委員会情報
委員会審査状況
福祉医療委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年8月28日(水) 午後1時~
会 場 第1委員会室
出 席 者
松本まもる、宮島謙治 正副委員長
神野博史、鈴木喜博、山本浩史、中根義高、南部文宏、成田 修、
長江正成、藤原 聖、阿部洋祐、加藤貴志、柴田高伸 各委員
川崎 純夫 参考人(愛知県知的障害児者生活サポート協会 理事長)
福祉局長、福祉部長、関係各課長等
<議 題>
障害者アートの可能性について
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
それでは、早速ですけれども、まず本題に入る前に少しだけ自己紹介をさせていただきたいと思います。
愛知県知的障害児者生活サポート協会は、知的障害や発達障害の方と、その家族の生活の安定と福祉を増進するために設立された協会であります。サポート協会が創設した制度として、生活サポート総合補償制度というものがあります。一般的に保険に加入することが難しい知的障害や発達障害の方の入院やけが、あるいは、個人賠償責任を負った場合に補償するもので、障害のある方が日常生活を送る上で安心を担保するためのものです。もともと互助会がベースで創設されたものなんですけれども、保険業法の改正等があり組織化をすることになりました。お互いが助け合うという互助の精神から始まっています。なので保険だけではなく成年後見として、家庭裁判所から委託を受けて現在40名の方の法人後見もしております。それ以外に、ふれあいアート展とかスポーツ振興、あるいは、研修だとか相談等、様々な生活をサポートしている団体であります。
サポート協会は、全国組織でございまして、全国で今15万5,000人の方が加入しており、愛知県では7,500人の方が会員として在籍しておられます。
もう一つ、こちらは私の本業でして、障害者施設サンフレンドの施設長をしております。サンフレンドは、小牧市にある知的に障害のある方の大人の入所施設で、平成11年に開所して以来今年で25年目になります。そのほか、日中活動の施設として銀河という施設とサンビレッジという通所の施設、そして、グループホームを今10か所運営しております。これらの事業の中で、後ほど話をさせていただきますアート活動に力を入れており、現在いろいろなアート活動のお手伝いをさせていただいております。
それでは、今日のお話について少し項目を挙げさせていただきました。まず、一つ目は障害者アートについてということ、二つ目は愛知県における障害者アートへの取組、三つ目といたしましてアート雇用について、四つ目といたしまして企業と障害者とアートの関係について、それから五つ目として障害者アートの活用例を紹介させていただいて、六つ目は障害者アートの全国の動きを一部ですけれども紹介をさせていただきたいと思います。そして、7番目としてまとめに入りたいと思います。
それでは、早速ですけれども、障害者アートについてお話をさせていただきます。障害者アートは、昨今、デザインが斬新ですばらしいということで企業による商品化や各所で様々な形で使用され、世界的にも注目されつつあります。障害者アートの呼称につきましては、アウトサイドアートとかボーダーレスアートとかアール・ブリュット等というふうに今呼ばれることが多いんですけれども、最近ではアール・ブリュットという言い方が多く使われ、アール・ブリュット、イコール障害者アートとされつつあります。本来の意味は、障害者に限ったものではありません。アール・ブリュットとは、生の芸術という意味からフランス語でアートは芸術、ブリュットはワインなど生のままであるとして画家のジャン・デュビュッフェが1945年に考案した言葉だそうです。正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した既成の芸術モードに影響を受けていない絵画や造形のことです。つまり、障害があってもなくても心に感じたこと、思ったことを自由に表現することが唯一無二のすばらしい作品であるということだというふうに思います。
それでは、ここで障害者アートの作家を3人ほど紹介させていただきたいと思います。初めに、升山和明さんです。升山さんは、サンフレンドの利用者で今年57歳になります。重度の知的障害と自閉症を重複しておられます。一般的に自閉症の方はこだわりが強いというふうに言われますけれども、升山さんも同じで、ふだんはクモの巣が気になるようで、我々には見えないクモの巣が彼には見えるようで、施設の中のクモの巣を取って歩いておられます。背が届かない場所については、3メートルぐらいの物干し竿を持ってそれで取ろうとして施設の中を走っているんですけれども、その姿を見ると、まさに棒高跳びの選手みたいな感じでいつもクモの巣を取っておられます。
そんな升山さんですけれども、カレンダーについては、未来の曜日も知っておられます。例えば「2025年5月10日は」って聞きますと、「土曜日」と1秒ぐらいで答えます。過去に遡っても言えます。「1825年3月5日は」と尋ねると「金曜日」と1秒で本当に答えることができます。我々は、ちょっと分からないのでコンピューターで調べると、ちゃんとそれが合っているという。記憶しているのか、計算しているのか、ちょっとよく分かりません。本人に聞いても分からない。ただ、お母さんに聞きますと、小学生の頃からカレンダーについては言えるというふうに言っておられます。
それと、絶対音感というんですか、一度聞いた音楽は譜面がなくてもピアノで再生することができる。すばらしい才能があって、まさに、こういうのをサヴァン症候群と言うんですけれども、そういった才能をお持ちです。
これが升山さんの作品ですが、絵画については、独特の世界観からすばらしい作品を完成されておられ、小牧市の市民美術展では一般の市民の中から市議会議長賞を受賞し、あいちアール・ブリュット展、ふれあいアート展と様々なアート展で入賞されておられます。一昨年には、愛知県が主催する国際芸術祭あいち2022、一番右側のパンフレットですけれども、こちらの作家にも選出されました。
これ、彼ですけれども、彼のモチーフは、かつて犬山にありましたスーパーの清水屋です。今は、取り壊されてスギ薬局になってしまいましたけれども、とにかく清水屋とタクシーが彼の作品のモチーフとなっております。後ほど、彼の作品の活用例を紹介させていただきたいと思います。
次は、茅野大輔さんです。茅野さんは、銀河という通所施設の利用者で今年39歳になります。彼も重度の知的障害と自閉症を重複しておられます。茅野さんもこだわりが強くいろいろなルーティンがあって、例えば何かを触ってから行動すると、触れることがスイッチになっているように思います。私どもの施設を利用する前までは絵を描くことはなかったんですが、実際、描いていただくと、とても個性的な面白い絵を描くことに気付いて、今ではあいちアール・ブリュット展の優秀作品に選ばれるなど、各公募展で度々入選するまでになりました。この魚の絵はちょっと小さいですけれども、実際の作品もそんなに大きくないですけれども、色を塗るときに色鉛筆が並んでいる順番に塗っていきます。すごく細かくて見にくいんですけど、右から例えば青、赤、ずっとそれを繰り返し繰り返し魚に塗っていくという感じで、右下の作品は完成した作品です。
それから、次、絵だけではなく陶芸とか書道もやってもらったところ、すばらしい才能があることが分かってきました。陶芸の作品も本当に器用にパーツを丸めて根気よく貼りつけていきます。あと、ジグソーパズルが得意で、形を見ただけでパッパッパッパッはめていけるという、頭の中で空間認知というのかすごくすばらしいものがあります。右下が彼ですけれども、39歳になりました。真ん中の「あらま~ッ」は書道の絵ですけれども、なかなか面白いし、まさに天才ではないかなと思います。
次に、山本良比古さんです。山本良比古さんという名前は、一昔前、テレビや新聞で随分取り上げられたのでひょっとしたら御存じの方も見えるかもしれません。また、愛知県庁の福祉局長さん、今日来て見えますけれども、局長室にも絵が飾ってあり、愛知県総合教育センターの壁画にもなっております。
良比古さんは、昭和23年名古屋の西区に生まれて、生まれながらに脳水腫、重度の知的障害があり、IQは39、療育手帳A判定ですけれども、それとさらに重複して聴覚障害、身体障害者2級による言語障害の三重苦の障害があります。この絵は、「桜の犬山城」、そして、「犬山の鵜飼」ですね、これを描いた絵であります。これは富士山を描いたんですけれども、赤富士とか富士川を描いた絵ですけれども、よく「昭和の北斎」とか「虹の絵師」というふうにも呼ばれたことがあります。
次は、先日、オリンピックがパリで開催されましたけれども、火災に遭う前のノートルダム寺院です。右の作品は、イタリアのミラノのドゥオーモ聖堂で130号の大きさです。畳、大体2枚ぐらいの大きさで大きな作品です。皆さん、この絵を見て定規を使って描いたんじゃないかというふうによくおっしゃられますけれども全てフリーハンドで描きます。
良比古さんは、愛知県の障害者アートの草分け的存在でしたけれども、残念なことに4年前の2020年9月に73歳で亡くなってしまいました。ただ、良比古さんが残した功績は、重度の障害を持つ方の希望となり、人間の可能性は無限であるということを証明してくれたんではないかなというふうに思っております。
次のスライドですけれども、愛知県における障害者アートの取組というところであります。資料12ページになると思いますけれども。愛知県は、障害者の文化芸術促進のために2014年からあいちアール・ブリュット展を積極的に開催され、昨年10周年を迎えました。その間、2016年には、第16回全国障害者芸術・文化祭あいち大会を開催され、大きな成果を挙げられました。さらに、今まで名古屋が中心であったあいちアール・ブリュット展を三河にも広げようということで、豊川市の桜ヶ丘ミュージアムにおいて、あいちアール・ブリュット・サテライト展を開催しています。
あいちアール・ブリュット展は、毎年700点余りの応募作品の中から30点を優秀作品として選考し、優秀作品特別展として愛知芸術文化センターで3月に開催しております。受賞に当たって、大村秀章知事から直々に表彰状と盾を授与していただいています。このことは、受賞された方の自信と誇りにつながり、今後の創作活動のモチベーションへとつながっていると思います。今年9月に予定しています第11回あいちアール・ブリュット展は、既に700点を超える応募があり、どんな作品が出展されるか非常に楽しみにしているところです。知事さんもそうですけれども、副知事さんも毎年見に来てくださり、副知事室にも作品を飾っていただくなど、障害者アートの応援をしてくださっています。
あいちアール・ブリュット展は、回を重ねるごとにバージョンアップをしており、絵画だけでなくバンドやダンスの舞台発表にも広がり、今では愛知県立芸術大学の学生さんと連携するなど、障害者の理解にもつながる大きな役割を担っております。
次、スライド13です。さらに、あいちアール・ブリュット展との連携事業として、展示作品の中から一般社団法人アティックアートと連携し、企業のノベルティグッズのデザインとして採用することで社会参加の機会と企業連携につながっています。
次に、あいちアール・ブリュット展の関連事業として、障害者アートを多くの方に見てもらいたく、県の図書館や商業施設等で巡回展示を行うなど、今年から愛知県内の芸術大学との連携企画として名古屋芸術大学や名古屋造形大学での展示やトークイベントも行っています。
また、愛知県では、芸術活動を普及するために芸大の教員らが障害者施設に出向いて絵画、陶芸、書道等、出前講座を実施し、芸術の楽しさを体験する出前講座も行っています。
これ以外の取組といたしまして、愛知県障害者芸術文化活動支援センターへの補助事業を行っており、相談支援や人材育成等、文化芸術の普及を推進しています。
また、アートを活用した障害者地域生活支援コーディネート事業を実施し、アートの才能を持つ障害のある方の一般企業への就職、いわゆるアート雇用に向けた生活支援全般のコーディネートを行っています。この事業は、愛知県知的障害児者生活サポート協会が愛知県から委託を受けてお手伝いをさせていただいております。
次に、スライド14。これから、アート雇用についてちょっとお話をさせていただきます。アート雇用は、芸術を通して就労の可能性を切り開くということで、在宅または障害者の作業所に通っている方が自宅等で創作活動を行い、企業と雇用契約を結ぶ在宅就労という雇用形態です。この取組は、2016年度の、先ほど委員長さんから説明もありましたように、2016年のあいちアール・ブリュット展で入選した2人がきっかけで愛知県障害福祉課と愛知労働局、ハローワークと福祉の専門家が共同して始まり、現在11社、21名の方が就職されておられます。
アート雇用は、企業が障害者を雇用することで会社の広告塔となりイメージアップと障害者雇用により法定雇用率のカウントになります。また、障害者の方も社会の一員として認められることと最低賃金の給料がもらえるということで、お互いがウィン・ウィンの関係になるよう全国に先駆けた取組だと思います。
主なアート雇用の業務内容ですけども、企業名を明示して作品展に出展することで企業のPRになる。店舗や企業の応接室や会議室に作品を飾る。また、企業のカレンダー等のデザインに採用したり企業のノベルティグッズなどのデザインに採用するなどなど様々であります。
雇用契約に基づいて賃金が当然支払われます。多くの場合は、時給制で最低賃金が適用されます。従業員として労働時間の管理が必要となります。そのため勤怠報告は、企業によって違いますけれども、1週間に一度ファクスかメールで報告する企業が多いです。また、企業によっては月に一度ぐらい作品を持って出社してくださいというところもあれば、作品を写真に撮って、そのデータを送るような企業もあります。精神障害や身体障害の方は御自分で勤怠報告ができますが、知的に障害のある方は報告が難しい方が多いので御家族の方が本人に代わって報告をしていただいたりしております。
次、アート雇用の流れです。基本的な採用までの流れは、アート雇用を考える企業がハローワークに相談して求人票を出していただきます。一方で、アート雇用を希望する障害のある方は、事前に登録していただいてアート雇用を希望する企業に作品を紹介します。作品が企業の希望するイメージとうまくマッチングができたら障害者がハローワークに申し込み、その後、面接をしてうまく採用されれば契約に至るというような流れであります。
スライドの16です。障害者雇用率としてカウントされますが、これは障害種別や重度によってカウントが少し変わってきます。雇用契約の締結が基本となり、雇用保険に加入する関係で週20時間以上の勤務が必要となります。また、条件が合えば週30時間の方も見えますけれども、基本的に在宅の方は30時間でも可能ですが、生活介護事業所とか作業所に通っている方は週20時間ぐらいが妥当になります。週30時間になると、雇用保険のほかに社会保険への加入が求められます。週20時間と簡単に言いますけれども、毎日、絵を描き続けるということは非常に難しいと思います。そこで次に何を描こうかとか、いろいろイマジネーションとか想像する時間も勤怠の時間に含めてほしいということと、また、好きな魚の絵を描くことが得意な方は、水族館に行って取材をすると、そういった時間もカウントしてもらうようにお願いをしています。会社によっては、取材の交通費や絵の具の画材等を経費として認めてくださる会社もあります。
そして、次に企業がどんな作家さんを求めているかですが、企業が求める作品は千差万別です。例えば会社のイメージカラーがブルーなので、青を基調とした作品を希望される会社もあれば、飲食業なのでメニューに反映できる作品を希望される会社もあれば、あるいは、医療関係なので医療に関係する作品を描けないかとか、また、抽象的な柔らかいイメージの作品を希望される会社もあり様々であります。いろいろな作品を見ていただき、できるだけ希望に沿う作家さんとのマッチングができるように努めているところです。
しかし、アート雇用はいいことばかりじゃなくて、少し懸念事項があります。アート雇用により採用されることは喜ばしいことですけれども、企業は法定雇用率だけ達成するために誰でもよいからということが起きるんではないかという可能性があります。例えば、採用したけど別に会社に来なくていいよとか、せっかく描いた作品を倉庫にしまっているだけとか、そういう形ではアート雇用の趣旨とはちょっと違ってきて非常に悲しい結果になります。そのため、面接時に会社の方針や担当者の考え方を十分に聞いた上で作家の推薦を行っております。
最近、アート雇用を希望される企業が少ないです。我々のPR不足もあると思いますが、できるだけ広がっていくようにこれからも努めていきたいと思っているところです。
先ほど、お話ししました現在採用していただいている企業がこちらの11社です。川本第一製作所さんですね、川本ポンプですけど。それから、ネクステージさん、ほていやさん、シスムエンジニアリング、ネッツトヨタ中部さん、ジェイグループホールディングスさん、日本メディアシステム、朝日インテック、トーテックアメニティ、吉田SKT、アイアールと、今現在はこの11社がアート雇用をしていただいている企業であります。
次は、スライド19になります。企業と障害者アートの連携ということで、さきにも少しお話をさせていただきました一般社団法人アティックアートは、2017年度からあいちアール・ブリュットとアティックアート連携事業として、あいちアール・ブリュット展の出品作品からノベルティグッズの制作を行っています。採用された作者の方には、今後の作品制作の励みになるよう大村秀章知事さん、採用企業の代表の方、アティックアートの代表から作品採用に関わる謝礼や記念品等を贈呈するアティックアート贈呈式を開催しています。また、2018年からは障害のある方のアート活動を応援する企業や団体が障害のある方の社会参加の促進につなげていくため、これまでの採用作品や制作されたノベルティグッズを県内の企業、協力団体の社屋で展示するまちなかギャラリーも開催しております。
このスライドは、とても小さくて申し訳ないですけれども、2022年に協力していただいた企業とノベルティグッズです。
続いて、ふれあいアートBOXあいちについてお話をさせていただきます。ふれあいアートBOXあいちは、愛知県の知的障害児者及び自閉症児者とその家族を支援している一般社団法人愛知県知的障害児者生活サポート協会により創設されました。コンセプトは、愛知の企業が愛知のアーティストを応援するという考えであります。主に、ふれあいアート展で入賞された方を中心に、障害者アート作品をホームページに登録、公開することでノベルティグッズのデザインやパンフレット等に使っていただくという作品の2次利用と、また、購入したいという方と作家さんとの仲介を無償でやらせていただいております。ふれあいアートBOXの登録者からアートを通じてアート雇用につながった方も何人かお見えです。
現在、14社にスポンサーになっていただき、ホームページでの運用を行っております。いずれも愛知県に本部がある企業で、例えばアルペンさんとか朝日インテックさん、肉のスギモトさんなどが応援してくださっています。その中でAIG損害保険株式会社は外資系の会社で愛知県の企業ではありませんが、障害者アートに多大な協力をしていただいている企業であります。協力企業は、朝日インテック、アルペン、AIG損害保険、オオタ建設、オノコム、北嶋工業、ゴリラウェブ、ジェイアイシーセントラル、ジェイグループホールディングス、肉のスギモト、ホテルアークリッシュ豊橋、本州建設、三井屋工業、物語コーポレーションです。
次に、スライド23ですけれども、障害者アートの活用例というところで紹介をさせていただきます。
先ほど紹介させていただいた升山さんですけれども、スターバックス一宮富士店のお店と岐阜県の運転免許試験場の階段等、様々なところで使っていただいております。左の写真は、スターバックスで、それをつないでくださった女優の東ちづるさんです。お店での記念写真です。スターバックスは、全国で50店舗ぐらい東さんがつないでくださって、全国に障害者の方の絵を飾るとか、そういったコラボレーションをしていると思います。
それから、右の写真は、岐阜県の運転者講習センターでぎふ清流文化プラザというところの階段に採用されております。
それから、スライド24ですが、活用例の2例目といたしまして、運送会社のトラックの背面やカインズホームのカフエ、また、Tシャツのデザインやノベルティグッズのデザイン、中北薬品の消毒薬のラベルや大垣共立銀行の現金袋等、いろんなところで使っていただいております。
次のスライドは、最近、スーツの裏地を数年前からテーラーさんと組んで制作を行っています。今年、大谷翔平選手がオールスターのセレモニーで着たスーツの裏地にデコピンを見せて話題となりましたが、そんな感じです。右下の写真は、AIG損害保険の名古屋支店長さんと部長さんたちが作ってくださったスーツです。実は、私も今日着てきました。これは、升山さんのやつですけど。こんな感じです。デコピンとは違いますけど。ちなみに、これが1枚売れるとデザイン料が利用者さんにお金が入るという仕組みにしてあります。ちなみに、右上の写真は、大村秀章知事にも紹介した写真ですけれども、今のところオーダーは入っておりません。もうすぐ来るかなと思っていますけど。
次のスライドは、絵画だけではなく書道にも挑戦してみたらなかなか面白い作品が数多く生まれてきました。左の写真は、小牧市の市民展に応募したところ入選した作品です。左下の写真は、それぞれ市民展ですから達筆なそれぞれすばらしい作品の横に「がんばらない」が入選してびっくりしています。この賞を選んでくださった審査員に感謝と敬意を申し上げたいと思います。この字を書いたのは、銀河の小島一志さんです。そして、この字を見たジェイアイシーセントラルの社長さんがぜひ小島さんに社名を書いてほしいと依頼があり、会社の玄関に飾っていただいた写真が右上の写真であります。そして、当然、会社から謝礼を小島さんに頂きました。また、これを見た豊橋のオノコムさんという建設会社がうちにも書いてほしいということで、中央の真ん中にあるおのこむと書いた写真です。このように企業と障害者のアーティストの関係が今どんどん広がりつつあります。
ここで障害者アートの全国の動きは、今すごくあるんですけれども、一部紹介させていただきます。
まず、ヘラルボニーという会社です。ヘラルボニーは、岩手県盛岡市に拠点を置く会社で、最近は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している会社なので多分、皆さんの中で御存じの方も多いかと思います。この会社は、双子の弟兄弟が立ち上げた会社で、自閉症の四つ上のお兄さんがヘラルボニーと、ちょっと意味が分からないヘラルボニーという言葉をよく言うことで、それを社名にした会社であります。ヘラルボニーは、主に知的障害のある作家とライセンス契約をしてシャツやジャケット、ネクタイなどの製品を作って企業とコラボレーションするなど、アートイベントを展開しております。福祉×アート×ビジネスと、新しいコンセプトで日本はもとより世界に事業展開をしておられます。左の写真が双子の兄弟とお兄さんです。
2番目の写真がJALのビジネスクラスに乗るとアメニティでポーチをくださるんですけれども、そのデザインになったり、東京駅の八重洲口の切符売場とかの壁のデザインにもなっていたり、JR東日本の列車にラッピングをしたり、盛岡駅全体に障害者のアートがラッピングしてあります。ほかにも資生堂とか丸井グループ等、数多くの有名企業とコラボをしておられ、やっぱり若いだけあってすばらしい発想と活動がメインです。
続きまして、障害者アートの全国の動きの2番目は、スライド28番ですけれども、やまなみ工房というところです。やまなみ工房は、滋賀県甲賀市にある福祉作業所です。この作業所には多くの作家が所属しており、その活動は、制作や展覧会だけにとどまりません。異業種とのコラボレーションは、日本のみならず世界からも注目をされています。障害のある方が描いたデザインは、NHKのバリバラという番組のタイトルキャラに使われ、フランスのパリコレクションのデザインに多く採用されています。左の写真は、やまなみ工房です。一番右の写真はフランスのパリコレクションに採用されたポンチョみたいな服ですね。
それでは、全国の動きの三つ目として、常設の障害者美術館についてです。全国に名だたる常設の障害者美術館は今7か所あります。その中で一番有名なのは、滋賀県近江八幡市にありますボーダレス・アートミュージアムNO-MAです。愛知県も障害者アートにこれだけ力を入れてくださっているので、私の夢は愛知県に常設の美術館をぜひ造っていただきたいと思っています。以前から大村秀章知事にお願いしていますけれども、皆さんにもぜひお力をお貸しいただけますようお願いしたいと思っています。
7か所は、るんびにい美術館、岩手県の花巻市にあります。それから、はじまりの美術館、福島県の耶麻郡です。もう一つの美術館、栃木県の那須郡です。それから、さっき言いましたボーダレス・アートミュージアムNO-MA。5番目は、みずのき美術館で京都府の亀岡市にありますけれども。それから、6番目に鞆の津ミュージアム、広島県福山市にあります。それから、7番目は、藁工ミュージアム、高知県の高知市。これを見ますと、やっぱり愛知県とか大阪府がないですけれども、あと九州にもないですね。ぜひ愛知県にもできるといいなと思っているところです。
終わりに当たり、障害者アートは、絵をうまく描こうとかいう邪念はなくて自由に自分を表現したものだと思っています。そういう意味では、現代アートに近いものがあると思います。障害者アートの場合、固定観念にとらわれない内面から表出される発想やイマジネーションが強力なエネルギーとなっているのだと思います。
特に、自閉症スペクトラムと呼ばれている人は、我々と見え方や感じ方が違うため異次元のすばらしい作品が生まれるのだというふうに思います。捉え方が違うこと、強くこだわることで普通とは違った発想や価値観が生まれるのでしょう。今、世界三大自閉症と言われる方たちは、ビル・ゲイツだとか、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクと言われています。人と同じ発想では、決してiPhoneやテスラ等の誕生はなかったと思います。昔からレオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、アインシュタインなど、みんな発達障害だと言われています。何かに異常にこだわることで無限のパワーが生まれてくるのだと思います。障害をマイナスと見るのではなく、個が持つ感性をリスペクトして多様性を認めることで社会が変わり、国が求める共生社会の鍵となるのではないかというふうに思っています。
私は、知的に障害のある方は、どんなに障害が重くても心まで障害を持っていないといつも思っています。人として生まれてきて亡くなるときに生まれてきてよかったと思えるような人生を送っていただきたい、そんな思いでこれからもお手伝いができたらと思っていますので、今後ともご指導ご鞭撻よろしくお願い申し上げます。
今日はとりとめのない話をしましたけれども、ご清聴ありがとうございました。
(主な質疑)
【委員】
愛知県のアール・ブリュット展は、会場が家から近いこともあり、好んでよく出かけている。芸術はあまり詳しくないが、心が伝わるというか、描いている人の気持ちが伝わるため、いつも楽しみにしている。
9ページ、10ページの山本良比古氏の作品だが、11ページのノートルダムやドゥオーモ聖堂は、絵の技術を勉強した上で描かれたのかなと感じている。冊子の初めの部分で、勉強を特にせず描いているような文言があったと思うが、いかがか。
【参考人】
山本良比古氏は、知能指数が39で、会話もできない。最初からこんなにうまく描けるわけではない。最初は本当に、普通の一般の人が描くような絵を描いていた。その中で、公募展に絵を出したところ、入選した。そこで社会から認められたことが、彼にとって自信につながり、一気に頭角を現してきた。後で初期の作品を見せるが、絵を教えた訳ではない。もともと才能があったと思うが、小学校、中学校は勉強ができず、通知表もオール1であった。家にその通知表が残っているが、一つのきっかけでそういった才能が開花した。
【委員】
こういうものが自力で描けることに驚いている。
17ページの下から2行目に、「最近アート雇用を希望される企業が少なく」という表現が気になるが、最近とは、かつてに比べれば減ってきているという意味かと思うが、この理由をどのように考えているか。
【参考人】
理由は、景気などいろいろなことがあるかもしれないが、コロナ禍の影響も少なからずあると思う。本来であれば、在宅ワークであるが、最近は募集が減ってきており、これまで毎年三、四人程度はあったが、ここ一、二年は一人程度である。
原因は分からないが、宣伝が足りないのか、あるいは、障害者手帳があればカウントされるため、悪用しようと思えば、名前だけ借りて障害者アートをしているといって悪用できないこともない。実際はアートを描けない人でも、可能になってしまう。それが、アート雇用が広がっていかない一つの原因と個人的には思っている。
アート雇用の趣旨をきちんと理解し、会社としてその人を一人の社員、従業員として育てる会社もあるため、そういう会社にお願いしたいと思っている。
【委員】
27ページの(株)ヘラルボニーについて、先日、たまたまニュースで取上げられているのを見て、中山秀征氏の番組で放送されていたと思うが、ここの社長が言っていたのが、障害のある人がこういう仕事を通して、自分の生計を立てていく社会になればよいといっていた。先ほどの説明で、最低時給に合わせて、週20時間勤務するとのことだが、まだまだ自分で生計を維持していけるような給料をもらっていないかと思ったが、今働いている人で、1か月あたり平均どの程度の収入を得ているのか。
【参考人】
少なくとも20時間掛ける4で、結構な金額になる。特に、今まで障害の軽度な人、中度な人は企業に就職していたが、障害の重い人が絵を描いてこの給料をもらえるようになったため、母親たちが本当に喜んでいる。私のパート代より高いというぐらいであり、8万円程度の給料を得ている。
【委員】
お店などで採用され、作品を買ってもらうようなことがあれば、その売れたお金は描いた人に入るのか。
【参考人】
本人に入るお金は事業所によって違うが、全て入るわけではなく、手数料等が掛かってくるため、2割かもう少し少ない程度である。
【委員】
アート雇用について質問が出ていたが、1年ごとの契約なのか。また、長期契約の場合もあるのか。
【参考人】
大概は1年契約で更新制であるが、1年で退職したケースは1か所だけである。あとは、ずっと継続している場合や、本人の意向で辞めた人が二、三人いる。そういう人も、ほかの企業を探してほしいといっているため、会社と合わない場合もあると思っている。
【委員】
そうすると、この仕事を生活の糧にするのは少し難しいと感じており、就労継続A型やB型の作業所で働きながらといった、いわゆるダブルワークの人もいるのか。
【参考人】
基本的に、就労継続A型、B型で雇用されている人は、アート雇用が利用できないことになっている。いわゆるもっと重い生活介護を利用している人や、在宅の人がアート雇用の対象になる。
また、アート雇用だけの生活は難しいのではないかということだが、障害のある人は障害基礎年金ももらっているため、これと合わせればそれなりのお金になると思う。
ただ、それで本当に独立して生活していく分には少し足りないかもしれないが、年金の占める割合が結構大きいと思う。
【委員】
サポートされる側は、仲介手数料が発生したり、企業の契約として、マッチングの中でロイヤリティーが発生したりといった、団体の運営面でそういったことはあるのか。それとも、行政からの補助金が多くを占めるのか。
【参考人】
基本的に県から委託を受けているため、そういった手数料などは発生しない。一方、我々以外に最近、アート雇用を支援している企業があり、聞くところによると、企業から相談、コンサルティングのような管理費をもらって紹介するなど、勤怠を代行している会社はあるようである。そういった会社は今後増えてくるかもしれない。我々の場合は、基本的にお金が掛からない代わりに、フォローができない。
【委員】
アール・ブリュットや障害者アートとうたわずに、サザビーズやニューヨークなどで出展し、20万円や50万円といった値段で売れたという話や、そのような作家たちに所属をしてもらい、制作集団として活動している団体もあると報道で聞いたことがある。いわゆる個人事業主として、本当の独立したアーティストとして活動する人もいるのではないかと思う。
私の地元では、オカザえもんのパラ芸術祭というイベントを何年間か開催しているが、昨年、その作品を買いたいという人がいた。作品の取扱いをどうするか決めていなかったため、売れないという話をしたら残念そうに帰っていった。そんな話を大村秀章知事にしながら、障害者アートというくくりではなく、本当のアートとして、海外などのアートシーンへ進出してはどうかと大村秀章知事に聞いてみたところ、現代アートにおいては、単体ではなく、チームとしてキュレーションができ、制作意図を語れないと通用しないということであった。
障害者アートというと、どうしても障害者アートという枠の中で考えがちだが、現代アートといったものに近い形で、アートシーンの中で提案していける存在になれればよいと思う。障害者アートからアートへ育てるには、どのように進めたらよいか。
【参考人】
私も障害者アートという区別をしないほうがよいと思っている。岡崎市での事例のように作品を売るかどうかといった話では、障害のある人の意向をどう確認するかなど、著作権の問題で難しいところがあり、なかなか簡単にはいかないが、今はいろいろな専門家が法律をクリアできるよう取り組んでいる最中だと思っている。
また、この絵が幾らなのかを決めるのもなかなか難しい。一人でコツコツ絵を描いている施設の利用者が結構いるが、そういう作品を我々職員が何とも思わなくても、見る人が見るととんでもない作品だということもある。ある施設で、絵を描く紙がないため、食品を運ぶ段ボールに描かれた作品を、ある人がニューヨークへ持っていったところ、50万円で売れたことがあった。
別の例として、フランスのアール・ブリュット・ジャポネという、日本のアール・ブリュット作家の作品をフランスのローザンヌ美術館へ持っていったところ、フランスの人は障害という眼鏡をかけずに作品を見るため、大変好評であったという話を聞いたことがある。
我々も、障害があるかどうかではなく、作品を見て判断してもらえるようになってほしいと思っている。
【委員】
29ページの常設の美術館について、全国の七つの事例が挙げられているが、設置主体や、運営方式はどのようか。
【参考人】
七つ挙げたうち、実際に行ったのは2か所程度であり、具体的なことは承知していない。た知る限りでは、障害者施設や、社会福祉法人がバックアップしているところが一部にある。例えば、みずのき美術館や、鞆の津ミュージアムなどは、福祉施設がバックアップして、その傍らで運営がされている。また、ボーダレス・アートミュージアムは非常に有名であり、国の補助金をもらって運営をしている。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年8月28日(水) 午後1時~
会 場 第1委員会室
出 席 者
松本まもる、宮島謙治 正副委員長
神野博史、鈴木喜博、山本浩史、中根義高、南部文宏、成田 修、
長江正成、藤原 聖、阿部洋祐、加藤貴志、柴田高伸 各委員
川崎 純夫 参考人(愛知県知的障害児者生活サポート協会 理事長)
福祉局長、福祉部長、関係各課長等
委員会審査風景
<議 題>
障害者アートの可能性について
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
それでは、早速ですけれども、まず本題に入る前に少しだけ自己紹介をさせていただきたいと思います。
愛知県知的障害児者生活サポート協会は、知的障害や発達障害の方と、その家族の生活の安定と福祉を増進するために設立された協会であります。サポート協会が創設した制度として、生活サポート総合補償制度というものがあります。一般的に保険に加入することが難しい知的障害や発達障害の方の入院やけが、あるいは、個人賠償責任を負った場合に補償するもので、障害のある方が日常生活を送る上で安心を担保するためのものです。もともと互助会がベースで創設されたものなんですけれども、保険業法の改正等があり組織化をすることになりました。お互いが助け合うという互助の精神から始まっています。なので保険だけではなく成年後見として、家庭裁判所から委託を受けて現在40名の方の法人後見もしております。それ以外に、ふれあいアート展とかスポーツ振興、あるいは、研修だとか相談等、様々な生活をサポートしている団体であります。
サポート協会は、全国組織でございまして、全国で今15万5,000人の方が加入しており、愛知県では7,500人の方が会員として在籍しておられます。
もう一つ、こちらは私の本業でして、障害者施設サンフレンドの施設長をしております。サンフレンドは、小牧市にある知的に障害のある方の大人の入所施設で、平成11年に開所して以来今年で25年目になります。そのほか、日中活動の施設として銀河という施設とサンビレッジという通所の施設、そして、グループホームを今10か所運営しております。これらの事業の中で、後ほど話をさせていただきますアート活動に力を入れており、現在いろいろなアート活動のお手伝いをさせていただいております。
それでは、今日のお話について少し項目を挙げさせていただきました。まず、一つ目は障害者アートについてということ、二つ目は愛知県における障害者アートへの取組、三つ目といたしましてアート雇用について、四つ目といたしまして企業と障害者とアートの関係について、それから五つ目として障害者アートの活用例を紹介させていただいて、六つ目は障害者アートの全国の動きを一部ですけれども紹介をさせていただきたいと思います。そして、7番目としてまとめに入りたいと思います。
それでは、早速ですけれども、障害者アートについてお話をさせていただきます。障害者アートは、昨今、デザインが斬新ですばらしいということで企業による商品化や各所で様々な形で使用され、世界的にも注目されつつあります。障害者アートの呼称につきましては、アウトサイドアートとかボーダーレスアートとかアール・ブリュット等というふうに今呼ばれることが多いんですけれども、最近ではアール・ブリュットという言い方が多く使われ、アール・ブリュット、イコール障害者アートとされつつあります。本来の意味は、障害者に限ったものではありません。アール・ブリュットとは、生の芸術という意味からフランス語でアートは芸術、ブリュットはワインなど生のままであるとして画家のジャン・デュビュッフェが1945年に考案した言葉だそうです。正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した既成の芸術モードに影響を受けていない絵画や造形のことです。つまり、障害があってもなくても心に感じたこと、思ったことを自由に表現することが唯一無二のすばらしい作品であるということだというふうに思います。
それでは、ここで障害者アートの作家を3人ほど紹介させていただきたいと思います。初めに、升山和明さんです。升山さんは、サンフレンドの利用者で今年57歳になります。重度の知的障害と自閉症を重複しておられます。一般的に自閉症の方はこだわりが強いというふうに言われますけれども、升山さんも同じで、ふだんはクモの巣が気になるようで、我々には見えないクモの巣が彼には見えるようで、施設の中のクモの巣を取って歩いておられます。背が届かない場所については、3メートルぐらいの物干し竿を持ってそれで取ろうとして施設の中を走っているんですけれども、その姿を見ると、まさに棒高跳びの選手みたいな感じでいつもクモの巣を取っておられます。
そんな升山さんですけれども、カレンダーについては、未来の曜日も知っておられます。例えば「2025年5月10日は」って聞きますと、「土曜日」と1秒ぐらいで答えます。過去に遡っても言えます。「1825年3月5日は」と尋ねると「金曜日」と1秒で本当に答えることができます。我々は、ちょっと分からないのでコンピューターで調べると、ちゃんとそれが合っているという。記憶しているのか、計算しているのか、ちょっとよく分かりません。本人に聞いても分からない。ただ、お母さんに聞きますと、小学生の頃からカレンダーについては言えるというふうに言っておられます。
それと、絶対音感というんですか、一度聞いた音楽は譜面がなくてもピアノで再生することができる。すばらしい才能があって、まさに、こういうのをサヴァン症候群と言うんですけれども、そういった才能をお持ちです。
これが升山さんの作品ですが、絵画については、独特の世界観からすばらしい作品を完成されておられ、小牧市の市民美術展では一般の市民の中から市議会議長賞を受賞し、あいちアール・ブリュット展、ふれあいアート展と様々なアート展で入賞されておられます。一昨年には、愛知県が主催する国際芸術祭あいち2022、一番右側のパンフレットですけれども、こちらの作家にも選出されました。
これ、彼ですけれども、彼のモチーフは、かつて犬山にありましたスーパーの清水屋です。今は、取り壊されてスギ薬局になってしまいましたけれども、とにかく清水屋とタクシーが彼の作品のモチーフとなっております。後ほど、彼の作品の活用例を紹介させていただきたいと思います。
次は、茅野大輔さんです。茅野さんは、銀河という通所施設の利用者で今年39歳になります。彼も重度の知的障害と自閉症を重複しておられます。茅野さんもこだわりが強くいろいろなルーティンがあって、例えば何かを触ってから行動すると、触れることがスイッチになっているように思います。私どもの施設を利用する前までは絵を描くことはなかったんですが、実際、描いていただくと、とても個性的な面白い絵を描くことに気付いて、今ではあいちアール・ブリュット展の優秀作品に選ばれるなど、各公募展で度々入選するまでになりました。この魚の絵はちょっと小さいですけれども、実際の作品もそんなに大きくないですけれども、色を塗るときに色鉛筆が並んでいる順番に塗っていきます。すごく細かくて見にくいんですけど、右から例えば青、赤、ずっとそれを繰り返し繰り返し魚に塗っていくという感じで、右下の作品は完成した作品です。
それから、次、絵だけではなく陶芸とか書道もやってもらったところ、すばらしい才能があることが分かってきました。陶芸の作品も本当に器用にパーツを丸めて根気よく貼りつけていきます。あと、ジグソーパズルが得意で、形を見ただけでパッパッパッパッはめていけるという、頭の中で空間認知というのかすごくすばらしいものがあります。右下が彼ですけれども、39歳になりました。真ん中の「あらま~ッ」は書道の絵ですけれども、なかなか面白いし、まさに天才ではないかなと思います。
次に、山本良比古さんです。山本良比古さんという名前は、一昔前、テレビや新聞で随分取り上げられたのでひょっとしたら御存じの方も見えるかもしれません。また、愛知県庁の福祉局長さん、今日来て見えますけれども、局長室にも絵が飾ってあり、愛知県総合教育センターの壁画にもなっております。
良比古さんは、昭和23年名古屋の西区に生まれて、生まれながらに脳水腫、重度の知的障害があり、IQは39、療育手帳A判定ですけれども、それとさらに重複して聴覚障害、身体障害者2級による言語障害の三重苦の障害があります。この絵は、「桜の犬山城」、そして、「犬山の鵜飼」ですね、これを描いた絵であります。これは富士山を描いたんですけれども、赤富士とか富士川を描いた絵ですけれども、よく「昭和の北斎」とか「虹の絵師」というふうにも呼ばれたことがあります。
次は、先日、オリンピックがパリで開催されましたけれども、火災に遭う前のノートルダム寺院です。右の作品は、イタリアのミラノのドゥオーモ聖堂で130号の大きさです。畳、大体2枚ぐらいの大きさで大きな作品です。皆さん、この絵を見て定規を使って描いたんじゃないかというふうによくおっしゃられますけれども全てフリーハンドで描きます。
良比古さんは、愛知県の障害者アートの草分け的存在でしたけれども、残念なことに4年前の2020年9月に73歳で亡くなってしまいました。ただ、良比古さんが残した功績は、重度の障害を持つ方の希望となり、人間の可能性は無限であるということを証明してくれたんではないかなというふうに思っております。
次のスライドですけれども、愛知県における障害者アートの取組というところであります。資料12ページになると思いますけれども。愛知県は、障害者の文化芸術促進のために2014年からあいちアール・ブリュット展を積極的に開催され、昨年10周年を迎えました。その間、2016年には、第16回全国障害者芸術・文化祭あいち大会を開催され、大きな成果を挙げられました。さらに、今まで名古屋が中心であったあいちアール・ブリュット展を三河にも広げようということで、豊川市の桜ヶ丘ミュージアムにおいて、あいちアール・ブリュット・サテライト展を開催しています。
あいちアール・ブリュット展は、毎年700点余りの応募作品の中から30点を優秀作品として選考し、優秀作品特別展として愛知芸術文化センターで3月に開催しております。受賞に当たって、大村秀章知事から直々に表彰状と盾を授与していただいています。このことは、受賞された方の自信と誇りにつながり、今後の創作活動のモチベーションへとつながっていると思います。今年9月に予定しています第11回あいちアール・ブリュット展は、既に700点を超える応募があり、どんな作品が出展されるか非常に楽しみにしているところです。知事さんもそうですけれども、副知事さんも毎年見に来てくださり、副知事室にも作品を飾っていただくなど、障害者アートの応援をしてくださっています。
あいちアール・ブリュット展は、回を重ねるごとにバージョンアップをしており、絵画だけでなくバンドやダンスの舞台発表にも広がり、今では愛知県立芸術大学の学生さんと連携するなど、障害者の理解にもつながる大きな役割を担っております。
次、スライド13です。さらに、あいちアール・ブリュット展との連携事業として、展示作品の中から一般社団法人アティックアートと連携し、企業のノベルティグッズのデザインとして採用することで社会参加の機会と企業連携につながっています。
次に、あいちアール・ブリュット展の関連事業として、障害者アートを多くの方に見てもらいたく、県の図書館や商業施設等で巡回展示を行うなど、今年から愛知県内の芸術大学との連携企画として名古屋芸術大学や名古屋造形大学での展示やトークイベントも行っています。
また、愛知県では、芸術活動を普及するために芸大の教員らが障害者施設に出向いて絵画、陶芸、書道等、出前講座を実施し、芸術の楽しさを体験する出前講座も行っています。
これ以外の取組といたしまして、愛知県障害者芸術文化活動支援センターへの補助事業を行っており、相談支援や人材育成等、文化芸術の普及を推進しています。
また、アートを活用した障害者地域生活支援コーディネート事業を実施し、アートの才能を持つ障害のある方の一般企業への就職、いわゆるアート雇用に向けた生活支援全般のコーディネートを行っています。この事業は、愛知県知的障害児者生活サポート協会が愛知県から委託を受けてお手伝いをさせていただいております。
次に、スライド14。これから、アート雇用についてちょっとお話をさせていただきます。アート雇用は、芸術を通して就労の可能性を切り開くということで、在宅または障害者の作業所に通っている方が自宅等で創作活動を行い、企業と雇用契約を結ぶ在宅就労という雇用形態です。この取組は、2016年度の、先ほど委員長さんから説明もありましたように、2016年のあいちアール・ブリュット展で入選した2人がきっかけで愛知県障害福祉課と愛知労働局、ハローワークと福祉の専門家が共同して始まり、現在11社、21名の方が就職されておられます。
アート雇用は、企業が障害者を雇用することで会社の広告塔となりイメージアップと障害者雇用により法定雇用率のカウントになります。また、障害者の方も社会の一員として認められることと最低賃金の給料がもらえるということで、お互いがウィン・ウィンの関係になるよう全国に先駆けた取組だと思います。
主なアート雇用の業務内容ですけども、企業名を明示して作品展に出展することで企業のPRになる。店舗や企業の応接室や会議室に作品を飾る。また、企業のカレンダー等のデザインに採用したり企業のノベルティグッズなどのデザインに採用するなどなど様々であります。
雇用契約に基づいて賃金が当然支払われます。多くの場合は、時給制で最低賃金が適用されます。従業員として労働時間の管理が必要となります。そのため勤怠報告は、企業によって違いますけれども、1週間に一度ファクスかメールで報告する企業が多いです。また、企業によっては月に一度ぐらい作品を持って出社してくださいというところもあれば、作品を写真に撮って、そのデータを送るような企業もあります。精神障害や身体障害の方は御自分で勤怠報告ができますが、知的に障害のある方は報告が難しい方が多いので御家族の方が本人に代わって報告をしていただいたりしております。
次、アート雇用の流れです。基本的な採用までの流れは、アート雇用を考える企業がハローワークに相談して求人票を出していただきます。一方で、アート雇用を希望する障害のある方は、事前に登録していただいてアート雇用を希望する企業に作品を紹介します。作品が企業の希望するイメージとうまくマッチングができたら障害者がハローワークに申し込み、その後、面接をしてうまく採用されれば契約に至るというような流れであります。
スライドの16です。障害者雇用率としてカウントされますが、これは障害種別や重度によってカウントが少し変わってきます。雇用契約の締結が基本となり、雇用保険に加入する関係で週20時間以上の勤務が必要となります。また、条件が合えば週30時間の方も見えますけれども、基本的に在宅の方は30時間でも可能ですが、生活介護事業所とか作業所に通っている方は週20時間ぐらいが妥当になります。週30時間になると、雇用保険のほかに社会保険への加入が求められます。週20時間と簡単に言いますけれども、毎日、絵を描き続けるということは非常に難しいと思います。そこで次に何を描こうかとか、いろいろイマジネーションとか想像する時間も勤怠の時間に含めてほしいということと、また、好きな魚の絵を描くことが得意な方は、水族館に行って取材をすると、そういった時間もカウントしてもらうようにお願いをしています。会社によっては、取材の交通費や絵の具の画材等を経費として認めてくださる会社もあります。
そして、次に企業がどんな作家さんを求めているかですが、企業が求める作品は千差万別です。例えば会社のイメージカラーがブルーなので、青を基調とした作品を希望される会社もあれば、飲食業なのでメニューに反映できる作品を希望される会社もあれば、あるいは、医療関係なので医療に関係する作品を描けないかとか、また、抽象的な柔らかいイメージの作品を希望される会社もあり様々であります。いろいろな作品を見ていただき、できるだけ希望に沿う作家さんとのマッチングができるように努めているところです。
しかし、アート雇用はいいことばかりじゃなくて、少し懸念事項があります。アート雇用により採用されることは喜ばしいことですけれども、企業は法定雇用率だけ達成するために誰でもよいからということが起きるんではないかという可能性があります。例えば、採用したけど別に会社に来なくていいよとか、せっかく描いた作品を倉庫にしまっているだけとか、そういう形ではアート雇用の趣旨とはちょっと違ってきて非常に悲しい結果になります。そのため、面接時に会社の方針や担当者の考え方を十分に聞いた上で作家の推薦を行っております。
最近、アート雇用を希望される企業が少ないです。我々のPR不足もあると思いますが、できるだけ広がっていくようにこれからも努めていきたいと思っているところです。
先ほど、お話ししました現在採用していただいている企業がこちらの11社です。川本第一製作所さんですね、川本ポンプですけど。それから、ネクステージさん、ほていやさん、シスムエンジニアリング、ネッツトヨタ中部さん、ジェイグループホールディングスさん、日本メディアシステム、朝日インテック、トーテックアメニティ、吉田SKT、アイアールと、今現在はこの11社がアート雇用をしていただいている企業であります。
次は、スライド19になります。企業と障害者アートの連携ということで、さきにも少しお話をさせていただきました一般社団法人アティックアートは、2017年度からあいちアール・ブリュットとアティックアート連携事業として、あいちアール・ブリュット展の出品作品からノベルティグッズの制作を行っています。採用された作者の方には、今後の作品制作の励みになるよう大村秀章知事さん、採用企業の代表の方、アティックアートの代表から作品採用に関わる謝礼や記念品等を贈呈するアティックアート贈呈式を開催しています。また、2018年からは障害のある方のアート活動を応援する企業や団体が障害のある方の社会参加の促進につなげていくため、これまでの採用作品や制作されたノベルティグッズを県内の企業、協力団体の社屋で展示するまちなかギャラリーも開催しております。
このスライドは、とても小さくて申し訳ないですけれども、2022年に協力していただいた企業とノベルティグッズです。
続いて、ふれあいアートBOXあいちについてお話をさせていただきます。ふれあいアートBOXあいちは、愛知県の知的障害児者及び自閉症児者とその家族を支援している一般社団法人愛知県知的障害児者生活サポート協会により創設されました。コンセプトは、愛知の企業が愛知のアーティストを応援するという考えであります。主に、ふれあいアート展で入賞された方を中心に、障害者アート作品をホームページに登録、公開することでノベルティグッズのデザインやパンフレット等に使っていただくという作品の2次利用と、また、購入したいという方と作家さんとの仲介を無償でやらせていただいております。ふれあいアートBOXの登録者からアートを通じてアート雇用につながった方も何人かお見えです。
現在、14社にスポンサーになっていただき、ホームページでの運用を行っております。いずれも愛知県に本部がある企業で、例えばアルペンさんとか朝日インテックさん、肉のスギモトさんなどが応援してくださっています。その中でAIG損害保険株式会社は外資系の会社で愛知県の企業ではありませんが、障害者アートに多大な協力をしていただいている企業であります。協力企業は、朝日インテック、アルペン、AIG損害保険、オオタ建設、オノコム、北嶋工業、ゴリラウェブ、ジェイアイシーセントラル、ジェイグループホールディングス、肉のスギモト、ホテルアークリッシュ豊橋、本州建設、三井屋工業、物語コーポレーションです。
次に、スライド23ですけれども、障害者アートの活用例というところで紹介をさせていただきます。
先ほど紹介させていただいた升山さんですけれども、スターバックス一宮富士店のお店と岐阜県の運転免許試験場の階段等、様々なところで使っていただいております。左の写真は、スターバックスで、それをつないでくださった女優の東ちづるさんです。お店での記念写真です。スターバックスは、全国で50店舗ぐらい東さんがつないでくださって、全国に障害者の方の絵を飾るとか、そういったコラボレーションをしていると思います。
それから、右の写真は、岐阜県の運転者講習センターでぎふ清流文化プラザというところの階段に採用されております。
それから、スライド24ですが、活用例の2例目といたしまして、運送会社のトラックの背面やカインズホームのカフエ、また、Tシャツのデザインやノベルティグッズのデザイン、中北薬品の消毒薬のラベルや大垣共立銀行の現金袋等、いろんなところで使っていただいております。
次のスライドは、最近、スーツの裏地を数年前からテーラーさんと組んで制作を行っています。今年、大谷翔平選手がオールスターのセレモニーで着たスーツの裏地にデコピンを見せて話題となりましたが、そんな感じです。右下の写真は、AIG損害保険の名古屋支店長さんと部長さんたちが作ってくださったスーツです。実は、私も今日着てきました。これは、升山さんのやつですけど。こんな感じです。デコピンとは違いますけど。ちなみに、これが1枚売れるとデザイン料が利用者さんにお金が入るという仕組みにしてあります。ちなみに、右上の写真は、大村秀章知事にも紹介した写真ですけれども、今のところオーダーは入っておりません。もうすぐ来るかなと思っていますけど。
次のスライドは、絵画だけではなく書道にも挑戦してみたらなかなか面白い作品が数多く生まれてきました。左の写真は、小牧市の市民展に応募したところ入選した作品です。左下の写真は、それぞれ市民展ですから達筆なそれぞれすばらしい作品の横に「がんばらない」が入選してびっくりしています。この賞を選んでくださった審査員に感謝と敬意を申し上げたいと思います。この字を書いたのは、銀河の小島一志さんです。そして、この字を見たジェイアイシーセントラルの社長さんがぜひ小島さんに社名を書いてほしいと依頼があり、会社の玄関に飾っていただいた写真が右上の写真であります。そして、当然、会社から謝礼を小島さんに頂きました。また、これを見た豊橋のオノコムさんという建設会社がうちにも書いてほしいということで、中央の真ん中にあるおのこむと書いた写真です。このように企業と障害者のアーティストの関係が今どんどん広がりつつあります。
ここで障害者アートの全国の動きは、今すごくあるんですけれども、一部紹介させていただきます。
まず、ヘラルボニーという会社です。ヘラルボニーは、岩手県盛岡市に拠点を置く会社で、最近は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している会社なので多分、皆さんの中で御存じの方も多いかと思います。この会社は、双子の弟兄弟が立ち上げた会社で、自閉症の四つ上のお兄さんがヘラルボニーと、ちょっと意味が分からないヘラルボニーという言葉をよく言うことで、それを社名にした会社であります。ヘラルボニーは、主に知的障害のある作家とライセンス契約をしてシャツやジャケット、ネクタイなどの製品を作って企業とコラボレーションするなど、アートイベントを展開しております。福祉×アート×ビジネスと、新しいコンセプトで日本はもとより世界に事業展開をしておられます。左の写真が双子の兄弟とお兄さんです。
2番目の写真がJALのビジネスクラスに乗るとアメニティでポーチをくださるんですけれども、そのデザインになったり、東京駅の八重洲口の切符売場とかの壁のデザインにもなっていたり、JR東日本の列車にラッピングをしたり、盛岡駅全体に障害者のアートがラッピングしてあります。ほかにも資生堂とか丸井グループ等、数多くの有名企業とコラボをしておられ、やっぱり若いだけあってすばらしい発想と活動がメインです。
続きまして、障害者アートの全国の動きの2番目は、スライド28番ですけれども、やまなみ工房というところです。やまなみ工房は、滋賀県甲賀市にある福祉作業所です。この作業所には多くの作家が所属しており、その活動は、制作や展覧会だけにとどまりません。異業種とのコラボレーションは、日本のみならず世界からも注目をされています。障害のある方が描いたデザインは、NHKのバリバラという番組のタイトルキャラに使われ、フランスのパリコレクションのデザインに多く採用されています。左の写真は、やまなみ工房です。一番右の写真はフランスのパリコレクションに採用されたポンチョみたいな服ですね。
それでは、全国の動きの三つ目として、常設の障害者美術館についてです。全国に名だたる常設の障害者美術館は今7か所あります。その中で一番有名なのは、滋賀県近江八幡市にありますボーダレス・アートミュージアムNO-MAです。愛知県も障害者アートにこれだけ力を入れてくださっているので、私の夢は愛知県に常設の美術館をぜひ造っていただきたいと思っています。以前から大村秀章知事にお願いしていますけれども、皆さんにもぜひお力をお貸しいただけますようお願いしたいと思っています。
7か所は、るんびにい美術館、岩手県の花巻市にあります。それから、はじまりの美術館、福島県の耶麻郡です。もう一つの美術館、栃木県の那須郡です。それから、さっき言いましたボーダレス・アートミュージアムNO-MA。5番目は、みずのき美術館で京都府の亀岡市にありますけれども。それから、6番目に鞆の津ミュージアム、広島県福山市にあります。それから、7番目は、藁工ミュージアム、高知県の高知市。これを見ますと、やっぱり愛知県とか大阪府がないですけれども、あと九州にもないですね。ぜひ愛知県にもできるといいなと思っているところです。
終わりに当たり、障害者アートは、絵をうまく描こうとかいう邪念はなくて自由に自分を表現したものだと思っています。そういう意味では、現代アートに近いものがあると思います。障害者アートの場合、固定観念にとらわれない内面から表出される発想やイマジネーションが強力なエネルギーとなっているのだと思います。
特に、自閉症スペクトラムと呼ばれている人は、我々と見え方や感じ方が違うため異次元のすばらしい作品が生まれるのだというふうに思います。捉え方が違うこと、強くこだわることで普通とは違った発想や価値観が生まれるのでしょう。今、世界三大自閉症と言われる方たちは、ビル・ゲイツだとか、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクと言われています。人と同じ発想では、決してiPhoneやテスラ等の誕生はなかったと思います。昔からレオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、アインシュタインなど、みんな発達障害だと言われています。何かに異常にこだわることで無限のパワーが生まれてくるのだと思います。障害をマイナスと見るのではなく、個が持つ感性をリスペクトして多様性を認めることで社会が変わり、国が求める共生社会の鍵となるのではないかというふうに思っています。
私は、知的に障害のある方は、どんなに障害が重くても心まで障害を持っていないといつも思っています。人として生まれてきて亡くなるときに生まれてきてよかったと思えるような人生を送っていただきたい、そんな思いでこれからもお手伝いができたらと思っていますので、今後ともご指導ご鞭撻よろしくお願い申し上げます。
今日はとりとめのない話をしましたけれども、ご清聴ありがとうございました。
(主な質疑)
【委員】
愛知県のアール・ブリュット展は、会場が家から近いこともあり、好んでよく出かけている。芸術はあまり詳しくないが、心が伝わるというか、描いている人の気持ちが伝わるため、いつも楽しみにしている。
9ページ、10ページの山本良比古氏の作品だが、11ページのノートルダムやドゥオーモ聖堂は、絵の技術を勉強した上で描かれたのかなと感じている。冊子の初めの部分で、勉強を特にせず描いているような文言があったと思うが、いかがか。
【参考人】
山本良比古氏は、知能指数が39で、会話もできない。最初からこんなにうまく描けるわけではない。最初は本当に、普通の一般の人が描くような絵を描いていた。その中で、公募展に絵を出したところ、入選した。そこで社会から認められたことが、彼にとって自信につながり、一気に頭角を現してきた。後で初期の作品を見せるが、絵を教えた訳ではない。もともと才能があったと思うが、小学校、中学校は勉強ができず、通知表もオール1であった。家にその通知表が残っているが、一つのきっかけでそういった才能が開花した。
【委員】
こういうものが自力で描けることに驚いている。
17ページの下から2行目に、「最近アート雇用を希望される企業が少なく」という表現が気になるが、最近とは、かつてに比べれば減ってきているという意味かと思うが、この理由をどのように考えているか。
【参考人】
理由は、景気などいろいろなことがあるかもしれないが、コロナ禍の影響も少なからずあると思う。本来であれば、在宅ワークであるが、最近は募集が減ってきており、これまで毎年三、四人程度はあったが、ここ一、二年は一人程度である。
原因は分からないが、宣伝が足りないのか、あるいは、障害者手帳があればカウントされるため、悪用しようと思えば、名前だけ借りて障害者アートをしているといって悪用できないこともない。実際はアートを描けない人でも、可能になってしまう。それが、アート雇用が広がっていかない一つの原因と個人的には思っている。
アート雇用の趣旨をきちんと理解し、会社としてその人を一人の社員、従業員として育てる会社もあるため、そういう会社にお願いしたいと思っている。
【委員】
27ページの(株)ヘラルボニーについて、先日、たまたまニュースで取上げられているのを見て、中山秀征氏の番組で放送されていたと思うが、ここの社長が言っていたのが、障害のある人がこういう仕事を通して、自分の生計を立てていく社会になればよいといっていた。先ほどの説明で、最低時給に合わせて、週20時間勤務するとのことだが、まだまだ自分で生計を維持していけるような給料をもらっていないかと思ったが、今働いている人で、1か月あたり平均どの程度の収入を得ているのか。
【参考人】
少なくとも20時間掛ける4で、結構な金額になる。特に、今まで障害の軽度な人、中度な人は企業に就職していたが、障害の重い人が絵を描いてこの給料をもらえるようになったため、母親たちが本当に喜んでいる。私のパート代より高いというぐらいであり、8万円程度の給料を得ている。
【委員】
お店などで採用され、作品を買ってもらうようなことがあれば、その売れたお金は描いた人に入るのか。
【参考人】
本人に入るお金は事業所によって違うが、全て入るわけではなく、手数料等が掛かってくるため、2割かもう少し少ない程度である。
【委員】
アート雇用について質問が出ていたが、1年ごとの契約なのか。また、長期契約の場合もあるのか。
【参考人】
大概は1年契約で更新制であるが、1年で退職したケースは1か所だけである。あとは、ずっと継続している場合や、本人の意向で辞めた人が二、三人いる。そういう人も、ほかの企業を探してほしいといっているため、会社と合わない場合もあると思っている。
【委員】
そうすると、この仕事を生活の糧にするのは少し難しいと感じており、就労継続A型やB型の作業所で働きながらといった、いわゆるダブルワークの人もいるのか。
【参考人】
基本的に、就労継続A型、B型で雇用されている人は、アート雇用が利用できないことになっている。いわゆるもっと重い生活介護を利用している人や、在宅の人がアート雇用の対象になる。
また、アート雇用だけの生活は難しいのではないかということだが、障害のある人は障害基礎年金ももらっているため、これと合わせればそれなりのお金になると思う。
ただ、それで本当に独立して生活していく分には少し足りないかもしれないが、年金の占める割合が結構大きいと思う。
【委員】
サポートされる側は、仲介手数料が発生したり、企業の契約として、マッチングの中でロイヤリティーが発生したりといった、団体の運営面でそういったことはあるのか。それとも、行政からの補助金が多くを占めるのか。
【参考人】
基本的に県から委託を受けているため、そういった手数料などは発生しない。一方、我々以外に最近、アート雇用を支援している企業があり、聞くところによると、企業から相談、コンサルティングのような管理費をもらって紹介するなど、勤怠を代行している会社はあるようである。そういった会社は今後増えてくるかもしれない。我々の場合は、基本的にお金が掛からない代わりに、フォローができない。
【委員】
アール・ブリュットや障害者アートとうたわずに、サザビーズやニューヨークなどで出展し、20万円や50万円といった値段で売れたという話や、そのような作家たちに所属をしてもらい、制作集団として活動している団体もあると報道で聞いたことがある。いわゆる個人事業主として、本当の独立したアーティストとして活動する人もいるのではないかと思う。
私の地元では、オカザえもんのパラ芸術祭というイベントを何年間か開催しているが、昨年、その作品を買いたいという人がいた。作品の取扱いをどうするか決めていなかったため、売れないという話をしたら残念そうに帰っていった。そんな話を大村秀章知事にしながら、障害者アートというくくりではなく、本当のアートとして、海外などのアートシーンへ進出してはどうかと大村秀章知事に聞いてみたところ、現代アートにおいては、単体ではなく、チームとしてキュレーションができ、制作意図を語れないと通用しないということであった。
障害者アートというと、どうしても障害者アートという枠の中で考えがちだが、現代アートといったものに近い形で、アートシーンの中で提案していける存在になれればよいと思う。障害者アートからアートへ育てるには、どのように進めたらよいか。
【参考人】
私も障害者アートという区別をしないほうがよいと思っている。岡崎市での事例のように作品を売るかどうかといった話では、障害のある人の意向をどう確認するかなど、著作権の問題で難しいところがあり、なかなか簡単にはいかないが、今はいろいろな専門家が法律をクリアできるよう取り組んでいる最中だと思っている。
また、この絵が幾らなのかを決めるのもなかなか難しい。一人でコツコツ絵を描いている施設の利用者が結構いるが、そういう作品を我々職員が何とも思わなくても、見る人が見るととんでもない作品だということもある。ある施設で、絵を描く紙がないため、食品を運ぶ段ボールに描かれた作品を、ある人がニューヨークへ持っていったところ、50万円で売れたことがあった。
別の例として、フランスのアール・ブリュット・ジャポネという、日本のアール・ブリュット作家の作品をフランスのローザンヌ美術館へ持っていったところ、フランスの人は障害という眼鏡をかけずに作品を見るため、大変好評であったという話を聞いたことがある。
我々も、障害があるかどうかではなく、作品を見て判断してもらえるようになってほしいと思っている。
【委員】
29ページの常設の美術館について、全国の七つの事例が挙げられているが、設置主体や、運営方式はどのようか。
【参考人】
七つ挙げたうち、実際に行ったのは2か所程度であり、具体的なことは承知していない。た知る限りでは、障害者施設や、社会福祉法人がバックアップしているところが一部にある。例えば、みずのき美術館や、鞆の津ミュージアムなどは、福祉施設がバックアップして、その傍らで運営がされている。また、ボーダレス・アートミュージアムは非常に有名であり、国の補助金をもらって運営をしている。