委員会情報
委員会審査状況
経済労働委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月13日(水) 午後0時57分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
福田喜夫、杉浦哲也 正副委員長
直江弘文、神野博史、高桑敏直、山本浩史、山下智也、今井隆喜、
かじ山義章、鳴海やすひろ、村嶌嘉将、岡 明彦、阿部武史 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、情報通信(ICT)政策推進監、
経済産業局技監、産業部長、中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第5款 経済労働費の内
第1項 経済産業総務費
第2項 商工業費
第3項 労政費
第4項 職業能力開発費
第5項 観光費
第6項 労働委員会費
第3条(債務負担行為)の内
STATION Ai運営事業安定化支援負担
新あいち創造産業立地補助
一般事業資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経営強化資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
経営強化資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
一般事業資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
あいち産業振興機構設備貸与事業損失補償
あいち産業科学技術総合センター施設設備改修工事
雇用セーフティネット対策訓練業務委託契約
障害者職業訓練業務委託契約
東三河高等技術専門校施設設備改修工事
第 6 号 令和6年度愛知県中小企業設備導入資金特別会計予算
第 18 号 商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例の制定につい
て
第 19 号 愛知県スタートアップ支援拠点条例の制定について
第 43 号 愛知県国際展示場条例の一部改正について
第 57 号 新型コロナウイルス感染症対策中小企業金融支援基金条例の廃
止について
第 65 号 STATION Aiの公共施設等運営権の設定について
第 67 号 STATION Aiの指定管理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第6号、第18号、第19号、第43号、第57号、第65号及び第67
号
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(1件 陳情第91号関係)
3 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 一般質問
5 休 憩(午後2時59分)
6 再 開(午後3時9分)
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
奨学金返還支援策は、他県での事例や実績を調べると、支援金が奨学金返還中の労働者個人に直接支給されていることが多いと分かる。本県の奨学金返還支援は、個人ではなく、中小企業への人材確保支援となっているが、対象となる従業員の要件について、具体的に伺う。
【理事者】
対象となる従業員だが、本年4月以降に雇用され、補助対象となる県内中小企業等に正社員として勤務している者である。対象を幅広く設定するため、年齢制限は設けていない。
なお、補助対象とする中小企業等は、県内に本社または主たる事業所があり、常時雇用する従業員数が300人以下の法人または個人事業主、従業員への奨学金返還支援の社内規程等を整備した上で県へ登録した中小企業等で、社会福祉法人や医療法人なども対象となる。多くの中小企業等に活用してもらえるよう、対象企業の業種の設定などは設けていない。
【委員】
新卒の人だけではなく、年齢が高くても奨学金を返還中の人が支援の対象となっており、中小企業等にも活用できる制度設計になっていることが分かった。
労働力不足に悩む中小企業等の経営者に分かりやすく説明し、新たな人材確保につながるように取り組んでほしい。
次に、中小企業応援障害者雇用奨励金について、4月から民間企業における障害者の法定雇用率が2.3パーセントから2.5パーセントに引き上げられ、その算定対象者に週所定労働時間10時間以上20時間未満の特定短時間労働者が追加され、障害者の雇用拡大を図るとあった。
そこで、中小企業応援障害者雇用奨励金の対象者に特定短時間労働者を追加した理由について伺う。
【理事者】
愛知県中小企業応援障害者雇用奨励金は、初めて障害者を雇い入れた中小企業に対し、最大60万円を支給している。短い時間で障害者を雇用することは、これから障害者雇用を検討する企業にとって、切り出せる業務量が少ない場合でも障害者雇用に取り組みやすくなる。また、体調に不安があり、継続的に長時間働くことのできない障害者の社会参加を促すことにもつながる。
県内の障害者雇用を一層促進するために、週10時間以上20時間未満で働く特定短時間労働者を奨励金の対象に追加し、15万円を支給する。
【委員】
障害者就労の拡大を図る関係者から、精神障害者や重度の肢体不自由な人であっても、長時間は難しいが短時間なら働くことができる人は相当数いると聞いていたので、特定短時間労働者雇用が広がることに期待したい。
愛知県中小企業応援障害者雇用奨励金は障害者雇用の拡大とともに、中小企業の人材確保にもなることから、着実に支給件数が増えるよう取り組んでほしい。
そこで現在、県内の民間企業に雇用されている障害者の数と実雇用率を伺う。また、追加対象となる特定短時間労働者の来年度の件数は、どのくらいを見込んでいるのか。
【理事者】
2023年6月1日現在の愛知県内の民間企業に雇用されている障害者数は、3万9,079人で、実雇用率は2.28パーセントとなっている。
追加対象となる特定短時間労働者の件数は、障害者等を雇用した場合に支給される国のトライアル雇用助成金のうち、障害の特性等により週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く精神・発達障害者を対象とした障害者短時間トライアルコースの愛知県内における令和4年度実績件数を参考にしている。
奨励金の申請は、雇用後6か月を経過した日の翌日から受け付けることとなっているため、来年度は半年分として14件を見込んでいる。
【委員】
これまで障害者を雇用した経験のない中小企業等の課題として考えられるのは、一つ目に、雇用する障害者に対して、適切な仕事を切り出すことができるか、二つ目に、ジョブコーチ等の存在と障害特性を理解したサポートができるか、三つ目に、その上で粘り強い定着支援ができるかが挙げられる。
しかしながら、こういったことが具体的に実施できる中小企業は極めて少ないと思う。そのため、障害者の雇用を検討している中小企業等に対する相談体制や支援体制が事業の正否を決めると思う。このことに関して、本会議でも重要課題として触れられたので、しっかりと取り組んでほしい。
最後に中高年齢者雇用促進対策費についてであるが、この事業も経済社会活動の回復に伴い、人手不足感が高まっているため、中小企業の人材確保に向けた取組の一つに位置づけられている。企業向け高年齢者雇用セミナーと高年齢者向け合同企業説明会は新規事業となっているが、どのようなものか。
【理事者】
本県では、これまでも55歳以上の高年齢者を対象とした就職相談会を開催したが、企業の応募は多いものの、求職者の希望する業種や勤務条件と合わないことなどから就職に結びつかないことが多く、就職件数を増やすことが課題と考えている。
そこで、来年度は高年齢者を受け入れる企業の業種を広げるため、企業に対し、高年齢者を雇用するメリットをはじめ、高年齢者に合った仕事の切り出し方や、求人・待遇等を見直し、高年齢者にとって魅力的な求人募集を行うことのできるノウハウを学べる、企業向けセミナーを名古屋市と三河地域で合計2回開催し、幅広い業種の企業に参加を呼びかけていく。このセミナーでは、参加企業からの個別相談にも対応する。
また、ハローワークと共催し、幅広い業種の企業や高年齢者のニーズに合った働き方を取り入れている企業と高年齢者とのマッチングを図る合同企業説明会を名古屋市と三河地域で開催する予定である。
【委員】
中小企業等が障害者や高齢者を雇用して、就労定着をさせるための第一歩となるものが、障害者や高齢者一人一人の特性や体力に対応する仕事を充てることである。そのため、雇用の入り口は、雇う側の仕事の切り出しであると考える。多くの中小企業は障害者や高齢者に合った仕事を切り出した経験がない。労働力の新たな確保に挑む中小企業のために、まずは仕事の切り出しを支援する体制を拡充させてほしい。
あいち障害者雇用総合サポートデスクをはじめ、就労相談や助言を行う機関や人の充実を図り、中小企業等が障害者や高齢者などの新たな労働力を確保する道筋を着実に開くことができるよう要望する。
【委員】
商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例をつくるに当たり、昨年の6月以降、県政世論調査や地域の産業労働に関する機関、団体等の会議を利用して、地域貢献活動に関する意見をもらった後、懇話会を開催し、条例の骨格を検討していくとのことだった。その後、パブリックコメントを実施し、昨年12月には第3回懇話会を開催し、最終的な条例の案を固めていくとのことだったが、昨年の6月以降実施された、第2回、第3回の懇話会ではどんな議論が行われてきたのか。
【理事者】
昨年10月に開催した第2回愛知県商業地域貢献活動懇話会では、条例骨子案について委員から意見をもらった。本年2月に開催した第3回懇話会では、主に条例制定後の取組、施策展開等について意見をもらった。
第2回懇話会では、商業者間の連携を促進するに当たって、商店街振興組合や商工会などの地域商業関係団体には一定の役割があるとの意見や、地域の多様な主体が連携する仕組みを具体的に考え、モデル事業をつくっていく必要があるなどの意見が出た。第3回懇話会では、今後市町村に求められる役割が重要になってくる一方、県は市町村の実情を把握しながら進めていく必要がある。条例や施策もまずは知ってもらうことが重要であるため、新たに行う表彰事業に合わせて条例も取り上げ、PRすべきなどの意見が出た。
本会議に提出している条例案は、これらの意見を踏まえたものであり、商業者等が地域社会全体と一体となって地域貢献活動に取り組むことを促進する内容となっている。
【委員】
今後のスケジュールと、条例策定後に県はどのように取り組んでいくのか。また、今後この条例をどのように周知していくのか。
【理事者】
今後のスケジュールとして、条例の総則と基本的施策、いわゆる理念の部分は本年4月1日に施行する。条例のうち、一定の大規模小売店舗を設置する者による手続部分は、事業者等への周知期間が必要となるため、3か月後の本年7月1日の施行を予定している。
次に、条例制定後の取組は、条例の理念の具現化を促進するため、地域ニーズを踏まえた継続性のある優れた地域貢献活動の事例を表彰する制度を創設する。これにより、商店街の社会的役割を広く周知するとともに、好事例の横展開を図っていく。
また、商店街の地域貢献活動を支援するため、げんき商店街推進事業費補助金や商業振興事業費補助金において、商店街と大型店が協同して行う地域貢献活動に対し重点的に支援する。
次に、条例の周知は、リーフレットやウェブページへの掲載及び各種商業イベントなどを通じ周知を図る。
また、新たに実施する表彰式においてもマスコミを通じて、条例の理念について取り上げてもらい、周知を図れるよう取組を進めていく。
併せて、現在のガイドラインの対象となっている店舗面積3,000平方メートル以上の大型店舗98店舗のうち、現行の地域貢献計画書を提出している店舗は93店舗で、提出率94.9パーセントである。これらのうち、あいち商店街活性化プラン2025の成果達成目標としている地域づくりの取組への協力の実施率は、目標の90パーセントに対し、実施数87店舗で実施率93.5パーセントと、目標を達成できている。
今後は、大型店の設置者に対して、本条例の趣旨をしっかり周知し、計画書の提出率や地域づくりの取組への協力の実施率をさらに高めたい。
県としては、本条例の制定を機に、地域の多様な主体と連携した商業者等による地域貢献活動の活性化に取り組んでいく。
【委員】
これまでのガイドラインでも大規模小売店舗立地法に基づく3,000平方メートル以上の商業施設では、地域貢献計画が努力義務になっており、その計画も本県のホームページでも公表されている。
多くの店舗で地域からの要請があれば、町内会や商業団体への加入を検討する、防災に関する取組も要請があれば協力すると書かれており、報告書の内容はよくできている。大規模小売店舗も地域に貢献する姿勢が見えていると感じる一方で、そうした取組を地域の人々が知らないことがもったいない。
また、地域からは、逆に大規模小売店舗が地域貢献活動をしてくれるのであれば、高齢者が集える場所をつくってほしい、市街地に住む高齢者の買物にも利用できる市営バスを市街地経由で店舗の入り口付近までつけてほしい、車椅子を使用する人からは、駐車場の乗り降りの際に乗降できるスペースが少なく、店舗側にスペースを確保してほしいなどの様々な声を聞く。しかし、それが店舗側に伝えられないなどする。
そのようなことがこの条例をつくることで、地域の声がしっかりと店舗にも伝わり、本当の意味での地域貢献活動につながるように期待する。
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会活用誘客促進事業及び外国人旅行者観光コンテンツ造成支援事業について、具体的にどういうことを行うのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会活用誘客促進事業費は、約3年間の事業計画を立てており、今年度は、東アジアの旅行会社に行き、愛知県の魅力をPRした。
併せて、4つの観光施設で9か所の多言語化を実施した。来年度は、今年度訪問した旅行会社等を愛知県に招請し、県内の魅力を発信していきたい。観光施設の説明文の翻訳も今年と同様に行いたい。
外国人旅行者観光コンテンツ造成支援事業は、新規事業であり、旅行者に県内で消費してもらうため、県内の体験型旅行商品を売っていくものである。富裕層に向けたクオリティーの高い旅行商品を造成し、販売していくものと、もう一つの対象として、一般のオンライントラベルエージェント(OTA)を使う人が、旅の途中で気軽に買えるような旅行商品の造成、販売に向け、現在計画を立てている。
【委員】
2年半後にアジア・アジアパラ競技大会が開かれる中で、これは時宜を得た政策だと思う。アジア・アジアパラ競技大会を見たついでに旅行する、または旅行のついでにアジア・アジアパラ競技大会を見るようにするには、コンテンツづくりが重要である。大阪・関西万博では政策として観光誘客を打ち出しているが、その内容は既に調査しているのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会は、現在、未定の部分も多いが、庁内で協力して商品を造成し、売れる商品をつくって県内を周遊してもらいたい。
【委員】
2年ほど前、経済アナリストのデービッド・アトキンソン氏に、日本は観光立国になれると講演で聞いた。そこでは、日本人の考える観光と、外国人の日本に対する観光の見方に少しずれがあるとの話があった。アジアの国々や欧米の国々の日本観光に対する観光の見方を十分把握した上でコンテンツをつくらなければ、ミスマッチが生まれる。ぜひ深掘りして取り組んでもらいたい。
また、愛知県だけではなく、中部圏を一円とする昇龍道をもう一度よみがえらせるべきだと思う。中部圏全体を見ると多くの観光資源がある。
加えて、高級ホテルを10億円出して誘致しているが、ホテルインディゴという高級ホテルが既に犬山市に進出している。インターコンチネンタルホテルズグループで、会員が1億5,000万人もおり、ここを使わない手はないと思うので検討してほしい。
《一般質問》
【委員】
あいち民主県議団では、令和6年度施策及び当初予算に対する提言において、新型コロナウイルス感染症を含めた感染症全体への危機管理体制の強化、推進を行うべきであるとした。
経済産業局では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、本県の営業時間短縮要請や酒類の提供制限に協力した飲食店等の事業者に対して協力金を支給した。実績としては、令和2年11月末からを対象とする第1弾から令和4年3月までの第14弾まで、延べで約29万の事業者に対して約4,500億円を支給したと聞いている。
この協力金は、感染拡大防止に協力した事業者の経営の継続性を保つために重要な役割を果たしたと認識する一方、不正受給の事例があった。
確かに新型コロナウイルス感染症に関しては、感染症法での扱いがいわゆる2類感染症相当から5類感染症になり、当面、協力金等の措置が行われることはないとは思うが、今後、新たな感染症が発生しないとも限らず、そのときに模倣犯等を出さないためにも不正受給に対しては厳正な対応が求められる。
そこで、協力金の不正受給の数と内容及びそれに対する県の対応状況を聞く。
【理事者】
愛知県での協力金の不正受給は、2件あった。
1件目は、時短要請時間を超えて営業していたにもかかわらず、虚偽の申請により協力金926万円を受給した。県警察が協力金をだまし取った詐欺の容疑で店の経営者らを逮捕したことにより判明した。
2件目は、実質の経営者が暴力団であることを隠して協力金250万円を受給したものである。国の家賃支援給付金をだまし取って逮捕された者が県の協力金の支給も受けているとの情報が県警察からあり、判明した。
2件とも即座に交付決定を取り消し、返還請求を行った。1件目は、協力金926万円と加算金170万円が既に返還されている。2件目は、協力金250万円が返還済みで、加算金及び延滞金約95万円について、現在、返還請求を行っている。
引き続き、県警察など関係機関と連携を取り、不正受給が判明したケースには厳正に対処していく。
【委員】
能登半島地震が起こり、2か月半が経過しようとしている。発災地では、なりわいの継続が大きな課題になっており、その象徴的な事例として報道されているのが伝統工芸産業である輪島塗である。これまでも全国の伝統工芸産業は、後継者不足が課題になっているが、能登地方では地震による作業所の倒壊等で事業継続が困難になったことで高齢の輪島塗職人の気力が萎え、廃業を考えざるを得ない状況が散見されるとの報道もある。その一方で、後継者のいる工房や若手職人は、近隣の市町などに移動して、なりわいとしての事業継続に挑戦しているとの報道もある。
輪島塗の事例は、大地震という想定外の出来事によって起こったものとはいえ、伝統工芸産業の後継者問題が抜き差しならない状況であることを目に見える形で突きつけた。南海トラフ地震で大きな被害が予想されている本県の伝統産業の振興においても、後継者問題こそが最重要になると痛感した。
さて、2021年に愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)で開催された第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会(KOUGEI EXPO IN AICHI)では、全国の伝統工芸が一堂に会し、その魅力を県民に広く発信する場となった。若い職人がクローズアップされるイベントにもなっており、伝統工芸品の未来は決して暗いものではないと感じた。そこには、名古屋市緑区で有松・鳴海絞に関わる中堅、若手の職人も意気軒高に参加しており、頼もしく思った。
そこで、2021年にAichi Sky Expoで開催されたKOUGEI EXPO IN AICHIを契機として、伝統工芸産業振興に向けてどのような事業を実施し、その実績はどうであったか。
【理事者】
本県では、2021年に開催されたKOUGEI EXPO IN AICHIを契機に、そのレガシーとしてあいち伝統的工芸品産業チャレンジ事業を2021年度から実施している。
チャレンジ事業の一つである、海外バイヤー商談会事業では、海外市場に対する伝統的工芸品産地企業の新たな販路開拓を促進するため、オンラインにより海外バイヤーとの商談支援を行っている。
具体的には、伝統的工芸品産地の事業者を対象に、販路開拓セミナーを開催するとともに商談会への参加を促した結果、本年度において販路開拓セミナーには産地企業から10人の参加があり、1月に開催したオンライン商談会では、産地企業4社と北米のバイヤー5社をマッチングし、現在も商談が継続中である。
なお、昨年度については、同様の事業を行い、7件の商談が成立しかかっている。
【委員】
有松・鳴海絞の産地においても販路開拓が着実に進んでいるところは後継者も育っている。ヨーロッパで広く事業展開している事業者、ユニクロ、ビームスなど、知名度の高いメーカーとのコラボ商品を生み出している事業者などが、絞りと染めに係る高い技術を洋服やインテリア製品等に転用するなど、和装以外の分野で伝統工芸技術をブラッシュアップした新商品を生み出している。
昨今の伝統工芸産業を取り巻く厳しい経営環境下にあっても、生き残りをかけて前進している事業所には若手の職人もいる。そして、その中からは独立して新たに事業を始める人も生まれている。
そこで、2018年度から実施をしている伝統的工芸品ブラッシュアップ事業の内容と、実施から6年が経過する中で、これまでの実績について伺う。
【理事者】
伝統的工芸品ブラッシュアップ事業は、伝統的工芸品産地企業にマーケティングの専門家を派遣し、現代のライフスタイルに即した新商品開発や販路開拓等の取組を支援することで、産地の未来を担う企業への成長を促し、伝統的工芸品産業の持続的発展につなげるものである。
本事業は、これまで延べ14の会社及びグループに対し支援を行い、試作品の作成を通して商品化に至ったものや、本事業で立ち上げたECサイトを活用して、新商品販売や情報発信を行っている事例があり、伝統的工芸品産地企業の取組支援につながっている。
具体的には、国に指定された県内15品目のうち、有松・鳴海絞をはじめ、9品目が事業に参画しており、本事業で開発した商品は、百貨店等の催事においてメイン商材として扱われるなどの注目を集めている。
【委員】
ブラッシュアップ事業には一定の成果があり、来年度以降の事業展開に期待を寄せたい。
本日は、伝統的工芸品に係る若い職人の商品、作品のうち、私が日常身につけるなど使っているものがあるので、紹介する。これらはブラッシュアップ事業に参加した事業者が作った商品である。回覧してよいか。
【委員長】
許可する。
【委員】
本日、資料を入れてきたトートバッグである。これは、日本を代表する黒染めである名古屋黒紋付染の技術を活用して、刺し子織の三河木綿と柔道着のコラボ商品で、大変丈夫かつおしゃれなものである。皮革に有松・鳴海絞の技術を活用したキーホルダーをつけている。
もう一つは豊橋筆のチャームである。昨今、豊橋筆で注目されているのは、家族の一員であるペットの毛でつくられたペットチャームが注目をされており、本年1月9日にはNHKの全国中継のあさイチのいまオシ!LIVEでこの工房が紹介された。
最後に、尾張仏壇の伝統工芸士が、装飾金具を製作する際の彫金技術を活用してつくられた男性向けアクセサリーのピンバッジ、ピンズであり、名古屋城の金シャチをあしらったものでる。
こうした商品や作品を手にしてみると、現代社会の流行トレンドと伝統的工芸品は、伝統に裏づけられながらも、格式や不思議な魅力を感じる。
あいち伝統的工芸品産業チャレンジ事業や伝統的工芸品ブラッシュアップ事業の実績を踏まえて、今後、新たな取組は実施していくのか。
【理事者】
新たな取組として、本年度から伝統的技術、技法等を伝承する後継者の確保が産地組合の大きな課題となっている現状の下、後継者の確保を支援し、伝統的工芸品産業の維持、振興を図るため、伝統的工芸品産地組合、各市町村が連携して、インターンシップを活用した後継者確保支援事業を実施している。
本年度は、瀬戸染付焼、岡崎石工品の産地企業2社においてインターンシップを実施した。全国から97人の応募をもらい、書類選考や面談を経て12人の参加があり、うち3人が採用につながった。
引き続き、全国のモノづくり系大学、専門学校への告知及びSNS等を利用した周知等により広く呼びかけを行い、将来に向けた後継者の発展に努めていく。
来年度においても新商品開発や販路開拓、後継者確保支援と、三つの側面から総合的に伝統的工芸品産地企業等を支援する。
【委員】
国に指定されている本県の伝統的工芸品15品目のうち、いまだ6品目は伝統的工芸品ブラッシュアップ事業に参加していないことに一抹の不安を覚える。伝統的工芸品ブラッシュアップ事業に挑戦しようとする意欲溢れる若い人がいなければ、その産地の育成はどうなるのかと危惧している。
本県で大災害等が起こった際の事業継続を考えると、肝の冷える思いである。南海トラフ地震等の災害によって、伝統産業を喪失させてはいけないと思う。まずは、後継者確保支援が最も重要だが、後継者が育つためには、新商品の開発や販路開拓によって、利益、利潤が得られる事業構造に改善していくことが不可欠である。
新商品開発や販路開拓、後継者確保支援という三つの側面からこれを総合的に各地域の伝統的工芸品産業企業を粘り強く支援していくことを要望する。
次に、ユニバーサルツーリズムの取組について、平成28年2月定例議会の一般質問及び令和4年12月定例議会の一般質問で、観光立県を目指す本県において、ユニバーサルツーリズムを推進する取組を進めるべきと要望した。
一方、令和3年度の行財政改革・地方創生調査特別委員会における参考人のアジア・アジアパラ競技大会に関する言及の中で、スポーツを観光コンテンツに位置づける視点から、ユニバーサルツーリズム、アクセシブルツーリズムを進めるべきとの指摘があった。
アクセシブルツーリズムとは、障害者や高齢者など、移動やコミュニケーションにおける困難さに直面する人々のニーズに応えながら、誰もが旅を楽しめることを目指す取組のことで、ユニバーサルツーリズムと同義の言葉である。
2026年のアジア・アジアパラ競技大会の開催に向けて、ユニバーサルツーリズムの取組を加速する時期になっている。
そこで、あいち観光戦略2021-2023の計画期間において、ユニバーサルツーリズムに対してどのような取組を行ってきたのか。
【理事者】
ユニバーサルツーリズムは、全ての人が楽しめるよう創られた旅行であり、旅行者の言語、年齢やジェンダー、障害の有無などに関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行であると認識している。
今年度までの3か年の戦略では、主に多言語対応や高齢者や障害のある人に対するバリアフリー化の促進を位置づけている。
具体的な取組の内容として、まず、多言語対応については、多言語コールセンターにより、訪日外国人をはじめ、県内の宿泊施設や観光施設などに対して、無料で電話通訳や翻訳サービスなどを提供しているほか、観光施設費等補助金により市町村等が設置する公共的観光施設の多言語表記を伴う案内看板の設置等を支援している。
次に、バリアフリー化については、観光施設費等補助金により、多目的トイレや手すりの設置費などを支援しているほか、県の観光ウェブサイト、Aichi Nowにより、高齢者や障害のある人々などが必要とする県内観光施設のバリアフリー情報を発信している。
【委員】
令和4年12月定例議会の一般質問に対して、有識者ヒアリングや市町村等へのアンケートなどの結果を踏まえて、アジア・アジアパラ競技大会などの開催に向け、ユニバーサルツーリズムの必要な取組の検討を進めるとのことだった。それはどのような状況になっているのか。
【理事者】
有識者ヒアリングや市町村等へのアンケートは、2022年12月に実施した。観光関係に携わる有識者に対するヒアリングでは、ユニバーサルツーリズムはこの時代、絶対に必要であり、誰もが安全・安心に旅行できる状態はツーリズムの基本であるといった意見や、宿泊施設などハード施設の改修は補助金などのきっかけがないと進まないため、アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機に検討するとよいなどの意見が出た。
県内全市町村に実施したアンケートでは、県に期待する施策として、ハード面では施設のバリアフリー化や多言語案内看板等の整備に対する財政支援を求める回答が多くあった。また、ソフト面では多言語コールセンターの設置など、多言語対応の支援を求める回答が多くあった。
こうした結果を踏まえ、新たな戦略においても引き続きユニバーサルツーリズムを施策として位置づけた。
【委員】
観光振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、魅力ある活力に満ちた地域社会の実現及び県民生活の向上に寄与することにより、訪れる人・旅行者、住む人・県民、働く人・観光関連事業者等が満たされる状態、いわゆるウェルビーイングを実現することを目的に、あいち観光戦略2024-2026が発表された。この戦略中の施策の展開分野に、受入環境の整備が掲げられている。
そこで、来年度からのあいち観光戦略2024-2026では、ユニバーサルツーリズム推進に向けてどのような取組を行うのか。
【理事者】
来年度から2026年度までの3年間を計画期間とする新たな戦略においても、多言語対応やバリアフリー化の支援、バリアフリー情報の発信などに取り組む。具体的には、引き続き多言語コールセンターや観光施設費等補助金による支援や、ウェブサイトによるバリアフリー情報の発信などの取組を実施していく。
また、アジア・アジアパラ競技大会に向けて、ネイティブライター等の専門人材を外国人が多く立ち寄る観光施設に派遣し、外国人に分かりやすい多言語解説の作成を支援していく。
このほか、スポーツ局の来年度予算に計上されている宿泊施設バリアフリー整備推進事業費補助金について、観光コンベンション局もしっかりと連携していく。
これらによりユニバーサルツーリズムの取組を加速させていく。
【委員】
愛知県の宿泊施設バリアフリー設備推進事業費補助金について、スポーツ局と連携をするとのことだが、観光コンベンション局は具体的にはどのような取組を行っていくのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会を契機として、県内宿泊施設のバリアフリー化を着実に進めていくためには、スポーツ局が実施する新たな補助制度をより多くの宿泊施設に知ってもらい、活用していくことが必要である。
観光コンベンション局としては、多くの宿泊施設が加盟している業界団体を通じて、県内のホテル、旅館に対しこの補助制度を広く周知するとともに、これを契機としたバリアフリー化改修を進めていけるよう働きかける。
また、バリアフリー化改修を行った宿泊施設については、県の観光ウェブサイトなどを活用して施設のバリアフリー対応状況を広く発信していく。
【委員】
ユニバーサルツーリズムに関係するこれまでの質問で、ハードとソフトの両面から受入環境整備をする必要性を訴えてきた。コロナ禍によってダメージを受けた観光関連事業者向けに今すべき行政の支援は、まずは事業者の経営を安定させることである。経営の安定がなければ、いわゆるユニバーサルツーリズムに資するハード面の充実はあり得ないので、まずは経営安定に向けての着実な取組を要望する。
その上で、今できることとして、ユニバーサルツーリズムに資するソフト面での強化も考えてほしい。アジア・アジアパラ競技大会の開催に向けて、本県のボランティア力の充実は大いに期待できる。観光ボランティアの研修の場などで、ユニバーサルデザインの観点から障害者や高齢旅行者へのサポートに関する学びなどを検討してほしい。ユニバーサルツーリズムの進展に向けたソフト面での取組を改めて要望する。
【委員】
中小企業に対するロボット導入の支援についてであるが、中小企業はほぼ全ての産業において人手不足に直面をしており、今後も労働者人口が減少する中で、より深刻な課題となっている。
人手不足の有効な処方箋の一つがロボットによる自動化、省人化であるが、中小企業におけるロボット導入の状況について、現在どのようになっているのか。
【理事者】
県内中小企業のロボット導入状況について、本県では毎年度、中小企業約100社を対象に中小・小規模企業訪問ヒアリングを実施しており、その中でロボットの導入検討状況を尋ねている。その結果によると、既に導入済みとした企業の割合は、直近3回の調査で、ほぼ15パーセント程度にとどまっており、導入があまり進んでいない。
製造業に限って見た場合は、日本ロボット工業会の調査による2022年のロボットの国内出荷実績では、電気機械関連産業向けのロボットが約2万1,000台の出荷実績に対して、食品関連産業向けは900台弱にとどまっている。事業者の数自体では、電気機械関連産業よりも食品関連産業のほうが多いが、業種によって導入状況に大きな差が生じている。経済産業省においても食品製造業をはじめとするいわゆる三品産業へのロボット導入が進まないことを課題にしている。
また、商業、サービス業においても飲食店舗での配膳や商業施設での清掃など、ロボットの活用は一部の用途に限られているのが実情である。
市場の拡大が期待される荷物配送や案内、警備用途、さらには従事者不足と負担軽減が課題となっている介護、福祉分野など、現時点でロボットの導入がほとんど進んでいない状況である。
【委員】
ロボット導入が進まない理由は、費用対効果が不透明であることや、技術面での課題があることも考えられる。これらの障壁をクリアして導入を後押ししていくことが必要になると思うが、県としてこうした課題に対して、来年度どのように取り組むのか。
【理事者】
ロボットの導入状況で、中小・小規模企業訪問ヒアリングにおける直近の調査結果によると、ロボット導入における課題として、導入費やメンテナンス費の負担が大きいというものに続き、費用対効果が予測しにくいことや工程の見直し、導入予想の検討が難しいという課題が多く寄せられている。
これは、導入するロボットの購入費の負担の大きさだけでなく、費用対効果の不透明さや導入計画の検討の大変さ、技術面の不安といったものがロボット導入に踏み切れない大きな要因となっていることを示している。
ロボット導入に当たってのロボット機器等の購入費は、現在、国の補助金などが活用できるが、費用対効果調査や導入検討作業、技術検証などの、導入に先立つ事前検証に必要な費用は支援する補助金がない状態である。
そこで本県としては、来年度、新あいち創造研究開発補助金の1メニューとして、新たにロボット未活用領域導入検証補助金を創設し、事前検証に要する費用の一部を補助することとした。
この補助金では、ロボット導入余地の大きい四つの分野である製造・物流分野、医療・介護分野、業務用サービスロボット活用分野、空モビリティ活用分野における、ロボットの活用が進んでいない用途の事前検証業務を補助の対象とする。
例えば、食品製造業における産業用ロボットの活用や介護施設での移動支援、排せつ支援ロボットの活用、さらには物流業務における自動配送ロボットやドローンの活用などであり、広く活用できるものと考えている。
この補助制度を通じ、個々の中小企業におけるロボットの導入を後押しするとともに、補助事例をモデルケースとして広く横展開を図ることで、県内の中小企業全体へロボット活用が促進されるよう取り組んでいく。
【委員】
新たにロボット未活用領域導入検証補助金を創設して、事前検証に要する費用の一部を補助するという新しいメニューがつくられるため、要望になるが、ぜひ積極的に、情報発信をするようお願いする。
続いて、新あいち創造研究開発補助金について、大村秀章知事の就任後に県民税減税に代えて産業空洞化対策に取り組むとして、企業立地の補助金とセットで始まったと記憶している。どうしても企業立地の補助金に目がいってしまいがちだが、モノづくり愛知においては、研究開発が大変重要だと思う。
平成23年は、東日本大震災の後で、日本経済は六重苦などと言われていた。当時の新聞記事などを読むと、円高、経済連携協定の遅れ、法人税高、労働市場の硬直性、環境規制、電力不足、コスト高とあった。特に円高については、当時は1ドル75円台まで円高が進んでいたので、産業空洞化は待ったなしの課題であった。今のように中国などへの工場進出もさほど警戒感がなかったので、多くの企業に海外の拠点を拡大する動きがあった。
そうした動きの中で企業の立地と研究開発を支える補助金がスタートして10年ほど取組が進められてきた。最近は、円高というより、円安で資源やエネルギーの調達コストが上がり、カーボンニュートラルへの対応など、我が国や愛知県における産業、そして企業の研究開発を取り巻く状況もかなり変化してきた。
そこで、この補助金であるが、これまでの実績はどのような状況か。また、産業や社会を取り巻く状況が変化する中で、製品化などについてどのような成果が上がっているのか。
【理事者】
新あいち創造研究開発補助金の実績と成果についてであるが、2011年に議論があり、2012年から愛知県における付加価値の高いモノづくりを維持、拡大していくため、次世代自動車や、環境エネルギーといった今後の成長が見込まれる分野などで、企業等が公設の試験研究機関や大学等と連携して行う研究開発、あるいは実証実験を支援していくものである。
実績は、本年度までの採択ベースの累計になるが、905件であり、金額は約90.5億円であり、1件当たり約1,000万円の補助金を出している。件数で見ると8割が中小企業で、きめ細やかな支援ができている。
特に2018年度からは、この補助金を受け取ったことがない中小企業を対象にトライアル型として優先的に採択する取組を行っており、それだけでも123件の採択となっている。
補助金の成果は、補助金をもらった企業に、その後5年間フォローアップの調査をしている。昨年の夏に、2018年度から2022年度までの371件について聞いたところ、商品化まで至ったのが80件、試作品の完成まで至ったものが199件で、着実に成果が上がっている。
2021年度、補助したところで成果が上がった報告があったものとしては、具体的には、弥富市の高尾工業株式会社が、3Dプリンターで金属の部品をつくる研究開発を行ったところ、既に200社以上の引き合いがあった。カーボンニュートラル関係では、蒲郡市の株式会社三浦組紐工業が、昨年の夏、富山県で洋上風力の設置があり、クレーンの上にひもをぶら下げてものを吊り下げるスリングに採用されている。
【委員】
研究、開発の成果という点では、昨年10月にあいちモノづくりエキスポ2023という展示会を開催されたと聞いている。来年度の予算案にも新あいち創造研究開発成果展示会の開催費が計上されており、新型コロナも5類感染症となってイベントも以前のようなにぎわいが戻ってきているように感じる。
そのような中、本日から3日間、常滑市のAichi Sky Expoでスマートマニュファクチュアリングサミット・バイ・グローバルインダストリーも開催され、こうした展示会を通じて県内企業がビジネスチャンスをつかんでいくのは極めて有意義なことである。
そこで、新あいち創造研究開発補助金の成果を披露する展示会であるが、昨年の開催実績はどうであったのか。また、来年度はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
まず、昨年行われたあいちモノづくりエキスポ2023では、昨年の10月の2日間、常滑市のAichi Sky Expoを会場とし、この補助金の成果をさらなる事業化、商品化の推進や、販路・取引拡大につなげる機会にするために一堂に集めた展示会を開催したところ、企業114社、そして大学、研究機関等で22団体が参加し、特に展示会に初めて出る企業が、6割と非常に多い中で、来場者が5,000人を超え、商談も4,000件を超えており、盛況であったと考えている。開催後に行った出展者のアンケートでも、次回があればぜひ出展したいとの声が多く寄せられた。
そして、来年度は6月に開催予定のアクシアエキスポ(AXIA EXPO)2024でイベントの中で新あいち創造研究開発成果展示会エリアという形で出展するよう準備を進めている。
そのアクシアエキスポでは、次世代エネルギーや通信、DXなど、スマートシティ関連の展示会になるが、異なった企業と隣り合わせで出展することによって、出展企業同士の交流ができ、新たな出会い、商談、研究開発成果、活用先の気づき等の相乗効果も期待できると考える。
既に100コマの募集をかけたが、ほぼ埋まっていると聞いており、非常に好調な滑り出しである。ぜひとも展示会を、研究開発がビジネスにつながっていく場として、今後活用していきたい。
【委員】
私たちが暮らす社会も産業も今後は、非常に先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態になってきている。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性と、様々な言い方があるが、英語の頭文字を取ってブーカ(VUCA)と言われることもあるが、積極果敢に研究開発に取り組んでイノベーションや新たな分野の開拓をしていかなければ、企業は収益や雇用を確保していくことが難しい時代といえる。
こうした企業の研究開発を支えることは、愛知県の活力を維持し、さらなる成長を目指すには欠かせないので、今後もしっかりと取り組んでいくことを要望する。
【委員】
現在、名古屋市昭和区に本県が整備を進めているSTATION Aiであるが、いよいよ本年10月にオープンする。そして、開業5年で利用者数も国内外の会社1,000社が集結するという、日本最大のスタートアップの中核支援拠点になる。開業に先立って、運営しているPRE-STATION Aiのメンバーは、現在357社と聞いている。
このSTATION Aiのメンバーとなる基準がはっきりしない、分からないという人も多いので、ここで改めてSTATION Aiのメンバーはどのように選ぶのか伺う。
【理事者】
メンバーの審査基準は、新しい技術やビジネスモデルに基づいて事業を展開し、新市場の開拓により高成長を目指すスタートアップを採択するという考え方から、各スタートアップが取り組む事業や市場性、それから経営者やメンバー構成などの審査項目を設定している。
この審査項目に基づき、メンバーの支援に当たる複数の統括マネジャーが審査し、総合的に判断している。
【委員】
統括マネジャーが選ぶとのことだが、選ばれたスタートアップは、ほかの施設に入居する場合と比べてどんなメリットがあるのか。
【理事者】
STATION Aiは、スタートアップのみならず、既存の事業会社をパートナー企業として誘致しており、ワンルーフの下でスタートアップと事業会社がビジネスを展開していく。
こうした環境の下で、STATION Aiではスタートアップと事業会社との協業を強力に推進し、オープンイノベーションにより新たな価値創造を図っていく。
このオープンイノベーションは、この地域のモノづくりをはじめとする分厚い産業集積があるからこそ実現するものであり、これがSTATION Aiの他の施設に対する圧倒的な優位性を持つ特徴となる。
【委員】
オープンイノベーション、情報の共有化が大きなメリットになることがわかった。STATION Aiのメンバーとなったスタートアップをこの支援拠点で育て、支援していくことに関連して、本県は来年度の新規事業として起業を目指す者及び創業間もないスタートアップを対象としたコンテストを開催するとのことであるが、その内容はどのようなものか。
【理事者】
初期段階のスタートアップを支援するため、対象者の異なる2種類のコンテストを実施する。
一つ目は、ビジネスアイデアを持ち、起業を志す者を対象として、起業支援一体型の起業家ビジネスプランコンテストを開催する。具体的には、1次審査に合格した20社程度の参加者を対象に、メンタリングやワークショップなどのプログラムを通して参加者のビジネスアイデアの深掘り、仮説検証を行い、初期の事業モデルの構築を目指す。その後、2次審査を実施し、当審査で選抜した10社程度を対象としたビジネスプランコンテストを開催する。賞金として1位には300万円、2位には200万円、3位には100万円を起業に必要となる資金として提供する。
二つ目のコンテストであるが、創業初期でサービスやプロダクトを開発前のスタートアップを対象に、賞金総額1,000万円のピッチコンテストを年に3回開催する。極めて優れたビジネスモデルを有し、成長見込みの高いスタートアップに対して、賞金として事業推進に必要となる資金を提供する。
【委員】
ただいまの答弁では、二つのコンテストがあり、一つは300万円、200万円、100万円の賞金、もう一つは賞金1,000万円で年3回開催されるということで、非常に大きな資金面を支援していくと理解した。スタートアップは、考え、アイデアはあっても資金がないことが一般的であり、資金調達ができないとなかなか事業が開花されない側面がある。そこでスタートアップの資金調達について、コンテスト以外にどのような支援があるのか。
【理事者】
リソースに乏しいスタートアップにとって、特に資金の確保が最重要課題の一つとなる。そこで、STATION Aiプロジェクトとしては、出資、融資、補助金等、多様な資金調達メニューを提供している。
まず、出資については、STATION Aiのメンバー向けのSTATION Ai Central Japan 1号ファンドを設置している。現時点で14件の投資実績がある。
次に、融資については、県として制度融資メニューに、県のスタートアップ支援に関するプログラムに参加したスタートアップに対して金利を優遇する制度を用意している。
出資、融資に関しては、これらにとどまらず、ベンチャーキャピタルや銀行等をSTATION Aiへ数多く誘引することにより、スタートアップとこうした機関を結びつけ、出資や融資につながる体制を構築している。
最後に、補助金等では、起業前や起業間もないスタートアップは実績がなく、出資、融資を有利な条件で進めることが困難なことから、県として起業や研究開発実証実験に係る経費に対する補助や、新規事業のビジネスプランコンテストの賞金による資金提供も行い、円滑な事業進捗を手厚くバックアップしていく。
【委員】
資金調達には様々方法があること分かったが、以前にPRE-STATION Aiを視察したときに、現地の統括マネジャーに対応してもらい、すばらしい起業に関する指導者だと感じた。これからビジネスアイデアを磨き上げていくわけだが、そのようなことに関して、統括マネジャーの存在は、スタートアップ支援の要であり、キーマンだと思う。
STATION Aiのオープンした後は、統括マネジャーがスタートアップを支援していくのか、また、どのような人がどのような形でスタートアップのビジネスアイデアの磨き上げを支援していくのか。
【理事者】
STATION Aiによる支援の方向として、大きくビジネスアイデアを磨き上げていくこと、そして事業として成長していくために、いかに多様なステークホルダーを巻き込んでいくのかの二点に注力していく。
まず、スタートアップのビジネスアイデアの磨き上げについては、ベンチャーキャピタルなどでの投資実績、新規事業開発に携わった経歴や起業経験があり、ビジネスアイデアの目利きに実績のある多様な専門家である統括マネジャーがスタートアップに対しメンタリングなど、伴走支援を行う。
また、スタートアップが成長するためには、事業会社、投資家、大学、支援機関など、様々なステークホルダーとのコミュニティーを形成することが重要となってくる。そのため、コミュニティマネジャーと呼ばれるスタッフも常駐して、スタートアップが抱える課題をくみ取りつつコミュニティー形成を支援していく。
以上の取組により、スタートアップの事業規模の拡大、オープンイノベーションの創出、資金調達の支援を行う。
【委員】
最後に要望として、昨年の日本のGDPが半世紀ぶりにドイツに抜かれ、世界4位に転落した。このままいくと、2050年にはインドやインドネシアにも抜かれ、6位になることが予想されている。
その中で、今の日本の経済を見ると、物価高、円安、ゼロ金利、人手不足で、どれを取っても大変な状況である。これから日本が成長し、これらを打開するには、スタートアップの育成による技術革新と人への先行投資しかない。
この点において、経済労働委員会に関係する各部局は、愛知県の成長、発展に極めて重要な役割を果たしていくと思っているので、今後ともしっかり頑張ってもらいたい。
【委員】
今、神野博史委員からスタートアップの質問があった。私も同じように大変な危機感を持っており、3年間、経済労働委員会に所属しているが、愛知県は日本のエンジンであり、愛知県がしっかりしなければ、日本経済は大変な状態になる。
スタートアップは、目的ではなく、あくまで手段であり、これからやるべきことはIoTの推進である。モノづくりをどうやってインターネットにつなげていくかが問題である。そして、モノづくりから出る様々な膨大なデータをAIで分析して、データに基づいた経営を行う、まさにデータドリブンの経営が必要である。今まで特に中小企業は、経験と勘で経営をやっている側面があった。しかし、データに基づく経営を実施していかなければ立ちいかない時代が来ている。
先ほど、GDPにおけるドイツの話が出た。私は7、8年前にドイツへ行ったが、まさにインダストリー4.0ということで、生産性が圧倒的に上がっているのを感じた。日本でも20年以上前にIT基本法ができたが、これが全く受け入れられずに停滞して、デジタル化は2周遅れだと言われている。
そのため、我々が行うべきはIoTであり、その一つのツールとしてスタートアップのアプリやコンテンツを使って生産性を高めることが一番大事だと考える。
先ほどロボットの話も出てきたが、人手不足もあり、次々とイノベーションが起こっているので、現場もロボット化してコンピューターが機械を動かし、バックオフィスに関しても、およそ6割から7割の人員を抱えていると言われるので、その効率化を実施しなければ立ち行かない。究極的には、一番安いものを一番早く、カスタマイズされて個々に合ったサービスや商品をつくっていくことをAIが行うので、第一義的にはIoTを推進し、スタートアップの様々なアプリ、コンテンツを使って生産性を高めることが必要だと思う。
スタートアップについて、発案は10年ほど前だと思うが、数年前から一挙にIoT、DXが話題になり、いよいよ今年10月にSTATION Aiが誕生するわけである。これは世界でも有数な施設だと思うし、少なくとも日本では初めてある。このSTATION Aiに直接携わった柴山政明経済産業推進監が退職すると聞いた。誠に惜しいわけだが、このSTATION Aiはアメリカやシンガポール、中国、フランス、イスラエル等々、世界にネットワークが広がってきた。そのため、外国からスタートアップをどう誘致をするかも一つの大きなポイントになる。
もう一つは、既存の企業とスタートアップで様々な交流があると聞いているが、その交流を深めて、既存の企業、特に中小企業の生産性を高めていくことを行わない限りは、日本の経済は厳しいといわざるを得ない。IoTをどう推進していくか、外国人のスタートアップをどのように誘致するか、既存の企業とスタートアップをどう結びつけていくのか。
【理事者】
STATION Aiに関しては、大きく二つの基本的な考え方を持っている。
一つは、今回、民間資金等の活用による公共施設等の促進に関する法律(PFI法)に基づく公募をかけたときに、公募資料等の中にオンラインとオフラインが融合するニューリアリティー対応型の世界初のイノベーション拠点と書いた。
これはまさに直江弘文委員が日頃から話している、オンラインとオフラインが常に融合する、常にインターネットで結ばれる世界観で拠点を形成した。そのため、通信キャリアのソフトバンクが手を挙げ、連携して事業を進めている。IoTを進めるというよりは、IoTはどの事業の中にも100パーセント入っている前提でビジネスモデルを組み、その組み方も支援することがSTATION Aiの肝になっている。
また、7か国のスタートアップエコシステムの先進地域の大学や支援機関と連携しており、例えばステーションFもその一つだが、そういったところでもスタートアップを育てているので、そういう人たちもSTATION Aiに来てもらう方向で打合せ等を進めている。
海外のスタートアップを誘致しつつ、日本のスタートアップも育成し、そこでIoTを必ず入れたビジネスモデルにしているので、まさにIoTの推進機関という位置づけとなっている。
もう一つの柱がオープンイノベーションの推進である。今回のスタートアップの戦略や、STATION Aiをつくった最大の背景が自動車産業をはじめとするこの地域のMaaS、CASEといった100年に一度の大変革期にある。この地域の産業の半分以上が自動車関連であるため、EV化が進むと、部品3万点のうち1万点がなくなり、早いうちに産業構造転換をしなければならなくなる。
そのため、スタートアップの拠点と打ち出しているが、特にオープンイノベーションの拠点という表現もしている。要するに、スタートアップを育てて産ませること、誘致することと事業会社がオープンイノベーションによって付加価値を創造する。その中にはもちろん中小企業が入っている。したがって、STATION Aiは、既存の事業者、企業の支援の中核機関でもある。オープンイノベーションの推進機関といっているが、まさに施策のターゲットはスタートアップよりもむしろ事業会社だと思っている。今回のSTATION Aiは10月にオープンするが、直江弘文委員から指摘のあった点は最も重視するコンセプトであるので、支援プログラムを着実に形成しているとともに、海外の連携機関との誘致の動きもしっかり準備しているので、ぜひ10月を楽しみにしてほしい。
【委員】
先日、チャットGPTのサム・アルトマンCEOに来てもらい岸田文雄内閣総理大臣と懇談した。そこから一挙にAIに関心を持ったと考えている。一説によると、生成AIが一番進んでいるのはアメリカで、2番目は素地がそろっている日本だといわれており、日本の勝ち筋はここにある。
大企業はお金を持っているので広がっていくが、中小企業にどうこれを結びつけていくかということを研究してもらいたい。
先日、愛知のモノづくりの技術を世界へ発信してもらおうと、あいちビジネスチャンスナビというサイトを作ってもらった。ジェトロとのネットワークもできてきているので、日本の技術はすばらしいことを広めてほしい。また、AI技術を持っている人を日本へ招聘してほしい。それから水素自動車、量子コンピューターについても勝ち筋だと考える。諸外国にIT、デジタルで負けても、その他の分野で勝つチャンスは幾らでもあるので愛知県はもっと頑張って一緒になってやっていかなければならない。
そこで、先日のビジネスチャンスナビセミナーの状況と、これからの構想について伺う。
【理事者】
あいちビジネスチャンスナビという新たなマッチングサイトを立ち上げて、2月26日に、お披露目のセミナーを行った。
背景としては、これまで販路開拓、マッチングについて、自動車、航空機等それぞれの分野で、23の様々な支援事業を行っているため、これを中小企業が自分に合ったものとして見つけるのは大変だったことが挙げられる。
加えて、海外市場をこれから獲得していかなければならないとのことで、サイト上で海外のビジネスパートナーとつながる仕組みは必要であり、公益財団法人あいち産業振興機構のホームページに新たなサイトを立ち上げた。
特徴は二つあり、一つは、キーワードを入れると本県が発表している新たな様々な支援事業が検索できる機能を盛り込んだこと、もう一つは、スマートフォンでも見れるようにしたので、ぜひこれを中小企業に活用してほしい。
当日のセミナーであるが、約80人の参加があった。印象としては、作業着姿で出席していた企業が複数おり、現場から直接来た雰囲気の人が何人もいた。これまでのセミナーと比べて、一つの特徴だった。
国、ジェトロ、独立行政法人中小企業基盤整備機構、公益財団法人あいち産業振興機構と愛知県の五つの団体がタッグを組んで今回立ち上げたので、これからぜひ活用してもらい、新しいビジネスパートナーを見つけてほしい。
【委員】
インド人材のセミナーも参加したが、日本のモノづくりのすり合わせ技術は世界に冠たるものがあり、モノづくりは様々なサービス、医療などあらゆるものにつながる。医工連携、農工連携が普通のことになってきた。ぜひ世界に発信しパートナーを見つけてもらいたい。
そこで大事になるのは人材である。愛知県では約7万人のIT人材が足りないとされており、国では約28万人である。5年後にはさらに倍になり、今から人材育成、教育してもとても間に合わない。そこで、年間にどれくらいのIT人材の育成を目指しているのか。
【理事者】
本県では、デジタル人材育成を推進するために、プログラミングなどのデジタル技術を習得するリスキリングの機会を幅広く提供している。来年度になるが、高等技術専門校で実施する在職者訓練や離職者向けの委託訓練、そして中小企業向けの階層別のデジタル人材育成研修により約6,000人のデジタル人材を育成していく。
【委員】
約6,000人のデジタル人材を育成するとのことだが、一桁違う。そのため、愛知県が自前で人材の育成を行うのもよいが、人材育成のプロの企業はたくさんある。その人たちをうまく使って大量に育成をする仕組みをつくるのが本県の役目である。その意味で、民間企業も国内外にあるので、そのような人たちのノウハウを使い、より多くの人材育成を行うことが必要だと思う。
中小企業の経営者は、経験と勘で経営を行っている側面があり、IT関係の話をしても、なかなか納得してもらえない。そのためまずは、IT関係を推進すると利益が上がることを理解してもらうことが一番大事である。中小企業経営者のセミナー等、先行事例を見に連れていくなど、メリットがあることを理解してもらわないと前に進まない。
もう一つは外国人材について、技術を持った外国人材と一緒になって伴走させれば、それが事務の効率化になり、変革につながっていくと思うため、ぜひ進めてほしい。
また、外国人の高度なIT人材をこれから求めていかなければならないが、その一環で本年1月にICT推進監がインドへ訪問した。その内容と状況を報告してほしい。
【理事者】
まず、経営層の理解について、産業界に対しては、経営層のマインドセットを変革することが大変重要だという認識を持っている。このため、デジタル化、DXに関する認知、理解の不足が現状であるので、これを解消するために経営者向けのセミナーや研修を実施するとともに、商工会議所、商工会の経営指導員を企業の経営層を指導する伝道師として育成する取組を実施している。
また、インド渡航について紹介があったが、セミナーでは、直江弘文委員、神野博史委員にも来てもらい感謝している。外国人材について中心に話したが、現在は何点か仮説を立てて関係の職員と議論している。
まず、スタートアップについて、インドは米中に続き、スタートアップ、ユニコーン企業の数においてイスラエル、英国に迫り、抜く勢いである。日本、愛知県においても、スタートアップに対して高度IT人材を招請する点で、まずは土壌としては早くできると考えている。
また、大企業については、外国人材を招請するのではなくて、日本の通信事業者や、eコマース事業者は、現地に自社の開発のオフショア拠点を設けている。これが、グローバルケイパビリティーセンター、グローバルインハウスセンターという呼ばれ方をしているが、こういった手法についてもジェトロ中心に積極的に情報提供、支援をしてもらっていることもセミナーの中で紹介した。
一方で、中小企業についても、スタートアップや大企業に比べると受入れの難易度は、まだ現状では高いと言わざるを得ないが、一部の中小企業は、JICAの支援、ジェトロの支援を受けて、インド工科大学(IIT)のハイデラバード校から2人採用した実績がある。これは、社内を国際化したいという崇高な理想に基づいて行われており、社内文化を変えていくところまで含めれば、ジェトロによるキャンパスリクルーティングを活用するのも分厚い産業文化のさらなる集積化に向けた愛知県として有効な選択肢になる。
【委員】
インドは人口も多く、年間約300万人のIT人材が大学から出てきており、欧米に流れている。それから、ベトナムも15年前からIT人材の育成について国を挙げてやっており、ブロックチェーン等の新しいデジタル技術を開発している。
ベトナムも人材の招聘に重要な国だということで、インドとベトナムから優秀で高度なIT人材を求めていくことを経済産業局中心に県を挙げて行うべきだと考える。
最後に、経済産業局長から所感を述べてほしい。
【理事者】
先日、中国へ行った際、本当にデジタル化が進んでいると感じた。ほとんど紙幣と硬貨は使わず、全てアリペイで決済がされ、露天商に至ってもQRコードがあり、それをスマートフォンで読み込み、決裁が完結した。車等についても、IoTの話があったが、ものとネットがつながるインターネット・オブ・シングズで、全てがデジタル情報に置き換えられ、それが高度にデータ連携されて世の中が動いていくことで、社会が本当に急速に進んでいる印象を受けている。
愛知県はモノづくり県であり、モノづくりの分野においてもしっかりとデジタル化を進めなくてはならないと県の事業を行っているが、併せて直江弘文委員から指摘のあった外国人材を引っ張って来て、そこを融合させていくことなどの取組をしっかり進め、愛知県が世界に冠たるモノづくり地域であると位置づけるよう、経済産業局中心に、労働局などと連携しながらしっかりと施策を進めていきたい。
【委員】
労働局長からも所感を述べてほしい。
【理事者】
先日、中小企業の社長と話す機会があり、お金と時間がかかるし、大変であるが、IT、デジタル化はやらなければいけないという話があった。ただ、自分はよく分からないから若い人に任せるとのことであった。
確かに経営者自身がそのような意欲、気持ちを持って進められれば、中小企業のIT化、デジタル化も進んでいくと思うので、先進的な中小企業に、インフルエンサーになってもらい、事例を紹介し、成功事例、課題を広めてもらいながら、中小企業のIT化、デジタル化を進めていきたい。
【委員】
問題は、中小企業の経営者がやる気になるかどうかであり、その環境づくりがこれからの仕事ではないかと思うので、これからも引き続き頑張ってもらいたい。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月13日(水) 午後0時57分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
福田喜夫、杉浦哲也 正副委員長
直江弘文、神野博史、高桑敏直、山本浩史、山下智也、今井隆喜、
かじ山義章、鳴海やすひろ、村嶌嘉将、岡 明彦、阿部武史 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、情報通信(ICT)政策推進監、
経済産業局技監、産業部長、中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第5款 経済労働費の内
第1項 経済産業総務費
第2項 商工業費
第3項 労政費
第4項 職業能力開発費
第5項 観光費
第6項 労働委員会費
第3条(債務負担行為)の内
STATION Ai運営事業安定化支援負担
新あいち創造産業立地補助
一般事業資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経営強化資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
経営強化資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
一般事業資金(短期資金)融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
経済環境適応資金融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
あいち産業振興機構設備貸与事業損失補償
あいち産業科学技術総合センター施設設備改修工事
雇用セーフティネット対策訓練業務委託契約
障害者職業訓練業務委託契約
東三河高等技術専門校施設設備改修工事
第 6 号 令和6年度愛知県中小企業設備導入資金特別会計予算
第 18 号 商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例の制定につい
て
第 19 号 愛知県スタートアップ支援拠点条例の制定について
第 43 号 愛知県国際展示場条例の一部改正について
第 57 号 新型コロナウイルス感染症対策中小企業金融支援基金条例の廃
止について
第 65 号 STATION Aiの公共施設等運営権の設定について
第 67 号 STATION Aiの指定管理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第6号、第18号、第19号、第43号、第57号、第65号及び第67
号
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(1件 陳情第91号関係)
3 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 一般質問
5 休 憩(午後2時59分)
6 再 開(午後3時9分)
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
奨学金返還支援策は、他県での事例や実績を調べると、支援金が奨学金返還中の労働者個人に直接支給されていることが多いと分かる。本県の奨学金返還支援は、個人ではなく、中小企業への人材確保支援となっているが、対象となる従業員の要件について、具体的に伺う。
【理事者】
対象となる従業員だが、本年4月以降に雇用され、補助対象となる県内中小企業等に正社員として勤務している者である。対象を幅広く設定するため、年齢制限は設けていない。
なお、補助対象とする中小企業等は、県内に本社または主たる事業所があり、常時雇用する従業員数が300人以下の法人または個人事業主、従業員への奨学金返還支援の社内規程等を整備した上で県へ登録した中小企業等で、社会福祉法人や医療法人なども対象となる。多くの中小企業等に活用してもらえるよう、対象企業の業種の設定などは設けていない。
【委員】
新卒の人だけではなく、年齢が高くても奨学金を返還中の人が支援の対象となっており、中小企業等にも活用できる制度設計になっていることが分かった。
労働力不足に悩む中小企業等の経営者に分かりやすく説明し、新たな人材確保につながるように取り組んでほしい。
次に、中小企業応援障害者雇用奨励金について、4月から民間企業における障害者の法定雇用率が2.3パーセントから2.5パーセントに引き上げられ、その算定対象者に週所定労働時間10時間以上20時間未満の特定短時間労働者が追加され、障害者の雇用拡大を図るとあった。
そこで、中小企業応援障害者雇用奨励金の対象者に特定短時間労働者を追加した理由について伺う。
【理事者】
愛知県中小企業応援障害者雇用奨励金は、初めて障害者を雇い入れた中小企業に対し、最大60万円を支給している。短い時間で障害者を雇用することは、これから障害者雇用を検討する企業にとって、切り出せる業務量が少ない場合でも障害者雇用に取り組みやすくなる。また、体調に不安があり、継続的に長時間働くことのできない障害者の社会参加を促すことにもつながる。
県内の障害者雇用を一層促進するために、週10時間以上20時間未満で働く特定短時間労働者を奨励金の対象に追加し、15万円を支給する。
【委員】
障害者就労の拡大を図る関係者から、精神障害者や重度の肢体不自由な人であっても、長時間は難しいが短時間なら働くことができる人は相当数いると聞いていたので、特定短時間労働者雇用が広がることに期待したい。
愛知県中小企業応援障害者雇用奨励金は障害者雇用の拡大とともに、中小企業の人材確保にもなることから、着実に支給件数が増えるよう取り組んでほしい。
そこで現在、県内の民間企業に雇用されている障害者の数と実雇用率を伺う。また、追加対象となる特定短時間労働者の来年度の件数は、どのくらいを見込んでいるのか。
【理事者】
2023年6月1日現在の愛知県内の民間企業に雇用されている障害者数は、3万9,079人で、実雇用率は2.28パーセントとなっている。
追加対象となる特定短時間労働者の件数は、障害者等を雇用した場合に支給される国のトライアル雇用助成金のうち、障害の特性等により週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く精神・発達障害者を対象とした障害者短時間トライアルコースの愛知県内における令和4年度実績件数を参考にしている。
奨励金の申請は、雇用後6か月を経過した日の翌日から受け付けることとなっているため、来年度は半年分として14件を見込んでいる。
【委員】
これまで障害者を雇用した経験のない中小企業等の課題として考えられるのは、一つ目に、雇用する障害者に対して、適切な仕事を切り出すことができるか、二つ目に、ジョブコーチ等の存在と障害特性を理解したサポートができるか、三つ目に、その上で粘り強い定着支援ができるかが挙げられる。
しかしながら、こういったことが具体的に実施できる中小企業は極めて少ないと思う。そのため、障害者の雇用を検討している中小企業等に対する相談体制や支援体制が事業の正否を決めると思う。このことに関して、本会議でも重要課題として触れられたので、しっかりと取り組んでほしい。
最後に中高年齢者雇用促進対策費についてであるが、この事業も経済社会活動の回復に伴い、人手不足感が高まっているため、中小企業の人材確保に向けた取組の一つに位置づけられている。企業向け高年齢者雇用セミナーと高年齢者向け合同企業説明会は新規事業となっているが、どのようなものか。
【理事者】
本県では、これまでも55歳以上の高年齢者を対象とした就職相談会を開催したが、企業の応募は多いものの、求職者の希望する業種や勤務条件と合わないことなどから就職に結びつかないことが多く、就職件数を増やすことが課題と考えている。
そこで、来年度は高年齢者を受け入れる企業の業種を広げるため、企業に対し、高年齢者を雇用するメリットをはじめ、高年齢者に合った仕事の切り出し方や、求人・待遇等を見直し、高年齢者にとって魅力的な求人募集を行うことのできるノウハウを学べる、企業向けセミナーを名古屋市と三河地域で合計2回開催し、幅広い業種の企業に参加を呼びかけていく。このセミナーでは、参加企業からの個別相談にも対応する。
また、ハローワークと共催し、幅広い業種の企業や高年齢者のニーズに合った働き方を取り入れている企業と高年齢者とのマッチングを図る合同企業説明会を名古屋市と三河地域で開催する予定である。
【委員】
中小企業等が障害者や高齢者を雇用して、就労定着をさせるための第一歩となるものが、障害者や高齢者一人一人の特性や体力に対応する仕事を充てることである。そのため、雇用の入り口は、雇う側の仕事の切り出しであると考える。多くの中小企業は障害者や高齢者に合った仕事を切り出した経験がない。労働力の新たな確保に挑む中小企業のために、まずは仕事の切り出しを支援する体制を拡充させてほしい。
あいち障害者雇用総合サポートデスクをはじめ、就労相談や助言を行う機関や人の充実を図り、中小企業等が障害者や高齢者などの新たな労働力を確保する道筋を着実に開くことができるよう要望する。
【委員】
商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例をつくるに当たり、昨年の6月以降、県政世論調査や地域の産業労働に関する機関、団体等の会議を利用して、地域貢献活動に関する意見をもらった後、懇話会を開催し、条例の骨格を検討していくとのことだった。その後、パブリックコメントを実施し、昨年12月には第3回懇話会を開催し、最終的な条例の案を固めていくとのことだったが、昨年の6月以降実施された、第2回、第3回の懇話会ではどんな議論が行われてきたのか。
【理事者】
昨年10月に開催した第2回愛知県商業地域貢献活動懇話会では、条例骨子案について委員から意見をもらった。本年2月に開催した第3回懇話会では、主に条例制定後の取組、施策展開等について意見をもらった。
第2回懇話会では、商業者間の連携を促進するに当たって、商店街振興組合や商工会などの地域商業関係団体には一定の役割があるとの意見や、地域の多様な主体が連携する仕組みを具体的に考え、モデル事業をつくっていく必要があるなどの意見が出た。第3回懇話会では、今後市町村に求められる役割が重要になってくる一方、県は市町村の実情を把握しながら進めていく必要がある。条例や施策もまずは知ってもらうことが重要であるため、新たに行う表彰事業に合わせて条例も取り上げ、PRすべきなどの意見が出た。
本会議に提出している条例案は、これらの意見を踏まえたものであり、商業者等が地域社会全体と一体となって地域貢献活動に取り組むことを促進する内容となっている。
【委員】
今後のスケジュールと、条例策定後に県はどのように取り組んでいくのか。また、今後この条例をどのように周知していくのか。
【理事者】
今後のスケジュールとして、条例の総則と基本的施策、いわゆる理念の部分は本年4月1日に施行する。条例のうち、一定の大規模小売店舗を設置する者による手続部分は、事業者等への周知期間が必要となるため、3か月後の本年7月1日の施行を予定している。
次に、条例制定後の取組は、条例の理念の具現化を促進するため、地域ニーズを踏まえた継続性のある優れた地域貢献活動の事例を表彰する制度を創設する。これにより、商店街の社会的役割を広く周知するとともに、好事例の横展開を図っていく。
また、商店街の地域貢献活動を支援するため、げんき商店街推進事業費補助金や商業振興事業費補助金において、商店街と大型店が協同して行う地域貢献活動に対し重点的に支援する。
次に、条例の周知は、リーフレットやウェブページへの掲載及び各種商業イベントなどを通じ周知を図る。
また、新たに実施する表彰式においてもマスコミを通じて、条例の理念について取り上げてもらい、周知を図れるよう取組を進めていく。
併せて、現在のガイドラインの対象となっている店舗面積3,000平方メートル以上の大型店舗98店舗のうち、現行の地域貢献計画書を提出している店舗は93店舗で、提出率94.9パーセントである。これらのうち、あいち商店街活性化プラン2025の成果達成目標としている地域づくりの取組への協力の実施率は、目標の90パーセントに対し、実施数87店舗で実施率93.5パーセントと、目標を達成できている。
今後は、大型店の設置者に対して、本条例の趣旨をしっかり周知し、計画書の提出率や地域づくりの取組への協力の実施率をさらに高めたい。
県としては、本条例の制定を機に、地域の多様な主体と連携した商業者等による地域貢献活動の活性化に取り組んでいく。
【委員】
これまでのガイドラインでも大規模小売店舗立地法に基づく3,000平方メートル以上の商業施設では、地域貢献計画が努力義務になっており、その計画も本県のホームページでも公表されている。
多くの店舗で地域からの要請があれば、町内会や商業団体への加入を検討する、防災に関する取組も要請があれば協力すると書かれており、報告書の内容はよくできている。大規模小売店舗も地域に貢献する姿勢が見えていると感じる一方で、そうした取組を地域の人々が知らないことがもったいない。
また、地域からは、逆に大規模小売店舗が地域貢献活動をしてくれるのであれば、高齢者が集える場所をつくってほしい、市街地に住む高齢者の買物にも利用できる市営バスを市街地経由で店舗の入り口付近までつけてほしい、車椅子を使用する人からは、駐車場の乗り降りの際に乗降できるスペースが少なく、店舗側にスペースを確保してほしいなどの様々な声を聞く。しかし、それが店舗側に伝えられないなどする。
そのようなことがこの条例をつくることで、地域の声がしっかりと店舗にも伝わり、本当の意味での地域貢献活動につながるように期待する。
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会活用誘客促進事業及び外国人旅行者観光コンテンツ造成支援事業について、具体的にどういうことを行うのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会活用誘客促進事業費は、約3年間の事業計画を立てており、今年度は、東アジアの旅行会社に行き、愛知県の魅力をPRした。
併せて、4つの観光施設で9か所の多言語化を実施した。来年度は、今年度訪問した旅行会社等を愛知県に招請し、県内の魅力を発信していきたい。観光施設の説明文の翻訳も今年と同様に行いたい。
外国人旅行者観光コンテンツ造成支援事業は、新規事業であり、旅行者に県内で消費してもらうため、県内の体験型旅行商品を売っていくものである。富裕層に向けたクオリティーの高い旅行商品を造成し、販売していくものと、もう一つの対象として、一般のオンライントラベルエージェント(OTA)を使う人が、旅の途中で気軽に買えるような旅行商品の造成、販売に向け、現在計画を立てている。
【委員】
2年半後にアジア・アジアパラ競技大会が開かれる中で、これは時宜を得た政策だと思う。アジア・アジアパラ競技大会を見たついでに旅行する、または旅行のついでにアジア・アジアパラ競技大会を見るようにするには、コンテンツづくりが重要である。大阪・関西万博では政策として観光誘客を打ち出しているが、その内容は既に調査しているのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会は、現在、未定の部分も多いが、庁内で協力して商品を造成し、売れる商品をつくって県内を周遊してもらいたい。
【委員】
2年ほど前、経済アナリストのデービッド・アトキンソン氏に、日本は観光立国になれると講演で聞いた。そこでは、日本人の考える観光と、外国人の日本に対する観光の見方に少しずれがあるとの話があった。アジアの国々や欧米の国々の日本観光に対する観光の見方を十分把握した上でコンテンツをつくらなければ、ミスマッチが生まれる。ぜひ深掘りして取り組んでもらいたい。
また、愛知県だけではなく、中部圏を一円とする昇龍道をもう一度よみがえらせるべきだと思う。中部圏全体を見ると多くの観光資源がある。
加えて、高級ホテルを10億円出して誘致しているが、ホテルインディゴという高級ホテルが既に犬山市に進出している。インターコンチネンタルホテルズグループで、会員が1億5,000万人もおり、ここを使わない手はないと思うので検討してほしい。
《一般質問》
【委員】
あいち民主県議団では、令和6年度施策及び当初予算に対する提言において、新型コロナウイルス感染症を含めた感染症全体への危機管理体制の強化、推進を行うべきであるとした。
経済産業局では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、本県の営業時間短縮要請や酒類の提供制限に協力した飲食店等の事業者に対して協力金を支給した。実績としては、令和2年11月末からを対象とする第1弾から令和4年3月までの第14弾まで、延べで約29万の事業者に対して約4,500億円を支給したと聞いている。
この協力金は、感染拡大防止に協力した事業者の経営の継続性を保つために重要な役割を果たしたと認識する一方、不正受給の事例があった。
確かに新型コロナウイルス感染症に関しては、感染症法での扱いがいわゆる2類感染症相当から5類感染症になり、当面、協力金等の措置が行われることはないとは思うが、今後、新たな感染症が発生しないとも限らず、そのときに模倣犯等を出さないためにも不正受給に対しては厳正な対応が求められる。
そこで、協力金の不正受給の数と内容及びそれに対する県の対応状況を聞く。
【理事者】
愛知県での協力金の不正受給は、2件あった。
1件目は、時短要請時間を超えて営業していたにもかかわらず、虚偽の申請により協力金926万円を受給した。県警察が協力金をだまし取った詐欺の容疑で店の経営者らを逮捕したことにより判明した。
2件目は、実質の経営者が暴力団であることを隠して協力金250万円を受給したものである。国の家賃支援給付金をだまし取って逮捕された者が県の協力金の支給も受けているとの情報が県警察からあり、判明した。
2件とも即座に交付決定を取り消し、返還請求を行った。1件目は、協力金926万円と加算金170万円が既に返還されている。2件目は、協力金250万円が返還済みで、加算金及び延滞金約95万円について、現在、返還請求を行っている。
引き続き、県警察など関係機関と連携を取り、不正受給が判明したケースには厳正に対処していく。
【委員】
能登半島地震が起こり、2か月半が経過しようとしている。発災地では、なりわいの継続が大きな課題になっており、その象徴的な事例として報道されているのが伝統工芸産業である輪島塗である。これまでも全国の伝統工芸産業は、後継者不足が課題になっているが、能登地方では地震による作業所の倒壊等で事業継続が困難になったことで高齢の輪島塗職人の気力が萎え、廃業を考えざるを得ない状況が散見されるとの報道もある。その一方で、後継者のいる工房や若手職人は、近隣の市町などに移動して、なりわいとしての事業継続に挑戦しているとの報道もある。
輪島塗の事例は、大地震という想定外の出来事によって起こったものとはいえ、伝統工芸産業の後継者問題が抜き差しならない状況であることを目に見える形で突きつけた。南海トラフ地震で大きな被害が予想されている本県の伝統産業の振興においても、後継者問題こそが最重要になると痛感した。
さて、2021年に愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)で開催された第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会(KOUGEI EXPO IN AICHI)では、全国の伝統工芸が一堂に会し、その魅力を県民に広く発信する場となった。若い職人がクローズアップされるイベントにもなっており、伝統工芸品の未来は決して暗いものではないと感じた。そこには、名古屋市緑区で有松・鳴海絞に関わる中堅、若手の職人も意気軒高に参加しており、頼もしく思った。
そこで、2021年にAichi Sky Expoで開催されたKOUGEI EXPO IN AICHIを契機として、伝統工芸産業振興に向けてどのような事業を実施し、その実績はどうであったか。
【理事者】
本県では、2021年に開催されたKOUGEI EXPO IN AICHIを契機に、そのレガシーとしてあいち伝統的工芸品産業チャレンジ事業を2021年度から実施している。
チャレンジ事業の一つである、海外バイヤー商談会事業では、海外市場に対する伝統的工芸品産地企業の新たな販路開拓を促進するため、オンラインにより海外バイヤーとの商談支援を行っている。
具体的には、伝統的工芸品産地の事業者を対象に、販路開拓セミナーを開催するとともに商談会への参加を促した結果、本年度において販路開拓セミナーには産地企業から10人の参加があり、1月に開催したオンライン商談会では、産地企業4社と北米のバイヤー5社をマッチングし、現在も商談が継続中である。
なお、昨年度については、同様の事業を行い、7件の商談が成立しかかっている。
【委員】
有松・鳴海絞の産地においても販路開拓が着実に進んでいるところは後継者も育っている。ヨーロッパで広く事業展開している事業者、ユニクロ、ビームスなど、知名度の高いメーカーとのコラボ商品を生み出している事業者などが、絞りと染めに係る高い技術を洋服やインテリア製品等に転用するなど、和装以外の分野で伝統工芸技術をブラッシュアップした新商品を生み出している。
昨今の伝統工芸産業を取り巻く厳しい経営環境下にあっても、生き残りをかけて前進している事業所には若手の職人もいる。そして、その中からは独立して新たに事業を始める人も生まれている。
そこで、2018年度から実施をしている伝統的工芸品ブラッシュアップ事業の内容と、実施から6年が経過する中で、これまでの実績について伺う。
【理事者】
伝統的工芸品ブラッシュアップ事業は、伝統的工芸品産地企業にマーケティングの専門家を派遣し、現代のライフスタイルに即した新商品開発や販路開拓等の取組を支援することで、産地の未来を担う企業への成長を促し、伝統的工芸品産業の持続的発展につなげるものである。
本事業は、これまで延べ14の会社及びグループに対し支援を行い、試作品の作成を通して商品化に至ったものや、本事業で立ち上げたECサイトを活用して、新商品販売や情報発信を行っている事例があり、伝統的工芸品産地企業の取組支援につながっている。
具体的には、国に指定された県内15品目のうち、有松・鳴海絞をはじめ、9品目が事業に参画しており、本事業で開発した商品は、百貨店等の催事においてメイン商材として扱われるなどの注目を集めている。
【委員】
ブラッシュアップ事業には一定の成果があり、来年度以降の事業展開に期待を寄せたい。
本日は、伝統的工芸品に係る若い職人の商品、作品のうち、私が日常身につけるなど使っているものがあるので、紹介する。これらはブラッシュアップ事業に参加した事業者が作った商品である。回覧してよいか。
【委員長】
許可する。
【委員】
本日、資料を入れてきたトートバッグである。これは、日本を代表する黒染めである名古屋黒紋付染の技術を活用して、刺し子織の三河木綿と柔道着のコラボ商品で、大変丈夫かつおしゃれなものである。皮革に有松・鳴海絞の技術を活用したキーホルダーをつけている。
もう一つは豊橋筆のチャームである。昨今、豊橋筆で注目されているのは、家族の一員であるペットの毛でつくられたペットチャームが注目をされており、本年1月9日にはNHKの全国中継のあさイチのいまオシ!LIVEでこの工房が紹介された。
最後に、尾張仏壇の伝統工芸士が、装飾金具を製作する際の彫金技術を活用してつくられた男性向けアクセサリーのピンバッジ、ピンズであり、名古屋城の金シャチをあしらったものでる。
こうした商品や作品を手にしてみると、現代社会の流行トレンドと伝統的工芸品は、伝統に裏づけられながらも、格式や不思議な魅力を感じる。
あいち伝統的工芸品産業チャレンジ事業や伝統的工芸品ブラッシュアップ事業の実績を踏まえて、今後、新たな取組は実施していくのか。
【理事者】
新たな取組として、本年度から伝統的技術、技法等を伝承する後継者の確保が産地組合の大きな課題となっている現状の下、後継者の確保を支援し、伝統的工芸品産業の維持、振興を図るため、伝統的工芸品産地組合、各市町村が連携して、インターンシップを活用した後継者確保支援事業を実施している。
本年度は、瀬戸染付焼、岡崎石工品の産地企業2社においてインターンシップを実施した。全国から97人の応募をもらい、書類選考や面談を経て12人の参加があり、うち3人が採用につながった。
引き続き、全国のモノづくり系大学、専門学校への告知及びSNS等を利用した周知等により広く呼びかけを行い、将来に向けた後継者の発展に努めていく。
来年度においても新商品開発や販路開拓、後継者確保支援と、三つの側面から総合的に伝統的工芸品産地企業等を支援する。
【委員】
国に指定されている本県の伝統的工芸品15品目のうち、いまだ6品目は伝統的工芸品ブラッシュアップ事業に参加していないことに一抹の不安を覚える。伝統的工芸品ブラッシュアップ事業に挑戦しようとする意欲溢れる若い人がいなければ、その産地の育成はどうなるのかと危惧している。
本県で大災害等が起こった際の事業継続を考えると、肝の冷える思いである。南海トラフ地震等の災害によって、伝統産業を喪失させてはいけないと思う。まずは、後継者確保支援が最も重要だが、後継者が育つためには、新商品の開発や販路開拓によって、利益、利潤が得られる事業構造に改善していくことが不可欠である。
新商品開発や販路開拓、後継者確保支援という三つの側面からこれを総合的に各地域の伝統的工芸品産業企業を粘り強く支援していくことを要望する。
次に、ユニバーサルツーリズムの取組について、平成28年2月定例議会の一般質問及び令和4年12月定例議会の一般質問で、観光立県を目指す本県において、ユニバーサルツーリズムを推進する取組を進めるべきと要望した。
一方、令和3年度の行財政改革・地方創生調査特別委員会における参考人のアジア・アジアパラ競技大会に関する言及の中で、スポーツを観光コンテンツに位置づける視点から、ユニバーサルツーリズム、アクセシブルツーリズムを進めるべきとの指摘があった。
アクセシブルツーリズムとは、障害者や高齢者など、移動やコミュニケーションにおける困難さに直面する人々のニーズに応えながら、誰もが旅を楽しめることを目指す取組のことで、ユニバーサルツーリズムと同義の言葉である。
2026年のアジア・アジアパラ競技大会の開催に向けて、ユニバーサルツーリズムの取組を加速する時期になっている。
そこで、あいち観光戦略2021-2023の計画期間において、ユニバーサルツーリズムに対してどのような取組を行ってきたのか。
【理事者】
ユニバーサルツーリズムは、全ての人が楽しめるよう創られた旅行であり、旅行者の言語、年齢やジェンダー、障害の有無などに関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行であると認識している。
今年度までの3か年の戦略では、主に多言語対応や高齢者や障害のある人に対するバリアフリー化の促進を位置づけている。
具体的な取組の内容として、まず、多言語対応については、多言語コールセンターにより、訪日外国人をはじめ、県内の宿泊施設や観光施設などに対して、無料で電話通訳や翻訳サービスなどを提供しているほか、観光施設費等補助金により市町村等が設置する公共的観光施設の多言語表記を伴う案内看板の設置等を支援している。
次に、バリアフリー化については、観光施設費等補助金により、多目的トイレや手すりの設置費などを支援しているほか、県の観光ウェブサイト、Aichi Nowにより、高齢者や障害のある人々などが必要とする県内観光施設のバリアフリー情報を発信している。
【委員】
令和4年12月定例議会の一般質問に対して、有識者ヒアリングや市町村等へのアンケートなどの結果を踏まえて、アジア・アジアパラ競技大会などの開催に向け、ユニバーサルツーリズムの必要な取組の検討を進めるとのことだった。それはどのような状況になっているのか。
【理事者】
有識者ヒアリングや市町村等へのアンケートは、2022年12月に実施した。観光関係に携わる有識者に対するヒアリングでは、ユニバーサルツーリズムはこの時代、絶対に必要であり、誰もが安全・安心に旅行できる状態はツーリズムの基本であるといった意見や、宿泊施設などハード施設の改修は補助金などのきっかけがないと進まないため、アジア・アジアパラ競技大会の開催を契機に検討するとよいなどの意見が出た。
県内全市町村に実施したアンケートでは、県に期待する施策として、ハード面では施設のバリアフリー化や多言語案内看板等の整備に対する財政支援を求める回答が多くあった。また、ソフト面では多言語コールセンターの設置など、多言語対応の支援を求める回答が多くあった。
こうした結果を踏まえ、新たな戦略においても引き続きユニバーサルツーリズムを施策として位置づけた。
【委員】
観光振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、魅力ある活力に満ちた地域社会の実現及び県民生活の向上に寄与することにより、訪れる人・旅行者、住む人・県民、働く人・観光関連事業者等が満たされる状態、いわゆるウェルビーイングを実現することを目的に、あいち観光戦略2024-2026が発表された。この戦略中の施策の展開分野に、受入環境の整備が掲げられている。
そこで、来年度からのあいち観光戦略2024-2026では、ユニバーサルツーリズム推進に向けてどのような取組を行うのか。
【理事者】
来年度から2026年度までの3年間を計画期間とする新たな戦略においても、多言語対応やバリアフリー化の支援、バリアフリー情報の発信などに取り組む。具体的には、引き続き多言語コールセンターや観光施設費等補助金による支援や、ウェブサイトによるバリアフリー情報の発信などの取組を実施していく。
また、アジア・アジアパラ競技大会に向けて、ネイティブライター等の専門人材を外国人が多く立ち寄る観光施設に派遣し、外国人に分かりやすい多言語解説の作成を支援していく。
このほか、スポーツ局の来年度予算に計上されている宿泊施設バリアフリー整備推進事業費補助金について、観光コンベンション局もしっかりと連携していく。
これらによりユニバーサルツーリズムの取組を加速させていく。
【委員】
愛知県の宿泊施設バリアフリー設備推進事業費補助金について、スポーツ局と連携をするとのことだが、観光コンベンション局は具体的にはどのような取組を行っていくのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会を契機として、県内宿泊施設のバリアフリー化を着実に進めていくためには、スポーツ局が実施する新たな補助制度をより多くの宿泊施設に知ってもらい、活用していくことが必要である。
観光コンベンション局としては、多くの宿泊施設が加盟している業界団体を通じて、県内のホテル、旅館に対しこの補助制度を広く周知するとともに、これを契機としたバリアフリー化改修を進めていけるよう働きかける。
また、バリアフリー化改修を行った宿泊施設については、県の観光ウェブサイトなどを活用して施設のバリアフリー対応状況を広く発信していく。
【委員】
ユニバーサルツーリズムに関係するこれまでの質問で、ハードとソフトの両面から受入環境整備をする必要性を訴えてきた。コロナ禍によってダメージを受けた観光関連事業者向けに今すべき行政の支援は、まずは事業者の経営を安定させることである。経営の安定がなければ、いわゆるユニバーサルツーリズムに資するハード面の充実はあり得ないので、まずは経営安定に向けての着実な取組を要望する。
その上で、今できることとして、ユニバーサルツーリズムに資するソフト面での強化も考えてほしい。アジア・アジアパラ競技大会の開催に向けて、本県のボランティア力の充実は大いに期待できる。観光ボランティアの研修の場などで、ユニバーサルデザインの観点から障害者や高齢旅行者へのサポートに関する学びなどを検討してほしい。ユニバーサルツーリズムの進展に向けたソフト面での取組を改めて要望する。
【委員】
中小企業に対するロボット導入の支援についてであるが、中小企業はほぼ全ての産業において人手不足に直面をしており、今後も労働者人口が減少する中で、より深刻な課題となっている。
人手不足の有効な処方箋の一つがロボットによる自動化、省人化であるが、中小企業におけるロボット導入の状況について、現在どのようになっているのか。
【理事者】
県内中小企業のロボット導入状況について、本県では毎年度、中小企業約100社を対象に中小・小規模企業訪問ヒアリングを実施しており、その中でロボットの導入検討状況を尋ねている。その結果によると、既に導入済みとした企業の割合は、直近3回の調査で、ほぼ15パーセント程度にとどまっており、導入があまり進んでいない。
製造業に限って見た場合は、日本ロボット工業会の調査による2022年のロボットの国内出荷実績では、電気機械関連産業向けのロボットが約2万1,000台の出荷実績に対して、食品関連産業向けは900台弱にとどまっている。事業者の数自体では、電気機械関連産業よりも食品関連産業のほうが多いが、業種によって導入状況に大きな差が生じている。経済産業省においても食品製造業をはじめとするいわゆる三品産業へのロボット導入が進まないことを課題にしている。
また、商業、サービス業においても飲食店舗での配膳や商業施設での清掃など、ロボットの活用は一部の用途に限られているのが実情である。
市場の拡大が期待される荷物配送や案内、警備用途、さらには従事者不足と負担軽減が課題となっている介護、福祉分野など、現時点でロボットの導入がほとんど進んでいない状況である。
【委員】
ロボット導入が進まない理由は、費用対効果が不透明であることや、技術面での課題があることも考えられる。これらの障壁をクリアして導入を後押ししていくことが必要になると思うが、県としてこうした課題に対して、来年度どのように取り組むのか。
【理事者】
ロボットの導入状況で、中小・小規模企業訪問ヒアリングにおける直近の調査結果によると、ロボット導入における課題として、導入費やメンテナンス費の負担が大きいというものに続き、費用対効果が予測しにくいことや工程の見直し、導入予想の検討が難しいという課題が多く寄せられている。
これは、導入するロボットの購入費の負担の大きさだけでなく、費用対効果の不透明さや導入計画の検討の大変さ、技術面の不安といったものがロボット導入に踏み切れない大きな要因となっていることを示している。
ロボット導入に当たってのロボット機器等の購入費は、現在、国の補助金などが活用できるが、費用対効果調査や導入検討作業、技術検証などの、導入に先立つ事前検証に必要な費用は支援する補助金がない状態である。
そこで本県としては、来年度、新あいち創造研究開発補助金の1メニューとして、新たにロボット未活用領域導入検証補助金を創設し、事前検証に要する費用の一部を補助することとした。
この補助金では、ロボット導入余地の大きい四つの分野である製造・物流分野、医療・介護分野、業務用サービスロボット活用分野、空モビリティ活用分野における、ロボットの活用が進んでいない用途の事前検証業務を補助の対象とする。
例えば、食品製造業における産業用ロボットの活用や介護施設での移動支援、排せつ支援ロボットの活用、さらには物流業務における自動配送ロボットやドローンの活用などであり、広く活用できるものと考えている。
この補助制度を通じ、個々の中小企業におけるロボットの導入を後押しするとともに、補助事例をモデルケースとして広く横展開を図ることで、県内の中小企業全体へロボット活用が促進されるよう取り組んでいく。
【委員】
新たにロボット未活用領域導入検証補助金を創設して、事前検証に要する費用の一部を補助するという新しいメニューがつくられるため、要望になるが、ぜひ積極的に、情報発信をするようお願いする。
続いて、新あいち創造研究開発補助金について、大村秀章知事の就任後に県民税減税に代えて産業空洞化対策に取り組むとして、企業立地の補助金とセットで始まったと記憶している。どうしても企業立地の補助金に目がいってしまいがちだが、モノづくり愛知においては、研究開発が大変重要だと思う。
平成23年は、東日本大震災の後で、日本経済は六重苦などと言われていた。当時の新聞記事などを読むと、円高、経済連携協定の遅れ、法人税高、労働市場の硬直性、環境規制、電力不足、コスト高とあった。特に円高については、当時は1ドル75円台まで円高が進んでいたので、産業空洞化は待ったなしの課題であった。今のように中国などへの工場進出もさほど警戒感がなかったので、多くの企業に海外の拠点を拡大する動きがあった。
そうした動きの中で企業の立地と研究開発を支える補助金がスタートして10年ほど取組が進められてきた。最近は、円高というより、円安で資源やエネルギーの調達コストが上がり、カーボンニュートラルへの対応など、我が国や愛知県における産業、そして企業の研究開発を取り巻く状況もかなり変化してきた。
そこで、この補助金であるが、これまでの実績はどのような状況か。また、産業や社会を取り巻く状況が変化する中で、製品化などについてどのような成果が上がっているのか。
【理事者】
新あいち創造研究開発補助金の実績と成果についてであるが、2011年に議論があり、2012年から愛知県における付加価値の高いモノづくりを維持、拡大していくため、次世代自動車や、環境エネルギーといった今後の成長が見込まれる分野などで、企業等が公設の試験研究機関や大学等と連携して行う研究開発、あるいは実証実験を支援していくものである。
実績は、本年度までの採択ベースの累計になるが、905件であり、金額は約90.5億円であり、1件当たり約1,000万円の補助金を出している。件数で見ると8割が中小企業で、きめ細やかな支援ができている。
特に2018年度からは、この補助金を受け取ったことがない中小企業を対象にトライアル型として優先的に採択する取組を行っており、それだけでも123件の採択となっている。
補助金の成果は、補助金をもらった企業に、その後5年間フォローアップの調査をしている。昨年の夏に、2018年度から2022年度までの371件について聞いたところ、商品化まで至ったのが80件、試作品の完成まで至ったものが199件で、着実に成果が上がっている。
2021年度、補助したところで成果が上がった報告があったものとしては、具体的には、弥富市の高尾工業株式会社が、3Dプリンターで金属の部品をつくる研究開発を行ったところ、既に200社以上の引き合いがあった。カーボンニュートラル関係では、蒲郡市の株式会社三浦組紐工業が、昨年の夏、富山県で洋上風力の設置があり、クレーンの上にひもをぶら下げてものを吊り下げるスリングに採用されている。
【委員】
研究、開発の成果という点では、昨年10月にあいちモノづくりエキスポ2023という展示会を開催されたと聞いている。来年度の予算案にも新あいち創造研究開発成果展示会の開催費が計上されており、新型コロナも5類感染症となってイベントも以前のようなにぎわいが戻ってきているように感じる。
そのような中、本日から3日間、常滑市のAichi Sky Expoでスマートマニュファクチュアリングサミット・バイ・グローバルインダストリーも開催され、こうした展示会を通じて県内企業がビジネスチャンスをつかんでいくのは極めて有意義なことである。
そこで、新あいち創造研究開発補助金の成果を披露する展示会であるが、昨年の開催実績はどうであったのか。また、来年度はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
まず、昨年行われたあいちモノづくりエキスポ2023では、昨年の10月の2日間、常滑市のAichi Sky Expoを会場とし、この補助金の成果をさらなる事業化、商品化の推進や、販路・取引拡大につなげる機会にするために一堂に集めた展示会を開催したところ、企業114社、そして大学、研究機関等で22団体が参加し、特に展示会に初めて出る企業が、6割と非常に多い中で、来場者が5,000人を超え、商談も4,000件を超えており、盛況であったと考えている。開催後に行った出展者のアンケートでも、次回があればぜひ出展したいとの声が多く寄せられた。
そして、来年度は6月に開催予定のアクシアエキスポ(AXIA EXPO)2024でイベントの中で新あいち創造研究開発成果展示会エリアという形で出展するよう準備を進めている。
そのアクシアエキスポでは、次世代エネルギーや通信、DXなど、スマートシティ関連の展示会になるが、異なった企業と隣り合わせで出展することによって、出展企業同士の交流ができ、新たな出会い、商談、研究開発成果、活用先の気づき等の相乗効果も期待できると考える。
既に100コマの募集をかけたが、ほぼ埋まっていると聞いており、非常に好調な滑り出しである。ぜひとも展示会を、研究開発がビジネスにつながっていく場として、今後活用していきたい。
【委員】
私たちが暮らす社会も産業も今後は、非常に先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態になってきている。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性と、様々な言い方があるが、英語の頭文字を取ってブーカ(VUCA)と言われることもあるが、積極果敢に研究開発に取り組んでイノベーションや新たな分野の開拓をしていかなければ、企業は収益や雇用を確保していくことが難しい時代といえる。
こうした企業の研究開発を支えることは、愛知県の活力を維持し、さらなる成長を目指すには欠かせないので、今後もしっかりと取り組んでいくことを要望する。
【委員】
現在、名古屋市昭和区に本県が整備を進めているSTATION Aiであるが、いよいよ本年10月にオープンする。そして、開業5年で利用者数も国内外の会社1,000社が集結するという、日本最大のスタートアップの中核支援拠点になる。開業に先立って、運営しているPRE-STATION Aiのメンバーは、現在357社と聞いている。
このSTATION Aiのメンバーとなる基準がはっきりしない、分からないという人も多いので、ここで改めてSTATION Aiのメンバーはどのように選ぶのか伺う。
【理事者】
メンバーの審査基準は、新しい技術やビジネスモデルに基づいて事業を展開し、新市場の開拓により高成長を目指すスタートアップを採択するという考え方から、各スタートアップが取り組む事業や市場性、それから経営者やメンバー構成などの審査項目を設定している。
この審査項目に基づき、メンバーの支援に当たる複数の統括マネジャーが審査し、総合的に判断している。
【委員】
統括マネジャーが選ぶとのことだが、選ばれたスタートアップは、ほかの施設に入居する場合と比べてどんなメリットがあるのか。
【理事者】
STATION Aiは、スタートアップのみならず、既存の事業会社をパートナー企業として誘致しており、ワンルーフの下でスタートアップと事業会社がビジネスを展開していく。
こうした環境の下で、STATION Aiではスタートアップと事業会社との協業を強力に推進し、オープンイノベーションにより新たな価値創造を図っていく。
このオープンイノベーションは、この地域のモノづくりをはじめとする分厚い産業集積があるからこそ実現するものであり、これがSTATION Aiの他の施設に対する圧倒的な優位性を持つ特徴となる。
【委員】
オープンイノベーション、情報の共有化が大きなメリットになることがわかった。STATION Aiのメンバーとなったスタートアップをこの支援拠点で育て、支援していくことに関連して、本県は来年度の新規事業として起業を目指す者及び創業間もないスタートアップを対象としたコンテストを開催するとのことであるが、その内容はどのようなものか。
【理事者】
初期段階のスタートアップを支援するため、対象者の異なる2種類のコンテストを実施する。
一つ目は、ビジネスアイデアを持ち、起業を志す者を対象として、起業支援一体型の起業家ビジネスプランコンテストを開催する。具体的には、1次審査に合格した20社程度の参加者を対象に、メンタリングやワークショップなどのプログラムを通して参加者のビジネスアイデアの深掘り、仮説検証を行い、初期の事業モデルの構築を目指す。その後、2次審査を実施し、当審査で選抜した10社程度を対象としたビジネスプランコンテストを開催する。賞金として1位には300万円、2位には200万円、3位には100万円を起業に必要となる資金として提供する。
二つ目のコンテストであるが、創業初期でサービスやプロダクトを開発前のスタートアップを対象に、賞金総額1,000万円のピッチコンテストを年に3回開催する。極めて優れたビジネスモデルを有し、成長見込みの高いスタートアップに対して、賞金として事業推進に必要となる資金を提供する。
【委員】
ただいまの答弁では、二つのコンテストがあり、一つは300万円、200万円、100万円の賞金、もう一つは賞金1,000万円で年3回開催されるということで、非常に大きな資金面を支援していくと理解した。スタートアップは、考え、アイデアはあっても資金がないことが一般的であり、資金調達ができないとなかなか事業が開花されない側面がある。そこでスタートアップの資金調達について、コンテスト以外にどのような支援があるのか。
【理事者】
リソースに乏しいスタートアップにとって、特に資金の確保が最重要課題の一つとなる。そこで、STATION Aiプロジェクトとしては、出資、融資、補助金等、多様な資金調達メニューを提供している。
まず、出資については、STATION Aiのメンバー向けのSTATION Ai Central Japan 1号ファンドを設置している。現時点で14件の投資実績がある。
次に、融資については、県として制度融資メニューに、県のスタートアップ支援に関するプログラムに参加したスタートアップに対して金利を優遇する制度を用意している。
出資、融資に関しては、これらにとどまらず、ベンチャーキャピタルや銀行等をSTATION Aiへ数多く誘引することにより、スタートアップとこうした機関を結びつけ、出資や融資につながる体制を構築している。
最後に、補助金等では、起業前や起業間もないスタートアップは実績がなく、出資、融資を有利な条件で進めることが困難なことから、県として起業や研究開発実証実験に係る経費に対する補助や、新規事業のビジネスプランコンテストの賞金による資金提供も行い、円滑な事業進捗を手厚くバックアップしていく。
【委員】
資金調達には様々方法があること分かったが、以前にPRE-STATION Aiを視察したときに、現地の統括マネジャーに対応してもらい、すばらしい起業に関する指導者だと感じた。これからビジネスアイデアを磨き上げていくわけだが、そのようなことに関して、統括マネジャーの存在は、スタートアップ支援の要であり、キーマンだと思う。
STATION Aiのオープンした後は、統括マネジャーがスタートアップを支援していくのか、また、どのような人がどのような形でスタートアップのビジネスアイデアの磨き上げを支援していくのか。
【理事者】
STATION Aiによる支援の方向として、大きくビジネスアイデアを磨き上げていくこと、そして事業として成長していくために、いかに多様なステークホルダーを巻き込んでいくのかの二点に注力していく。
まず、スタートアップのビジネスアイデアの磨き上げについては、ベンチャーキャピタルなどでの投資実績、新規事業開発に携わった経歴や起業経験があり、ビジネスアイデアの目利きに実績のある多様な専門家である統括マネジャーがスタートアップに対しメンタリングなど、伴走支援を行う。
また、スタートアップが成長するためには、事業会社、投資家、大学、支援機関など、様々なステークホルダーとのコミュニティーを形成することが重要となってくる。そのため、コミュニティマネジャーと呼ばれるスタッフも常駐して、スタートアップが抱える課題をくみ取りつつコミュニティー形成を支援していく。
以上の取組により、スタートアップの事業規模の拡大、オープンイノベーションの創出、資金調達の支援を行う。
【委員】
最後に要望として、昨年の日本のGDPが半世紀ぶりにドイツに抜かれ、世界4位に転落した。このままいくと、2050年にはインドやインドネシアにも抜かれ、6位になることが予想されている。
その中で、今の日本の経済を見ると、物価高、円安、ゼロ金利、人手不足で、どれを取っても大変な状況である。これから日本が成長し、これらを打開するには、スタートアップの育成による技術革新と人への先行投資しかない。
この点において、経済労働委員会に関係する各部局は、愛知県の成長、発展に極めて重要な役割を果たしていくと思っているので、今後ともしっかり頑張ってもらいたい。
【委員】
今、神野博史委員からスタートアップの質問があった。私も同じように大変な危機感を持っており、3年間、経済労働委員会に所属しているが、愛知県は日本のエンジンであり、愛知県がしっかりしなければ、日本経済は大変な状態になる。
スタートアップは、目的ではなく、あくまで手段であり、これからやるべきことはIoTの推進である。モノづくりをどうやってインターネットにつなげていくかが問題である。そして、モノづくりから出る様々な膨大なデータをAIで分析して、データに基づいた経営を行う、まさにデータドリブンの経営が必要である。今まで特に中小企業は、経験と勘で経営をやっている側面があった。しかし、データに基づく経営を実施していかなければ立ちいかない時代が来ている。
先ほど、GDPにおけるドイツの話が出た。私は7、8年前にドイツへ行ったが、まさにインダストリー4.0ということで、生産性が圧倒的に上がっているのを感じた。日本でも20年以上前にIT基本法ができたが、これが全く受け入れられずに停滞して、デジタル化は2周遅れだと言われている。
そのため、我々が行うべきはIoTであり、その一つのツールとしてスタートアップのアプリやコンテンツを使って生産性を高めることが一番大事だと考える。
先ほどロボットの話も出てきたが、人手不足もあり、次々とイノベーションが起こっているので、現場もロボット化してコンピューターが機械を動かし、バックオフィスに関しても、およそ6割から7割の人員を抱えていると言われるので、その効率化を実施しなければ立ち行かない。究極的には、一番安いものを一番早く、カスタマイズされて個々に合ったサービスや商品をつくっていくことをAIが行うので、第一義的にはIoTを推進し、スタートアップの様々なアプリ、コンテンツを使って生産性を高めることが必要だと思う。
スタートアップについて、発案は10年ほど前だと思うが、数年前から一挙にIoT、DXが話題になり、いよいよ今年10月にSTATION Aiが誕生するわけである。これは世界でも有数な施設だと思うし、少なくとも日本では初めてある。このSTATION Aiに直接携わった柴山政明経済産業推進監が退職すると聞いた。誠に惜しいわけだが、このSTATION Aiはアメリカやシンガポール、中国、フランス、イスラエル等々、世界にネットワークが広がってきた。そのため、外国からスタートアップをどう誘致をするかも一つの大きなポイントになる。
もう一つは、既存の企業とスタートアップで様々な交流があると聞いているが、その交流を深めて、既存の企業、特に中小企業の生産性を高めていくことを行わない限りは、日本の経済は厳しいといわざるを得ない。IoTをどう推進していくか、外国人のスタートアップをどのように誘致するか、既存の企業とスタートアップをどう結びつけていくのか。
【理事者】
STATION Aiに関しては、大きく二つの基本的な考え方を持っている。
一つは、今回、民間資金等の活用による公共施設等の促進に関する法律(PFI法)に基づく公募をかけたときに、公募資料等の中にオンラインとオフラインが融合するニューリアリティー対応型の世界初のイノベーション拠点と書いた。
これはまさに直江弘文委員が日頃から話している、オンラインとオフラインが常に融合する、常にインターネットで結ばれる世界観で拠点を形成した。そのため、通信キャリアのソフトバンクが手を挙げ、連携して事業を進めている。IoTを進めるというよりは、IoTはどの事業の中にも100パーセント入っている前提でビジネスモデルを組み、その組み方も支援することがSTATION Aiの肝になっている。
また、7か国のスタートアップエコシステムの先進地域の大学や支援機関と連携しており、例えばステーションFもその一つだが、そういったところでもスタートアップを育てているので、そういう人たちもSTATION Aiに来てもらう方向で打合せ等を進めている。
海外のスタートアップを誘致しつつ、日本のスタートアップも育成し、そこでIoTを必ず入れたビジネスモデルにしているので、まさにIoTの推進機関という位置づけとなっている。
もう一つの柱がオープンイノベーションの推進である。今回のスタートアップの戦略や、STATION Aiをつくった最大の背景が自動車産業をはじめとするこの地域のMaaS、CASEといった100年に一度の大変革期にある。この地域の産業の半分以上が自動車関連であるため、EV化が進むと、部品3万点のうち1万点がなくなり、早いうちに産業構造転換をしなければならなくなる。
そのため、スタートアップの拠点と打ち出しているが、特にオープンイノベーションの拠点という表現もしている。要するに、スタートアップを育てて産ませること、誘致することと事業会社がオープンイノベーションによって付加価値を創造する。その中にはもちろん中小企業が入っている。したがって、STATION Aiは、既存の事業者、企業の支援の中核機関でもある。オープンイノベーションの推進機関といっているが、まさに施策のターゲットはスタートアップよりもむしろ事業会社だと思っている。今回のSTATION Aiは10月にオープンするが、直江弘文委員から指摘のあった点は最も重視するコンセプトであるので、支援プログラムを着実に形成しているとともに、海外の連携機関との誘致の動きもしっかり準備しているので、ぜひ10月を楽しみにしてほしい。
【委員】
先日、チャットGPTのサム・アルトマンCEOに来てもらい岸田文雄内閣総理大臣と懇談した。そこから一挙にAIに関心を持ったと考えている。一説によると、生成AIが一番進んでいるのはアメリカで、2番目は素地がそろっている日本だといわれており、日本の勝ち筋はここにある。
大企業はお金を持っているので広がっていくが、中小企業にどうこれを結びつけていくかということを研究してもらいたい。
先日、愛知のモノづくりの技術を世界へ発信してもらおうと、あいちビジネスチャンスナビというサイトを作ってもらった。ジェトロとのネットワークもできてきているので、日本の技術はすばらしいことを広めてほしい。また、AI技術を持っている人を日本へ招聘してほしい。それから水素自動車、量子コンピューターについても勝ち筋だと考える。諸外国にIT、デジタルで負けても、その他の分野で勝つチャンスは幾らでもあるので愛知県はもっと頑張って一緒になってやっていかなければならない。
そこで、先日のビジネスチャンスナビセミナーの状況と、これからの構想について伺う。
【理事者】
あいちビジネスチャンスナビという新たなマッチングサイトを立ち上げて、2月26日に、お披露目のセミナーを行った。
背景としては、これまで販路開拓、マッチングについて、自動車、航空機等それぞれの分野で、23の様々な支援事業を行っているため、これを中小企業が自分に合ったものとして見つけるのは大変だったことが挙げられる。
加えて、海外市場をこれから獲得していかなければならないとのことで、サイト上で海外のビジネスパートナーとつながる仕組みは必要であり、公益財団法人あいち産業振興機構のホームページに新たなサイトを立ち上げた。
特徴は二つあり、一つは、キーワードを入れると本県が発表している新たな様々な支援事業が検索できる機能を盛り込んだこと、もう一つは、スマートフォンでも見れるようにしたので、ぜひこれを中小企業に活用してほしい。
当日のセミナーであるが、約80人の参加があった。印象としては、作業着姿で出席していた企業が複数おり、現場から直接来た雰囲気の人が何人もいた。これまでのセミナーと比べて、一つの特徴だった。
国、ジェトロ、独立行政法人中小企業基盤整備機構、公益財団法人あいち産業振興機構と愛知県の五つの団体がタッグを組んで今回立ち上げたので、これからぜひ活用してもらい、新しいビジネスパートナーを見つけてほしい。
【委員】
インド人材のセミナーも参加したが、日本のモノづくりのすり合わせ技術は世界に冠たるものがあり、モノづくりは様々なサービス、医療などあらゆるものにつながる。医工連携、農工連携が普通のことになってきた。ぜひ世界に発信しパートナーを見つけてもらいたい。
そこで大事になるのは人材である。愛知県では約7万人のIT人材が足りないとされており、国では約28万人である。5年後にはさらに倍になり、今から人材育成、教育してもとても間に合わない。そこで、年間にどれくらいのIT人材の育成を目指しているのか。
【理事者】
本県では、デジタル人材育成を推進するために、プログラミングなどのデジタル技術を習得するリスキリングの機会を幅広く提供している。来年度になるが、高等技術専門校で実施する在職者訓練や離職者向けの委託訓練、そして中小企業向けの階層別のデジタル人材育成研修により約6,000人のデジタル人材を育成していく。
【委員】
約6,000人のデジタル人材を育成するとのことだが、一桁違う。そのため、愛知県が自前で人材の育成を行うのもよいが、人材育成のプロの企業はたくさんある。その人たちをうまく使って大量に育成をする仕組みをつくるのが本県の役目である。その意味で、民間企業も国内外にあるので、そのような人たちのノウハウを使い、より多くの人材育成を行うことが必要だと思う。
中小企業の経営者は、経験と勘で経営を行っている側面があり、IT関係の話をしても、なかなか納得してもらえない。そのためまずは、IT関係を推進すると利益が上がることを理解してもらうことが一番大事である。中小企業経営者のセミナー等、先行事例を見に連れていくなど、メリットがあることを理解してもらわないと前に進まない。
もう一つは外国人材について、技術を持った外国人材と一緒になって伴走させれば、それが事務の効率化になり、変革につながっていくと思うため、ぜひ進めてほしい。
また、外国人の高度なIT人材をこれから求めていかなければならないが、その一環で本年1月にICT推進監がインドへ訪問した。その内容と状況を報告してほしい。
【理事者】
まず、経営層の理解について、産業界に対しては、経営層のマインドセットを変革することが大変重要だという認識を持っている。このため、デジタル化、DXに関する認知、理解の不足が現状であるので、これを解消するために経営者向けのセミナーや研修を実施するとともに、商工会議所、商工会の経営指導員を企業の経営層を指導する伝道師として育成する取組を実施している。
また、インド渡航について紹介があったが、セミナーでは、直江弘文委員、神野博史委員にも来てもらい感謝している。外国人材について中心に話したが、現在は何点か仮説を立てて関係の職員と議論している。
まず、スタートアップについて、インドは米中に続き、スタートアップ、ユニコーン企業の数においてイスラエル、英国に迫り、抜く勢いである。日本、愛知県においても、スタートアップに対して高度IT人材を招請する点で、まずは土壌としては早くできると考えている。
また、大企業については、外国人材を招請するのではなくて、日本の通信事業者や、eコマース事業者は、現地に自社の開発のオフショア拠点を設けている。これが、グローバルケイパビリティーセンター、グローバルインハウスセンターという呼ばれ方をしているが、こういった手法についてもジェトロ中心に積極的に情報提供、支援をしてもらっていることもセミナーの中で紹介した。
一方で、中小企業についても、スタートアップや大企業に比べると受入れの難易度は、まだ現状では高いと言わざるを得ないが、一部の中小企業は、JICAの支援、ジェトロの支援を受けて、インド工科大学(IIT)のハイデラバード校から2人採用した実績がある。これは、社内を国際化したいという崇高な理想に基づいて行われており、社内文化を変えていくところまで含めれば、ジェトロによるキャンパスリクルーティングを活用するのも分厚い産業文化のさらなる集積化に向けた愛知県として有効な選択肢になる。
【委員】
インドは人口も多く、年間約300万人のIT人材が大学から出てきており、欧米に流れている。それから、ベトナムも15年前からIT人材の育成について国を挙げてやっており、ブロックチェーン等の新しいデジタル技術を開発している。
ベトナムも人材の招聘に重要な国だということで、インドとベトナムから優秀で高度なIT人材を求めていくことを経済産業局中心に県を挙げて行うべきだと考える。
最後に、経済産業局長から所感を述べてほしい。
【理事者】
先日、中国へ行った際、本当にデジタル化が進んでいると感じた。ほとんど紙幣と硬貨は使わず、全てアリペイで決済がされ、露天商に至ってもQRコードがあり、それをスマートフォンで読み込み、決裁が完結した。車等についても、IoTの話があったが、ものとネットがつながるインターネット・オブ・シングズで、全てがデジタル情報に置き換えられ、それが高度にデータ連携されて世の中が動いていくことで、社会が本当に急速に進んでいる印象を受けている。
愛知県はモノづくり県であり、モノづくりの分野においてもしっかりとデジタル化を進めなくてはならないと県の事業を行っているが、併せて直江弘文委員から指摘のあった外国人材を引っ張って来て、そこを融合させていくことなどの取組をしっかり進め、愛知県が世界に冠たるモノづくり地域であると位置づけるよう、経済産業局中心に、労働局などと連携しながらしっかりと施策を進めていきたい。
【委員】
労働局長からも所感を述べてほしい。
【理事者】
先日、中小企業の社長と話す機会があり、お金と時間がかかるし、大変であるが、IT、デジタル化はやらなければいけないという話があった。ただ、自分はよく分からないから若い人に任せるとのことであった。
確かに経営者自身がそのような意欲、気持ちを持って進められれば、中小企業のIT化、デジタル化も進んでいくと思うので、先進的な中小企業に、インフルエンサーになってもらい、事例を紹介し、成功事例、課題を広めてもらいながら、中小企業のIT化、デジタル化を進めていきたい。
【委員】
問題は、中小企業の経営者がやる気になるかどうかであり、その環境づくりがこれからの仕事ではないかと思うので、これからも引き続き頑張ってもらいたい。