委員会情報
委員会審査状況
福祉医療委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年6月24日(月) 午後1時~
会 場 第1委員会室
出 席 者
松本まもる、宮島謙治 正副委員長
神野博史、鈴木喜博、山本浩史、中根義高、南部文宏、成田 修、
長江正成、藤原 聖、阿部洋祐、加藤貴志、柴田高伸 各委員
福祉局長、福祉部長、介護推進監、子ども家庭推進監、
保健医療局長、同技監、健康医務部長、感染症対策監、
生活衛生部長兼生活衛生課長、
病院事業庁長、病院事業次長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第107号 指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部改正について
第108号 指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部改正について
第109号 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定の要件を定める条例の一部改正について
第110号 子育て支援対策基金条例の一部改正について
第111号 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部改正について
第112号 国民健康保険事業費納付金の徴収に関する条例の一部改正について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第107号から第112号まで
○ 請 願
第 2 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮」について(医療関係)
第 4 号 「予防接種健康被害救済制度周知」について
第 5 号 「愛知県内における死亡者数激増の原因追及とワクチンとの関係調査」について
第 6 号 「『新型コロナワクチン接種後の国の健康被害救済申請及び県の副反応等見舞金の申請状況について』のマスコミ向け文書の県民への公表」について
第 7 号 「新型コロナワクチン接種記録の保存期間延長」について
第 8 号 「コロナワクチンのロット番号ごとの被害調査」について
第 9 号 「コロナワクチン接種に注意が必要な人に関する周知」について
第 10 号 「予防接種健康被害救済制度と副反応疑い報告制度との突合調査、案内」について
第 11 号 「各市町村、愛知県内の病院に正しく新型コロナワクチン副反応疑い報告が行われるように周知依頼」について
第 12 号 「新型コロナワクチン特定ロット『3005785』接種後、死亡事例や、健康被害の愛知県内の調査と被害周知」について
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第2号、第4号から第12号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 社会福祉及び社会保障制度の充実について
2 少子化対策及び超高齢社会への対応について
3 保健衛生の推進について
4 保健所及び県立病院の運営について
5 福祉局、保健医療局及び病院事業庁の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(3件 請願第9号、第11号及び第12号関係)
3 議案審査(6件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 請願審査(10件)
5 委員長報告の決定
6 一般質問
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉会中の委員会活動について
9 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
なし
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
一点目に、発達障害児童への支援について質問する。発達障害児童が増加している背景について伺うが、近年、発達障害を持つ児童が増えていると聞くが、実際はどうか。また、増えているとすれば、その背景について県はどのように考えているのか。
【理事者】
発達障害のある児童の数について、本県のデータはないが、厚生労働省が実施している令和4年度生活のしづらさなどに関する調査によると、医師から発達障害と診断された20歳未満の人の数は全国で38万人と推計されている。前回、平成28年度の調査では22万5,000人と推計されていたため、6年で約1.7倍となっている。
増加の背景として、一概には答えられないが、発達障害に関する理解が進んできていることもその一つの背景であると考えている。
2005年に施行された発達障害者支援法により、発達障害は自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などの障害であることが示された。これらの人への適切な支援の実施には、これら障害に対する正しい理解が不可欠であることから、県ではホームページの掲載など様々な機会を通じて、障害の特性や、その対応例などについて周知、啓発の取組を進めてきた。こうした取組により、発達障害への理解が進んだことが家庭や地域での生活の場面における気づきとなり、医療機関への受診、発見につながっているものと考えている。
【委員】
6年間で1.7倍ということが確認できた。
次に、医療機関での初診待機日数の改善に向けた取組について伺う。豊田市にあるこども発達センターでは、初診まで予約してから1年待ち、また、県の医療療育総合センターでも新規の予約は3か月から4か月待ちの状態と聞いている。
発達障害は、できるだけ早期に発見し、適切な支援につなげていくことが重要である。初診に長期間を有する原因は、主に専門医師の不足であると思うが、全国で同様の診療待ちが続いている状態である。改善に向けた愛知県の現在の取組について伺う。
【理事者】
発達障害に関わる専門医の不足について、発達障害の診察には児童本人の行動をつぶさに観察し、保護者からは生育歴等の聞き取りを行う必要があるなど、かなりの時間を要することに加え、一般的な診療科とは異なり医学部の学生や研修医が大学教育や臨床研修の場面で発達障害を含む障害児者医療に触れる機会が少ないということが指摘されている。
そこで県では、2011年から名古屋大学医学部に障害者医療学寄附講座を設置し、発達障害をはじめとする障害児者医療に携わる医師の養成を行っている。この寄附講座では、まず医学部4年生から6年生の学生に対して、障害児者医療学や児童青年期精神障害などの講義を行うとともに、医療療育総合センターにおける臨床実習などを行う。また、それに加えて、卒業後は名古屋大学医学部附属病院で臨床研修を行う研修医に対し、重症心身障害児や精神障害児の診療に関する講義を行っており、その結果として、2023年度までにこの寄附講座受講者の中から74名の医師に医療療育総合センターをはじめとした障害児者施設に従事してもらっている。
今後も名古屋大学の協力の下、寄附講座を活用して障害児者医療に携わる医師の養成、確保に努めていく。
【委員】
次に、発達障害児童を抱える家族への支援について伺う。先ほども述べたが、私の地元豊田市では1年待ち、医療療育総合センターでも3か月から4か月の待ちと、初診に長期間を有する現状は、子ども本人はもちろんのこと、親にとっても相当な精神的負担になっている。専門医師の確保に向けた県の取組は理解したが、発達障害児童が年々増加、また、今後はより多分野にわたって医師不足が深刻化する状況を踏まえると、現状の取組だけで初診までの期間を大幅に改善させることは難しい。
このような状況においては、初診までの期間の中で発達障害を抱えているかもしれない我が子の行動を理解し、子供と適切に向き合うことができるようになるペアレント・トレーニングなどを行っていくことが重要と考える。県の医療療育総合センターの中にある親子療育の家においては、発達障害の診断がある、また、その心配のある小学生までの子供と保護者を対象として支援プログラムを実施していると聞いているが、プログラムの概要と利用者の状況について伺う。
【理事者】
発達障害の子を持つ保護者の中には、日頃から悩みを抱え、今後の子育てに不安を感じている人がいることから、県では、医療療育総合センターにおいて、親子が一緒に学べる親子支援プログラムを実施している。このプログラムは、子どもに職員がマンツーマンで担当となり、個々に合った支援を探る個別療育、保護者に発達障害の特性や子どもへの理解を深めてもらう個別面接、同じ立場の保護者との交流を深め、日頃の悩みを話し合う「グループミーティング」の三つのカリキュラムを中心に、子どもの年齢や対象ごとに、子育てをしていく上で基本的な安心感を持ってもらい、今後の指針を得られるような内容としている。
具体的には、今年度は、幼児を対象として、時間をかけゆっくりと子育てについて考える基礎プログラム、父親を対象とした父親と一緒プログラム、年少児から年長児を対象にロールプレイなども交えて学ぶ親子ペアレントトレーニングプログラム、小学生を対象とした小学生プログラムなど、八つのプログラムの実施を予定している。
なお、センターでは、先日、今年度前期分の申込みを受け付けたところであり、応募状況については、一つのプログラムを除き定員以上の申込みがある。
【委員】
この支援プログラムは、保護者に子育てをしていく上での安心感を持ってもらい、今後の指針を得られるような内容となっており、大変有意義な取組であると感じている。特に、同じ立場の保護者との交流を深めたり、日ごろの悩みを互いに話し合ったりすることは、初診に長期間を有する現状においては、親の精神的負担を和らげる意味においても大変大きな効果がある。
今回この質問をするにあたり、様々な意見を届けてくれた、発達障害を抱える子どもを育てている豊田市在住の保護者からは、このようなプログラムは知らなかった、良い取組であるとの声をもらった。
引き続き、寄附講座等を通じた専門医師の養成により、初診や診療にかかる待機日数を改善していくこと、また、あわせて、様々な機会や機関を通じてプログラムの周知、広報をより積極的に行うこと、また、現在はプログラムに申し込んでいる人の倍率は、最大でも2倍少しであり、発達障害を抱えている子供たちの人数に対してそこまで高くないと伺っているが、より気軽にこうしたプログラムを利用してもらえるような環境整備にもあわせて取り組んでもらうことを要望する。
次に、二点目に子供医療費支給制度について伺う。子供の医療費は、医療保険制度において、小学校就学前の医療費の自己負担が3割から2割に軽減されている。これに加えて、各自治体独自の助成制度により自己負担分のさらなる軽減が行われている。本県においては、病院の通院医療費に対して小学校就学前まで助成を行っており、2割の自己負担分を無償化している。
他方、県内市町村では、高校卒業まで助成を行っている市町村が複数あり、豊田市でも本年4月から高校卒業まで所得制限なしでの無償化が実施されている。
そこで、本県内において、高校卒業まで通院医療費の無償化を含めた助成制度の拡大を行っている市町村の割合を伺う。
【理事者】
高校卒業まで通院医療費の無償化を含めた助成制度の拡大を行っている市町村は、本年4月1日現在で、県内54市町村のうち38市町村であり、割合は全体の約70パーセントとなっている。
【委員】
厚生労働省の2021年度の年齢階級別の医療費給付実態調査によれば、入院を除いた医療費は全国で合計14兆3,396億円のうち高校生世代に該当する15歳から19歳までの医療費の合計は2,097億円となっている。割合としては1.46パーセントと、全世代で最小の医療費となっている。
また、厚生労働省保険局が発表している国民医療費の年次推移における0歳から19歳までの通院医療費について、2012年は1兆2,909億円、直近の2021年度は1兆2,980億円と、この10年あまりの間で、多くの自治体が中学校、高校までと通院医療費の無償化を拡大しているにもかかわらず、子供にかかる医療費は、ほぼ横ばいとなっている。
この傾向を踏まえると、仮に通院医療費の無償化を全国一律で高校卒業まで拡大したとしても、高校生が積極的に病院に行き始めるとは考えにくく、医療費が一気に増える可能性は低いと思われる。逆に、全世代で最小となっている高校生世代が、お金がかかるという理由で通院控えをしているならば、これはこれで大きな問題だと思う。本来、県内に暮らす高校生は、どこにいても等しく通院サービスを受けられるように体制を整えていくべきである。
そこで、県内市町村間で医療費助成制度に差が生じている現状に対する本県の見解と今後の差の解消に向けた取組について伺う。
【理事者】
県内の自治体間で受けられる医療費助成に差があることは、各市町村がそれぞれの地域の実情に応じ、対象年齢の拡大等の取組を進めてきた結果であると認識している。
一方、子ども医療制度は、本県も含め全国の全ての自治体で独自の負担軽減、無償化が行われ、事実上のナショナルミニマムとして定着している現状を踏まえると、全国一律での制度創設など国において統一的な対応が図られるべきものと考えている。
このため、本県としては、これまでも国に対して全国一律での新たな支援制度の創設などについて要請を行っており、知事会、市長会、町村会の地方三団体からも同様の要請が行われている。
今後とも、様々な機会を捉え、住んでいる地域によらず、子供が必要な医療を等しい負担で受けられるよう国へ要請していきたい。
【委員】
全国一律の支援制度の創設を国に求めているとのことであったが、これは事前にこども家庭庁から私が質問して回答をもらったが、回答の内容は、国の制度として全国一律の高校卒業までの子供医療費の助成制度を創設することは、医療費の無償化による受診行動への影響なども見極める必要があるなど課題が多いものと考えていると、こども家庭庁から答弁をもらっている。私も医療費の無償化は、全国一律のユニバーサルサービスとして実施されるのが本来だと思う。
しかし、国の回答にある受診行動への影響も見極める、つまり、無償化によって医療費がかかるという理由だが、ここ何年も子供医療費の総額は変わっていないのは、先ほど示したとおりである。こうした県と国の議論の綱引きの中で各都道府県、各市町村間で差が生じてしまっているのが現状だと思う。これによって救われないのは、言うまでもなく子供たちである。
子ども医療費助成制度は、子供の健康の保持増進と子育てに要する経済負担の軽減を図ることを目的として、本県では昭和48年度から開始された事業であると承知しているが、制度開始から50年の時がたって、子育て世帯を取り巻く環境も大きく変化している。実質賃金の低下に加え、年々の社会保険料の負担増、さらには、昨今の物価高など厳しい家計状況の中、そろそろ見直しの時期に来ていると思う。現在、全国の都道府県では6県、本県内では70パーセントを超える市町村が通院にかかる医療費を高校卒業まで無償化している。病気は、早期の発見が何よりも重要であり、未来を担う子供たちが健やかに成長できるようになる、まさに大村秀章知事が掲げる日本一子育てがしやすい愛知の名にふさわしい県内全域での無償化に向けて、検討を進めることを要望する。
【委員】
まず、失語症者への支援について伺う。
失語症とは、脳梗塞などの脳への機能障害で意思伝達が不自由になる後天的な障害であり、コミュニケーションを取るために必要な聞く、話す、書く、読むなどで困難を持つ、いわゆる見えない障害と言われている。言葉の分からない外国で毎日不安を抱えながら過ごしている、これが失語症の状況と例えられることが多い。
時々、認知症と混同されるが、認知症と失語症は全く別物である。見分け方としては、失語症は、認知機能に問題はないが、言葉を使ったコミュニケーションが難しい脳の機能障害であり、認知症は、新しい物事を記憶できず、いつ、どこで、誰がといった状況把握ができなくなる認知機能障害である。例えば、朝ご飯は食べましたかという質問に対して、失語症の人は何を食べたかは把握しているものの、言葉では伝えることがうまくできない一方、認知症の人は何を食べたかが分からない状態である。ただし、実際、失語症と認知症の見分け方は簡単ではないため、医師の診断や周囲からの情報も踏まえて総合的に評価することが大切である。
そこで、本県では失語症者に対する支援として、意思疎通支援事業を実施しているが、支援内容と実績を伺う。
【理事者】
まず、支援内容について、本県では、失語症の人の自立と社会参加を図るため、意思疎通支援者を養成し派遣する事業を実施している。派遣事業では、事前に利用登録した人からの依頼により、意思疎通支援者を派遣し、公共機関の窓口での手続の補助や、病院受診の同行などコミュニケーションの支援を行っている。
次に、実績について、意思疎通支援者の派遣を開始した2020年度から昨年度までの利用件数は91件となっており、利用登録されている失語症の人は現時点で25名となっている。
【委員】
本県では、2020年度から事業を実施しているが、これまで事業を実施してきた中で、何が課題だと考えているのか。また、課題に対してどのような対策を講じているのか。
【理事者】
意思疎通支援者の派遣は、あいち障害者福祉プランに年間150件の利用の見込み量を掲げ、取組を進めているが、利用件数が見込み量を下回っていることから、さらなる周知が課題であると認識している。
事業開始以来、利用件数は年々増加をしているが、一昨年度が30件、昨年度が41件と、本県が見込んでいる年間利用見込み件数を下回っている状況である。このため、派遣事業の委託先である一般社団法人愛知県言語聴覚士会と連携を図りながら利用件数が増えるようウェブページによる事業案内などにより周知、啓発に努めている。
【委員】
障害者が社会における様々なサービスを受ける際、障害者手帳を取得していることが要件となる事例は多くある。失語症者が取得対象となる手帳は身体障害者手帳だが、その取得条件として失語症と判断されている、音声、言語、咀嚼機能の障害の交付として、3級は先の機能の喪失、4級は機能の著しい障害のどちらか。そして、本県に住んでいること、これらが要件である。しかし、実際には、手帳取得に至らないものの支援を必要としている人は多い。失語症者は、全国に50万人と推計されている中、県下での人数は、把握されていないものの一定程度の失語症に悩む人は本県にもいると聞く。そのような支援を必要としている当事者に対して、手帳取得が支援を受ける絶対要件としているのであれば、多くの人が支援の網から漏れると考えられる。
そこで、意思疎通支援事業による支援を失語症者が受けようとする際の本県の要件を伺う。
【理事者】
本県の派遣事業の対象となる人は、名古屋市を除く本県に住んでいる人で、派遣事業の利用登録をされる前に身体障害者手帳を取得している人である。身体障害者手帳の取得を要件としているのは、意思疎通支援事業が、いわゆる障害者総合支援法に基づいて実施するものであり、支援法では手帳所持者を対象とした事業であると解釈できたためである。そのため、事業を開始する際には、身体障害者手帳の取得が利用条件となることを国に確認した。
【委員】
身体障害者手帳を取得している人が対象になるとのことであるが、一方で、鳥取県では、手帳取得は要件になっておらず、医師の診断書があれば支援を受けられる制度になっている。そもそも、厚生労働省も手帳取得を失語症者がサービスを受けるための前提条件としているわけではないと、最近のヒアリングでも伺った。
また、手帳は取得できなかったが、症状がある人が日常生活で困難を抱えるケースも多くある。例えば、医療機関受診や役所での手続をはじめ、外出先でのコミュニケーションを必要とする場合での意思疎通が困難になることもあるため、外出自体を控えるようになることも考えられる。このように、支援を受けることができない人が多くいると推測されるのが現状である。困っている人が支援を受けやすいよう、手帳取得を絶対の要件とするのではなく、要件緩和を検討することを強く要望する。
次に、産後うつについて伺う。
産前産後支援は、子育て支援の重要な政策の一つである。子育て支援というと、本県の子供、子育てに関する総合的な計画である、あいちはぐみんプラン2020-2024があるが、その計画期間が本年度で満了し、次期計画を策定されるタイミングと聞く。育児というと、スタートはその前段階の妊娠期からの支援が必要になってくる。とりわけ、妊産婦は心身ともに大きな変化に対応する日々を送ることになり、喜びの一方で、不安や生活環境の変化から精神的に不安定になりやすいと言われている。その精神的不安定が産後うつ発症の要因の一つとも考えられる。
しかし、現計画では、産後うつに関しては、触れられていない。市町村では、不安を感じたり、孤立に悩んだりする妊産婦に対するメンタルヘルスケア支援として、産後ケア事業や産前産後サポート事業などを利用して取り組んでいると聞く。実際、私も他の都道府県でヒアリングを行ってきた中で、その取組事例が本県にとって参考になるのではという事例を多く見聞きしてきた。
そこで、妊産婦のメンタルヘルスケアに関する県の取組について伺う。
【理事者】
県としては、市町村が妊娠届出時の面接や、出産後間もない時期の産婦健康診査事業など様々な機会に把握した支援を必要とする人へ適切に対応できるよう、地域の実情に応じた妊娠出産に関する包括的な支援体制を整備していくことが大切であると考えている。
そこで、県保健所において、産後うつなどの事例を基に課題を整理し、必要な支援を検討する事例検討や、市町村参加医療機関、精神科医療機関などの関係者を構成員とする連携促進会議の開催により妊産婦のメンタルヘルス支援に取り組んでいる。
【委員】
子育てには、父親、母親が安心して取り組める環境づくりが必要である。その環境が子供の健やかな成長に欠かせないし、逆に不安が大きい育児環境下だと、父親、母親の精神の安定を妨げる可能性もあり、産後うつ発症リスクの懸念も大きくなる。そのような産後うつは、家族や周辺のサポート体制が不足する場合、サポート体制がしっかりとしている場合と比べて、うつ発症のリスクが約2倍に高まるという国立成育医療研究センターの調査結果や、そもそも産後うつ発症の割合や因子は男女とも変わらないと聞く。そうすると、産後うつを抱える母親と父親、両者への対応が重要になってくる。
母親への支援は、メンタルヘルスケアをはじめとして取組が進んでいるが、昨今、父親の積極的な家事、育児への関わりにより母親の精神的な安定が期待される一方、父親の産後うつが課題となっている。例えば、父親が健康を損う、仕事と家庭の両立で疲弊すると母親の家事、育児負担のさらなる増大、養育環境や夫婦関係の悪化など家庭における影響だけでなく疾病就業、欠勤の増加など、職場における悪影響にもつながる可能性も考えられる。
国立成育医療研究センターの竹原健二政策科学研究部長と意見交換をした際、父親の孤立を防ぐ対策や父親への支援も必要という理解を社会全体で深めていく必要があるというコメントがあった。
そこで、父親の産後うつに対する県の取組について伺う。
【理事者】
出産や育児をしている家庭への支援においては、母親に限らず家族全体を支援の対象として捉えていくことが大切である。そのため、産後うつへの対応を含む父親支援について学び、地域での取組を進めてもらうことを目的に、父親を取り巻く子育ての現状と父親支援についてをテーマとした母子保健指導者研修会を今年5月に開催したところである。当日は、市町村の保健福祉等の関係職員など75人が受講し、受講者からは、父親の産後うつについて理解が深まった、父親支援のヒントについて情報共有することができたなどの感想を聞いている。今後も、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援体制の充実を図るため、市町村支援に取り組んでいく。
【委員】
一方、第4期愛知県自殺対策推進計画によると、産後うつは自殺の危険因子として位置づけられている。こうした中、最新の令和5年度自殺対策白書で妊産婦の自殺の実態が初めて明らかになった。
令和4年に全国で自殺した妊産婦65人のうち、産後1年以内に自殺した人が47人となっている。第4期愛知県自殺対策推進計画では、産科医療機関における産後うつに対する対応力の向上を図ることが重要とされている。
そこで、第4期愛知県自殺対策推進計画における産後うつの人に対する県としての取組について伺う。
【理事者】
第4期愛知県自殺対策推進計画における取組としては、産科医療に従事する助産師、看護師等を対象に、産後うつに対する知識と理解を深めるとともに、支援が必要な産婦のケアを市町村と連携して実施するなど、産後うつの人への対応力の向上を図るため、産後うつ対応力向上研修を実施している。2023年度の研修会では、愛知医科大学病院の臨床心理士を講師に迎え、県内の産科医療機関に勤務する助産師や、市町村保健センターの保健師等88人が受講した。
講義では、産後うつの特徴や、支援の際の留意点のほか、父親の産後うつ症状についても触れている。また、産科医療機関と市町村の連携が深まるよう、地域別にグループワークを行う等の工夫もしている。
今年度の研修は1月に予定しているが、引き続き父親も含めた産後うつの人への対応力向上に努める。
【委員】
最後に要望する。一言に産後うつと言っても、その発症要因は様々であり、男女によっても違いがある。母子保健法に基づく産後ケア事業が全国的にまだまだ浸透していない中、こども家庭庁が23年度、産後ケアの利用料免除の対象を全産婦に広げて利用しやすいようにした。一方で、男性の育休取得が推奨され、家事、育児への積極的な参加が求められる社会環境下で、先ほど述べたように父親の産後うつも増えてきている。産後うつ予防、あるいは、なったとしても回復できるような支援は、母親、父親にも必要である。よって、そのような観点を含んだ次期はぐみんプランの策定を進めてもらうことを強く要望する。
【委員】
本年1月1日に発災した能登半島地震において、今現在、倒壊した建物の下敷きになるなどして亡くなった人や災害関連死を合わせると、死者は約280人と言われている。元日、久しぶりに会う家族や、家族と一緒に楽しい時や穏やかな時を過ごしていた人が多かったと思うが、その特別な日にこのような地震が起き、災害は待ってくれない、地震は明日起きるかもしれないという、そういった現実を私たちに改めて突きつけられたと感じている。
私の地元西尾市では、南海トラフ地震が発生した場合、最大震度7の揺れに見舞われ、長い海岸線と軟弱な地盤を抱えていることから、近年で最も深刻な被害、特に津波被害が危惧されており、具体的には約1万5,000棟の建物が全壊し、最大津波高は4.4メートル、死者数は約1,800人と想定されている。
能登半島地震の発災直後から、地元の障害を抱える人や医療的ケアが必要な人の家族などから、発災した場合とても不安だという声を多く聞いており、どうしたら様々な対策のスピードが上がっていくのか、本委員会において取り上げていきたい。
今回は、その中でも災害時に必要な情報や支援が届かない災害弱者になり得る障害を抱える人たちの情報保障の環境整備と、災害時における社会福祉施設の非常用電源の整備状況について取り上げる。
まず一点目、本年2月定例会においても、我が団の朝倉浩一議員が手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進するための取組について質問をしたところである。先日6月16日、私の地元西尾市において、愛知県聴覚障害者協会女性部が主催する討論会が開催された。私もオブザーバーとして出席させてもらったが、その際のテーマは、災害が起きたとき不安なことは何か、避難所において求めることは何かであり、県内各地から参加してもらった協会の女性役員の人たちや、主管の西尾聴覚障害者協会や、手話サークル等の人たちがグループワークで議論を行っていた。様々な意見が出ていたが、簡単にまとめると、災害時に不安なことは、例えば発災時に1人でいた場合、たまたまテレビをつけている、携帯をバイブ設定で手持ちしていない限りは、いわゆるJアラートに全く気づけないということである。特に、夜間は外の状況が全く分からず、また、旅行先や自宅外だと、なお不安であるとのことであった。そして、助けを呼ぶために笛、ホイッスルを持っていたとしても、肺活量がないということもあって音がなかなか出ない、防犯ブザーも音だけのものではなく声が出るものでないと気づいてもらえない、またペットと一緒に避難できるかということも挙げられた。
避難所で求めることに関しては、避難所での情報格差の心配、手話通訳者や支援者がいない場合孤立する不安がある、目で見て分かる情報、電光掲示板やアイ・ドラゴンでリアルタイムの情報が欲しい、コミュニケーションボードなどコミュニケーションが取れるツールが必要であること、電話リレーサービスや翻訳アプリなどがきちんと使えるかなど情報保障の環境整備を求めるものが多かった。
その中で緊急災害時、避難所等において目で聴くテレビと呼ばれている、リアルタイムで手話放送を見ることができる環境を求める声、具体的にはその専用受信機であるアイ・ドラゴンを避難所、特に福祉避難所に設置してほしいというものが、とても私の印象に残った。
このアイ・ドラゴンというのは、目で聴くテレビを受信するために開発された専用の受信機のことであり、この事業は阪神・淡路大震災においてNHK教育テレビが安否情報を流すために通常番組を中止し、その結果、聴覚障害者にとって大切な手話ニュースがなくなったということがあった。当時、生放送のニュースには字幕がなかったことから、聴覚障害者はテレビから情報を得ることが困難な状況であった。震災後に全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、民間会社が自分たちの放送局を持つためにCS障害者放送統一機構、現認定NPO法人障害者放送通信機構というものを1998年に設立し、始まったものである。
このアイ・ドラゴンには、インターネットの接続環境と、地上デジタル放送の受信環境が必要であるが、機器を設置すると、地上波と手話・字幕を合成し、テレビ放送のリアルタイム手話・字幕放送を視聴できるというものである。これまでも様々な災害時に、アイ・ドラゴンによりNHK災害放送の画面にリアルタイム手話通訳が付いた形で放映されてきた。また様々なジャンルの手話番組アーカイブが2,000本以上視聴可能となる。
設置費用は、個人が設置する場合、2003年に厚生労働省より日常生活用具に指定されているため、本体8,890円、年間受信料が税込6,600円で利用可能である。施設や団体に設置する場合、本体が税込8万8,900円、受信料が年間で税込1万3,200円となるが、現在、災害時の避難所等での聴覚障害者に対する情報保障の観点から、全国の約250か所で自治体等により設置されている。愛知県においては、聴覚障害者協会等の関連団体が市町村に積極的に要望活動を行っているほか、普及を願う関連団体、全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会が連携し、聴覚障害者災害救援中央本部として、国の機関、内閣府、法務省、厚生労働省、気象庁に関連要望書を提出しているところである。
また、避難所の情報保障としては、愛知障害フォーラムからも本年3月に県に対して提出された要望書においても具体的に要望されていると承知している。これらを踏まえて質問する。
まず前提として、本県には愛知県障害者施策審議会専門部会が設置されていると承知しているが、設置の根拠とこれまでの部会での議論の経緯、特に手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション支援に関する取組事項のうち、災害時等においての情報発信や避難所等でのコミュニケーション支援について、本県が、国の障害者アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に先んじて、2016年に制定した、手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例、また、あいち障害者福祉プラン2021-2026との関連性を含めて説明してほしい。
また、関連して障害者の要配慮者への災害時のコミュニケーションについて、行政側が作っているマニュアルではどのようになっているか、県災害対策課が作成している避難所の運営マニュアルもあるが、福祉医療委員会であるので、地域福祉課で作成している市町村のための災害時要配慮者支援体制構築マニュアルではどのように位置付けられているか説明してほしい。
【理事者】
まず、専門部会の設置根拠について答える。専門部会は、手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例、手話言語・障害者コミュニケーション条例と言うが、この条例の第8条第2項の規定に基づき、愛知県障害者施策審議会の部会として設置をしている。
次に、災害時等における情報発信や避難所等でのコミュニケーション支援に関する議論の経緯についてお答えする。手話言語・障害者コミュニケーション条例には、障害のある方が災害その他非常事態の場合に必要な情報を取得することができるよう、市町村など関係機関と連携して、災害時等における障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した連携体制の整備に努めることを規定しており、本県の条例の特徴となっている。
このため、専門部会では、災害時等における情報発信や、避難所等におけるコミュニケーション支援のあり方について、障害当事者や障害者団体の委員の皆様から意見を聞きながら議論を進めている。これまでの議論では、災害時における情報伝達を不安視する発言や、避難所における情報保障手段に関する意見をもらい、県の取組に繋げている。具体的には、避難所で円滑にコミュニケーションを図ることができるよう、文字やイラストを用いて情報の伝達や意思表示などを行うことができるコミュニケーション支援ボードの活用などのセミナーや、避難所等において活用できるコミュニケーション支援アプリの開発、市町村における災害時の情報連絡体制に関する調査などを実施している。また、あいち障害者福祉プランでは、九つの分野別の障害者施策を定めているが、その中の防災・感染症対策・防犯の推進の分野では、施策の方向性として防災対策推進を掲げ、障害のある人が、災害その他非常事態の場合に必要な情報を取得することができるよう、市町村など関係機関と連携して、災害時における障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した連携体制の整備を図ることとしている。プランの計画期間中の取組としては、障害の特性に応じた連絡体制の整備状況の把握や、障害の特性に応じた避難所準備情報等の提供や、避難支援体制の整備などを掲げている。
【理事者】
二点目の市町村のための災害時要配慮者支援体制構築マニュアルについて答える。
マニュアルでは、発災時に着実に避難情報が伝達されるよう、多様な手段の活用が必要であるとして、要配慮者の特性や、情報伝達時に配慮すべき事項について示した上で、例えば、聴覚障害のある方には手話通訳のほか、情報受信装置など視覚的な情報伝達を、視覚障害のある方には点字のほか、防災行政無線など音声での情報伝達を、知的障害のある方には絵や写真の掲示など分かりやすい情報伝達を推奨している。
また、避難所生活においても同様に、要配慮者の状態に応じた伝達方法の工夫が必要であることや、「明かりがないと手話ができない」など、要配慮者本人の意見も示し、市町村に対して細やかな配慮を促している。
【委員】
先ほどのアイ・ドラゴンについて、関連団体は導入を求める根拠として、国で令和4年に障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立し、国や地方公共団体の責務、事業者の責務や国民の責務、国・地方公共団体、事業者等の相互の連携協力や、当事者等の意見の尊重も明示されていることから、アクセシビリティ保障やバリアフリー対応は、障害当事者の努力や歩み寄りではなく社会にその対応責任があることや、法の基本理念において、障害者でない者と同一情報を同一時点において取得できるようにするとあり、また法の基本的施策である防災・防犯及び緊急の通報には、障害の種類や程度に応じた迅速・確実な情報取得のための体制の整備充実、設備・機器の設置の推進と明記、また、施策の実施に必要な法制上、財政上の措置等を講じることが明記されていることから、法の理念を実現するためには、避難所等において、目で聴くテレビのリアルタイム手話放送を視聴できる環境を整えることが情報保障に繋がるのではないか、さらに、国は令和3年に災害対策基本法を改正し、避難行動要支援者に個別避難計画を作成することが市町村の努力義務とされているが、緊急災害時に福祉避難施設に避難をしても、手話通訳者の不足や音声による情報周知など、聞こえない、聞こえにくい人が孤立をしてしまうケースが大いにあること、加えて、NHKの緊急災害報道にはリアルタイム字幕が付与されているが、手話言語は付与されておらず、手話を第一言語とする人は、日本語の文字情報よりも手話言語の方がストレートに情報を得ることができることなどから、アイ・ドラゴンの設置の取組の推進を避難所等の設置者に求めているが、アイ・ドラゴンの導入において、率直に県の見解を伺う。現状は市町村が独自に公共施設等に設置するケースがあるが、当事者団体が求めるような普及には及んでいないと承知している。避難所、特に福祉避難所においてこのアイ・ドラゴンを積極的に導入すべきではないかという議論は、専門部会では出ていないのか。そして、先ほど答弁があった災害情報連絡体制の市町村調査において、アイ・ドラゴンの設置に関する調査項目があるか、また、導入している自治体の例があれば状況を教えてほしい。
【理事者】
本県では、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する取組を進めているため、情報を取得する手段の一つとして、アイ・ドラゴンが福祉避難所に整備されることは望ましいことであると認識をしている。これまでの専門部会においては、福祉避難所へのアイ・ドラゴンの設置要望を愛知県聴覚障害者協会から市町村に対して行っていることや、市町村に対する災害時情報連絡体制の調査で、アイ・ドラゴンの設置状況を聞いてほしいという意見があるが、アイ・ドラゴンを導入すべきとの意見はない。
市町村に対する調査に関しては、専門部会の委員からの意見を踏まえ、昨年度の調査において、市町村にアイ・ドラゴンの設置状況を確認しているが、アイ・ドラゴンの設置の有無を聞く形ではなく、例示としてアイ・ドラゴンを調査表に記載し、障害のある人への配慮の取組事例として任意で回答してもらう形で調査を行っている。
調査の結果、長久手市からアイ・ドラゴンを福祉避難所に設置していると回答があった。また、扶桑町では福祉避難所への設置が検討されているという回答であった。なお、これはあくまで任意回答による結果であり、他にアイ・ドラゴンを設置している市町村がないということではない。
【委員】
それぞれの自治体で優先順位をつけて対応しているということであるが、まだまだ普及していないのが現状だと思う。
この災害時の情報連絡体制の市町村調査についてもう少し伺うが、いつから、どのような内容の調査を行っているのか。そして、障害福祉課として、調査項目、配慮の有無などの傾向をどう捉えているか、集約して見えてきた課題はどのようなことなのか。また、集約したことを市町村にどのようにフィードバックをし、それがどのように市町村の取組の改善向上に繋がっているのか。
【理事者】
災害時連絡体制の市町村調査については、2021年度から実施している。調査は、本県の防災安全局災害対策課が県内市町村に調査を実施している災害情報伝達手段の整備状況の一覧を基に調査票を作成し、障害のある人への配慮の取組について確認している。具体的には、屋外スピーカーへの文字表示盤やパトライトの整備状況、防災ラジオへの文字表示盤や着信表示等の有無、メール以外の伝達サービスや自治体の防災アプリへの音声読み上げ機能などを調査項目としている。
調査の結果、障害のある人への配慮の取組が進んでいることが伺えるが、市町村間で取組内容に差が生じていることは課題であると考えている。このため、調査結果については、専門部会における意見を添えて市町村にフィードバックし、情報共有を図っている。各市町村では、他の市町村の取組を参考にして、障害のある人への配慮の取組を進めてもらえるものと認識している。
【委員】
市町村に少し差が生じているとのことである。フィードバックは障害福祉課から市町村の障害福祉担当課にしていると思うが、ぜひ防災関連の部局にも内容が伝わるようにしてほしい。また、専門部会の議論には、防災安全局の担当者も入っていると聞いているので、そちらからも市町村の防災担当に情報共有してほしい。
もう一つ関連として、コミュニケーション支援アプリについて伺う。県独自で2021年3月からアプリの運用を行っており、これは私も携帯にダウンロードしているが、非常にシンプルで分かりやすいアプリで、災害の避難所や緊急時の使用のみならず、日常の、例えばコンビニや様々な場面で、公共交通とか、そういった場面でも使える。本当に身近なことでも使えるようにすることでこのアプリの存在を忘れないし、自然に使い慣れることができる。言語もやさしい日本語、英語、ポルトガル語、中国語にも対応しており、障害のある人だけでなく、例えば外国人に対応する際にも相当使えるものだと思っている。ただ、周りでダウンロードしている人はあまり聞いたことがなく、一般的に普及しているかというと、例えばここにいる理事者の中でもどの程度の人がダウンロードしているかと思う。
そこで伺うが、このアプリはそもそも誰を対象としているのか。そして年間どれぐらいの予算で運営され、現在どの程度のダウンロード数となっているのか。また、一般のユーザーや聴覚障害者等の関係者、専門部会でどのような意見があり、どのように改修が行われているか。
【理事者】
コミュニケーション支援アプリについては、聴覚に障害のある人、知的障害や発達障害の人、高齢で聞こえづらい人など、会話によるコミュニケーションが困難で、支援が必要な人を対象としているが、当事者だけではなく、支援が必要な人に応対する人にも使っていただけるようになっている。このため、多くの人に支援アプリを活用してもらえるよう、本県のウェブページによる周知の他にチラシを作成して、県内市町村や防災関係団体、特別支援学校など、障害者関係団体以外にも配布している。予算額については、今年度は運用・保守・管理費として42万6,000円を計上している。また、ダウンロード数については、本年4月末時点で1万177回となっている。また、関係者からは、文字の大きさや色合い、イラストをシンプルにしてほしいといった意見や、外国人も利用者として想定した方がよいといった意見、場面設定など、これまでに多くの意見をもらっており、これらの意見を参考に、専門部会において、支援アプリの改修を毎年行っている。支援アプリのリリース後、ひらがな表示機能や多言語表示機能の追加、コンビニ・スーパーの表示項目の追加といった改修を行っている。今年度は交通機関の表示項目の追加を行う予定である。
なお、本県では、障害者関係団体の会合の場などへ出向いて、支援アプリの使い方などの説明を行っている。また、県政お届け講座では、手話言語と障害者コミュニケーションをテーマに、県の施策の一つとして支援アプリの紹介や操作方法の説明も行っている。説明会や講座に参加した人、実際にアプリを使っている人からは、支援アプリに関する率直な意見をもらっているため、支援アプリの改修の参考としている。
【委員】
ダウンロード数が1万177回ということである。チラシ等を関連団体に配布し、障害者団体の会合や県政お届け講座で支援アプリの説明等を行っているとのことであるが、そのダウンロード数について、当局の見解と、もう一度、どのように周知を行っていくか伺う。
【理事者】
2021年3月のリリース以来、これまでに1万を超えるアプリのダウンロードがあるため、本県としては多くの人に利用してもらっていると認識をしている。一方で、支援アプリは、コンビニやスーパーなどの日常生活においても、当事者だけではなく店員も利用できるため、今以上に多くの人に、支援アプリをダウンロードしてもらい、災害時に備えて日頃から活用してほしいと考えている。
そのためには、支援を必要としている人はもちろん、支援者、例えば、避難所では主に市町村職員になるかと思うが、そういった人たちへ広く周知することが必要である。
このため、今年度開催することとしている市町村向け避難所コミュニケーションにおいて、支援アプリを積極的に活用するよう呼びかけるなど、さらなる周知に努めていく。
また、県政お届け講座において、支援アプリの説明を行っているが、操作説明の内容を充実するとともに、現在の講座の一覧では支援アプリの説明をお届け講座で実施していることが分かりにくい表記となっているため、見直しを行い、より多くの人にお届け講座を利用してもらうことで、支援アプリのダウンロード数増加につなげていきたい。
【委員】
今年度、市町村職員向けの避難所コミュニケーションセミナーを開催するということであるが、いつごろ、誰を対象として行われるのか、また、セミナーに当事者が参加するのか。さらに内容について、アプリの説明はもちろんであるが、例えばその場でアイ・ドラゴンのような市町村が行っている有用な取組を、実際に目で見て分かる形で紹介・体験できるような仕組みをつくる考えはあるか。
また、同様に、県と市町村で実施する総合防災訓練において、このアプリの普及や、アイ・ドラゴン等の取組を紹介し、実際にそれらを活用した訓練を当事者団体等と一緒にやる考えはないか。
【理事者】
まず、セミナーの開催時期については、本年の11月頃を予定している。対象者については、県内市町村の福祉部局及び防災部局の職員としているが、障害者団体にも講師として参加してもらう予定である。セミナーの内容については、現時点では、障害者支援施設や障害者団体による講演、先進的な取組を行っている市町村や団体による事例紹介、市町村職員同士のグループワークに加えて、支援アプリの説明を行うことを考えている。このため、先進的な取組を行う市町村による事例紹介の中で、アイ・ドラゴンを設置している自治体から説明してもらうよう、今後調整を進めていく。
また、過去に開催したセミナーにおいても、防災用簡易マットや、個室のシェルター、ダンボールで出来たトイレなどを展示し、実際に見てもらう取組を行っている。今回のセミナーでも、実際にアイ・ドラゴンがどのようなものか、現物を見てもらい、市町村職員の理解を深めてもらうよう、愛知県聴覚障害者協会と調整を進めていく。
なお、総合防災訓練については、障害福祉課の職員が、愛知県聴覚障害者協会等の関係団体と参加し、従来から支援アプリのチラシを配布している。今年度の総合防災訓練にも参加する予定としているため、引き続きアプリのチラシを配布し、周知啓発に努めていく。
さらに、支援アプリやアイ・ドラゴンを活用した訓練については、今後、愛知県聴覚障害者協会と調整を図りながら、実施の可否について検討を進めていく。
【委員】
アプリについて、もっと普及しないともったいないと感じている。例えば、防災アプリを独自に作っている自治体や、公式LINE等を活用して積極的に情報発信をしている自治体がある。そのような仕組みに乗せることによって、多くの人に、このアプリをダウンロードしてもらえるよう、そして、整備を進めるだけでなく、実際に活用できるよう、防災訓練等で、例えば地域の避難訓練や避難所において運用のシミュレーションや訓練を進めてもらうように働きかけをお願いする。
また、耳が不自由な場合でも、コミュニケーション手段は本当にいろいろとあり、筆談や補聴器、人工内耳、口話など障害の程度によって様々で、それぞれ人によって違う。例えば、一昨年フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ「サイレント」が話題になった。ドラマの中で、指定難病に指定されていた若年発症型両側性感音難聴を発症した主人公の恋人が、コミュニケーションの方法として、発した言葉が自動で文字になる、UDトークというアプリを使ってコミュニケーションを取っていたことが非常に印象的であり、手話で補えないような会話を視覚的に伝えていた場面が印象的であった。このような民間が開発しているアプリなどと、県のアプリを組み合わせて使うことも例示していただけるとよい。
また、岩手県で、Jアラートの発信をトリガーにアイ・ドラゴンを導入することにより、NHK総合のチャンネルを自動で起動させるような実証実験が進んでいる。耳の不自由な人や外国人、高齢者らが、視覚による迅速な情報の伝達を行う上で、民間宿泊施設でも非常に関心を持っているため、県もぜひ情報をフォローしてほしい。
続いて、社会福祉施設の非常用電源について伺う。
2024年4月から、介護サービス事業者の事業継続計画(BCP)策定が義務づけられ、さまざまな社会福祉施設において、災害などにおいても止めることができない重要な事業に関して、利用者の安全確保も含めた自然災害等への対策が進んでいると承知している。
行政主導で業界のBCP策定が進んだことは非常に有意義なことだが、一方で、ただ作っただけのBCPなのか、それともしっかりと機能するBCPになっているのか、つまり、立てた計画が形だけのものになっていないかということを心配している。現在、施設事業者がただでさえ人手不足に悩んでおり、さらには災害時に職員自らも被災者となりうる中で、万が一の事態に備えていくことができるのか。
能登半島地震では、想定を超える規模の地震が発生し、被災地では停電が続いた施設もあり、施設運営が困難となった事例もあると聞いている。
事業を継続するためのリソースは、人員や設備のほか、食料、水やガスなどのライフラインが挙げられるが、その中でも近年重要性を増しているのが電気であり、さまざまな業務でIT化が進んでいるのも大きな理由だと考えられる。
例えば、全ての施設にあるわけではないが、生命に関わる医療機器は停止させるわけにはいかないし、極暑や極寒の中で災害が起こった場合、利用者の健康を守り、感染症を防止するためには空調などの機能維持が必要である。また、ICT化が進む中で、利用者の情報などを管理しているシステムを起動させ続ける必要があり、避難する場合の照明や、外部とコミュニケーションをとれる通信手段を維持するためにも電源が必要である。このように、電気がなければどうしようもないため、依存度が非常に高い状況である。
2019年に、千葉県君津市で台風被害を受けた特別養護老人ホームが数日間停電して空調が使えなくなり、入居者の高齢女性が熱中症で死亡する事案が発生したことも記憶に新しい。
個人がスマートフォンのバッテリーや充電ケーブルを常に持ち歩くように、施設も災害時に機能維持を図り、利用者、職員の安全確保につなげるためには、それぞれの状況にあわせて、停電が起こった時に備えとなる非常用電源を設置すべきである。
この非常用電源には、さまざまな選択肢があり、大きな施設では、自家発電装置・大型の発電機や据え置き型の蓄電池を設置しているケースもあるが、普及には高い壁があり、代替手段として、ポータブル電源や電気自動車の導入などを考える事業者も増えてきているのではないか。
そのような中、東京都では、今年度から社会福祉施設への非常用電源等整備促進事業補助金の仕組みが新設された。これは都内全ての社会福祉施設などを対象に緊急災害時用の非常用電源の整備費を補助するもので、能登半島地震の被害状況などを踏まえ、激甚化する災害への備えを強化するとされており、保育所や介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所などの1,120施設が対象となっている。非常用電源は500万円未満、可搬型電源などは40万円から130万円を補助基準額として整備費の4分の3を補助するとされている。また、実績報告時までにBCP策定が要件となっている。
現状において、高齢者や障害者を対象とする社会福祉施設が自家発電設備を設置する際に、どのような補助メニューがあるのか。それぞれの対象と条件、負担割合、これまでの実績について伺う。
また、政令市・中核市を除く県内の社会福祉施設のうち、高齢者・障害者施設において、非常用自家発電設備の整備状況について、県ではどのような調査を元に状況を把握しているのか。
加えて、それぞれの種別ごとの施設数、そのうち、非常用自家発電設備がある施設数と割合、さらに発災後72時間以上の事業継続に対応できる非常用自家発電設備がある施設数と割合を、それぞれ教えてほしい。
【理事者】
はじめに、高齢者施設について、補助メニューとその回答をお答えする。
本県では、高齢者施設が非常用自家発電設備を整備する際に、国の交付金を活用した、介護施設等防災対策事業費補助金による補助を実施している。
対象は、定員30人以上の、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム、軽費老人ホームで、発災後72時間以上稼働可能で、設備の耐震性が確保され、専ら非常時に用いる非常用自家発電設備の整備で総事業費が500万円以上の事業であることが条件となっている。
負担割合については、国2分の1、県4分の1、事業者4分の1であり、対象経費の4分の3を補助している。
実績については、過去3年間で、要望のあった10施設について国との協議を行い、9施設が採択され、補助合計額は、併せて約2億5,000万円となっている。
なお、定員29人以下の特養等の小規模施設については、市町村事業であり、下限額は設定されておらず、施設種別により異なるが、例えば小規模の特別養護老人ホームは1施設あたり1,540万円を上限とする定額補助となっている。
市町村事業の実績としては、政令市・中核市を除く数になるが、過去3年間で協議をした36施設中、25施設が採択されている。
次に、非常用自家発電設備の整備状況について、厚生労働省が防災・減災、国土強靱化のための対策に関する調査を実施しており、政令市・中核市を除き、県がとりまとめを行っている。
直近では、令和4年3月末時点の状況を調査し、政令市・中核市分を除く分となるが、351施設中241施設と、約7割の施設が非常用自家発電設備を整備している。その内訳としては、定員30人以上の特別養護老人ホームは134施設中102施設、同じく定員30人以上の介護老人保健施設は81施設中52施設、介護医療院は14施設中9施設、養護老人ホームは21施設中15施設、軽費老人ホームは56施設中40施設で、定員29人以下の小規模な特別養護老人ホームは43施設中22施設、同じく定員29人以下の小規模な介護老人保健施設は2施設中1施設である。
このうち、72時間以上稼働可能な設備に限定すると、351施設中60施設で約2割となり、内訳では定員30人以上の特別養護老人ホームが27施設、介護老人保健施設は9施設、介護医療院は4施設、養護老人ホームは5施設、軽費老人ホームは11施設、定員29人以下の小規模な特別養護老人ホームは4施設となっている。
【理事者】
障害福祉分野では、国の社会福祉施設等施設整備費補助金等を活用して、障害福祉サービス等事業所に対する自家発電設備の整備を進めている。
対象は政令市・中核市を除く本県所在の障害福祉サービス等事業所であり、総事業費が500万円以上の整備であること等が条件である。また、負担割合は国2分の1、県4分の1、事業者4分の1である。過去3年間の補助実績は、令和3年度が1件1,700万円余、令和4年度が2件6,648万円余、令和5年度は該当なしである。
次に、自家発電装置について、県が整備状況を把握している調査については、先ほど高齢福祉課担当課長が答えたものと同じ厚生労働省が実施している調査である。
この調査による令和4年3月末の種別ごとの状況としては、障害者支援施設49施設のうち、自家発電装置があるのは24施設で49パーセント、72時間の事業継続が可能な設備があるのは5施設で10.2パーセントとなっている。
また、障害児入所施設3施設のうち、自家発電装置があるのは2施設で66.7パーセント、72時間の事業継続が可能な設備があるのは1施設で33.3パーセントとなっている。
【委員】
補助制度については、社会福祉施設にいわゆる災害弱者が集まる特性を踏まえ、国と自治体で非常に高い補助率、4分の3を補助しているということだが、もっと手を挙げる事業者があってもいいと感じているが、今のところ利用事業者数は低調である。
ざっくり5割から7割が何かしらの非常用自家発電設備があるということであるが、国はこの整備について、防災基本計画において、病院、要配慮者に関わる社会福祉施設等の人命に関わる重要施設の管理者は、発災後 72 時間の事業継続が可能となる非常用電源を確保するよう努めるものとする、としている。
確認だが、県として非常用発電設備の導入にあたり、何から優先して取り組んでいるのか、施設事業者に対してどのような目標を持って、取組を行っているのか。加えて、昨年11月の読売新聞で、全国の社会福祉施設のうち、水害で浸水の可能性がある場所に立つ施設の6割で、非常用発電機が水没して故障する恐れのあることが会計検査院の抽出調査でわかったという内容の報道があった。
国庫補助があった施設だけでなく、先ほど答弁のあった、これまで県内で整備された非常用発電設備のうち、この報道であったように浸水や、さらに前に調査のあった耐震上のリスクがある施設は存在するのか。あわせて、指導や対策は行われているのか伺う。
【理事者】
はじめに、高齢者施設に関する県の取組であるが、国の防災基本計画では、発災後72時間の事業継続が可能となる非常用電源を確保するよう努めるものとされていること、高齢者の入所施設は、災害時には、介護が必要な人の福祉避難所としての役割を担うことも想定されることから、県としては、まずは、高齢者施設が災害等による停電時に施設機能を維持するための電力を72時間自力で確保できるよう、支援していきたい。
このため、介護施設等防災対策事業費補助金を1件でも多くの施設に活用してもらえるよう、様々な機会を捉えて、引き続き当該補助金を周知していく。
次に、浸水や耐震性のリスクについて回答する。
非常用自家発電設備を整備した高齢者施設における浸水や耐震上のリスクの有無についての把握は行っていないが、実際の災害時に活用できることが重要と認識しており、県としても、施設長会議の場などの機会を捉えて、事業者に対し浸水や耐震上のリスクへの対応を促していく。
【理事者】
障害福祉分野についても、高齢福祉分野と同様に、防災基本計画を踏まえ、72時間の事業継続が可能な設備の整備を進めていきたいと考えている。
事業者に対しては、毎年度の国庫補助協議にあたり、市町村を通じて補助制度の周知を行っており、引き続き様々な機会を捉えて周知に努めていきたい。
浸水や耐震上のリスクについては、障害福祉分野においても、県で直接は把握していないが、そうした報道等を踏まえ、補助事業の採択にあたり、今年度から浸水や耐震上のリスクの有無や、その対策についても確認する。
【委員】
市町村からの情報を集約して、県としてもリスクの有無の把握と、リスクある施設に対しての具体的な指導が行えるように対応を求めたい。県としての優先順位は分かったが、施設のうちまだ3割以上は自家用発電設備等を設置していないということで、BCPがどのようになっているか不明だが、いつ起こるか分からない災害に対して各施設で対策のスピードを上げるためには、導入が進まない理由を県として研究する必要があるのではないか。導入が難しいとしたら、特定の機器や通信などを一時的にも起動させるための非常用電源を施設が保持していくことも重要ではないか。
最後の質問だが、県として各施設のBCP策定状況を確認し、特にリスクの高い、南海トラフ地震の被害が著しいと想定されている地域の施設に対し、災害時に実効性があるように指導していく考えはないか。また、非常用発電未設置の約3割の施設に対して、導入が進んでいない原因を確認し、500万円未満の非常用電源や可搬型電源の設置可能性も含めてニーズ調査を行っていく考えはないか。
【理事者】
高齢者施設におけるBCPの策定は、今年の4月から義務化されており、策定状況については、国の調査においても今後、調査対象とすることが検討されている。
BCPの策定については、各施設で、地域や施設の状況のほか、非常用自家発電設備の有無も踏まえて実効性のある計画の策定を行う必要がある。
厚生労働省においてBCP作成支援として公開しているガイドラインや研修動画について、県内の施設に対して、引き続き周知し、実効性のある計画の策定を促していく。
500万円未満の非常用自家発電設備については、市町村事業とはなるが、国の交付金を活用し、整備が可能となっている。このため、こうした交付金を活用し、さらに整備を進めてもらうよう、引き続き市町村、事業者に、周知を図り整備を促していく。
県としては、繰り返しとなるが、まずは発災後72時間以上稼働可能な設備の整備を優先する考えであり、補助制度の拡充やニーズ調査については、施設における今後の整備の状況や、他県の状況の推移を注視していきたい。
【理事者】
BCPについては、県内各施設に引き続き周知し、実効性のある計画の策定を促す。
500万円未満の非常用自家発電設備の整備については、国庫補助制度の有効活用や財源の確保といった問題、また県が72時間業務継続可能な電源の確保を優先して進めているということもあり、現時点では県単独での助成等は検討していないが、高齢福祉分野では市町村事業として別に制度があることなども踏まえ、国に対して補助下限額の引き下げ等を働きかけることを、ニーズ調査も含めて検討する。
【委員】
積極的に情報把握に努めてもらい、特に、南海トラフ地震の被害が想定されるような地域においては、様々な働きかけをお願いしていきたい。
【委員】
マイナ保険証の利用促進について、令和6年4月末日時点で全国のマイナンバーカードの保有率は、全国73.7パーセントであり、本県は全国47都道府県のうち32位、73.8パーセントであり、コンマ1ポイント上回っていることを前提に質問する。
今年の12月2日より、現行の保険証の新規発行が停止され、マイナ保険証の利用を促すため仕組みが移行されるが、様々な措置を取る必要がある。しかしながら、令和6年4月の医療機関及び薬局におけるマイナ保険証の利用実績は、残念ながら全国で5.56パーセント、愛知県ではそれを下回る4.81パーセントという実績であった。
国は、マイナ保険証利用を、患者、医療機関、保険者の協力のもと進めていくことが重要であるとし、各都道府県に対して、保険者協議会等の場を活用して、医療機関、保険者による積極的な取組をしてほしいという依頼を発出している。
このことを踏まえて、本県においては、今年3月に保険者協議会で関係者に関連する取組を促したと聞いているが、まず1点目に、マイナ保険証の利用促進について、県はどのような認識を持っているのか伺う。
【理事者】
医療DXの要であるマイナ保険証について、その利用促進を図ることは、地域の医療機関同士の情報連携を進めるなど、質の高い効率的な医療の提供につながるものと考えられる。このため、医療費の適正化などの取組を行う都道府県にとって重要な課題として捉えている。保険者や医療関係者などに対して、マイナ保険証の利用促進の積極的な取組を促していく。
【委員】
3月の保険者協議会について、どのような状況だったか伺う。
【理事者】
まず、保険者協議会は、市町村国保や健保組合をはじめとした保険者や公益社団法人愛知県医師会等の医療関係者などに参加してもらい、医療費適正化や健康増進に関する情報の共有や取組の推進などを協議するものである。
3月18日の協議会において、本県は構成員に対し、国の資料に基づきマイナ保険証の利用促進に関する周知、広報物の紹介、窓口案内の対応及び必要経費の助成制度等を説明するとともに、積極的な取組を要請したところである。
協議会では、マイナンバーカードの携帯率の低さや、高齢者のマイナ保険証に対する認知の低さに関して意見をもらい、マイナ保険証の利用に係る声がけの重要性について認識を共有したところである。
【委員】
今後のマイナ保険証の利用促進について、県はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
最新のマイナ保険証の利用実績を把握の上、国の動向を踏まえつつ、保険者協議会を開催し、保険者や医療関係者などと連携して取組を進めていく。
さらに、市町村国保における協議の場や、医療関係者との連絡調整の場も活用し、できる限り多くの機会において、マイナ保険証の利用促進を働きかけていく。
【委員】
病院に行った時を想定してほしいが、受付で、診察券と、国民健康保険証または保険者が発行している保険証の原本の提出を求められる。月に1回の確認もある。それにも関わらず、利用実績が4.8パーセントということは、ほとんど使っていないのと同じである。それにも関わらず、受付の近くには認証機があり、カードリーダーが置いてあるという状況ではないか。特に、混雑が予想される歯科、耳鼻咽喉科のような、多くの患者が入り口で受付を待っているような状況においては、ほとんどの人がマイナンバーカードを使って、かざすことをしていないのではないか。
先般、河野太郎大臣のところへ本県のDX推進について陳情をしたが、河野太郎大臣からも、マイナ保険証の推進を本県において積極的にやってほしいと強く要請された。
国においては、3つの推進の方向性が提示された。一つ目が、補助金の額を20万から40万に倍にすること。二つ目が、高齢者が顔認証アプリの操作に戸惑わないよう改良すること、三つ目が、デジタル庁の人員を1,000人から1,500人に1.5倍にすることである。
従って、委員においては、それらを踏まえて各市町村に要望をしてほしい。先ほど協議会があると言ったが、自由民主党に対して三師会からよく要望をもらう。逆に、我々からも三師会に対して、市町村の窓口担当者と緊密な会議を開催してもらい、フェイス・トゥ・フェイスでマイナ保険証の利用率を10パーセント、20パーセント、30パーセントに上げる努力をしてもらいたい。
先般、愛知県行政書士会が大村秀章知事を訪問し、マイナ保険証の申請が困難な人に対する国の補助金をいかに有効に活用するかという議論がなされ、7月22日に知事公館において連携協定を締結することになっている。議会としても、しっかりとフォローする体制づくりが必要である。
私はマイナンバーカードを財布の中に入れ、携行しているが、高齢者は大事なものだということで家に置いている。今後、マイナンバーカードに色々な機能が入っていくと、12月2日に切り替えたときに問題が顕在化するのではないかと危惧している。
河野太郎大臣からは、市町村に対しては、直接質問を受けることもやぶさかではなく、常にオンラインで質問を受ける仕組みを作っているとのことである。これはDX推進室にも確認をした。普及促進についてはDX推進室がしっかり取り組むと思うが、既に4人に3人が持っているマイナンバーカードについて、マイナ保険証としてどれだけ登録しているかはデータがないとのことである。ただ、今回マイナポイントで登録した人が多いことを踏まえると、私の経験則上、少なくとも50パーセントから60パーセントは登録があるのではないかと推測される。なぜなら、専門の窓口担当者が区役所に来て、入力を教えているところを確認したため、おそらく半分以上の人は保険証をマイナンバーカードに入れていると思う。
したがって、4.8パーセントという全国を下回る利用率ではなく、三師会に粘り強く、熱心に伝えることにより、利用率や、入り口に認証の機械を置いてもらい、まずはマイナ保険証を置いてもらうよう、受付のフローから変えてもらうような働きかけをお願いしてほしい。そうすることによって、4.8パーセントが10パーセントになり、20パーセントになっていく。
政府に何かお願いすべきことがあれば、当然、我々も議会として三師会と一緒にお願いをするし、直接陳情するなどのバックアップをするため、現状を改善してほしい。12月以降、混乱して窓口が停滞することがないようにしてほしいが、局長はどのように考えているか。
【理事者】
指摘の点を踏まえて、しっかりと推進していきたい。
【委員】
放課後児童クラブについて、いくつか質問させていただく。なお、名古屋市では留守家庭児童育成会と呼んでおり、あるいは、一般的には学童保育と呼ばれている。
放課後児童クラブは、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が働きに出なければならないなどの理由で昼間自宅にいない場合、小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して、適切な遊びや生活の場を与えて、児童の健全な育成を図るものである。
私の地元の守山区にも、19か所の放課後児童クラブがある。放課後の児童の遊びの場として、また生活の場として、児童の安全を確保しつつ、低学年から高学年が交流しながら自主性を育む場として、重要な役割を担っている。なお、夏休みなどの長い休みの期間中は朝から開所している。
放課後児童クラブで宿題に取り組んだり、遊んだり、また、放課後児童クラブの行事に参加したり、児童が成長する様子を放課後児童支援員等が見守り、その成長過程を保護者へ伝えることで、保護者は子どもの成長を知ることができ、また安心して仕事に出かけることができる。放課後児童クラブは働く親にとって、また、子どもの居場所として安心できる重要な場所である。
共働きの世帯の増加等に伴い、放課後児童クラブの必要性は益々高まるものと思われるが、県内のか所数と利用児童数はどのような状況か、過去3年間の推移について伺う。
【理事者】
まず、放課後児童クラブのか所数、いわゆる教室の数の推移について、2021年度は1,634か所、2022年度は1,660か所、2023年度は1,700か所であり、3年間で66か所増加している。
次に、利用児童数の推移について、2021年度は60,660人、2022年度は60,999人、2023年度は63,988人であり、3年間で3,328人増加している。
【委員】
昨年度と比較すると、3年前はまさに新型コロナウイルス感染症の影響により、社会活動が停滞していた時期であり、雇用調整等が行われ、仕事ができない人も多くいたと思われる。昨年度は新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、社会活動が徐々に正常化してきた頃であり、職場への復帰とともに、放課後児童クラブのニーズが高まったことがわかった。
次に、放課後児童クラブの利用を希望しているものの、定員等の理由から利用できなかった児童の数、いわゆる待機児童の数について、過去3年間の推移はどのようか。
【理事者】
待機児童数の過去3年間の推移であるが、2021年度は430人、2022年度は465人、2023年度は570人であり、3年間で140人増加している。
【委員】
特に一昨年度から昨年度にかけての児童の利用者数の増加に伴って、待機児童も増えている状況がわかった。また、利用者数が過去3年間で3,328人増えているものの、待機児童数は140人の増加であることから、市町村においても待機児童の解消に向けて努力をしていることがわかった。
最後に、待機児童の解消に向けた県の取組について伺う。
【理事者】
待機児童の解消のためには、施設を増やすことと、放課後児童支援員を確保することが重要である。
まず、施設整備については、待機児童が生じている市町村に、待機児童が発生している事情について聴き取りを行い、国の補助制度を活用し、専用施設の設置や学校の余裕教室等を改修してクラブの設置を進めるよう働きかけている。なお、今年度に整備を予定している放課後児童クラブの数は12市町46か所であり、整備に係る県の補助金の予算額は1億2,314万6千円である。
次に、放課後児童支援員の確保については、認定資格研修を計画的に実施し、放課後児童支援員の資格の取得を促進するとともに、資格取得後もさらなる専門的知識や技術を習得するためのキャリアップ研修を実施し、放課後児童支援員の定着を図っている。
【委員】
県の取組として、実施主体である市町村の状況を踏まえ、施設整備への財政的な支援と、放課後児童支援員の確保のため、各種研修を実施していることが理解できた。そこで要望だが、少子化が進行し、生まれてくる子どもが少なくなる世の中であっても、共働きなどによる放課後児童クラブへのニーズは高まっていることから、今後も市町村の状況を踏まえながら、財政面と人材確保の両面から継続した支援を行い、引き続き待機児童の解消に努めてほしい。
守山区では、守山区公職者会と、放課後児童クラブの守山区の連絡協議会と懇談会を定期的に開催している。公職者会は、名古屋市議会議員が5人、愛知県県議会議員が2人の計7人の構成である。放課後児童クラブからは、名古屋市長へ要望を提出しているが、その要望内容を見ていると、愛知県としてももっと関わりを持てることがないかと感じる。実施主体はあくまで市町村であるが、県として何か踏み込んで、放課後児童クラブに対して支援できるものはないかを考えてもらうことを要望する。
【委員】
私からは女性特有のがんに関して、その検診の受診勧奨について、加えて、そのうち子宮頸がんに関して、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨について、二つのテーマについて伺う。
まず、女性特有のがんであるが、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、子宮肉腫がある。このうち最も罹患率が高いのは乳がんで、次いで子宮体がん、卵巣がん、子宮頸がんの順である。一般的に、がんは高齢になるほど発症リスクが高まる一方、乳がんや子宮頸がんなどは、近年、20代から発症するケースも多く、女性特有のがんの発症はいわば若年化している傾向にある。
こうしたことから、早期発見と早期治療が肝心であり、そのためには定期的ながん検診を受けることが重要である。例えば、女性のがん死亡数が多い乳がんでも、検診で早期に発見して治療を開始することで治る可能性も高くなり、また、再発、転移、死亡の割合も低下させることができる。早期の子宮頸がんでは、100パーセントの治癒、子宮体がんも80パーセントの確率で治癒が期待できるとも言われている。
そこで、国は早期発見により早期治療を図る二次予防としての検診の重要性を広く指摘しており、科学的根拠に基づき推奨されているがん検診が市町村を主体で実施されている。
そこで、女性特有のがんである乳がん、そして、子宮頸がんについて、検診の受診勧奨をどのように実施しているのか伺う。
【理事者】
がん検診については、実施主体である市町村において、ケーブルテレビ局によるラジオ放送や、巡回バスのデジタルサイネージを活用した広報など、様々な受診勧奨の取組がされている。県においては、県ホームページで周知を図るとともに、リーフレット、チラシ、啓発資材を企業、健康保険組合、医療機関などに提供し、受診勧奨に役立ててもらえるよう取り組んでいる。
また、特に、子宮頸がんについては、20代、30代の女性に増加していることから、若い人に子宮頸がんに関する正しい知識を持ってもらうため、2014年度から大学と連携して子宮頸がん大学連携セミナーを開催している。今年度は、愛知県立大学、県立芸術大学及び愛知教育大学での開催を予定しており、引き続き啓発に努めていく。
【委員】
受診の利便性向上はどのように図っているのか。
【理事者】
受診の利便性向上については、実施主体である市町村において様々な取組がされている。具体的には、対象者へ個別に無料クーポンを郵送する、申込みをLINEでできるようにするなどの工夫が図られている。
県としては、市町村の取組について会議等で情報共有を行うとともに、女性が受診しやすい環境づくりとして、がん検診医療機関における女性医師の配置状況などの情報をホームページに掲載するなど、利便性向上が図られるよう努めている。
【委員】
国の指針によれば、乳がん検診の対象者は40歳以上の女性、子宮頸がん検診の対象者は20歳以上の女性となっているが、乳がん検診の40歳代、並びに、子宮頸がん検診の20歳代の受診率はどのようになっているのか。
【理事者】
国民生活基礎調査によると、2022年の本県における40歳代の乳がん検診受診率は51.5パーセント、20歳代の子宮頸がん検診受診率は27.2パーセントである。
【委員】
乳がんの受診率のほうが高いが、それでもまだ約半分の人が対象者として受診していないため、子宮頸がんと併せての検診受診の推進策をしっかり検討してほしい。特に、子宮頸がんの罹患は20歳代で上昇するため、この年齢層での検診受診率の向上は極めて重要である。
一方、子宮頸がんの受診率について、20歳から24歳までが最も低いため、がん検診の必要性について、20歳近辺の人の理解が十分深まっていないというおそれがある。また、学生など、居住地と住民票が異なる場合に、例えば市町村が送ったクーポンが手元に届いていないなど、様々な可能性が考えられる。
厚生労働省が発表している全国の事例では、クーポンやはがきで案内するより、直接電話したほうが当然受診率は上がり、もう1回かけると、さらに上がるということである。県内では、名古屋市のみが電話での個別通知を実施しているが、効果が明らかであるため、ぜひ市町村にこのような好例を知らせ、取り組んでいくよう働きかけてほしい。
特に、子宮頸がんは無症状だそうで、検診以外に発見するきっかけはないため、総じて積極的に検診の受診勧奨に努めてほしい。
続いて、HPVワクチン接種であるが、子宮頸がんはワクチン接種によって予防することができる。日本では現在HPVワクチンが承認されており、定期接種の対象者は小学校6年生から高校1年生、すなわち12歳から16歳までとされている。
そこで、HPVワクチンの接種効果について伺う。
【理事者】
子宮頸がんの発生には、HPV、ヒトパピローマウイルスが関わっており、HPVが長期にわたり感染することでがんになると考えられている。なお、HPVは、主に性交渉を介して感染する。
現在、公費で接種を受けられるHPVワクチンは2価ワクチンのサーバリックス、4価ワクチンのガーダシル、9価ワクチンのシルガード9の3種類がある。2価ワクチン及び4価ワクチンは、HPVの中でも子宮頸がんを起こしやすい種類、型であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができるため、子宮頸がんの原因の50パーセントから70パーセントを防ぐ。さらに、2023年4月から公費接種の対象に追加された9価ワクチンは、HPV16型と18型に加え、ほかの5種類のHPV型の感染も防ぐため、子宮頸がんの原因の80パーセントから90パーセントを防ぐ。
【委員】
HPVワクチンであるが、2013年4月に定期接種化されたものの、接種後の多様な症状の訴えが相次いだことにより、同年6月に接種の積極的な勧奨は一時中断された。この多様な症状というのは、HPVワクチン接種後、広い範囲に広がる痛みや手足の動きにくさや、不随意運動と言うそうだが、動かそうと思っていないのに体の一部が勝手に動いてしまうことを指す。
専門家会議では、定期接種を中止するほどのリスクが高いとは評価できないとされたものの、接種後に生じ得る多様な症状について、十分な情報提供ができないことから一時中断されたそうである。その後、また専門家会議において、この多様な症状とワクチン接種の関連性が明らかになっていないこと、つまり、安全性について特段の懸念が認められないとされたことや、海外でHPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果が明らかに示されていることなどから、国は2022年4月から積極勧奨を再開した。積極勧奨が中断されていた9年間に、接種機会を逃した1997年度から2007年度生まれの女性に対しても、来年3月までを期限に無料で接種できる体制を整備している。
そこで、HPVワクチンのいわゆるキャッチアップ接種の接種率について伺う。
【理事者】
先月5月22日に開催された厚生科学審議会の部会の資料において、2022年度に実施されたキャッチアップ接種に係る初回接種の都道府県別接種率が示されており、それによると全国平均は6.1パーセント、本県は5.9パーセントである。
【委員】
全国平均も低いが、本県も低い。HPVワクチンは、6か月の間に2回から3回接種をする必要があることから、積極勧奨が中断されていた機会に接種機会を逃した女性に対するキャッチアップ接種は、無料で接種する場合、初回の接種を今年9月までに受けなければいけない。また、定期接種の最終学年である高校1年生が無料で接種するためにも、同じく半年かかるため、今年9月までに初回接種を受けなければならない。
そこで、HPVワクチンの接種勧奨をどのように実施しているのか伺う。
【理事者】
県としては、予防接種の実施主体である市町村に対し、キャッチアップ接種に係る対象者への再周知や広報を依頼するとともに、公益社団法人愛知県医師会をはじめとする医療関係者等と協力して、接種率の向上及びキャッチアップ接種期間が終了する今年度末までに対象者が3回の接種を完了できるよう、今年度上半期に重点的に普及啓発に取り組むこととしている。
その一環として、県が主体となり、公益社団法人愛知県医師会と共催で、今月30日日曜日に愛知県HPVワクチン普及啓発シンポジウムを開催することとしている。このシンポジウムでは、専門家による基調講演や、俳優で現在自らがんと闘いながら情報発信などの活動を続けている古村比呂氏からのメッセージ動画の上映、さらには、医療関係者や子宮頸がん経験者、接種対象世代のSKE48のメンバーに参加してもらい、パネルディスカッションを行うことにより、HPVワクチンについて理解を深めてもらう機会としたい。
なお、このほか公益社団法人愛知県医師会では、今月から日没後に中部電力MIRAI TOWERにて接種を呼びかけるメッセージを放映しており、また、7月からは地下鉄や名鉄の車両の窓にステッカーを掲示し、啓発を行うと聞いている。
引き続き、様々な啓発を行うことでHPVワクチンへの理解を深め、接種率の向上を図るとともに、子宮頸がん予防に取り組んでいく。
【委員】
女性の健康教育と婦人科系疾患の予防啓発活動を行っている一般社団法人があり、その団体が毎年実施している子宮頸がんとHPVワクチンに関する意識実態調査2024の結果によると、HPVワクチン接種の積極的勧奨再開を受けてもなお接種を希望しない、迷っている人が3割以上おり、その理由として副反応を心配する声、あるいは、信頼できる情報がないといった声が目立っている。また、自治体が実施するHPVワクチンの啓発活動を8割以上の人が知らないとも答えている。
この実態調査の結果にもあるとおり、積極的勧奨を中断していた期間があるため、不安だと言う人が相当程度いると思うが、その後、安全性が確認されたことを含めて、HPVワクチン接種の正しい理解を深めてもらい、その上で検討、判断してもらうことが何より重要である。
子宮頸がんは、25歳から40歳までの女性がん死亡数2位であり、この年齢層だと子供を残して亡くなるケースが多く、マザーキラーとも呼ばれているそうである。子宮頸がんの重篤性をしっかり知ってもらい、加えて、先ほどのHPVワクチンの有用性と安全性について、また、その根拠、更には、最も不安と言われている副反応の症例や、対処方法などについて十分な情報提供をお願いしたい。
公益社団法人愛知県医師会では、臨床医師がそういったことも細かく丁寧に、個別の質問にも応じながら説明をしており、また、県主催のシンポジウムでも、パネルディスカッションでは疼痛医学の専門医師がパネラーとなり、副反応がこのワクチン接種にのみ由来するものなのかということも説明してもらえると思う。ぜひ正しく丁寧な情報提供をしてもらい、対象者が検討、判断できるよう努めてほしい。
【委員】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)増殖を抑制する薬が全国発明表彰を受けたという今月4日の報道から、エイズについて質問する。
部局からヒアリングをし、新聞記事を調べたところ、愛知県内の新規のエイズ患者とHIV感染者は、1988年以降最多であった2011年の138人をピークに減少傾向であり、2023年は85人である。ただ、全国では2番目に多く、20歳から40歳代が感染者の半数以上を占めるというのが最近の傾向である。
今月は、厚生労働省が定めるHIV検査普及週間であったことから、県が実施したHIV無料即日検査内容と件数の傾向はどのようであったか。また、検査を行うに当たり、県はどのような啓発活動を行ったか。
【理事者】
毎年6月1日から6月7日までは、国が定めるHIV検査普及週間となっており、本県ではこの週間の行事として、休日HIV即日検査を実施した。HIV即日検査とは、県管轄の全11保健所のうち、清須、半田、衣浦東部、豊川の4保健所で平日に週1回実施している検査であり、HIVに感染しているか不安に思う人が、HIV感染の有無を無料かつ匿名で受けることができる。
まず、スクリーニング検査を行い、結果が陰性の場合は採血した当日に結果が確定する。スクリーニング検査で陰性と判断できない場合、次に確認検査を行うため、最終結果の確定まで7日間から10日間必要である。
HIV検査普及週間には、検査を実施している4保健所において、6月1日土曜日に休日HIV即日検査を実施し、即日検査を実施していない県保健所の7か所も、平日に週1回HIV検査を受け付けている。
また、通常、保健所では希望者に梅毒の検査も同時に実施しているが、休日HIV即日検査ではHIVの検査のみを実施している。
本年度の普及週間におけるHIV検査の実績は34件で、陽性者はいなかった。ちなみに、昨年度は54件で、陽性者はいなかった。
2020年度から2022年度までは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、普及週間における休日HIV即日検査を実施していない。
また、HIV検査普及週間における休日HIV即日検査の実施に当たっては、5月21日に記者発表をし、ホームページにも掲載して周知を図った。
【委員】
ほかの感染症との同時検査について、来年度以降、平日だけでなく休日にも実施することを検討してほしい。その場合は、記者発表の際にその点を強調してほしい。
次に、県では、エイズ対策事業においてどのような施策の目標を立てて実施しているのか。
【理事者】
2020年3月の国の通知において、エイズ予防指針に基づき、施策の目標等は地域の実情及び施策の性質等を踏まえつつ、全ての自治体で施策目標を設定するよう求められており、2021年度に初めて本県におけるエイズ対策の施策目標を設定した。
目標の設定期間は、2026年度までの5か年計画で、この計画に基づき普及啓発や医療体制の整備を行っている。最終目標としては、新規エイズ患者の低減を掲げており、具体的には、本県における2021年のエイズ患者報告数30人を、2026年末に約25パーセント減少させ、23人以下とすることを目標としている。なお、2023年の報告数は27人である。
また、最終目標を達成するための基礎目標を二つ設定しており、一つ目は、エイズを発症した状態でHIVの感染が判明する事例、いわゆるいきなりエイズについて、2021年の新規報告数に占める割合34.1パーセントを、2026年末に計画策定時の全国平均である29パーセント以下にすることとしており、2023年の割合は31.8パーセントである。
二つ目は、HIV検査実績を、2026年末に、コロナ前の過去5年間の平均実績である1万1,000件以上にすることとしており、2023年の実績は9,923件である。
【委員】
この質問をするに当たり、国際連合の合同エイズ計画を調べたところ、国際連合は厳しい立派な目標を立てており、2030年までにHIVの流行を終結させるとしている。それに併せて、来年までに対策の方向性を示す中間目標として、これが本県よりもっと厳しいが、95、95、95と3つの95が並んでいる。満点が100だと思うが、エイズを知ることに対して95パーセント、治療を受けることに対して95パーセント、そして、抑制することに対して95パーセントである。本県の取組が、国連の計画を満たしていないため、検査を受ける人がさらに増えるよう取り組んでほしい。ほかの感染症との同時検査についても、新聞記事によると最近は梅毒の感染が増えているが、10代の妊婦200人に1人が梅毒に感染していたということが産婦人科医会の調査で発表されており、国立感染症研究所でも、梅毒の感染について、12年前の12倍という過去最多の速報値が発表されているため、ぜひとも検査に対する啓発活動をしっかりと進めてほしい。
HIV感染について、医療の進歩により、早期に発見し、適切な治療を受ければ健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができるが、今後、愛知県内のHIV感染者とエイズ患者にはどのような課題、問題があるのか。
【理事者】
近年のエイズ治療薬の進歩により、早期に治療を開始した感染者は健康な人とほとんど変わらない生活が送れるようになっていることから、早期にHIV感染が発見されることが重要である。しかし、約3割の人がエイズを発症しており、発症する前に感染を発見し、治療につなげるため、引き続き検査体制を確保し、受検について周知を続けていく。
感染者の予後が改善されたことで、高齢化に伴うがんや、生活習慣病等を抱えるHIV感染者も増えており、今後もますます増加することが見込まれる。HIV感染者が安心して治療を継続しながら生活を送ることができるようにするため、治療拠点病院等と連携し、医療体制の充実を図るとともに、関係機関と連携し、適切な治療を受ければ健康な人とほとんど変わらない生活が送れるという正しい知識の普及啓発を続けていく。
【委員】
重症心身障害児者の施設、以下、重心施設と言うが、にじいろのいえの経営について伺う。
一昨年の12月に、知多半島地域初の重心施設にじいろのいえが東海市名和町の緑陽公園の一角にオープンした。この施設は、県内9か所目の民間法人による重心施設として、障害者福祉減税基金を活用して整備されたものだが、64床の入所施設と医療的ケア児の支援センターを併設するものである。地元の障害者団体の要請に応え、当初からこの施設の誘致にも関わってきたが、東海市に誘致できたことを大変感謝している。
ところが、最近、このにじいろのいえの入所者が思ったように増えておらず、運営は大丈夫かという声を耳にした。
そこで、にじいろのいえの入所状況について、ほかの重心施設との比較も交えて伺う。
【理事者】
にじいろのいえの入所状況であるが、2024年6月の現在で定員48人のところ、入所者25名、入所率52.1パーセントという状況である。
同じ時点の県立の重心施設3施設と、また、にじいろのいえと同じく県の障害者福祉減税基金を活用して整備した2施設、計5施設の状況として、4施設については入所率9割以上、残る1施設については入所率8割程度である。
そのため、にじいろのいえの入所状況としては、開所から1年半ではあるが、他の施設と比較して低い状況である。
【委員】
障害者福祉減税基金を活用した五つの施設のうち、四つの施設が9割以上の入所率、また、もう一つが8割以上の入所率であり、にじいろのいえの入所率が52.1パーセントということは、約半分しか稼働しておらず、よくない状況である。
にじいろのいえの入所率が低い状況について、県はどのように考えているのか。また、その原因は把握しているのか。
【理事者】
重心施設については、入所者にとっては生涯の生活の場ともなり得る施設であり、長期にわたって安定的に運営してもらうことが必要であると考えている。そのため、一定の入所率を確保してもらう必要があるため、にじいろのいえの現状については、課題があると考えている。
入所率が低い原因であるが、本来、施設の入所者として想定される重症心身障害児者については、子供、大人の別も含め、様々な状態の人がいる。しかし、にじいろのいえにおいては、重症心身障害児者の中でも、常時人工呼吸器の装着が必要であるなど、重度の医療的なケアを必要とする子供を中心に入所させたいという法人の方針であるため、その結果として、利用希望者との間にミスマッチが起きているのが原因ではないかと考えている。
【委員】
法人の想いや目的はあると思うが、やはり施設経営が成り立ってこそであり、まずは法人として安定経営を行うことに努めていかなければならない。
県としては、建設資金の一部として障害者福祉減税基金を提供しており、法人が経営を改善し、事業継続できるように指導、監督していく必要がある。
にじいろのいえの状況改善に向けて、今後、県としてはどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
県としては、にじいろのいえについて、地域で唯一の重心施設として地域のニーズを適切に捉え、子供や大人、医療的ケアの有無といった属性にとらわれることなく、入所を必要とする人の受入れを積極的に進めてもらう必要があると考えている。
施設を運営する社会福祉法人とは、これまでにも複数回にわたって面談を行い、こうした県の考え方を伝え、指導を行ってきた。その結果、これまでは積極的に受入れをしてこなかった状態の人の入所についても徐々に始まってきた。今後も、引き続き入所の状況を注視するとともに、他の重心施設の運営状況や、また、入所者確保のための取組、こういったものを確認して紹介するなど、にじいろのいえの適切な運営の確保に向けてしっかりと取り組んでいく。
【委員】
今後とも、しっかりと施設の運営状況を注視しながら、指導、監督することを要望する。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年6月24日(月) 午後1時~
会 場 第1委員会室
出 席 者
松本まもる、宮島謙治 正副委員長
神野博史、鈴木喜博、山本浩史、中根義高、南部文宏、成田 修、
長江正成、藤原 聖、阿部洋祐、加藤貴志、柴田高伸 各委員
福祉局長、福祉部長、介護推進監、子ども家庭推進監、
保健医療局長、同技監、健康医務部長、感染症対策監、
生活衛生部長兼生活衛生課長、
病院事業庁長、病院事業次長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第107号 指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部改正について
第108号 指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部改正について
第109号 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定の要件を定める条例の一部改正について
第110号 子育て支援対策基金条例の一部改正について
第111号 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部改正について
第112号 国民健康保険事業費納付金の徴収に関する条例の一部改正について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第107号から第112号まで
○ 請 願
第 2 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮」について(医療関係)
第 4 号 「予防接種健康被害救済制度周知」について
第 5 号 「愛知県内における死亡者数激増の原因追及とワクチンとの関係調査」について
第 6 号 「『新型コロナワクチン接種後の国の健康被害救済申請及び県の副反応等見舞金の申請状況について』のマスコミ向け文書の県民への公表」について
第 7 号 「新型コロナワクチン接種記録の保存期間延長」について
第 8 号 「コロナワクチンのロット番号ごとの被害調査」について
第 9 号 「コロナワクチン接種に注意が必要な人に関する周知」について
第 10 号 「予防接種健康被害救済制度と副反応疑い報告制度との突合調査、案内」について
第 11 号 「各市町村、愛知県内の病院に正しく新型コロナワクチン副反応疑い報告が行われるように周知依頼」について
第 12 号 「新型コロナワクチン特定ロット『3005785』接種後、死亡事例や、健康被害の愛知県内の調査と被害周知」について
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第2号、第4号から第12号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 社会福祉及び社会保障制度の充実について
2 少子化対策及び超高齢社会への対応について
3 保健衛生の推進について
4 保健所及び県立病院の運営について
5 福祉局、保健医療局及び病院事業庁の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(3件 請願第9号、第11号及び第12号関係)
3 議案審査(6件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 請願審査(10件)
5 委員長報告の決定
6 一般質問
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉会中の委員会活動について
9 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
なし
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
一点目に、発達障害児童への支援について質問する。発達障害児童が増加している背景について伺うが、近年、発達障害を持つ児童が増えていると聞くが、実際はどうか。また、増えているとすれば、その背景について県はどのように考えているのか。
【理事者】
発達障害のある児童の数について、本県のデータはないが、厚生労働省が実施している令和4年度生活のしづらさなどに関する調査によると、医師から発達障害と診断された20歳未満の人の数は全国で38万人と推計されている。前回、平成28年度の調査では22万5,000人と推計されていたため、6年で約1.7倍となっている。
増加の背景として、一概には答えられないが、発達障害に関する理解が進んできていることもその一つの背景であると考えている。
2005年に施行された発達障害者支援法により、発達障害は自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などの障害であることが示された。これらの人への適切な支援の実施には、これら障害に対する正しい理解が不可欠であることから、県ではホームページの掲載など様々な機会を通じて、障害の特性や、その対応例などについて周知、啓発の取組を進めてきた。こうした取組により、発達障害への理解が進んだことが家庭や地域での生活の場面における気づきとなり、医療機関への受診、発見につながっているものと考えている。
【委員】
6年間で1.7倍ということが確認できた。
次に、医療機関での初診待機日数の改善に向けた取組について伺う。豊田市にあるこども発達センターでは、初診まで予約してから1年待ち、また、県の医療療育総合センターでも新規の予約は3か月から4か月待ちの状態と聞いている。
発達障害は、できるだけ早期に発見し、適切な支援につなげていくことが重要である。初診に長期間を有する原因は、主に専門医師の不足であると思うが、全国で同様の診療待ちが続いている状態である。改善に向けた愛知県の現在の取組について伺う。
【理事者】
発達障害に関わる専門医の不足について、発達障害の診察には児童本人の行動をつぶさに観察し、保護者からは生育歴等の聞き取りを行う必要があるなど、かなりの時間を要することに加え、一般的な診療科とは異なり医学部の学生や研修医が大学教育や臨床研修の場面で発達障害を含む障害児者医療に触れる機会が少ないということが指摘されている。
そこで県では、2011年から名古屋大学医学部に障害者医療学寄附講座を設置し、発達障害をはじめとする障害児者医療に携わる医師の養成を行っている。この寄附講座では、まず医学部4年生から6年生の学生に対して、障害児者医療学や児童青年期精神障害などの講義を行うとともに、医療療育総合センターにおける臨床実習などを行う。また、それに加えて、卒業後は名古屋大学医学部附属病院で臨床研修を行う研修医に対し、重症心身障害児や精神障害児の診療に関する講義を行っており、その結果として、2023年度までにこの寄附講座受講者の中から74名の医師に医療療育総合センターをはじめとした障害児者施設に従事してもらっている。
今後も名古屋大学の協力の下、寄附講座を活用して障害児者医療に携わる医師の養成、確保に努めていく。
【委員】
次に、発達障害児童を抱える家族への支援について伺う。先ほども述べたが、私の地元豊田市では1年待ち、医療療育総合センターでも3か月から4か月の待ちと、初診に長期間を有する現状は、子ども本人はもちろんのこと、親にとっても相当な精神的負担になっている。専門医師の確保に向けた県の取組は理解したが、発達障害児童が年々増加、また、今後はより多分野にわたって医師不足が深刻化する状況を踏まえると、現状の取組だけで初診までの期間を大幅に改善させることは難しい。
このような状況においては、初診までの期間の中で発達障害を抱えているかもしれない我が子の行動を理解し、子供と適切に向き合うことができるようになるペアレント・トレーニングなどを行っていくことが重要と考える。県の医療療育総合センターの中にある親子療育の家においては、発達障害の診断がある、また、その心配のある小学生までの子供と保護者を対象として支援プログラムを実施していると聞いているが、プログラムの概要と利用者の状況について伺う。
【理事者】
発達障害の子を持つ保護者の中には、日頃から悩みを抱え、今後の子育てに不安を感じている人がいることから、県では、医療療育総合センターにおいて、親子が一緒に学べる親子支援プログラムを実施している。このプログラムは、子どもに職員がマンツーマンで担当となり、個々に合った支援を探る個別療育、保護者に発達障害の特性や子どもへの理解を深めてもらう個別面接、同じ立場の保護者との交流を深め、日頃の悩みを話し合う「グループミーティング」の三つのカリキュラムを中心に、子どもの年齢や対象ごとに、子育てをしていく上で基本的な安心感を持ってもらい、今後の指針を得られるような内容としている。
具体的には、今年度は、幼児を対象として、時間をかけゆっくりと子育てについて考える基礎プログラム、父親を対象とした父親と一緒プログラム、年少児から年長児を対象にロールプレイなども交えて学ぶ親子ペアレントトレーニングプログラム、小学生を対象とした小学生プログラムなど、八つのプログラムの実施を予定している。
なお、センターでは、先日、今年度前期分の申込みを受け付けたところであり、応募状況については、一つのプログラムを除き定員以上の申込みがある。
【委員】
この支援プログラムは、保護者に子育てをしていく上での安心感を持ってもらい、今後の指針を得られるような内容となっており、大変有意義な取組であると感じている。特に、同じ立場の保護者との交流を深めたり、日ごろの悩みを互いに話し合ったりすることは、初診に長期間を有する現状においては、親の精神的負担を和らげる意味においても大変大きな効果がある。
今回この質問をするにあたり、様々な意見を届けてくれた、発達障害を抱える子どもを育てている豊田市在住の保護者からは、このようなプログラムは知らなかった、良い取組であるとの声をもらった。
引き続き、寄附講座等を通じた専門医師の養成により、初診や診療にかかる待機日数を改善していくこと、また、あわせて、様々な機会や機関を通じてプログラムの周知、広報をより積極的に行うこと、また、現在はプログラムに申し込んでいる人の倍率は、最大でも2倍少しであり、発達障害を抱えている子供たちの人数に対してそこまで高くないと伺っているが、より気軽にこうしたプログラムを利用してもらえるような環境整備にもあわせて取り組んでもらうことを要望する。
次に、二点目に子供医療費支給制度について伺う。子供の医療費は、医療保険制度において、小学校就学前の医療費の自己負担が3割から2割に軽減されている。これに加えて、各自治体独自の助成制度により自己負担分のさらなる軽減が行われている。本県においては、病院の通院医療費に対して小学校就学前まで助成を行っており、2割の自己負担分を無償化している。
他方、県内市町村では、高校卒業まで助成を行っている市町村が複数あり、豊田市でも本年4月から高校卒業まで所得制限なしでの無償化が実施されている。
そこで、本県内において、高校卒業まで通院医療費の無償化を含めた助成制度の拡大を行っている市町村の割合を伺う。
【理事者】
高校卒業まで通院医療費の無償化を含めた助成制度の拡大を行っている市町村は、本年4月1日現在で、県内54市町村のうち38市町村であり、割合は全体の約70パーセントとなっている。
【委員】
厚生労働省の2021年度の年齢階級別の医療費給付実態調査によれば、入院を除いた医療費は全国で合計14兆3,396億円のうち高校生世代に該当する15歳から19歳までの医療費の合計は2,097億円となっている。割合としては1.46パーセントと、全世代で最小の医療費となっている。
また、厚生労働省保険局が発表している国民医療費の年次推移における0歳から19歳までの通院医療費について、2012年は1兆2,909億円、直近の2021年度は1兆2,980億円と、この10年あまりの間で、多くの自治体が中学校、高校までと通院医療費の無償化を拡大しているにもかかわらず、子供にかかる医療費は、ほぼ横ばいとなっている。
この傾向を踏まえると、仮に通院医療費の無償化を全国一律で高校卒業まで拡大したとしても、高校生が積極的に病院に行き始めるとは考えにくく、医療費が一気に増える可能性は低いと思われる。逆に、全世代で最小となっている高校生世代が、お金がかかるという理由で通院控えをしているならば、これはこれで大きな問題だと思う。本来、県内に暮らす高校生は、どこにいても等しく通院サービスを受けられるように体制を整えていくべきである。
そこで、県内市町村間で医療費助成制度に差が生じている現状に対する本県の見解と今後の差の解消に向けた取組について伺う。
【理事者】
県内の自治体間で受けられる医療費助成に差があることは、各市町村がそれぞれの地域の実情に応じ、対象年齢の拡大等の取組を進めてきた結果であると認識している。
一方、子ども医療制度は、本県も含め全国の全ての自治体で独自の負担軽減、無償化が行われ、事実上のナショナルミニマムとして定着している現状を踏まえると、全国一律での制度創設など国において統一的な対応が図られるべきものと考えている。
このため、本県としては、これまでも国に対して全国一律での新たな支援制度の創設などについて要請を行っており、知事会、市長会、町村会の地方三団体からも同様の要請が行われている。
今後とも、様々な機会を捉え、住んでいる地域によらず、子供が必要な医療を等しい負担で受けられるよう国へ要請していきたい。
【委員】
全国一律の支援制度の創設を国に求めているとのことであったが、これは事前にこども家庭庁から私が質問して回答をもらったが、回答の内容は、国の制度として全国一律の高校卒業までの子供医療費の助成制度を創設することは、医療費の無償化による受診行動への影響なども見極める必要があるなど課題が多いものと考えていると、こども家庭庁から答弁をもらっている。私も医療費の無償化は、全国一律のユニバーサルサービスとして実施されるのが本来だと思う。
しかし、国の回答にある受診行動への影響も見極める、つまり、無償化によって医療費がかかるという理由だが、ここ何年も子供医療費の総額は変わっていないのは、先ほど示したとおりである。こうした県と国の議論の綱引きの中で各都道府県、各市町村間で差が生じてしまっているのが現状だと思う。これによって救われないのは、言うまでもなく子供たちである。
子ども医療費助成制度は、子供の健康の保持増進と子育てに要する経済負担の軽減を図ることを目的として、本県では昭和48年度から開始された事業であると承知しているが、制度開始から50年の時がたって、子育て世帯を取り巻く環境も大きく変化している。実質賃金の低下に加え、年々の社会保険料の負担増、さらには、昨今の物価高など厳しい家計状況の中、そろそろ見直しの時期に来ていると思う。現在、全国の都道府県では6県、本県内では70パーセントを超える市町村が通院にかかる医療費を高校卒業まで無償化している。病気は、早期の発見が何よりも重要であり、未来を担う子供たちが健やかに成長できるようになる、まさに大村秀章知事が掲げる日本一子育てがしやすい愛知の名にふさわしい県内全域での無償化に向けて、検討を進めることを要望する。
【委員】
まず、失語症者への支援について伺う。
失語症とは、脳梗塞などの脳への機能障害で意思伝達が不自由になる後天的な障害であり、コミュニケーションを取るために必要な聞く、話す、書く、読むなどで困難を持つ、いわゆる見えない障害と言われている。言葉の分からない外国で毎日不安を抱えながら過ごしている、これが失語症の状況と例えられることが多い。
時々、認知症と混同されるが、認知症と失語症は全く別物である。見分け方としては、失語症は、認知機能に問題はないが、言葉を使ったコミュニケーションが難しい脳の機能障害であり、認知症は、新しい物事を記憶できず、いつ、どこで、誰がといった状況把握ができなくなる認知機能障害である。例えば、朝ご飯は食べましたかという質問に対して、失語症の人は何を食べたかは把握しているものの、言葉では伝えることがうまくできない一方、認知症の人は何を食べたかが分からない状態である。ただし、実際、失語症と認知症の見分け方は簡単ではないため、医師の診断や周囲からの情報も踏まえて総合的に評価することが大切である。
そこで、本県では失語症者に対する支援として、意思疎通支援事業を実施しているが、支援内容と実績を伺う。
【理事者】
まず、支援内容について、本県では、失語症の人の自立と社会参加を図るため、意思疎通支援者を養成し派遣する事業を実施している。派遣事業では、事前に利用登録した人からの依頼により、意思疎通支援者を派遣し、公共機関の窓口での手続の補助や、病院受診の同行などコミュニケーションの支援を行っている。
次に、実績について、意思疎通支援者の派遣を開始した2020年度から昨年度までの利用件数は91件となっており、利用登録されている失語症の人は現時点で25名となっている。
【委員】
本県では、2020年度から事業を実施しているが、これまで事業を実施してきた中で、何が課題だと考えているのか。また、課題に対してどのような対策を講じているのか。
【理事者】
意思疎通支援者の派遣は、あいち障害者福祉プランに年間150件の利用の見込み量を掲げ、取組を進めているが、利用件数が見込み量を下回っていることから、さらなる周知が課題であると認識している。
事業開始以来、利用件数は年々増加をしているが、一昨年度が30件、昨年度が41件と、本県が見込んでいる年間利用見込み件数を下回っている状況である。このため、派遣事業の委託先である一般社団法人愛知県言語聴覚士会と連携を図りながら利用件数が増えるようウェブページによる事業案内などにより周知、啓発に努めている。
【委員】
障害者が社会における様々なサービスを受ける際、障害者手帳を取得していることが要件となる事例は多くある。失語症者が取得対象となる手帳は身体障害者手帳だが、その取得条件として失語症と判断されている、音声、言語、咀嚼機能の障害の交付として、3級は先の機能の喪失、4級は機能の著しい障害のどちらか。そして、本県に住んでいること、これらが要件である。しかし、実際には、手帳取得に至らないものの支援を必要としている人は多い。失語症者は、全国に50万人と推計されている中、県下での人数は、把握されていないものの一定程度の失語症に悩む人は本県にもいると聞く。そのような支援を必要としている当事者に対して、手帳取得が支援を受ける絶対要件としているのであれば、多くの人が支援の網から漏れると考えられる。
そこで、意思疎通支援事業による支援を失語症者が受けようとする際の本県の要件を伺う。
【理事者】
本県の派遣事業の対象となる人は、名古屋市を除く本県に住んでいる人で、派遣事業の利用登録をされる前に身体障害者手帳を取得している人である。身体障害者手帳の取得を要件としているのは、意思疎通支援事業が、いわゆる障害者総合支援法に基づいて実施するものであり、支援法では手帳所持者を対象とした事業であると解釈できたためである。そのため、事業を開始する際には、身体障害者手帳の取得が利用条件となることを国に確認した。
【委員】
身体障害者手帳を取得している人が対象になるとのことであるが、一方で、鳥取県では、手帳取得は要件になっておらず、医師の診断書があれば支援を受けられる制度になっている。そもそも、厚生労働省も手帳取得を失語症者がサービスを受けるための前提条件としているわけではないと、最近のヒアリングでも伺った。
また、手帳は取得できなかったが、症状がある人が日常生活で困難を抱えるケースも多くある。例えば、医療機関受診や役所での手続をはじめ、外出先でのコミュニケーションを必要とする場合での意思疎通が困難になることもあるため、外出自体を控えるようになることも考えられる。このように、支援を受けることができない人が多くいると推測されるのが現状である。困っている人が支援を受けやすいよう、手帳取得を絶対の要件とするのではなく、要件緩和を検討することを強く要望する。
次に、産後うつについて伺う。
産前産後支援は、子育て支援の重要な政策の一つである。子育て支援というと、本県の子供、子育てに関する総合的な計画である、あいちはぐみんプラン2020-2024があるが、その計画期間が本年度で満了し、次期計画を策定されるタイミングと聞く。育児というと、スタートはその前段階の妊娠期からの支援が必要になってくる。とりわけ、妊産婦は心身ともに大きな変化に対応する日々を送ることになり、喜びの一方で、不安や生活環境の変化から精神的に不安定になりやすいと言われている。その精神的不安定が産後うつ発症の要因の一つとも考えられる。
しかし、現計画では、産後うつに関しては、触れられていない。市町村では、不安を感じたり、孤立に悩んだりする妊産婦に対するメンタルヘルスケア支援として、産後ケア事業や産前産後サポート事業などを利用して取り組んでいると聞く。実際、私も他の都道府県でヒアリングを行ってきた中で、その取組事例が本県にとって参考になるのではという事例を多く見聞きしてきた。
そこで、妊産婦のメンタルヘルスケアに関する県の取組について伺う。
【理事者】
県としては、市町村が妊娠届出時の面接や、出産後間もない時期の産婦健康診査事業など様々な機会に把握した支援を必要とする人へ適切に対応できるよう、地域の実情に応じた妊娠出産に関する包括的な支援体制を整備していくことが大切であると考えている。
そこで、県保健所において、産後うつなどの事例を基に課題を整理し、必要な支援を検討する事例検討や、市町村参加医療機関、精神科医療機関などの関係者を構成員とする連携促進会議の開催により妊産婦のメンタルヘルス支援に取り組んでいる。
【委員】
子育てには、父親、母親が安心して取り組める環境づくりが必要である。その環境が子供の健やかな成長に欠かせないし、逆に不安が大きい育児環境下だと、父親、母親の精神の安定を妨げる可能性もあり、産後うつ発症リスクの懸念も大きくなる。そのような産後うつは、家族や周辺のサポート体制が不足する場合、サポート体制がしっかりとしている場合と比べて、うつ発症のリスクが約2倍に高まるという国立成育医療研究センターの調査結果や、そもそも産後うつ発症の割合や因子は男女とも変わらないと聞く。そうすると、産後うつを抱える母親と父親、両者への対応が重要になってくる。
母親への支援は、メンタルヘルスケアをはじめとして取組が進んでいるが、昨今、父親の積極的な家事、育児への関わりにより母親の精神的な安定が期待される一方、父親の産後うつが課題となっている。例えば、父親が健康を損う、仕事と家庭の両立で疲弊すると母親の家事、育児負担のさらなる増大、養育環境や夫婦関係の悪化など家庭における影響だけでなく疾病就業、欠勤の増加など、職場における悪影響にもつながる可能性も考えられる。
国立成育医療研究センターの竹原健二政策科学研究部長と意見交換をした際、父親の孤立を防ぐ対策や父親への支援も必要という理解を社会全体で深めていく必要があるというコメントがあった。
そこで、父親の産後うつに対する県の取組について伺う。
【理事者】
出産や育児をしている家庭への支援においては、母親に限らず家族全体を支援の対象として捉えていくことが大切である。そのため、産後うつへの対応を含む父親支援について学び、地域での取組を進めてもらうことを目的に、父親を取り巻く子育ての現状と父親支援についてをテーマとした母子保健指導者研修会を今年5月に開催したところである。当日は、市町村の保健福祉等の関係職員など75人が受講し、受講者からは、父親の産後うつについて理解が深まった、父親支援のヒントについて情報共有することができたなどの感想を聞いている。今後も、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援体制の充実を図るため、市町村支援に取り組んでいく。
【委員】
一方、第4期愛知県自殺対策推進計画によると、産後うつは自殺の危険因子として位置づけられている。こうした中、最新の令和5年度自殺対策白書で妊産婦の自殺の実態が初めて明らかになった。
令和4年に全国で自殺した妊産婦65人のうち、産後1年以内に自殺した人が47人となっている。第4期愛知県自殺対策推進計画では、産科医療機関における産後うつに対する対応力の向上を図ることが重要とされている。
そこで、第4期愛知県自殺対策推進計画における産後うつの人に対する県としての取組について伺う。
【理事者】
第4期愛知県自殺対策推進計画における取組としては、産科医療に従事する助産師、看護師等を対象に、産後うつに対する知識と理解を深めるとともに、支援が必要な産婦のケアを市町村と連携して実施するなど、産後うつの人への対応力の向上を図るため、産後うつ対応力向上研修を実施している。2023年度の研修会では、愛知医科大学病院の臨床心理士を講師に迎え、県内の産科医療機関に勤務する助産師や、市町村保健センターの保健師等88人が受講した。
講義では、産後うつの特徴や、支援の際の留意点のほか、父親の産後うつ症状についても触れている。また、産科医療機関と市町村の連携が深まるよう、地域別にグループワークを行う等の工夫もしている。
今年度の研修は1月に予定しているが、引き続き父親も含めた産後うつの人への対応力向上に努める。
【委員】
最後に要望する。一言に産後うつと言っても、その発症要因は様々であり、男女によっても違いがある。母子保健法に基づく産後ケア事業が全国的にまだまだ浸透していない中、こども家庭庁が23年度、産後ケアの利用料免除の対象を全産婦に広げて利用しやすいようにした。一方で、男性の育休取得が推奨され、家事、育児への積極的な参加が求められる社会環境下で、先ほど述べたように父親の産後うつも増えてきている。産後うつ予防、あるいは、なったとしても回復できるような支援は、母親、父親にも必要である。よって、そのような観点を含んだ次期はぐみんプランの策定を進めてもらうことを強く要望する。
【委員】
本年1月1日に発災した能登半島地震において、今現在、倒壊した建物の下敷きになるなどして亡くなった人や災害関連死を合わせると、死者は約280人と言われている。元日、久しぶりに会う家族や、家族と一緒に楽しい時や穏やかな時を過ごしていた人が多かったと思うが、その特別な日にこのような地震が起き、災害は待ってくれない、地震は明日起きるかもしれないという、そういった現実を私たちに改めて突きつけられたと感じている。
私の地元西尾市では、南海トラフ地震が発生した場合、最大震度7の揺れに見舞われ、長い海岸線と軟弱な地盤を抱えていることから、近年で最も深刻な被害、特に津波被害が危惧されており、具体的には約1万5,000棟の建物が全壊し、最大津波高は4.4メートル、死者数は約1,800人と想定されている。
能登半島地震の発災直後から、地元の障害を抱える人や医療的ケアが必要な人の家族などから、発災した場合とても不安だという声を多く聞いており、どうしたら様々な対策のスピードが上がっていくのか、本委員会において取り上げていきたい。
今回は、その中でも災害時に必要な情報や支援が届かない災害弱者になり得る障害を抱える人たちの情報保障の環境整備と、災害時における社会福祉施設の非常用電源の整備状況について取り上げる。
まず一点目、本年2月定例会においても、我が団の朝倉浩一議員が手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進するための取組について質問をしたところである。先日6月16日、私の地元西尾市において、愛知県聴覚障害者協会女性部が主催する討論会が開催された。私もオブザーバーとして出席させてもらったが、その際のテーマは、災害が起きたとき不安なことは何か、避難所において求めることは何かであり、県内各地から参加してもらった協会の女性役員の人たちや、主管の西尾聴覚障害者協会や、手話サークル等の人たちがグループワークで議論を行っていた。様々な意見が出ていたが、簡単にまとめると、災害時に不安なことは、例えば発災時に1人でいた場合、たまたまテレビをつけている、携帯をバイブ設定で手持ちしていない限りは、いわゆるJアラートに全く気づけないということである。特に、夜間は外の状況が全く分からず、また、旅行先や自宅外だと、なお不安であるとのことであった。そして、助けを呼ぶために笛、ホイッスルを持っていたとしても、肺活量がないということもあって音がなかなか出ない、防犯ブザーも音だけのものではなく声が出るものでないと気づいてもらえない、またペットと一緒に避難できるかということも挙げられた。
避難所で求めることに関しては、避難所での情報格差の心配、手話通訳者や支援者がいない場合孤立する不安がある、目で見て分かる情報、電光掲示板やアイ・ドラゴンでリアルタイムの情報が欲しい、コミュニケーションボードなどコミュニケーションが取れるツールが必要であること、電話リレーサービスや翻訳アプリなどがきちんと使えるかなど情報保障の環境整備を求めるものが多かった。
その中で緊急災害時、避難所等において目で聴くテレビと呼ばれている、リアルタイムで手話放送を見ることができる環境を求める声、具体的にはその専用受信機であるアイ・ドラゴンを避難所、特に福祉避難所に設置してほしいというものが、とても私の印象に残った。
このアイ・ドラゴンというのは、目で聴くテレビを受信するために開発された専用の受信機のことであり、この事業は阪神・淡路大震災においてNHK教育テレビが安否情報を流すために通常番組を中止し、その結果、聴覚障害者にとって大切な手話ニュースがなくなったということがあった。当時、生放送のニュースには字幕がなかったことから、聴覚障害者はテレビから情報を得ることが困難な状況であった。震災後に全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、民間会社が自分たちの放送局を持つためにCS障害者放送統一機構、現認定NPO法人障害者放送通信機構というものを1998年に設立し、始まったものである。
このアイ・ドラゴンには、インターネットの接続環境と、地上デジタル放送の受信環境が必要であるが、機器を設置すると、地上波と手話・字幕を合成し、テレビ放送のリアルタイム手話・字幕放送を視聴できるというものである。これまでも様々な災害時に、アイ・ドラゴンによりNHK災害放送の画面にリアルタイム手話通訳が付いた形で放映されてきた。また様々なジャンルの手話番組アーカイブが2,000本以上視聴可能となる。
設置費用は、個人が設置する場合、2003年に厚生労働省より日常生活用具に指定されているため、本体8,890円、年間受信料が税込6,600円で利用可能である。施設や団体に設置する場合、本体が税込8万8,900円、受信料が年間で税込1万3,200円となるが、現在、災害時の避難所等での聴覚障害者に対する情報保障の観点から、全国の約250か所で自治体等により設置されている。愛知県においては、聴覚障害者協会等の関連団体が市町村に積極的に要望活動を行っているほか、普及を願う関連団体、全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会が連携し、聴覚障害者災害救援中央本部として、国の機関、内閣府、法務省、厚生労働省、気象庁に関連要望書を提出しているところである。
また、避難所の情報保障としては、愛知障害フォーラムからも本年3月に県に対して提出された要望書においても具体的に要望されていると承知している。これらを踏まえて質問する。
まず前提として、本県には愛知県障害者施策審議会専門部会が設置されていると承知しているが、設置の根拠とこれまでの部会での議論の経緯、特に手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション支援に関する取組事項のうち、災害時等においての情報発信や避難所等でのコミュニケーション支援について、本県が、国の障害者アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に先んじて、2016年に制定した、手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例、また、あいち障害者福祉プラン2021-2026との関連性を含めて説明してほしい。
また、関連して障害者の要配慮者への災害時のコミュニケーションについて、行政側が作っているマニュアルではどのようになっているか、県災害対策課が作成している避難所の運営マニュアルもあるが、福祉医療委員会であるので、地域福祉課で作成している市町村のための災害時要配慮者支援体制構築マニュアルではどのように位置付けられているか説明してほしい。
【理事者】
まず、専門部会の設置根拠について答える。専門部会は、手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例、手話言語・障害者コミュニケーション条例と言うが、この条例の第8条第2項の規定に基づき、愛知県障害者施策審議会の部会として設置をしている。
次に、災害時等における情報発信や避難所等でのコミュニケーション支援に関する議論の経緯についてお答えする。手話言語・障害者コミュニケーション条例には、障害のある方が災害その他非常事態の場合に必要な情報を取得することができるよう、市町村など関係機関と連携して、災害時等における障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した連携体制の整備に努めることを規定しており、本県の条例の特徴となっている。
このため、専門部会では、災害時等における情報発信や、避難所等におけるコミュニケーション支援のあり方について、障害当事者や障害者団体の委員の皆様から意見を聞きながら議論を進めている。これまでの議論では、災害時における情報伝達を不安視する発言や、避難所における情報保障手段に関する意見をもらい、県の取組に繋げている。具体的には、避難所で円滑にコミュニケーションを図ることができるよう、文字やイラストを用いて情報の伝達や意思表示などを行うことができるコミュニケーション支援ボードの活用などのセミナーや、避難所等において活用できるコミュニケーション支援アプリの開発、市町村における災害時の情報連絡体制に関する調査などを実施している。また、あいち障害者福祉プランでは、九つの分野別の障害者施策を定めているが、その中の防災・感染症対策・防犯の推進の分野では、施策の方向性として防災対策推進を掲げ、障害のある人が、災害その他非常事態の場合に必要な情報を取得することができるよう、市町村など関係機関と連携して、災害時における障害の特性に応じたコミュニケーション手段を利用した連携体制の整備を図ることとしている。プランの計画期間中の取組としては、障害の特性に応じた連絡体制の整備状況の把握や、障害の特性に応じた避難所準備情報等の提供や、避難支援体制の整備などを掲げている。
【理事者】
二点目の市町村のための災害時要配慮者支援体制構築マニュアルについて答える。
マニュアルでは、発災時に着実に避難情報が伝達されるよう、多様な手段の活用が必要であるとして、要配慮者の特性や、情報伝達時に配慮すべき事項について示した上で、例えば、聴覚障害のある方には手話通訳のほか、情報受信装置など視覚的な情報伝達を、視覚障害のある方には点字のほか、防災行政無線など音声での情報伝達を、知的障害のある方には絵や写真の掲示など分かりやすい情報伝達を推奨している。
また、避難所生活においても同様に、要配慮者の状態に応じた伝達方法の工夫が必要であることや、「明かりがないと手話ができない」など、要配慮者本人の意見も示し、市町村に対して細やかな配慮を促している。
【委員】
先ほどのアイ・ドラゴンについて、関連団体は導入を求める根拠として、国で令和4年に障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立し、国や地方公共団体の責務、事業者の責務や国民の責務、国・地方公共団体、事業者等の相互の連携協力や、当事者等の意見の尊重も明示されていることから、アクセシビリティ保障やバリアフリー対応は、障害当事者の努力や歩み寄りではなく社会にその対応責任があることや、法の基本理念において、障害者でない者と同一情報を同一時点において取得できるようにするとあり、また法の基本的施策である防災・防犯及び緊急の通報には、障害の種類や程度に応じた迅速・確実な情報取得のための体制の整備充実、設備・機器の設置の推進と明記、また、施策の実施に必要な法制上、財政上の措置等を講じることが明記されていることから、法の理念を実現するためには、避難所等において、目で聴くテレビのリアルタイム手話放送を視聴できる環境を整えることが情報保障に繋がるのではないか、さらに、国は令和3年に災害対策基本法を改正し、避難行動要支援者に個別避難計画を作成することが市町村の努力義務とされているが、緊急災害時に福祉避難施設に避難をしても、手話通訳者の不足や音声による情報周知など、聞こえない、聞こえにくい人が孤立をしてしまうケースが大いにあること、加えて、NHKの緊急災害報道にはリアルタイム字幕が付与されているが、手話言語は付与されておらず、手話を第一言語とする人は、日本語の文字情報よりも手話言語の方がストレートに情報を得ることができることなどから、アイ・ドラゴンの設置の取組の推進を避難所等の設置者に求めているが、アイ・ドラゴンの導入において、率直に県の見解を伺う。現状は市町村が独自に公共施設等に設置するケースがあるが、当事者団体が求めるような普及には及んでいないと承知している。避難所、特に福祉避難所においてこのアイ・ドラゴンを積極的に導入すべきではないかという議論は、専門部会では出ていないのか。そして、先ほど答弁があった災害情報連絡体制の市町村調査において、アイ・ドラゴンの設置に関する調査項目があるか、また、導入している自治体の例があれば状況を教えてほしい。
【理事者】
本県では、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する取組を進めているため、情報を取得する手段の一つとして、アイ・ドラゴンが福祉避難所に整備されることは望ましいことであると認識をしている。これまでの専門部会においては、福祉避難所へのアイ・ドラゴンの設置要望を愛知県聴覚障害者協会から市町村に対して行っていることや、市町村に対する災害時情報連絡体制の調査で、アイ・ドラゴンの設置状況を聞いてほしいという意見があるが、アイ・ドラゴンを導入すべきとの意見はない。
市町村に対する調査に関しては、専門部会の委員からの意見を踏まえ、昨年度の調査において、市町村にアイ・ドラゴンの設置状況を確認しているが、アイ・ドラゴンの設置の有無を聞く形ではなく、例示としてアイ・ドラゴンを調査表に記載し、障害のある人への配慮の取組事例として任意で回答してもらう形で調査を行っている。
調査の結果、長久手市からアイ・ドラゴンを福祉避難所に設置していると回答があった。また、扶桑町では福祉避難所への設置が検討されているという回答であった。なお、これはあくまで任意回答による結果であり、他にアイ・ドラゴンを設置している市町村がないということではない。
【委員】
それぞれの自治体で優先順位をつけて対応しているということであるが、まだまだ普及していないのが現状だと思う。
この災害時の情報連絡体制の市町村調査についてもう少し伺うが、いつから、どのような内容の調査を行っているのか。そして、障害福祉課として、調査項目、配慮の有無などの傾向をどう捉えているか、集約して見えてきた課題はどのようなことなのか。また、集約したことを市町村にどのようにフィードバックをし、それがどのように市町村の取組の改善向上に繋がっているのか。
【理事者】
災害時連絡体制の市町村調査については、2021年度から実施している。調査は、本県の防災安全局災害対策課が県内市町村に調査を実施している災害情報伝達手段の整備状況の一覧を基に調査票を作成し、障害のある人への配慮の取組について確認している。具体的には、屋外スピーカーへの文字表示盤やパトライトの整備状況、防災ラジオへの文字表示盤や着信表示等の有無、メール以外の伝達サービスや自治体の防災アプリへの音声読み上げ機能などを調査項目としている。
調査の結果、障害のある人への配慮の取組が進んでいることが伺えるが、市町村間で取組内容に差が生じていることは課題であると考えている。このため、調査結果については、専門部会における意見を添えて市町村にフィードバックし、情報共有を図っている。各市町村では、他の市町村の取組を参考にして、障害のある人への配慮の取組を進めてもらえるものと認識している。
【委員】
市町村に少し差が生じているとのことである。フィードバックは障害福祉課から市町村の障害福祉担当課にしていると思うが、ぜひ防災関連の部局にも内容が伝わるようにしてほしい。また、専門部会の議論には、防災安全局の担当者も入っていると聞いているので、そちらからも市町村の防災担当に情報共有してほしい。
もう一つ関連として、コミュニケーション支援アプリについて伺う。県独自で2021年3月からアプリの運用を行っており、これは私も携帯にダウンロードしているが、非常にシンプルで分かりやすいアプリで、災害の避難所や緊急時の使用のみならず、日常の、例えばコンビニや様々な場面で、公共交通とか、そういった場面でも使える。本当に身近なことでも使えるようにすることでこのアプリの存在を忘れないし、自然に使い慣れることができる。言語もやさしい日本語、英語、ポルトガル語、中国語にも対応しており、障害のある人だけでなく、例えば外国人に対応する際にも相当使えるものだと思っている。ただ、周りでダウンロードしている人はあまり聞いたことがなく、一般的に普及しているかというと、例えばここにいる理事者の中でもどの程度の人がダウンロードしているかと思う。
そこで伺うが、このアプリはそもそも誰を対象としているのか。そして年間どれぐらいの予算で運営され、現在どの程度のダウンロード数となっているのか。また、一般のユーザーや聴覚障害者等の関係者、専門部会でどのような意見があり、どのように改修が行われているか。
【理事者】
コミュニケーション支援アプリについては、聴覚に障害のある人、知的障害や発達障害の人、高齢で聞こえづらい人など、会話によるコミュニケーションが困難で、支援が必要な人を対象としているが、当事者だけではなく、支援が必要な人に応対する人にも使っていただけるようになっている。このため、多くの人に支援アプリを活用してもらえるよう、本県のウェブページによる周知の他にチラシを作成して、県内市町村や防災関係団体、特別支援学校など、障害者関係団体以外にも配布している。予算額については、今年度は運用・保守・管理費として42万6,000円を計上している。また、ダウンロード数については、本年4月末時点で1万177回となっている。また、関係者からは、文字の大きさや色合い、イラストをシンプルにしてほしいといった意見や、外国人も利用者として想定した方がよいといった意見、場面設定など、これまでに多くの意見をもらっており、これらの意見を参考に、専門部会において、支援アプリの改修を毎年行っている。支援アプリのリリース後、ひらがな表示機能や多言語表示機能の追加、コンビニ・スーパーの表示項目の追加といった改修を行っている。今年度は交通機関の表示項目の追加を行う予定である。
なお、本県では、障害者関係団体の会合の場などへ出向いて、支援アプリの使い方などの説明を行っている。また、県政お届け講座では、手話言語と障害者コミュニケーションをテーマに、県の施策の一つとして支援アプリの紹介や操作方法の説明も行っている。説明会や講座に参加した人、実際にアプリを使っている人からは、支援アプリに関する率直な意見をもらっているため、支援アプリの改修の参考としている。
【委員】
ダウンロード数が1万177回ということである。チラシ等を関連団体に配布し、障害者団体の会合や県政お届け講座で支援アプリの説明等を行っているとのことであるが、そのダウンロード数について、当局の見解と、もう一度、どのように周知を行っていくか伺う。
【理事者】
2021年3月のリリース以来、これまでに1万を超えるアプリのダウンロードがあるため、本県としては多くの人に利用してもらっていると認識をしている。一方で、支援アプリは、コンビニやスーパーなどの日常生活においても、当事者だけではなく店員も利用できるため、今以上に多くの人に、支援アプリをダウンロードしてもらい、災害時に備えて日頃から活用してほしいと考えている。
そのためには、支援を必要としている人はもちろん、支援者、例えば、避難所では主に市町村職員になるかと思うが、そういった人たちへ広く周知することが必要である。
このため、今年度開催することとしている市町村向け避難所コミュニケーションにおいて、支援アプリを積極的に活用するよう呼びかけるなど、さらなる周知に努めていく。
また、県政お届け講座において、支援アプリの説明を行っているが、操作説明の内容を充実するとともに、現在の講座の一覧では支援アプリの説明をお届け講座で実施していることが分かりにくい表記となっているため、見直しを行い、より多くの人にお届け講座を利用してもらうことで、支援アプリのダウンロード数増加につなげていきたい。
【委員】
今年度、市町村職員向けの避難所コミュニケーションセミナーを開催するということであるが、いつごろ、誰を対象として行われるのか、また、セミナーに当事者が参加するのか。さらに内容について、アプリの説明はもちろんであるが、例えばその場でアイ・ドラゴンのような市町村が行っている有用な取組を、実際に目で見て分かる形で紹介・体験できるような仕組みをつくる考えはあるか。
また、同様に、県と市町村で実施する総合防災訓練において、このアプリの普及や、アイ・ドラゴン等の取組を紹介し、実際にそれらを活用した訓練を当事者団体等と一緒にやる考えはないか。
【理事者】
まず、セミナーの開催時期については、本年の11月頃を予定している。対象者については、県内市町村の福祉部局及び防災部局の職員としているが、障害者団体にも講師として参加してもらう予定である。セミナーの内容については、現時点では、障害者支援施設や障害者団体による講演、先進的な取組を行っている市町村や団体による事例紹介、市町村職員同士のグループワークに加えて、支援アプリの説明を行うことを考えている。このため、先進的な取組を行う市町村による事例紹介の中で、アイ・ドラゴンを設置している自治体から説明してもらうよう、今後調整を進めていく。
また、過去に開催したセミナーにおいても、防災用簡易マットや、個室のシェルター、ダンボールで出来たトイレなどを展示し、実際に見てもらう取組を行っている。今回のセミナーでも、実際にアイ・ドラゴンがどのようなものか、現物を見てもらい、市町村職員の理解を深めてもらうよう、愛知県聴覚障害者協会と調整を進めていく。
なお、総合防災訓練については、障害福祉課の職員が、愛知県聴覚障害者協会等の関係団体と参加し、従来から支援アプリのチラシを配布している。今年度の総合防災訓練にも参加する予定としているため、引き続きアプリのチラシを配布し、周知啓発に努めていく。
さらに、支援アプリやアイ・ドラゴンを活用した訓練については、今後、愛知県聴覚障害者協会と調整を図りながら、実施の可否について検討を進めていく。
【委員】
アプリについて、もっと普及しないともったいないと感じている。例えば、防災アプリを独自に作っている自治体や、公式LINE等を活用して積極的に情報発信をしている自治体がある。そのような仕組みに乗せることによって、多くの人に、このアプリをダウンロードしてもらえるよう、そして、整備を進めるだけでなく、実際に活用できるよう、防災訓練等で、例えば地域の避難訓練や避難所において運用のシミュレーションや訓練を進めてもらうように働きかけをお願いする。
また、耳が不自由な場合でも、コミュニケーション手段は本当にいろいろとあり、筆談や補聴器、人工内耳、口話など障害の程度によって様々で、それぞれ人によって違う。例えば、一昨年フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ「サイレント」が話題になった。ドラマの中で、指定難病に指定されていた若年発症型両側性感音難聴を発症した主人公の恋人が、コミュニケーションの方法として、発した言葉が自動で文字になる、UDトークというアプリを使ってコミュニケーションを取っていたことが非常に印象的であり、手話で補えないような会話を視覚的に伝えていた場面が印象的であった。このような民間が開発しているアプリなどと、県のアプリを組み合わせて使うことも例示していただけるとよい。
また、岩手県で、Jアラートの発信をトリガーにアイ・ドラゴンを導入することにより、NHK総合のチャンネルを自動で起動させるような実証実験が進んでいる。耳の不自由な人や外国人、高齢者らが、視覚による迅速な情報の伝達を行う上で、民間宿泊施設でも非常に関心を持っているため、県もぜひ情報をフォローしてほしい。
続いて、社会福祉施設の非常用電源について伺う。
2024年4月から、介護サービス事業者の事業継続計画(BCP)策定が義務づけられ、さまざまな社会福祉施設において、災害などにおいても止めることができない重要な事業に関して、利用者の安全確保も含めた自然災害等への対策が進んでいると承知している。
行政主導で業界のBCP策定が進んだことは非常に有意義なことだが、一方で、ただ作っただけのBCPなのか、それともしっかりと機能するBCPになっているのか、つまり、立てた計画が形だけのものになっていないかということを心配している。現在、施設事業者がただでさえ人手不足に悩んでおり、さらには災害時に職員自らも被災者となりうる中で、万が一の事態に備えていくことができるのか。
能登半島地震では、想定を超える規模の地震が発生し、被災地では停電が続いた施設もあり、施設運営が困難となった事例もあると聞いている。
事業を継続するためのリソースは、人員や設備のほか、食料、水やガスなどのライフラインが挙げられるが、その中でも近年重要性を増しているのが電気であり、さまざまな業務でIT化が進んでいるのも大きな理由だと考えられる。
例えば、全ての施設にあるわけではないが、生命に関わる医療機器は停止させるわけにはいかないし、極暑や極寒の中で災害が起こった場合、利用者の健康を守り、感染症を防止するためには空調などの機能維持が必要である。また、ICT化が進む中で、利用者の情報などを管理しているシステムを起動させ続ける必要があり、避難する場合の照明や、外部とコミュニケーションをとれる通信手段を維持するためにも電源が必要である。このように、電気がなければどうしようもないため、依存度が非常に高い状況である。
2019年に、千葉県君津市で台風被害を受けた特別養護老人ホームが数日間停電して空調が使えなくなり、入居者の高齢女性が熱中症で死亡する事案が発生したことも記憶に新しい。
個人がスマートフォンのバッテリーや充電ケーブルを常に持ち歩くように、施設も災害時に機能維持を図り、利用者、職員の安全確保につなげるためには、それぞれの状況にあわせて、停電が起こった時に備えとなる非常用電源を設置すべきである。
この非常用電源には、さまざまな選択肢があり、大きな施設では、自家発電装置・大型の発電機や据え置き型の蓄電池を設置しているケースもあるが、普及には高い壁があり、代替手段として、ポータブル電源や電気自動車の導入などを考える事業者も増えてきているのではないか。
そのような中、東京都では、今年度から社会福祉施設への非常用電源等整備促進事業補助金の仕組みが新設された。これは都内全ての社会福祉施設などを対象に緊急災害時用の非常用電源の整備費を補助するもので、能登半島地震の被害状況などを踏まえ、激甚化する災害への備えを強化するとされており、保育所や介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所などの1,120施設が対象となっている。非常用電源は500万円未満、可搬型電源などは40万円から130万円を補助基準額として整備費の4分の3を補助するとされている。また、実績報告時までにBCP策定が要件となっている。
現状において、高齢者や障害者を対象とする社会福祉施設が自家発電設備を設置する際に、どのような補助メニューがあるのか。それぞれの対象と条件、負担割合、これまでの実績について伺う。
また、政令市・中核市を除く県内の社会福祉施設のうち、高齢者・障害者施設において、非常用自家発電設備の整備状況について、県ではどのような調査を元に状況を把握しているのか。
加えて、それぞれの種別ごとの施設数、そのうち、非常用自家発電設備がある施設数と割合、さらに発災後72時間以上の事業継続に対応できる非常用自家発電設備がある施設数と割合を、それぞれ教えてほしい。
【理事者】
はじめに、高齢者施設について、補助メニューとその回答をお答えする。
本県では、高齢者施設が非常用自家発電設備を整備する際に、国の交付金を活用した、介護施設等防災対策事業費補助金による補助を実施している。
対象は、定員30人以上の、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、養護老人ホーム、軽費老人ホームで、発災後72時間以上稼働可能で、設備の耐震性が確保され、専ら非常時に用いる非常用自家発電設備の整備で総事業費が500万円以上の事業であることが条件となっている。
負担割合については、国2分の1、県4分の1、事業者4分の1であり、対象経費の4分の3を補助している。
実績については、過去3年間で、要望のあった10施設について国との協議を行い、9施設が採択され、補助合計額は、併せて約2億5,000万円となっている。
なお、定員29人以下の特養等の小規模施設については、市町村事業であり、下限額は設定されておらず、施設種別により異なるが、例えば小規模の特別養護老人ホームは1施設あたり1,540万円を上限とする定額補助となっている。
市町村事業の実績としては、政令市・中核市を除く数になるが、過去3年間で協議をした36施設中、25施設が採択されている。
次に、非常用自家発電設備の整備状況について、厚生労働省が防災・減災、国土強靱化のための対策に関する調査を実施しており、政令市・中核市を除き、県がとりまとめを行っている。
直近では、令和4年3月末時点の状況を調査し、政令市・中核市分を除く分となるが、351施設中241施設と、約7割の施設が非常用自家発電設備を整備している。その内訳としては、定員30人以上の特別養護老人ホームは134施設中102施設、同じく定員30人以上の介護老人保健施設は81施設中52施設、介護医療院は14施設中9施設、養護老人ホームは21施設中15施設、軽費老人ホームは56施設中40施設で、定員29人以下の小規模な特別養護老人ホームは43施設中22施設、同じく定員29人以下の小規模な介護老人保健施設は2施設中1施設である。
このうち、72時間以上稼働可能な設備に限定すると、351施設中60施設で約2割となり、内訳では定員30人以上の特別養護老人ホームが27施設、介護老人保健施設は9施設、介護医療院は4施設、養護老人ホームは5施設、軽費老人ホームは11施設、定員29人以下の小規模な特別養護老人ホームは4施設となっている。
【理事者】
障害福祉分野では、国の社会福祉施設等施設整備費補助金等を活用して、障害福祉サービス等事業所に対する自家発電設備の整備を進めている。
対象は政令市・中核市を除く本県所在の障害福祉サービス等事業所であり、総事業費が500万円以上の整備であること等が条件である。また、負担割合は国2分の1、県4分の1、事業者4分の1である。過去3年間の補助実績は、令和3年度が1件1,700万円余、令和4年度が2件6,648万円余、令和5年度は該当なしである。
次に、自家発電装置について、県が整備状況を把握している調査については、先ほど高齢福祉課担当課長が答えたものと同じ厚生労働省が実施している調査である。
この調査による令和4年3月末の種別ごとの状況としては、障害者支援施設49施設のうち、自家発電装置があるのは24施設で49パーセント、72時間の事業継続が可能な設備があるのは5施設で10.2パーセントとなっている。
また、障害児入所施設3施設のうち、自家発電装置があるのは2施設で66.7パーセント、72時間の事業継続が可能な設備があるのは1施設で33.3パーセントとなっている。
【委員】
補助制度については、社会福祉施設にいわゆる災害弱者が集まる特性を踏まえ、国と自治体で非常に高い補助率、4分の3を補助しているということだが、もっと手を挙げる事業者があってもいいと感じているが、今のところ利用事業者数は低調である。
ざっくり5割から7割が何かしらの非常用自家発電設備があるということであるが、国はこの整備について、防災基本計画において、病院、要配慮者に関わる社会福祉施設等の人命に関わる重要施設の管理者は、発災後 72 時間の事業継続が可能となる非常用電源を確保するよう努めるものとする、としている。
確認だが、県として非常用発電設備の導入にあたり、何から優先して取り組んでいるのか、施設事業者に対してどのような目標を持って、取組を行っているのか。加えて、昨年11月の読売新聞で、全国の社会福祉施設のうち、水害で浸水の可能性がある場所に立つ施設の6割で、非常用発電機が水没して故障する恐れのあることが会計検査院の抽出調査でわかったという内容の報道があった。
国庫補助があった施設だけでなく、先ほど答弁のあった、これまで県内で整備された非常用発電設備のうち、この報道であったように浸水や、さらに前に調査のあった耐震上のリスクがある施設は存在するのか。あわせて、指導や対策は行われているのか伺う。
【理事者】
はじめに、高齢者施設に関する県の取組であるが、国の防災基本計画では、発災後72時間の事業継続が可能となる非常用電源を確保するよう努めるものとされていること、高齢者の入所施設は、災害時には、介護が必要な人の福祉避難所としての役割を担うことも想定されることから、県としては、まずは、高齢者施設が災害等による停電時に施設機能を維持するための電力を72時間自力で確保できるよう、支援していきたい。
このため、介護施設等防災対策事業費補助金を1件でも多くの施設に活用してもらえるよう、様々な機会を捉えて、引き続き当該補助金を周知していく。
次に、浸水や耐震性のリスクについて回答する。
非常用自家発電設備を整備した高齢者施設における浸水や耐震上のリスクの有無についての把握は行っていないが、実際の災害時に活用できることが重要と認識しており、県としても、施設長会議の場などの機会を捉えて、事業者に対し浸水や耐震上のリスクへの対応を促していく。
【理事者】
障害福祉分野についても、高齢福祉分野と同様に、防災基本計画を踏まえ、72時間の事業継続が可能な設備の整備を進めていきたいと考えている。
事業者に対しては、毎年度の国庫補助協議にあたり、市町村を通じて補助制度の周知を行っており、引き続き様々な機会を捉えて周知に努めていきたい。
浸水や耐震上のリスクについては、障害福祉分野においても、県で直接は把握していないが、そうした報道等を踏まえ、補助事業の採択にあたり、今年度から浸水や耐震上のリスクの有無や、その対策についても確認する。
【委員】
市町村からの情報を集約して、県としてもリスクの有無の把握と、リスクある施設に対しての具体的な指導が行えるように対応を求めたい。県としての優先順位は分かったが、施設のうちまだ3割以上は自家用発電設備等を設置していないということで、BCPがどのようになっているか不明だが、いつ起こるか分からない災害に対して各施設で対策のスピードを上げるためには、導入が進まない理由を県として研究する必要があるのではないか。導入が難しいとしたら、特定の機器や通信などを一時的にも起動させるための非常用電源を施設が保持していくことも重要ではないか。
最後の質問だが、県として各施設のBCP策定状況を確認し、特にリスクの高い、南海トラフ地震の被害が著しいと想定されている地域の施設に対し、災害時に実効性があるように指導していく考えはないか。また、非常用発電未設置の約3割の施設に対して、導入が進んでいない原因を確認し、500万円未満の非常用電源や可搬型電源の設置可能性も含めてニーズ調査を行っていく考えはないか。
【理事者】
高齢者施設におけるBCPの策定は、今年の4月から義務化されており、策定状況については、国の調査においても今後、調査対象とすることが検討されている。
BCPの策定については、各施設で、地域や施設の状況のほか、非常用自家発電設備の有無も踏まえて実効性のある計画の策定を行う必要がある。
厚生労働省においてBCP作成支援として公開しているガイドラインや研修動画について、県内の施設に対して、引き続き周知し、実効性のある計画の策定を促していく。
500万円未満の非常用自家発電設備については、市町村事業とはなるが、国の交付金を活用し、整備が可能となっている。このため、こうした交付金を活用し、さらに整備を進めてもらうよう、引き続き市町村、事業者に、周知を図り整備を促していく。
県としては、繰り返しとなるが、まずは発災後72時間以上稼働可能な設備の整備を優先する考えであり、補助制度の拡充やニーズ調査については、施設における今後の整備の状況や、他県の状況の推移を注視していきたい。
【理事者】
BCPについては、県内各施設に引き続き周知し、実効性のある計画の策定を促す。
500万円未満の非常用自家発電設備の整備については、国庫補助制度の有効活用や財源の確保といった問題、また県が72時間業務継続可能な電源の確保を優先して進めているということもあり、現時点では県単独での助成等は検討していないが、高齢福祉分野では市町村事業として別に制度があることなども踏まえ、国に対して補助下限額の引き下げ等を働きかけることを、ニーズ調査も含めて検討する。
【委員】
積極的に情報把握に努めてもらい、特に、南海トラフ地震の被害が想定されるような地域においては、様々な働きかけをお願いしていきたい。
【委員】
マイナ保険証の利用促進について、令和6年4月末日時点で全国のマイナンバーカードの保有率は、全国73.7パーセントであり、本県は全国47都道府県のうち32位、73.8パーセントであり、コンマ1ポイント上回っていることを前提に質問する。
今年の12月2日より、現行の保険証の新規発行が停止され、マイナ保険証の利用を促すため仕組みが移行されるが、様々な措置を取る必要がある。しかしながら、令和6年4月の医療機関及び薬局におけるマイナ保険証の利用実績は、残念ながら全国で5.56パーセント、愛知県ではそれを下回る4.81パーセントという実績であった。
国は、マイナ保険証利用を、患者、医療機関、保険者の協力のもと進めていくことが重要であるとし、各都道府県に対して、保険者協議会等の場を活用して、医療機関、保険者による積極的な取組をしてほしいという依頼を発出している。
このことを踏まえて、本県においては、今年3月に保険者協議会で関係者に関連する取組を促したと聞いているが、まず1点目に、マイナ保険証の利用促進について、県はどのような認識を持っているのか伺う。
【理事者】
医療DXの要であるマイナ保険証について、その利用促進を図ることは、地域の医療機関同士の情報連携を進めるなど、質の高い効率的な医療の提供につながるものと考えられる。このため、医療費の適正化などの取組を行う都道府県にとって重要な課題として捉えている。保険者や医療関係者などに対して、マイナ保険証の利用促進の積極的な取組を促していく。
【委員】
3月の保険者協議会について、どのような状況だったか伺う。
【理事者】
まず、保険者協議会は、市町村国保や健保組合をはじめとした保険者や公益社団法人愛知県医師会等の医療関係者などに参加してもらい、医療費適正化や健康増進に関する情報の共有や取組の推進などを協議するものである。
3月18日の協議会において、本県は構成員に対し、国の資料に基づきマイナ保険証の利用促進に関する周知、広報物の紹介、窓口案内の対応及び必要経費の助成制度等を説明するとともに、積極的な取組を要請したところである。
協議会では、マイナンバーカードの携帯率の低さや、高齢者のマイナ保険証に対する認知の低さに関して意見をもらい、マイナ保険証の利用に係る声がけの重要性について認識を共有したところである。
【委員】
今後のマイナ保険証の利用促進について、県はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
最新のマイナ保険証の利用実績を把握の上、国の動向を踏まえつつ、保険者協議会を開催し、保険者や医療関係者などと連携して取組を進めていく。
さらに、市町村国保における協議の場や、医療関係者との連絡調整の場も活用し、できる限り多くの機会において、マイナ保険証の利用促進を働きかけていく。
【委員】
病院に行った時を想定してほしいが、受付で、診察券と、国民健康保険証または保険者が発行している保険証の原本の提出を求められる。月に1回の確認もある。それにも関わらず、利用実績が4.8パーセントということは、ほとんど使っていないのと同じである。それにも関わらず、受付の近くには認証機があり、カードリーダーが置いてあるという状況ではないか。特に、混雑が予想される歯科、耳鼻咽喉科のような、多くの患者が入り口で受付を待っているような状況においては、ほとんどの人がマイナンバーカードを使って、かざすことをしていないのではないか。
先般、河野太郎大臣のところへ本県のDX推進について陳情をしたが、河野太郎大臣からも、マイナ保険証の推進を本県において積極的にやってほしいと強く要請された。
国においては、3つの推進の方向性が提示された。一つ目が、補助金の額を20万から40万に倍にすること。二つ目が、高齢者が顔認証アプリの操作に戸惑わないよう改良すること、三つ目が、デジタル庁の人員を1,000人から1,500人に1.5倍にすることである。
従って、委員においては、それらを踏まえて各市町村に要望をしてほしい。先ほど協議会があると言ったが、自由民主党に対して三師会からよく要望をもらう。逆に、我々からも三師会に対して、市町村の窓口担当者と緊密な会議を開催してもらい、フェイス・トゥ・フェイスでマイナ保険証の利用率を10パーセント、20パーセント、30パーセントに上げる努力をしてもらいたい。
先般、愛知県行政書士会が大村秀章知事を訪問し、マイナ保険証の申請が困難な人に対する国の補助金をいかに有効に活用するかという議論がなされ、7月22日に知事公館において連携協定を締結することになっている。議会としても、しっかりとフォローする体制づくりが必要である。
私はマイナンバーカードを財布の中に入れ、携行しているが、高齢者は大事なものだということで家に置いている。今後、マイナンバーカードに色々な機能が入っていくと、12月2日に切り替えたときに問題が顕在化するのではないかと危惧している。
河野太郎大臣からは、市町村に対しては、直接質問を受けることもやぶさかではなく、常にオンラインで質問を受ける仕組みを作っているとのことである。これはDX推進室にも確認をした。普及促進についてはDX推進室がしっかり取り組むと思うが、既に4人に3人が持っているマイナンバーカードについて、マイナ保険証としてどれだけ登録しているかはデータがないとのことである。ただ、今回マイナポイントで登録した人が多いことを踏まえると、私の経験則上、少なくとも50パーセントから60パーセントは登録があるのではないかと推測される。なぜなら、専門の窓口担当者が区役所に来て、入力を教えているところを確認したため、おそらく半分以上の人は保険証をマイナンバーカードに入れていると思う。
したがって、4.8パーセントという全国を下回る利用率ではなく、三師会に粘り強く、熱心に伝えることにより、利用率や、入り口に認証の機械を置いてもらい、まずはマイナ保険証を置いてもらうよう、受付のフローから変えてもらうような働きかけをお願いしてほしい。そうすることによって、4.8パーセントが10パーセントになり、20パーセントになっていく。
政府に何かお願いすべきことがあれば、当然、我々も議会として三師会と一緒にお願いをするし、直接陳情するなどのバックアップをするため、現状を改善してほしい。12月以降、混乱して窓口が停滞することがないようにしてほしいが、局長はどのように考えているか。
【理事者】
指摘の点を踏まえて、しっかりと推進していきたい。
【委員】
放課後児童クラブについて、いくつか質問させていただく。なお、名古屋市では留守家庭児童育成会と呼んでおり、あるいは、一般的には学童保育と呼ばれている。
放課後児童クラブは、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が働きに出なければならないなどの理由で昼間自宅にいない場合、小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して、適切な遊びや生活の場を与えて、児童の健全な育成を図るものである。
私の地元の守山区にも、19か所の放課後児童クラブがある。放課後の児童の遊びの場として、また生活の場として、児童の安全を確保しつつ、低学年から高学年が交流しながら自主性を育む場として、重要な役割を担っている。なお、夏休みなどの長い休みの期間中は朝から開所している。
放課後児童クラブで宿題に取り組んだり、遊んだり、また、放課後児童クラブの行事に参加したり、児童が成長する様子を放課後児童支援員等が見守り、その成長過程を保護者へ伝えることで、保護者は子どもの成長を知ることができ、また安心して仕事に出かけることができる。放課後児童クラブは働く親にとって、また、子どもの居場所として安心できる重要な場所である。
共働きの世帯の増加等に伴い、放課後児童クラブの必要性は益々高まるものと思われるが、県内のか所数と利用児童数はどのような状況か、過去3年間の推移について伺う。
【理事者】
まず、放課後児童クラブのか所数、いわゆる教室の数の推移について、2021年度は1,634か所、2022年度は1,660か所、2023年度は1,700か所であり、3年間で66か所増加している。
次に、利用児童数の推移について、2021年度は60,660人、2022年度は60,999人、2023年度は63,988人であり、3年間で3,328人増加している。
【委員】
昨年度と比較すると、3年前はまさに新型コロナウイルス感染症の影響により、社会活動が停滞していた時期であり、雇用調整等が行われ、仕事ができない人も多くいたと思われる。昨年度は新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、社会活動が徐々に正常化してきた頃であり、職場への復帰とともに、放課後児童クラブのニーズが高まったことがわかった。
次に、放課後児童クラブの利用を希望しているものの、定員等の理由から利用できなかった児童の数、いわゆる待機児童の数について、過去3年間の推移はどのようか。
【理事者】
待機児童数の過去3年間の推移であるが、2021年度は430人、2022年度は465人、2023年度は570人であり、3年間で140人増加している。
【委員】
特に一昨年度から昨年度にかけての児童の利用者数の増加に伴って、待機児童も増えている状況がわかった。また、利用者数が過去3年間で3,328人増えているものの、待機児童数は140人の増加であることから、市町村においても待機児童の解消に向けて努力をしていることがわかった。
最後に、待機児童の解消に向けた県の取組について伺う。
【理事者】
待機児童の解消のためには、施設を増やすことと、放課後児童支援員を確保することが重要である。
まず、施設整備については、待機児童が生じている市町村に、待機児童が発生している事情について聴き取りを行い、国の補助制度を活用し、専用施設の設置や学校の余裕教室等を改修してクラブの設置を進めるよう働きかけている。なお、今年度に整備を予定している放課後児童クラブの数は12市町46か所であり、整備に係る県の補助金の予算額は1億2,314万6千円である。
次に、放課後児童支援員の確保については、認定資格研修を計画的に実施し、放課後児童支援員の資格の取得を促進するとともに、資格取得後もさらなる専門的知識や技術を習得するためのキャリアップ研修を実施し、放課後児童支援員の定着を図っている。
【委員】
県の取組として、実施主体である市町村の状況を踏まえ、施設整備への財政的な支援と、放課後児童支援員の確保のため、各種研修を実施していることが理解できた。そこで要望だが、少子化が進行し、生まれてくる子どもが少なくなる世の中であっても、共働きなどによる放課後児童クラブへのニーズは高まっていることから、今後も市町村の状況を踏まえながら、財政面と人材確保の両面から継続した支援を行い、引き続き待機児童の解消に努めてほしい。
守山区では、守山区公職者会と、放課後児童クラブの守山区の連絡協議会と懇談会を定期的に開催している。公職者会は、名古屋市議会議員が5人、愛知県県議会議員が2人の計7人の構成である。放課後児童クラブからは、名古屋市長へ要望を提出しているが、その要望内容を見ていると、愛知県としてももっと関わりを持てることがないかと感じる。実施主体はあくまで市町村であるが、県として何か踏み込んで、放課後児童クラブに対して支援できるものはないかを考えてもらうことを要望する。
【委員】
私からは女性特有のがんに関して、その検診の受診勧奨について、加えて、そのうち子宮頸がんに関して、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨について、二つのテーマについて伺う。
まず、女性特有のがんであるが、乳がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、子宮肉腫がある。このうち最も罹患率が高いのは乳がんで、次いで子宮体がん、卵巣がん、子宮頸がんの順である。一般的に、がんは高齢になるほど発症リスクが高まる一方、乳がんや子宮頸がんなどは、近年、20代から発症するケースも多く、女性特有のがんの発症はいわば若年化している傾向にある。
こうしたことから、早期発見と早期治療が肝心であり、そのためには定期的ながん検診を受けることが重要である。例えば、女性のがん死亡数が多い乳がんでも、検診で早期に発見して治療を開始することで治る可能性も高くなり、また、再発、転移、死亡の割合も低下させることができる。早期の子宮頸がんでは、100パーセントの治癒、子宮体がんも80パーセントの確率で治癒が期待できるとも言われている。
そこで、国は早期発見により早期治療を図る二次予防としての検診の重要性を広く指摘しており、科学的根拠に基づき推奨されているがん検診が市町村を主体で実施されている。
そこで、女性特有のがんである乳がん、そして、子宮頸がんについて、検診の受診勧奨をどのように実施しているのか伺う。
【理事者】
がん検診については、実施主体である市町村において、ケーブルテレビ局によるラジオ放送や、巡回バスのデジタルサイネージを活用した広報など、様々な受診勧奨の取組がされている。県においては、県ホームページで周知を図るとともに、リーフレット、チラシ、啓発資材を企業、健康保険組合、医療機関などに提供し、受診勧奨に役立ててもらえるよう取り組んでいる。
また、特に、子宮頸がんについては、20代、30代の女性に増加していることから、若い人に子宮頸がんに関する正しい知識を持ってもらうため、2014年度から大学と連携して子宮頸がん大学連携セミナーを開催している。今年度は、愛知県立大学、県立芸術大学及び愛知教育大学での開催を予定しており、引き続き啓発に努めていく。
【委員】
受診の利便性向上はどのように図っているのか。
【理事者】
受診の利便性向上については、実施主体である市町村において様々な取組がされている。具体的には、対象者へ個別に無料クーポンを郵送する、申込みをLINEでできるようにするなどの工夫が図られている。
県としては、市町村の取組について会議等で情報共有を行うとともに、女性が受診しやすい環境づくりとして、がん検診医療機関における女性医師の配置状況などの情報をホームページに掲載するなど、利便性向上が図られるよう努めている。
【委員】
国の指針によれば、乳がん検診の対象者は40歳以上の女性、子宮頸がん検診の対象者は20歳以上の女性となっているが、乳がん検診の40歳代、並びに、子宮頸がん検診の20歳代の受診率はどのようになっているのか。
【理事者】
国民生活基礎調査によると、2022年の本県における40歳代の乳がん検診受診率は51.5パーセント、20歳代の子宮頸がん検診受診率は27.2パーセントである。
【委員】
乳がんの受診率のほうが高いが、それでもまだ約半分の人が対象者として受診していないため、子宮頸がんと併せての検診受診の推進策をしっかり検討してほしい。特に、子宮頸がんの罹患は20歳代で上昇するため、この年齢層での検診受診率の向上は極めて重要である。
一方、子宮頸がんの受診率について、20歳から24歳までが最も低いため、がん検診の必要性について、20歳近辺の人の理解が十分深まっていないというおそれがある。また、学生など、居住地と住民票が異なる場合に、例えば市町村が送ったクーポンが手元に届いていないなど、様々な可能性が考えられる。
厚生労働省が発表している全国の事例では、クーポンやはがきで案内するより、直接電話したほうが当然受診率は上がり、もう1回かけると、さらに上がるということである。県内では、名古屋市のみが電話での個別通知を実施しているが、効果が明らかであるため、ぜひ市町村にこのような好例を知らせ、取り組んでいくよう働きかけてほしい。
特に、子宮頸がんは無症状だそうで、検診以外に発見するきっかけはないため、総じて積極的に検診の受診勧奨に努めてほしい。
続いて、HPVワクチン接種であるが、子宮頸がんはワクチン接種によって予防することができる。日本では現在HPVワクチンが承認されており、定期接種の対象者は小学校6年生から高校1年生、すなわち12歳から16歳までとされている。
そこで、HPVワクチンの接種効果について伺う。
【理事者】
子宮頸がんの発生には、HPV、ヒトパピローマウイルスが関わっており、HPVが長期にわたり感染することでがんになると考えられている。なお、HPVは、主に性交渉を介して感染する。
現在、公費で接種を受けられるHPVワクチンは2価ワクチンのサーバリックス、4価ワクチンのガーダシル、9価ワクチンのシルガード9の3種類がある。2価ワクチン及び4価ワクチンは、HPVの中でも子宮頸がんを起こしやすい種類、型であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができるため、子宮頸がんの原因の50パーセントから70パーセントを防ぐ。さらに、2023年4月から公費接種の対象に追加された9価ワクチンは、HPV16型と18型に加え、ほかの5種類のHPV型の感染も防ぐため、子宮頸がんの原因の80パーセントから90パーセントを防ぐ。
【委員】
HPVワクチンであるが、2013年4月に定期接種化されたものの、接種後の多様な症状の訴えが相次いだことにより、同年6月に接種の積極的な勧奨は一時中断された。この多様な症状というのは、HPVワクチン接種後、広い範囲に広がる痛みや手足の動きにくさや、不随意運動と言うそうだが、動かそうと思っていないのに体の一部が勝手に動いてしまうことを指す。
専門家会議では、定期接種を中止するほどのリスクが高いとは評価できないとされたものの、接種後に生じ得る多様な症状について、十分な情報提供ができないことから一時中断されたそうである。その後、また専門家会議において、この多様な症状とワクチン接種の関連性が明らかになっていないこと、つまり、安全性について特段の懸念が認められないとされたことや、海外でHPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果が明らかに示されていることなどから、国は2022年4月から積極勧奨を再開した。積極勧奨が中断されていた9年間に、接種機会を逃した1997年度から2007年度生まれの女性に対しても、来年3月までを期限に無料で接種できる体制を整備している。
そこで、HPVワクチンのいわゆるキャッチアップ接種の接種率について伺う。
【理事者】
先月5月22日に開催された厚生科学審議会の部会の資料において、2022年度に実施されたキャッチアップ接種に係る初回接種の都道府県別接種率が示されており、それによると全国平均は6.1パーセント、本県は5.9パーセントである。
【委員】
全国平均も低いが、本県も低い。HPVワクチンは、6か月の間に2回から3回接種をする必要があることから、積極勧奨が中断されていた機会に接種機会を逃した女性に対するキャッチアップ接種は、無料で接種する場合、初回の接種を今年9月までに受けなければいけない。また、定期接種の最終学年である高校1年生が無料で接種するためにも、同じく半年かかるため、今年9月までに初回接種を受けなければならない。
そこで、HPVワクチンの接種勧奨をどのように実施しているのか伺う。
【理事者】
県としては、予防接種の実施主体である市町村に対し、キャッチアップ接種に係る対象者への再周知や広報を依頼するとともに、公益社団法人愛知県医師会をはじめとする医療関係者等と協力して、接種率の向上及びキャッチアップ接種期間が終了する今年度末までに対象者が3回の接種を完了できるよう、今年度上半期に重点的に普及啓発に取り組むこととしている。
その一環として、県が主体となり、公益社団法人愛知県医師会と共催で、今月30日日曜日に愛知県HPVワクチン普及啓発シンポジウムを開催することとしている。このシンポジウムでは、専門家による基調講演や、俳優で現在自らがんと闘いながら情報発信などの活動を続けている古村比呂氏からのメッセージ動画の上映、さらには、医療関係者や子宮頸がん経験者、接種対象世代のSKE48のメンバーに参加してもらい、パネルディスカッションを行うことにより、HPVワクチンについて理解を深めてもらう機会としたい。
なお、このほか公益社団法人愛知県医師会では、今月から日没後に中部電力MIRAI TOWERにて接種を呼びかけるメッセージを放映しており、また、7月からは地下鉄や名鉄の車両の窓にステッカーを掲示し、啓発を行うと聞いている。
引き続き、様々な啓発を行うことでHPVワクチンへの理解を深め、接種率の向上を図るとともに、子宮頸がん予防に取り組んでいく。
【委員】
女性の健康教育と婦人科系疾患の予防啓発活動を行っている一般社団法人があり、その団体が毎年実施している子宮頸がんとHPVワクチンに関する意識実態調査2024の結果によると、HPVワクチン接種の積極的勧奨再開を受けてもなお接種を希望しない、迷っている人が3割以上おり、その理由として副反応を心配する声、あるいは、信頼できる情報がないといった声が目立っている。また、自治体が実施するHPVワクチンの啓発活動を8割以上の人が知らないとも答えている。
この実態調査の結果にもあるとおり、積極的勧奨を中断していた期間があるため、不安だと言う人が相当程度いると思うが、その後、安全性が確認されたことを含めて、HPVワクチン接種の正しい理解を深めてもらい、その上で検討、判断してもらうことが何より重要である。
子宮頸がんは、25歳から40歳までの女性がん死亡数2位であり、この年齢層だと子供を残して亡くなるケースが多く、マザーキラーとも呼ばれているそうである。子宮頸がんの重篤性をしっかり知ってもらい、加えて、先ほどのHPVワクチンの有用性と安全性について、また、その根拠、更には、最も不安と言われている副反応の症例や、対処方法などについて十分な情報提供をお願いしたい。
公益社団法人愛知県医師会では、臨床医師がそういったことも細かく丁寧に、個別の質問にも応じながら説明をしており、また、県主催のシンポジウムでも、パネルディスカッションでは疼痛医学の専門医師がパネラーとなり、副反応がこのワクチン接種にのみ由来するものなのかということも説明してもらえると思う。ぜひ正しく丁寧な情報提供をしてもらい、対象者が検討、判断できるよう努めてほしい。
【委員】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)増殖を抑制する薬が全国発明表彰を受けたという今月4日の報道から、エイズについて質問する。
部局からヒアリングをし、新聞記事を調べたところ、愛知県内の新規のエイズ患者とHIV感染者は、1988年以降最多であった2011年の138人をピークに減少傾向であり、2023年は85人である。ただ、全国では2番目に多く、20歳から40歳代が感染者の半数以上を占めるというのが最近の傾向である。
今月は、厚生労働省が定めるHIV検査普及週間であったことから、県が実施したHIV無料即日検査内容と件数の傾向はどのようであったか。また、検査を行うに当たり、県はどのような啓発活動を行ったか。
【理事者】
毎年6月1日から6月7日までは、国が定めるHIV検査普及週間となっており、本県ではこの週間の行事として、休日HIV即日検査を実施した。HIV即日検査とは、県管轄の全11保健所のうち、清須、半田、衣浦東部、豊川の4保健所で平日に週1回実施している検査であり、HIVに感染しているか不安に思う人が、HIV感染の有無を無料かつ匿名で受けることができる。
まず、スクリーニング検査を行い、結果が陰性の場合は採血した当日に結果が確定する。スクリーニング検査で陰性と判断できない場合、次に確認検査を行うため、最終結果の確定まで7日間から10日間必要である。
HIV検査普及週間には、検査を実施している4保健所において、6月1日土曜日に休日HIV即日検査を実施し、即日検査を実施していない県保健所の7か所も、平日に週1回HIV検査を受け付けている。
また、通常、保健所では希望者に梅毒の検査も同時に実施しているが、休日HIV即日検査ではHIVの検査のみを実施している。
本年度の普及週間におけるHIV検査の実績は34件で、陽性者はいなかった。ちなみに、昨年度は54件で、陽性者はいなかった。
2020年度から2022年度までは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、普及週間における休日HIV即日検査を実施していない。
また、HIV検査普及週間における休日HIV即日検査の実施に当たっては、5月21日に記者発表をし、ホームページにも掲載して周知を図った。
【委員】
ほかの感染症との同時検査について、来年度以降、平日だけでなく休日にも実施することを検討してほしい。その場合は、記者発表の際にその点を強調してほしい。
次に、県では、エイズ対策事業においてどのような施策の目標を立てて実施しているのか。
【理事者】
2020年3月の国の通知において、エイズ予防指針に基づき、施策の目標等は地域の実情及び施策の性質等を踏まえつつ、全ての自治体で施策目標を設定するよう求められており、2021年度に初めて本県におけるエイズ対策の施策目標を設定した。
目標の設定期間は、2026年度までの5か年計画で、この計画に基づき普及啓発や医療体制の整備を行っている。最終目標としては、新規エイズ患者の低減を掲げており、具体的には、本県における2021年のエイズ患者報告数30人を、2026年末に約25パーセント減少させ、23人以下とすることを目標としている。なお、2023年の報告数は27人である。
また、最終目標を達成するための基礎目標を二つ設定しており、一つ目は、エイズを発症した状態でHIVの感染が判明する事例、いわゆるいきなりエイズについて、2021年の新規報告数に占める割合34.1パーセントを、2026年末に計画策定時の全国平均である29パーセント以下にすることとしており、2023年の割合は31.8パーセントである。
二つ目は、HIV検査実績を、2026年末に、コロナ前の過去5年間の平均実績である1万1,000件以上にすることとしており、2023年の実績は9,923件である。
【委員】
この質問をするに当たり、国際連合の合同エイズ計画を調べたところ、国際連合は厳しい立派な目標を立てており、2030年までにHIVの流行を終結させるとしている。それに併せて、来年までに対策の方向性を示す中間目標として、これが本県よりもっと厳しいが、95、95、95と3つの95が並んでいる。満点が100だと思うが、エイズを知ることに対して95パーセント、治療を受けることに対して95パーセント、そして、抑制することに対して95パーセントである。本県の取組が、国連の計画を満たしていないため、検査を受ける人がさらに増えるよう取り組んでほしい。ほかの感染症との同時検査についても、新聞記事によると最近は梅毒の感染が増えているが、10代の妊婦200人に1人が梅毒に感染していたということが産婦人科医会の調査で発表されており、国立感染症研究所でも、梅毒の感染について、12年前の12倍という過去最多の速報値が発表されているため、ぜひとも検査に対する啓発活動をしっかりと進めてほしい。
HIV感染について、医療の進歩により、早期に発見し、適切な治療を受ければ健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができるが、今後、愛知県内のHIV感染者とエイズ患者にはどのような課題、問題があるのか。
【理事者】
近年のエイズ治療薬の進歩により、早期に治療を開始した感染者は健康な人とほとんど変わらない生活が送れるようになっていることから、早期にHIV感染が発見されることが重要である。しかし、約3割の人がエイズを発症しており、発症する前に感染を発見し、治療につなげるため、引き続き検査体制を確保し、受検について周知を続けていく。
感染者の予後が改善されたことで、高齢化に伴うがんや、生活習慣病等を抱えるHIV感染者も増えており、今後もますます増加することが見込まれる。HIV感染者が安心して治療を継続しながら生活を送ることができるようにするため、治療拠点病院等と連携し、医療体制の充実を図るとともに、関係機関と連携し、適切な治療を受ければ健康な人とほとんど変わらない生活が送れるという正しい知識の普及啓発を続けていく。
【委員】
重症心身障害児者の施設、以下、重心施設と言うが、にじいろのいえの経営について伺う。
一昨年の12月に、知多半島地域初の重心施設にじいろのいえが東海市名和町の緑陽公園の一角にオープンした。この施設は、県内9か所目の民間法人による重心施設として、障害者福祉減税基金を活用して整備されたものだが、64床の入所施設と医療的ケア児の支援センターを併設するものである。地元の障害者団体の要請に応え、当初からこの施設の誘致にも関わってきたが、東海市に誘致できたことを大変感謝している。
ところが、最近、このにじいろのいえの入所者が思ったように増えておらず、運営は大丈夫かという声を耳にした。
そこで、にじいろのいえの入所状況について、ほかの重心施設との比較も交えて伺う。
【理事者】
にじいろのいえの入所状況であるが、2024年6月の現在で定員48人のところ、入所者25名、入所率52.1パーセントという状況である。
同じ時点の県立の重心施設3施設と、また、にじいろのいえと同じく県の障害者福祉減税基金を活用して整備した2施設、計5施設の状況として、4施設については入所率9割以上、残る1施設については入所率8割程度である。
そのため、にじいろのいえの入所状況としては、開所から1年半ではあるが、他の施設と比較して低い状況である。
【委員】
障害者福祉減税基金を活用した五つの施設のうち、四つの施設が9割以上の入所率、また、もう一つが8割以上の入所率であり、にじいろのいえの入所率が52.1パーセントということは、約半分しか稼働しておらず、よくない状況である。
にじいろのいえの入所率が低い状況について、県はどのように考えているのか。また、その原因は把握しているのか。
【理事者】
重心施設については、入所者にとっては生涯の生活の場ともなり得る施設であり、長期にわたって安定的に運営してもらうことが必要であると考えている。そのため、一定の入所率を確保してもらう必要があるため、にじいろのいえの現状については、課題があると考えている。
入所率が低い原因であるが、本来、施設の入所者として想定される重症心身障害児者については、子供、大人の別も含め、様々な状態の人がいる。しかし、にじいろのいえにおいては、重症心身障害児者の中でも、常時人工呼吸器の装着が必要であるなど、重度の医療的なケアを必要とする子供を中心に入所させたいという法人の方針であるため、その結果として、利用希望者との間にミスマッチが起きているのが原因ではないかと考えている。
【委員】
法人の想いや目的はあると思うが、やはり施設経営が成り立ってこそであり、まずは法人として安定経営を行うことに努めていかなければならない。
県としては、建設資金の一部として障害者福祉減税基金を提供しており、法人が経営を改善し、事業継続できるように指導、監督していく必要がある。
にじいろのいえの状況改善に向けて、今後、県としてはどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
県としては、にじいろのいえについて、地域で唯一の重心施設として地域のニーズを適切に捉え、子供や大人、医療的ケアの有無といった属性にとらわれることなく、入所を必要とする人の受入れを積極的に進めてもらう必要があると考えている。
施設を運営する社会福祉法人とは、これまでにも複数回にわたって面談を行い、こうした県の考え方を伝え、指導を行ってきた。その結果、これまでは積極的に受入れをしてこなかった状態の人の入所についても徐々に始まってきた。今後も、引き続き入所の状況を注視するとともに、他の重心施設の運営状況や、また、入所者確保のための取組、こういったものを確認して紹介するなど、にじいろのいえの適切な運営の確保に向けてしっかりと取り組んでいく。
【委員】
今後とも、しっかりと施設の運営状況を注視しながら、指導、監督することを要望する。