委員会情報
委員会審査状況
警察委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年6月26日(水) 午後0時57分~
会 場 第3委員会室
出 席 者
村瀬正臣、増田成美 正副委員長
松川浩明、川嶋太郎、寺西むつみ、石塚吾歩路、田中泰彦、
森井元志、小木曽史人、江原史朗、井上しんや、永田敦史 各委員
中尾公安委員、警察本部長、総務部長、警務部長、生活安全部長、
地域部長、刑事部長、交通部長、警備部長、財務統括官、組織犯罪対策局長、
関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第103号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第2号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第8款 警察費
第116号 財産の買入れについて
第125号 損害賠償の額の決定及び和解について(愛知県警察本部総務部施設課)
第126号 損害賠償の額の決定及び和解について(守山警察署)
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第103号、第116号、第125号及び第126号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 交通指導取締り及び交通安全施設の整備について
2 防犯対策の推進について
3 警察の組織及び運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(2件 陳情第25号及び第26号関係)
3 議案審査(4件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 委員長報告の決定
5 一般質問
6 閉会中継続調査申出案件の決定
7 閉会中の委員会活動について
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
なし
《一般質問》
【委員】
交番・駐在所の整備について伺う。
本年6月17日の朝日新聞朝刊の一面記事に、3月に開催された公安系公務員合同説明会の様子が掲載されていた。記事によると、2040年、現役世代が2割減り、高齢化が進む8がけ社会においては、人材確保競争がかなり熾烈になるということが書かれていた。
県警察における採用状況を確認したところ、この10年間で警察官採用候補者試験の応募者数の低下が顕著であるとのことであった。具体的には、2013年第1回男性Aの受験者数が1,376人、倍率4.6倍であったが、2023年では518人、倍率3.1倍へと10年で6割近く減っているとのことであった。また、令和6年度、最新の受験者数は468人とのことであった。この傾向が2040年に向けて、より一層加速することを考えたときに、県警察としても人材確保に向けたあらゆる手段を講じていく必要があると思う。
この傾向を食い止め、未来の警察官をいかに確保していくのか、消防や海保、自衛隊などとの公安系公務員間における人材の取り合いに加え、最近では民間企業との労働環境や条件面での競争も激しさを増してきており、県警察の人材確保に向けては、これまで以上に微に入り細を穿つ、そういった募集体制が必要であると考えている。
そのような視点で警察行政を見たときに、私たちが日常生活を送る中で最も身近な警察といえば交番であり、いわゆるお巡りさんの存在である。先日、本星崎交番の開所式や明治交番の内覧会に参加した。最近の交番は、安全対策に加え、労働環境としても大幅に改善され、良好であると感じたところである。
一方で、場所は言わないが、見るからに築古で、あちこち傷んでいる交番があることも事実である。そうした施設では、そこで働く警察官のモチベーションが上がるとは考えにくい上に、将来、警察官を志望する若者や、その家族がそうした未来の職場を見たときに、志望動機をさらに強くするとは考えにくい状況である。
そこで、交番・駐在所について順次伺う。
先日の所管事項説明会において、本県には536か所の交番・駐在所があるという説明があったが、築40年を超えた施設はどの程度あるのか、また、築50年を超えた施設がどれだけあるのか伺う。
【理事者】
2024年4月1日現在、県内には警察署に設置している署所在地交番2か所を除いて534か所の交番・駐在所がある。そのうち、築40年を経過した交番・駐在所は204か所で全体の38.2パーセント、築50年を経過した交番・駐在所は29か所で全体の5.4パーセントである。
【委員】
38.2パーセント、4割近くの交番が築40年を超えているとのことであった。物理的に使用できるとは思うが、職場環境として果たして快適かと問われると、決して快適な状況ではないのではないか。
順次建て替えが進んでいるものと理解しているが、老朽化した施設の建て替えに当たっての優先順位はどのようになっているのか。
【理事者】
建て替えを行う交番・駐在所は、築年数のほか建物の構造、外壁、亀裂や剝離、雨漏りの発生など、施設の状況等を総合的に勘案して老朽化が著しい施設を選定している。
なお、建て替えの対象となる交番・駐在所は、建築当時とは周囲の地域の情勢や治安情勢等が大きく変化している場合があることから、建て替えに際しては適地への移転なども含めて検討することとしている。
【委員】
築年数だけではなくて、総合的に勘案をしてとのことで理解した。
しかしながら、全体で200か所を超える204か所と答弁があったが、204か所が築40年を超えている状況で、当面の間、建て替え、更新を加速させていく必要があると思うが、現在の交番・駐在所の整備状況について伺う。
【理事者】
近年は、年間9施設程度の交番・駐在所の建て替えを行っている。今後も計画的に建て替えを推進し、交番や駐在所で働く警察官の勤務環境の整備に努めていきたいと考えている。
【委員】
今後の安定的整備に向けて、年9施設程度とのことであった。
冒頭にも話したが、私たちの最も身近な警察行政が交番であり、お巡りさんである。地域の安心、安全を維持していくためには、まずはそこで働く警察官の労働環境の改善は急務であると考える。仮に200か所を9年で割ると、20年以上かかる計算となる。
激化する人材確保の競争において、警察官を目指す若者を確実に確保していくためには、魅力的な職場、労働環境づくりは必須であると考える。そういった観点から、予算の制約はあると理解しているが、施設の建て替えをぜひ加速させていく必要があると考える。
そして、建て替えまではその施設を丁寧に使ってもらい、交番を訪れる県民の安全を確保しつつ、快適な勤務に向けた設備の改修、修繕等も適宜行うことを要望する。
【委員】
鹿児島県警察の元幹部が職務上知り得た秘密を退職後漏らしたとして、国家公務員法守秘義務違反の疑いで5月に逮捕された事件があった。そして、この事件をめぐり6月には、勾留理由の開示手続の中で元幹部が、県警察職員が行った犯罪行為を県警察本部長が隠ぺいしようとしたことが許せなかったと語り、一方で本部長は隠ぺいを否定したことから報道機関も大きく取り上げ、連日のように報道されるなど一気に注目され、今や大きな社会問題、あるいは鹿児島県警察に対する不信感、社会不安を与えているということがあった。
この事件については、不祥事の隠ぺいがあったかなかったか、あるいは当該事件の捜査手法の問題、そして報道機関への捜査の問題、そして公益通報とはという幾つかの問題、論点がある。
基本的には、鹿児島県警察の問題であり、これからの捜査や調査、警察庁の監察、裁判などで明らかになることだと思っているので、私が今の段階でこの事件そのものについて言うことは特にはない。
ただし、幾つかある問題、論点の中で、公益通報は愛知県警察にも関わる話でもあり、何よりも社会全体の公益と公正と社会秩序を守る重要な役割や機能、責任を果たしている重要なことである。この事件でよく分からない、腑に落ちないことも多々あるため、一般論として愛知県警察における公益通報の体制などについて、確認がほとんどになると思うが、改めて伺う。
公益通報とは、労働者が役務提供先での法令違反、規律違反など不正行為を一定の通報先に通報することである。この通報先は、三つあると定義づけられており、後で三つは触れようと思う。
そして、公益通報に関する法律には公益通報者保護法があり、国民生活の安心、安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、まずは通報者の人事、給与、経済的、精神的に不利益な取扱いの禁止や、事業者内部の通報担当者は守秘義務を負うことなど、まずは通報者を保護すること。そして、事業者内部の通報窓口の設置や、通報があった際には必要な調査や是正措置を講ずるなど、事業者の体制整備の義務化など制度的なルールを明確にしたものである。
私は、警察という組織においても、こうした公益通報に対する体制がきちんと整えられ、しっかりと機能することが、まずは正義感と勇気を持った公益通報者、この場合で言うと警察職員をしっかり守ることができる。そして、警察職員が安心して正義感、使命感を持って日々の治安維持活動など業務にまい進することができる。そのことが、警察組織が国民、県民から社会的な信用や信頼を得ることにつながるなど、警察職員、警察組織、国民、県民全てを守ることができ、それが治安や社会秩序の維持につながるものだと思っている。
そういうことを鑑みると、警察組織だからこそ、より公益通報制度については公正で公平で透明で適正に運用されていること、そして国民、県民にもきちんとしているように見えることが私は重要だと思っている。
そこで、愛知県警察本部において、公益通報者保護法により義務づけられている内部通報体制は整備されているのか。また、体制整備の内容として内部規定はあるのか伺う。
あわせて、現状の仕組みにおいて、警察内部の警察官や職員が、警察内部の法令違反、あるいは規律違反などを公益通報する際にはどのような通報先があるのか伺う。
【理事者】
県警察においては、公益通報者保護法に基づき所要の対応体制を整備しているほか、愛知県警察内部公益通報対応要綱を定め、適正な運用に努めている。
警察職員は、監察官室に設置している内部公益通報相談窓口へ電話やメールにより、他の職員の法令違反や勤務、規律違反などについて公益通報を行うことができる。
【委員】
愛知県警察においても内部公益通報対応要綱を定め、必要な対応をしているとのことで、当然とは思うが理解した。
窓口としては、監察官室の内部公益通報窓口とのことで理解した。後で外部通報や外部窓口について質問するが、次に、監察室への内部公益通報窓口に過去3年間で何件の通報があったのか伺う。
【理事者】
内部公益通報相談窓口への通報件数については、令和4年度中に18件、令和5年度中は5件、令和6年5月末現在で1件の通報があった。
【委員】
令和4年度18件、令和5年度5件、今年度1件とのことで、これが多いのか少ないのか、個々の内容は分からないので、その判断はできないが、ゼロ件と言われると、どうなのかと思うが、何件かあるということは、それなりに機能していることであり、よいのかなとは思っている。
次に、公益通報を受けてからの処理はどのようになっているのか伺う。
【理事者】
内部公益通報を受理したときは、当該通報の内容、その調査結果や是正措置などを遅滞なく公安委員会に報告している。
また、通報者に対しては、当該通報を受理した旨や不利益な取扱いが行われないこと、是正措置などを遅滞なく通知している。
なお、内部公益通報の調査については、通報者が特定されないように当該通報に関する秘密及び個人情報の保護に十分留意しつつ、遅滞なく必要かつ相当と認められる方法で行っている。
【委員】
内部公益通報の対応に際して、その情報を組織上、誰が知り得ることができるのか、公益通報に対する守秘義務はどのようになっているのか。
【理事者】
内部公益通報への対応については、公益通報対応業務従事者を指定しているほか、情報の共有範囲についても当該通報対象事実の処理に必要な範囲とするなど、情報の取扱いには細心の注意を払っている。
なお、公益通報の取扱いについては、公益通報者保護法の守秘義務を負うこととなっている。
【委員】
順次回答があったように、基本的には法の趣旨にのっとり、適切に運用してもらっていることは安心した。ただし、これは内部通報窓口についてであるが、先ほど公益通報の定義を話す中で、通報先は三つと言った。この三つの通報先とは、一つ目は事業者内部、二つ目は権限を有する行政機関、三つ目はその他の事業者外部のいずれかとされている。
一つ目の事業者内部については今聞いたとおりであるが、二つ目の権限を有する行政機関について、警察職員が公益通報する先として、この権限を有する行政機関とはどのような行政機関が該当するのか伺う。
【理事者】
警察職員が公益通報する先としての権限を有する行政機関はない。
【委員】
一般的には民間企業からの通報先として、この二つ目は警察や所管省庁が該当するので、警察は受ける側で警察の通報先はないことは理解した。
次に、公益通報について腑に落ちず、自分が分からないことがあったため、今回一番質問したかった、三つ目の通報先であるその他の事業者外部への公益通報について伺う。所管省庁である消費者庁では、通報先としてのその他の事業者外部とは、その者に対し、当該通報対象事実を通報することが、その発生またはこれによる被害の拡大を防止するために必要であるものと認められる者とされ、その例として報道機関、消費者団体、事業者団体、労働組合などが該当するとされている。そこで、警察職員が公益通報する先としての、その他の事業者外部とはどのような機関か伺う。
【理事者】
公益通報者保護法で定めるその他の事業者外部については、通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由があり、公益通報すれば解雇、証拠が隠滅され偽造されるおそれがある場合などに、当該通報対象事実を通報することが、その発生またはこれによる被害の拡大を防止するために必要があると認められる者である。
その他の事業者外部の具体例としては、消費者庁の資料によると、委員が示したとおり、報道機関、消費者団体、事業者団体などが例示されていると承知している。
【委員】
相当な理由がある、あるいは公益通報すれば証拠が隠滅され偽造されるおそれがある場合などの要件がある上で報道機関もその他の事業者外部として公益通報を行える機関であるとの回答があった。つまり、報道機関に公益通報はできるということだと思う。
先ほどいろいろな条件を言っていた。具体的なケースを聞きたいところであるが、ヒアリングする中で、具体的なケースはその都度ということもあったので、ここでは聞かないが、報道機関に外部通報すること自体は違法ではなく、できることは、私が知りたかったポイントである。
その他の事業者外部へ通報を行う場合として、消費者庁は六つの要件を示しており、いずれか一つでも該当すればよいとしており、今の回答もその一つだと思う。ほかにも要約すると、内部通報したことが漏れてしまう可能性が高いことや、内部通報しないようにしてくれと止められることなど、内部通報しても適切な処理や措置が取られず、個人の命や財産が脅かされる危険が窮迫しているときなども該当するとされている。
今、回答があった、公益通報すれば証拠が隠滅され偽造されるおそれがある場合などは、消費者庁が示すガイドブックによると、いわゆる組織ぐるみで法令違反を行っている場合などを想定しているとのことである。
私は法の専門家ではないので詳しくはわからないが、一般的に考えれば、法令違反や不正行為が内部で起きたと思ったときに、隠ぺいされる、もみ消されると通報者が思えば、その段階でこの要件に該当すると思うし、法令違反や不正行為が目の前で起これば、ほとんどのケースが、消費者庁が示す六つの要件に該当すると思っている。そうしたことから、報道機関に通報することは正当な行為だと思っている。通報できる要件はあるが、報道機関が通報先に該当することは腑に落ちて安心した。
ただし、だからこそ鹿児島県警察の件はいまだに腑に落ちない。これから起訴されるため、裁判で明らかになると思う。
そして、公益通報は、もちろんその内容も重要であるが、通報者の動機、目的が最も重要だと思っている。不正や法令違反などを発見し、通報する段階で、実際に法令違反に該当するかどうかは、誰も判断できない、正確には分からないことだと思う。しかし、通報者なりに確証があって、覚悟や正義感を持って国民や社会の公益や公正、社会秩序を守るという動機や目的で通報したのであれば、その行為は、守られるべきものだと思う。実際に法令違反があった、不正があったかは、その後の調査や捜査の過程で分かるものだと思う。
ましてや、警察官をはじめ、公務員は守秘義務を負っている。その中で自分なりに確証と正義感を持って公益通報だと思い通報しても、内容が該当しないとなってしまったら、直ちに守秘義務違反や、法令違反となる可能性があり、先ほど言った不利益な扱いどころか逮捕や、解雇につながり、人生や財産のリスクを脅かされる可能性が高くなる。そうなると、公益通報に対して萎縮し、誰がそのような人生のリスクを冒してまで外部へ公益通報するのか、普通に考えて、そんなことはするわけがないとなってしまう。つまり、外部への通報が機能しなくなる。
そのため、私は守秘義務違反と公益通報が本来争うべきものではないと思っている。ただし、通報者の動機や目的が不正目的や、利益供与の場合は、もちろん公益通報に当たらないが、特に外部機関への公益通報については、動機や目的を重要視して取り扱うように運用してほしいと願っている。
高い規範意識や正義感を持ち、治安維持や社会秩序のために勇気と覚悟を持って公益通報した人が、逆に犯罪者になるようなことはあるべきではないと思っており、正義がまかり通る、そのような社会であってほしいと心から願っているので、ぜひ今言った趣旨を酌んでもらえたらと思う。
最後に、これまで外部機関への公益通報について質問したが、もう一度、内部への公益通報に話を戻す。内部通報においても、警察でいう監察のような組織に内部通報する窓口がある。それに加えて、弁護士などと契約して組織以外の外部に内部の公益通報窓口を設ける場合がある。
外部窓口は中立的な立場にあるため、通報者のプライバシーや匿名性も確保され、不利益が生じることなく制度の悪用が防げ、公益通報が機能しやすくなるなど、公益通報のハードルを下げ、ちゅうちょすることなく公益通報ができ、問題の早期発見や迅速な対応、解決につながるなど大きな効果やメリットがあるとされており、同時に、外部窓口があることで自浄作用が働く透明性の高い組織として内外に信用、安心できる組織として社会的信頼を得ることができる。
そうしたことからも、消費者庁が出している公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)の中に、総合的な公益通報窓口の設置として、各地方公共団体は、内部の公益通報受付窓口を全部局の総合調整を行う部局またはコンプライアンスを所掌する部局等に設置することとしている。この場合、各地方公共団体は、当該地方公共団体内部の内部公益通報窓口に加え、外部に弁護士等を配置した内部公益通報受付窓口を設けるよう努力義務がうたわれている。
そうしたこともあってか、愛知県に関係する機関では知事部局、教育委員会、病院事業庁で、人事や監察などの内部窓口に加えて、弁護士と契約して外部窓口を設けている。
ただし、愛知県警察本部は、こうした外部窓口を現状設置していない。そこで愛知県警察本部として外部窓口設置に対する考えを伺う。
【理事者】
内部公益通報については、警察を管理する立場にある公安委員会においても受け付けており、監察官室以外にも内部公益通報を受け付けていることを職員に周知している。
【委員】
最後に意見と要望をする。今の回答では警察組織には外部機関として公安委員会があって、そこでも内部の公益通報を受け付けているため、そこまで言っていないが、現状、外部窓口の必要がない旨の回答かと思う。
確かに制度上、公安委員会は強い執行力を持つ警察行政について政治的中立性を確保し、かつ運営の独善化を防ぎ、警察の民主的運営を確保するための組織である。愛知県公安委員会においても河合満委員長をはじめ、今日は中尾友紀委員に出席してもらっているが、5人の民間の委員で構成され、愛知県警察を管理している。そうした意味では外部機関でもあり、外部窓口かと思う。そして、公益通報の窓口としての、その役割や機能も十分果たしていると承知している。
ただし、ここで重要なのは、一般的に公安委員会は、組織の性質上、内外から警察と同一、あるいは類似の組織に思われており、国民や県民から外部組織、外部の窓口に見られないことが多いと思う。
私自身は、先ほど言ったように、何件か通報があることも含めて、愛知県警察において、公益通報は、きちんと機能していると思うし、風通しのよい組織だと改めて感じている。特段、今、大きな問題があるわけではない。
ただ、この公益通報制度で大切なことは、一つは実際に公益通報制度がきちんと運用、機能していること、これは絶対条件である。もう一つは、実際に公益通報制度がきちんと運用、機能していると県民、国民から見られること、そう思われることが非常に重要だと思っている。特に警察や愛知県などの行政機関は、民間企業以上に国民、県民から信頼や信用され、安心される組織であるべきだと思う。
幾ら内部で、身内できちんとしていると言っても、なかなか見えづらい、分かりづらい、伝わりづらいものである。ましてや不祥事があったときには、なおさら身内が言うことは、事実であっても、なかなか信頼、信用されにくいものである。だからこそ、内部以外の第三者の目、外部の目、そして幾つかの手段、選択肢、窓口が必要だと思う。
ましてや警察という組織の性質上、通報先として民間企業にはある権限を有する行政機関がないため、一つ通報先が少ないわけである。だからこそ、内部以外の第三者、外部の公益通報窓口があることで、先ほど言ったように、警察という組織が、透明性が高く、風通しがよく、県民から信頼、信用され、安心できる組織になって、警察が信頼、信用される組織になることは、県民が安心して生活ができることにつながると思う。
今日の質問で、すぐ設置するという回答があるとも思ってないし、私なりに調べると、全国的にも警察で外部窓口を設置しているのは、令和4年度時点で47都道府県警察の中で七つの県警察しか設置していない。令和4年度時点であるため、変わっているかもしれないが、全国的には少ない。知事部局は47あるうちの29が外部窓口を持っており、教育委員会は47あるうちの25と比べても、警察は全国的に少ない状況も理解している。
逆に言えば、七つの警察は外部窓口を設置しており、愛知県警察本部の意思や決断で設置できるということである。今日は意見や要望を言って、これ以上求めないが、ぜひ意義や意味を理解してもらい、前向きに調査、研究、検討してもらえればと願っている。
最後に、改めて公益通報制度は、社会の公益や公正、社会秩序を守るために、個人や組織など個々の利益を超えた行動を求める取組だと思う。そして、それは通報者を守り、その企業や組織を守り、国民や社会も守ることができる制度だと思う。
つまり、日頃から高い規範意識と正義感を持って治安や社会秩序を守ってもらっている警察職員を守り、そして安心して職務に向かうことができ、警察が国民、県民から信頼、信用される組織になること、それが治安や社会秩序の維持など、国民、県民の安心につながると思う。
今、私は公益通報のことを言ったが、これはまさに警察官が日頃から職務として、警察組織として目指していることそのものだと思う。
そうしたことを理解してもらいながら、今後も公益通報への適正な対処に努めてもらうようお願いする。
【委員】
少年の非行被害の防止について伺う。
少年による深夜はいかいや喫煙などの不良行為は、近隣住民への迷惑になるだけではなく、当事者である少年少女の健全な未来に対して多大な影響を与えかねない。現に私の選挙区である名古屋市北区でも、少年の補導に関して相談があった。
コンビニエンスストアにたむろして、未成年と思われる人たちが喫煙、飲酒をして大きな声で話していることで、近隣住民が非常に怖い思いをしている。店舗としても、怖がってお店にあまり客が来なくなってしまった。注意をしたアルバイトの人が逆ギレされ、仕事にも支障を来してしまった。また、そのたむろしている少年少女たちも、警察、パトロールに慣れてしまい、なめたような態度を取ってしまっていると、様々な声をもらっている。
実際に北警察署にも相談したところ、パトロールの強化や、パトロールの際に声がけをしてもらうなど、住民の安全で安心できる生活、また少年の健全な成長のために尽力してもらっていると理解している。
しかし、これからの時期、夏休みに入り、長い休暇が訪れることによる開放感であったり、学校がなくなることによって、友人と集まる場所を求めたり、遠方まで気軽に行けることから、さらに少年が不良行為、非行に走ることが増えてしまう懸念がある。
また、昨今はSNSの発展から気軽に不特定多数の人とも連絡が取り合える時代になった。X(旧ツイッター)で愛知県警察の少年課のアカウントを見たが、無数にある家出や裏アカ、児童ポルノの画像などのポストに対して、リプライを送っているのを確認した。夏休み期間に限った話ではないが、少年少女が非行や性被害の当事者にならない、また、させないための県警察の対策について伺う。
初めに愛知県内における少年の非行、不良行為、SNSに起因する児童の性被害の状況について伺う。
【理事者】
昨年中、愛知県内において刑法犯で検挙等された少年は1,696人と、10年前の3,673人から半減しているものの、一昨年からは増加に転じている。
また、深夜はいかいや喫煙などの不良行為により補導された少年も同様に、昨年中は2万3,176人と、10年前の7万2,744人の約3分の1に減少しているものの、一昨年から増加に転じている。
さらに、近年、県警察が検挙した児童買春等の福祉犯のうち、SNSに起因して被害に遭った児童は多く、昨年中も138人に上るなど、少年を取り巻く環境は大変憂慮される状況にある。
【委員】
一昨年から大変増えている原因に関しては、これという特定のものが存在しているわけではなく、様々な状況、原因に起因しているのではないかと考えている。
一昨年から状況の変化もあるが、これからの夏休み期間における少年非行、児童の性被害の防止対策について、現状の数値は分かったが、それに対しての県警察としての取組を伺う。
【理事者】
委員が示したとおり、街頭活動の強化やSNS上における児童買春等を誘引する投稿への注意喚起等の非行、性被害防止対策を実施しているが、夏休み中は学校の目が少年に届きにくく、また少年たちも開放感により気も緩みがちになる傾向にあることから、非行に走ったり、被害に遭ったりすることが懸念される。
そのため、県警察においては、関係機関や団体、地域住民等と連携し、登校日等における学校関係者を通じた生徒指導や各種広報媒体を活用した注意喚起、繁華街や夏祭り会場等での街頭補導活動、深夜営業施設への個別指導等の各種取組を集中的に実施して、少年の健全育成について県民の理解を深めるとともに、少年の非行、被害防止対策を強化していきたいと考えている。
【委員】
一点要望する。
愛知県の安心・安全に向けて、期間ごとの特性に応じた啓発活動とともに、平時の補導パトロールの強化も要望したい。もちろん夏休み期間の重点項目として、啓発活動をしてもらっていることは承知した。
ぜひ積極的にしてもらいたいと思うが、それだけではなく、平時のパトロールの際には、各地域をどれだけ巡回するということに関しては人材的な問題、現場での判断、状況の変化から難しいところもあるとは思うが、各地域における重点課題、重点区域はあると思うし、パトカー、警察がいることで少し気をつける人たちもいる。
これから未来ある若者たちが犯罪を起こさない、巻き込まれないためにも、平時からのパトロールの量、質ともに強化することを強く要望する。
【委員】
私からは、貨物集配中の車両に対する駐車規制と駐車許可申請について伺う。
まず、質問の趣旨を明確にしてから順次個別の質問に入りたいと思う。
道路における車両の駐車は、交通事故や交通渋滞の発生、緊急車両の通行に支障を来し、県民の安全・安心な生活環境を害する可能性があるため、その規制は必要不可欠な有効手段であると認識している。これが大原則である。一方で、その駐車規制は、物流を含めた私たちの生活の利便性に大きな影響を及ぼすことから、時の社会情勢に沿った必要最低限なものでなくてはならないとも思っている。
近年の物流状況は、コロナ禍が拍車をかけたネット通販の普及、市場規模の拡大により、宅配貨物が増加していることは知ってのとおりだと思う。国交省の調べによると、宅配便取扱個数は10年前の2014年度は約37億個、2022年度は約50億個と加速度的に増え続けている。
加えて2024年問題、いわゆる物流ドライバーの時間外労働の上限規制、配送費用も十分な価格転嫁ができない中でのドライバーの人材確保が困難になっており、物が十分に運べなくなる可能性が懸念されている。
そういった中、貨物集配業者は業務の性質上、短時間の公道における駐車が不可避であり、用務先周辺に駐車場所がなく、遠くに駐車することで、配達効率が著しく低下するなど大変厳しい環境に直面している。マンションなどの共同住宅やビルなど道路外の駐車場整備、マンション内の駐車場所の確保は進んでいるものの、道路における特に貨物集配業者の駐車の在り方については、冒頭言った規制の必要性とのバランスの中で、いま一度検討する必要があると考えている。
そこで、まずは貨物集配中の車両を含めた、一般的な駐車違反の道路交通法上の考え方を伺う。あわせて、駐車違反件数の推移及び近年の貨物集配数の増加に伴う貨物集配中車両の違反件数の推移がどうなっているのか伺う。
【理事者】
初めに、駐車違反の道路交通法上の考え方について答弁する。
道路交通法において、駐車とは5分を超えない貨物の積み下ろしのための停止と、人の乗降のための停止を除いて、車両等が継続的に停止すること、または運転者が離れて直ちに運転することができない状態にあることを定義としている。
貨物集配中の車両が5分を超える貨物の積み下ろしや、5分以内であっても集荷や配達で運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態で駐車禁止場所に駐車しているときは、駐車違反に該当する。
次に、駐車違反の取締件数の推移と貨物集配中の車両の駐車違反取締件数の推移について答弁する。
過去5年間の県内における放置車両確認標章の取付件数は、警視庁の統計では、令和元年中は10万6,143件、令和2年中は8万3,812件、令和3年中は7万5,145件、令和4年中は6万7,554件、令和5年中は6万4,090件となっており、年々減少している。
また、貨物集配中の車両の駐車違反に関する統計はないが、事業者用貨物自動車の放置車両確認標章の取付件数は、令和元年中は1,253件、令和2年中は1,208件、令和3年中は1,346件、令和4年中は1,334件、令和5年中は1,471件で推移している。
なお、先ほどの放置車両確認標章の取付件数の統計は警察庁の統計データになるので訂正させてもらう。
【委員】
貨物集配中であっても一般車でも同じ定義であり、ワンオペで運転していて、路上に駐車してマンションなどに入っていく場合、車両を離れた時点で、駐車違反になるという定義なのであろうと思う。
あわせて、先ほどのいわゆる駐禁切符、放置車両確認標章の取付の件数については、令和元年から令和5年にかけて、全車両、警察庁の統計であるが、4万件減っている。40パーセント減っている。その反面、事業用貨物自動車については18パーセント増加している統計なのであろうと思う。
要因としては、恐らく全件数が減ったのは、コロナ禍において外出規制等々があって、車の外出が減ったのであろうと思う。取締りに手心を加えたということはあり得ないと思っているので、恐らくそういうことなのであろう。半面、事業用貨物については、コロナ禍であってもエッセンシャルワーカーとして、ネット通販も増えたことで荷物が増えた反面、違反件数が増えているという統計なのであろうと想像している。
こういった課題に対して、その解決を図る方策として駐車規制の見直しというのがあると思う。2018年2月に警察庁から、貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直しの推進についてという通達が各都道府県に出されて、昨年2月にも同様の趣旨で継続的な取組を推進するよう再度通達が出され、全国的に取組が進められていると認識している。
この駐車規制の見直しは、いわゆる貨物車両が路上駐車できるように、規制の在り方自体を見直していくもので、駐車禁止の規制から貨物を除外する、駐車可の規制にする、パーキングメーターを設置することが考えられると聞いているが、その件について一つ伺う。
2018年2月の通達と2023年の通達を受けて、愛知県警察としては、それをどう受け止めて、どのように取り組んだのか、具体的な実施内容と課題認識を伺う。また、貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直しについて、今後どのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
県警察では、従前から駐車禁止規制からの貨物自動車の除外、貨物自動車専用のパーキングメーターの設置等の対策を講じてきた。
また、2018年の警察庁通達を受け、貨物自動車を対象とする駐車可規制を名古屋市中区等において計5か所、距離にして573メートルを新たに設置するなど駐車場所の確保に努めてきたところであるが、近年、貨物集配中の駐車需要の増加はますます高まっていると認識している。
今後も警察庁通達の内容を踏まえ、交通の円滑と地域の要望との均衡を図りながら、貨物集配中の車両に係る路上駐車需要が高いと認められる市街地等において重点的に駐車規制の見直しを進めていく。
【委員】
続いて、駐車許可申請について伺う。
駐車許可申請とは、道路交通法第45条第1項に基づき、やむを得ない場合に限り、車両情報、駐車期間、駐車場所を限定し、管轄の警察署長が許可を行うものと認識している。
貨物集配中の車両も事前に申請することで駐車可能となり、県警察ホームページ上でも物流関係記載例が掲載されているのを確認している。期間は最長6か月、1か所ずつではなく、ある程度の範囲のルートと駐車位置を図示した上で許可されることも事前のヒアリング等で確認している。いわゆるバス停方式と言われているようである。
貨物集配中の車両は大体の集配ルートが決まっているため、駐車禁止を回避して業務を安全に遂行できるため非常に有用な手段であり、物流業者も活用していると聞いている。
ただし、ある物流関係者に聞くと、例えば名古屋市のある区では許可されるものが、別の区では全く許可されないなど、警察署ごとの運用に温度差があるので大変困っているという状況も聞いた。
そこで、特にオフィスやマンション等集合住宅が多い名古屋市の各区の、さきに言ったバス停方式での駐車許可申請の受付実態はどうなっているのか伺う。また、警察署によって申請の受付自体に差異はないのか、県内警察署における駐車許可申請の受付実態について調査を実施しているのか伺う。
【理事者】
警察署長権限による駐車許可について、申請件数は把握していない。駐車許可件数については、令和5年中、バス停方式による駐車許可をした警察署が6警察署あり、件数の多い順に、千種警察署203件、中村警察署168件、東警察署151件、中警察署145件、西警察署84件、瑞穂警察署6件であった。
県警察では、警察署長の駐車許可について、警察署によって差異が生じないよう、その申請に係る必要書類や許可の基準の取扱要領等を各警察署に示している。引き続き県内統一的な運用が図られるよう、各警察署に対して指導していく。
【委員】
例えば私が聞いたのは北警察署ではなかなか認められないが、ほかの中村警察署、東警察署、中警察署、西警察署では積極的に認められる現状があるという話があった。当然、その地域の実情にもよるとは思っているが、そういう受付ができることを周知してもらえればと思う。
この駐車許可は、車両ごとに申請が必要であって、バス停方式での申請が可能ではあるが、事業者の事務負担、手続コストは非常に大きいと思う。
そこで、この駐車許可申請の手続の課題をどのように認識をしているのか、例えば手続をもっと簡素化すること、貨物集配中の車両などの反復継続的な用務については許可有効期間を延長すること、デジタル化で手続を簡素化することも考えられると思うが、その検討状況について伺う。
【理事者】
県警察では、駐車許可申請に関して、小木曽史人委員が示したとおり、許可有効期間の延長やデジタル化による手続の負担軽減を求める声があることは承知している。
現在、県警察では、警察署長による駐車許可について、定型的で反復継続する申請に限りオンライン申請を受け付けており、貨物積み下ろしの許可期間は最長6か月間としているが、本年6月21日に閣議決定した規制改革実施計画において、駐車許可手続のデジタル化、必要書類の全国統一化、許可有効期間の延長など、手続を簡素化する内容が盛り込まれたものと承知している。
今後は、この規制改革実施計画に基づき、警察庁から都道府県警察への具体的な指示がなされるものと承知しているので、その指示を踏まえ、今後の対応を適切に検討していく。
【委員】
最後の質問である。
規制改革実施計画においても貨物集配中の車両の駐車許可申請の要件や手続を簡素化していく方向性が示されているが、どんどん簡素化していくと、その車両や事業者に対する包括的な駐車禁止区域での駐車許可という議論に行き着くとも考えられる。
前段で言った駐車規制の見直しと併せて、この包括的な駐車禁止区域での駐車許可についてどのように考えているのか、課題を含めて伺う。
【理事者】
県警察では、警察庁の基本方針に基づき、緊急自動車や道路維持作業車などの公益性が高く、緊急に広域かつ不特定な場所に対応することが必要な用務に使用中の車両等に限って、公安委員会規則により駐車規制から除外している。
しかし、貨物集配中の車両は、駐車する時間や場所が一定程度特定されており、駐車禁止規制から除外するほどの緊急性も認められないことから、個別に駐車許可することで対応している。
県警察としては、駐車場所の確保には様々な課題があることを承知していることから、引き続き物流に配慮した駐車規制の見直しや駐車許可の運用に努めていく。
【委員】
最後に要望する。
駐車規制については、宅配便個数が今後も増加する見通しの中、都心のオフィス街などでは貨物自動車を対象とした法定の禁止を打ち消して区画線を配置する駐車可の規制が進んでいるものの、大型マンション等が立地する都心周辺の住宅街における駐車規制の見直しはあまり進んでいないように感じる。
昨年の警察庁通達を受け、運送業界に調査を実施したとも聞いている。そうした業界の意見も踏まえながら、もちろん大前提となる県民の安全性をしっかり確認しつつ、社会状況に適切に対応した形で貨物自動車を除外した駐車禁止規制を増やしていくなどの駐車規制の見直しを実施していくことを要望する。
駐車許可申請については、運送業者も手続コストをかけながら、何とかドライバーの心身の負担軽減と安全、安心かつ適正な道路利用の双方に心を砕いている実情にしっかりと向き合ってもらいたいと思う。
まずは今現在、私が耳にしている警察署ごとの駐車許可申請の受付に温度差がある実態をぜひ把握してもらい、その解消のため、いま一度警察署における円滑かつ適正な受付を指導してもらうことを要望する。
さらに、先ほど答弁のあった定型的で反復継続的な用務についてのオンライン申請が可能だということについては、周知不足なのか、あまり活用が進んでいないことも聞いている。物流業界等を通じて再度周知を徹底するなど、方策を進めてもらうよう要望する。
【委員】
私からは、経済安全保障について質問したい。
令和4年5月18日、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律、いわゆる経済安全保障推進法が公布されて、公布後2年以内で段階施行されることになっている。
まず、第一に、新しく法律をつくらなければならないほどの問題であり、経済安全保障が重要だということは皆、認識していると思う。
法律の趣旨を聞けば経済安全保障の意味が分かると思うので読ませてもらう。国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するには経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として所要の制度を創設するとある。
中身としては、重要物資の安定的な供給の確保に関すること、水道、電気、通信など基幹インフラ役務の安定的な供給の確保に関すること、先端的な重要技術の開発の支援、安全保障上機微な発明等に対しての特許出願の非公開という四つの柱から成っている。
私なりに考えると、よりよいもの、いわゆる高性能、高品質、利便性の高いものをより安く、よりもうかるようにと求める経済活動の中で、例えば農産品の適地栽培、鉱物資源、重要先端技術、機械の偏在など、必要なものを世界中から求めていく中で世界が非常につながりを持つようになった。そしてデジタル技術の進展によって、ますます世界中のつながりが深まったことで経済分野の活動において、国家間の対立を生むなど、国家の存在を脅かすレベルで、大きな影響を与えるようになってきていると理解している。
経済安全保障を確保していくためには、様々な行政機関や民間企業の連携、協力が必要である。その中においても、警察も非常に大きな役割が課せられていると私は思っている。
そこで、愛知県における経済安全保障における情勢について県警察としてどのように捉えているのか伺う。
【理事者】
近年、安全保障の裾野が経済及び技術の分野に急速に拡大していることに伴い、我が国をめぐる経済安全保障の脅威は一層高まっている状況にある。
県内には、自動車をはじめ航空宇宙、工作機械等の産業分野において世界的シェアを誇る独自の先端技術や製品を保有している企業、研究機関、大学等が数多く所在し、これらの先端技術等は国際競争力の重要な基盤である一方、軍事転用可能なものも含まれており、その獲得をもくろむ諸外国の標的となり得ることから、技術情報等の流出を防止する取組の重要性が高まっている。
【委員】
説明にあったように、愛知県は日本一の産業集積を誇るからこそ、技術流出防止が重要な課題であると、私も同じように考えている。
技術流出防止の取組として、本年5月24日日本経済新聞に、「技術の海外流出に待った、京都1,100社、府警と連携網」という企業と警察が連携して先端技術の海外流出を防ぐ京都府発の取組が非常に注目されているという記事があった。
中身としては、地元企業約1,100社が参加するもので、企業からの相談に対して府警察からの助言、府警察がアウトリーチ活動として年間300社に個別訪問する、最新情報を講演や研修、メールなどで共有していくという取組のようである。
企業と警察が県単位で連携した技術流出の枠組みは、京都府が初めてのようで、警察庁が指導する形で他県にも広がっており、記事の中では現在、愛知県や神奈川県など24府県に同様のネットワークがあるということである。
そこで、愛知県警察における取組状況はどのようになっているのか伺う。
【理事者】
こうした先端技術情報等は、一度流出すると企業や国民の利益を大きく損なうおそれがある。そこで、県警察は被害を未然に防止するため、関係機関と緊密に連携しながら企業などに対して、人から人やサイバー攻撃による流出等、技術情報等の流出の具体的な手口及びその対策について情報提供を行い、自主的な対策を促すアウトリーチ活動を推進している。
具体的には、2018年に国内の製造業をリードする先端技術保有企業と愛知ものづくりTOPネットワークを設立しており、企業に対して最新の流出事例や事件捜査を踏まえた流出防止対策等の技術提供及び注意喚起を行うとともに、企業からの相談等にも応じているところである。
また、県警察では、これまでも県内の企業などにおける技術情報等の流出に係る違法行為に対して、あらゆる法令を駆使して厳正な取締りを行ってきた。
【委員】
しっかりと取締りもやってもらっているとのことである。今の答弁にあった愛知ものづくりTOPネットワークの具体的な参加企業はどのくらいか。
また、TOPネットワークと言うからには、大企業ばかりというイメージを持ってしまうが、参加企業の規模はどのような感じなのか、教えてほしい。
【理事者】
まず、先ほどの私の答弁で一点訂正したいと思う。
「愛知ものづくりTOPネットワークを創設しており、企業に対して最新の流出事例や事件捜査を踏まえた流出防止対策等の」、先ほど私は技術提供と言ったが、情報提供及び注意喚起を行うということであったので、訂正する。
なお、TOPネットワークの参加企業数は、29社である。
【委員】
TOPネットワークという名前を聞くと、ついつい大企業ばかりかと想像してしまうが、企業規模はどのような感じか。
【理事者】
TOPネットワークに参加している企業は、大規模な企業が中心である。
【委員】
あえて企業規模を聞いたのは理由があり、大企業であれば、自分たちで流出を防止する部門を作ることができると思うが、中小企業では、技術流出防止に対する意識や体制がどうしても弱くなってしまうのではないかと思う。
そこで、中小企業に対する取組はどのように進めているのか伺う。
【理事者】
県内には規模の大小を問わず、先端技術を保有する企業等が多数存在している。県警察では、企業等の規模を問わず、中小企業についても技術情報等流出防止に対する意識の向上と自主的な対策の強化を推奨するため、警察本部と警察署が連携を図りながらアウトリーチ活動による支援に取り組んでいる。
なお、取組を始めて以降、これまでに訪問した企業等の数は県警察全体で約800か所になるが、今後も継続して支援に取り組んでいく。
【委員】
もちろん大企業との連携も重要であり、そこから様々な情報が得られると思う。そういったところも大事にしながら、得られた情報を様々な企業に提供する活動を丁寧にやってもらいたい。それによって意識が高まる部分もあり、そういった活動に取り組んでいると伝わることが防御につながる部分もあると思う。
あえて中小企業のことを聞いたのは、2022年2月26日、トヨタの工場が全部止まったということあった。これは、下請企業にサイバー攻撃が入って工場が止まってしまったということであった。実際、大企業が対策できていても、中小企業、下請といっても、Tier1の企業であり、全然小さな企業ではないが、そういうところに隙間ができてしまう。さらに独自の技術を持った企業が狙われることがあったときには、大変な部分もあると思う。やはり地域全体で技術流出防止に向けての取組を進めていかなければいけないと思う。
法律ができ、取り締まることもできる。ただ、実効性が伴うためには、皆がいかに活動していくのかという部分が大きいと思う。県警察に与えられた大きな権限はやはり取締りである。その力をしっかりと発揮してもらい、この地域の経済がさらに伸びるように守ってもらいたいと思う。今後の奮闘に期待する。