でない組織が集まった組織、ARISFのようないろいろな、実は団体がありまして、それらの団体もオリンピックやアジア大会に対して猛烈にアピールしてくるということがあります。最近は、ユネスコとか国連がオリンピックやアジア大会に対しても協力的に、いろいろな連携をしようという動きがあります。
クラブ選手愛好者、イベント主催者とか、様々なところがオリンピックの利害関係、それからガバナンスに対して影響力を及ぼし始めているなということが考えられまして、この辺りが前回の東京オリンピック・パラリンピックに対して、いろいろな問題が起きたときの原因になっているだろうなというのは、こうした様々なステークホルダーがいる中で、調整をする人たちが急いで調整を省いてやると、問題を起こすということが、2020年の東京オリ・パラの状況だったと思います。
彼らは彼らの論理でそのほうが早いと思ったからやったのですけれども、そうではいけなかった。特に特別措置法があったので、みなし公務員としての立場があったというところが問われているわけですけれども、現在、非常に多くの利害関係者を調整する時間がかかるというようなのが、国際的なスポーツ大会の現状になっています。
こうしてみると、課題としては様々なステークホルダーの協働関係で、オリンピック、アジア大会等の国際スポーツ大会は出来上がっているということです。それから、イベントをマネジメントする大会組織委員会は一時的な組織ですので、このような多くのステークホルダーを調整しながら、スポーツ大会をするという経験は大体初めてになります。
そのため、分かりませんけれども、アジア・アジアパラ大会組織委員会で東京オリ・パラの経験者が何人いますとか、これは、ナレッジトランスファーというのですが、知識が伝達されていないと、一から始めなければいけないので、かなり大変な作業になると思います。
逆に言うと、そういうことに慣れている広告代理店がいて、私は何回もやっていますからということで広告代理店が入ってきて、その人たちに頼み過ぎると、そっちはそっちで問題が起きるというのが前回の課題になったと思います。
いろいろなステークホルダーが入るので、ネットワーク・ガバナンスというのですけれども、維持するためにはお互いがコミュニケーションしながら、ネットワークがバランスよくなるようなガバナンスが必要で、非常にこれはマネジメントの中でも難しさという点、それから専門性という点では一級ということで、かなり難易度の高い組織になっているということになります。単独では、当然大会は開けませんので、単独ではなくて、お互いがエコシステムをつくって、ウィン・ウィンな形で大会が運営されるように調整していくということが重要です。
それから、近年はパラリンピックが短期間の間に連続して行われるので、この調整も実は必要で、通常の大会とパラリンピックの大会の例えばスポンサーが違うと、それぞれ全部入れ替えたりとか、バナーを全部替えたりとか、かなりの作業が非常に重要になりますし、パラリンピックはパラリンピックで障害者のバリアフリーという点が必要になってくるので、当然、お客さんへのバリアフリーはありますけれども、選手が時間内に来られないような会場でも駄目ですし、まち全体がバリアフリー化していくという流れと同時並行的にしないと、一般的なスポーツ大会とパラリンピックを同時にやるというのは、チャンスでもあるのかなとは思いますけれども、かなりこちらも難易度を上げているのかなと思います。
それから、ステークホルダーの役割とパワーが強くなっているという話を先ほどからしていますけれども、政府は政治によってどう統制するかということが大事になります。政府、自治体という意味では、先生方がどうコントロールしていくかということが大事でありまして、では、東京組織委員会、思い出すと、森元総理がいて橋本大臣がいてという話だけですと、やはり何で政治家なんかがやるのだと一般の方々は言うかもしれませんけれども、こういった状況を鑑みますと、どうしても政治による統制というのが重要になってくるということがお分かりになると思います。
それから、プロスポーツ界に対しても統制しなければいけないので、こちらはスポーツ界で統制しなければなりません。スポーツ界自身が協力をしっかりと求めて、うちは協力しないという団体が出ないような流れをつくっていかないといけないということです。
それから、協賛企業に対しては、スポーツマーケティングという形でどうビジネスが成立して、ウィン・ウィンな形でおたくもウィンですよねという調整ができるかどうかなんですが、これまでは大手広告代理店と言われる方々が全部、一手に調整されていましたので、今回のアジア・アジアパラ大会に関しては、今回の事件、問題が発生して広告代理店が指名対象外になっているので、全く新しい仕組みの統制にならざるを得ない。この辺りも、実は重要なポイントだと思います。
今までであれば、具体的に名前を出してしまうと、例えば電通に任せておけば、全部大丈夫だというふうになっていたわけですけど、そうではない大会になるというのは、非常に大きなポイントだと思います。
それから、周辺組織のCSR、社会課題解決に関する重要性の増加と書きましたけれども、スポーツの大会だけでは、様々なスポーツスポンサー、企業スポンサー、それから政府、自治体がついてこない時代になっています。メダルが取れればいいという文句では誰もがついてこなくて、このアジア大会、オリンピックをやることで、どんな社会課題が解決されるんだということを連動させることで、多くの利害関係者が納得されるという時代になってきているのが現状です。
そのため、恐らくスポーツ局がありますけれども、スポーツ局を超えた他部署の連携によって、愛知・名古屋を通じた社会課題の解決をテーマにした様々な発信や取組というのを連動させないといけないというのが現状になっています。オリンピックの場合もレアメタル、貴金属ですか、携帯から取り出してメダルを作るという取組をやっていましたし、環境問題とか必ず問われる問題になるだろうと思います。
オリンピックの話ばかりだったので、アジア・アジアパラ競技大会はというと、IOCはスイスのローザンヌにあって、スイス法人ですけれども、アジア・オリンピック評議会(OCA)は比較的新しくて、できたのは1982年、45年のNOCがあって、事務局はクウェートです。中東の国にあるということです。アジアパラリンピック委員会もUAE(アラブ首長国連邦)にありまして、これを見ると、アジア大会・アジアパラ競技大会は、中心部は中東にあるということを感じられると思います。歴史を遡ったら、中東が中心だということです。
そうなってくると、中東の方々の認識だとか、物事の意思決定だとか、金融の仕組みとか、かなり彼らのスタンダードと、ある種、西欧諸国側に属する日本の仕組みとは多少なりとも差があったりします。この辺りの調整も求められてくるので、総理が今、中東を歴訪されていますけれども、非常に重要な、ああいうのはポイントになると思っていて、分かりませんけど、誰か、本来だったら、総理の中東歴訪とかにうまく合わせてアジアの話をしてくると、面白いような感じがします。
先ほどの図でいうと変わるのは、要は、愛知アジアの組織委員会が真ん中に来て、上のIOCがOCA(アジア・オリンピック評議会)に変わり、IFがAF(アジア連盟)というのがありますが、アジア連盟に変わって、図は変わりません。
だから、そういう意味でいうと、今までお話したガバナンスの仕組みは変わりませんので、そういう複数のステークホルダーに対して、お互いがウィン・ウィンになるようなコントロールをしながら、それぞれがどういうコントロールか、政府なら政治がやる、スポンサーなら元は広告代理店でやっていた仕組みがあるとか、スポーツ界にプロリーグをどう調整させるかみたいなことを同じようにやる必要があるのは一緒になります。
国際スポーツ大会の運営ですけれども、もう既にこれは愛知・名古屋の組織委員会が動いていまして、例えば大会デザイン、基本構想、コンセプトというのは大体決まっていて、計画策定をして、どの競技が行われるか、どこの場所で行われるか大体決まった段階で、今マーケティング、資金調達の公募をかけているという状況と伺っています。
ここで大体の資金調達のめどが立てば、それぞれの競技・イベント準備に入っていって、こちらにはNFやアジア連盟の人たちが、通常のアジアの競技大会や世界大会よりは規模が、出場者数自体は少なくなりますので、小ぢんまりとしたアジア大会、アジア選手権を同時多発的に同じ期間にやるというイメージで準備していけば、そこは可能になると思います。
問題になるのは、恐らく交通とか、選手の移動管理。入国から出国までの移動管理あたりは非常に重要になります。アジア大会あたりになると、非常に選手たちもきちんと入国・出国管理をしておかないと、選手が途中でいなくなってしまうなどがあり得ます。例えば、非常に友好国でない国の選手団が入ってきたときに、どう警備して、どう管理するかということも課題でしょう。
特に、杭州アジア大会はOCA(アジア・オリンピック評議会)側がロシアの参加を認めたりしているので、ロシアがヨーロッパだったはずなのに、アジア大会で、国名は出さないけれども、選手の身分で出ていいよというようなことを言っているので、そういうことがまた継続的に続くと、非常に政府の方針とずれが出る話になると問題になったりするので、この辺りの入国から出国までの移動の管理は重要になると思います。
そういう意味ではコンパクトなほうが簡単ですけど、今回、東京で水泳競技や馬術競技が行われるとなると、どうしても移動距離が大きくなりますので、その辺りの移動や選手村を造らないホテルの管理とか、選手たちの交通の問題、各ホテルからどういう時間内でどうバスを出すなど、多分、ち密な準備が必要になると思います。選手バスが渋滞にはまって来られませんとなるとまずいので、その時間帯に交通規制を張っておかないといけない。東京オリンピックではオリンピックレーンがあって、そこは普通の乗用車は走れない道ができていましたので、そういうバスのレーンを造る必要があると思います。
あとは、バスが何台か分かると、バスをかき集めるということが必要になってくると思います。東京オリンピックのときも関東から、別に関西までのバスの会社がバスを供出してもらって、みんなバスを集めることをやっていましたので、名鉄のバスだけでは難しいということが起きる感じがします。
それから、当然のことながら、今言われたようなコンプライアンスの問題です。2020年東京オリンピック・パラリンピックで大きな問題になっている。
コンプライアンスの問題、それから、リスクマネジメント。様々なリスクが出てきますので、そのリスクに対応するマネジメントも必要になります。
こうした組織を運営する大会組織委員会は、先ほどから言っているように臨時の組織なので、どこかで働いている人たちを集める、もしくはプロパーのプロみたいな人を雇う、もしくは海外でやっている外国人を雇うことが必要になります。2019年のラグビーワールドカップのときは、オーストラリア人を雇っていました。オーストラリアでラグビーのワールドカップをやった人たちを雇って、東京の組織委員会でも雇っていたとかしていたわけですけど、こういうヒューマン・リソース・マネジメントが非常に重要になります。
大会組織委員会は臨時な組織なので、終わればほかの仕事をしに転職しなければいけないんです。実は、私も2002年のサッカーワールドカップの招致と組織委員会の仕事をしていたときに、組織委員会を2002年に解散したら、高橋君はどこに行くのということを事前にサポートしてくれます。当時は日本サッカー協会に行くか、電通が雇うか、どっちを選ぶみたいなことまでサポートしてくれて、要は、路頭に迷わせると非常に評判が悪くなるので、かなり私のような出向元のない人間はサポートしてくれます。多くの出向者に関しては、元の企業にも戻ってもらいます。
トヨタ自動車から大会組織委員会に専任で来た方はまたトヨタ自動車に戻るという形ですし、県庁や市役所から来られた方は県庁や市役所に戻られるという形になりますので、調達をどうするのか、その人たちをどう教育するのか、これも短期集中の業務なので、やはりアジア大会・アジアパラ大会を成功に導きたいという情熱を短期集中的に発揮できないと、かなり難しい職場になります。
労働基準法を絶対に遵守するみたいなことを言われると、朝から晩まで詰めて大会を回すときなんていうのは、本当に24時間詰めて働かなければいけない職場になってくるので、かなりきつい職場になるというのが現状です。ただし、終わると1か月間休みはもらえたりとか、海外なんかだと、次の職場の間に集中的に休みを取ったりしてリフレッシュして、また次の職場に行くという方々が、いるのですけれども、日本の場合は、戻ったら職場で次の職ですぐに働けと言われると、かなりきついだろうと思います。
それから、急速に増員する組織だということで、今は小さいですが、大会に近づけば近づくほど組織は大きくなってきます。特に大会のイベント運営の人たちがどんどん増えてくるので、そういう人たちの組織替えをしたり、複数にわたって組織を改編したりする中で急激に大きくなってきますので、指示命令系統をしっかりとしていかないとうまくいきません。そういう意味では、官僚的な指揮命令系統があると言われています。
特にマネジメント系の指揮命令と、問題なのは、専門技術系の職員がいるということです。スポーツ大会が、私にできますかと言われても、細かい、やったことのない大会はできません。その大会をやったことのある人、専門技術者がいないと回せないので、そういう人たちとマネジメントの人たちがよく話をしてやらないといけないです。
イベントでいうと、イベント制作会社は幾つかあると思うのですが、そういう方々は専門職なので、普通の人は勝手にできない。この会場には電圧がどれぐらい必要で、放送が何局か入るからどれぐらいのWi-Fiのスピードがないと駄目だとか、普通の人は分からないようなことをイベント制作会社が知っているので、そういう人たちが技術系で入ってきて、一緒になってつくり込んでいくということが大事になりますので、そういう意味でいうと、そういった組織のつくり込みと配置というのは大きな課題になります。専門技術者だけでは当然成らないということです。
まさしくスポーツはシンボリックなソフトを扱っていまして、イメージと意識をいかにコントロールして、アジア大会のコンセプトをみんなでつくり上げていこうというソフトを扱っていますので、物理的なものができるわけではないです。そのため、スタッフの組織文化は非常に大事です。みんなが仲よくコミュニケーションが取れて、危ないと思ったら、話が上に上がっていく、単なる寄り合い状態を超えた組織にしないと駄目なのです。
私が行ったサッカー協会の2002年の組織委員会のときは、僕はサッカー、専門ではなかったものですから、土日になるとみんなでフットサルの練習をしようよと言って集まって、飲んで、意見交換しました。だから、土日でも仕事みたいになるというような、みんなでわいわい飲んで、意見交換するみたいなことをやっていかないと、なかなか仲間意識が生まれてこないのです。そういうようなことをやっていくと、恐らく、2026年までに一緒に過ごした戦友みたいな仲間になります。
2002年の仲間たち、今でも僕ら、集まりますし、年に一遍、決勝戦の日に集まって、飲み会、今までもやっています。みんな、ばらばらな仕事をやっていますけど、あのときはどうだったよねと20年前の話をして盛り上がるという仲間になります。恐らく、そういうふうになるだろうなというふうに思います。
2020年東京の教訓も当然生かさなければいけないので、ここで私がいろいろと調べて、私も電通の方々と仕事をしているので話を、あと、組織委員会の方々も知っていますし、副会長の河野一郎先生は私と一緒に職場をつくられて一緒でしたし、いろいろな話をしますと、大会組織委員会のヒューマン・リソース・マネジメントで一つ問題だったのは、急激に集まる組織を仲間意識で集めてしまったことが一つあるというふうには言われています。
つまり、仲間意識で集めると、上司、部下みたいな関係で集まると、誰も注意できない人間関係ができるわけです。あの人のやることには注意できないみたいなことが起きると、要は企業内で、同じ企業の人が大量に同じ部署にいると、上司、部下、入社年次で大体言えなくなります。
あとは学閥というのがあります。特に競技団体だと、サッカーだと早稲田か筑波か慶應かみたいなところで、年次、サッカー部の先輩、後輩でほぼ文句が言えません。注意もできなくなります。
というような企業とか学閥みたいな誰も注意できない人間関係をある部署でつくるというのは問題があるというのは、聞いたところでは感じています。
恐らく問題が起きたところはそういうところが理由なのです。誰も注意できなかったから暴走したというか、誰も見向きしなかったです。入札上は違うとも言えなかったのだと思います。高橋理事のところだって、理事、違うよと誰も言えなかったのだと思います。そういうことは、今、みなし公務員上、できないのではないですかと、誰も注意できない人間関係がつくられたということです。
東京オリンピック・パラリンピックは特別措置法、オリ・パラの場合は、あと、サッカーワールドカップ、ラグビーワールドカップのような巨大な大会は特別措置法がつくられて、国家公務員が組織委員会に転職するような、派遣される仕組みがありますが、アジア大会の場合、実は特別措置法がありません。
そのため、みなし公務員規定がないというのも一つポイントで、だからこそ、かなりお互いが注意し合う組織をつくっておかないと、やりたい放題の人が入ってくるとやりたい放題になってしまうのがアジア大会の制度なのです。これから特別措置法、あるかもしれませんけど、この辺りもかなりしっかりと、監視というわけではないですけれども、お互いがお互いをリスペクトしつつ、注意しつつという組織づくりというのが求められると思います。
あと、短期に入札をしなければいけないです。後ろが決まっています。大会の日付が決まっていて、いつまでに予行練習をしなければいけなくて、いつまでに物が調達されないといけない。ある日、開業が決まっているマンションみたいなもので、途中でユニットバスが遅れていたら、もう駄目みたいな話になるので、かなり短期で仕様を満たす企業がいないと成功しない。これも裁判になっていますけど、局次長が事前に、ここの大会、競技会場はこの会社にしておいてくださいみたいな根回しをしてしまったという話が出ていますけれども、現状としてそうせざるを得ない状況も出てくるということなのかもしれません。
つまり、短期でそれができる企業が少ない場合には、そこがやるしかないわけです。それにもかかわらず、何週間もかけて公募して、入札をかけて、開札してみたいなことをやっていると間に合わないとなったときに、随意契約はできるのかできないのかという話になってくるわけです。そうしたときにその説明がしっかりとできるのかできないのかという状況に追い込まれたであろうことは予想されます。
今回のアジア大会も、どんどん後ろの時間は決まっていますので、こういう状況が起きる可能性がありますし、全てのイベント制作会社が全ての競技大会ができるわけではないのです。うちは卓球しかやったことがないからみたいな状況なので、きちんと用意をしておかないと、もしくは育てておかないと、うまく回らないのは事実かなと思います。
今、重ねて言っているのは、利益相反をどう監視するかということと、定期的な監査の仕組みをどう入れるかなんです。海外の場合はかなり定期的な監査を入れて、例えば議会で報告をさせるみたいな制度を入れたケースがあります。ロンドンのオリンピックなんかそうですけど。そうすると、かなり準備、綿密にやって、報告をしてという繰り返しなので、これまでやれば、かなり監査の目が光るという感じはします。
それから、国際的な文化の異なる国々の人々とスポーツ・エンターテインメントビジネスの慣習をすり合わせると書きましたけど、こちらも海外の人たちのイベント運営部隊と日本の運営部隊のしきたりが違うと、かなりここのすり合わせでも時間がかかります。要は、海外の人たちがどうしてこういうことができないのというふうに言われると、できるように何とかします、業者を切り替え、差し替えますみたいな話になるわけです。
要は、上から目線で競技団体がこれを修正しろ、あれを修正しろ、日本的じゃないと、これはこうしてくれないと困るんだといったことになると、全て調整が必要になってくるので、コミュニケーション不足だと言われればそうかもしれませんけど、コミュニケーションを高めて、そういうような差し替えとかがないような準備をしないといけないということです。
接待、供応とか、そうかもしれません。違うじゃないかと直前になって、全部食事を変えろ、なんて言われると大変困るというのはよくある話で、こういうのは事前のコミュニケーションがこういう状態を起こさない第一の秘けつと思います。
アジア大会の最後のパートですけど、どんな可能性があるのかというのを、私のほうでも少し考えてみました。
選手村を今回用意しないということは、選手村でない施設に選手が泊まる、つまりホテルに泊まるようになりますので、競技会の会場の近くに、恐らく、その競技に参加する選手を集めて泊まることになります。そうすると、県内全域もしくは東京都も含めたかなり広いエリアが選手の活動範囲になる可能性があります。そうすると、そこの管理、交通、食事、リスク管理です。
選手たちが選手村のように、ここにしか夜、帰らないとなっていないと、ホテルというホテルで自分の国のほかの競技をやっている人のホテルに行ったりすると、選手が名古屋中を歩いているみたいな状況が発生する可能性があります。競技を超えて栄で飲もうということになると、大変なことになります。
それをどう管理するのか。これは、ジャストアイデアですけど、例えば選手が食べてもいい食材とドーピングの可能性がないところだけにはアジア大会マークがついていて、選手はそのマークのついたところだけは入っていいと。そうでないと、客引きに捕まりましたとスナックから警察に電話があったけど、どこかの国の代表選手が大量に店にいますみたいな状況になると大変なことになるので、そういうことをどう管理するかということが、選手村がないときの大事なポイントだと思います。
それから、競泳や馬術会場、東京ですので、恐らく新幹線移動で、最初から東京に入れるのか。そうすると、入国の管理を中部国際空港でないところでもやらないといけなくなるので、羽田で管理をするのかとか、馬をどうやって入れるのかまで管理しないといけませんし、施設使用料、ここは都知事と交渉次第かなという、安く使わせてくれという交渉をしないと、都知事がここぞとばかりすごい使用料を吹っかけてくると、大変なことになるという感じがします。そんなことはないとは思いますけど、こういう交渉も必要になってくるかなという感じはします。
私、非常に大変だと話をしましたけど、コントロールエリアが拡大すれば、逆に、黄色で書きましたけど、フェスティバル空間だと思えば、かなり街中がアジア大会・アジアパラ大会中にフェスティバル空間になる可能性があります。
選手は試合が終われば、すぐ各国選手団、国に帰ったりするのですけれども、閉会式まで残るという選手たちはかなり愛知・名古屋を遊ぶと思いますし、もっと言うと、京都まで遊びに行く人たちが出てくると思います。
例えば、選手たちにはパスが大体与えられます。東海道新幹線、東京と名古屋間はいつでもフリーみたいなパスが出ると、選手のIDを見せれば、新幹線は、乗り放題になり、どこでも行けるというようなこととか。
逆に言うと、それは移動してくれるから、フェスティバルになるので。栄の真ん中には全て各国のブースが出ている。食事も2週間前、もっと前から。前倒し1か月ぐらい各国のブースが出ていて、みんな、市民も含めてそこでビールを飲んでいる間に、選手が金メダルを持って現れるみたいなフェスティバル空間になる可能性もあるので、こちらにうまく転換できれば、恐らく日本でしかできないアジア大会になります。
こういうようなリスクの高いことは危ない国ではできません。何が起きるか分からないので、選手がふらふらするようなことは危険過ぎてできないので、安全・安心の日本だからこそできるフェスティバルで各国の交流が生まれるということを考えれば、愛知・名古屋アジア大会、すごかったねというような状況ができる可能性があります。
東京を大会に巻き込めることは、実はプラスです。東京中にアジア大会のCM、PRが打てるということは、企業にとっても愛知・名古屋の範疇を超えて様々なアクティベーションができます。東京でアクティベーションができるとかということを考えると、実は、ここもポイントとしてはプラスになる可能性があるので、移動が増えて選手がどこかに行く危険があるからとマイナスに思うよりは、マーケティング的に東京が巻き込めるというふうに考えたほうが、私はプラスだと思っています。
それから、最後に、ポイントとしては、今までのスポーツマーケティングにない新しいシステムを私も期待しています。つまり、広告代理店がない中でどうつくるかということで、IT化、デジタルトランスフォーメーションが進めば進むほど、どんな人がどんな大会を求めているのかということはデジタル的なデータで分かるので、具体的にそれぞれの人にとってどんなイベントなのかということを、データを吸収しながら、どの世代だったらこういうことをしてほしいなというようなことを改めてデータでうまく詮索しながらフュージョンする。つまり、融合させるということです。
アジア大会と何かを掛け算したイベントを、来年以降、今年、杭州アジア大会が終わって以降、連続して愛知・名古屋でやっていくと、2024年から26年の間にもうアジア大会掛ける何とかというのが普通の状況になってくる、市民にとって普通にアジア大会を迎えられるというふうになるのではないかと思います。つまり、いかにまちを巻き込むかということなので、街中の付随イベントにあらゆる人が自分事になってもらうということです。アジア大会は自分事だと思うようなイベントをどんどんデザインしてつくっていくと、フュージョンしていくというようなことです。これは本当にアイデア次第だと思います。
それぞれの人は自分自身でストーリーをつくってもらいます。自分自身がアジア大会・アジアパラ大会を通じてどんな自分になったのかというセルフエディテッドな状況を演出。つまり、これは、SNSでできるのです。SNSを使って、みんながアジア大会を通じてどんな自分が誕生したのかということを盛り上げていくということがストーリーづくりになると思います。
あとは、ハイパフォーマンスの技術というのは、実はライフパフォーマンスに転移させるということが分かっていまして、いろいろなトレーニング方法がハイパフォーマンス、アスリートに向かってやられていますけど、実は、高齢者向けであったり、障害者向けであったりしても十分に適用するようなトレーニングだとか、スポーツ科学の知識だとかがあります。それらをいかに普及させるかということがアジア大会のレガシーになると思います。
ダイバーシティー、デジタル化、グローバルな感覚を育てる、この2年間、3年間になるのではないかということで、そのような中でも自分がつながっていける能力をいかに子供たちに育ませてあげられるかというのがこれからのポイントで、ダイバーシティー、デジタル、グローバルの中の子供たちの育成は、愛知・名古屋でうまくいっているという流れをつくっていくことが必要だと思っています。
(主な質疑)
【委員】
最後の話で、ハイパフォーマンスからライフパフォーマンス、そして、ダイバーシティ、デジタル化、グローバル化の感覚を育てるという話は、今後の話として我々にとって大きなテーマだと思ったが、実際、東京オリンピック・パラリンピックが、うまく着地ができないまま、この辺の問題を抱えて今に至っていると思う。
したがって、子供たちのオリンピック教育も、前段の段階では結構面白いことをやっていた印象があったが、コロナ禍の関係もあり、その後、広がりにくい状況になっていたのではないかと思っているが、そのような中であっても、東京オリンピック・パラリンピックを開催したので、ハイパフォーマンスをライフパフォーマンスに転移させる話や、ダイバーシティ、デジタル化、グローバル化の中における子供たちを育成する話が、今、このようにつながっている、もしくは、やろうとしていることがあれば教えてほしい。
【参考人】
ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスに関するトレーニング知識やスポーツ科学に関することは、現場で使われるようにはなってきている。フィットネスクラブなどで、パーソナルトレーナーのような形での供給になっているかもしれないが、トップレベルの選手たちが受けてきた。
東京オリンピック・パラリンピックの選手村でトレーナーや理学療法士が各国選手の治療やサポートをしていたが、彼らの技術は各国のチーム団から最高だと評価されており、その経験を持った人たちがパーソナルトレーナーとして開業していることが実例としてある。
表には見えないが、東京オリンピック・パラリンピックに参加したトレーナーたちが現場で、その経験を生かしている。
オリパラ教育に関しては、コロナ禍以降、アスリートの人たちの講演はなくなり、特にパラリンピックのボッチャなど、いろいろな競技を体験することすらできなくなってしまったことがあり、非常にオリパラ教育の効果は限定的だったと思う。そのことを愛知・名古屋で、どのように生かすのかを考えられるとよいと思う。
どこかがずっとオリパラ教育を続けているのかと思いつかないが、オリパラ教育よりも、少し残っているのは、一部で行われた各国の事前キャンプのホストタウンの国が交流を続けている話は聞いている。
【委員】
先ほどの選手村がないリスクと可能性という話が大変興味深いと思った。これまでだと、選手というのは選手村と競技場を行ったり来たりで、あまり自由は利かなかった中で、こういう形でやるときには、当然リスクを主催者側として、ある程度の制限を選手へ伝えることになると思うが、本当に制限が守られるのかがよく分からない中での責任の所在について、選手の国が責任を取るのか、それとも、主催者が責任を負うことになるのか。
【参考人】
通常の単独の世界卓球みたいな選手権は、ホテルでやっている。よって、選手がホテル外に出ることはある。したがって、そのときは選手が事故に遭わないようにすることは、選手の責任でやっていると思うが、何か犯罪に巻き込まれたりした場合は、組織委員会がサポートする必要があり、その国の選手団で解決しろというわけにはいかないと思う。
先ほど言った街中でいろいろなトラブルが起きたときには、必ず組織委員会に連絡が入り、警察署に行かなければならない事態は出てくると思う。
試合が終わった選手が、帰国前に買物に出かけることはよくあるため、その辺りは個別の選手や選手団のレベルで、責任を持ってやっているのが現実である。
【委員】
そうすると、オリンピックではあまりないことかもしれないが、いろいろな単体のスポーツだと選手村がない大会があり、また、プロ大会であれば、そこまで選手を制約することはできないと思うので、そこまで神経質になるよりは、むしろその辺の事例をもっとしっかり勉強しながら、選手村がないことを肯定的に捉える方向に考えていくほうがよいのか。
【参考人】
競技団体ごとに、選手をどのレベルで管理して、どういう情報を与えているのかは聞いておくと、かなりコントロールはできると思う。
例えば、アマチュアレベルでは、世界柔道が国立代々木競技場で行われるが、選手団は大体京王プラザホテルに泊まっており、会場まで電車に乗ってきたりするので、その間はやはり選手の自己責任で来ていると思う。
また、プロレベルになると、大体、チームごとにバスを用意し、ホテル前からバスに乗って、競技場、何時間前に到着みたいなことをやっており、サッカーやラグビーは、恐らく警察が先導していると思う。
先ほどの繰り返しになるが、各競技団体がどのレベルで管理すると主催者側は大丈夫だとやっておくとよい。後は、本当に行ってはいけないところなどをしっかりと各チームに作ったものを渡しつつ、各チームにいるマネージャーたちの教育が必要だと思う。
【委員】
これまでの採算面では、放映権が一番大きく、それで開催費用を賄っていると聴いたが、チケット販売に本来は重きを置くべきではないかと思う。オリンピックやアジア大会で考えると、どのくらいチケットを販売しなければならないのか。
【参考人】
ベースとなるのはチケット販売である。したがって、チケットでスタジアムやアリーナ、競技場を満杯にすることが、第一である。会場が、がらがらであると協賛スポンサーが広告を出す意味合いがなくなるため、チケットをいかに売るのかは大事なことである。
こういった総合型の競技大会の場合は、無名なマイナー競技のチケットをどう売るかが非常に重要であり、例えば、自転車のBMXなどを、どのように売るのかをIOC(国際オリンピック委員会)はよく考えており、スポーツプレゼンテーションといって、競技だけではなく、イベントなど、その周りの空間に演出をつけることで、試合以外の楽しみも含めたお祭りの雰囲気をつけることをやっている。
アジア・アジアパラ競技大会では、日本の人たちが見たこともないような競技の会場のチケットをどう売るかをよく練っておかなければならない。
【委員】
過去に、仁川でのアジアパラ大会を視察に行ったことがあり、セパタクローという競技は、当時知らなかったが、チケットをもらったため、そこの会場へ行ったら満員であった。
そういう事前のPRが、当然のことながら販売に結びつくと思うが、そういう販売に向けて、今から仕掛けているものはあるのか、当局に伺う。
【理事者】
今、アジア・アジアパラ競技大会で、特に開催都市側として、機運醸成というところで準備をしている。
これまでも、先ほど質問のあったセパタクローと連携をしてイベントを盛り上げたり、カバディと一緒に連携を盛り上げたりなど、そういったことも行っており、今後も大会が近づくにつれてそういったところをやりつつ、チケット販売につながるようなPRをしていきたいと思っている。
【委員】
各競技団体からすると、今から盛り上げようと、私の地元のほうで、ショッピングセンターでフェンシングの子供の大会をやっており、それはまさにアジア・アジアパラ競技大会を見据えたイベントだと聴いた。ぜひそういったことを繰り返しながら、チケット販売がうまくいくようにしてもらいたい。
髙橋参考人に尋ねるが、海外からのインバウンドというのは、これまで日本も、愛知県も一生懸命やっているが、コロナで随分落ちている。これからどのように持っていくと海外からの客が呼べるのか。何か考えがあったら教えてほしい。
【参考人】
東京オリンピック・パラリンピックのときは最終的に4,000万人を目指していたが、コロナ禍で一気に減ってしまった。徐々に回復していると思うが、アジア・アジアパラ大会で重要なことは、東南アジアも含めて徐々に年収が上がってきている人たちが日本を楽しめる観光をつくることだと思う。
東南アジアやインドぐらいまで含めて、彼らの選手団がそれなりに試合で勝てるようなことをサポートをする。やはり選手団が勝てないと、大会を見に行く気にならない。
だから、せめて少しでも勝てるようなサポートを各国にすると、それをきっかけに愛知・名古屋も観光し、京都、大阪、東京も回って帰っていくようなツアーができると思う。
後3年のうちに、各国のトップ選手たちには事前に東京会場を見せてあげる、いろいろな練習やサポートをするなど、様々な交流を持たせておくとよいのではないかと思う。お金はあるため、いかにアジア・アジアパラ大会を通じて来るかだと思う。
オリンピックのときはホテルの値段が上がることがあり、通常の旅行者が減るという研究もある。よって、ホテルの値段がどれだけ上がるのか、また、例えば高山や京都に上がるルートをつなげて、名古屋を拠点にどう日本を回るかといった話を海外にPRするとよいのではないかと思う。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年7月18日(火) 午後0時58分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
松川浩明、谷口知美 正副委員長
鈴木喜博、伊藤辰夫、近藤裕人、藤原ひろき、杉浦哲也、中村貴文、
横田たかし、日比たけまさ、細井真司、岡 明彦、園山康男、下奥奈歩
各委員
髙橋 義雄 参考人(筑波大学人間総合科学学術院 准教授)
スポーツ局長、スポーツ局顧問、アジア・アジアパラ競技大会推進監、
関係各課長等
委員会審査風景
<議 題>
国際スポーツ大会における現状と課題
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
私、筑波大学で社会人向けのスポーツマネジメントの授業を夜間で行っておりまして、そういう意味でいうと、社会人の方々にスポーツビジネス、スポーツマネジメントはどういうことなのかという話を授業で行っております。
それをベースに、今日は国際スポーツイベントが現状、どうなっているのかという話と、その課題、さらには、アジア・アジアパラ大会に向けての私が伺っている話での現状と、それに向けての課題、もしくは可能性についてお話ができればいいかなと思っております。
本日の内容は大体1時間ということを伺っていますけれども、3点、考えております。
アジア・アジアパラ大会ではありますけれども、同様に、総合的なスポーツ競技大会というのはオリンピックというものがありまして、そのオリンピックシステムを、まず、どのようなものかということを知らないと、アジア大会のこともなかなか分からないということで、オリンピックの仕組みについて、最初お話ししたいと思います。
2番目に、大会をどのように運営するのかということで、大会運営の課題についてお話ししたいと思います。
3点目は、その課題を乗り越えた先にあるであろう可能性について、私なりの意見を述べさせていただきまして、皆様からの質問を受けたいと思っております。
まず、オリンピックシステム。
国際的な総合的なスポーツ競技大会は、オリンピック、アジア大会になります。つまり、ほかの競技団体が単体で行う競技、例えば、サッカーであればサッカーワールドカップ、ラグビーであればラグビーワールドカップとか、現在、福岡で水泳であれば世界水泳とか、世界陸上とか、世界卓球というように、単体で行われる国際スポーツ大会はありますが、総合的に1か所に集まり、大体2週間程度の間に行われる仕組みはオリンピックがつくりました。
オリンピックは129年前、IOC(国際オリンピック委員会)が創設されて、スタートしています。IOCやアジア・オリンピック大会をつかさどるOCA(アジアオリンピック評議会)というのはどういう法人かといいますと、個人的なメンバーシップを持つメンバーによって運営されている、スイスの国内法人ということになります。
彼らは非常に大きな財源を持っており、かつ、感情的なつながり、スポーツを通じてという、表面的にはスポーツを通じてつながっていますけれども、多くの委員は皇族、貴族、もしくは軍人、いわゆる将軍と言われる軍人のトップクラス、もしくは政治家、さらには、商工業で活躍している、いわゆる財閥と言われるような方が委員となっています。そればかりであると問題だということで、一部はオリンピックのメダリストのようなスポーツ選手などが委員を構成しています。
一方で、非常に壊れやすい仕組みでもありまして、例えば、ボイコットの問題だとか、政治的な問題に触れると、非常に今まで強固に結びついていた人たちが分裂して参加しないというような、政治的な判断で大会が中止になるということが起きる組織でもあります。
これから述べていきますけれども、単に国際的なスポーツ大会とはいっても、公的、私的なステークホルダー、利害関係者が今は集まっていまして、彼らの力が非常に強くなってきているというのが現実です。
それから、大会運営ですけれども、大会運営は大会組織委員会というものが運営をするんですけれども、こちらの組織は非常に臨時的な組織でありますので、臨時的な組織をどう構成するかということは毎回問題になります。
実質的に、大会は複数の種目が同時多発的に同じ都市もしくは近隣の都市で開催されますので、その開催を運営するのは、誰かといいますと、表上はIFと言われる国際スポーツ競技連盟が運営を仕切って、その下で、その国、日本でやる場合は、日本の日本何々協会といった組織が実質運営を担当します。
ということなので、競技団体ごとに世界選手権を運営したことがあるようなスポーツ競技団体は手際よく運営しますけれども、世界大会を運営したことのないようなマイナーな競技団体などは国内団体ではその任が賄えないということで、国際団体が直接的に運営する場合があります。2020年のオリンピックの場合、例えばボクシングなんかは、IFが直接運営していたと思います。
というような形で、それぞれの競技ごとに運営の仕方も多少異なっていまして、この辺りをコントロールするのが大会組織委員会のゲームズ・デパートメントという、ゲームを運営する側の非常に大事な点になります。
オリンピックのメインのステークホルダーは先ほどから出ています、開催都市がつくります大会組織委員会です。こちらは都市と、オリンピックの場合は、日本の場合は日本オリンピック委員会と、あとはIOCで3者の連携をしながらつくるものですけれども、その開催都市の人々が担う大会組織委員会がメインになります。これをオリンピックだとすると、IOCがいて、各国のオリンピック委員会がいて、国際的なスポーツ競技団体がいて、日本の国の競技団体がいて、選手がいると、この五つがメインの利害関係者ということになります。
そのため、本来は、この五つがうまく機能すれば、大会というのは成立するわけですけれども、これから述べるように、いろんな人たちがこの大会の意義、価値を感じて近づいてくるのが現在の形になります。
先ほど言った五つの輪で五つのステークホルダーなので各色に分けて配置すると、真ん中に大会組織委員会がいて、国際的にIOCが上からいて、右上が国際的なところですけれども、IOC、それから国際的な競技連盟、国際サッカー連盟とか、世界野球ソフトボール連盟とか、IFがいて、左側に日本オリンピック委員会とか、中国オリンピック委員会とか、NOC(国内オリンピック委員会)がいて、下に日本サッカー協会、日本卓球協会とか、日本何々協会がいて、選手がいると。この五つが古典的なステークホルダーと言われる、昔はこういう形でオリンピックが運営されていました。
アジア大会も基本的に古典的な仕組みでやろうとすれば、このような形のステークホルダーで十分ですけれども、オリンピックの場合、1970年代以降に様々な力を及ぼすようになったのが開催国の政府になります。
開催国の政府が、ちょうど東西冷戦ということもありましたけれども、国の意向をオリンピック大会に反映させるということを意識して、NOC、日本政府が日本オリンピック委員会をコントロールし始めるという流れが出てくるわけです。
政府もIOCに対して強気に出られるかというと、IOCはIOCで、立候補国が、立候補都市が幾つか複数にある場合は選べる立場にあるので、非常に政府に対しても強い。上から来るわけです。そのため、政府はIOCに対しては弱腰であるというのが一般的です。
ただ、これもつい最近は立候補都市がオリンピック、アジア大会も含めて少なくなってきていますので、なかなか開催の権利を持っているIOCやOCAもそこまでは強くないというのが現状かと思います。
オリンピックのメダルや組織に対しては非常に関心が高いのが政府だということで、そういう意味でいうと政府はかなりオリンピック大会やアジア大会を支援する立場にあるはずで、愛知・名古屋の大会でいえば、日本政府がどれだけその大会に意義を持って支援するかというのは、ここは駆け引きになるかなと思います。
それから、スポーツの問題に関心があるのは政府です。つまりスポーツ自身のガバナンスというようなこともありますし、一方で、今、スポーツは高齢化を迎える日本において、例えば、高齢者の体を動かす運動というものがスポーツというようなゲーム性を持つことで、無理やりやって義務的にやる運動よりは、楽しくやっているうちに健康が維持できる取組に変わらないかということで、高齢者のスポーツ推進という形でトップレベルのスポーツと草の根のスポーツをいかに結びつけて、高齢者の健康維持・増進につなげるかというところに非常に関心があります。
IOCは政府と協力して当たる方向にありますので、IOCのバッハ会長の行動を見ればよく分かるように、来日すればすぐ首相官邸に行ったりするような形で、いかに政府をうまく使って、オリンピック大会を成功に導くかというようなところに関心があるというのが一つあります。
国内の政府ですので、IOC等組織委員会とNOCに影響を与えるということで、左上にグレーな形でマークを置いてみました。
続いて、1980年代以降の大きな流れは、国内もしくは国際的な協賛企業がスポンサーやメディアとして、オリンピックやアジア大会に協力を及ぼすようになってきたということです。
1974年にIOCがオリンピック憲章を改正しまして、アマチュアリズム、アマチュアという言葉を外しました。それ以降のオリンピックでは、プロ選手が参加可能になりました。
当時は東西冷戦でしたので、東側諸国が公務員という形で選手を雇って、ステートアマということを言われますけれども、強化をしてきて、西側諸国が勝てなくなってきたというところもあります。
一方で、西側諸国は、トップ選手は大体プロ選手になってプロ化するので、プロが出場できないオリンピック大会では、東側諸国に勝てないということになったわけです。
そういう意味で、プロ化が促進されて、プロが解禁されると同時に、プロの周りには企業が結びついていますので、そうした協賛企業が一気にIOCやアジア大会にも入ってきたという流れがあります。
企業は各国の代表チームを応援するようになり、それこそプロスポーツクラブ以外のスポーツクラブに対しても応援します。日本何々協会という協会も支援したり、大きな国際的な企業であれば、IFのスポンサーになります。国際サッカー連盟(FIFA)のスポンサーになるということにもなってきます。大会自体には財政的な支援をするのがこうした企業のスポンサーになってきますので、彼らの存在抜きには大会が開けなくなる規模に拡大してきました。
それから、メディアについて言いますと、メディアも当時は、ヨーロッパの多くは国営放送です。国営放送で、かつ放送局が少ない中で行っていたんですけれども、日本は国営のNHKと民放があります。アメリカの場合は、ケーブルテレビという形で、民放の放送局をケーブルテレビが一括、中間に入って、視聴料を取ってケーブルで見せるという仕組みで、実は各国、テレビの仕組みも違っていましたので、それぞればらばらであったんですけれども、視聴者が増えれば増えるほど、見たいという人がいればいるほど、要は、番組を見る視聴率が上がってきますので、その視聴率が上がればスポンサーがつくという形でテレビ局に収入が入る時代が、70年代以降、日本でいうと70年代から80年代以降、なってきました。
そうなってくると、スポーツ側もそれだけの視聴率が稼げるのであれば、テレビを放映する権利を一括してテレビ局に売ろうということで、1984年のロサンゼルスオリンピックでは、アメリカのABCが買い切ったわけですけれども、1社のテレビ局に多額のお金を提示して、放映権を一括して放映させるという仕組みが出来上がったのが80年代以降です。
この結果、テレビ局は独占的に放送が可能になりましたので、他社に流れていたスポンサーを独占的に牛耳られるということで、多少金額が高くても放映権を競って買うような時代がやってきまして、その結果、テレビ放映権の金額が右肩上がりで上がっていくということになりました。
一方で、オリンピックと同じように放映権が上がり続けたのはサッカーのワールドカップですけれども、サッカーのワールドカップについていいますと、2002年の日韓のワールドカップの時点の放映権に関しては、それを買った代理店が集め切れないということで倒産する事態が起きています。要は、上がり過ぎたとことも一つあって、その額で売り切れないという事態も発生していまして、現状、スポーツ側とテレビ局側の駆け引きが続いているという状況になっています。
ただ、日本のテレビ局の仕組みでいうと、多くの民放のテレビ局は視聴者からは一銭のお金も取らずに、CMという形でスポンサー企業からお金を取って行っていますので、スポンサーのCMの時間というのは限られていますから、そのCMの時間をいかに高く買ってくれる企業がいるのかいないのかで、その番組に支払える制作コストが決まってくるという仕組みになります。
制作コスト以上の額を放映権料として払わなければいけなくなると、短いCM枠の中では回収ができないということで、昨今のスポーツイベントに関しては、民放のテレビ局が二の足を踏むという状況になっています。これから開かれる女子のサッカーワールドカップ、ニュージーランド・オーストラリア大会ですけれども、民放レベルでは買えない額になりまして、NHKがぎりぎり買っているという状況になっていまして、アジア大会もどれぐらいの額に上がるかというのは、アジア大会の試合を見る各国の人たちがどれだけ見たいかということになりますので、それが上がってくれば、それなりの額で、いわゆる放映権の提示がなされ、その額で交渉がされていくということが起きてきています。
ただ、日本のようなテレビCMで視聴者からお金をもらわないという仕組みは、逆に、非常に日本独特なものでして、海外はかなりペイテレビといいまして、お金を払って見るものですから、アジア大会、もしくはサッカーワールドカップとか、オリンピックに対して、その番組に対して幾らというふうにお金を払うと、別にCMを集める必要はなくて、見たい人が多ければ多いほど物すごい大きな収入になりますので、テレビ局も大きな額が払えるという仕組みで、放映権獲得のベットしてくるわけです。
だから、日本は、昨今でいうとサッカーワールドカップでAbemaTVが巨額な価格で、ベットして買いましたけれども、なかなかDAZNとか、ABEMA以外に、いわゆるインターネット系の会社でお金をかけてコンテンツを買うという会社がまだ出そろっていないという状況もあってちょうど端境期ぐらいで、恐らく、これは私の意見ですけれども、アジア大会の2026年ぐらいが本当に切り替わる時期の可能性があるかなと感じています。
つまり、民放のテレビ局から多くの人たちがタブレットやインターネットで見る時代、もしくは、テレビであってもチャンネルでインターネット、今、テレビチャンネルのボタンは、地上波、インターネットの全部がボタンにありますので、ユーチューブとか、アマゾンとか、家庭のテレビで見る時代になるのかなという感じがしています。
そのため、お金を払ってアマゾンプライムに入らなければ見れないというのはおかしいという意見もあるとは思いますが、そういった時代の大きな転換点にアジア大会が位置してくるのではないかと思っています。
ちなみに、テレビの広告料は電通が発表されていますけれども、2019年にテレビとインターネットに対する広告の出稿料は逆転していまして、インターネットが、テレビより上になっています。多くの企業は、テレビにCMを流すよりはインターネットにCMを流すという時代に入っています。
それから、放映権の次がマーケティングに関しても、ロサンゼルスオリンピック以降はトップマーケティングということでTOPプログラムというのをやっていまして、1業種1社、その業界の企業は1社に絞るという形で、協賛金を軒並み上げるという形を行っています。
これも実は、ある意味、出来上がったシステムとして見られていますけれども、今回のアジア大会はこの仕組みをどう変えるかという時代ではないかと感じがしています。実は、東京大会はそれにチャレンジをして、銀行、ファイナンスというところで複数の銀行が入ったり、メディアというところで複数のメディアが入ったりという形で、複数の企業が一つのカテゴリーにお金を、スポンサー料を払うという仕組みを日本では実施しています。
これは、日本的な特徴かもしれませんけれども、1社独占よりは複数社でお祭り的に全ての競合する会社がみんなで支え合いましょうという発想で、東京オリンピック大会はスポンサーを集めたということですけれども、このパターンが日本であればできるのかなという感じもしています。ただ、世界は本当に1業種1社という形で、物すごい額で1社に押しつけるという形になっています。
企業のほうはリターンに対する意識が非常に強いので、スポンサーのフィーを払ったら、その額の大体1.5倍から2倍ぐらいのお金をかけてアクティベーションというのをやります。
つまり、買っただけでは、権利を買っただけですから、街中にバナーを貼るとか、まちで仮店舗を仕切って、全部ある電器会社のブースにするみたいなお金は別料金になるわけです。その別料金も用意して入ってきますので、実際は恐らく、例えばアジア大会でそういう状況になると、栄の大通りはスポンサー企業の看板がたくさん並ぶような、1階は全部スポンサー企業がガラス張りのところを借り取るみたいな、景気がいいときですよ、景気がいいときはそのような状況になる流れになります。
つまり、アクティベーションしない限りは価値がないのです。高級車を買っても乗らなければ価値がないのと一緒で、買ったらアクティベーションをするというのが大事になります。
実は、先ほど申しませんでしたが、政府もアクティベーションというのをやっていまして、コロナ禍で2020年は開催できなかったので、我々、あまり認識はないのですけれども、リオ大会、それから、その前の大会、12年、ロンドンもそうなのですけれども、私、視察していますが、各国政府はいわゆるパビリオン的なハウスというのを建てます。サウジアラビアなんかは、アジア大会でもサウジアラビアハウスという形で公園を借り切って、サウジアラビア一色の建物を建てて、みんなをただで呼んでサウジアラビアの食事を出すというような、ハウスという形でパビリオンを展開します。
もしコロナがなければ東京大会も、私、スイスのサポートをしていて、原宿と渋谷の間のファイヤーストリートにスイスハウスを造って、スイス料理を振る舞う空間まで用意していたんですけど、コロナで一切駄目になってしまったという経験がありますが、各国、今、東南アジアも含めてアジアの国が中産階級も含めて非常にお金持ちになってきているので、その国のPRをするハウスが、セールスさえすれば来るだろうなという予測はしています。
そのため、企業もアクティベーションする、政府もアクティベーションするというのが今の国際的なスポーツ大会の現状です。それを先ほどのスポンサーを足すと、国際的なスポンサーは右上に、国内的なスポンサーは左下にという形で配置すると、こうやって灰色の組織が五つの輪を取り巻いてきたなということが分かると思います。
さらに、右下が欠けているところですけれども、国際連盟と国内連盟、それから選手と、実は、ここで駆け引きをしているのがプロフェッショナルリーグになります。1990年以降、プロフェッショナルリーグが国際戦略を練ったり、国際的な選手を集めて、これ、東西冷戦が終わったからということになるんですけれども、89年以降、特にアメリカが世界中の選手たちを借り集めるかのごとく、プロリーグをつくって集めています。
彼らはプロリーグを中断してまでオリンピックやアジア大会に選手を出場することはナンセンスだと思っています。つまり、リーグのほうが、プライオリティーが高いのです。プロ選手をオリンピックに出場させる、アジア大会に出場させるときに、恐らく一つネックになるのはこういったプロリーグに参加している選手です。
野球の日本代表に大谷が来るかといったときに、恐らくメジャーリーグ側は駄目ですよということになるわけです。お金を払っているのはメジャーリーグのチームなので、そういうチームからすると、アジア大会、オリンピックに出て、怪我されたら困るわけです。そのため、プロリーグ側は選手を供出しないということが90年以降、起きてきていまして、特にバスケットボール、それからアイスホッケー、テニス、ゴルフあたりは大きいです。
NPBも書きましたけど、日本のプロ野球ですら、例えばワールドベースボールクラシックにうちの選手は出さないという球団があったりするわけです。何で3月のキャンプの間に、リーグ戦の前に、あんな過激なつらいことをさせるんだと、うちのチームから出さないということになってきています。
かなりプロリーグが今後、非常に大きな交渉相手になってくるのは確かと思います。アジア大会もプロの選手たちが、例えばサッカーなんかは徐々に、日本のJリーグに東南アジアの選手がいたりしますので、Jリーグが協力してくれないと、各国、東南アジアの国側からクレームが来る可能性があります。
うちのトップ選手を何でJリーグ側が出さないのだと、アジア大会のときだけ試合をやめて、出してくれといったことになると、Jリーグと交渉して、アジア大会期間中のリーグ戦を中止してくださいとか、野球もそういうような交渉が必要になります。ゴルフもトーナメントがあると、アジア大会のゴルフをやっていられないということになってきますので。
ここも一つ大きなステークホルダーとして右下に書きましたけど、こういった形で古典的な国際的な総合スポーツ競技大会は、政府やスポンサー、メディア、プロリーグによって、彼らによって、実は今、コントロールされているのが現状だと分かっていると、非常に理解がしやすいと思います。逆に言うと、彼らをどう使うかということが大会の成功に結びつくということになるわけです。
スポーツ界の組織として、この9個の輪を作りましたけど、その上に国際スポーツ仲裁裁判所と世界アンチ・ドーピング機構という二つが近年できまして、彼らが実はその上に乗っかっているというのが現状です。
このアンチ・ドーピング機構(WADA)というのはドーピング関連です。今、選手たちが一番警戒しているのは、ドーピング検査によってドーピングと認定されて、選手資格剝奪、メダル剝奪ということが起きることです。そのため、一般的な薬や食事を含めて、非常にコントロールがされています。
後ほど述べますが、今回のアジア大会で選手村がないとすると、選手村の食事は絶対ドーピングがないぐらいコントロールされていますのであり得ないのですけれども、選手たちがホテルでそういうしっかりとした食事が出るのか確認をしなければいけないし、もし選手たちが町なかで、栄で食事をしたときに、大丈夫かみたいなこともチェックすることが起きるのではないかという心配を少し感じています。
それから、CASというのはスポーツ仲裁裁判所で、こちらも選手と競技団体、例えば、代表の選考の仕方がおかしいということを訴えたりすることができます。そうなると、代表選考がもめるということで、なかなか代表が決まらなかったり、世界的なランキングでもめごとが起きると、アジア大会で出場する選手は誰までにしていいのかということがぎりぎりまで決まらないということがあったりします。
そのため、WADAやCASの動きもしっかりとケアしながら、総合的なスポーツ大会というのはコントロールされているというふうにすると、かなり大会組織委員会は様々なステークホルダーをにらみつつ、意見や情報交換しながらマネジメントする、大変な業務だということがよく分かると思います。
そのほかにもいろいろ、実はあります。ANOCというのはNOCが集まった組織、GAISFは今、解散に向かっていますけれども、国際的なスポーツ競技団体が集まった組織、それから、夏のオリンピック大会で選ばれる競技だけが集まった組織、冬の大会だけ集まった組織、スポーツのオリンピック種目でない組織が集まった組織、ARISFのようないろいろな、実は団体がありまして、それらの団体もオリンピックやアジア大会に対して猛烈にアピールしてくるということがあります。最近は、ユネスコとか国連がオリンピックやアジア大会に対しても協力的に、いろいろな連携をしようという動きがあります。
クラブ選手愛好者、イベント主催者とか、様々なところがオリンピックの利害関係、それからガバナンスに対して影響力を及ぼし始めているなということが考えられまして、この辺りが前回の東京オリンピック・パラリンピックに対して、いろいろな問題が起きたときの原因になっているだろうなというのは、こうした様々なステークホルダーがいる中で、調整をする人たちが急いで調整を省いてやると、問題を起こすということが、2020年の東京オリ・パラの状況だったと思います。
彼らは彼らの論理でそのほうが早いと思ったからやったのですけれども、そうではいけなかった。特に特別措置法があったので、みなし公務員としての立場があったというところが問われているわけですけれども、現在、非常に多くの利害関係者を調整する時間がかかるというようなのが、国際的なスポーツ大会の現状になっています。
こうしてみると、課題としては様々なステークホルダーの協働関係で、オリンピック、アジア大会等の国際スポーツ大会は出来上がっているということです。それから、イベントをマネジメントする大会組織委員会は一時的な組織ですので、このような多くのステークホルダーを調整しながら、スポーツ大会をするという経験は大体初めてになります。
そのため、分かりませんけれども、アジア・アジアパラ大会組織委員会で東京オリ・パラの経験者が何人いますとか、これは、ナレッジトランスファーというのですが、知識が伝達されていないと、一から始めなければいけないので、かなり大変な作業になると思います。
逆に言うと、そういうことに慣れている広告代理店がいて、私は何回もやっていますからということで広告代理店が入ってきて、その人たちに頼み過ぎると、そっちはそっちで問題が起きるというのが前回の課題になったと思います。
いろいろなステークホルダーが入るので、ネットワーク・ガバナンスというのですけれども、維持するためにはお互いがコミュニケーションしながら、ネットワークがバランスよくなるようなガバナンスが必要で、非常にこれはマネジメントの中でも難しさという点、それから専門性という点では一級ということで、かなり難易度の高い組織になっているということになります。単独では、当然大会は開けませんので、単独ではなくて、お互いがエコシステムをつくって、ウィン・ウィンな形で大会が運営されるように調整していくということが重要です。
それから、近年はパラリンピックが短期間の間に連続して行われるので、この調整も実は必要で、通常の大会とパラリンピックの大会の例えばスポンサーが違うと、それぞれ全部入れ替えたりとか、バナーを全部替えたりとか、かなりの作業が非常に重要になりますし、パラリンピックはパラリンピックで障害者のバリアフリーという点が必要になってくるので、当然、お客さんへのバリアフリーはありますけれども、選手が時間内に来られないような会場でも駄目ですし、まち全体がバリアフリー化していくという流れと同時並行的にしないと、一般的なスポーツ大会とパラリンピックを同時にやるというのは、チャンスでもあるのかなとは思いますけれども、かなりこちらも難易度を上げているのかなと思います。
それから、ステークホルダーの役割とパワーが強くなっているという話を先ほどからしていますけれども、政府は政治によってどう統制するかということが大事になります。政府、自治体という意味では、先生方がどうコントロールしていくかということが大事でありまして、では、東京組織委員会、思い出すと、森元総理がいて橋本大臣がいてという話だけですと、やはり何で政治家なんかがやるのだと一般の方々は言うかもしれませんけれども、こういった状況を鑑みますと、どうしても政治による統制というのが重要になってくるということがお分かりになると思います。
それから、プロスポーツ界に対しても統制しなければいけないので、こちらはスポーツ界で統制しなければなりません。スポーツ界自身が協力をしっかりと求めて、うちは協力しないという団体が出ないような流れをつくっていかないといけないということです。
それから、協賛企業に対しては、スポーツマーケティングという形でどうビジネスが成立して、ウィン・ウィンな形でおたくもウィンですよねという調整ができるかどうかなんですが、これまでは大手広告代理店と言われる方々が全部、一手に調整されていましたので、今回のアジア・アジアパラ大会に関しては、今回の事件、問題が発生して広告代理店が指名対象外になっているので、全く新しい仕組みの統制にならざるを得ない。この辺りも、実は重要なポイントだと思います。
今までであれば、具体的に名前を出してしまうと、例えば電通に任せておけば、全部大丈夫だというふうになっていたわけですけど、そうではない大会になるというのは、非常に大きなポイントだと思います。
それから、周辺組織のCSR、社会課題解決に関する重要性の増加と書きましたけれども、スポーツの大会だけでは、様々なスポーツスポンサー、企業スポンサー、それから政府、自治体がついてこない時代になっています。メダルが取れればいいという文句では誰もがついてこなくて、このアジア大会、オリンピックをやることで、どんな社会課題が解決されるんだということを連動させることで、多くの利害関係者が納得されるという時代になってきているのが現状です。
そのため、恐らくスポーツ局がありますけれども、スポーツ局を超えた他部署の連携によって、愛知・名古屋を通じた社会課題の解決をテーマにした様々な発信や取組というのを連動させないといけないというのが現状になっています。オリンピックの場合もレアメタル、貴金属ですか、携帯から取り出してメダルを作るという取組をやっていましたし、環境問題とか必ず問われる問題になるだろうと思います。
オリンピックの話ばかりだったので、アジア・アジアパラ競技大会はというと、IOCはスイスのローザンヌにあって、スイス法人ですけれども、アジア・オリンピック評議会(OCA)は比較的新しくて、できたのは1982年、45年のNOCがあって、事務局はクウェートです。中東の国にあるということです。アジアパラリンピック委員会もUAE(アラブ首長国連邦)にありまして、これを見ると、アジア大会・アジアパラ競技大会は、中心部は中東にあるということを感じられると思います。歴史を遡ったら、中東が中心だということです。
そうなってくると、中東の方々の認識だとか、物事の意思決定だとか、金融の仕組みとか、かなり彼らのスタンダードと、ある種、西欧諸国側に属する日本の仕組みとは多少なりとも差があったりします。この辺りの調整も求められてくるので、総理が今、中東を歴訪されていますけれども、非常に重要な、ああいうのはポイントになると思っていて、分かりませんけど、誰か、本来だったら、総理の中東歴訪とかにうまく合わせてアジアの話をしてくると、面白いような感じがします。
先ほどの図でいうと変わるのは、要は、愛知アジアの組織委員会が真ん中に来て、上のIOCがOCA(アジア・オリンピック評議会)に変わり、IFがAF(アジア連盟)というのがありますが、アジア連盟に変わって、図は変わりません。
だから、そういう意味でいうと、今までお話したガバナンスの仕組みは変わりませんので、そういう複数のステークホルダーに対して、お互いがウィン・ウィンになるようなコントロールをしながら、それぞれがどういうコントロールか、政府なら政治がやる、スポンサーなら元は広告代理店でやっていた仕組みがあるとか、スポーツ界にプロリーグをどう調整させるかみたいなことを同じようにやる必要があるのは一緒になります。
国際スポーツ大会の運営ですけれども、もう既にこれは愛知・名古屋の組織委員会が動いていまして、例えば大会デザイン、基本構想、コンセプトというのは大体決まっていて、計画策定をして、どの競技が行われるか、どこの場所で行われるか大体決まった段階で、今マーケティング、資金調達の公募をかけているという状況と伺っています。
ここで大体の資金調達のめどが立てば、それぞれの競技・イベント準備に入っていって、こちらにはNFやアジア連盟の人たちが、通常のアジアの競技大会や世界大会よりは規模が、出場者数自体は少なくなりますので、小ぢんまりとしたアジア大会、アジア選手権を同時多発的に同じ期間にやるというイメージで準備していけば、そこは可能になると思います。
問題になるのは、恐らく交通とか、選手の移動管理。入国から出国までの移動管理あたりは非常に重要になります。アジア大会あたりになると、非常に選手たちもきちんと入国・出国管理をしておかないと、選手が途中でいなくなってしまうなどがあり得ます。例えば、非常に友好国でない国の選手団が入ってきたときに、どう警備して、どう管理するかということも課題でしょう。
特に、杭州アジア大会はOCA(アジア・オリンピック評議会)側がロシアの参加を認めたりしているので、ロシアがヨーロッパだったはずなのに、アジア大会で、国名は出さないけれども、選手の身分で出ていいよというようなことを言っているので、そういうことがまた継続的に続くと、非常に政府の方針とずれが出る話になると問題になったりするので、この辺りの入国から出国までの移動の管理は重要になると思います。
そういう意味ではコンパクトなほうが簡単ですけど、今回、東京で水泳競技や馬術競技が行われるとなると、どうしても移動距離が大きくなりますので、その辺りの移動や選手村を造らないホテルの管理とか、選手たちの交通の問題、各ホテルからどういう時間内でどうバスを出すなど、多分、ち密な準備が必要になると思います。選手バスが渋滞にはまって来られませんとなるとまずいので、その時間帯に交通規制を張っておかないといけない。東京オリンピックではオリンピックレーンがあって、そこは普通の乗用車は走れない道ができていましたので、そういうバスのレーンを造る必要があると思います。
あとは、バスが何台か分かると、バスをかき集めるということが必要になってくると思います。東京オリンピックのときも関東から、別に関西までのバスの会社がバスを供出してもらって、みんなバスを集めることをやっていましたので、名鉄のバスだけでは難しいということが起きる感じがします。
それから、当然のことながら、今言われたようなコンプライアンスの問題です。2020年東京オリンピック・パラリンピックで大きな問題になっている。
コンプライアンスの問題、それから、リスクマネジメント。様々なリスクが出てきますので、そのリスクに対応するマネジメントも必要になります。
こうした組織を運営する大会組織委員会は、先ほどから言っているように臨時の組織なので、どこかで働いている人たちを集める、もしくはプロパーのプロみたいな人を雇う、もしくは海外でやっている外国人を雇うことが必要になります。2019年のラグビーワールドカップのときは、オーストラリア人を雇っていました。オーストラリアでラグビーのワールドカップをやった人たちを雇って、東京の組織委員会でも雇っていたとかしていたわけですけど、こういうヒューマン・リソース・マネジメントが非常に重要になります。
大会組織委員会は臨時な組織なので、終わればほかの仕事をしに転職しなければいけないんです。実は、私も2002年のサッカーワールドカップの招致と組織委員会の仕事をしていたときに、組織委員会を2002年に解散したら、高橋君はどこに行くのということを事前にサポートしてくれます。当時は日本サッカー協会に行くか、電通が雇うか、どっちを選ぶみたいなことまでサポートしてくれて、要は、路頭に迷わせると非常に評判が悪くなるので、かなり私のような出向元のない人間はサポートしてくれます。多くの出向者に関しては、元の企業にも戻ってもらいます。
トヨタ自動車から大会組織委員会に専任で来た方はまたトヨタ自動車に戻るという形ですし、県庁や市役所から来られた方は県庁や市役所に戻られるという形になりますので、調達をどうするのか、その人たちをどう教育するのか、これも短期集中の業務なので、やはりアジア大会・アジアパラ大会を成功に導きたいという情熱を短期集中的に発揮できないと、かなり難しい職場になります。
労働基準法を絶対に遵守するみたいなことを言われると、朝から晩まで詰めて大会を回すときなんていうのは、本当に24時間詰めて働かなければいけない職場になってくるので、かなりきつい職場になるというのが現状です。ただし、終わると1か月間休みはもらえたりとか、海外なんかだと、次の職場の間に集中的に休みを取ったりしてリフレッシュして、また次の職場に行くという方々が、いるのですけれども、日本の場合は、戻ったら職場で次の職ですぐに働けと言われると、かなりきついだろうと思います。
それから、急速に増員する組織だということで、今は小さいですが、大会に近づけば近づくほど組織は大きくなってきます。特に大会のイベント運営の人たちがどんどん増えてくるので、そういう人たちの組織替えをしたり、複数にわたって組織を改編したりする中で急激に大きくなってきますので、指示命令系統をしっかりとしていかないとうまくいきません。そういう意味では、官僚的な指揮命令系統があると言われています。
特にマネジメント系の指揮命令と、問題なのは、専門技術系の職員がいるということです。スポーツ大会が、私にできますかと言われても、細かい、やったことのない大会はできません。その大会をやったことのある人、専門技術者がいないと回せないので、そういう人たちとマネジメントの人たちがよく話をしてやらないといけないです。
イベントでいうと、イベント制作会社は幾つかあると思うのですが、そういう方々は専門職なので、普通の人は勝手にできない。この会場には電圧がどれぐらい必要で、放送が何局か入るからどれぐらいのWi-Fiのスピードがないと駄目だとか、普通の人は分からないようなことをイベント制作会社が知っているので、そういう人たちが技術系で入ってきて、一緒になってつくり込んでいくということが大事になりますので、そういう意味でいうと、そういった組織のつくり込みと配置というのは大きな課題になります。専門技術者だけでは当然成らないということです。
まさしくスポーツはシンボリックなソフトを扱っていまして、イメージと意識をいかにコントロールして、アジア大会のコンセプトをみんなでつくり上げていこうというソフトを扱っていますので、物理的なものができるわけではないです。そのため、スタッフの組織文化は非常に大事です。みんなが仲よくコミュニケーションが取れて、危ないと思ったら、話が上に上がっていく、単なる寄り合い状態を超えた組織にしないと駄目なのです。
私が行ったサッカー協会の2002年の組織委員会のときは、僕はサッカー、専門ではなかったものですから、土日になるとみんなでフットサルの練習をしようよと言って集まって、飲んで、意見交換しました。だから、土日でも仕事みたいになるというような、みんなでわいわい飲んで、意見交換するみたいなことをやっていかないと、なかなか仲間意識が生まれてこないのです。そういうようなことをやっていくと、恐らく、2026年までに一緒に過ごした戦友みたいな仲間になります。
2002年の仲間たち、今でも僕ら、集まりますし、年に一遍、決勝戦の日に集まって、飲み会、今までもやっています。みんな、ばらばらな仕事をやっていますけど、あのときはどうだったよねと20年前の話をして盛り上がるという仲間になります。恐らく、そういうふうになるだろうなというふうに思います。
2020年東京の教訓も当然生かさなければいけないので、ここで私がいろいろと調べて、私も電通の方々と仕事をしているので話を、あと、組織委員会の方々も知っていますし、副会長の河野一郎先生は私と一緒に職場をつくられて一緒でしたし、いろいろな話をしますと、大会組織委員会のヒューマン・リソース・マネジメントで一つ問題だったのは、急激に集まる組織を仲間意識で集めてしまったことが一つあるというふうには言われています。
つまり、仲間意識で集めると、上司、部下みたいな関係で集まると、誰も注意できない人間関係ができるわけです。あの人のやることには注意できないみたいなことが起きると、要は企業内で、同じ企業の人が大量に同じ部署にいると、上司、部下、入社年次で大体言えなくなります。
あとは学閥というのがあります。特に競技団体だと、サッカーだと早稲田か筑波か慶應かみたいなところで、年次、サッカー部の先輩、後輩でほぼ文句が言えません。注意もできなくなります。
というような企業とか学閥みたいな誰も注意できない人間関係をある部署でつくるというのは問題があるというのは、聞いたところでは感じています。
恐らく問題が起きたところはそういうところが理由なのです。誰も注意できなかったから暴走したというか、誰も見向きしなかったです。入札上は違うとも言えなかったのだと思います。高橋理事のところだって、理事、違うよと誰も言えなかったのだと思います。そういうことは、今、みなし公務員上、できないのではないですかと、誰も注意できない人間関係がつくられたということです。
東京オリンピック・パラリンピックは特別措置法、オリ・パラの場合は、あと、サッカーワールドカップ、ラグビーワールドカップのような巨大な大会は特別措置法がつくられて、国家公務員が組織委員会に転職するような、派遣される仕組みがありますが、アジア大会の場合、実は特別措置法がありません。
そのため、みなし公務員規定がないというのも一つポイントで、だからこそ、かなりお互いが注意し合う組織をつくっておかないと、やりたい放題の人が入ってくるとやりたい放題になってしまうのがアジア大会の制度なのです。これから特別措置法、あるかもしれませんけど、この辺りもかなりしっかりと、監視というわけではないですけれども、お互いがお互いをリスペクトしつつ、注意しつつという組織づくりというのが求められると思います。
あと、短期に入札をしなければいけないです。後ろが決まっています。大会の日付が決まっていて、いつまでに予行練習をしなければいけなくて、いつまでに物が調達されないといけない。ある日、開業が決まっているマンションみたいなもので、途中でユニットバスが遅れていたら、もう駄目みたいな話になるので、かなり短期で仕様を満たす企業がいないと成功しない。これも裁判になっていますけど、局次長が事前に、ここの大会、競技会場はこの会社にしておいてくださいみたいな根回しをしてしまったという話が出ていますけれども、現状としてそうせざるを得ない状況も出てくるということなのかもしれません。
つまり、短期でそれができる企業が少ない場合には、そこがやるしかないわけです。それにもかかわらず、何週間もかけて公募して、入札をかけて、開札してみたいなことをやっていると間に合わないとなったときに、随意契約はできるのかできないのかという話になってくるわけです。そうしたときにその説明がしっかりとできるのかできないのかという状況に追い込まれたであろうことは予想されます。
今回のアジア大会も、どんどん後ろの時間は決まっていますので、こういう状況が起きる可能性がありますし、全てのイベント制作会社が全ての競技大会ができるわけではないのです。うちは卓球しかやったことがないからみたいな状況なので、きちんと用意をしておかないと、もしくは育てておかないと、うまく回らないのは事実かなと思います。
今、重ねて言っているのは、利益相反をどう監視するかということと、定期的な監査の仕組みをどう入れるかなんです。海外の場合はかなり定期的な監査を入れて、例えば議会で報告をさせるみたいな制度を入れたケースがあります。ロンドンのオリンピックなんかそうですけど。そうすると、かなり準備、綿密にやって、報告をしてという繰り返しなので、これまでやれば、かなり監査の目が光るという感じはします。
それから、国際的な文化の異なる国々の人々とスポーツ・エンターテインメントビジネスの慣習をすり合わせると書きましたけど、こちらも海外の人たちのイベント運営部隊と日本の運営部隊のしきたりが違うと、かなりここのすり合わせでも時間がかかります。要は、海外の人たちがどうしてこういうことができないのというふうに言われると、できるように何とかします、業者を切り替え、差し替えますみたいな話になるわけです。
要は、上から目線で競技団体がこれを修正しろ、あれを修正しろ、日本的じゃないと、これはこうしてくれないと困るんだといったことになると、全て調整が必要になってくるので、コミュニケーション不足だと言われればそうかもしれませんけど、コミュニケーションを高めて、そういうような差し替えとかがないような準備をしないといけないということです。
接待、供応とか、そうかもしれません。違うじゃないかと直前になって、全部食事を変えろ、なんて言われると大変困るというのはよくある話で、こういうのは事前のコミュニケーションがこういう状態を起こさない第一の秘けつと思います。
アジア大会の最後のパートですけど、どんな可能性があるのかというのを、私のほうでも少し考えてみました。
選手村を今回用意しないということは、選手村でない施設に選手が泊まる、つまりホテルに泊まるようになりますので、競技会の会場の近くに、恐らく、その競技に参加する選手を集めて泊まることになります。そうすると、県内全域もしくは東京都も含めたかなり広いエリアが選手の活動範囲になる可能性があります。そうすると、そこの管理、交通、食事、リスク管理です。
選手たちが選手村のように、ここにしか夜、帰らないとなっていないと、ホテルというホテルで自分の国のほかの競技をやっている人のホテルに行ったりすると、選手が名古屋中を歩いているみたいな状況が発生する可能性があります。競技を超えて栄で飲もうということになると、大変なことになります。
それをどう管理するのか。これは、ジャストアイデアですけど、例えば選手が食べてもいい食材とドーピングの可能性がないところだけにはアジア大会マークがついていて、選手はそのマークのついたところだけは入っていいと。そうでないと、客引きに捕まりましたとスナックから警察に電話があったけど、どこかの国の代表選手が大量に店にいますみたいな状況になると大変なことになるので、そういうことをどう管理するかということが、選手村がないときの大事なポイントだと思います。
それから、競泳や馬術会場、東京ですので、恐らく新幹線移動で、最初から東京に入れるのか。そうすると、入国の管理を中部国際空港でないところでもやらないといけなくなるので、羽田で管理をするのかとか、馬をどうやって入れるのかまで管理しないといけませんし、施設使用料、ここは都知事と交渉次第かなという、安く使わせてくれという交渉をしないと、都知事がここぞとばかりすごい使用料を吹っかけてくると、大変なことになるという感じがします。そんなことはないとは思いますけど、こういう交渉も必要になってくるかなという感じはします。
私、非常に大変だと話をしましたけど、コントロールエリアが拡大すれば、逆に、黄色で書きましたけど、フェスティバル空間だと思えば、かなり街中がアジア大会・アジアパラ大会中にフェスティバル空間になる可能性があります。
選手は試合が終われば、すぐ各国選手団、国に帰ったりするのですけれども、閉会式まで残るという選手たちはかなり愛知・名古屋を遊ぶと思いますし、もっと言うと、京都まで遊びに行く人たちが出てくると思います。
例えば、選手たちにはパスが大体与えられます。東海道新幹線、東京と名古屋間はいつでもフリーみたいなパスが出ると、選手のIDを見せれば、新幹線は、乗り放題になり、どこでも行けるというようなこととか。
逆に言うと、それは移動してくれるから、フェスティバルになるので。栄の真ん中には全て各国のブースが出ている。食事も2週間前、もっと前から。前倒し1か月ぐらい各国のブースが出ていて、みんな、市民も含めてそこでビールを飲んでいる間に、選手が金メダルを持って現れるみたいなフェスティバル空間になる可能性もあるので、こちらにうまく転換できれば、恐らく日本でしかできないアジア大会になります。
こういうようなリスクの高いことは危ない国ではできません。何が起きるか分からないので、選手がふらふらするようなことは危険過ぎてできないので、安全・安心の日本だからこそできるフェスティバルで各国の交流が生まれるということを考えれば、愛知・名古屋アジア大会、すごかったねというような状況ができる可能性があります。
東京を大会に巻き込めることは、実はプラスです。東京中にアジア大会のCM、PRが打てるということは、企業にとっても愛知・名古屋の範疇を超えて様々なアクティベーションができます。東京でアクティベーションができるとかということを考えると、実は、ここもポイントとしてはプラスになる可能性があるので、移動が増えて選手がどこかに行く危険があるからとマイナスに思うよりは、マーケティング的に東京が巻き込めるというふうに考えたほうが、私はプラスだと思っています。
それから、最後に、ポイントとしては、今までのスポーツマーケティングにない新しいシステムを私も期待しています。つまり、広告代理店がない中でどうつくるかということで、IT化、デジタルトランスフォーメーションが進めば進むほど、どんな人がどんな大会を求めているのかということはデジタル的なデータで分かるので、具体的にそれぞれの人にとってどんなイベントなのかということを、データを吸収しながら、どの世代だったらこういうことをしてほしいなというようなことを改めてデータでうまく詮索しながらフュージョンする。つまり、融合させるということです。
アジア大会と何かを掛け算したイベントを、来年以降、今年、杭州アジア大会が終わって以降、連続して愛知・名古屋でやっていくと、2024年から26年の間にもうアジア大会掛ける何とかというのが普通の状況になってくる、市民にとって普通にアジア大会を迎えられるというふうになるのではないかと思います。つまり、いかにまちを巻き込むかということなので、街中の付随イベントにあらゆる人が自分事になってもらうということです。アジア大会は自分事だと思うようなイベントをどんどんデザインしてつくっていくと、フュージョンしていくというようなことです。これは本当にアイデア次第だと思います。
それぞれの人は自分自身でストーリーをつくってもらいます。自分自身がアジア大会・アジアパラ大会を通じてどんな自分になったのかというセルフエディテッドな状況を演出。つまり、これは、SNSでできるのです。SNSを使って、みんながアジア大会を通じてどんな自分が誕生したのかということを盛り上げていくということがストーリーづくりになると思います。
あとは、ハイパフォーマンスの技術というのは、実はライフパフォーマンスに転移させるということが分かっていまして、いろいろなトレーニング方法がハイパフォーマンス、アスリートに向かってやられていますけど、実は、高齢者向けであったり、障害者向けであったりしても十分に適用するようなトレーニングだとか、スポーツ科学の知識だとかがあります。それらをいかに普及させるかということがアジア大会のレガシーになると思います。
ダイバーシティー、デジタル化、グローバルな感覚を育てる、この2年間、3年間になるのではないかということで、そのような中でも自分がつながっていける能力をいかに子供たちに育ませてあげられるかというのがこれからのポイントで、ダイバーシティー、デジタル、グローバルの中の子供たちの育成は、愛知・名古屋でうまくいっているという流れをつくっていくことが必要だと思っています。
(主な質疑)
【委員】
最後の話で、ハイパフォーマンスからライフパフォーマンス、そして、ダイバーシティ、デジタル化、グローバル化の感覚を育てるという話は、今後の話として我々にとって大きなテーマだと思ったが、実際、東京オリンピック・パラリンピックが、うまく着地ができないまま、この辺の問題を抱えて今に至っていると思う。
したがって、子供たちのオリンピック教育も、前段の段階では結構面白いことをやっていた印象があったが、コロナ禍の関係もあり、その後、広がりにくい状況になっていたのではないかと思っているが、そのような中であっても、東京オリンピック・パラリンピックを開催したので、ハイパフォーマンスをライフパフォーマンスに転移させる話や、ダイバーシティ、デジタル化、グローバル化の中における子供たちを育成する話が、今、このようにつながっている、もしくは、やろうとしていることがあれば教えてほしい。
【参考人】
ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスに関するトレーニング知識やスポーツ科学に関することは、現場で使われるようにはなってきている。フィットネスクラブなどで、パーソナルトレーナーのような形での供給になっているかもしれないが、トップレベルの選手たちが受けてきた。
東京オリンピック・パラリンピックの選手村でトレーナーや理学療法士が各国選手の治療やサポートをしていたが、彼らの技術は各国のチーム団から最高だと評価されており、その経験を持った人たちがパーソナルトレーナーとして開業していることが実例としてある。
表には見えないが、東京オリンピック・パラリンピックに参加したトレーナーたちが現場で、その経験を生かしている。
オリパラ教育に関しては、コロナ禍以降、アスリートの人たちの講演はなくなり、特にパラリンピックのボッチャなど、いろいろな競技を体験することすらできなくなってしまったことがあり、非常にオリパラ教育の効果は限定的だったと思う。そのことを愛知・名古屋で、どのように生かすのかを考えられるとよいと思う。
どこかがずっとオリパラ教育を続けているのかと思いつかないが、オリパラ教育よりも、少し残っているのは、一部で行われた各国の事前キャンプのホストタウンの国が交流を続けている話は聞いている。
【委員】
先ほどの選手村がないリスクと可能性という話が大変興味深いと思った。これまでだと、選手というのは選手村と競技場を行ったり来たりで、あまり自由は利かなかった中で、こういう形でやるときには、当然リスクを主催者側として、ある程度の制限を選手へ伝えることになると思うが、本当に制限が守られるのかがよく分からない中での責任の所在について、選手の国が責任を取るのか、それとも、主催者が責任を負うことになるのか。
【参考人】
通常の単独の世界卓球みたいな選手権は、ホテルでやっている。よって、選手がホテル外に出ることはある。したがって、そのときは選手が事故に遭わないようにすることは、選手の責任でやっていると思うが、何か犯罪に巻き込まれたりした場合は、組織委員会がサポートする必要があり、その国の選手団で解決しろというわけにはいかないと思う。
先ほど言った街中でいろいろなトラブルが起きたときには、必ず組織委員会に連絡が入り、警察署に行かなければならない事態は出てくると思う。
試合が終わった選手が、帰国前に買物に出かけることはよくあるため、その辺りは個別の選手や選手団のレベルで、責任を持ってやっているのが現実である。
【委員】
そうすると、オリンピックではあまりないことかもしれないが、いろいろな単体のスポーツだと選手村がない大会があり、また、プロ大会であれば、そこまで選手を制約することはできないと思うので、そこまで神経質になるよりは、むしろその辺の事例をもっとしっかり勉強しながら、選手村がないことを肯定的に捉える方向に考えていくほうがよいのか。
【参考人】
競技団体ごとに、選手をどのレベルで管理して、どういう情報を与えているのかは聞いておくと、かなりコントロールはできると思う。
例えば、アマチュアレベルでは、世界柔道が国立代々木競技場で行われるが、選手団は大体京王プラザホテルに泊まっており、会場まで電車に乗ってきたりするので、その間はやはり選手の自己責任で来ていると思う。
また、プロレベルになると、大体、チームごとにバスを用意し、ホテル前からバスに乗って、競技場、何時間前に到着みたいなことをやっており、サッカーやラグビーは、恐らく警察が先導していると思う。
先ほどの繰り返しになるが、各競技団体がどのレベルで管理すると主催者側は大丈夫だとやっておくとよい。後は、本当に行ってはいけないところなどをしっかりと各チームに作ったものを渡しつつ、各チームにいるマネージャーたちの教育が必要だと思う。
【委員】
これまでの採算面では、放映権が一番大きく、それで開催費用を賄っていると聴いたが、チケット販売に本来は重きを置くべきではないかと思う。オリンピックやアジア大会で考えると、どのくらいチケットを販売しなければならないのか。
【参考人】
ベースとなるのはチケット販売である。したがって、チケットでスタジアムやアリーナ、競技場を満杯にすることが、第一である。会場が、がらがらであると協賛スポンサーが広告を出す意味合いがなくなるため、チケットをいかに売るのかは大事なことである。
こういった総合型の競技大会の場合は、無名なマイナー競技のチケットをどう売るかが非常に重要であり、例えば、自転車のBMXなどを、どのように売るのかをIOC(国際オリンピック委員会)はよく考えており、スポーツプレゼンテーションといって、競技だけではなく、イベントなど、その周りの空間に演出をつけることで、試合以外の楽しみも含めたお祭りの雰囲気をつけることをやっている。
アジア・アジアパラ競技大会では、日本の人たちが見たこともないような競技の会場のチケットをどう売るかをよく練っておかなければならない。
【委員】
過去に、仁川でのアジアパラ大会を視察に行ったことがあり、セパタクローという競技は、当時知らなかったが、チケットをもらったため、そこの会場へ行ったら満員であった。
そういう事前のPRが、当然のことながら販売に結びつくと思うが、そういう販売に向けて、今から仕掛けているものはあるのか、当局に伺う。
【理事者】
今、アジア・アジアパラ競技大会で、特に開催都市側として、機運醸成というところで準備をしている。
これまでも、先ほど質問のあったセパタクローと連携をしてイベントを盛り上げたり、カバディと一緒に連携を盛り上げたりなど、そういったことも行っており、今後も大会が近づくにつれてそういったところをやりつつ、チケット販売につながるようなPRをしていきたいと思っている。
【委員】
各競技団体からすると、今から盛り上げようと、私の地元のほうで、ショッピングセンターでフェンシングの子供の大会をやっており、それはまさにアジア・アジアパラ競技大会を見据えたイベントだと聴いた。ぜひそういったことを繰り返しながら、チケット販売がうまくいくようにしてもらいたい。
髙橋参考人に尋ねるが、海外からのインバウンドというのは、これまで日本も、愛知県も一生懸命やっているが、コロナで随分落ちている。これからどのように持っていくと海外からの客が呼べるのか。何か考えがあったら教えてほしい。
【参考人】
東京オリンピック・パラリンピックのときは最終的に4,000万人を目指していたが、コロナ禍で一気に減ってしまった。徐々に回復していると思うが、アジア・アジアパラ大会で重要なことは、東南アジアも含めて徐々に年収が上がってきている人たちが日本を楽しめる観光をつくることだと思う。
東南アジアやインドぐらいまで含めて、彼らの選手団がそれなりに試合で勝てるようなことをサポートをする。やはり選手団が勝てないと、大会を見に行く気にならない。
だから、せめて少しでも勝てるようなサポートを各国にすると、それをきっかけに愛知・名古屋も観光し、京都、大阪、東京も回って帰っていくようなツアーができると思う。
後3年のうちに、各国のトップ選手たちには事前に東京会場を見せてあげる、いろいろな練習やサポートをするなど、様々な交流を持たせておくとよいのではないかと思う。お金はあるため、いかにアジア・アジアパラ大会を通じて来るかだと思う。
オリンピックのときはホテルの値段が上がることがあり、通常の旅行者が減るという研究もある。よって、ホテルの値段がどれだけ上がるのか、また、例えば高山や京都に上がるルートをつなげて、名古屋を拠点にどう日本を回るかといった話を海外にPRするとよいのではないかと思う。