委員会情報
委員会審査状況
一般会計・特別会計決算特別委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年11月15日(水) 午後0時58分~
会 場 第8委員会室
出 席 者
鈴木喜博、寺西むつみ 正副委員長
伊藤辰夫、山本浩史、神戸健太郎、丹羽洋章、山田たかお、杉江繁樹
高橋正子、日比たけまさ、黒田太郎、加藤貴志、神谷まさひろ 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、経済産業局技監、
情報通信(ICT)政策推進監、中小企業部長、産業部長、
革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、畜産振興監、
水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、
会計管理者兼会計局長、同次長、
監査委員事務局長、同次長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 決 算
決算第1号 令和4年度愛知県一般会計歳入歳出決算
歳出第5款経済労働費、第6款農林水産費及びこれらに
関する歳入
決算第6号 令和4年度愛知県中小企業設備導入資金特別会計歳入歳出
決算
決算第7号 令和4年度愛知県就農支援資金特別会計歳入歳出決算
決算第8号 令和4年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計歳入歳出決算
決算第9号 令和4年度愛知県県有林野特別会計歳入歳出決算
決算第10号 令和4年度愛知県林業改善資金特別会計歳入歳出決算
<会議の概要>
Ⅰ 経済産業局、労働局、観光コンベンション局、労働委員会事務局関係
1 開 会
2 決算概要の説明
3 質 疑
4 休 憩(午後3時2分)
Ⅱ 農業水産局、農林基盤局関係
5 再 開(午後3時15分)
6 決算概要の説明
7 質 疑
8 閉 会
(主な質疑)
《経済産業局、労働局、観光コンベンション局関係》
【委員】
令和4年度決算に関する報告書173ページの商業振興事業費について、市町村が実施したプレミアム商品券発行事業を対象にしたげんき商店街推進事業費補助金の制度の概要と、県が補助金を出した自治体の数及び補助金の総額について伺う。
【理事者】
げんき商店街推進事業費全体の決算額6億2,275万円のうち、事務費を除いたげんき商店街推進事業費補助金に係る決算額は総額6億2,268万6,000円であり、そのうち、プレミアム商品券発行事業分は5億2,767万8,000円である。この補助金は市町村を対象として交付するものであり、プレミアム商品券発行事業では、34市町村に補助金を交付している。
プレミアム商品券発行事業の制度概要について、補助要件は消費喚起に資することを目的としたプレミアム商品券発行事業であり、プレミアム率が20パーセント以上で実施される事業であることとなっている。また、補助対象経費は、換金経費のうちプレミアム分の額、補助率は、補助対象経費の2分の1以内となっている。
なお、補助率は、補助限度額として市町村の規模に応じた上限額を設定している。具体的には、政令指定都市8,000万円、中核市2,800万円、その他の市町村1,400万円の上限を設けている。
【委員】
この後の質問を分かりやすくするために、安城市で行った例を説明する。私の地元、刈谷市は、令和4年度の当該事業に参加しなかったため、隣の安城市を参考に紹介をさせてもらう。
まず、このプレミアム商品券の販売総額は10億8,000万円であった。プレミアム率20パーセントのプレミアム分は1億7,800万余円であったことから、1億7,800万余円のうち、県の補助対象額は、その2分の1という条件に照らすと約5,000万円が補助される。しかし、もう一方の条件で上限額にかかるため、安城市の場合は県からの補助は1,400万円となり、プレミアム分に対する補助金の額、実質的な補助率は7.8パーセントであった。
そこで、今回、34市町村が実施した中で補助率の上限2分の1に引っかかった自治体は幾つあるのか。また、上限額に引っかかった自治体で実質的な補助率が10パーセント未満の自治体は幾つあったのか。10パーセント台、20パーセント台、30パーセント台、40パーセント台の自治体の数をそれぞれ示してほしい。
【理事者】
令和4年度のプレミアム商品券発行事業で県から補助金を交付した34市町村のうち、上限に達せず補助率2分の1、50パーセントの額で交付したのは4市町村で、残る30市町は上限額での交付となっている。
上限額で交付した30市町に対するそれぞれのプレミアム分の額に占める県からの補助額の割合は、40パーセント台が2市、30パーセント台が3市町、20パーセント台が7市町、10パーセント台が7市町、10パーセント未満が11市町である。
【委員】
4市が2分の1の交付で、あとは40パーセント台が2市、30パーセント台が3市町、20パーセント台が7市町、10パーセント台が7市町で、10パーセント未満が11市町。今回、安城市の場合は7.8パーセントのため、この10パーセント未満に入る。
補助率が2分の1という制度があるにもかかわらず、実際の補助率が数パーセントでしかない自治体がたくさんある。市町村にとっては、プレミアム商品券発行事業を行った際に県の補助がないよりはありがたいとの気持ちにもなるが、県がこの事業を行う本来の目的とは、補助をすることにより市町村を助けるのが目的ではなく、地域の活性化や商業の振興のためにプレミアム商品券発行事業を市町村に積極的に実施してほしいためのインセンティブとして補助金をつけていると思う。市町村がプレミアム商品券発行事業を実施する気持ちになるように、補助率を上げなければ意味がないと思うがどうか。
【理事者】
プレミアム商品券発行事業の規模やプレミアム率などの具体的な取組は、市町村ごとにかなり異なっている。例えば、販売総額は最小3,000万円から最大218億円までと大きく幅がある。これは、各市町村がそれぞれ個別の考え方や方針の下、工夫を凝らしながら事業を実施したためと考えている。県は、限られた財源の中で上限の設定は合理的であると考えており、一定のインセンティブを果たしている。
しかし、新型コロナウイルスの影響が残る中、世界的な原材料価格の急騰などに伴う物価高騰により県内の地域産業を取り巻く情勢は依然として厳しく、県としても、そのような状況を打破するためには、より一層の消費喚起を図る必要があると判断して、令和5年度には補助上限額の設定を前年度の1.5倍に引き上げた。具体的には政令指定都市は8,000万円を1億2,000万円、中核市には2,800万円を4,200万円、その他の市町村は1,400万円から2,100万円とすることにより市町村のインセンティブを高められるよう努めている。
今後も引き続き、市町村が実施する商店街活性化事業に対して効果的な支援となるよう取り組む。
【委員】
この事業の目的は、市町村が少しでも補助してくれてありがたいと思うことではない。現に私の地元の刈谷市はやらなかった。もし、50パーセントを県が補助してくれるなら刈谷市もやってみようとインセンティブが働いた可能性がある。令和5年度に補助上限額の設定を上げてもらったが、さらにその目的に合った補助率になるよう要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書178ページの自動運転社会実装推進事業費について、愛知県では、自動運転の社会実装を目指して、全国に先駆けて2016年度から様々な実証実験を積み重ねてきている。昨年度に自動運転車両に試乗した際に、その技術の高度化を改めて実感した。私の地元は、中部国際空港と対岸部を結ぶ地域だが、技術が相当進歩していることを体験した。
そこで、令和4年度の実証実験に係るエリアごとの取組内容及び成果について伺う。
【理事者】
令和4年度は名古屋市内、中部国際空港エリア及び愛・地球博記念公園において実証実験を実施した。
名古屋市内では、2024年にオープンするSTATION Aiと名古屋駅を自動運転車で結ぶことを目的として、名駅南から栄南地区の三蔵通を中心としたルートで自動走行の検証を行った。その成果は、交通量の多い都心の複雑な道路環境において、他の一般車両等と共存して自動走行を実現できたことが挙げられる。
課題は、幹線道路の車速に対応しながら停車車両の回避など、よりスムーズな自動走行能力を確保することであり、本年度の実証実験により課題解決を図る。
中部国際空港エリアでは、中部国際空港とイオンモール常滑との間を安定的に運行し、利便性を高めることを目的としており、自動車専用道路を含むルートで検証を行った。その成果は、自動車専用道路である中部国際空港連絡道路において、磁気マーカを活用することで、横風の中にあっても制限速度である時速60キロメートルでの走行性能を実現したことが挙げられる。
課題は、雨、雪等の耐候性の検証や、夕日で逆光となる状況での信号認識機能の向上があり、こちらも本年度の実証実験において課題解決を図っていく。
愛・地球博記念公園では、車と歩行者が混在する環境での大型バスの安全・安心な運行を目的として、園内西側の既存のバスルートで検証を行った。成果としては、多数の歩行者が存在するエリアにおいて、AI映像解析技術を活用した歩行者への注意喚起を行うことで、歩行者と自動運転バスの安心・安全な共存の在り方を検証できたことが挙げられる。
課題は、園内のあらゆる走行環境でも自動走行が継続可能となるよう、起伏や枝等の自然落下物が存在する環境での走行検証がある。本年度の実証実験において、早速これらの課題解決を図った。
また、試乗者からのアンケートでは、3エリアとも8割以上の方が自動運転車両の再利用の意向があり、確実に社会的受容性が醸成されていると確認することができた。引き続き、安心・安全で利便性の高い自動運転社会を実現するため、国内外の技術、ノウハウを結集し、交通事業者をはじめ、幅広い参画者と共に社会実装を目指していく。
【委員】
重ねて言うが、当初の頃の自動運転と比べると、昨年、私が乗ったエリアでは、時速60キロメートルの自動走行ができるなど、自動運転の実現が近づいてきていることを体験できた。地方では、運転士不足でダイヤの本数が減っている状況が既に起こっているため、一日も早い実現に向けてさらなる努力をしてもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書の170ページから171ページにある、スタートアップ支援事業費のうち、外国人創業活動の促進について伺う。
外国人創業活動促進事業及び外国人起業活動促進事業について、その内容と令和4年度の実績はどうなっているのか。
【理事者】
本県では、国家戦略特区特別区域法に規定された規制改革メニューの一つとして、6か月の経営管理の在留資格が認められる外国人創業活動促進事業と、もう一つ、経済産業省の認定を受け、在留資格特定活動を最大1年間認められ国内で様々な起業準備活動を行うことができる外国人起業活動促進事業を実施している。
外国人創業活動促進事業では愛知県内で新たに事業を始める予定の外国人を対象としており、留学を除き、既にほかの在留資格で日本に在留している外国人は原則として利用できない。なお、業種の指定はない。
一方、外国人起業活動促進事業では、既にほかの在留資格で日本に在留している外国人でも利用できるが、業種をIT分野及び革新的技術、技能を用いて高成長を目指す事業に限定をしている。
令和4年度の実績は、外国人創業活動促進事業が15人、外国人起業活動促進事業が1人に対して証明書を交付した。国別では、パキスタンが8人、中国が5人、アフガニスタン、ベトナムがそれぞれ1人ずつとなっている。業種別では、貿易業が7人、小売業が3人、卸売業2人、飲食2人及びサービス業1人となっている。
外国人起業活動促進事業の1人は、情報通信産業で創業するパレスチナ人に証明書を交付している。
【委員】
事業を始めるに当たっての申請方法について、ワンストップでできるオンライン申請を行っているのか。
【理事者】
申請方法は二通りあり、電子申請と、所定の申請用紙に記入して提出してもらう紙の申請がある。先ほどワンストップとの話があったが、申請自体は申請者本人、または申請者本人から委託を受けた行政書士等でも可能となっており、実態としては、入国の手続の関係もあるため、ほとんどの場合、代理の行政書士等が手続を行っている。
県から事業内容を確認した上で事業活動が妥当であると判断された場合、創業活動の確認証明書、または、起業活動の確認証明書が交付されるが、それを出入国在留管理局に提出する必要がある。同局からは原本の提出が求められているため、県からの証明書の交付は、手渡し、または郵送での書面交付になっている。
【委員】
外国人創業活動促進事業及び外国人起業活動促進事業について、外国人に対し、どのように周知しているのか伺う。
【理事者】
制度の周知については、県のホームページ及びチラシで行っている。
県のホームページでは、外国人起業活動促進事業、外国人創業活動促進事業、おのおの独立したページを設けており、事業の目的や対象者、事務手続の流れ等について説明している。
また、チラシについては、それぞれの案内チラシを日本語版、英語版及び中国語版で作成しており、愛知県内の市町村、領事館、大学、中小企業の支援機関等に配布して周知を図っている。加えて、昨年の4月に公益財団法人あいち産業振興機構内にあいち外国人起業&経営支援センターを開設し、そこでの相談対応を通じて、この二つの事業の周知を図っている。
【委員】
外国人創業活動促進事業に関し、ホームページでは英語が日本語の下に書かれている一方、外国人起業活動促進事業については日本語のみの記載となっている。チラシには英語が入っているが、ホームページには片方しか英語が入っていないため、改善していくべきだと思うがどうか。
【理事者】
県のホームページの記載については、指摘のとおりであるため、外国人起業活動促進事業も英語表記するよう改善を図る。
【委員】
この件に関して、欧州ではフランスが拠点となって県と連携しているが、欧州の他の国でもスタートアップの力は非常に強いと思う。提携を結んでいるフランス以外でのPRは、どのように進めていくのか。
【理事者】
欧州へのPRは、県のホームページやチラシによる周知にとどまっているため、スタートアップ推進課等と連携をしながら積極的にPRしていきたい。
【委員】
ホームページは、英語表記がないものは英語表記を今後追加してもらえるとのことだが、日本語と英語を同じページの中で併記するのは非常に読みにくいため、別で英語のページとしてまとめると読みやすくなると思うので、外国人起業活動促進事業、外国人創業活動促進事業の両方で日本語専用のページ及び英語専用のページを設けるよう要望する。
次に、令和4年度決算に関する報告書177ページ、あいちの酒需要拡大促進事業費について、ポスター、パンフレットの作成及び試飲販売会の実施等の事業内容について伺う。
【理事者】
令和4年度決算に関する報告書177ページのあいちの酒需要拡大促進事業では、愛知の酒のさらなる需要拡大のため、単独では需要拡大に取り組むことが難しい県内の中小酒造メーカー等を対象に、首都圏等の大都市圏や県内で試飲販売会をはじめ、ポスターやパンフレットの作成により本県の酒造業業界の振興を図る取組を行っている。
令和4年度は、首都圏等の大都市圏での試飲販売会として、8月に東京丸の内駅前広場で開催された丸の内行幸マルシェをはじめ、9月にはクイーンズスクエア横浜、1月には東京ドームでのイベントにおいて試飲販売ブースを出展している。
また、県内では10月の久屋大通公園での秋酒祭、AUTUMN SAKE FESTを皮切りに、デンパーク、ドルフィンズアリーナにおいて試飲販売会を実施し、合計で約2,800本のお酒が販売された。
また、あいちの酒として、地酒を紹介するパンフレットを日本語版、英語版及び中国語版等で作成し、掲載されている酒蔵や酒造組合へ配布するとともに、試飲販売会等でも広く配布することで積極的にPRを進めている。
【委員】
海外展開をしたい醸造所について、先日、関谷酒造に行ったときに杜氏から、今後、海外を目指していく必要があると聞いた。その点を踏まえ、海外展開を含む今後の事業の進め方について伺う。
【理事者】
今後の事業展開について、コロナ禍を経て人流が戻りつつあることから、今年度も訪日外国人をはじめとした観光客に向けた試飲販売会の実施や、多言語パンフレットの作成、配布によりインバウンド需要への積極的な対応を進める。
今年度は、7月にオアシス21で開催したSAKAE SAKE SQUARE2023を手始めに、大阪、横浜等でのイベントにおいて試飲販売ブースを出展する。
また、海外への販路開拓については、名古屋国税局が中心となり、経済産業省、農林水産省、国土交通省等の国の機関やジェトロのほか、岐阜県、三重県、静岡県及び愛知県の地方自治体、そして、東海地域の酒造組合等の団体により構成される東海地域日本産酒類輸出促進連絡会議を開催し、それぞれの施策、状況等を情報交換しながら共有して進めていく。
【委員】
続いて、令和4年度決算に関する報告書193ページの就職氷河期世代就職支援事業に関して4点伺う。
1点目、事業開始以来の実績がどうだったのか、2点目、ヤング・ジョブ・あいちでの取組内容と、当該支援事業の違い及び連携の有無。連携がある場合は、どのような内容であるのか。3点目、当該事業の中にある紹介派遣制度の内容は何か、4点目、マッチングを提供できる業種は十分なのか、あるいは、特定の業種に偏っていることがないのか。
【理事者】
就職氷河期世代就職支援事業は、2020年度から実施している。2020年度はビジネススキル等の向上を図る就職支援講座や就職説明会を開催し、延べ250人が参加した。そのうち、就職した人は12人である。性別、年代別及び職種別での集計等はない。
2021年度から内容を大幅に見直し、社会人としての基礎力を高める事前研修や、紹介予定派遣制度を活用した職場実習を実施して、相談員による伴走型支援を行っている。
2021年度は98人が参加し、56人の就職が決まった。その内訳は男性が23人、女性が33人、年代別では30代が6人、40代が48人、50代が2人となっている。就職先の職種は、事務、製造、企画、営業、接客業と多岐にわたっており、事務職が39パーセント、製造職が11パーセントと多くなっている。
2022年度は114人が参加し、65人の就職が決まった。その内訳は男性が23人、女性が42人、年代別では30代が7人、40代が54人、50代が4人である。職種も、2021年度同様、多岐にわたっており、事務職が43パーセント、製造職が9パーセント、サービス及び接客業が9パーセントと多くなっている。就職先は中小企業が多いため、事務職でも営業、企画、製造、管理などの職種を兼ねている場合もある。
続いて、ヤング・ジョブ・あいちとの取組の違いについて、ヤング・ジョブ・あいちは、愛知県と愛知労働局が連携して運営する若者の就職総合支援施設である。職業適性診断や職業相談、職業紹介、キャリアコンサルティングなどの就業に関連するサービスをワンストップで提供している。
就職氷河期世代就職支援事業では、まず、参加者全員にキャリアコンサルティングを行い、その人の経歴、ニーズ等に応じた個別研修としてレベルに応じたパソコン操作やビジネスマナーなどを実施し、その後、委託事業者である人材派遣会社に雇用され、給料をもらいながら紹介予定派遣制度を活用した職場実習を行うことで、職場実習先への正社員就職を支援した。
本事業とヤング・ジョブ・あいちとの連携として、ヤング・ジョブ・あいちの利用者に本事業の参加を案内し、逆に、本事業の参加者で心理相談などが必要な人に対しては、ヤング・ジョブ・あいちの心理相談を利用してもらうなど、相互に連携して就職氷河期世代の人の就職、定着を支援している。
続いて、紹介予定派遣制度の内容についてであるが、紹介予定派遣制度とは、採用を前提として一定期間派遣社員を受入れ、企業と派遣社員双方の希望が一致すれば直接雇用に切り替えるものである。この事業の参加者を一定期間派遣する職場実習の職種として、事務職、営業職、製造職、ITエンジニア、介護職、保育士、飲食、接客及び販売など、多数紹介している。期間は最長2か月だが、1か月で終了し、就職する人もいた。
また、フォロー体制だが、委託事業者が参加者の職場実習先を定期的に訪問し、参加者、企業双方の意見を聞きながら仕事の進め方などについて助言を行うなど、職場実習後の正社員雇用に向けた相談等に対応しており、企業からは、進め方をその都度しっかりサポートしてもらえてよかったとの声をもらっている。
最後に、課題として、マッチングで提供できる業種に偏りはないかとの部分であるが、求職者は、事務職であれば業種は問わないなど業種よりも職種を重視していることから、業種別ではなく職種別に求人情報を提供している。また、参加者の職種に対する様々なニーズに応えるため、職種が偏らないよう企業開拓を行っている。2022年度は事務職41社、営業職54社、製造職68社、介護職・保育士・福祉職29社、飲食・接客・販売20社、ドライバー及び配送15社など、延べ322社の求人情報を提供した。
【委員】
就職氷河期世代は40代が多いこともあり、今後とも引き続き手厚い継続支援をしてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書169ページの海外スタートアップ支援機関連携推進事業費のうち、シンガポール国立大学との連携について、この内容と成果について伺う。
【理事者】
まず、県内企業のオープンイノベーションに向けた取組への支援として、県内企業とシンガポールをはじめとする国内外のスタートアップ等の地域課題解決に向けた協業プログラムを実施し、県内企業2社に対し、9社のスタートアップが参加した。
このプログラムでは6件の実証実験が実施され、そのうち、医療や防災分野に関するソリューションなど4件について継続して実証実験を行っていくことで合意するなど、多くの協業案件を創出した。また、NUS(シンガポール国立大学)が支援するスタートアップによるピッチイベントを開催した。
次に、県内スタートアップへの支援としては、NUSが主催する海外ビジネス展開プログラムへの県内スタートアップ1社の参加を支援するとともに、シンガポールで開催された展示会に関して、人事管理システム導入を進める県内スタートアップなど4社の出展を支援した。
さらに、NUSが主催する起業家養成プログラムへの県内大学生3人の参加を支援するなど、多岐にわたる事業を実施した。
なお、2023年度も、2022年度と同様の事業を進めている。
本年9月にはNUSのタン・チョー・チュアン総長が本県に訪問し、スタートアップ分野を含む科学技術分野における連携協力に関する覚書を更新したところであり、日本初となる拠点をSTATION Aiに開設予定であるNUSのスタートアップ支援施設ブロック71との協力関係を強化するなど、NUSとの連携関係のさらなる充実に努める。
【委員】
STATION Aiを成功させるためには、海外のスタートアップとの連携が大変重要だと感じている。私も9月にNUSを視察した。視察先は、NUSとNUSエンタープライズというシンガポール国立大学が関連する外部の企業に近いものであるが、両者がうまくリンクをしており、海外から別のスタートアップを呼ぶなど、相互の連携が非常にうまくいっていた。シンガポールが先進的なことができる理由だと思ったため、この事業をぜひ充実させ、STATION Aiの成功に導いてもらいたい。
続いて、令和4年度決算に関する報告書195ページの就職氷河期世代デジタル人材育成事業費について、その内容と成果を伺う。
【理事者】
就職氷河期世代デジタル人材育成事業は、就職氷河期世代の人々に、急速な情報化の進展等によりニーズが高まっている情報通信業等で必要なITの知識、技能を習得してもらうことにより、正社員としての就職の機会を創出し、キャリアチェンジの支援を目的として実施した。具体的には、情報通信業に携わっていた人や情報系の学校出身者、情報系資格取得者など、基礎レベル以上のITスキルを有する就職氷河期世代の求職者を対象に、Java、プログラミングなどのITスキルアップ訓練とビジネス実践力養成などのビジネススキルアップ研修、いわゆる座学研修を50日間行った。その後、正社員での就職を目指し求職者と企業とのマッチングを行い、紹介予定派遣制度を活用して県内のIT企業等で働きながら、知識、技能の向上を図る職場実習を30日間実施した。
昨年度は、定員10人に対して28人の応募があり、選考の上、10人に研修と実習を行い、8人が正社員として就職している。
【委員】
少し苦言になるが、この事業費は3,600万円を超える金額である。就職氷河期世代の中から10人を対象とした事業であるため、金額に対して、対象となる範囲が狭かったと思う。
就職氷河期世代が本当に求めているのは、正社員を通じて終身雇用につなげることではなく、しっかりとキャリアを積み、正社員として活躍できる仕組みを考えていくべきだと思う。対象者の範囲の拡大及び対象者の意識をもっと高めることを意識して、この事業を進めてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書184ページの中小企業金融対策費について伺う。
2020年5月から2021年3月まで実施した新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の実績について、直近の実績と業種別の返済状況はどのようになっているのか。
【理事者】
ゼロゼロ融資実績だが、最初の実績が、件数が8万7,000件余、金額が1兆4,680億円で、多くの利用があった。これの9月末時点での残高が、件数が6万1,000件、金額が7,810億円であり、当初の実績に比べて、件数が2万6,000件、金額が6,870億円減少している。これを率にすると、件数が約30パーセント、金額が約47パーセントの減少になっており、件数に比べて金額の減少幅が大きいことから、取扱いが終了してからの2年半で、比較的大口の利用者の返済や借換えによって減少したと考えられる。
また、業種別の減少率を見ると、製造業は件数が約35パーセント、金額が約50パーセントに対し、非製造業については、件数が約29パーセント、金額が約46パーセントとあまり大差はないものの、製造業に比べて非製造業の方が、件数、金額とも減少幅が小さくなっている。
非製造業の中でも不動産業は、ほかの業種が件数で26パーセントから34パーセント前後、金額が40パーセントから49パーセント前後の減少率なのに対して、件数は23パーセント、金額が37パーセントと、件数及び金額とも減少幅が小さく、ほかの業種に比べて返済や借換え等があまり進んでいない可能性がある。
また、昨今、倒産が増えている飲食業やサービス業は、件数の減少率が約27パーセントと減少幅が小さいが、金額は約40パーセントから45パーセントの減少率となっており、おおむねほかの業種と同じ傾向である。
【委員】
コロナ禍で中小企業の事業継続のための資金繰り支援として実施してきたゼロゼロ融資について、その効果を県としてどのように評価しているのか。
【理事者】
実績は、答弁したとおり件数が8万7,000件余、金額が1兆4,000億円であり、コロナ前の実績に比べると、件数で約4倍強、金額が約7倍強で県の制度融資創設以来、最大規模の実績となり、業種についても、コロナの影響を受けた幅広い事業者に利用してもらった。
また、新型コロナウイルス感染症の影響によって経営環境が急激に悪化する中で、中小企業が事業継続のために必要とする資金を迅速かつ円滑に供給し、県内の資金調達環境の維持に大きく貢献した。
また、ゼロゼロ融資の創設をきっかけに初めて県の制度融資を利用した事業者が増えたことから、手元資金を念のため厚くして経営の安定を図ろうとした事業者の資金需要にも応えられた。実際、利用者からは、実質無利子、無保証料のゼロゼロ融資を利用することで倒産を回避できたという声も多く寄せられるなど、倒産の抑制により雇用の維持にも効果があり、経済の非常時における県制度融資の施策効果が適切に発揮されたと考えている。
しかし、政府系金融機関が実施したゼロゼロ融資が不良債権化している問題や収益が改善する見込みがない中小企業が過剰債務に陥っているのなど報道もあり、コロナ禍を乗り越えたものの、物価高等の影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者に対して、引き続き借換え支援の継続などの資金繰り支援が必要と考えている。
【委員】
ゼロゼロ融資の据置期間が終了し、今年度から返済が本格化する中小企業者が増える中で、県としてどのような対応を考えているのか。
【理事者】
本県では、ゼロゼロ融資の返済に不安を抱える中小企業者の声を受けて、昨年10月に独自のサポート資金新型コロナ借換を創設した。さらに、既存のサポート資金経営改善等支援の融資限度額を1億円に引き上げるとともに、売上高の減少要件を従来15パーセント以上だったものを5パーセント以上に緩和し、売上高に加えて利益率の減少を融資対象に追加、さらに、借換えの特例を設けるなどの見直しを行った。サポート資金経営改善等支援は、本年4月以降も継続して、名前をサポート資金伴走支援として引き続き実施をしている。これらゼロゼロ融資の借換えに対応する二つの制度は、いずれも据置期間が5年以内で、特に、県独自の新型コロナ借換は最長15年間の融資期間に対応しており、借換えによって月々の返済負担が軽減されるほか、据え置く期間の再設定によって経営の改善や今後の事業の方向性を検討する時間的な余裕が生ずるといったメリットも見込まれる。
なお、これらの制度の融資実績は、令和4年度が合わせて6,373件、金額が1,208億円、県の制度融資全体に対する構成比は45パーセントとなっている。
令和5年度は、9月末時点で6,674件、金額が1,343億円で、県制度融資全体に対する構成比が約68パーセントであり、今年度のゼロゼロ融資の返済開始時期の到来に合わせて利用が大きく伸びている状況である。
このほか、県制度融資の取扱い金融機関及び県信用保証協会に対して、これらの制度の周知とともに、夏季や年末、年度末といった資金需要期に合わせて各事業者の実情に応じて借換えや条件変更等の相談に柔軟かつ積極的に対応してもらうよう定期的に要請を行っている。
本県としては、今後も経済環境の動向等を注視しつつ、こうした取組を通じて、物価高などの影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰りをしっかりと支援していく。
【委員】
コロナ禍で大変だった時期に、このゼロゼロ融資で本当に救われたという企業がたくさんいたと思う。その意味では、しっかり対応してもらったことは、非常にすばらしいことである。さらに、返済が本格化している中でもきちんと対応している、これも高い評価に値する。
その一方で、金融はどうしても後方支援や潤滑油の役割であり、中小企業を本質的に元気にしようと思ったら、やはり成長戦略が必要となってくる。成長戦略について、経済産業局全体としてさらに推し進めてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書171ページのSTATION Aiパートナー拠点事業費について伺う。
県内各地域においてスタートアップ支援に取り組むSTATION Aiパートナー拠点の設立及びSTATION Aiとの相互連携協力関係の構築を推進するため、第1号拠点として東三河スタートアップ推進協議会が立ち上がっている。令和4年度は、どのような支援を行ったのか。併せて、その効果と課題について伺う。
【理事者】
令和4年度における東三河スタートアップ推進協議会への取組支援として、エコシステム形成支援統括マネージャーが地域の実情に応じたアドバイザリー業務を実施した。
また、スタートアップと地域の自治体とのビジネス共創プログラムとして、1か月間のAICHI CO-CREATION STARTUP PROGURAM及び5か月間のAICHI CO-CREATION INCUBATION PROGURAMを実施し、東三河スタートアップ推進協議会にも地域パートナーとして参画してもらい、スタートアップが行う仮説検証を支援した。そして、自治体担当者等を対象としたワークショップにも参加してもらい、スタートアップ・エコシステム形成に取り組む目的及び地域特性や強みの整理、新たな自治体等の巻き込みについて学んでもらった。
加えて、東三河スタートアップ推進協議会と協働で、東三河地域がスタートアップ・エコシステムの形成に向けて取り組んだ成果を打ち出すイベントを開催した。
支援の成果として、東三河スタートアップ推進協議会が行っている、8市町村実証スキームによる情報発信やPR強化、共創が進み、スタートアップと地域ビジネス共創プログラムに参加したスタートアップ企業、株式会社picks designが東三河スタートアップ推進協議会による協力の下、地域の珍しい商品を届けるそのとちぎふとと名づけたサービスを2023年4月から始めることができた。
また、地域で自発的に活動するスタートアップのプレーヤーが育ち、東三河地域の起業家や支援者が共創する参加型のコミュニティーなどを通じて地域とのマッチングができ始めている。
これまでの取組による課題は、自治体や地域の事業会社がスタートアップと共創する上での必要な体制やノウハウ、文化理解などを促進、充実していく必要がある。また、自治体以外の支援機関や金融機関など他団体を巻き込める体制や競争を促進できる人材を育成していく必要があるとも考えている。
これら課題解決に向けて、地域の主体的なスタートアップ支援の機運醸成や体制づくりを支援するため、引き続きスタートアップと地域のビジネス共創プログラムや自治体担当者等を対象とした研修会、交流会及びワークショップに取り組み、東三河地域における継続的な運営ができる仕組みと体制構築に向けた支援を進めていきたい。
【委員】
エコシステムの形成がスタートアップ支援の肝だということは、多くの人が知っている。私の事務所に何人か相談に来るため、このエコシステムが弱いと思う。誰に相談しに行ってよいのか、アドバイス、マッチングすれば何が改善できてブラッシュアップされていくのかなど、そういった部分がまだ弱い。
東三河のような小さなエリアでエコシステムが形成できればよいが、そうでなければ、県内のそうした取組とも有機的に連携しながら、必要な時期に必要なアドバイスが受けられ、必要な人を紹介してもらえ、資金も出してもらえるエコシステムができるようにすべきである。東三河スタートアップ推進協議会も、その中でエコシステムに組み入れられるなど、いろいろなケースがあると思う。小さなエリアにこだわらずエコシステムを形成していき、よりよいものが生み出されるように県としてもしっかり支援してもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書175ページの外国企業誘致促進事業費について伺う。
報告書にはINVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUM、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会等と連携し、外国企業の誘致、進出、定着支援を行ったと記載されている。具体的にどのような活動を行ったのか。
【理事者】
INVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUMは、県と名古屋市におけるイノベーションの創出や産業の活性化、雇用拡大を図るため、地域一体となって外国企業等の進出及び定着を促進することを目的として、愛知県、名古屋市、公益財団法人名古屋産業振興公社を構成員として令和4年3月に設立された。
同コンソーシアムでは、令和4年度は、既に県内に進出済みの外国企業の定着を促進する事業として、外国企業9社の共同ブースによるメッセナゴヤへの出展支援や、県内企業との人脈構築を目的としたネットワーク懇談会を開催した。
次に、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会は、名古屋を中心として半径100キロメートルの圏域内に世界から優れた企業、人材等を呼び込むことを目的として、グレーター・ナゴヤという統一ブランドの下、愛知県や岐阜県、三重県などの行政、産業界、大学等が一体となって当地域への外国企業の誘致や海外への情報発信等を行う協議会である。
同協議会では、令和4年度は外国企業の会社の設立や、人材募集時に必要となる経費の一部を助成する拠点立ち上げ支援のほか、対日投資に向けた外国企業の発掘等を目的としたドイツへのミッション派遣、また、グレーター・ナゴヤ地域内の企業との企業間交流イベントとして、ベトナムやタイ、英国企業とのビジネスマッチングを実施するなど、地域一体となった誘致活動を行った。これらの取組を通じ、昨年度は、本県へ7社の外国企業を誘致した。
【委員】
外国企業をさらに誘致するため、今後、どのような取組を実施していくのか。
【理事者】
INVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUMにおいては、昨年度は、県内展示会への出展支援やネットワーク構築支援といった本県に進出済みの外国企業に対する定着促進支援がメインであったが、今年度からは、構成員として国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学にも参画してもらい、外国企業の本県への進出を促進する事業にも取り組んでいる。
具体的には、外国企業向けの相談窓口の設置のほか、外国企業向けに当地域のビジネス環境の強みなどをPRするセミナー・オンラインマッチングの実施、さらには、本県への進出を検討している外国企業4社を選定して行う伴走支援や、来年3月に県内で開催されるスマートマニュファクチャリングサミットバイグローバルインダストリー(SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE)に合わせた外国企業の招聘といったアクセラレーションプログラムを実施していく。
また、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会においても、対日投資促進事業や国際経済交流事業はもとより、今年度は県内に進出済みの外国企業へのヒアリング調査を実施し、外国企業誘致の施策立案を検討することとしている。
こうした新たな取組も進めることで、1社でも多くの外国企業の誘致につなげたい。
【委員】
大村秀章知事は日頃、国内外から、人、物、金、情報を愛知に呼び込むと発言している中、現在の円安状況は、外資系企業の日本への新規投資を促す絶好のチャンスである。インバウンド促進が海外から人を、対日投資が海外から企業をそれぞれ日本に取り込む政策であり、安い日本が経済成長を実現するために不可欠の両輪として注力すべき戦略だと思う。そして、海外から技術や資金を呼び込むことが愛知でのイノベーション創出にもつながるため、今こそ積極的な海外企業の誘致に取り組んでもらうよう要望する。
続いて、令和4年度決算に関する報告書183ページの再生可能エネルギー実現可能性検討調査費について、報告書には、本県における再生可能エネルギーの導入拡大に向け、実態の把握や課題の整理、実現可能性の検討に必要な調査を実施したと記載されているが、この事業の内容及び成果について伺う。
【理事者】
この調査は、太陽光、陸上風力、洋上風力、バイオマス、水力及び地熱といった再生可能エネルギー全般について、国内外の現状、自然面、社会経済面の課題、導入のポテンシャルなどについていろいろ整理をした調査になっている。
調査に当たっては、文献やデータの整理だけでなく、いろいろなアンケートも行った結果、太陽光発電及び洋上風力発電の二つの伸び代が大きいとわかった。太陽光発電は、民間主導でできると思うが、特に愛知県の場合は比較的大規模な導入ができる工場や倉庫での導入のポテンシャルが全国で最も大きいとの調査結果がある。
洋上風力発電は、欧米や中国が進んでいるが、日本でも2019年に再エネ海域利用法ができるなど、機運が高まっている中で、本県の場合は、渥美外海、具体的には田原市、豊橋市沖の風がよく、洋上風力発電のポテンシャルが高く有望である。さらに風車には、この地域の製造業で作られる部品が多数入っている。風車自体は、中国と欧米に押さえられている状況ではあるが、比較的参入しやすい。このことを踏まえ、もう少し踏み込んだ調査を本事業で行った。この地域の風や波で稼働率がどれくらいか、波が高いと工事もできないため、工事がどれぐらいやりやすいかといったシミュレーションまで行った。
【委員】
県は、今年3月、国、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める洋上風力発電の低コスト化プロジェクトの候補海域に田原市、豊橋市沖を応募し、10月3日、洋上風力発電浮体式実証の候補海域として田原市、豊橋市沖が選定されたと発表した。
そこで、再生可能エネルギー実現可能性検討調査と今回の候補海域選定の発表との関連について伺う。
【理事者】
今回の調査は、いわゆる再生可能エネルギーのポテンシャルを調べるものだが、2019年の再エネ海域利用法でこれから洋上風力発電を広げていく中では、漁業者の理解が要ると書かれている。今回の調査と並行して、その可能性について、県漁連に打診を行ったが、渥美沖はシラス、イワシ及びクルマエビ等の操業が盛んであるため、沿岸は難しいとの話であった。
昨年の9月頃に、国のグリーンイノベーション基金で、深さ100メートル程度の海で風車を建てる浮体式の実用化に向けた実証実験を総額850億円で2か所程度実施する話が持ち上がり、そのことを踏まえて改めて県漁連に打診したところ、浮体式であれば沖合15キロメートル程度で漁が比較的少ないエリアであり、期間限定の実証実験であれば、公募に手を挙げてもよいといってもらえたため、候補海域として手を挙げ、10月3日に選ばれた。
今のところ、まだ四つの海域が選ばれただけの状況であり、この先、2か所程度に絞られるまで、できれば意欲のある事業者に手を挙げてもらい、この地域が選ばれるようにしていきたい。
【委員】
今回の候補海域選定を受けて、今後、国、NEDOが事業者の公募を開始して、最終的な採択は2か所程度と、事業者が事業を開始するのは2024年春頃の見通しである。今回、田原市、豊橋市沖で実証事業が行われるよう、ぜひ県として応募を検討する事業者に対しての積極的な協力を要望する。
続いて、令和4年度決算に関する報告書191ページの中小企業テレワーク導入支援事業費について、県では、テレワークの導入や定着に必要な支援を行う拠点として、令和3年度にあいちテレワークサポートセンターを開設した。令和3年度は、コロナ禍による人流抑制と重なって企業においてテレワークの導入が一定程度進んだと思うが、経済活動が回復した令和4年度の利用状況について、令和3年度の実績を踏まえた新たな取組があれば、それも含めてどのような実績となったのか。
【理事者】
あいちテレワークサポートセンターは、令和3年4月28日に開設した。同年8月18日にはテレワーク体験や見学が可能なあいちテレワーク・モデルオフィスを併設している。センターは、テレワークに関する相談対応、モデルオフィスの運営に加えて、企業へのアドバイザー派遣など、ワンストップで支援する。
利用実績は、開設年度の令和3年度の相談件数が1,310件、モデルオフィス利用者数が1,417人、アドバイザー派遣企業数が42社の実績に対して、令和4年度は相談件数が1,426件、モデルオフィス利用者数が2,374人、アドバイザー派遣企業数が41社である。
令和3年度は年度途中のセンター開設になるため単純比較はできないが、1か月単位の利用状況で見ると、いずれの取組についても前年度と同程度の利用実績となっている。
センターでは、テレワークに関する様々な悩み、課題に対応しているが、利用する企業からは、テレワークツールの導入に関して、コストの問題や自社のシステムとの連携の不具合が生じることから、テレワークツールを本格導入する前に試してみたいとの要望をもらった。このため、令和4年度はテレワークツールを搭載したパソコン機器を無料で貸し出し、専門家による指導、併せて実際の職場環境でテレワークを試してもらう取組を新たに開始した。
この実績は、支援予定10社を上回る13社の企業に利用してもらった。利用した企業からは、実際に機器を使用することができて機器導入の検討に役立ったと聞いており、本格的なテレワーク導入に向けた効果的な支援になった。
今年5月から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行して日常的な行動規制が緩和される中で、一部の企業でコミュニケーションの難しさからテレワークを縮小する動きもある。しかし、今年度のセンター実績については、10月末現在で相談件数が1,078件、モデルオフィスの利用者数が1,685人と昨年度の同時期と比べても上回る実績を達成している。
県としては、今後とも、センターが実施する各種支援メニューを通じて、企業の多様なニーズに応えることにより、県内企業におけるテレワークの導入及び定着をしっかりと進めていきたい。
【委員】
8月16日の日本経済新聞にもテレワーク実施率が22パーセントに低下し、新型コロナウイルス感染症の5類移行で減少する一方、職場に出社する人が増えたという記事があった。その一方で、テレワークのメリットとして、ペーパーレス化、デジタル化を促進、ワーク・ライフ・バランスが保ちやすい、人材確保につながる、事業継続性の確保などが広く認識され、現在は、オフィスワークと自宅やシェアオフィスなどで働くリモートワークを組み合わせ、従業員が柔軟に働くことができる制度、いわゆるハイブリッドワークが広がっていると言われている。こうした流れを鑑みると、今後もテレワークの導入と継続は必須と考えられるため、引き続きの対応をお願いしたい。
最後に、令和4年度決算に関する報告書193ページの外国人雇用促進事業費について伺う。
最近、若者たちの間でバ畜という言葉が広がっている。バ畜とは、社畜とバイトを組み合わせた造語で、社畜は、会社のためにがむしゃらに働かされる人を指すものであり、バ畜は、そのバイト版を意味する。背景には、慢性的な労働力不足に加え、消費者が安く質の高いサービスを求める社会の中、低賃金のアルバイトなどに過重労働をさせざるを得ない状況が発生していることが挙げられ、解消に向けては、働きやすい環境の整備、そして、多様な人が働くことができる環境の整備が必要である。
当該事業は、その一翼を担う事業であると考えるが、どのような取組であるのか。
【理事者】
外国人雇用促進事業では、就業・就労の制限のない定住外国人の雇用促進や就職支援のため県内企業向けの雇用相談及び定住外国人向け就職相談を行う相談窓口の運営や、市町村等への出張相談を実施した。
相談窓口では、外国人の雇用を検討する企業に対する外国人の受入れ体制整備など雇用に関する助言や、定住外国人求職者に対する仕事の探し方や就職活動の進め方などについて助言や情報提供等を行った。
また、企業に対して、定住外国人の円滑な雇用が図れるよう、社会保険労務士や行政書士等の専門家を活用し、社内規程などの体制整備等や採用手続に関する助言から雇用後の職場定着までを継続的にフォローするとともに、定住外国人に対しては日本語能力の向上など、就職に必要なスキルを身につけるための伴走型支援を行った。
【委員】
この事業の令和4年度の実績はどうであったのか。
また、人手不足業界の一つに介護業界が挙げられ、私は、先日、福祉医療費の決算審査の際に、この介護人材の確保を目的とした外国人介護人材の受入れに対する支援について聞いた。
今回は、労働局における介護業界での外国人材の確保や育成の状況についても伺う。
【理事者】
令和4年度の相談窓口での利用実績だが、企業から134件、定住外国人から164件となっており、いずれも前年度の件数を上回っている。
伴走型支援は、定住外国人の雇用を希望する企業6社と就職を希望する定住外国人14人に対して支援を実施した。そのうち、2人が伴走型支援を実施した企業に就職しており、うち1人は、介護事業所に雇用されている。なお、本事業とは別に介護分野外国人就業支援事業として定住外国人を対象とした雇用型訓練と就職支援を行っており、令和4年度は訓練修了者23人のうち、22人が介護事業所に就職している。
【委員】
少子化が進行し人材確保がより困難になる中、介護人材の確保には外国人介護人材の受入れ、活用が必須であるため、引き続き支援の充実を要望する。
全体の話として、この外国人労働者が必要とする情報提供や無料で受けられる労働相談、弁護士による法律相談などを母国語で受けられる体制の拡充、また、外国人労働者を雇用する事業主には就労環境整備のための外国人雇用管理指針が徹底されるよう、働きかけを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書168ページ及び169ページのSTATION Aiプロジェクト推進事業費の項目の4番、PRE-STATION Ai事業費について、来年、STATION Aiが10月に開業するが、モノづくり愛知の未来を築くため、日本の次世代産業を創出するためにも、非常に注目されている事業である。
それに先立って、このPRE-STATION Aiでは、STATION Aiが完成するまでの間にメンバーの数の拡大と事業意欲の高揚を図り、運営者にとっても様々な試行を重ねることで支援機能の向上を図り、STATION Aiがすばらしいスタートを切れるような、レース本番を前にしたウォーミングアップ段階の事業であると思う。
そこで、昨年度、PRE-STATION Aiにおいて、スタートアップに活動支援や活動拠点の提供といった総合支援を展開したが、その成果と課題について伺う。
【理事者】
令和4年度における成果は、スタートアップメンバーが、令和3年度末は48社であったが、令和4年度末には168社まで増加した。また、新たに起業に至ったものが11件、県内企業との協業につながったものが9件、資金調達に至ったものが32件で、令和3年度は、それぞれ新たに起業に至ったものが12件、県内企業との協業につながったものが9件、資金調達に至ったものが11件と、特に資金調達に至った件数が増加した。また、M&Aによる事業売却の事例も1件あった。
次に課題は、資金調達件数が増加しているものの、資金を提供するベンチャーキャピタルの大半が首都圏に立地しており、当地域の資金調達環境が脆弱なことである。この課題に対応するために、首都圏に集中するベンチャーキャピタルを県が認定して当地域のスタートアップと交流を図るAICHI STARTUP BRIDGE事業を実施したほか、STATION Ai株式会社が中心となって、愛知県も出資しているPRE-STATION Aiメンバーを対象とする15億円のファンドを設立し投資を行っている。
【委員】
次に、そのメンバー構成について伺う。スタートアップはいろいろな段階があると思うが、どのような段階のメンバーが多いのか。または、モノづくり愛知としての特徴がどのように反映されているのか。
【理事者】
令和4年度におけるメンバーの属性であるが、令和4年度末、メンバー数は168社となっている。PRE-STATION Aiにおいてオフィスを利用するスタンダードメンバーが74社、リモートで支援サービスを受けるリモートメンバーが94社で構成されている。拠点の所在地別では、県内が87社、県外が76社、国外が5社となっている。
スタートアップの成長段階別では、資金調達前の段階が46.4パーセント、シードと言われる初めて外部資金を調達した段階が37.5パーセントと、合わせて8割強のメンバーが初期段階のスタートアップとなっている。
メンバーの事業領域だが、1社で複数選択できるが、多いものから、企業間取引のBtoBが111社、DXが75社、インターネットを経由して必要な機能を必要な分だけサービスとして利用するSaaSが67社、AIが54社、一般消費者向け販売のBtoCが52社の順となっている。 BtoBが一番多いため、多層的な製造業の集積が見られるこの地域の特徴を表している。
【委員】
次に、令和4年度決算に関する報告書168ページのSTATION Aiプロジェクト推進事業費、項目番号2番のSTATION Ai整備事業費について伺う。
令和6年10月のSTATION Aiの開業に向けて実際にこのPFI事業が既に実施されているが、特別目的会社(SPC)、ソフトバンク株式会社を中心とした会社が既に業務を実施している。その内容及びソフトバンク株式会社の強みを生かしてどういった施設にしていこうとしているのか。
【理事者】
PFI事業を実施するSPCであるSTATION Ai株式会社は、令和4年度に設計及び建設業務並びに広報宣伝業務をはじめとした開業準備業務を実施した。
設計及び建設業務は、令和4年12月に設計業務が完了した後、令和5年1月6日に起工式を実施し、計画工期どおりに施設整備を進めた。
開業準備業務は、広報宣伝業務としてSTATION Aiのロゴの作成、STATION Aiの公式ホームページの開設などを行うとともに、STATION Aiの開業後の運営を見据えたスタートアップ支援計画を作成するなど、ソフト面での準備を進めた。
次に、代表企業であるソフトバンク株式会社は強みを生かして、東京竹芝の本社ビルでのスマートビル運用の実績や国内外のネットワークを活用したスタートアップ支援を実施する予定である。
スマートビルは、施設内のあらゆるデータを集約するための各種センサーやAIカメラなどのプラットフォームを導入する。集約したデータは自由に利活用できるようにするなど、施設全体をスタートアップ技術の実験場とする。
また、国内外のネットワークについては、ソフトバンクグループ全体での10年以上にわたる新規事業開発の経験を生かした支援を展開するとともに、ソフトバンク株式会社が展開する海外主要11か国、26拠点などと連携したグローバルな支援体制の構築を目指していく。
【委員】
そのSTATION Aiは、鶴舞という名古屋でも屈指の文教地区に立地しているが、こうした立地を生かして近隣の施設とどのような連携を行っていくのか。
【理事者】
STATION Aiは、地域特性を生かしつつ最先端技術との融合、共存を目標とし、地域の魅力や声を生かしたまちづくりに貢献するため、近隣住民や施設などを巻き込んだ取組を実施できるようにしていく。
現在までの取組は、令和4年2月に鶴舞公園のPark-PFI事業である矢作地所株式会社、愛知県及びSTATION Ai株式会社の三者にて打合せを行い、双方の事業において連携していくこととした。
今年度は7月に鶴舞公園整備事業計画における地域交流、地域活性化等を目的とした鶴舞公園パークマネジメント協議会の発足準備会に愛知県、STATION Ai株式会社が出席し、連携を始めた。
また、地域まちづくり活動団体である鶴舞・千種エリアマネジメント協議会は、名古屋工業大学の教員や学生、イオンタウン千種が中心となり、公共空間を活用し多様なイベントの開催により人と地域の活性化の創造、住みやすい環境形成に係る取組を行うもので、この協議会が行う勉強会に参画している。
加えて、PRE-STATION Aiにおいて令和5年3月から隔週で名古屋大学メディカルイノベーション推進室の教員を招いて、スタートアップと医学系研究者、医学系人材をつなぐ機会を設けている。STATION Ai開業後も、引き続きこうした機会を設ける。
オープン後は、本施設を地域コミュニティー形成の場として活用し、地域の魅力を情報発信できるようにするとともに、スタートアップと地域住民、近隣施設をつなぐイベント等を行っていきたい。
【委員】
STATION Aiの開業を1年後に控えて、様々な取組が進んでいることが分かった。STATION Ai事業は、従来の公共施設のように建物というハードを造ったからといって人やノウハウが集まってくるものではない。その中で行われる人の営みによってこそ、その価値が高まるものである。PFIにおけるSPC、ソフトバンク株式会社を中心とする企業に期待するが、県としても県民が期待するスタートアップ育成拠点となるよう、その事業進展を十分に注視し適切な対応をしてもらうよう要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書192ページの雇用対策事業費の2、UIJターン促進事業費について伺う。
国は、東京一極集中に歯止めをかけ地方へのUIJターンを促そうと、東京23区に在住、もしくは在勤する人が地方に移住し、5年以上居住する意思があり、かつ、本県内企業の求人を紹介するマッチングサイトの掲載企業に1年以上継続して就職すれば1世帯当たり100万円、単身の場合は60万円の移住支援金を支給する地方創生移住支援事業を令和元年からスタートさせている。現在の全国43道府県1,303市町村において展開中で、本県でも54市町村のうち、常滑市と大治町を除く52市町村で移住支援金制度を導入している。このうち、名古屋市や春日井市、豊川市、刈谷市、犬山市など17市町については、移住者の居住地と就業先が同一市町村であることを移住補助の要件としている。愛知県への移住でこの移住支援金を受けるには、まずは本県内で就職先を決めることから始まり、県内の企業や地域情報は、あいちUIJターン支援センターが提供して、専任コーディネーターが移住、就職に向けた個別相談をワンストップで支援し、この移住支援金の申請もサポートしていると聞いている。このUIJターン支援事業費では、首都圏など県外からの人材還流を促進するため、あいちUIJターン支援センターを東京と名古屋に設置し、UIJターン希望者への情報提供や就職支援などを行った。
そこで、令和4年度のあいちUIJターン支援センターの相談件数は、どのくらいあったのか。
【理事者】
令和4年度のあいちUIJターン支援センターにおける相談件数は、東京2,882件、名古屋7,020件の合計9,902件となっている。
【委員】
その移住支援金だが、家族連れで移住すれば100万円を支給し、令和4年4月1日から18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合は子供1人につき30万円が加算、さらに、令和5年4月1日以降は子供1人につき100万円が加算され、本県では、移住支援金制度を導入している52市町村のうち、41市町村で実施している。
事業がスタートした令和元年は地方公共団体からも対象要件が厳し過ぎるとの声が上がり、移住支援金の交付は全国で80件に満たず、本県では初年度の交付は、決定がゼロであった。
国は令和2年度から支援対象要件を緩和、拡大し、さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大でクローズアップされたテレワーカーについても、東京圏在住の会社員が本人の意思により地方移住して、引き続き業務をテレワークで実施する場合でも対象要件に加えるなど、移住促進を弾力的に図ってきた。
そこで、本県のこの移住支援金制度も、移住対象者の要件が緩和されたことで利用促進につながっていると思うが、令和4年度の移住支援金の実績はどれくらいか。参考までに、令和3年度の実績も伺う。
さらに、本県内で移住支援金の支給実績が顕著な自治体があれば教えてほしい。
【理事者】
移住支援金の令和4年度の実績は16件、1,140万円の支給となっている。
令和3年度の実績は7件、495万円の支給となっており、支給実績は年々増加している。
また、移住支援金支給実績が顕著な自治体について、令和2年から令和4年度までの3年間の上位3位は、名古屋市10件、豊田市5件、豊橋市4件となっている。
【委員】
移住支援金の実績が年々伸びているが、愛知県に移住者が増えており、非常によい結果であるため、引き続き頑張ってほしい。
次に、その移住の受皿となるマッチングサイト掲載企業について伺う。
移住支援金対象事業企業数は、令和2年度末時点は310事業者で求人数714件、令和3年度は375事業者で求人数は814件であった。そこで、令和4年度の移住支援金対象事業企業数を伺う。
【理事者】
令和4年度のUIJターン支援センターのポータルサイトで求人情報を紹介しているマッチングサイトの掲載企業のうち、移住支援金対象企業数は567事業者である。
【委員】
令和3年度の対象事業者を業種別割合で見ると、一番多いのが製造業で23.7パーセント、次いで建設業が20.3パーセント、その次が卸売業、小売業が14.4パーセントと続き、製造業と建設業で全体の44パーセントを占めていると聞いた。
そこで、この業種別割合の傾向は令和4年度も続いているのか。
【理事者】
移住支援金対象事業企業数の割合は、製造業27.0パーセント、建設業21.0パーセント、卸売、小売業13.9パーセントとなっており、製造業と建設業を合わせた割合は全体の48.0パーセントで、業種別の割合は令和4年度も同様の傾向であった。
【委員】
製造業、建設業で48パーセントと半数近くを占めるが、よく言われるのは、女性が就職しやすい、サービス業とか小売業とか卸売業など、業種をバラエティー豊富にマッチング企業に入れてもらえると、女性も愛知県に来てもらえると思うため、努力してもらいたい。移住支援金事業は、令和6年度までの時限事業で、残り2年だと聞いている。
そこで、さらに制度を活用して1人でも多くの人が本県へと移住してもらうため、移住者を増やすための取組を伺う。
【理事者】
本制度を活用して本県への移住者を増やすためには、この制度の内容や本県の魅力を伝える情報発信力を強化するとともに、UIJターン支援センターのマッチングサイトの掲載求人を数多く確保することが必要と考えている。このため、マッチングサイトへの求人掲載について、様々な業種の企業を訪問し、求人開拓を積極的に行っていく。
さらに、今年度は、新たに拠点のない大阪市においてハローワーク主催の就職面接会で直接求職者に県内企業を紹介するなど、関西圏での働きかけも拡充する。
【委員】
しっかりと取り組んでいるが、この移住支援金制度を知らない人もいる。1世帯で移住すると100万円で、さらに、子供1人100万円であるため、子供が2人いれば移住することで300万円の支援金がもらえるため、ぜひとも移住支援金について、移住するなら今だという形でPRしてもらいたい。
《農業水産局、農林基盤局関係》
【委員】
令和4年度決算に関する報告書226ページのあいち型産地パワーアップ事業費補助金について、伺う。
愛知県は農業産出額全国第8位の農業県である。私の地元の知多半島も農業が盛んな地域であり、農業者の話をよく聞く。その中で、農業従事者からも農業協同組合(JA)の関係者からも、このあいち型産地パワーアップ事業に対する要望の話を聞くことがあった。
そこで、あいち型産地パワーアップ事業費補助金における事業内容と成果を伺う。
【理事者】
本県は全国8位の農業県であるが、担い手減少や高齢化など、生産力の低下が懸念されている。
あいち型産地パワーアップ事業は、本県農業の生産力の強化を目的に、栽培施設や共同利用施設の整備、高性能な農業機械の導入などの取組を支援する事業である。これまでも国の産地パワーアップ事業をはじめとした国費事業を活用して施設整備を進めてきたが、生産力の強化に意欲があっても、その採択要件を満たすことができず国の事業を活用できない産地があることから、2018年12月補正予算において国の補助制度を補完する本県独自の補助制度として創設したものである。
創設以来、毎年1億円の予算で支援してきたが、近年、作業効率の向上や人への負担の軽減などに有効なスマート農業技術の開発が急激に進み、本事業においてもスマート農業機械等の導入の要望が増加し、要望額が予算額を上回る状況となっていた。こうしたニーズに対応し、2022年は採択基準に省力化、省人化、ICT等の活用した技術継承といった観点を加えて見直しをするとともに、予算額についても、12月の補正予算で当初予算の1億円から1億6,000万円へと増額した。
2022年の取組実績については、13市町村において21の事業計画に基づいて3団体、46の経営体が事業を実施して、年度内に18事業計画1億836万8,000円を執行し、残りの3計画5,000万円余りを本年度に繰越して実施している。具体的には、防除用のドローン、稲の食味・収量センサー機能搭載コンバインなどの農業機械の導入、野菜や花きでは農業用ハウスの新設、環境モニタリング装置の導入などを支援している。
事業の成果について、創設以来、2019年度から2022年度の4年間の事業の取組実績として、62の産地で事業費の総額約16億1,900万円、補助金ベースで4億5,900万円の助成を行い、施設の整備や農業機械等の導入を支援した。事業の評価年度を迎えた2019年度及び2020年度に助成した取組では、産地の販売額が2年合計ではあるものの、基準年の26億6,800万円に対して32億5,200万円と22パーセントの増加が見られ、事業の成果は着実に上がっていると考えている。
事例として、高機能な被覆資材や光合成促進機の導入により栽培環境が改善し収穫量が増加したもの、重量選別機の導入によりパック詰めの作業の効率が上がり販売額が向上したもの、自走式防除機の導入により適切に病害虫防除ができ品質が向上したもの、自動潅水システム導入により大幅に労働時間が削減され果実の品質が上がったものなどがある。
【委員】
農業従事者は、後継者問題など様々な問題を抱えている。そして、この国の産地パワーアップ事業の規模感には合わない農業者が多いため、このあいち型産地パワーアップ事業の補助金は求められている事業で喜ばれている。ぜひ今後ともしっかり現場を見て推進してもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書220ページの農業総合試験場管理運営事業費の1、試験研究費の中にゲノム情報を活用した育種選抜マーカーと新育種技術を活用した育種素材の開発とある。
ゲノム編集による食品は、その安全性について消費者の間でも関心が高く、ついゲノムと聞いただけで過敏に反応してしまう。ところが、国は、遺伝子組換え食品の表示で消費者離れを起こしたことから、その轍を踏まないよう、ゲノム編集の表示義務はないことにしてしまった。これは大きな問題だと思っている。
そこで、先ほどの研究はどのような研究か、ゲノム編集とは違うのか、そして、現在、県農業総合試験場においてゲノム編集の研究はどうなっているのか、特に食用となる農産物についてはどうなっているのか。
【理事者】
ゲノム情報を活用した育種選抜マーカーと新育種技術を活用した育種素材の開発の研究課題においては、イチジクの育種選抜に使えるよう、主にイチジクの皮の色に関するDNAマーカーの開発を行っている。これは、ゲノム編集とは全く異なる手法であり、目的となる有用遺伝子付近の特定のDNA配列を見つけ、DNAマーカー、すなわち目印として利用する育種選抜法である。従来の方法では、交配後、種子をまいて育て、果実が実るようになってから優良な個体を選抜するため栽培に多くの時間を必要としていたのに対し、DNAマーカーを用いた育種の場合には、ごく生育初期に葉の一部などを使ってDNAマーカーを目印に解析し、有用な遺伝子を持つ個体を選抜することができるため、育種期間の大幅な短縮が可能となる。
県農業総合試験場では食用となる農作物を対象としたゲノム編集技術による育種研究は行っていない。菊など観賞用の花き、花に限定してゲノム編集技術を活用した育種の研究を実施している。
【委員】
ゲノム編集については菊では行っているが食用となる農産物で行っていないとのことだが、なぜやっていないのか、技術的な問題や施設の能力の問題なのか、今後、行う可能性はあるのか。
【理事者】
食用となる農作物のゲノム編集技術を活用した育種について、国内では国の研究機関や大学を中心に一部で研究、実用化が図られているものの、生産者や消費者に広く理解が進んでいるものではないと認識している。
このような中、県農業総合試験場で食用となる農作物の育種に関してゲノム編集技術を活用していないのは、農業総合試験場が本県の農業生産の現場で必要とされる生産性や品質の高い新品種などを開発する機関であり、品種開発の過程で活用する技術についても生産者や消費者の理解の得られるものでなければならないと考えているためである。このため、現時点では食用となる農作物のゲノム編集技術を活用した育種について、将来も含め、研究を計画していない。
【委員】
質問が、なぜ行っていないのかと強めに聞いたため、私が推進しているように聞こえたかもしれないが、生産者や消費者の理解が得られるまでは慎重にやってもらえることは、私にとっては歓迎する答弁であるため誤解しないようにお願いする。
一方で、ゲノム編集によって筋肉の生産抑制遺伝子をカットしてサイズが大きくなった真鯛がある。また、食欲抑制ホルモンをカットすることによって餌を食べ続け、成長が早くなったトラフグを、京都府宮津市は、ふるさと納税の返礼品として22世紀ふぐという名前で出している。
令和4年度決算に関する報告書242ページの水産試験場管理運営事業費のうち、水産試験場では、魚に関するゲノム編集の試験研究は行っているのか。
【理事者】
本県の水産試験場においては魚のゲノム編集の研究はやっていない。
【委員】
行っていない理由、今後、行う可能性があるのか伺う。
【理事者】
水産についても農業と同様で、国の研究機関や大学を中心に一部の魚類養殖でゲノム編集に関する試験研究を行っているが、本県の水産試験場では行っていない。
また、今後についても、現時点で計画はない。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書217ページの農福連携推進事業費について、数年前までは、農福連携について興味を持っている農業者や福祉事業所の人もたくさんおり、私にいろいろな相談や質問をする人が多かった。しかし、最近、特に農業者に関しては少し課題があり、半分諦めて、農福連携は難しいと話す人が多く、話題からも消えてしまっているように感じる。
農福連携推進事業費について、今回の予算の中で行った事業の実績について伺う。
【理事者】
農業水産局では、推進体制の整備、県民理解の促進、専門人材の育成の3本を施策の柱として、農福連携の推進に取り組んでいる。推進体制の整備として、農福連携に関する様々な相談へのワンストップ対応を行う相談窓口を、民間に委託して設置している。窓口では、農業者と福祉事業所との農作業請負のマッチングを進め、令和4年度は年間で延べ380件の相談に対応し、このうち、ピーマン収穫後の袋詰め作業請負など、新たに10組のマッチングが成立した。
また、県民理解の促進として、農業者、福祉事業所関係者、市町村担当者など、参加者138人に対してあいち農福連携セミナーを開催するとともに、農業大学校において農業に興味のある特別支援学校の生徒を対象とした農作業体験を実施するなど、農福連携の周知、啓発を図った。
次に、専門人材の育成として、農福連携のマッチング時や農作業を実施するときに、農業と福祉の両方の知識を有し、農業者及び福祉事業者双方に助言できる人材の育成に向けて、令和4年度から新たに農林水産省の認証カリキュラムによる研修を開催して、農福連携技術支援者として19人を認定した。
こうした様々な取組の効果として、令和5年4月時点で県内において農福連携に取り組んでいるのは、農業者79主体、福祉事業所95主体の計174主体となっており、着実に増加している。
【委員】
着実に進んでいることは分かったが、現場では難しいという声もいまだに聞く。うまくいっているところでは、福祉事業所から来ている支援員が現場で協力してもらえることや、先ほど説明してもらった農福連携技術支援者のように、農業者及び福祉事業者の両方のことを分かっている人が現場にいるとうまくいく。また認定した農福連携技術支援者が19人とのことだが、現場や福祉事業所などの人々に、支援者として活躍してもらう人を増やすことで、この農福連携事業をより進めていけると思うので、ぜひ尽力してほしい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書223ページの主要農作物種子対策費の実施状況について伺う。
令和4年度の事業執行状況はどうなっていたのか。
【理事者】
主要農作物種子対策費は、主要農作物の品種の開発並びに種子の生産及び供給に関する条例に基づき、主要農作物である稲、麦、大豆の優良種子を安定的に生産して供給するとともに、新たな品種の開発に取り組んでいる。
令和4年度の執行状況は、予算現額2,974万3,000円に対して執行額2,848万9,355円で、執行率は95.8パーセントである。
【委員】
次に、令和4年度に特に力を入れたこと、特徴的なことはあったのか。
【理事者】
この事業は、優良な種子の安定的な生産と供給及び優良な品種開発を継続的かつ計画的に進めるものであり、令和4年度だけで特別なことはないが、毎年、これらの取組を適切に実施していくことが重要である。
優良種子生産供給推進費の事業内容としては、種子を安定して生産、供給するため、種子の需要の見通しや生産量を定めた種子計画を策定、公表しており、この計画に基づいて種子の生産農家が種子生産を行っている。種子の生産農家に対しては、種子の品質を保つため、県の普及指導員である種子審査員がほ場における生育状況や収穫した種子の状況を審査している。品種開発・原種生産事業費では、農業試験場が種子の生産農家に必要な原種等を生産するとともに、夏の高温条件下でも品質や食味がよいなどの特性を持つ優良な品質の開発に取り組んでいる。
また、品種開発整備費では、品種開発を加速化するために必要な設備や農業機械を導入している。
【委員】
夏の高温によって米が白く濁って品質が低下していると聞いたことがある。米の品質低下に対して、県としてどのように対応しているのか。
【理事者】
米の品質低下への対応については、県農業総合試験場において夏の高温条件下でも安定して高品質な米が生産できる品種を開発しており、現在、愛ひとつぶとして販売されている。今年の夏は記録的な猛暑で全国的に一等米比率が約6割と低くなっているが、愛ひとつぶは9割近くが一等米で、高品質な米が生産できている。
また、直近では、愛ひとつぶとあいちのかおりの間の時期に収穫でき、夏の暑さにも強い愛知135号を開発し、今年9月に県の奨励品種として採用した。県としては、今後も県農業総合試験場において、夏の高温に対応した栽培技術の開発及び品種の開発に取り組む。
【委員】
二つ目の質問では継続性や計画性などについて答弁してもらった。三つ目の質問に対しては環境変化への対応を答弁してもらった。厳密には担当している部署が違うのかもしれないが、継続性や計画性と環境変化への対応は、環境変化が緩やかなとき、小さなときは両立すると思うが、環境変化が大きくなったり早くなったりすると両立が難しくなると思う。現在、環境の変化が大きく早い気がするため、この両立に対して注意深く取り組んでもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書210ページの農作物鳥獣被害防止対策費について伺う。
毎年、この農作物被害防止のために鳥獣被害防止対策費を計上し、執行しているが、令和4年度の野生鳥獣による農作物被害の状況はどうだったのか経年での状況を含めて伺う。
【理事者】
本県における2022年度の野生鳥獣における農作物被害の状況であるが、農作物被害金額は4億8,118万円で2021年度に比べて3.3パーセント増加している。被害面積は501ヘクタールで前年度に比べて6.7パーセント減少し、被害量は2,441トンで前年度に比べて2.8パーセント減少している。
被害金額については、鳥獣被害防止特別措置法に基づき国の鳥獣被害防止総合対策交付金を活用し、鳥獣被害防止総合対策事業を開始した2010年度の被害額6億835万円からは減少しているものの、近年は年間4億円から5億円の範囲で推移しており、特に2018年度以降は、少しずつではあるが増加傾向にある。
野生鳥獣の種類で見ると、カラスによる被害金額が1億4,991万円で最も大きい額となっており、全体の約3割を占めている。次いでイノシシが778万円、シカが554万円という順になっており、これら三つの鳥獣で被害額全体の約6割を占めている。
【委員】
2点目、農作物鳥獣被害防止対策費のうち、全体の9割以上を占めている、鳥獣被害防止総合対策事業費補助金について伺う。これは、市町村が作成する被害防止計画に基づいて市町村や農林漁業団体などで構成される地域協議会や市町村が実施する被害防止対策に対して助成を行うものであるが、令和4年度の実績と執行率はどれくらいか。
【理事者】
令和4年度の主な実績は、6市町村及び14の協議会において、捕獲わな320基導入、有害鳥獣2万6,857個体の捕獲及び侵入防止柵約49キロメートルの整備を行った。当補助金の執行率は89.3パーセントである。
【委員】
市町村や協議会も含めていろいろと取り組んでいるが、被害額が減らないことについて、県としてどう分析しているのか。そもそも事業費が足らず捕獲できていないのか。それとも、有害鳥獣を捕獲する機材を改善できれば捕獲できるようになるのか。もしくは、人の問題なのか、その辺りを県はどう考えているのか。
【理事者】
県としては、近年、被害金額が減少していないのは、捕獲者や地域の農業者の人材に関する問題が最も大きいと考えている。
まず、捕獲者については、県内の有害鳥獣捕獲の担い手となっている、一般社団法人愛知県猟友会の会員数は減少傾向にあり、高齢化も進んでいることから、捕獲者の確保が課題である。
また、鳥獣被害対策は、カラスやイノシシなど鳥獣の個体数を減らすための捕獲だけでなく、地域に寄せつけないための生育環境の管理、地域に入らせないための侵入防止対策を含めた三つの活動を地域ぐるみで総合的に実施することが重要であるが、これらの活動を理解し積極的に参加・活動する人材が少ないため実践できていない地域が多いことも課題と考えている。
なお、捕獲機材については、国や都道府県の研究機関、あるいは、民間企業による開発が進められているが、捕獲数が大幅に増加するような商品の開発には至っておらず、地域においても大量の個体をまとめて捕獲する大型で高価な機材よりも、省力的に捕獲できる安価で設置しやすい機材の導入が進んでおり、捕獲機材よりも、捕獲者による捕獲機材の日常的な管理が重要であると考えている。
あわせて、事業費については、鳥獣の捕獲はもちろんのこと、捕獲機材の導入や侵入防止柵の整備など、被害防止対策に必要な金額を継続的に確保するとともに、より効果的に活用することが重要である。こうしたことから、環境局と連携し、捕獲初心者の技術向上や狩猟免許取得促進のためのセミナーを2019年度から開催し、捕獲の担い手育成に向けて取り組むとともに、昨年度からは、地域協議会で鳥獣被害対策の中心的な役割を果たす市町村の担当者を対象とした研修会を開催し、地域ぐるみで総合対策を行う重要性等について理解してもらい、本補助金を地域の状況に応じて効果的に活用するよう指導している。
【委員】
以前、東三河のある町長が「美味しいところは動物たちが食べて、動物たちが食べなかったところを人間が食べる」といっていた。農業生産者は、大変厳しい状況に置かれており、なかなか儲からない。儲からない産業には人は入ってこず、その担い手も含めて、儲かる農業をいかにつくっていくのかが、これからも不断の取組になる。
その中で、こうした有害鳥獣に食べられてしまうのを防止するには、一定のコストがかかるため、本県としてもしっかりと支援できるところは支援し、もうかる農業をつくってもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書210ページの農作物鳥獣被害防止対策費について伺う。
委員の質問への答弁でも農作物の鳥獣被害が非常に深刻だと理解した。
そこで、県が主に行っている取組で、被害防止対策推進費について伺う。
この報告書には新規開発された技術について現地実証を行ったという記載があるが、具体的にはどのような取組を行ったのか。
【理事者】
報告書にある新規開発された技術の現地実証とは、鳥獣被害で困っている地域の農業者からの相談に対して、該当する地域を所管する農林水産事務所の農業改良普及課と長久手市にある農業総合試験場が連携し、国や本県及び他県の研究機関などで開発された鳥獣被害防止対策技術を現地に導入して、その効果を検証する取組である。
2022年度は、県内5つの農業改良普及課において7つの技術実証を行った。その一例として、本県で最も被害額の大きいカラスに関する現地実証について説明すると、岡崎市内のブドウ園のカラス対策として、ブドウの棚上に2.5メートル間隔で直径0.5ミリメートルのステンレスワイヤーを設置したエリアと、同じ太さの黒色のテグスを設置したエリアを設けて、カラスの侵入防止効果及び資材の経済性について比較調査を行った。その結果、どちらのエリアもカラスの侵入が確認されず、侵入防止効果に有意差がなかったことから、単価の安いテグスの方が費用対効果が高く、経済性に優れていることが確認できた。
こうした取組結果については各農業改良普及課で情報共有をするとともに、効果的な鳥獣被害対策として活用してもらえるよう、農業者が参加する研修会等で関係機関を通じて情報提供を行っている。
【委員】
鳥獣被害対策というのは、捕獲による個体数の管理と侵入防止対策、さらには、生息環境管理の3本柱が鉄則だと言われており、この3つの活動を地域でどうやって徹底してやっていくかが重要であるとされている。
県としてこの地域ぐるみの活動を支援する取組は何か行っているのか。
【理事者】
地域ぐるみでの活動を支援するため、被害防止対策推進費のうち、人材育成活動として鳥獣被害対策モデルケース育成事業を2022年度から開始している。この事業は、地域全体での鳥獣被害対策のための活動を強化することによって農業被害を防ぐことを目的に、地域の農業者などを対象とした現地研修会を開催するものである。
2022年度は、鳥獣被害が大きい豊田市大野瀬町梨野地区と新城市大字作手保永和田地区の2地区で実施をしており、梨野地区では研修会を6回開催し、延べ66人が参加、和田地区では研修会を5回開催し、延べ87人が参加した。
この事業によって、鳥獣被害対策の3本柱である、寄せないための生息環境の管理、近くに入らせないための侵入防止柵の設置、個体数を減らすための鳥獣の捕獲などの各対策や、それらの対策を地域ぐるみで徹底して取り組む重要性についての理解が進み、地域住民による周辺環境や侵入防止柵の点検、整備、シカやサルの効果的な捕獲対策の検討などの取組が始まっている。
この事業は、引き続き今年度も実施していることから、今年度の取組内容も含め、取組によって得られた成果は、今後、県のウェブページへ掲載するなど情報発信を行うとともに、農業総合試験場や各地域の農業改良普及課と連携し、こうした取組が必要な地域に横展開を図っていきたい。
【委員】
最近、クマの話題が持ち切りである中、先週には私の住む春日井市内でもクマと見られる足跡を県職員が確認したとのことで、正直、驚きと同時に危惧している。
鳥獣被害の背景の一つは、高齢化による荒廃農地の増加により、野生鳥獣の生息域が拡大している。鳥獣被害は離農の動機にもなり、被害を防ぐ対策を継続的に進めてもらうことが集落の維持にもつながるため、先ほど触れた対策の3本柱を実践するために新しい技術の導入、そして、マンパワーが必要だと思うので、引き続き支援をお願いする。
続いて、令和4年度決算に関する報告書263ページの森林環境譲与税活用事業費のうち、森林環境整備事業費について伺う。
森林の有する多面的な機能が発揮されるよう、森林の整備や木材利用を促進することは重要である。そして、これらの取組に必要となる森林に関する情報を関係者が取得し利用できる環境を整えることも重要な取組である。報告書には航空レーザ計測データを活用した森林情報の整備を行ったとの記載があるが、この森林クラウドシステムの開発について、システムの内容を伺う。
【理事者】
森林クラウドシステムは、森林に関する情報を電子データにて一元管理し、県、市町村、林業経営体がリアルタイムで共有し活用するためのものである。システムには、航空レーザ計測データの解析により取得した詳細な森林資源情報や地形情報が登載されている。これを活用することにより、杉やヒノキなど、一本一本の樹種の分布や樹高、太さ、面的な資源量の把握に加え、斜面の起伏や傾斜、林道や作業道、過去の崩壊跡地などを把握することができる。
また、これまで県で整理してきた森林簿や市町村が管理する林地台帳、過去の補助事業等の施業の実績も登載しており、森林所有者情報や過去の施業状況なども把握できる。
【委員】
令和3年11月定例議会の代表質問で、この森林の持つ多面的機能の発揮に向け、所有者不明の森林に対する対策をどのように行っていくのかという質問で、その際、市町村が森林所有者に代わって経営管理を行う、いわゆる森林経営管理制度において、所有者不明森林の対策も行っていくとの答弁があった。
そこで、この森林経営管理制度の推進など、森林整備や林業振興において、今回開発した森林クラウドシステムにどのような効果が期待されるのか。
【理事者】
森林経営管理制度の推進において、市町村が森林所有者に代わって間伐などの森林管理を行うに当たり、まず最初に、手入れの行き届いていない森林を抽出した上で、森林所有者に対し経営管理の意向確認を行う必要がある。このシステムを活用することで、樹木の混み具合などから対象となる森林の抽出を容易に行うことができる。
また、森林整備や林業活動を進める上で重要となる土地の所有界の確認について、森林所有者の高齢化などにより年々困難になってくる。このシステムを用いることにより、樹種や樹齢の違い、尾根や谷などの地形情報を参考に境界の推定図を作成することで、現地に行くことなく隣接所有者同士による境界の確認が可能になる。こうした省力化等の取組により、効率的な森林経営管理や施業の集約化を図ることができる。
【委員】
森林の持つこの公益的機能の発揮には、森林を適切に維持、管理することが必要である。市町村や林業経営体による効率的な森林整備の推進に向け、ぜひこの開発したシステムが活用されるようにしっかりと取り組んでもらうことを要望する。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年11月15日(水) 午後0時58分~
会 場 第8委員会室
出 席 者
鈴木喜博、寺西むつみ 正副委員長
伊藤辰夫、山本浩史、神戸健太郎、丹羽洋章、山田たかお、杉江繁樹
高橋正子、日比たけまさ、黒田太郎、加藤貴志、神谷まさひろ 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、経済産業局技監、
情報通信(ICT)政策推進監、中小企業部長、産業部長、
革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、畜産振興監、
水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、
会計管理者兼会計局長、同次長、
監査委員事務局長、同次長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 決 算
決算第1号 令和4年度愛知県一般会計歳入歳出決算
歳出第5款経済労働費、第6款農林水産費及びこれらに
関する歳入
決算第6号 令和4年度愛知県中小企業設備導入資金特別会計歳入歳出
決算
決算第7号 令和4年度愛知県就農支援資金特別会計歳入歳出決算
決算第8号 令和4年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計歳入歳出決算
決算第9号 令和4年度愛知県県有林野特別会計歳入歳出決算
決算第10号 令和4年度愛知県林業改善資金特別会計歳入歳出決算
<会議の概要>
Ⅰ 経済産業局、労働局、観光コンベンション局、労働委員会事務局関係
1 開 会
2 決算概要の説明
3 質 疑
4 休 憩(午後3時2分)
Ⅱ 農業水産局、農林基盤局関係
5 再 開(午後3時15分)
6 決算概要の説明
7 質 疑
8 閉 会
(主な質疑)
《経済産業局、労働局、観光コンベンション局関係》
【委員】
令和4年度決算に関する報告書173ページの商業振興事業費について、市町村が実施したプレミアム商品券発行事業を対象にしたげんき商店街推進事業費補助金の制度の概要と、県が補助金を出した自治体の数及び補助金の総額について伺う。
【理事者】
げんき商店街推進事業費全体の決算額6億2,275万円のうち、事務費を除いたげんき商店街推進事業費補助金に係る決算額は総額6億2,268万6,000円であり、そのうち、プレミアム商品券発行事業分は5億2,767万8,000円である。この補助金は市町村を対象として交付するものであり、プレミアム商品券発行事業では、34市町村に補助金を交付している。
プレミアム商品券発行事業の制度概要について、補助要件は消費喚起に資することを目的としたプレミアム商品券発行事業であり、プレミアム率が20パーセント以上で実施される事業であることとなっている。また、補助対象経費は、換金経費のうちプレミアム分の額、補助率は、補助対象経費の2分の1以内となっている。
なお、補助率は、補助限度額として市町村の規模に応じた上限額を設定している。具体的には、政令指定都市8,000万円、中核市2,800万円、その他の市町村1,400万円の上限を設けている。
【委員】
この後の質問を分かりやすくするために、安城市で行った例を説明する。私の地元、刈谷市は、令和4年度の当該事業に参加しなかったため、隣の安城市を参考に紹介をさせてもらう。
まず、このプレミアム商品券の販売総額は10億8,000万円であった。プレミアム率20パーセントのプレミアム分は1億7,800万余円であったことから、1億7,800万余円のうち、県の補助対象額は、その2分の1という条件に照らすと約5,000万円が補助される。しかし、もう一方の条件で上限額にかかるため、安城市の場合は県からの補助は1,400万円となり、プレミアム分に対する補助金の額、実質的な補助率は7.8パーセントであった。
そこで、今回、34市町村が実施した中で補助率の上限2分の1に引っかかった自治体は幾つあるのか。また、上限額に引っかかった自治体で実質的な補助率が10パーセント未満の自治体は幾つあったのか。10パーセント台、20パーセント台、30パーセント台、40パーセント台の自治体の数をそれぞれ示してほしい。
【理事者】
令和4年度のプレミアム商品券発行事業で県から補助金を交付した34市町村のうち、上限に達せず補助率2分の1、50パーセントの額で交付したのは4市町村で、残る30市町は上限額での交付となっている。
上限額で交付した30市町に対するそれぞれのプレミアム分の額に占める県からの補助額の割合は、40パーセント台が2市、30パーセント台が3市町、20パーセント台が7市町、10パーセント台が7市町、10パーセント未満が11市町である。
【委員】
4市が2分の1の交付で、あとは40パーセント台が2市、30パーセント台が3市町、20パーセント台が7市町、10パーセント台が7市町で、10パーセント未満が11市町。今回、安城市の場合は7.8パーセントのため、この10パーセント未満に入る。
補助率が2分の1という制度があるにもかかわらず、実際の補助率が数パーセントでしかない自治体がたくさんある。市町村にとっては、プレミアム商品券発行事業を行った際に県の補助がないよりはありがたいとの気持ちにもなるが、県がこの事業を行う本来の目的とは、補助をすることにより市町村を助けるのが目的ではなく、地域の活性化や商業の振興のためにプレミアム商品券発行事業を市町村に積極的に実施してほしいためのインセンティブとして補助金をつけていると思う。市町村がプレミアム商品券発行事業を実施する気持ちになるように、補助率を上げなければ意味がないと思うがどうか。
【理事者】
プレミアム商品券発行事業の規模やプレミアム率などの具体的な取組は、市町村ごとにかなり異なっている。例えば、販売総額は最小3,000万円から最大218億円までと大きく幅がある。これは、各市町村がそれぞれ個別の考え方や方針の下、工夫を凝らしながら事業を実施したためと考えている。県は、限られた財源の中で上限の設定は合理的であると考えており、一定のインセンティブを果たしている。
しかし、新型コロナウイルスの影響が残る中、世界的な原材料価格の急騰などに伴う物価高騰により県内の地域産業を取り巻く情勢は依然として厳しく、県としても、そのような状況を打破するためには、より一層の消費喚起を図る必要があると判断して、令和5年度には補助上限額の設定を前年度の1.5倍に引き上げた。具体的には政令指定都市は8,000万円を1億2,000万円、中核市には2,800万円を4,200万円、その他の市町村は1,400万円から2,100万円とすることにより市町村のインセンティブを高められるよう努めている。
今後も引き続き、市町村が実施する商店街活性化事業に対して効果的な支援となるよう取り組む。
【委員】
この事業の目的は、市町村が少しでも補助してくれてありがたいと思うことではない。現に私の地元の刈谷市はやらなかった。もし、50パーセントを県が補助してくれるなら刈谷市もやってみようとインセンティブが働いた可能性がある。令和5年度に補助上限額の設定を上げてもらったが、さらにその目的に合った補助率になるよう要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書178ページの自動運転社会実装推進事業費について、愛知県では、自動運転の社会実装を目指して、全国に先駆けて2016年度から様々な実証実験を積み重ねてきている。昨年度に自動運転車両に試乗した際に、その技術の高度化を改めて実感した。私の地元は、中部国際空港と対岸部を結ぶ地域だが、技術が相当進歩していることを体験した。
そこで、令和4年度の実証実験に係るエリアごとの取組内容及び成果について伺う。
【理事者】
令和4年度は名古屋市内、中部国際空港エリア及び愛・地球博記念公園において実証実験を実施した。
名古屋市内では、2024年にオープンするSTATION Aiと名古屋駅を自動運転車で結ぶことを目的として、名駅南から栄南地区の三蔵通を中心としたルートで自動走行の検証を行った。その成果は、交通量の多い都心の複雑な道路環境において、他の一般車両等と共存して自動走行を実現できたことが挙げられる。
課題は、幹線道路の車速に対応しながら停車車両の回避など、よりスムーズな自動走行能力を確保することであり、本年度の実証実験により課題解決を図る。
中部国際空港エリアでは、中部国際空港とイオンモール常滑との間を安定的に運行し、利便性を高めることを目的としており、自動車専用道路を含むルートで検証を行った。その成果は、自動車専用道路である中部国際空港連絡道路において、磁気マーカを活用することで、横風の中にあっても制限速度である時速60キロメートルでの走行性能を実現したことが挙げられる。
課題は、雨、雪等の耐候性の検証や、夕日で逆光となる状況での信号認識機能の向上があり、こちらも本年度の実証実験において課題解決を図っていく。
愛・地球博記念公園では、車と歩行者が混在する環境での大型バスの安全・安心な運行を目的として、園内西側の既存のバスルートで検証を行った。成果としては、多数の歩行者が存在するエリアにおいて、AI映像解析技術を活用した歩行者への注意喚起を行うことで、歩行者と自動運転バスの安心・安全な共存の在り方を検証できたことが挙げられる。
課題は、園内のあらゆる走行環境でも自動走行が継続可能となるよう、起伏や枝等の自然落下物が存在する環境での走行検証がある。本年度の実証実験において、早速これらの課題解決を図った。
また、試乗者からのアンケートでは、3エリアとも8割以上の方が自動運転車両の再利用の意向があり、確実に社会的受容性が醸成されていると確認することができた。引き続き、安心・安全で利便性の高い自動運転社会を実現するため、国内外の技術、ノウハウを結集し、交通事業者をはじめ、幅広い参画者と共に社会実装を目指していく。
【委員】
重ねて言うが、当初の頃の自動運転と比べると、昨年、私が乗ったエリアでは、時速60キロメートルの自動走行ができるなど、自動運転の実現が近づいてきていることを体験できた。地方では、運転士不足でダイヤの本数が減っている状況が既に起こっているため、一日も早い実現に向けてさらなる努力をしてもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書の170ページから171ページにある、スタートアップ支援事業費のうち、外国人創業活動の促進について伺う。
外国人創業活動促進事業及び外国人起業活動促進事業について、その内容と令和4年度の実績はどうなっているのか。
【理事者】
本県では、国家戦略特区特別区域法に規定された規制改革メニューの一つとして、6か月の経営管理の在留資格が認められる外国人創業活動促進事業と、もう一つ、経済産業省の認定を受け、在留資格特定活動を最大1年間認められ国内で様々な起業準備活動を行うことができる外国人起業活動促進事業を実施している。
外国人創業活動促進事業では愛知県内で新たに事業を始める予定の外国人を対象としており、留学を除き、既にほかの在留資格で日本に在留している外国人は原則として利用できない。なお、業種の指定はない。
一方、外国人起業活動促進事業では、既にほかの在留資格で日本に在留している外国人でも利用できるが、業種をIT分野及び革新的技術、技能を用いて高成長を目指す事業に限定をしている。
令和4年度の実績は、外国人創業活動促進事業が15人、外国人起業活動促進事業が1人に対して証明書を交付した。国別では、パキスタンが8人、中国が5人、アフガニスタン、ベトナムがそれぞれ1人ずつとなっている。業種別では、貿易業が7人、小売業が3人、卸売業2人、飲食2人及びサービス業1人となっている。
外国人起業活動促進事業の1人は、情報通信産業で創業するパレスチナ人に証明書を交付している。
【委員】
事業を始めるに当たっての申請方法について、ワンストップでできるオンライン申請を行っているのか。
【理事者】
申請方法は二通りあり、電子申請と、所定の申請用紙に記入して提出してもらう紙の申請がある。先ほどワンストップとの話があったが、申請自体は申請者本人、または申請者本人から委託を受けた行政書士等でも可能となっており、実態としては、入国の手続の関係もあるため、ほとんどの場合、代理の行政書士等が手続を行っている。
県から事業内容を確認した上で事業活動が妥当であると判断された場合、創業活動の確認証明書、または、起業活動の確認証明書が交付されるが、それを出入国在留管理局に提出する必要がある。同局からは原本の提出が求められているため、県からの証明書の交付は、手渡し、または郵送での書面交付になっている。
【委員】
外国人創業活動促進事業及び外国人起業活動促進事業について、外国人に対し、どのように周知しているのか伺う。
【理事者】
制度の周知については、県のホームページ及びチラシで行っている。
県のホームページでは、外国人起業活動促進事業、外国人創業活動促進事業、おのおの独立したページを設けており、事業の目的や対象者、事務手続の流れ等について説明している。
また、チラシについては、それぞれの案内チラシを日本語版、英語版及び中国語版で作成しており、愛知県内の市町村、領事館、大学、中小企業の支援機関等に配布して周知を図っている。加えて、昨年の4月に公益財団法人あいち産業振興機構内にあいち外国人起業&経営支援センターを開設し、そこでの相談対応を通じて、この二つの事業の周知を図っている。
【委員】
外国人創業活動促進事業に関し、ホームページでは英語が日本語の下に書かれている一方、外国人起業活動促進事業については日本語のみの記載となっている。チラシには英語が入っているが、ホームページには片方しか英語が入っていないため、改善していくべきだと思うがどうか。
【理事者】
県のホームページの記載については、指摘のとおりであるため、外国人起業活動促進事業も英語表記するよう改善を図る。
【委員】
この件に関して、欧州ではフランスが拠点となって県と連携しているが、欧州の他の国でもスタートアップの力は非常に強いと思う。提携を結んでいるフランス以外でのPRは、どのように進めていくのか。
【理事者】
欧州へのPRは、県のホームページやチラシによる周知にとどまっているため、スタートアップ推進課等と連携をしながら積極的にPRしていきたい。
【委員】
ホームページは、英語表記がないものは英語表記を今後追加してもらえるとのことだが、日本語と英語を同じページの中で併記するのは非常に読みにくいため、別で英語のページとしてまとめると読みやすくなると思うので、外国人起業活動促進事業、外国人創業活動促進事業の両方で日本語専用のページ及び英語専用のページを設けるよう要望する。
次に、令和4年度決算に関する報告書177ページ、あいちの酒需要拡大促進事業費について、ポスター、パンフレットの作成及び試飲販売会の実施等の事業内容について伺う。
【理事者】
令和4年度決算に関する報告書177ページのあいちの酒需要拡大促進事業では、愛知の酒のさらなる需要拡大のため、単独では需要拡大に取り組むことが難しい県内の中小酒造メーカー等を対象に、首都圏等の大都市圏や県内で試飲販売会をはじめ、ポスターやパンフレットの作成により本県の酒造業業界の振興を図る取組を行っている。
令和4年度は、首都圏等の大都市圏での試飲販売会として、8月に東京丸の内駅前広場で開催された丸の内行幸マルシェをはじめ、9月にはクイーンズスクエア横浜、1月には東京ドームでのイベントにおいて試飲販売ブースを出展している。
また、県内では10月の久屋大通公園での秋酒祭、AUTUMN SAKE FESTを皮切りに、デンパーク、ドルフィンズアリーナにおいて試飲販売会を実施し、合計で約2,800本のお酒が販売された。
また、あいちの酒として、地酒を紹介するパンフレットを日本語版、英語版及び中国語版等で作成し、掲載されている酒蔵や酒造組合へ配布するとともに、試飲販売会等でも広く配布することで積極的にPRを進めている。
【委員】
海外展開をしたい醸造所について、先日、関谷酒造に行ったときに杜氏から、今後、海外を目指していく必要があると聞いた。その点を踏まえ、海外展開を含む今後の事業の進め方について伺う。
【理事者】
今後の事業展開について、コロナ禍を経て人流が戻りつつあることから、今年度も訪日外国人をはじめとした観光客に向けた試飲販売会の実施や、多言語パンフレットの作成、配布によりインバウンド需要への積極的な対応を進める。
今年度は、7月にオアシス21で開催したSAKAE SAKE SQUARE2023を手始めに、大阪、横浜等でのイベントにおいて試飲販売ブースを出展する。
また、海外への販路開拓については、名古屋国税局が中心となり、経済産業省、農林水産省、国土交通省等の国の機関やジェトロのほか、岐阜県、三重県、静岡県及び愛知県の地方自治体、そして、東海地域の酒造組合等の団体により構成される東海地域日本産酒類輸出促進連絡会議を開催し、それぞれの施策、状況等を情報交換しながら共有して進めていく。
【委員】
続いて、令和4年度決算に関する報告書193ページの就職氷河期世代就職支援事業に関して4点伺う。
1点目、事業開始以来の実績がどうだったのか、2点目、ヤング・ジョブ・あいちでの取組内容と、当該支援事業の違い及び連携の有無。連携がある場合は、どのような内容であるのか。3点目、当該事業の中にある紹介派遣制度の内容は何か、4点目、マッチングを提供できる業種は十分なのか、あるいは、特定の業種に偏っていることがないのか。
【理事者】
就職氷河期世代就職支援事業は、2020年度から実施している。2020年度はビジネススキル等の向上を図る就職支援講座や就職説明会を開催し、延べ250人が参加した。そのうち、就職した人は12人である。性別、年代別及び職種別での集計等はない。
2021年度から内容を大幅に見直し、社会人としての基礎力を高める事前研修や、紹介予定派遣制度を活用した職場実習を実施して、相談員による伴走型支援を行っている。
2021年度は98人が参加し、56人の就職が決まった。その内訳は男性が23人、女性が33人、年代別では30代が6人、40代が48人、50代が2人となっている。就職先の職種は、事務、製造、企画、営業、接客業と多岐にわたっており、事務職が39パーセント、製造職が11パーセントと多くなっている。
2022年度は114人が参加し、65人の就職が決まった。その内訳は男性が23人、女性が42人、年代別では30代が7人、40代が54人、50代が4人である。職種も、2021年度同様、多岐にわたっており、事務職が43パーセント、製造職が9パーセント、サービス及び接客業が9パーセントと多くなっている。就職先は中小企業が多いため、事務職でも営業、企画、製造、管理などの職種を兼ねている場合もある。
続いて、ヤング・ジョブ・あいちとの取組の違いについて、ヤング・ジョブ・あいちは、愛知県と愛知労働局が連携して運営する若者の就職総合支援施設である。職業適性診断や職業相談、職業紹介、キャリアコンサルティングなどの就業に関連するサービスをワンストップで提供している。
就職氷河期世代就職支援事業では、まず、参加者全員にキャリアコンサルティングを行い、その人の経歴、ニーズ等に応じた個別研修としてレベルに応じたパソコン操作やビジネスマナーなどを実施し、その後、委託事業者である人材派遣会社に雇用され、給料をもらいながら紹介予定派遣制度を活用した職場実習を行うことで、職場実習先への正社員就職を支援した。
本事業とヤング・ジョブ・あいちとの連携として、ヤング・ジョブ・あいちの利用者に本事業の参加を案内し、逆に、本事業の参加者で心理相談などが必要な人に対しては、ヤング・ジョブ・あいちの心理相談を利用してもらうなど、相互に連携して就職氷河期世代の人の就職、定着を支援している。
続いて、紹介予定派遣制度の内容についてであるが、紹介予定派遣制度とは、採用を前提として一定期間派遣社員を受入れ、企業と派遣社員双方の希望が一致すれば直接雇用に切り替えるものである。この事業の参加者を一定期間派遣する職場実習の職種として、事務職、営業職、製造職、ITエンジニア、介護職、保育士、飲食、接客及び販売など、多数紹介している。期間は最長2か月だが、1か月で終了し、就職する人もいた。
また、フォロー体制だが、委託事業者が参加者の職場実習先を定期的に訪問し、参加者、企業双方の意見を聞きながら仕事の進め方などについて助言を行うなど、職場実習後の正社員雇用に向けた相談等に対応しており、企業からは、進め方をその都度しっかりサポートしてもらえてよかったとの声をもらっている。
最後に、課題として、マッチングで提供できる業種に偏りはないかとの部分であるが、求職者は、事務職であれば業種は問わないなど業種よりも職種を重視していることから、業種別ではなく職種別に求人情報を提供している。また、参加者の職種に対する様々なニーズに応えるため、職種が偏らないよう企業開拓を行っている。2022年度は事務職41社、営業職54社、製造職68社、介護職・保育士・福祉職29社、飲食・接客・販売20社、ドライバー及び配送15社など、延べ322社の求人情報を提供した。
【委員】
就職氷河期世代は40代が多いこともあり、今後とも引き続き手厚い継続支援をしてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書169ページの海外スタートアップ支援機関連携推進事業費のうち、シンガポール国立大学との連携について、この内容と成果について伺う。
【理事者】
まず、県内企業のオープンイノベーションに向けた取組への支援として、県内企業とシンガポールをはじめとする国内外のスタートアップ等の地域課題解決に向けた協業プログラムを実施し、県内企業2社に対し、9社のスタートアップが参加した。
このプログラムでは6件の実証実験が実施され、そのうち、医療や防災分野に関するソリューションなど4件について継続して実証実験を行っていくことで合意するなど、多くの協業案件を創出した。また、NUS(シンガポール国立大学)が支援するスタートアップによるピッチイベントを開催した。
次に、県内スタートアップへの支援としては、NUSが主催する海外ビジネス展開プログラムへの県内スタートアップ1社の参加を支援するとともに、シンガポールで開催された展示会に関して、人事管理システム導入を進める県内スタートアップなど4社の出展を支援した。
さらに、NUSが主催する起業家養成プログラムへの県内大学生3人の参加を支援するなど、多岐にわたる事業を実施した。
なお、2023年度も、2022年度と同様の事業を進めている。
本年9月にはNUSのタン・チョー・チュアン総長が本県に訪問し、スタートアップ分野を含む科学技術分野における連携協力に関する覚書を更新したところであり、日本初となる拠点をSTATION Aiに開設予定であるNUSのスタートアップ支援施設ブロック71との協力関係を強化するなど、NUSとの連携関係のさらなる充実に努める。
【委員】
STATION Aiを成功させるためには、海外のスタートアップとの連携が大変重要だと感じている。私も9月にNUSを視察した。視察先は、NUSとNUSエンタープライズというシンガポール国立大学が関連する外部の企業に近いものであるが、両者がうまくリンクをしており、海外から別のスタートアップを呼ぶなど、相互の連携が非常にうまくいっていた。シンガポールが先進的なことができる理由だと思ったため、この事業をぜひ充実させ、STATION Aiの成功に導いてもらいたい。
続いて、令和4年度決算に関する報告書195ページの就職氷河期世代デジタル人材育成事業費について、その内容と成果を伺う。
【理事者】
就職氷河期世代デジタル人材育成事業は、就職氷河期世代の人々に、急速な情報化の進展等によりニーズが高まっている情報通信業等で必要なITの知識、技能を習得してもらうことにより、正社員としての就職の機会を創出し、キャリアチェンジの支援を目的として実施した。具体的には、情報通信業に携わっていた人や情報系の学校出身者、情報系資格取得者など、基礎レベル以上のITスキルを有する就職氷河期世代の求職者を対象に、Java、プログラミングなどのITスキルアップ訓練とビジネス実践力養成などのビジネススキルアップ研修、いわゆる座学研修を50日間行った。その後、正社員での就職を目指し求職者と企業とのマッチングを行い、紹介予定派遣制度を活用して県内のIT企業等で働きながら、知識、技能の向上を図る職場実習を30日間実施した。
昨年度は、定員10人に対して28人の応募があり、選考の上、10人に研修と実習を行い、8人が正社員として就職している。
【委員】
少し苦言になるが、この事業費は3,600万円を超える金額である。就職氷河期世代の中から10人を対象とした事業であるため、金額に対して、対象となる範囲が狭かったと思う。
就職氷河期世代が本当に求めているのは、正社員を通じて終身雇用につなげることではなく、しっかりとキャリアを積み、正社員として活躍できる仕組みを考えていくべきだと思う。対象者の範囲の拡大及び対象者の意識をもっと高めることを意識して、この事業を進めてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書184ページの中小企業金融対策費について伺う。
2020年5月から2021年3月まで実施した新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の実績について、直近の実績と業種別の返済状況はどのようになっているのか。
【理事者】
ゼロゼロ融資実績だが、最初の実績が、件数が8万7,000件余、金額が1兆4,680億円で、多くの利用があった。これの9月末時点での残高が、件数が6万1,000件、金額が7,810億円であり、当初の実績に比べて、件数が2万6,000件、金額が6,870億円減少している。これを率にすると、件数が約30パーセント、金額が約47パーセントの減少になっており、件数に比べて金額の減少幅が大きいことから、取扱いが終了してからの2年半で、比較的大口の利用者の返済や借換えによって減少したと考えられる。
また、業種別の減少率を見ると、製造業は件数が約35パーセント、金額が約50パーセントに対し、非製造業については、件数が約29パーセント、金額が約46パーセントとあまり大差はないものの、製造業に比べて非製造業の方が、件数、金額とも減少幅が小さくなっている。
非製造業の中でも不動産業は、ほかの業種が件数で26パーセントから34パーセント前後、金額が40パーセントから49パーセント前後の減少率なのに対して、件数は23パーセント、金額が37パーセントと、件数及び金額とも減少幅が小さく、ほかの業種に比べて返済や借換え等があまり進んでいない可能性がある。
また、昨今、倒産が増えている飲食業やサービス業は、件数の減少率が約27パーセントと減少幅が小さいが、金額は約40パーセントから45パーセントの減少率となっており、おおむねほかの業種と同じ傾向である。
【委員】
コロナ禍で中小企業の事業継続のための資金繰り支援として実施してきたゼロゼロ融資について、その効果を県としてどのように評価しているのか。
【理事者】
実績は、答弁したとおり件数が8万7,000件余、金額が1兆4,000億円であり、コロナ前の実績に比べると、件数で約4倍強、金額が約7倍強で県の制度融資創設以来、最大規模の実績となり、業種についても、コロナの影響を受けた幅広い事業者に利用してもらった。
また、新型コロナウイルス感染症の影響によって経営環境が急激に悪化する中で、中小企業が事業継続のために必要とする資金を迅速かつ円滑に供給し、県内の資金調達環境の維持に大きく貢献した。
また、ゼロゼロ融資の創設をきっかけに初めて県の制度融資を利用した事業者が増えたことから、手元資金を念のため厚くして経営の安定を図ろうとした事業者の資金需要にも応えられた。実際、利用者からは、実質無利子、無保証料のゼロゼロ融資を利用することで倒産を回避できたという声も多く寄せられるなど、倒産の抑制により雇用の維持にも効果があり、経済の非常時における県制度融資の施策効果が適切に発揮されたと考えている。
しかし、政府系金融機関が実施したゼロゼロ融資が不良債権化している問題や収益が改善する見込みがない中小企業が過剰債務に陥っているのなど報道もあり、コロナ禍を乗り越えたものの、物価高等の影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者に対して、引き続き借換え支援の継続などの資金繰り支援が必要と考えている。
【委員】
ゼロゼロ融資の据置期間が終了し、今年度から返済が本格化する中小企業者が増える中で、県としてどのような対応を考えているのか。
【理事者】
本県では、ゼロゼロ融資の返済に不安を抱える中小企業者の声を受けて、昨年10月に独自のサポート資金新型コロナ借換を創設した。さらに、既存のサポート資金経営改善等支援の融資限度額を1億円に引き上げるとともに、売上高の減少要件を従来15パーセント以上だったものを5パーセント以上に緩和し、売上高に加えて利益率の減少を融資対象に追加、さらに、借換えの特例を設けるなどの見直しを行った。サポート資金経営改善等支援は、本年4月以降も継続して、名前をサポート資金伴走支援として引き続き実施をしている。これらゼロゼロ融資の借換えに対応する二つの制度は、いずれも据置期間が5年以内で、特に、県独自の新型コロナ借換は最長15年間の融資期間に対応しており、借換えによって月々の返済負担が軽減されるほか、据え置く期間の再設定によって経営の改善や今後の事業の方向性を検討する時間的な余裕が生ずるといったメリットも見込まれる。
なお、これらの制度の融資実績は、令和4年度が合わせて6,373件、金額が1,208億円、県の制度融資全体に対する構成比は45パーセントとなっている。
令和5年度は、9月末時点で6,674件、金額が1,343億円で、県制度融資全体に対する構成比が約68パーセントであり、今年度のゼロゼロ融資の返済開始時期の到来に合わせて利用が大きく伸びている状況である。
このほか、県制度融資の取扱い金融機関及び県信用保証協会に対して、これらの制度の周知とともに、夏季や年末、年度末といった資金需要期に合わせて各事業者の実情に応じて借換えや条件変更等の相談に柔軟かつ積極的に対応してもらうよう定期的に要請を行っている。
本県としては、今後も経済環境の動向等を注視しつつ、こうした取組を通じて、物価高などの影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰りをしっかりと支援していく。
【委員】
コロナ禍で大変だった時期に、このゼロゼロ融資で本当に救われたという企業がたくさんいたと思う。その意味では、しっかり対応してもらったことは、非常にすばらしいことである。さらに、返済が本格化している中でもきちんと対応している、これも高い評価に値する。
その一方で、金融はどうしても後方支援や潤滑油の役割であり、中小企業を本質的に元気にしようと思ったら、やはり成長戦略が必要となってくる。成長戦略について、経済産業局全体としてさらに推し進めてもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書171ページのSTATION Aiパートナー拠点事業費について伺う。
県内各地域においてスタートアップ支援に取り組むSTATION Aiパートナー拠点の設立及びSTATION Aiとの相互連携協力関係の構築を推進するため、第1号拠点として東三河スタートアップ推進協議会が立ち上がっている。令和4年度は、どのような支援を行ったのか。併せて、その効果と課題について伺う。
【理事者】
令和4年度における東三河スタートアップ推進協議会への取組支援として、エコシステム形成支援統括マネージャーが地域の実情に応じたアドバイザリー業務を実施した。
また、スタートアップと地域の自治体とのビジネス共創プログラムとして、1か月間のAICHI CO-CREATION STARTUP PROGURAM及び5か月間のAICHI CO-CREATION INCUBATION PROGURAMを実施し、東三河スタートアップ推進協議会にも地域パートナーとして参画してもらい、スタートアップが行う仮説検証を支援した。そして、自治体担当者等を対象としたワークショップにも参加してもらい、スタートアップ・エコシステム形成に取り組む目的及び地域特性や強みの整理、新たな自治体等の巻き込みについて学んでもらった。
加えて、東三河スタートアップ推進協議会と協働で、東三河地域がスタートアップ・エコシステムの形成に向けて取り組んだ成果を打ち出すイベントを開催した。
支援の成果として、東三河スタートアップ推進協議会が行っている、8市町村実証スキームによる情報発信やPR強化、共創が進み、スタートアップと地域ビジネス共創プログラムに参加したスタートアップ企業、株式会社picks designが東三河スタートアップ推進協議会による協力の下、地域の珍しい商品を届けるそのとちぎふとと名づけたサービスを2023年4月から始めることができた。
また、地域で自発的に活動するスタートアップのプレーヤーが育ち、東三河地域の起業家や支援者が共創する参加型のコミュニティーなどを通じて地域とのマッチングができ始めている。
これまでの取組による課題は、自治体や地域の事業会社がスタートアップと共創する上での必要な体制やノウハウ、文化理解などを促進、充実していく必要がある。また、自治体以外の支援機関や金融機関など他団体を巻き込める体制や競争を促進できる人材を育成していく必要があるとも考えている。
これら課題解決に向けて、地域の主体的なスタートアップ支援の機運醸成や体制づくりを支援するため、引き続きスタートアップと地域のビジネス共創プログラムや自治体担当者等を対象とした研修会、交流会及びワークショップに取り組み、東三河地域における継続的な運営ができる仕組みと体制構築に向けた支援を進めていきたい。
【委員】
エコシステムの形成がスタートアップ支援の肝だということは、多くの人が知っている。私の事務所に何人か相談に来るため、このエコシステムが弱いと思う。誰に相談しに行ってよいのか、アドバイス、マッチングすれば何が改善できてブラッシュアップされていくのかなど、そういった部分がまだ弱い。
東三河のような小さなエリアでエコシステムが形成できればよいが、そうでなければ、県内のそうした取組とも有機的に連携しながら、必要な時期に必要なアドバイスが受けられ、必要な人を紹介してもらえ、資金も出してもらえるエコシステムができるようにすべきである。東三河スタートアップ推進協議会も、その中でエコシステムに組み入れられるなど、いろいろなケースがあると思う。小さなエリアにこだわらずエコシステムを形成していき、よりよいものが生み出されるように県としてもしっかり支援してもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書175ページの外国企業誘致促進事業費について伺う。
報告書にはINVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUM、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会等と連携し、外国企業の誘致、進出、定着支援を行ったと記載されている。具体的にどのような活動を行ったのか。
【理事者】
INVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUMは、県と名古屋市におけるイノベーションの創出や産業の活性化、雇用拡大を図るため、地域一体となって外国企業等の進出及び定着を促進することを目的として、愛知県、名古屋市、公益財団法人名古屋産業振興公社を構成員として令和4年3月に設立された。
同コンソーシアムでは、令和4年度は、既に県内に進出済みの外国企業の定着を促進する事業として、外国企業9社の共同ブースによるメッセナゴヤへの出展支援や、県内企業との人脈構築を目的としたネットワーク懇談会を開催した。
次に、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会は、名古屋を中心として半径100キロメートルの圏域内に世界から優れた企業、人材等を呼び込むことを目的として、グレーター・ナゴヤという統一ブランドの下、愛知県や岐阜県、三重県などの行政、産業界、大学等が一体となって当地域への外国企業の誘致や海外への情報発信等を行う協議会である。
同協議会では、令和4年度は外国企業の会社の設立や、人材募集時に必要となる経費の一部を助成する拠点立ち上げ支援のほか、対日投資に向けた外国企業の発掘等を目的としたドイツへのミッション派遣、また、グレーター・ナゴヤ地域内の企業との企業間交流イベントとして、ベトナムやタイ、英国企業とのビジネスマッチングを実施するなど、地域一体となった誘致活動を行った。これらの取組を通じ、昨年度は、本県へ7社の外国企業を誘致した。
【委員】
外国企業をさらに誘致するため、今後、どのような取組を実施していくのか。
【理事者】
INVEST IN AICHI-NAGOYA CONSORTIUMにおいては、昨年度は、県内展示会への出展支援やネットワーク構築支援といった本県に進出済みの外国企業に対する定着促進支援がメインであったが、今年度からは、構成員として国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学にも参画してもらい、外国企業の本県への進出を促進する事業にも取り組んでいる。
具体的には、外国企業向けの相談窓口の設置のほか、外国企業向けに当地域のビジネス環境の強みなどをPRするセミナー・オンラインマッチングの実施、さらには、本県への進出を検討している外国企業4社を選定して行う伴走支援や、来年3月に県内で開催されるスマートマニュファクチャリングサミットバイグローバルインダストリー(SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE)に合わせた外国企業の招聘といったアクセラレーションプログラムを実施していく。
また、グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会においても、対日投資促進事業や国際経済交流事業はもとより、今年度は県内に進出済みの外国企業へのヒアリング調査を実施し、外国企業誘致の施策立案を検討することとしている。
こうした新たな取組も進めることで、1社でも多くの外国企業の誘致につなげたい。
【委員】
大村秀章知事は日頃、国内外から、人、物、金、情報を愛知に呼び込むと発言している中、現在の円安状況は、外資系企業の日本への新規投資を促す絶好のチャンスである。インバウンド促進が海外から人を、対日投資が海外から企業をそれぞれ日本に取り込む政策であり、安い日本が経済成長を実現するために不可欠の両輪として注力すべき戦略だと思う。そして、海外から技術や資金を呼び込むことが愛知でのイノベーション創出にもつながるため、今こそ積極的な海外企業の誘致に取り組んでもらうよう要望する。
続いて、令和4年度決算に関する報告書183ページの再生可能エネルギー実現可能性検討調査費について、報告書には、本県における再生可能エネルギーの導入拡大に向け、実態の把握や課題の整理、実現可能性の検討に必要な調査を実施したと記載されているが、この事業の内容及び成果について伺う。
【理事者】
この調査は、太陽光、陸上風力、洋上風力、バイオマス、水力及び地熱といった再生可能エネルギー全般について、国内外の現状、自然面、社会経済面の課題、導入のポテンシャルなどについていろいろ整理をした調査になっている。
調査に当たっては、文献やデータの整理だけでなく、いろいろなアンケートも行った結果、太陽光発電及び洋上風力発電の二つの伸び代が大きいとわかった。太陽光発電は、民間主導でできると思うが、特に愛知県の場合は比較的大規模な導入ができる工場や倉庫での導入のポテンシャルが全国で最も大きいとの調査結果がある。
洋上風力発電は、欧米や中国が進んでいるが、日本でも2019年に再エネ海域利用法ができるなど、機運が高まっている中で、本県の場合は、渥美外海、具体的には田原市、豊橋市沖の風がよく、洋上風力発電のポテンシャルが高く有望である。さらに風車には、この地域の製造業で作られる部品が多数入っている。風車自体は、中国と欧米に押さえられている状況ではあるが、比較的参入しやすい。このことを踏まえ、もう少し踏み込んだ調査を本事業で行った。この地域の風や波で稼働率がどれくらいか、波が高いと工事もできないため、工事がどれぐらいやりやすいかといったシミュレーションまで行った。
【委員】
県は、今年3月、国、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める洋上風力発電の低コスト化プロジェクトの候補海域に田原市、豊橋市沖を応募し、10月3日、洋上風力発電浮体式実証の候補海域として田原市、豊橋市沖が選定されたと発表した。
そこで、再生可能エネルギー実現可能性検討調査と今回の候補海域選定の発表との関連について伺う。
【理事者】
今回の調査は、いわゆる再生可能エネルギーのポテンシャルを調べるものだが、2019年の再エネ海域利用法でこれから洋上風力発電を広げていく中では、漁業者の理解が要ると書かれている。今回の調査と並行して、その可能性について、県漁連に打診を行ったが、渥美沖はシラス、イワシ及びクルマエビ等の操業が盛んであるため、沿岸は難しいとの話であった。
昨年の9月頃に、国のグリーンイノベーション基金で、深さ100メートル程度の海で風車を建てる浮体式の実用化に向けた実証実験を総額850億円で2か所程度実施する話が持ち上がり、そのことを踏まえて改めて県漁連に打診したところ、浮体式であれば沖合15キロメートル程度で漁が比較的少ないエリアであり、期間限定の実証実験であれば、公募に手を挙げてもよいといってもらえたため、候補海域として手を挙げ、10月3日に選ばれた。
今のところ、まだ四つの海域が選ばれただけの状況であり、この先、2か所程度に絞られるまで、できれば意欲のある事業者に手を挙げてもらい、この地域が選ばれるようにしていきたい。
【委員】
今回の候補海域選定を受けて、今後、国、NEDOが事業者の公募を開始して、最終的な採択は2か所程度と、事業者が事業を開始するのは2024年春頃の見通しである。今回、田原市、豊橋市沖で実証事業が行われるよう、ぜひ県として応募を検討する事業者に対しての積極的な協力を要望する。
続いて、令和4年度決算に関する報告書191ページの中小企業テレワーク導入支援事業費について、県では、テレワークの導入や定着に必要な支援を行う拠点として、令和3年度にあいちテレワークサポートセンターを開設した。令和3年度は、コロナ禍による人流抑制と重なって企業においてテレワークの導入が一定程度進んだと思うが、経済活動が回復した令和4年度の利用状況について、令和3年度の実績を踏まえた新たな取組があれば、それも含めてどのような実績となったのか。
【理事者】
あいちテレワークサポートセンターは、令和3年4月28日に開設した。同年8月18日にはテレワーク体験や見学が可能なあいちテレワーク・モデルオフィスを併設している。センターは、テレワークに関する相談対応、モデルオフィスの運営に加えて、企業へのアドバイザー派遣など、ワンストップで支援する。
利用実績は、開設年度の令和3年度の相談件数が1,310件、モデルオフィス利用者数が1,417人、アドバイザー派遣企業数が42社の実績に対して、令和4年度は相談件数が1,426件、モデルオフィス利用者数が2,374人、アドバイザー派遣企業数が41社である。
令和3年度は年度途中のセンター開設になるため単純比較はできないが、1か月単位の利用状況で見ると、いずれの取組についても前年度と同程度の利用実績となっている。
センターでは、テレワークに関する様々な悩み、課題に対応しているが、利用する企業からは、テレワークツールの導入に関して、コストの問題や自社のシステムとの連携の不具合が生じることから、テレワークツールを本格導入する前に試してみたいとの要望をもらった。このため、令和4年度はテレワークツールを搭載したパソコン機器を無料で貸し出し、専門家による指導、併せて実際の職場環境でテレワークを試してもらう取組を新たに開始した。
この実績は、支援予定10社を上回る13社の企業に利用してもらった。利用した企業からは、実際に機器を使用することができて機器導入の検討に役立ったと聞いており、本格的なテレワーク導入に向けた効果的な支援になった。
今年5月から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行して日常的な行動規制が緩和される中で、一部の企業でコミュニケーションの難しさからテレワークを縮小する動きもある。しかし、今年度のセンター実績については、10月末現在で相談件数が1,078件、モデルオフィスの利用者数が1,685人と昨年度の同時期と比べても上回る実績を達成している。
県としては、今後とも、センターが実施する各種支援メニューを通じて、企業の多様なニーズに応えることにより、県内企業におけるテレワークの導入及び定着をしっかりと進めていきたい。
【委員】
8月16日の日本経済新聞にもテレワーク実施率が22パーセントに低下し、新型コロナウイルス感染症の5類移行で減少する一方、職場に出社する人が増えたという記事があった。その一方で、テレワークのメリットとして、ペーパーレス化、デジタル化を促進、ワーク・ライフ・バランスが保ちやすい、人材確保につながる、事業継続性の確保などが広く認識され、現在は、オフィスワークと自宅やシェアオフィスなどで働くリモートワークを組み合わせ、従業員が柔軟に働くことができる制度、いわゆるハイブリッドワークが広がっていると言われている。こうした流れを鑑みると、今後もテレワークの導入と継続は必須と考えられるため、引き続きの対応をお願いしたい。
最後に、令和4年度決算に関する報告書193ページの外国人雇用促進事業費について伺う。
最近、若者たちの間でバ畜という言葉が広がっている。バ畜とは、社畜とバイトを組み合わせた造語で、社畜は、会社のためにがむしゃらに働かされる人を指すものであり、バ畜は、そのバイト版を意味する。背景には、慢性的な労働力不足に加え、消費者が安く質の高いサービスを求める社会の中、低賃金のアルバイトなどに過重労働をさせざるを得ない状況が発生していることが挙げられ、解消に向けては、働きやすい環境の整備、そして、多様な人が働くことができる環境の整備が必要である。
当該事業は、その一翼を担う事業であると考えるが、どのような取組であるのか。
【理事者】
外国人雇用促進事業では、就業・就労の制限のない定住外国人の雇用促進や就職支援のため県内企業向けの雇用相談及び定住外国人向け就職相談を行う相談窓口の運営や、市町村等への出張相談を実施した。
相談窓口では、外国人の雇用を検討する企業に対する外国人の受入れ体制整備など雇用に関する助言や、定住外国人求職者に対する仕事の探し方や就職活動の進め方などについて助言や情報提供等を行った。
また、企業に対して、定住外国人の円滑な雇用が図れるよう、社会保険労務士や行政書士等の専門家を活用し、社内規程などの体制整備等や採用手続に関する助言から雇用後の職場定着までを継続的にフォローするとともに、定住外国人に対しては日本語能力の向上など、就職に必要なスキルを身につけるための伴走型支援を行った。
【委員】
この事業の令和4年度の実績はどうであったのか。
また、人手不足業界の一つに介護業界が挙げられ、私は、先日、福祉医療費の決算審査の際に、この介護人材の確保を目的とした外国人介護人材の受入れに対する支援について聞いた。
今回は、労働局における介護業界での外国人材の確保や育成の状況についても伺う。
【理事者】
令和4年度の相談窓口での利用実績だが、企業から134件、定住外国人から164件となっており、いずれも前年度の件数を上回っている。
伴走型支援は、定住外国人の雇用を希望する企業6社と就職を希望する定住外国人14人に対して支援を実施した。そのうち、2人が伴走型支援を実施した企業に就職しており、うち1人は、介護事業所に雇用されている。なお、本事業とは別に介護分野外国人就業支援事業として定住外国人を対象とした雇用型訓練と就職支援を行っており、令和4年度は訓練修了者23人のうち、22人が介護事業所に就職している。
【委員】
少子化が進行し人材確保がより困難になる中、介護人材の確保には外国人介護人材の受入れ、活用が必須であるため、引き続き支援の充実を要望する。
全体の話として、この外国人労働者が必要とする情報提供や無料で受けられる労働相談、弁護士による法律相談などを母国語で受けられる体制の拡充、また、外国人労働者を雇用する事業主には就労環境整備のための外国人雇用管理指針が徹底されるよう、働きかけを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書168ページ及び169ページのSTATION Aiプロジェクト推進事業費の項目の4番、PRE-STATION Ai事業費について、来年、STATION Aiが10月に開業するが、モノづくり愛知の未来を築くため、日本の次世代産業を創出するためにも、非常に注目されている事業である。
それに先立って、このPRE-STATION Aiでは、STATION Aiが完成するまでの間にメンバーの数の拡大と事業意欲の高揚を図り、運営者にとっても様々な試行を重ねることで支援機能の向上を図り、STATION Aiがすばらしいスタートを切れるような、レース本番を前にしたウォーミングアップ段階の事業であると思う。
そこで、昨年度、PRE-STATION Aiにおいて、スタートアップに活動支援や活動拠点の提供といった総合支援を展開したが、その成果と課題について伺う。
【理事者】
令和4年度における成果は、スタートアップメンバーが、令和3年度末は48社であったが、令和4年度末には168社まで増加した。また、新たに起業に至ったものが11件、県内企業との協業につながったものが9件、資金調達に至ったものが32件で、令和3年度は、それぞれ新たに起業に至ったものが12件、県内企業との協業につながったものが9件、資金調達に至ったものが11件と、特に資金調達に至った件数が増加した。また、M&Aによる事業売却の事例も1件あった。
次に課題は、資金調達件数が増加しているものの、資金を提供するベンチャーキャピタルの大半が首都圏に立地しており、当地域の資金調達環境が脆弱なことである。この課題に対応するために、首都圏に集中するベンチャーキャピタルを県が認定して当地域のスタートアップと交流を図るAICHI STARTUP BRIDGE事業を実施したほか、STATION Ai株式会社が中心となって、愛知県も出資しているPRE-STATION Aiメンバーを対象とする15億円のファンドを設立し投資を行っている。
【委員】
次に、そのメンバー構成について伺う。スタートアップはいろいろな段階があると思うが、どのような段階のメンバーが多いのか。または、モノづくり愛知としての特徴がどのように反映されているのか。
【理事者】
令和4年度におけるメンバーの属性であるが、令和4年度末、メンバー数は168社となっている。PRE-STATION Aiにおいてオフィスを利用するスタンダードメンバーが74社、リモートで支援サービスを受けるリモートメンバーが94社で構成されている。拠点の所在地別では、県内が87社、県外が76社、国外が5社となっている。
スタートアップの成長段階別では、資金調達前の段階が46.4パーセント、シードと言われる初めて外部資金を調達した段階が37.5パーセントと、合わせて8割強のメンバーが初期段階のスタートアップとなっている。
メンバーの事業領域だが、1社で複数選択できるが、多いものから、企業間取引のBtoBが111社、DXが75社、インターネットを経由して必要な機能を必要な分だけサービスとして利用するSaaSが67社、AIが54社、一般消費者向け販売のBtoCが52社の順となっている。 BtoBが一番多いため、多層的な製造業の集積が見られるこの地域の特徴を表している。
【委員】
次に、令和4年度決算に関する報告書168ページのSTATION Aiプロジェクト推進事業費、項目番号2番のSTATION Ai整備事業費について伺う。
令和6年10月のSTATION Aiの開業に向けて実際にこのPFI事業が既に実施されているが、特別目的会社(SPC)、ソフトバンク株式会社を中心とした会社が既に業務を実施している。その内容及びソフトバンク株式会社の強みを生かしてどういった施設にしていこうとしているのか。
【理事者】
PFI事業を実施するSPCであるSTATION Ai株式会社は、令和4年度に設計及び建設業務並びに広報宣伝業務をはじめとした開業準備業務を実施した。
設計及び建設業務は、令和4年12月に設計業務が完了した後、令和5年1月6日に起工式を実施し、計画工期どおりに施設整備を進めた。
開業準備業務は、広報宣伝業務としてSTATION Aiのロゴの作成、STATION Aiの公式ホームページの開設などを行うとともに、STATION Aiの開業後の運営を見据えたスタートアップ支援計画を作成するなど、ソフト面での準備を進めた。
次に、代表企業であるソフトバンク株式会社は強みを生かして、東京竹芝の本社ビルでのスマートビル運用の実績や国内外のネットワークを活用したスタートアップ支援を実施する予定である。
スマートビルは、施設内のあらゆるデータを集約するための各種センサーやAIカメラなどのプラットフォームを導入する。集約したデータは自由に利活用できるようにするなど、施設全体をスタートアップ技術の実験場とする。
また、国内外のネットワークについては、ソフトバンクグループ全体での10年以上にわたる新規事業開発の経験を生かした支援を展開するとともに、ソフトバンク株式会社が展開する海外主要11か国、26拠点などと連携したグローバルな支援体制の構築を目指していく。
【委員】
そのSTATION Aiは、鶴舞という名古屋でも屈指の文教地区に立地しているが、こうした立地を生かして近隣の施設とどのような連携を行っていくのか。
【理事者】
STATION Aiは、地域特性を生かしつつ最先端技術との融合、共存を目標とし、地域の魅力や声を生かしたまちづくりに貢献するため、近隣住民や施設などを巻き込んだ取組を実施できるようにしていく。
現在までの取組は、令和4年2月に鶴舞公園のPark-PFI事業である矢作地所株式会社、愛知県及びSTATION Ai株式会社の三者にて打合せを行い、双方の事業において連携していくこととした。
今年度は7月に鶴舞公園整備事業計画における地域交流、地域活性化等を目的とした鶴舞公園パークマネジメント協議会の発足準備会に愛知県、STATION Ai株式会社が出席し、連携を始めた。
また、地域まちづくり活動団体である鶴舞・千種エリアマネジメント協議会は、名古屋工業大学の教員や学生、イオンタウン千種が中心となり、公共空間を活用し多様なイベントの開催により人と地域の活性化の創造、住みやすい環境形成に係る取組を行うもので、この協議会が行う勉強会に参画している。
加えて、PRE-STATION Aiにおいて令和5年3月から隔週で名古屋大学メディカルイノベーション推進室の教員を招いて、スタートアップと医学系研究者、医学系人材をつなぐ機会を設けている。STATION Ai開業後も、引き続きこうした機会を設ける。
オープン後は、本施設を地域コミュニティー形成の場として活用し、地域の魅力を情報発信できるようにするとともに、スタートアップと地域住民、近隣施設をつなぐイベント等を行っていきたい。
【委員】
STATION Aiの開業を1年後に控えて、様々な取組が進んでいることが分かった。STATION Ai事業は、従来の公共施設のように建物というハードを造ったからといって人やノウハウが集まってくるものではない。その中で行われる人の営みによってこそ、その価値が高まるものである。PFIにおけるSPC、ソフトバンク株式会社を中心とする企業に期待するが、県としても県民が期待するスタートアップ育成拠点となるよう、その事業進展を十分に注視し適切な対応をしてもらうよう要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書192ページの雇用対策事業費の2、UIJターン促進事業費について伺う。
国は、東京一極集中に歯止めをかけ地方へのUIJターンを促そうと、東京23区に在住、もしくは在勤する人が地方に移住し、5年以上居住する意思があり、かつ、本県内企業の求人を紹介するマッチングサイトの掲載企業に1年以上継続して就職すれば1世帯当たり100万円、単身の場合は60万円の移住支援金を支給する地方創生移住支援事業を令和元年からスタートさせている。現在の全国43道府県1,303市町村において展開中で、本県でも54市町村のうち、常滑市と大治町を除く52市町村で移住支援金制度を導入している。このうち、名古屋市や春日井市、豊川市、刈谷市、犬山市など17市町については、移住者の居住地と就業先が同一市町村であることを移住補助の要件としている。愛知県への移住でこの移住支援金を受けるには、まずは本県内で就職先を決めることから始まり、県内の企業や地域情報は、あいちUIJターン支援センターが提供して、専任コーディネーターが移住、就職に向けた個別相談をワンストップで支援し、この移住支援金の申請もサポートしていると聞いている。このUIJターン支援事業費では、首都圏など県外からの人材還流を促進するため、あいちUIJターン支援センターを東京と名古屋に設置し、UIJターン希望者への情報提供や就職支援などを行った。
そこで、令和4年度のあいちUIJターン支援センターの相談件数は、どのくらいあったのか。
【理事者】
令和4年度のあいちUIJターン支援センターにおける相談件数は、東京2,882件、名古屋7,020件の合計9,902件となっている。
【委員】
その移住支援金だが、家族連れで移住すれば100万円を支給し、令和4年4月1日から18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合は子供1人につき30万円が加算、さらに、令和5年4月1日以降は子供1人につき100万円が加算され、本県では、移住支援金制度を導入している52市町村のうち、41市町村で実施している。
事業がスタートした令和元年は地方公共団体からも対象要件が厳し過ぎるとの声が上がり、移住支援金の交付は全国で80件に満たず、本県では初年度の交付は、決定がゼロであった。
国は令和2年度から支援対象要件を緩和、拡大し、さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大でクローズアップされたテレワーカーについても、東京圏在住の会社員が本人の意思により地方移住して、引き続き業務をテレワークで実施する場合でも対象要件に加えるなど、移住促進を弾力的に図ってきた。
そこで、本県のこの移住支援金制度も、移住対象者の要件が緩和されたことで利用促進につながっていると思うが、令和4年度の移住支援金の実績はどれくらいか。参考までに、令和3年度の実績も伺う。
さらに、本県内で移住支援金の支給実績が顕著な自治体があれば教えてほしい。
【理事者】
移住支援金の令和4年度の実績は16件、1,140万円の支給となっている。
令和3年度の実績は7件、495万円の支給となっており、支給実績は年々増加している。
また、移住支援金支給実績が顕著な自治体について、令和2年から令和4年度までの3年間の上位3位は、名古屋市10件、豊田市5件、豊橋市4件となっている。
【委員】
移住支援金の実績が年々伸びているが、愛知県に移住者が増えており、非常によい結果であるため、引き続き頑張ってほしい。
次に、その移住の受皿となるマッチングサイト掲載企業について伺う。
移住支援金対象事業企業数は、令和2年度末時点は310事業者で求人数714件、令和3年度は375事業者で求人数は814件であった。そこで、令和4年度の移住支援金対象事業企業数を伺う。
【理事者】
令和4年度のUIJターン支援センターのポータルサイトで求人情報を紹介しているマッチングサイトの掲載企業のうち、移住支援金対象企業数は567事業者である。
【委員】
令和3年度の対象事業者を業種別割合で見ると、一番多いのが製造業で23.7パーセント、次いで建設業が20.3パーセント、その次が卸売業、小売業が14.4パーセントと続き、製造業と建設業で全体の44パーセントを占めていると聞いた。
そこで、この業種別割合の傾向は令和4年度も続いているのか。
【理事者】
移住支援金対象事業企業数の割合は、製造業27.0パーセント、建設業21.0パーセント、卸売、小売業13.9パーセントとなっており、製造業と建設業を合わせた割合は全体の48.0パーセントで、業種別の割合は令和4年度も同様の傾向であった。
【委員】
製造業、建設業で48パーセントと半数近くを占めるが、よく言われるのは、女性が就職しやすい、サービス業とか小売業とか卸売業など、業種をバラエティー豊富にマッチング企業に入れてもらえると、女性も愛知県に来てもらえると思うため、努力してもらいたい。移住支援金事業は、令和6年度までの時限事業で、残り2年だと聞いている。
そこで、さらに制度を活用して1人でも多くの人が本県へと移住してもらうため、移住者を増やすための取組を伺う。
【理事者】
本制度を活用して本県への移住者を増やすためには、この制度の内容や本県の魅力を伝える情報発信力を強化するとともに、UIJターン支援センターのマッチングサイトの掲載求人を数多く確保することが必要と考えている。このため、マッチングサイトへの求人掲載について、様々な業種の企業を訪問し、求人開拓を積極的に行っていく。
さらに、今年度は、新たに拠点のない大阪市においてハローワーク主催の就職面接会で直接求職者に県内企業を紹介するなど、関西圏での働きかけも拡充する。
【委員】
しっかりと取り組んでいるが、この移住支援金制度を知らない人もいる。1世帯で移住すると100万円で、さらに、子供1人100万円であるため、子供が2人いれば移住することで300万円の支援金がもらえるため、ぜひとも移住支援金について、移住するなら今だという形でPRしてもらいたい。
《農業水産局、農林基盤局関係》
【委員】
令和4年度決算に関する報告書226ページのあいち型産地パワーアップ事業費補助金について、伺う。
愛知県は農業産出額全国第8位の農業県である。私の地元の知多半島も農業が盛んな地域であり、農業者の話をよく聞く。その中で、農業従事者からも農業協同組合(JA)の関係者からも、このあいち型産地パワーアップ事業に対する要望の話を聞くことがあった。
そこで、あいち型産地パワーアップ事業費補助金における事業内容と成果を伺う。
【理事者】
本県は全国8位の農業県であるが、担い手減少や高齢化など、生産力の低下が懸念されている。
あいち型産地パワーアップ事業は、本県農業の生産力の強化を目的に、栽培施設や共同利用施設の整備、高性能な農業機械の導入などの取組を支援する事業である。これまでも国の産地パワーアップ事業をはじめとした国費事業を活用して施設整備を進めてきたが、生産力の強化に意欲があっても、その採択要件を満たすことができず国の事業を活用できない産地があることから、2018年12月補正予算において国の補助制度を補完する本県独自の補助制度として創設したものである。
創設以来、毎年1億円の予算で支援してきたが、近年、作業効率の向上や人への負担の軽減などに有効なスマート農業技術の開発が急激に進み、本事業においてもスマート農業機械等の導入の要望が増加し、要望額が予算額を上回る状況となっていた。こうしたニーズに対応し、2022年は採択基準に省力化、省人化、ICT等の活用した技術継承といった観点を加えて見直しをするとともに、予算額についても、12月の補正予算で当初予算の1億円から1億6,000万円へと増額した。
2022年の取組実績については、13市町村において21の事業計画に基づいて3団体、46の経営体が事業を実施して、年度内に18事業計画1億836万8,000円を執行し、残りの3計画5,000万円余りを本年度に繰越して実施している。具体的には、防除用のドローン、稲の食味・収量センサー機能搭載コンバインなどの農業機械の導入、野菜や花きでは農業用ハウスの新設、環境モニタリング装置の導入などを支援している。
事業の成果について、創設以来、2019年度から2022年度の4年間の事業の取組実績として、62の産地で事業費の総額約16億1,900万円、補助金ベースで4億5,900万円の助成を行い、施設の整備や農業機械等の導入を支援した。事業の評価年度を迎えた2019年度及び2020年度に助成した取組では、産地の販売額が2年合計ではあるものの、基準年の26億6,800万円に対して32億5,200万円と22パーセントの増加が見られ、事業の成果は着実に上がっていると考えている。
事例として、高機能な被覆資材や光合成促進機の導入により栽培環境が改善し収穫量が増加したもの、重量選別機の導入によりパック詰めの作業の効率が上がり販売額が向上したもの、自走式防除機の導入により適切に病害虫防除ができ品質が向上したもの、自動潅水システム導入により大幅に労働時間が削減され果実の品質が上がったものなどがある。
【委員】
農業従事者は、後継者問題など様々な問題を抱えている。そして、この国の産地パワーアップ事業の規模感には合わない農業者が多いため、このあいち型産地パワーアップ事業の補助金は求められている事業で喜ばれている。ぜひ今後ともしっかり現場を見て推進してもらいたい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書220ページの農業総合試験場管理運営事業費の1、試験研究費の中にゲノム情報を活用した育種選抜マーカーと新育種技術を活用した育種素材の開発とある。
ゲノム編集による食品は、その安全性について消費者の間でも関心が高く、ついゲノムと聞いただけで過敏に反応してしまう。ところが、国は、遺伝子組換え食品の表示で消費者離れを起こしたことから、その轍を踏まないよう、ゲノム編集の表示義務はないことにしてしまった。これは大きな問題だと思っている。
そこで、先ほどの研究はどのような研究か、ゲノム編集とは違うのか、そして、現在、県農業総合試験場においてゲノム編集の研究はどうなっているのか、特に食用となる農産物についてはどうなっているのか。
【理事者】
ゲノム情報を活用した育種選抜マーカーと新育種技術を活用した育種素材の開発の研究課題においては、イチジクの育種選抜に使えるよう、主にイチジクの皮の色に関するDNAマーカーの開発を行っている。これは、ゲノム編集とは全く異なる手法であり、目的となる有用遺伝子付近の特定のDNA配列を見つけ、DNAマーカー、すなわち目印として利用する育種選抜法である。従来の方法では、交配後、種子をまいて育て、果実が実るようになってから優良な個体を選抜するため栽培に多くの時間を必要としていたのに対し、DNAマーカーを用いた育種の場合には、ごく生育初期に葉の一部などを使ってDNAマーカーを目印に解析し、有用な遺伝子を持つ個体を選抜することができるため、育種期間の大幅な短縮が可能となる。
県農業総合試験場では食用となる農作物を対象としたゲノム編集技術による育種研究は行っていない。菊など観賞用の花き、花に限定してゲノム編集技術を活用した育種の研究を実施している。
【委員】
ゲノム編集については菊では行っているが食用となる農産物で行っていないとのことだが、なぜやっていないのか、技術的な問題や施設の能力の問題なのか、今後、行う可能性はあるのか。
【理事者】
食用となる農作物のゲノム編集技術を活用した育種について、国内では国の研究機関や大学を中心に一部で研究、実用化が図られているものの、生産者や消費者に広く理解が進んでいるものではないと認識している。
このような中、県農業総合試験場で食用となる農作物の育種に関してゲノム編集技術を活用していないのは、農業総合試験場が本県の農業生産の現場で必要とされる生産性や品質の高い新品種などを開発する機関であり、品種開発の過程で活用する技術についても生産者や消費者の理解の得られるものでなければならないと考えているためである。このため、現時点では食用となる農作物のゲノム編集技術を活用した育種について、将来も含め、研究を計画していない。
【委員】
質問が、なぜ行っていないのかと強めに聞いたため、私が推進しているように聞こえたかもしれないが、生産者や消費者の理解が得られるまでは慎重にやってもらえることは、私にとっては歓迎する答弁であるため誤解しないようにお願いする。
一方で、ゲノム編集によって筋肉の生産抑制遺伝子をカットしてサイズが大きくなった真鯛がある。また、食欲抑制ホルモンをカットすることによって餌を食べ続け、成長が早くなったトラフグを、京都府宮津市は、ふるさと納税の返礼品として22世紀ふぐという名前で出している。
令和4年度決算に関する報告書242ページの水産試験場管理運営事業費のうち、水産試験場では、魚に関するゲノム編集の試験研究は行っているのか。
【理事者】
本県の水産試験場においては魚のゲノム編集の研究はやっていない。
【委員】
行っていない理由、今後、行う可能性があるのか伺う。
【理事者】
水産についても農業と同様で、国の研究機関や大学を中心に一部の魚類養殖でゲノム編集に関する試験研究を行っているが、本県の水産試験場では行っていない。
また、今後についても、現時点で計画はない。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書217ページの農福連携推進事業費について、数年前までは、農福連携について興味を持っている農業者や福祉事業所の人もたくさんおり、私にいろいろな相談や質問をする人が多かった。しかし、最近、特に農業者に関しては少し課題があり、半分諦めて、農福連携は難しいと話す人が多く、話題からも消えてしまっているように感じる。
農福連携推進事業費について、今回の予算の中で行った事業の実績について伺う。
【理事者】
農業水産局では、推進体制の整備、県民理解の促進、専門人材の育成の3本を施策の柱として、農福連携の推進に取り組んでいる。推進体制の整備として、農福連携に関する様々な相談へのワンストップ対応を行う相談窓口を、民間に委託して設置している。窓口では、農業者と福祉事業所との農作業請負のマッチングを進め、令和4年度は年間で延べ380件の相談に対応し、このうち、ピーマン収穫後の袋詰め作業請負など、新たに10組のマッチングが成立した。
また、県民理解の促進として、農業者、福祉事業所関係者、市町村担当者など、参加者138人に対してあいち農福連携セミナーを開催するとともに、農業大学校において農業に興味のある特別支援学校の生徒を対象とした農作業体験を実施するなど、農福連携の周知、啓発を図った。
次に、専門人材の育成として、農福連携のマッチング時や農作業を実施するときに、農業と福祉の両方の知識を有し、農業者及び福祉事業者双方に助言できる人材の育成に向けて、令和4年度から新たに農林水産省の認証カリキュラムによる研修を開催して、農福連携技術支援者として19人を認定した。
こうした様々な取組の効果として、令和5年4月時点で県内において農福連携に取り組んでいるのは、農業者79主体、福祉事業所95主体の計174主体となっており、着実に増加している。
【委員】
着実に進んでいることは分かったが、現場では難しいという声もいまだに聞く。うまくいっているところでは、福祉事業所から来ている支援員が現場で協力してもらえることや、先ほど説明してもらった農福連携技術支援者のように、農業者及び福祉事業者の両方のことを分かっている人が現場にいるとうまくいく。また認定した農福連携技術支援者が19人とのことだが、現場や福祉事業所などの人々に、支援者として活躍してもらう人を増やすことで、この農福連携事業をより進めていけると思うので、ぜひ尽力してほしい。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書223ページの主要農作物種子対策費の実施状況について伺う。
令和4年度の事業執行状況はどうなっていたのか。
【理事者】
主要農作物種子対策費は、主要農作物の品種の開発並びに種子の生産及び供給に関する条例に基づき、主要農作物である稲、麦、大豆の優良種子を安定的に生産して供給するとともに、新たな品種の開発に取り組んでいる。
令和4年度の執行状況は、予算現額2,974万3,000円に対して執行額2,848万9,355円で、執行率は95.8パーセントである。
【委員】
次に、令和4年度に特に力を入れたこと、特徴的なことはあったのか。
【理事者】
この事業は、優良な種子の安定的な生産と供給及び優良な品種開発を継続的かつ計画的に進めるものであり、令和4年度だけで特別なことはないが、毎年、これらの取組を適切に実施していくことが重要である。
優良種子生産供給推進費の事業内容としては、種子を安定して生産、供給するため、種子の需要の見通しや生産量を定めた種子計画を策定、公表しており、この計画に基づいて種子の生産農家が種子生産を行っている。種子の生産農家に対しては、種子の品質を保つため、県の普及指導員である種子審査員がほ場における生育状況や収穫した種子の状況を審査している。品種開発・原種生産事業費では、農業試験場が種子の生産農家に必要な原種等を生産するとともに、夏の高温条件下でも品質や食味がよいなどの特性を持つ優良な品質の開発に取り組んでいる。
また、品種開発整備費では、品種開発を加速化するために必要な設備や農業機械を導入している。
【委員】
夏の高温によって米が白く濁って品質が低下していると聞いたことがある。米の品質低下に対して、県としてどのように対応しているのか。
【理事者】
米の品質低下への対応については、県農業総合試験場において夏の高温条件下でも安定して高品質な米が生産できる品種を開発しており、現在、愛ひとつぶとして販売されている。今年の夏は記録的な猛暑で全国的に一等米比率が約6割と低くなっているが、愛ひとつぶは9割近くが一等米で、高品質な米が生産できている。
また、直近では、愛ひとつぶとあいちのかおりの間の時期に収穫でき、夏の暑さにも強い愛知135号を開発し、今年9月に県の奨励品種として採用した。県としては、今後も県農業総合試験場において、夏の高温に対応した栽培技術の開発及び品種の開発に取り組む。
【委員】
二つ目の質問では継続性や計画性などについて答弁してもらった。三つ目の質問に対しては環境変化への対応を答弁してもらった。厳密には担当している部署が違うのかもしれないが、継続性や計画性と環境変化への対応は、環境変化が緩やかなとき、小さなときは両立すると思うが、環境変化が大きくなったり早くなったりすると両立が難しくなると思う。現在、環境の変化が大きく早い気がするため、この両立に対して注意深く取り組んでもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書210ページの農作物鳥獣被害防止対策費について伺う。
毎年、この農作物被害防止のために鳥獣被害防止対策費を計上し、執行しているが、令和4年度の野生鳥獣による農作物被害の状況はどうだったのか経年での状況を含めて伺う。
【理事者】
本県における2022年度の野生鳥獣における農作物被害の状況であるが、農作物被害金額は4億8,118万円で2021年度に比べて3.3パーセント増加している。被害面積は501ヘクタールで前年度に比べて6.7パーセント減少し、被害量は2,441トンで前年度に比べて2.8パーセント減少している。
被害金額については、鳥獣被害防止特別措置法に基づき国の鳥獣被害防止総合対策交付金を活用し、鳥獣被害防止総合対策事業を開始した2010年度の被害額6億835万円からは減少しているものの、近年は年間4億円から5億円の範囲で推移しており、特に2018年度以降は、少しずつではあるが増加傾向にある。
野生鳥獣の種類で見ると、カラスによる被害金額が1億4,991万円で最も大きい額となっており、全体の約3割を占めている。次いでイノシシが778万円、シカが554万円という順になっており、これら三つの鳥獣で被害額全体の約6割を占めている。
【委員】
2点目、農作物鳥獣被害防止対策費のうち、全体の9割以上を占めている、鳥獣被害防止総合対策事業費補助金について伺う。これは、市町村が作成する被害防止計画に基づいて市町村や農林漁業団体などで構成される地域協議会や市町村が実施する被害防止対策に対して助成を行うものであるが、令和4年度の実績と執行率はどれくらいか。
【理事者】
令和4年度の主な実績は、6市町村及び14の協議会において、捕獲わな320基導入、有害鳥獣2万6,857個体の捕獲及び侵入防止柵約49キロメートルの整備を行った。当補助金の執行率は89.3パーセントである。
【委員】
市町村や協議会も含めていろいろと取り組んでいるが、被害額が減らないことについて、県としてどう分析しているのか。そもそも事業費が足らず捕獲できていないのか。それとも、有害鳥獣を捕獲する機材を改善できれば捕獲できるようになるのか。もしくは、人の問題なのか、その辺りを県はどう考えているのか。
【理事者】
県としては、近年、被害金額が減少していないのは、捕獲者や地域の農業者の人材に関する問題が最も大きいと考えている。
まず、捕獲者については、県内の有害鳥獣捕獲の担い手となっている、一般社団法人愛知県猟友会の会員数は減少傾向にあり、高齢化も進んでいることから、捕獲者の確保が課題である。
また、鳥獣被害対策は、カラスやイノシシなど鳥獣の個体数を減らすための捕獲だけでなく、地域に寄せつけないための生育環境の管理、地域に入らせないための侵入防止対策を含めた三つの活動を地域ぐるみで総合的に実施することが重要であるが、これらの活動を理解し積極的に参加・活動する人材が少ないため実践できていない地域が多いことも課題と考えている。
なお、捕獲機材については、国や都道府県の研究機関、あるいは、民間企業による開発が進められているが、捕獲数が大幅に増加するような商品の開発には至っておらず、地域においても大量の個体をまとめて捕獲する大型で高価な機材よりも、省力的に捕獲できる安価で設置しやすい機材の導入が進んでおり、捕獲機材よりも、捕獲者による捕獲機材の日常的な管理が重要であると考えている。
あわせて、事業費については、鳥獣の捕獲はもちろんのこと、捕獲機材の導入や侵入防止柵の整備など、被害防止対策に必要な金額を継続的に確保するとともに、より効果的に活用することが重要である。こうしたことから、環境局と連携し、捕獲初心者の技術向上や狩猟免許取得促進のためのセミナーを2019年度から開催し、捕獲の担い手育成に向けて取り組むとともに、昨年度からは、地域協議会で鳥獣被害対策の中心的な役割を果たす市町村の担当者を対象とした研修会を開催し、地域ぐるみで総合対策を行う重要性等について理解してもらい、本補助金を地域の状況に応じて効果的に活用するよう指導している。
【委員】
以前、東三河のある町長が「美味しいところは動物たちが食べて、動物たちが食べなかったところを人間が食べる」といっていた。農業生産者は、大変厳しい状況に置かれており、なかなか儲からない。儲からない産業には人は入ってこず、その担い手も含めて、儲かる農業をいかにつくっていくのかが、これからも不断の取組になる。
その中で、こうした有害鳥獣に食べられてしまうのを防止するには、一定のコストがかかるため、本県としてもしっかりと支援できるところは支援し、もうかる農業をつくってもらうことを要望する。
【委員】
令和4年度決算に関する報告書210ページの農作物鳥獣被害防止対策費について伺う。
委員の質問への答弁でも農作物の鳥獣被害が非常に深刻だと理解した。
そこで、県が主に行っている取組で、被害防止対策推進費について伺う。
この報告書には新規開発された技術について現地実証を行ったという記載があるが、具体的にはどのような取組を行ったのか。
【理事者】
報告書にある新規開発された技術の現地実証とは、鳥獣被害で困っている地域の農業者からの相談に対して、該当する地域を所管する農林水産事務所の農業改良普及課と長久手市にある農業総合試験場が連携し、国や本県及び他県の研究機関などで開発された鳥獣被害防止対策技術を現地に導入して、その効果を検証する取組である。
2022年度は、県内5つの農業改良普及課において7つの技術実証を行った。その一例として、本県で最も被害額の大きいカラスに関する現地実証について説明すると、岡崎市内のブドウ園のカラス対策として、ブドウの棚上に2.5メートル間隔で直径0.5ミリメートルのステンレスワイヤーを設置したエリアと、同じ太さの黒色のテグスを設置したエリアを設けて、カラスの侵入防止効果及び資材の経済性について比較調査を行った。その結果、どちらのエリアもカラスの侵入が確認されず、侵入防止効果に有意差がなかったことから、単価の安いテグスの方が費用対効果が高く、経済性に優れていることが確認できた。
こうした取組結果については各農業改良普及課で情報共有をするとともに、効果的な鳥獣被害対策として活用してもらえるよう、農業者が参加する研修会等で関係機関を通じて情報提供を行っている。
【委員】
鳥獣被害対策というのは、捕獲による個体数の管理と侵入防止対策、さらには、生息環境管理の3本柱が鉄則だと言われており、この3つの活動を地域でどうやって徹底してやっていくかが重要であるとされている。
県としてこの地域ぐるみの活動を支援する取組は何か行っているのか。
【理事者】
地域ぐるみでの活動を支援するため、被害防止対策推進費のうち、人材育成活動として鳥獣被害対策モデルケース育成事業を2022年度から開始している。この事業は、地域全体での鳥獣被害対策のための活動を強化することによって農業被害を防ぐことを目的に、地域の農業者などを対象とした現地研修会を開催するものである。
2022年度は、鳥獣被害が大きい豊田市大野瀬町梨野地区と新城市大字作手保永和田地区の2地区で実施をしており、梨野地区では研修会を6回開催し、延べ66人が参加、和田地区では研修会を5回開催し、延べ87人が参加した。
この事業によって、鳥獣被害対策の3本柱である、寄せないための生息環境の管理、近くに入らせないための侵入防止柵の設置、個体数を減らすための鳥獣の捕獲などの各対策や、それらの対策を地域ぐるみで徹底して取り組む重要性についての理解が進み、地域住民による周辺環境や侵入防止柵の点検、整備、シカやサルの効果的な捕獲対策の検討などの取組が始まっている。
この事業は、引き続き今年度も実施していることから、今年度の取組内容も含め、取組によって得られた成果は、今後、県のウェブページへ掲載するなど情報発信を行うとともに、農業総合試験場や各地域の農業改良普及課と連携し、こうした取組が必要な地域に横展開を図っていきたい。
【委員】
最近、クマの話題が持ち切りである中、先週には私の住む春日井市内でもクマと見られる足跡を県職員が確認したとのことで、正直、驚きと同時に危惧している。
鳥獣被害の背景の一つは、高齢化による荒廃農地の増加により、野生鳥獣の生息域が拡大している。鳥獣被害は離農の動機にもなり、被害を防ぐ対策を継続的に進めてもらうことが集落の維持にもつながるため、先ほど触れた対策の3本柱を実践するために新しい技術の導入、そして、マンパワーが必要だと思うので、引き続き支援をお願いする。
続いて、令和4年度決算に関する報告書263ページの森林環境譲与税活用事業費のうち、森林環境整備事業費について伺う。
森林の有する多面的な機能が発揮されるよう、森林の整備や木材利用を促進することは重要である。そして、これらの取組に必要となる森林に関する情報を関係者が取得し利用できる環境を整えることも重要な取組である。報告書には航空レーザ計測データを活用した森林情報の整備を行ったとの記載があるが、この森林クラウドシステムの開発について、システムの内容を伺う。
【理事者】
森林クラウドシステムは、森林に関する情報を電子データにて一元管理し、県、市町村、林業経営体がリアルタイムで共有し活用するためのものである。システムには、航空レーザ計測データの解析により取得した詳細な森林資源情報や地形情報が登載されている。これを活用することにより、杉やヒノキなど、一本一本の樹種の分布や樹高、太さ、面的な資源量の把握に加え、斜面の起伏や傾斜、林道や作業道、過去の崩壊跡地などを把握することができる。
また、これまで県で整理してきた森林簿や市町村が管理する林地台帳、過去の補助事業等の施業の実績も登載しており、森林所有者情報や過去の施業状況なども把握できる。
【委員】
令和3年11月定例議会の代表質問で、この森林の持つ多面的機能の発揮に向け、所有者不明の森林に対する対策をどのように行っていくのかという質問で、その際、市町村が森林所有者に代わって経営管理を行う、いわゆる森林経営管理制度において、所有者不明森林の対策も行っていくとの答弁があった。
そこで、この森林経営管理制度の推進など、森林整備や林業振興において、今回開発した森林クラウドシステムにどのような効果が期待されるのか。
【理事者】
森林経営管理制度の推進において、市町村が森林所有者に代わって間伐などの森林管理を行うに当たり、まず最初に、手入れの行き届いていない森林を抽出した上で、森林所有者に対し経営管理の意向確認を行う必要がある。このシステムを活用することで、樹木の混み具合などから対象となる森林の抽出を容易に行うことができる。
また、森林整備や林業活動を進める上で重要となる土地の所有界の確認について、森林所有者の高齢化などにより年々困難になってくる。このシステムを用いることにより、樹種や樹齢の違い、尾根や谷などの地形情報を参考に境界の推定図を作成することで、現地に行くことなく隣接所有者同士による境界の確認が可能になる。こうした省力化等の取組により、効率的な森林経営管理や施業の集約化を図ることができる。
【委員】
森林の持つこの公益的機能の発揮には、森林を適切に維持、管理することが必要である。市町村や林業経営体による効率的な森林整備の推進に向け、ぜひこの開発したシステムが活用されるようにしっかりと取り組んでもらうことを要望する。