委員会情報
委員会審査状況
県民環境委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年7月21日(金) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
西野 宏 参考人(株式会社メトリクスワークコンサルタンツ 代表取締役)
県民文化局長、県民生活部長、関係各課長等
<議 題>
行政における統計の役割について
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
本日は、行政における統計の役割について、特に政策立案におけるデータとエビデンスの利活用についてお話をさせていただければと思います。
まず、簡単に、私の自己紹介をさせていただければと思います。株式会社メトリクスワークコンサルタンツの代表を務めています。
弊社は、公共政策領域において政策立案、政策評価、調査研究、研修及びEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシーメイキング)の実施支援等々を行っているコンサルティング会社です。
現在の私の関わっている主な仕事ですが、御紹介ありましたとおり、中央省庁及び地方自治体におけるEBPMの実施支援ということで、具体的なところとしては、本日、お話をするようなデータ、エビデンスを用いた政策立案に関する技術的な支援、また、データ収集、データ分析等々を行った上で、事業の効果検証を行うといった業務であるとか、それに関する研修、セミナーの実施等を行っています。
主なクライアントとしましては、中央省庁で言いますと、総務省であるとか、国交省、文科省、環境省と主に仕事をさせていただいています。
地方自治体に関しては、都道府県で言うと、福島県、岡山県、広島県、栃木県、愛媛県など、研修となってくるともっと広くて、沖縄県、千葉県、静岡県といったところでも仕事をさせていただいています。
基礎自治体になると、千葉県の柏市、神奈川県の横浜市、長崎県の佐世保市といったところと御一緒しており、こうしたデータ、エビデンスの活用をEBPMについての仕事をさせていただいています。
では、本日の内容としましては、ここに書かせていただいている3点についてお話をさせていただければと思います。
まず、政策立案とはというところで、政策立案の概要に関して簡単にお話をさせていただいた上で、そうした政策立案において、データ、エビデンスというものがどのように活用することができるか、私が関わった自治体等の事例も踏まえて、御紹介等をさせていただければと思っています。
最後に、そうしたデータ、エビデンス等を活用したよりよい政策立案のため、議会の皆様、議員の皆様がどのような役割を果たすことができるのか、お伝えをさせていただければと思っています。
それでは、早速、最初の政策立案の概要に入りたいと思っています。
まず、唐突なところになりますが、地方政府、これは議会も行政も含めてと思いますけれども、期待されていることは何かというところで、これは様々な考え方があると思いますが、やはり大きな役割の一つとしては、地域の問題解決にあるのではないかと考えることができると思います。
問題というところは基本的な考え方として、社会における理想的な状態というものと現状とのギャップという形で捉えられ、理想的にあるべき姿があった上で、そこに至らない現状があって、その間にあるギャップというものが、すなわち、社会が望ましくない状況にある、そこに問題が生じていると考えることができるわけです。
そうした社会における問題を解決するために政策が基本的にあって、それが公共的な問題の解決を図るための方策として、政策というものを捉えることができると思っています。
よく政策、施策、事務事業という形で階層的に考えることがありますが、ここはそうした全体を含めて、政策という一言で書かせていただいています。
では、こうした形で政策を問題解決の方策というふうに捉えた上で、政策立案、すなわち問題の解決をどのような手順で実施していくかを非常に単純化した図で示したのがこの図になっています。
大きく問題を特定するフェーズがあり、その上で、なぜその問題が起きているのかという原因を考えるフェーズがあり、その上で、その原因のためにどのような解決策を考案するかといった流れで、政策立案が行われていくことになります。
もう少し具体的に見ていきますと、最初の問題の特定というところでは、どのようなイシューに焦点を当てるかを明確にしていく。その上で、先ほど、あるべき姿と現状とのギャップという話をしましたけれども、理想的な状況を明確にし、現状を的確に把握する。その上で、その間にあるギャップをきちんと把握するのが最初のステップになる。さらに、そうした問題、ギャップがどこで誰に発生しているのかを絞り込んで、特定をしていくことが、まず最初に必要になってきます。
その上で、そのところにおいて現状が理想から乖離している、すなわち、そこにギャップ問題が生じている理由を検討するのが、二つ目のステップになってきます。なぜという問いを繰り返ししていくことによって、原因を掘り下げていくというステップになってきます。
その上で、三つ目のところになりますが、解決策の考案というところです。そのような形で特定された問題、そしてその問題の原因が特定されたら、その問題の原因を解消するために、社会にどのような財、サービスを提供すべきか、どのような仕組み、制度をつくるべきかを検討するフェーズが出てきます。その上で、費用、効果、実行可能性等々を踏まえて、実施すべき打ち手、すなわち政策を検討するのが、基本的な政策立案の流れになると思っています。
では、次のポイントに行きます。
こうした一般的な政策立案という手順を、質を高める、そしてよりよい政策を立案していくためには何が必要かというところですけれども、本日、お話をさせていただくデータとエビデンスが出てくると考えることができると思います。
では、データの活用になってきますが、特にデータの活用というのが有意義なポイントとしては、最初の問題の特定というフェーズになります。
きちんとデータを活用することで、あるべき姿と現状を正確に把握することができるので、そこにある問題の大きさを明確にすることができるところになってきます。その上で、きちんとデータを用いて細かく分析をしていくことによって、特に問題が深刻な要素を正確に把握することができ、その結果、適切なターゲティングの選定につなげていくことができていくことになります。
この辺の話を弊社が実際に扱った事例を含めて、具体例として説明をさせていただきたいと思っています。
この事例として取り上げたいのは、交通事故対策です。
ここの画像に映しているのは、先月、北海道であったトラックと高速バスが正面衝突をした事故で、5人が亡くなるという非常に大きなニュースになったことは皆さんも記憶に新しいと思いますが、北海道の事例を扱うわけではないですが、こういうようなものがありますというところで、こうした非常にショッキングな、センセーショナルな事故が起きてくると、こうしたトラックの運転手に対する検査を強化しようとか、いろいろな規制を強化しようという話が当然沸き上がってくると思うんですけれども、その前にやはりきちんと一歩立ち止まって、まずデータを見ていきましょう。交通事故対策を考える上で、個別の事例、エピソードに引っ張られるのではなく、きちんとまずはデータを見ましょうということが重要になってくるところが一つあります。
これは某県における交通事故による死者のデータをグラフ化したものです。これは恐らく各県、同じだと思いますが、警察のほうでどのような事故が起こっているかは、事故の統計データとして収集されていると思いますけれども、そういうデータを見ていくと、当然、自動車同士の、自動車乗車中の死者もそれなりにいることが分かる一方で、特に、やはり問題が重要なところが歩行中です。交通事故死の半数が歩行中の事故によるものだという現状がきちんと明らかになってくるわけです。
さらに、そこを、日本全体を比べる、またはほかの国等々と比べてみると、日本全体としても歩行者の死者の割合というのは35パーセントということになっていますが、先ほどの県は50パーセントを超えていたわけです。そうすると、非常にその県における問題が大きいということが明確に見てとることができるわけです。
さらに、今、長期的には欧米の15パーセント程度を目指すことをその県としては目的としていますけれども、そうすると、現状と目標の間にかなり大きなギャップが生じているということがきちんと明確になってきます。
さらに、そこの自治体では詳細にデータを持って細かく見ていって、分析を進めています。なお、これは我々が技術的な支援をさせていただいている一方で、具体的にこの辺のデータを集計して分析をしているのは、県の職員が自らやっている例になるんですけれども。
そうした歩行中の事故がどのようなところで起きているのかを詳細に分析をしていくことをしています。歩行中の事故、これは複数年度で112件ありますが、そのうち70パーセントが道路の横断中です。さらに、その道路の横断中はどこで起きているのかというと、横断歩道で起きていることが明らかになっています。
さらに、横断歩道での事故をさらに細かく分解していくと、信号機のある交差点における右折事故というところ、そこにかなりの問題が集中していることが、こうしたデータから明らかになっていくことになります。
このような形できちんとデータに基づいて問題の特定をしていくことで、統計データを活用して見ていくことで、特に問題が深刻な箇所が的確に特定できることになるわけです。このデータ分析の結果、歩行者が関わる横断歩道における右折時の事故が、この県における死亡事故のかなりの割合を占めていたことが明確になったということです。そこに焦点を当てた対策を考えることで、問題解決に直結するような取組の検討が可能になっていることが実際に行われています。
仮にこうした検討が全然されないと、これはいろいろな自治体を見ていると本当によくありますが、問題の所在が曖昧なまま、何かしらの交通安全対策をしなければいけないということで、これまでやっていた活動であるとか、このぐらいの予算があるからこのぐらいのことができるのではないかといった形で、何となく政策の計画実施がされてしまっているというのが正直な印象を受けます。
そのため、従来どおり、一般的な啓発キャンペーンをしましょうとか、交通安全のイベントを開きましょうということになってしまいがちですが、きちんとここに示したような形でデータを見て、細かな分析をしていくと、より具体的にやるべき取組、特に重要である取組がおのずと明らかになっていくことが見てとれると思います。
こうしたことをきちんとしていけば、対策の優先順位を見誤ってしまうことも避けることができるわけです。
このケースは非常にやっていることは単純です。特に何か難しい統計分析を行っているとか、何か統計ソフトを使わないとできないような分析ではなくて、ただ単にもう警察に蓄積されているデータを細かく見ていくことで、実際にこの職員の方はエクセルを使っていろいろなグラフを作るとか、いろいろなクロス表を描くことで分析して、特にここに問題が生じているというところの把握をされており、そこに対して、どういう取組がいいんだろうといったことを現在検討している状況です。
そのため、こういうデータに基づく問題の特定は、それほど高い専門性が必要とされることではないですが、なかなか、こういう地道な作業はされていないというのが現状かなと思いますので、こうしたところが一つ統計データを活用することにおいては、重要なポイントになってくると思っています。
次に、エビデンスの活用のお話をさせていただきたいと思います。
エビデンスの活用というのは、最後の解決案の考案に有用になってきまして、エビデンスを活用することによって問題を解決することのできる可能性の高い取組を選択することができるところにあります。
ここで1点留意していただきたいところは、エビデンスという言葉をここでは非常に限定的な意味で使っています。ここではエビデンスという言葉を下に書いていますが、ある事業とかある取組が効果を生むかどうかという因果関係を検証した結果という意味で使っています。ある取組をすると、それがどのような効果を生むかという情報というところです。
近年、国内でいろいろEBPMという言葉が非常に盛んに使われていますけれども、その中で、先ほどお話をした基本的なデータも含めて、エビデンスというようなことで呼んでいるケースが多々あると思うんですが、そうしたいわゆる一般的なデータ、現状を把握するようなこのデータと、ある取組の効果を示す情報というエビデンスとは少し質の違うものになるので、ここではあえてその二つの言葉を分けて説明をしています。
このエビデンスの活用がどのようなことなのかについて、こちらも具体例を用いながら、お話をさせていただければと思います。
一つ目の例ですが、これは生活困窮者自立支援事業の例です。
ここに示しているグラフはある県におけるA市、B市、X市における生活困窮者自立支援事業の結果、パフォーマンスに関するグラフになっています。これを見ると明らかなとおり、X市では非常にパフォーマンスがよい。自立支援事業なので、自分で就労してくれる人が増えることが事業の目的ですけれども、A市、B市ではその割合が非常に少ないのにもかかわらず、X市では対象者の半数近くが就労するという非常に高いパフォーマンスを発揮している状況です。
では、なぜこのような大きな違いが生じているのかですが、それがエビデンスというところになります。
X市で行われた取組は、個別就労支援プログラムという新たに開発された就労支援モデルに基づく設計がされていたものでした。就労支援といっても、そのやり方には多分いろいろあって、そのうちの一つがこの新しい個別就労支援プログラムなんですが、このモデルは厳密な方法論に基づくデータ分析によって、従来、一般的に行われていた就労支援プログラムよりも効果が大きいことが実証されていたものになります。すなわち、それは既にその取組が有効であるというエビデンスがあった取組になるわけです。
下に描かれているグラフは、個別就労支援プログラムを実際に分析した研究調査の結果になるんですが、黒いグラフが個別就労支援プログラム、赤いグラフが従来の取組ですけれども、それぞれ、この横にあるのは、たくさんの検証が行われ、たくさん研究がされたというものでが、どの研究結果を見ても黒のグラフのほうが高いということで、このプログラムは非常に効果を生むということが、かなり厳密な方法論によって明確になっていたということです。
したがって、こうした既に有効であることが分かる取組に基づいて、就労支援プログラムを実施したということが、X市における高いパフォーマンスの原因だったことが言えるわけです。
このような形で、既に効果があることが実証されているような取組、すなわち、エビデンスに裏打ちされた取組ということができると思いますけれども、それを選択して実施していくことで、問題の解決につながる可能性を高めることができるということになるわけです。
既にもう効果があると分かっている取組であれば、当然、それをやることによって効果を生む可能性は高まることになるので、そうしたエビデンスを参照して政策を立案していきましょうというのが、本来的な意味でのエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングという、EBPMの考え方の根幹になってくるわけです。
こうした考え方に基づいて、世界的に既存のエビデンス、既に効果があるというふうに分かっている取組をきちんとデータベース化し、それを政策立案者が参照できるようにしていきましょうという取組が広く進んでいます。
特にそうした取組が進んでいるのがイギリスですが、What Works Centreというものがありまして、for何々ということで、for医療とか、for教育とか、医療、教育、刑事、司法など、分野ごとに既に実施されている事業に関する既存のエビデンスを整理して、それを提供するようなデータベースの作成を行っています。
例えば、教育分野のエビデンスデータベースになると、縦にいろいろな取組というのが並んでいますが、この取組は効果が高いですというのが、この1や4で書かれていて、オレンジになっているものは効果はありますと、特にオレンジが濃いものは効果が大きいですと、さらに、それに対してどのくらいのコストがかかりますということを一覧化しているものです。
そうすると、同じような問題に直面している政策立案者が過去のエビデンスを参照して、自分のところで何をやればいいか検討することができる形になっているわけです。
アメリカでも同じような形で、そういったものをデータベース化する取組が進んでいます。
日本国内でも近年、EBPMデータベースということで、これは実は、民間の会社であるサイバーエージェントが音頭、イニシアチブを取って、まとめていますが、様々な研究結果等を踏まえて、いろいろな取組がどのくらい効果がありますかとか、どのくらいの確かさでそういう効果が確かめられていますといったようなものを一覧化していく取組が始められています。
これは一民間企業による取組ですが、今年から総務省や、経済産業省の組織の一つである経済産業研究所(RIETI)という研究所があるんですけれども、そういう公的機関においても既存のエビデンス、世の中で、もう既にそれが有効であることが分かっている取組をきちんとデータベース化していって、個々の行政職員がそうしたデータベースを参照しながら、自分たちの政策立案を行っていくことができるような取組が進められています。
今年から始められたものになるので、弊社もそうした取組に一部関わらせていただいていますけれども、そういった取組が国内でもかなり進んでいる状況になっています。
そのため、このような形で既存のエビデンスをきちんと参照して、好ましい結果につながる可能性の高い最善の選択をしていこうというところに、EBPMの核心があるということになります。
実際に事業をやっていく中でそうした既存の情報はある一方で、行政が扱う課題というのは本当に、たくさんある中で、目の前で実施しなければいけない、目の前で行わなければいけない意思決定において、使えるエビデンスがないということもかなり多くあるのが現状と思っています。
そうした場合には、既存のエビデンスを使うのではなく、自分たちでデータを集め、分析をし、エビデンスを作り出す。そして、その結果を基に意思決定を行っていくことも重要になってきます。
そうした事例として、一つ別の事例を挙げさせていただきます。
これはある市において、どこの自治体もやっていると思いますが、がん検診の受診率を高める取組ですけれども、このケースでは大腸がん検診の受診率を高めることが重要な課題になっていまして、そのために検査キットを送る。そして、はがきによって受診をしてくださいといった受診の勧奨を行っていたんですけれども、受診率が非常に伸び悩んでいるという現状がありました。より効果的に受診につなげるためにはどのように呼びかければいいか悩んでいた現状があります。
非常にスペシフィックな問題ということもあって、どういう呼びかけをすればいいのか既存の情報は特に見つからなかったということで、自らエビデンスを作るための検証をモデル事業という形で行うことをしています。
ここではランダム化比較試験と呼ばれる一番厳密に事業の因果関係を検証できるような方法があるんですけれども、そうしたものを用いて、複数の呼びかけのメッセージのうち、どれが一番よいかを検証するということをやっています。
具体的には、こうした二つのパターンのチラシを作って、中に書かれているメッセージを変えることをしています。
このモデル事業の中では、このチラシ、はがきを送る対象者を二つに分けて、一方には、Aパターンのチラシ、はがきを送ります。残りのもう一方には、Bパターンのはがきを送ります。
その結果、市の制度を使って検診を受けたかどうかは、市のほうで情報として、データとして入手できるので、そこの間の受診率を比較したということになります。
そうすると、Aパターンのお知らせをもらった人は受診率が22パーセントぐらいでしたと、Bパターンのお知らせをもらった人は約30パーセント近くの人が受診をしましたということで、検証の結果、B案のほうが明らかに7ポイント以上受診率を高めることが実証され、そうしたエビデンスがこのモデル事業を通じて得られたわけです。
エビデンスに基づいて、A市においてはB案を採用していくという判断をして、その後はモデル事業は取って、Bパターンにおけるがん検診の推奨を市全体に展開をしていく意思決定をしたことです。
したがって、ここでも誰が検診を受けたかは、県とか市のほうで情報を持っているということで、そうしたデータは市の中に蓄積されているので、最初のAパターンとBパターンを作って、それぞれ割り振るところまでやれば、あとはもう特別なことをしないでも、事業の効果検証ができるということになるわけです。
このような形で既存の統計データを活用してどういう取組が効くのかを検証して、それを本格的に展開していこうという形での政策立案をしているのがこの例になってくるわけです。
いわゆるエビデンスに基づく政策立案とはこのような考え方でして、政策立案の際に既存もしくは自前で作った新規のエビデンスを参照していき、効果を生む、すなわち問題を解決する可能性の高い政策を選択していくということに今あるということになるわけです。
こうした検討が、されていかないとどうなってしまうのかというと、まずは、問題解決に至らない取組を選択してしまうリスクがあります。
当然、何らかの問題を解決したいという気持ちに基づいて政策はされるわけですが、それが必ずしも問題解決に至るかというと、それはまた別の話になってくるので、なるべく有効であるエビデンスに基づいた取組のほうが、やはり問題解決に至る確率は上がっていくところになります。
さらに言うと、善意、もちろん問題を解決したいという気持ちのもとにいろいろな取組はされるわけですが、場合によっては負の影響を社会にもたらす取組を実施してしまう、そうした可能性を拭い去れないところがあります。
この点についても、幾つか事例を御紹介させていただきたいと思います。
これは日本の事例ではないですが、スケアード・ストレイトという取組ですけれども、非行少年、非行を働いた子供たちに刑務所の見学をさせることで更生を促すという取組がアメリカで広く実施されました。
非行で捕まった子供たちに対して訪問を義務づけることで、刑務所に行って実際に受刑者と話をしてもらって、刑務所に入ってしまうとこういうことになるんですよみたいな話をしてもらうとか、刑務所の厳しい環境の生活を見てもらうことによって、そうしたところに入らなくても済むようになることで更生を促すことができると考えられていて、非常にアメリカで大きな反響を呼んだ取組になります。
それがドキュメンタリー番組とかにもなっていて、それがこの画像です。そうした影響もあって広くアメリカで実施されて、具体的にそうした取組を法制化する州も幾つかありました。
他方、そうした取組について、しかるべき方法でそうした取組が本当に子供の非行を減少させるかを検証した結果、効果がないどころか、負の影響のほうが大きいことが明らかになったんです。むしろ、そういう訪問をさせると、子供たちがそういうところに影響を受けることもあって、非行がより増えてしまう結果が複数の研究で立証されています。
その結果、かなり広くアメリカで法制化までして実施された取組だったんですけれど、非行対策の見直しで、そうした取組を再検討する動きになったという事例になります。効果がなかっただけでなく、負の効果があったということも当然あり得るということです。
二つ目の事例ですが、これもまた交通事故の話ですが、交通事故の減少を目的として、道路沿いに注意喚起をするようなメッセージを掲示する取組が実施されたケースです。
例えば、ここではA県と書いてありますが、そのエリアにおける今年の交通事故者数が何人ですみたいなことを道路脇に、いろいろところに、こういうプレートというか、電光掲示板を置いて、見てもらうことによって、この県では、こんなに事故が起きているのかということで、ドライバーに慎重な運転をしてもらうことを目的とした取組だったんですが、これについてもやはりきちんとした効果検証をした結果、掲示をすることが、むしろ、より多くの交通事故を招いてしまう結果になったというものです。
そうしたメッセージを読むことで慎重になってほしいという意図があった一方で、そうした掲示に目を引かれてしまうことにより、ドライバーの運転への注意がそがれてしまうことで、それがより多くの交通事故を生んでしまう結果になったというものです。
このような形で、当然ながら、問題を解決したい意図に基づいて様々な政策は実施されるのですが、その中でも全て問題の解決に至るとは限らない、場合によってはここに挙げた二つの事例のように、世の中にマイナスの効果をもたらしてしまう可能性も当然あり得るわけなので、そうしたことも念頭に置いて、きちんと可能な限りエビデンスに基づいた事業を選択していくということが重要になってきます。
この辺りがいわゆるEBPMが重視されていく背景といいますか、根拠になってくるわけです。
では、こうしたデータ、エビデンスを使った政策立案が重要というお話をさせていただきましたが、最後に、そうしたデータ、エビデンスの活用を通じて、よりよい政策立案を行っていくというところにおいて、議会、そして議員がどのような役割を果たせるのかというところで、少しお話をさせていただければと思っています。
まず、最初のポイントとしては、議会の役割は非常に大きいですというお話です。
近年、日本国内でEBPMブームと言ってもよいほど、EBPMという言葉があちこちで聞かれるようになったと思っています。その派生として、データをきちんと使いましょうとか、統計データの改革をといったような、そういう話もありますが、そうした近年の動きの大本としては、やはり一部の国会議員が非常に強いイニシアチブを取って、こうした取組を推進したことがあります。それが自民党のワーキンググループでのいろいろな議論につながり、それが骨太の方針に反映され、そうしたところが、こうした2010年代に入ってのEBPMの火つけ役になった経緯は現実的な話としてあります。
また、欧米でも、やはりEBPMを牽引していく主体として、議会の役割は非常に大きいところで、アメリカにおいてはこのコミッション、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングという超党派の議員によるEBPMも促進する委員会が設立されていまして、そこが報告書を出したりして、アメリカにおけるEBPMの推進において、大きな役割を果たしたところになっています。
したがって、国、地方を問わず、やはりデータ、エビデンスの利活用を推進していく上では、議会、議員の役割は非常に大きいと考えています。
では、その上で、どのようなことが具体的に期待されるのかというところで、幾つかお話をさせていただきます。
まず、一つ目としては、行政のデータ・エビデンス活用の働きかけがまずあると思っています。先ほどお話ししたような形で、きちんと県の政策がデータなりエビデンスに基づくものであるのか批判的に吟味をしていただくことが一つあるのかなと思っています。
それに加えてというか、それの裏返しというところになると思いますが、きちんとしたデータ分析であるとか、エビデンスというものを活用してつくられた政策、そうしたきちんとした裏づけがあるような政策は、やはり高く評価をするということをしていただくことが一つあると思います。
いろいろな自治体でお仕事をさせていただく中で、県、行政側のほうでどのような施策をつくっていくかというところにおいて、やはり議員がどのような反応するかというのは、非常に大きな一つのポイントになるところがありますので、そうしたところを批判的に見ていただくこともそうですし、そうしたエビデンスの活用、データの活用をしているものは、高く評価をしていただくことによって、行政職員の姿勢を変えていくことができると思っています。
他方、行政が実施する事業は本当にたくさんある中で、その全てにおいて、これはきちんとデータに基づいているのかとか、きちんとエビデンスがあるのかを議論し始めると、膨大なリソースが、かかってしまうので、それについては現実的ではないと思います。
したがって、特に県として重要な政策であるとか、県民への影響が大きいという政策に関しては、こうした働きかけを行っていくことが重要になってくると思っています。
次に、データ・エビデンス収集・算出の推進です。
基本的に、いろいろな政策を行う、実施するところはもちろん重要ですが、そうした直接政策を実施するというところだけではなくて、ここでお話をしたようなデータ、エビデンスを作っていくために、リソースを配分していくことも重要だと考えています。必要なデータを収集していくための基礎調査であるとか、エビデンスを算出するためのモデル事業というものの実施を促進し、そういうものにリソースを割くように促すことが、一つ役割として考えられると思っています。
やはりデータに基づいた分析をしていくときには、データがなければ当然物事が始まらないので、先ほどお示しした交通事故に関しては、警察のほうで一件一件の事故についてデータベース化していることがあって、細かな形で分析をすることができたというところになりますが、そういう形でデータが豊富に蓄積されている分野は必ずしも多くない、実際にいろいろとデータに基づいて検証していきたいですが、そもそもデータがないという状況に直面しているケースというのは非常に多いと思います。
拙速に、その中で、取りあえず、根拠はないが、やろうというよりも、その前にやはり一度きちんと調査をして、それを踏まえてきちんとやるべきことを考えていくことも、回り道のように見えるかもしれませんが、そちらのほうが問題をきちんと明確化して、そこに対する取組を考えていくことができるということで、中長期的に考えれば、多分、そちらのほうが効率的なことになると考えています。
そうしたデータを収集していくための調査やエビデンスを算出していくためのモデル事業の実施を後押ししていくことは、大きなポイントになると思っています。特に、モデル事業の実施に際しては、試行錯誤をするのがモデル事業の場になるので、効果が出ない可能性も含めて試行錯誤を行って、その中でよかった取組を広くやってもらうという形で、そうした試行錯誤を許容するような姿勢というのは、非常に重要になってくると思っています。
最近、総務省のほうで、政策評価でアジャイル型という話がよく出てきていますが、行政の無謬化、行政は間違えないというような、そういう信念があるかもしれないけれども、現在の世の中でそういうことはなかなか難しいところです。試行錯誤をすること自体をきちんと評価をしてあげましょうという動きになっているところもありますので、そのような形で、実際の政策が失敗するのはよくないと思いますが、モデル事業として試行的にやる取組は、そこには失敗する可能性も当然含まれたものだと思いますので、そうした試行錯誤を許容することが重要と思っています。
最後、3点目ですけれども、県が保有するデータの利用可能性の向上というところで、統計データをはじめとする各種データを政策立案者、これは県の職員と思いますが、コンサルタント、研究者が活用しやすい環境、制度を整備していくことも非常に重要と思っています。そうした環境、制度を整備することによって、質の高い現状分析やエビデンスの算出につながり、それがよりよい政策立案につながっていくと考えることができると思います。
我々も様々な形で政策立案の支援をさせていただいていますが、あると分かっているデータでも、実はそれが使えないということが結構多かったりします。もしくは、使えるかもしれないが、そこを使うに至るまでの道のりが長過ぎて、なかなか簡単にアクセスできないということで、状況もあります。
オープンデータ化という話もそうかと思いますが、こうしたデータがたくさんあるはずなので、それが活用しやすい環境、制度を整備していくことも重要だと思っています。
それに関連して、ここには直接書いていませんが、いろいろお話を聞いていくと、県の中でたくさんの調査が、実は、各部署でされているということがあります。その調査が、ほかの部署における業務を考える上でも使えるのではみたいな話があったりしますが、多くの場合、そういうデータが県庁内でも共有されずに、埋もれてしまっていることがあるとよく聞きます。
そのため、いろいろなところが持っているデータを一元化して、どういうデータがあるのかをきちんと取りまとめることは、一つ重要なところだと思っています。
さらに、その既存データを利用することになると、粒度というのが非常に重要になってきます。この粒の細かさというところです。非常に細分化されたデータがあれば、その分、より深い分析ができるというところで、統計データというと、かなり集計されたような形で公開されている、例えば県全体における何々の割合とか、件数とか、それがもう少し細分化されていても、例えば市町村レベルにおける数字みたいな形でしか公開されていないことは多々あったりしますが、そうなってくると、それ以上、細かなレベルでの分析ができなくなってしまうわけです。
先ほどの交通事故のケースで、あれは一件一件について、これはどこでいつどういうふうに起こった事故ですということがあったから、あのような形で詳細なデータ分析ができたんですけれども、仮にあれが市町村レベルにおける死者数という形で集計化されてしまうと、それ以上、細かな分析ができないというようなところがあります。
そうしたところで、粒度の高いという言い方をしますけれども、細分化されたデータを使えるようにしていくことが、より詳細な現状把握や分析が可能となるという意味で、非常に重要になってくると思います。
この辺りも中央のレベルでは、特に研究者に対するところなんですが、県、国が持っている統計データを一元化することや、外部のこうした研究者が活用しやすくなるようにいろいろな規制緩和をするというような取組は、本当にここ数か月ぐらいで大きく進んでいますが、そうした取組をしていくことが、そこは中央の話ですけれども、県においてもそうしたデータの利用可能性を高めていくことは、一つ統計データを含めた利用可能性を高めていくことになると思っています。
以上、私からのお話とさせていただきます。政策立案におけるデータ・エビデンスの活用を具体例とともに幾つかお示しをさせていただいた上で、最後、議会、議員の方々に期待されることで、お話をさせていただきました。ありがとうございます。
(主な質疑)
【委員】
最近、データやエビデンスを基にこうだと言われると、そうなのかなと思う。また、言い合いになったとき、発言にエビデンスがあるかと言われ、私の感覚ですというと、そのようなことは信用できないという話になることもある。
ただ、よく見ていくと、そのデータというのは、取り方や集計の仕方や信頼性が確保されていないと、その活用を恣意的にすることも可能である。例えば、我々が理事者から見せられたデータが、都合のよいものばかりを並べられることもあるといえる。
それに対して、不安を感じており、そういうところを防いでいくためには、どのようにデータを作り、利用していくとよいのか。
【参考人】
データといっても、よいデータと悪いデータが当然あり、統計はうそをつくみたいな本がたくさんあるように、そこは非常に重要なポイントになる。そこに特効薬があるかというと、必ずしもなく、個々のデータを取り扱う人のデータリテラシーを高めていくしかない。
よく言われるのが、データに基づく結果という何かを示されたときに、素人は結果を見る、玄人は方法を見るという。80パーセントという数字が出たというときに、それを見て、80パーセントかと見るのがデータの素人、その80パーセントという結果がどのように得られたのかを考えるのが玄人という言い方をよくする。そのような形で、単に表面的な数字だけを見るのではなくて、それがどのように得られた結果としての80パーセントなのかきちんと吟味をしていく目を養うことは必要になってくる。
したがって、特効薬はなく、データリテラシーを高めていくしかないと思う。
【委員】
データを活用することにより、最適な政策が打てると言っていたが、我々の仕事は、どちらかというとデータをあまり活用せず、様々な人の意見を聴き、下手をすれば一方的な意見を聴いて、全体の中では2割かもしれないが、そちらの意見を伝えることもある。それが最適な政策ではないかもしれないが、満足度が高い政策かもしれない。
なぜなら、8割の人は無意識で問題を見過ごしており、2割の人はこれを何とかしてほしいと言う。効率で考えれば、その8割の人たちが感じていないことを解決したほうがよいが、2割の人の問題を解決したほうが全体の満足度は上がることもある。
そのようなこととデータとの選択をする方法については、データの活用とどう切り分け、利用していくのか。
【参考人】
データやエビデンスを使うことが非常に重要視されている一方で、データやエビデンスが全てではないという議論も当然あり、近年はエビデンス・インフォームドという、エビデンスも参照した政策立案という言い方がされる。
そこでどのようにいろいろな問題の優先順位をつけていくかにおいて、エビデンスやデータは参照軸の一つとされる。
全てをデータやエビデンスを使って考えろというわけではなく、今までデータやエビデンスが軽視され過ぎていたため、今後はそれもきちんと考慮して物事を考えると受け取ってもらうことが必要であり、データがこうだから、それで全てが決まるわけではないこともあるため、あくまで一つの材料としてのデータやエビデンスになってくると思う。
【委員】
問題解決が政策のつくり方だったが、政治の中の役割として、将来のことを考えて方向性を出していくことも政策の中にはある。そういったものは過去のデータからはなかなか導き出せないものがあると思うが、将来のことについて、データから何か生み出す方法はあるのか。
【参考人】
問題解決のときの問題は、先ほど言った目指すところと現状とのギャップであり、それは現在がマイナスだからということだけではなく、高い目標、将来の目標が別のところにあるのであれば、現在、マイナスではないが、目指すところとのギャップがあるため、そのギャップをどう埋めていくかが問題解決という考え方になる。
したがって、現状マイナスだから、それをカバーするための考え方では必ずしもないところが1点あり、将来どうなっていくか分からないのは、データから将来をシミュレーションしていくことはできるが、試行錯誤が必要になってくると思う。将来は予測できないため、やってみなければ分からないのが正直なところである。きちんとやってみれば分かるような状況で挑戦をしてみる。
先ほど、がん検診のような形で、きちんと将来的にやったことの取組の効果が分かるようなセッティングを作り、試行的にやってみることにより、それが本当にうまくいったのかが分かるため、将来が分からない中で勢いのまま試行するのではなく、検証して、次に生かすことができる形でやることが必要になる。
【委員】
細かいデータがあるとより活用しやすい話はそのとおりだと思うが、いろいろなところにデータがたまったままになっていることも問題だと思う。また、データを作るという手間が膨大になり、なかなか仕事が進まなくなることも現状では起きていると思う。
その中で、細かいデータを蓄積することについては、自動化などで、自然にたまっていくデータみたいなものをまずは先行的にやってみるとよいと思うが、参考人がこれまで関わった中で、手間を増やさずに、新たなデータを蓄積するような先進事例があれば教えてほしい。
【参考人】
自治体は、普通に業務をしていても、データが自動的に集まってくるところであり、先ほどのがん検診の話であれば、検診を受けた人は誰かという調査をしたわけではないが、県や市の制度を使うことになるため、データを取る取らない、検証するしないにかかわらず、誰に送ったか、誰が使ったかというのは、何らかの形で情報としてある。
そのため、それを眠らせているのではなく、きちんと分析に使えるように活用していくことがまず一つあると思う。恐らく思った以上に、たまっていくデータはあると思う。
よって、その辺をすくい上げていき、また民間企業や人工衛星などから得られるデータのうち公開されているものを活用していくことも、検討に入れることはあると思う。
実際、弊社がある県でやった分析は、PM2.5の濃度は、衛星画像として世の中に公開されている。そのため、ある野焼きの対策をしたところとしないところでは、空から見たPM2.5の濃度がどれだけ違うのか検証をしたが、追加のデータ収集コストはかかっていない。そうした形で、データを得るコストを下げていくやり方はある。
【委員】
エビデンスやロジックは大切である一方で、政治は情緒的な部分も実現しなければならない。しかし、ロジックやエビデンスをもらい、それを民意につけていくやり方も当然必要であるため、ロジックやエビデンスは大切だと思っている。
一つ質問があるが、統計データや基礎調査の話について、基礎調査や統計データは、今まで行政が取ってきたものがベースになると思う。しかし、基礎調査は、時代とともに変わる。例えばテレビの視聴率で、昔は視聴率が重要視されたが、ネットの時代では、視聴率だけでは意味がない。そういうネットの指標、視聴回数を立ち合わせるなど、一つの指標でも見方が変わってくるため、今後新たな指標や項目が必要だと思う。
参考人がたくさんの行政と関わってきて、行政がこういった基礎調査をやったほうがよいことや、こういうデータがなかったとの具体的な事例があれば教えてほしい。また、エビデンスに関しても、このような調査をすればよいと思うことがあれば、教えてほしい。
【参考人】
基礎調査について、時間がたつにつれて見方が変わることは当然ある一方で、調査をするというのはある一つのタイミングで調査をしなければいけないので、そこはどのくらいの頻度で調査をしていくかも含めて考えていくことだと思う。
いずれにせよ、現状を把握することは必要になると思うため、どういう調査をすべきかは、ケース・バイ・ケースになってくると思う。
特にこういうところの調査をしたほうがよいのではないかというところは、どの自治体に行っても一番挙げられるのが、少子化対策である。少子化対策のために何をすればよいかを考えたいと、人の出入りは統計データとしてあるが、何が原因で、その人が出ていってしまうのかや、子供を産まなくなっているのかというところは、意見を言い合う形で議論をしているのが現状である。
そこはそのような話をしていても分からないため、きちんと調査をして、どういう原因があるかをきちんとデータとして取らないと、その先には進めない話をいつもしているが、なかなかそれが実施されない。
これは喫緊の課題であり、悠長なことは言っていられないため、議論の中でこの予算の中でできることはこれであると収れんしているのが現状ではないかと思っている。
特にそういう重要なテーマについては、調査をしてもらわないと駄目という話はしており、最近、一緒にやっている自治体ではそうだねという話で、きちんとした調査を行っていく話になりつつあると思うが、どこの自治体でもあるとは思っている。
【委員】
少子化対策と子育て支援は、少子化対策の一つの支援が子育て支援であり、子育て支援をすれば少子化対策になるとは思っておらず、その辺は細分化しないといけないと思う。もしこれもあればだが、少子化対策に取り組む上で、今欠けているデータや指標があれば、教えてほしい。
【参考人】
私自身、分野としての専門は特にないため、少子化や子育て支援について、意見を言うのは難しい立場ではあるが、原因が分からないまま議論するのではなく、考え方の順序としては、そこにどういう原因があるからこういう取組をすると考えていかないと、物事は進んでいかないことは話しており、そこをきちんと調査をしていく流れというのは、徐々にできつつあると思う。
【委員】
行政を見ていると、どうしても手段が目的化することが往々にしてあるが、批判的とは言わないでも、しっかりと我々も見極めて、これは手段なのか目的なのかというところをよく考えていきたいと思う。
【委員】
政策立案をするに当たり、各自治体の地域性、規模や財政力が影響してくると思うが、愛知県は大都市に位置づけされるため、同規模のデータや事例を見なければならないと思う。大都市であると、同規模やそれ以上の都市が少ないことから、データの絶対量が少なくなるが、その辺りをどうやって利用していけばよいのか。
【参考人】
どういう事例を参照していけばよいかというときに、基本は文脈が近いところでというが、その文脈にはたくさんの意味があり、例えば、日本で考えているものについて、アメリカの事例が使えるのかという議論があったりする。日本とアメリカでは全然文脈が違うから使えないみたいな議論はすごく乱暴な議論になっており、もっと細かく具体的なところを見ていく必要があると思っている。
それは特に何かというと、問題の構造がどうなっているのかである。そもそも表面的には同じ取組であるが、その取組がどういう問題に対して対処しようとしている取組なのか、どういう問題の原因があるからそれをやっているのかがある。
そこで、表面的には同じ取組であるが、目的が違うことがある事例というのはなかなかここでは使えないことがあるかもしれないが、別の国で行った事例でも、自分たちが直面している状況と問題の構造、何が原因になっていて、そういう問題が起きているのかというところが似通っている文脈であれば、アメリカやヨーロッパでの状況にかかわらず、場合によっては使えることがあるのかもしれないため、まず、その問題がどういうふうになっているのかという問題構造が類似しているかが一つ、参照点としてあると思う。
その上で、具体的に実施方法としては、いろいろな政治的な制度や、法制度みたいなところに違いがあるため、全然違う文脈というのは使えないのかもしれないが、どういうことをやっていけばよいかという中身の部分に関しては、そういった問題構造というところに注目をすることにより、必ずしも愛知県は、東京都や神奈川県などの事例しか使えないのではなく、細かく見ていけば、場合によっては北海道で起きていることや事例なども参照になることは、あり得ると思うので、その辺はケース・バイ・ケースになるが、何を参照として持ってくるかというのは、いろいろな考え方がある。
【委員】
恐らく、大都市ならではの問題であると思うが、全国的に注目されていることで、まだあまりやることがないものを、他都市の事例の先例としてやっていかなければならない部分もあると思っているため、そういった場合にデータがあまりにも少ない場合には、どう利用していくことがふさわしいのか。
【参考人】
先進的な取組であれば、その効果をきちんと検証していくことが必要である。そこで、これはうまくいくとか、場合によってはうまくいかないというところも含めての学びになると思うが、先進を行く自治体ならではであれば、後続の参考になるように、何かこういうことをやったというところで終わりにするのではなく、やった結果、問題を解決できたのかをきちんと検証していくことが、非常に重要な役割としてあると思う。
【委員】
政治に対してデータとエビデンスの利活用をと言われているが、経験的に、データとエビデンスが一番生かされやすい分野と生かされにくい分野はあるのか。
【参考人】
分野による違いは大きくないと思う。
現状では、ある程度、データが豊富な分野が出てくることはあるため、先ほど言ったとおりである。例えば、警察はすごく細かいデータがたくさんあり、教育分野もそれなりにデータがあると言われており、いろいろな分析がされていることが多いケースにはなってくる。
そうしたところで、この分野だからデータの活用の意義が低いなどの話はないと思うが、現実問題として、利用可能なデータというものが分野によって限られていることはある。
【委員】
データとエビデンスという意味では、何をやったら交通事故が減ったというのが一番分かりやすいと思うが、子育て支援とか、将来を見越した上で何かをやろうとしたときに、財政課がそれをやって何の効果があるのかと言われ、そのようなものに予算は出せないとなってくると、子育ては結構、長期的な視野を考えてやるものであり、そこに心理的なものがかかり、余計に数値で表せないことになってきた場合、行政が持っていない現場から聞いてきた声を、自らのデータをエビデンスにするしかないと思うが、どうか。
【参考人】
すごく難しいと思っており、データが全くないような状況で、何らかの意思決定をしなければいけないとき、事例、意見及びエピソードがあったことは、根拠の一つとなる。
全く何もないよりは、そういう具体的な生の声があったほうが、当然、何かを考える上の材料になるので、全くないよりは、あったほうがいいという話もある。そこはそうした生の声だから駄目というわけではなく、そのようなものも含めて、いろいろな検討材料にしていくことになってくる。ならざるを得ないと思う。
【委員】
本県にもかなり膨大なデータがあると思うが、それを処理していく上で、ChatGPTで、職員がコンサルに相談しなくても自分たちでやっていけるようになれば、膨大なデータも生かせると思う。参考人の立場でChatGPTについて、これからのデータの活用の仕方として将来的にすごくよくなるとか、あれは危ないからやめたほうがよいとかあれば教えてほしい。
【参考人】
新しいツールは、非常に有力になってくると思う一方で、データを使って何をしたいかを考えないと、幾ら便利なツールがあっても使えない。
こういうデータがあれば、こういうことが分かるかもしれないと仮説を立てることは、一番データ分析において重要である。その仮説を検証するためにはどういう分析をすればよいかは、例えば、ある程度自動化してくれているのかもしれないが、何を明らかにするためにデータの分析をするという最初の問題設定は、新しいAI的なものが代替してくれるものではないと思うため、データ分析をして何を知りたいかの設定が重要になってくる。
最近、生成AIがはやっているが、あくまでそれはツールだと思う。よって、そのツールを使って何をするかというところの何が重要なのかなと思っており、たくさんデータがある中、データを使ってこういうことを知りたいところの設定というものは、常に職員がやっていかなければけならないと思う。
他方で、この間の分析というものを非常に簡略化できるというポテンシャルはあると思うため、そこにおいて使うことは十分、あり得ると思う。
【委員】
先ほどから少子化の話が出ていたが、例えば、愛知県では2060年に720万人の人口を残すという目標を立てているが、それに対して合計特殊出生率を2030年までに1.8に上げて、それから10年後の2040年には2.07に上げていくとしており、その中で期限が決まってくるが、バックキャスティングがある。目標に対してどういう政策を打っていくかにEBPM(証拠に基づく政策立案)は何か使えるツールになるのか。
今ある政策に対してエビデンスがあるかどうかはすごく分かりやすいが、そういった将来に向けて考えていくときのツールとして使える可能性があるのか。
【参考人】
まず、最初の、弊社のほうで生成AI等を使っているかについて、一部、使い始めているところがある。
特に情報収集でかなりコストを下げられるようになってきたところで、エビデンスでいうと、たくさん国内外の論文とかを探して、そこで何が言われているのかを調査をすることが結構ある。
ある取組、例えば少子化問題なら少子化問題で、そこについてどういうこれまでの研究の蓄積があるのか、こういう取組に対してどういうエビデンスがあるのかというときに、そういったものを使い、学術論文とか報告書というものを効率的に収集し、さらに、そこで見つかった論文の要約を作ってくれるところまで一気通貫でやってくれるものが開発されており、そうしたものは情報収集をしていく中で、学生を雇って集中的に論文を読んでもらい、まとめてもらうことをしていたが、その辺の代替ができる目星がついてきているレベルではないかと思っている。当然、完全に任せることはできないが、そういうところでの可能性は高いと思う。
質問からずれてしまうかもしれないが、そうしたいろいろなことを知りたいが、情報収集や得られた報告書を一から十まで全部読んでいられないときに、そこの要約を作ったり、そういうところではすぐにでも使っていけるような部分はあるのかなと思う。
もう一つの質問の、バックキャスティング的な思考は、別にEBPMだからという話ではなく、物事は、特に問題解決とか政策については、目指すべきところからバックキャスティングで考えていくことが本当に基本的なところであり、それは何のためにやっているのかという話で、取組からこじつけのように目指すべきところにつなげることが実際起きているため、EBPMに限らず、目指すべきところをやるためには何が必要かで、それをやるためには、どういうことをやっていけばいいのかという考え方は、基本的なところになる。
よく弊社でもアウトカム志向というような言い方をしているが、こっちが目指すところがあっての取組だという話は常にしている。
【委員】
人口の話であると、積み上げていくのかこっちから来ているのか分からないが、求める答えは720万人に対して何かほかの方法を見つけてくれるような、人口の合計特殊出生率だけではなく、何か新しい答えがあればありがたいと思い伺った。政策は自分たちでつくるということで考えていきたいと思う。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年7月21日(金) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
西野 宏 参考人(株式会社メトリクスワークコンサルタンツ 代表取締役)
県民文化局長、県民生活部長、関係各課長等
委員会審査風景
<議 題>
行政における統計の役割について
<会議の概要>
1 開 会
2 委員長あいさつ
3 議題について参考人からの意見聴取
4 質 疑
5 閉 会
《参考人の意見陳述》
【参考人】
本日は、行政における統計の役割について、特に政策立案におけるデータとエビデンスの利活用についてお話をさせていただければと思います。
まず、簡単に、私の自己紹介をさせていただければと思います。株式会社メトリクスワークコンサルタンツの代表を務めています。
弊社は、公共政策領域において政策立案、政策評価、調査研究、研修及びEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシーメイキング)の実施支援等々を行っているコンサルティング会社です。
現在の私の関わっている主な仕事ですが、御紹介ありましたとおり、中央省庁及び地方自治体におけるEBPMの実施支援ということで、具体的なところとしては、本日、お話をするようなデータ、エビデンスを用いた政策立案に関する技術的な支援、また、データ収集、データ分析等々を行った上で、事業の効果検証を行うといった業務であるとか、それに関する研修、セミナーの実施等を行っています。
主なクライアントとしましては、中央省庁で言いますと、総務省であるとか、国交省、文科省、環境省と主に仕事をさせていただいています。
地方自治体に関しては、都道府県で言うと、福島県、岡山県、広島県、栃木県、愛媛県など、研修となってくるともっと広くて、沖縄県、千葉県、静岡県といったところでも仕事をさせていただいています。
基礎自治体になると、千葉県の柏市、神奈川県の横浜市、長崎県の佐世保市といったところと御一緒しており、こうしたデータ、エビデンスの活用をEBPMについての仕事をさせていただいています。
では、本日の内容としましては、ここに書かせていただいている3点についてお話をさせていただければと思います。
まず、政策立案とはというところで、政策立案の概要に関して簡単にお話をさせていただいた上で、そうした政策立案において、データ、エビデンスというものがどのように活用することができるか、私が関わった自治体等の事例も踏まえて、御紹介等をさせていただければと思っています。
最後に、そうしたデータ、エビデンス等を活用したよりよい政策立案のため、議会の皆様、議員の皆様がどのような役割を果たすことができるのか、お伝えをさせていただければと思っています。
それでは、早速、最初の政策立案の概要に入りたいと思っています。
まず、唐突なところになりますが、地方政府、これは議会も行政も含めてと思いますけれども、期待されていることは何かというところで、これは様々な考え方があると思いますが、やはり大きな役割の一つとしては、地域の問題解決にあるのではないかと考えることができると思います。
問題というところは基本的な考え方として、社会における理想的な状態というものと現状とのギャップという形で捉えられ、理想的にあるべき姿があった上で、そこに至らない現状があって、その間にあるギャップというものが、すなわち、社会が望ましくない状況にある、そこに問題が生じていると考えることができるわけです。
そうした社会における問題を解決するために政策が基本的にあって、それが公共的な問題の解決を図るための方策として、政策というものを捉えることができると思っています。
よく政策、施策、事務事業という形で階層的に考えることがありますが、ここはそうした全体を含めて、政策という一言で書かせていただいています。
では、こうした形で政策を問題解決の方策というふうに捉えた上で、政策立案、すなわち問題の解決をどのような手順で実施していくかを非常に単純化した図で示したのがこの図になっています。
大きく問題を特定するフェーズがあり、その上で、なぜその問題が起きているのかという原因を考えるフェーズがあり、その上で、その原因のためにどのような解決策を考案するかといった流れで、政策立案が行われていくことになります。
もう少し具体的に見ていきますと、最初の問題の特定というところでは、どのようなイシューに焦点を当てるかを明確にしていく。その上で、先ほど、あるべき姿と現状とのギャップという話をしましたけれども、理想的な状況を明確にし、現状を的確に把握する。その上で、その間にあるギャップをきちんと把握するのが最初のステップになる。さらに、そうした問題、ギャップがどこで誰に発生しているのかを絞り込んで、特定をしていくことが、まず最初に必要になってきます。
その上で、そのところにおいて現状が理想から乖離している、すなわち、そこにギャップ問題が生じている理由を検討するのが、二つ目のステップになってきます。なぜという問いを繰り返ししていくことによって、原因を掘り下げていくというステップになってきます。
その上で、三つ目のところになりますが、解決策の考案というところです。そのような形で特定された問題、そしてその問題の原因が特定されたら、その問題の原因を解消するために、社会にどのような財、サービスを提供すべきか、どのような仕組み、制度をつくるべきかを検討するフェーズが出てきます。その上で、費用、効果、実行可能性等々を踏まえて、実施すべき打ち手、すなわち政策を検討するのが、基本的な政策立案の流れになると思っています。
では、次のポイントに行きます。
こうした一般的な政策立案という手順を、質を高める、そしてよりよい政策を立案していくためには何が必要かというところですけれども、本日、お話をさせていただくデータとエビデンスが出てくると考えることができると思います。
では、データの活用になってきますが、特にデータの活用というのが有意義なポイントとしては、最初の問題の特定というフェーズになります。
きちんとデータを活用することで、あるべき姿と現状を正確に把握することができるので、そこにある問題の大きさを明確にすることができるところになってきます。その上で、きちんとデータを用いて細かく分析をしていくことによって、特に問題が深刻な要素を正確に把握することができ、その結果、適切なターゲティングの選定につなげていくことができていくことになります。
この辺の話を弊社が実際に扱った事例を含めて、具体例として説明をさせていただきたいと思っています。
この事例として取り上げたいのは、交通事故対策です。
ここの画像に映しているのは、先月、北海道であったトラックと高速バスが正面衝突をした事故で、5人が亡くなるという非常に大きなニュースになったことは皆さんも記憶に新しいと思いますが、北海道の事例を扱うわけではないですが、こういうようなものがありますというところで、こうした非常にショッキングな、センセーショナルな事故が起きてくると、こうしたトラックの運転手に対する検査を強化しようとか、いろいろな規制を強化しようという話が当然沸き上がってくると思うんですけれども、その前にやはりきちんと一歩立ち止まって、まずデータを見ていきましょう。交通事故対策を考える上で、個別の事例、エピソードに引っ張られるのではなく、きちんとまずはデータを見ましょうということが重要になってくるところが一つあります。
これは某県における交通事故による死者のデータをグラフ化したものです。これは恐らく各県、同じだと思いますが、警察のほうでどのような事故が起こっているかは、事故の統計データとして収集されていると思いますけれども、そういうデータを見ていくと、当然、自動車同士の、自動車乗車中の死者もそれなりにいることが分かる一方で、特に、やはり問題が重要なところが歩行中です。交通事故死の半数が歩行中の事故によるものだという現状がきちんと明らかになってくるわけです。
さらに、そこを、日本全体を比べる、またはほかの国等々と比べてみると、日本全体としても歩行者の死者の割合というのは35パーセントということになっていますが、先ほどの県は50パーセントを超えていたわけです。そうすると、非常にその県における問題が大きいということが明確に見てとることができるわけです。
さらに、今、長期的には欧米の15パーセント程度を目指すことをその県としては目的としていますけれども、そうすると、現状と目標の間にかなり大きなギャップが生じているということがきちんと明確になってきます。
さらに、そこの自治体では詳細にデータを持って細かく見ていって、分析を進めています。なお、これは我々が技術的な支援をさせていただいている一方で、具体的にこの辺のデータを集計して分析をしているのは、県の職員が自らやっている例になるんですけれども。
そうした歩行中の事故がどのようなところで起きているのかを詳細に分析をしていくことをしています。歩行中の事故、これは複数年度で112件ありますが、そのうち70パーセントが道路の横断中です。さらに、その道路の横断中はどこで起きているのかというと、横断歩道で起きていることが明らかになっています。
さらに、横断歩道での事故をさらに細かく分解していくと、信号機のある交差点における右折事故というところ、そこにかなりの問題が集中していることが、こうしたデータから明らかになっていくことになります。
このような形できちんとデータに基づいて問題の特定をしていくことで、統計データを活用して見ていくことで、特に問題が深刻な箇所が的確に特定できることになるわけです。このデータ分析の結果、歩行者が関わる横断歩道における右折時の事故が、この県における死亡事故のかなりの割合を占めていたことが明確になったということです。そこに焦点を当てた対策を考えることで、問題解決に直結するような取組の検討が可能になっていることが実際に行われています。
仮にこうした検討が全然されないと、これはいろいろな自治体を見ていると本当によくありますが、問題の所在が曖昧なまま、何かしらの交通安全対策をしなければいけないということで、これまでやっていた活動であるとか、このぐらいの予算があるからこのぐらいのことができるのではないかといった形で、何となく政策の計画実施がされてしまっているというのが正直な印象を受けます。
そのため、従来どおり、一般的な啓発キャンペーンをしましょうとか、交通安全のイベントを開きましょうということになってしまいがちですが、きちんとここに示したような形でデータを見て、細かな分析をしていくと、より具体的にやるべき取組、特に重要である取組がおのずと明らかになっていくことが見てとれると思います。
こうしたことをきちんとしていけば、対策の優先順位を見誤ってしまうことも避けることができるわけです。
このケースは非常にやっていることは単純です。特に何か難しい統計分析を行っているとか、何か統計ソフトを使わないとできないような分析ではなくて、ただ単にもう警察に蓄積されているデータを細かく見ていくことで、実際にこの職員の方はエクセルを使っていろいろなグラフを作るとか、いろいろなクロス表を描くことで分析して、特にここに問題が生じているというところの把握をされており、そこに対して、どういう取組がいいんだろうといったことを現在検討している状況です。
そのため、こういうデータに基づく問題の特定は、それほど高い専門性が必要とされることではないですが、なかなか、こういう地道な作業はされていないというのが現状かなと思いますので、こうしたところが一つ統計データを活用することにおいては、重要なポイントになってくると思っています。
次に、エビデンスの活用のお話をさせていただきたいと思います。
エビデンスの活用というのは、最後の解決案の考案に有用になってきまして、エビデンスを活用することによって問題を解決することのできる可能性の高い取組を選択することができるところにあります。
ここで1点留意していただきたいところは、エビデンスという言葉をここでは非常に限定的な意味で使っています。ここではエビデンスという言葉を下に書いていますが、ある事業とかある取組が効果を生むかどうかという因果関係を検証した結果という意味で使っています。ある取組をすると、それがどのような効果を生むかという情報というところです。
近年、国内でいろいろEBPMという言葉が非常に盛んに使われていますけれども、その中で、先ほどお話をした基本的なデータも含めて、エビデンスというようなことで呼んでいるケースが多々あると思うんですが、そうしたいわゆる一般的なデータ、現状を把握するようなこのデータと、ある取組の効果を示す情報というエビデンスとは少し質の違うものになるので、ここではあえてその二つの言葉を分けて説明をしています。
このエビデンスの活用がどのようなことなのかについて、こちらも具体例を用いながら、お話をさせていただければと思います。
一つ目の例ですが、これは生活困窮者自立支援事業の例です。
ここに示しているグラフはある県におけるA市、B市、X市における生活困窮者自立支援事業の結果、パフォーマンスに関するグラフになっています。これを見ると明らかなとおり、X市では非常にパフォーマンスがよい。自立支援事業なので、自分で就労してくれる人が増えることが事業の目的ですけれども、A市、B市ではその割合が非常に少ないのにもかかわらず、X市では対象者の半数近くが就労するという非常に高いパフォーマンスを発揮している状況です。
では、なぜこのような大きな違いが生じているのかですが、それがエビデンスというところになります。
X市で行われた取組は、個別就労支援プログラムという新たに開発された就労支援モデルに基づく設計がされていたものでした。就労支援といっても、そのやり方には多分いろいろあって、そのうちの一つがこの新しい個別就労支援プログラムなんですが、このモデルは厳密な方法論に基づくデータ分析によって、従来、一般的に行われていた就労支援プログラムよりも効果が大きいことが実証されていたものになります。すなわち、それは既にその取組が有効であるというエビデンスがあった取組になるわけです。
下に描かれているグラフは、個別就労支援プログラムを実際に分析した研究調査の結果になるんですが、黒いグラフが個別就労支援プログラム、赤いグラフが従来の取組ですけれども、それぞれ、この横にあるのは、たくさんの検証が行われ、たくさん研究がされたというものでが、どの研究結果を見ても黒のグラフのほうが高いということで、このプログラムは非常に効果を生むということが、かなり厳密な方法論によって明確になっていたということです。
したがって、こうした既に有効であることが分かる取組に基づいて、就労支援プログラムを実施したということが、X市における高いパフォーマンスの原因だったことが言えるわけです。
このような形で、既に効果があることが実証されているような取組、すなわち、エビデンスに裏打ちされた取組ということができると思いますけれども、それを選択して実施していくことで、問題の解決につながる可能性を高めることができるということになるわけです。
既にもう効果があると分かっている取組であれば、当然、それをやることによって効果を生む可能性は高まることになるので、そうしたエビデンスを参照して政策を立案していきましょうというのが、本来的な意味でのエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングという、EBPMの考え方の根幹になってくるわけです。
こうした考え方に基づいて、世界的に既存のエビデンス、既に効果があるというふうに分かっている取組をきちんとデータベース化し、それを政策立案者が参照できるようにしていきましょうという取組が広く進んでいます。
特にそうした取組が進んでいるのがイギリスですが、What Works Centreというものがありまして、for何々ということで、for医療とか、for教育とか、医療、教育、刑事、司法など、分野ごとに既に実施されている事業に関する既存のエビデンスを整理して、それを提供するようなデータベースの作成を行っています。
例えば、教育分野のエビデンスデータベースになると、縦にいろいろな取組というのが並んでいますが、この取組は効果が高いですというのが、この1や4で書かれていて、オレンジになっているものは効果はありますと、特にオレンジが濃いものは効果が大きいですと、さらに、それに対してどのくらいのコストがかかりますということを一覧化しているものです。
そうすると、同じような問題に直面している政策立案者が過去のエビデンスを参照して、自分のところで何をやればいいか検討することができる形になっているわけです。
アメリカでも同じような形で、そういったものをデータベース化する取組が進んでいます。
日本国内でも近年、EBPMデータベースということで、これは実は、民間の会社であるサイバーエージェントが音頭、イニシアチブを取って、まとめていますが、様々な研究結果等を踏まえて、いろいろな取組がどのくらい効果がありますかとか、どのくらいの確かさでそういう効果が確かめられていますといったようなものを一覧化していく取組が始められています。
これは一民間企業による取組ですが、今年から総務省や、経済産業省の組織の一つである経済産業研究所(RIETI)という研究所があるんですけれども、そういう公的機関においても既存のエビデンス、世の中で、もう既にそれが有効であることが分かっている取組をきちんとデータベース化していって、個々の行政職員がそうしたデータベースを参照しながら、自分たちの政策立案を行っていくことができるような取組が進められています。
今年から始められたものになるので、弊社もそうした取組に一部関わらせていただいていますけれども、そういった取組が国内でもかなり進んでいる状況になっています。
そのため、このような形で既存のエビデンスをきちんと参照して、好ましい結果につながる可能性の高い最善の選択をしていこうというところに、EBPMの核心があるということになります。
実際に事業をやっていく中でそうした既存の情報はある一方で、行政が扱う課題というのは本当に、たくさんある中で、目の前で実施しなければいけない、目の前で行わなければいけない意思決定において、使えるエビデンスがないということもかなり多くあるのが現状と思っています。
そうした場合には、既存のエビデンスを使うのではなく、自分たちでデータを集め、分析をし、エビデンスを作り出す。そして、その結果を基に意思決定を行っていくことも重要になってきます。
そうした事例として、一つ別の事例を挙げさせていただきます。
これはある市において、どこの自治体もやっていると思いますが、がん検診の受診率を高める取組ですけれども、このケースでは大腸がん検診の受診率を高めることが重要な課題になっていまして、そのために検査キットを送る。そして、はがきによって受診をしてくださいといった受診の勧奨を行っていたんですけれども、受診率が非常に伸び悩んでいるという現状がありました。より効果的に受診につなげるためにはどのように呼びかければいいか悩んでいた現状があります。
非常にスペシフィックな問題ということもあって、どういう呼びかけをすればいいのか既存の情報は特に見つからなかったということで、自らエビデンスを作るための検証をモデル事業という形で行うことをしています。
ここではランダム化比較試験と呼ばれる一番厳密に事業の因果関係を検証できるような方法があるんですけれども、そうしたものを用いて、複数の呼びかけのメッセージのうち、どれが一番よいかを検証するということをやっています。
具体的には、こうした二つのパターンのチラシを作って、中に書かれているメッセージを変えることをしています。
このモデル事業の中では、このチラシ、はがきを送る対象者を二つに分けて、一方には、Aパターンのチラシ、はがきを送ります。残りのもう一方には、Bパターンのはがきを送ります。
その結果、市の制度を使って検診を受けたかどうかは、市のほうで情報として、データとして入手できるので、そこの間の受診率を比較したということになります。
そうすると、Aパターンのお知らせをもらった人は受診率が22パーセントぐらいでしたと、Bパターンのお知らせをもらった人は約30パーセント近くの人が受診をしましたということで、検証の結果、B案のほうが明らかに7ポイント以上受診率を高めることが実証され、そうしたエビデンスがこのモデル事業を通じて得られたわけです。
エビデンスに基づいて、A市においてはB案を採用していくという判断をして、その後はモデル事業は取って、Bパターンにおけるがん検診の推奨を市全体に展開をしていく意思決定をしたことです。
したがって、ここでも誰が検診を受けたかは、県とか市のほうで情報を持っているということで、そうしたデータは市の中に蓄積されているので、最初のAパターンとBパターンを作って、それぞれ割り振るところまでやれば、あとはもう特別なことをしないでも、事業の効果検証ができるということになるわけです。
このような形で既存の統計データを活用してどういう取組が効くのかを検証して、それを本格的に展開していこうという形での政策立案をしているのがこの例になってくるわけです。
いわゆるエビデンスに基づく政策立案とはこのような考え方でして、政策立案の際に既存もしくは自前で作った新規のエビデンスを参照していき、効果を生む、すなわち問題を解決する可能性の高い政策を選択していくということに今あるということになるわけです。
こうした検討が、されていかないとどうなってしまうのかというと、まずは、問題解決に至らない取組を選択してしまうリスクがあります。
当然、何らかの問題を解決したいという気持ちに基づいて政策はされるわけですが、それが必ずしも問題解決に至るかというと、それはまた別の話になってくるので、なるべく有効であるエビデンスに基づいた取組のほうが、やはり問題解決に至る確率は上がっていくところになります。
さらに言うと、善意、もちろん問題を解決したいという気持ちのもとにいろいろな取組はされるわけですが、場合によっては負の影響を社会にもたらす取組を実施してしまう、そうした可能性を拭い去れないところがあります。
この点についても、幾つか事例を御紹介させていただきたいと思います。
これは日本の事例ではないですが、スケアード・ストレイトという取組ですけれども、非行少年、非行を働いた子供たちに刑務所の見学をさせることで更生を促すという取組がアメリカで広く実施されました。
非行で捕まった子供たちに対して訪問を義務づけることで、刑務所に行って実際に受刑者と話をしてもらって、刑務所に入ってしまうとこういうことになるんですよみたいな話をしてもらうとか、刑務所の厳しい環境の生活を見てもらうことによって、そうしたところに入らなくても済むようになることで更生を促すことができると考えられていて、非常にアメリカで大きな反響を呼んだ取組になります。
それがドキュメンタリー番組とかにもなっていて、それがこの画像です。そうした影響もあって広くアメリカで実施されて、具体的にそうした取組を法制化する州も幾つかありました。
他方、そうした取組について、しかるべき方法でそうした取組が本当に子供の非行を減少させるかを検証した結果、効果がないどころか、負の影響のほうが大きいことが明らかになったんです。むしろ、そういう訪問をさせると、子供たちがそういうところに影響を受けることもあって、非行がより増えてしまう結果が複数の研究で立証されています。
その結果、かなり広くアメリカで法制化までして実施された取組だったんですけれど、非行対策の見直しで、そうした取組を再検討する動きになったという事例になります。効果がなかっただけでなく、負の効果があったということも当然あり得るということです。
二つ目の事例ですが、これもまた交通事故の話ですが、交通事故の減少を目的として、道路沿いに注意喚起をするようなメッセージを掲示する取組が実施されたケースです。
例えば、ここではA県と書いてありますが、そのエリアにおける今年の交通事故者数が何人ですみたいなことを道路脇に、いろいろところに、こういうプレートというか、電光掲示板を置いて、見てもらうことによって、この県では、こんなに事故が起きているのかということで、ドライバーに慎重な運転をしてもらうことを目的とした取組だったんですが、これについてもやはりきちんとした効果検証をした結果、掲示をすることが、むしろ、より多くの交通事故を招いてしまう結果になったというものです。
そうしたメッセージを読むことで慎重になってほしいという意図があった一方で、そうした掲示に目を引かれてしまうことにより、ドライバーの運転への注意がそがれてしまうことで、それがより多くの交通事故を生んでしまう結果になったというものです。
このような形で、当然ながら、問題を解決したい意図に基づいて様々な政策は実施されるのですが、その中でも全て問題の解決に至るとは限らない、場合によってはここに挙げた二つの事例のように、世の中にマイナスの効果をもたらしてしまう可能性も当然あり得るわけなので、そうしたことも念頭に置いて、きちんと可能な限りエビデンスに基づいた事業を選択していくということが重要になってきます。
この辺りがいわゆるEBPMが重視されていく背景といいますか、根拠になってくるわけです。
では、こうしたデータ、エビデンスを使った政策立案が重要というお話をさせていただきましたが、最後に、そうしたデータ、エビデンスの活用を通じて、よりよい政策立案を行っていくというところにおいて、議会、そして議員がどのような役割を果たせるのかというところで、少しお話をさせていただければと思っています。
まず、最初のポイントとしては、議会の役割は非常に大きいですというお話です。
近年、日本国内でEBPMブームと言ってもよいほど、EBPMという言葉があちこちで聞かれるようになったと思っています。その派生として、データをきちんと使いましょうとか、統計データの改革をといったような、そういう話もありますが、そうした近年の動きの大本としては、やはり一部の国会議員が非常に強いイニシアチブを取って、こうした取組を推進したことがあります。それが自民党のワーキンググループでのいろいろな議論につながり、それが骨太の方針に反映され、そうしたところが、こうした2010年代に入ってのEBPMの火つけ役になった経緯は現実的な話としてあります。
また、欧米でも、やはりEBPMを牽引していく主体として、議会の役割は非常に大きいところで、アメリカにおいてはこのコミッション、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングという超党派の議員によるEBPMも促進する委員会が設立されていまして、そこが報告書を出したりして、アメリカにおけるEBPMの推進において、大きな役割を果たしたところになっています。
したがって、国、地方を問わず、やはりデータ、エビデンスの利活用を推進していく上では、議会、議員の役割は非常に大きいと考えています。
では、その上で、どのようなことが具体的に期待されるのかというところで、幾つかお話をさせていただきます。
まず、一つ目としては、行政のデータ・エビデンス活用の働きかけがまずあると思っています。先ほどお話ししたような形で、きちんと県の政策がデータなりエビデンスに基づくものであるのか批判的に吟味をしていただくことが一つあるのかなと思っています。
それに加えてというか、それの裏返しというところになると思いますが、きちんとしたデータ分析であるとか、エビデンスというものを活用してつくられた政策、そうしたきちんとした裏づけがあるような政策は、やはり高く評価をするということをしていただくことが一つあると思います。
いろいろな自治体でお仕事をさせていただく中で、県、行政側のほうでどのような施策をつくっていくかというところにおいて、やはり議員がどのような反応するかというのは、非常に大きな一つのポイントになるところがありますので、そうしたところを批判的に見ていただくこともそうですし、そうしたエビデンスの活用、データの活用をしているものは、高く評価をしていただくことによって、行政職員の姿勢を変えていくことができると思っています。
他方、行政が実施する事業は本当にたくさんある中で、その全てにおいて、これはきちんとデータに基づいているのかとか、きちんとエビデンスがあるのかを議論し始めると、膨大なリソースが、かかってしまうので、それについては現実的ではないと思います。
したがって、特に県として重要な政策であるとか、県民への影響が大きいという政策に関しては、こうした働きかけを行っていくことが重要になってくると思っています。
次に、データ・エビデンス収集・算出の推進です。
基本的に、いろいろな政策を行う、実施するところはもちろん重要ですが、そうした直接政策を実施するというところだけではなくて、ここでお話をしたようなデータ、エビデンスを作っていくために、リソースを配分していくことも重要だと考えています。必要なデータを収集していくための基礎調査であるとか、エビデンスを算出するためのモデル事業というものの実施を促進し、そういうものにリソースを割くように促すことが、一つ役割として考えられると思っています。
やはりデータに基づいた分析をしていくときには、データがなければ当然物事が始まらないので、先ほどお示しした交通事故に関しては、警察のほうで一件一件の事故についてデータベース化していることがあって、細かな形で分析をすることができたというところになりますが、そういう形でデータが豊富に蓄積されている分野は必ずしも多くない、実際にいろいろとデータに基づいて検証していきたいですが、そもそもデータがないという状況に直面しているケースというのは非常に多いと思います。
拙速に、その中で、取りあえず、根拠はないが、やろうというよりも、その前にやはり一度きちんと調査をして、それを踏まえてきちんとやるべきことを考えていくことも、回り道のように見えるかもしれませんが、そちらのほうが問題をきちんと明確化して、そこに対する取組を考えていくことができるということで、中長期的に考えれば、多分、そちらのほうが効率的なことになると考えています。
そうしたデータを収集していくための調査やエビデンスを算出していくためのモデル事業の実施を後押ししていくことは、大きなポイントになると思っています。特に、モデル事業の実施に際しては、試行錯誤をするのがモデル事業の場になるので、効果が出ない可能性も含めて試行錯誤を行って、その中でよかった取組を広くやってもらうという形で、そうした試行錯誤を許容するような姿勢というのは、非常に重要になってくると思っています。
最近、総務省のほうで、政策評価でアジャイル型という話がよく出てきていますが、行政の無謬化、行政は間違えないというような、そういう信念があるかもしれないけれども、現在の世の中でそういうことはなかなか難しいところです。試行錯誤をすること自体をきちんと評価をしてあげましょうという動きになっているところもありますので、そのような形で、実際の政策が失敗するのはよくないと思いますが、モデル事業として試行的にやる取組は、そこには失敗する可能性も当然含まれたものだと思いますので、そうした試行錯誤を許容することが重要と思っています。
最後、3点目ですけれども、県が保有するデータの利用可能性の向上というところで、統計データをはじめとする各種データを政策立案者、これは県の職員と思いますが、コンサルタント、研究者が活用しやすい環境、制度を整備していくことも非常に重要と思っています。そうした環境、制度を整備することによって、質の高い現状分析やエビデンスの算出につながり、それがよりよい政策立案につながっていくと考えることができると思います。
我々も様々な形で政策立案の支援をさせていただいていますが、あると分かっているデータでも、実はそれが使えないということが結構多かったりします。もしくは、使えるかもしれないが、そこを使うに至るまでの道のりが長過ぎて、なかなか簡単にアクセスできないということで、状況もあります。
オープンデータ化という話もそうかと思いますが、こうしたデータがたくさんあるはずなので、それが活用しやすい環境、制度を整備していくことも重要だと思っています。
それに関連して、ここには直接書いていませんが、いろいろお話を聞いていくと、県の中でたくさんの調査が、実は、各部署でされているということがあります。その調査が、ほかの部署における業務を考える上でも使えるのではみたいな話があったりしますが、多くの場合、そういうデータが県庁内でも共有されずに、埋もれてしまっていることがあるとよく聞きます。
そのため、いろいろなところが持っているデータを一元化して、どういうデータがあるのかをきちんと取りまとめることは、一つ重要なところだと思っています。
さらに、その既存データを利用することになると、粒度というのが非常に重要になってきます。この粒の細かさというところです。非常に細分化されたデータがあれば、その分、より深い分析ができるというところで、統計データというと、かなり集計されたような形で公開されている、例えば県全体における何々の割合とか、件数とか、それがもう少し細分化されていても、例えば市町村レベルにおける数字みたいな形でしか公開されていないことは多々あったりしますが、そうなってくると、それ以上、細かなレベルでの分析ができなくなってしまうわけです。
先ほどの交通事故のケースで、あれは一件一件について、これはどこでいつどういうふうに起こった事故ですということがあったから、あのような形で詳細なデータ分析ができたんですけれども、仮にあれが市町村レベルにおける死者数という形で集計化されてしまうと、それ以上、細かな分析ができないというようなところがあります。
そうしたところで、粒度の高いという言い方をしますけれども、細分化されたデータを使えるようにしていくことが、より詳細な現状把握や分析が可能となるという意味で、非常に重要になってくると思います。
この辺りも中央のレベルでは、特に研究者に対するところなんですが、県、国が持っている統計データを一元化することや、外部のこうした研究者が活用しやすくなるようにいろいろな規制緩和をするというような取組は、本当にここ数か月ぐらいで大きく進んでいますが、そうした取組をしていくことが、そこは中央の話ですけれども、県においてもそうしたデータの利用可能性を高めていくことは、一つ統計データを含めた利用可能性を高めていくことになると思っています。
以上、私からのお話とさせていただきます。政策立案におけるデータ・エビデンスの活用を具体例とともに幾つかお示しをさせていただいた上で、最後、議会、議員の方々に期待されることで、お話をさせていただきました。ありがとうございます。
(主な質疑)
【委員】
最近、データやエビデンスを基にこうだと言われると、そうなのかなと思う。また、言い合いになったとき、発言にエビデンスがあるかと言われ、私の感覚ですというと、そのようなことは信用できないという話になることもある。
ただ、よく見ていくと、そのデータというのは、取り方や集計の仕方や信頼性が確保されていないと、その活用を恣意的にすることも可能である。例えば、我々が理事者から見せられたデータが、都合のよいものばかりを並べられることもあるといえる。
それに対して、不安を感じており、そういうところを防いでいくためには、どのようにデータを作り、利用していくとよいのか。
【参考人】
データといっても、よいデータと悪いデータが当然あり、統計はうそをつくみたいな本がたくさんあるように、そこは非常に重要なポイントになる。そこに特効薬があるかというと、必ずしもなく、個々のデータを取り扱う人のデータリテラシーを高めていくしかない。
よく言われるのが、データに基づく結果という何かを示されたときに、素人は結果を見る、玄人は方法を見るという。80パーセントという数字が出たというときに、それを見て、80パーセントかと見るのがデータの素人、その80パーセントという結果がどのように得られたのかを考えるのが玄人という言い方をよくする。そのような形で、単に表面的な数字だけを見るのではなくて、それがどのように得られた結果としての80パーセントなのかきちんと吟味をしていく目を養うことは必要になってくる。
したがって、特効薬はなく、データリテラシーを高めていくしかないと思う。
【委員】
データを活用することにより、最適な政策が打てると言っていたが、我々の仕事は、どちらかというとデータをあまり活用せず、様々な人の意見を聴き、下手をすれば一方的な意見を聴いて、全体の中では2割かもしれないが、そちらの意見を伝えることもある。それが最適な政策ではないかもしれないが、満足度が高い政策かもしれない。
なぜなら、8割の人は無意識で問題を見過ごしており、2割の人はこれを何とかしてほしいと言う。効率で考えれば、その8割の人たちが感じていないことを解決したほうがよいが、2割の人の問題を解決したほうが全体の満足度は上がることもある。
そのようなこととデータとの選択をする方法については、データの活用とどう切り分け、利用していくのか。
【参考人】
データやエビデンスを使うことが非常に重要視されている一方で、データやエビデンスが全てではないという議論も当然あり、近年はエビデンス・インフォームドという、エビデンスも参照した政策立案という言い方がされる。
そこでどのようにいろいろな問題の優先順位をつけていくかにおいて、エビデンスやデータは参照軸の一つとされる。
全てをデータやエビデンスを使って考えろというわけではなく、今までデータやエビデンスが軽視され過ぎていたため、今後はそれもきちんと考慮して物事を考えると受け取ってもらうことが必要であり、データがこうだから、それで全てが決まるわけではないこともあるため、あくまで一つの材料としてのデータやエビデンスになってくると思う。
【委員】
問題解決が政策のつくり方だったが、政治の中の役割として、将来のことを考えて方向性を出していくことも政策の中にはある。そういったものは過去のデータからはなかなか導き出せないものがあると思うが、将来のことについて、データから何か生み出す方法はあるのか。
【参考人】
問題解決のときの問題は、先ほど言った目指すところと現状とのギャップであり、それは現在がマイナスだからということだけではなく、高い目標、将来の目標が別のところにあるのであれば、現在、マイナスではないが、目指すところとのギャップがあるため、そのギャップをどう埋めていくかが問題解決という考え方になる。
したがって、現状マイナスだから、それをカバーするための考え方では必ずしもないところが1点あり、将来どうなっていくか分からないのは、データから将来をシミュレーションしていくことはできるが、試行錯誤が必要になってくると思う。将来は予測できないため、やってみなければ分からないのが正直なところである。きちんとやってみれば分かるような状況で挑戦をしてみる。
先ほど、がん検診のような形で、きちんと将来的にやったことの取組の効果が分かるようなセッティングを作り、試行的にやってみることにより、それが本当にうまくいったのかが分かるため、将来が分からない中で勢いのまま試行するのではなく、検証して、次に生かすことができる形でやることが必要になる。
【委員】
細かいデータがあるとより活用しやすい話はそのとおりだと思うが、いろいろなところにデータがたまったままになっていることも問題だと思う。また、データを作るという手間が膨大になり、なかなか仕事が進まなくなることも現状では起きていると思う。
その中で、細かいデータを蓄積することについては、自動化などで、自然にたまっていくデータみたいなものをまずは先行的にやってみるとよいと思うが、参考人がこれまで関わった中で、手間を増やさずに、新たなデータを蓄積するような先進事例があれば教えてほしい。
【参考人】
自治体は、普通に業務をしていても、データが自動的に集まってくるところであり、先ほどのがん検診の話であれば、検診を受けた人は誰かという調査をしたわけではないが、県や市の制度を使うことになるため、データを取る取らない、検証するしないにかかわらず、誰に送ったか、誰が使ったかというのは、何らかの形で情報としてある。
そのため、それを眠らせているのではなく、きちんと分析に使えるように活用していくことがまず一つあると思う。恐らく思った以上に、たまっていくデータはあると思う。
よって、その辺をすくい上げていき、また民間企業や人工衛星などから得られるデータのうち公開されているものを活用していくことも、検討に入れることはあると思う。
実際、弊社がある県でやった分析は、PM2.5の濃度は、衛星画像として世の中に公開されている。そのため、ある野焼きの対策をしたところとしないところでは、空から見たPM2.5の濃度がどれだけ違うのか検証をしたが、追加のデータ収集コストはかかっていない。そうした形で、データを得るコストを下げていくやり方はある。
【委員】
エビデンスやロジックは大切である一方で、政治は情緒的な部分も実現しなければならない。しかし、ロジックやエビデンスをもらい、それを民意につけていくやり方も当然必要であるため、ロジックやエビデンスは大切だと思っている。
一つ質問があるが、統計データや基礎調査の話について、基礎調査や統計データは、今まで行政が取ってきたものがベースになると思う。しかし、基礎調査は、時代とともに変わる。例えばテレビの視聴率で、昔は視聴率が重要視されたが、ネットの時代では、視聴率だけでは意味がない。そういうネットの指標、視聴回数を立ち合わせるなど、一つの指標でも見方が変わってくるため、今後新たな指標や項目が必要だと思う。
参考人がたくさんの行政と関わってきて、行政がこういった基礎調査をやったほうがよいことや、こういうデータがなかったとの具体的な事例があれば教えてほしい。また、エビデンスに関しても、このような調査をすればよいと思うことがあれば、教えてほしい。
【参考人】
基礎調査について、時間がたつにつれて見方が変わることは当然ある一方で、調査をするというのはある一つのタイミングで調査をしなければいけないので、そこはどのくらいの頻度で調査をしていくかも含めて考えていくことだと思う。
いずれにせよ、現状を把握することは必要になると思うため、どういう調査をすべきかは、ケース・バイ・ケースになってくると思う。
特にこういうところの調査をしたほうがよいのではないかというところは、どの自治体に行っても一番挙げられるのが、少子化対策である。少子化対策のために何をすればよいかを考えたいと、人の出入りは統計データとしてあるが、何が原因で、その人が出ていってしまうのかや、子供を産まなくなっているのかというところは、意見を言い合う形で議論をしているのが現状である。
そこはそのような話をしていても分からないため、きちんと調査をして、どういう原因があるかをきちんとデータとして取らないと、その先には進めない話をいつもしているが、なかなかそれが実施されない。
これは喫緊の課題であり、悠長なことは言っていられないため、議論の中でこの予算の中でできることはこれであると収れんしているのが現状ではないかと思っている。
特にそういう重要なテーマについては、調査をしてもらわないと駄目という話はしており、最近、一緒にやっている自治体ではそうだねという話で、きちんとした調査を行っていく話になりつつあると思うが、どこの自治体でもあるとは思っている。
【委員】
少子化対策と子育て支援は、少子化対策の一つの支援が子育て支援であり、子育て支援をすれば少子化対策になるとは思っておらず、その辺は細分化しないといけないと思う。もしこれもあればだが、少子化対策に取り組む上で、今欠けているデータや指標があれば、教えてほしい。
【参考人】
私自身、分野としての専門は特にないため、少子化や子育て支援について、意見を言うのは難しい立場ではあるが、原因が分からないまま議論するのではなく、考え方の順序としては、そこにどういう原因があるからこういう取組をすると考えていかないと、物事は進んでいかないことは話しており、そこをきちんと調査をしていく流れというのは、徐々にできつつあると思う。
【委員】
行政を見ていると、どうしても手段が目的化することが往々にしてあるが、批判的とは言わないでも、しっかりと我々も見極めて、これは手段なのか目的なのかというところをよく考えていきたいと思う。
【委員】
政策立案をするに当たり、各自治体の地域性、規模や財政力が影響してくると思うが、愛知県は大都市に位置づけされるため、同規模のデータや事例を見なければならないと思う。大都市であると、同規模やそれ以上の都市が少ないことから、データの絶対量が少なくなるが、その辺りをどうやって利用していけばよいのか。
【参考人】
どういう事例を参照していけばよいかというときに、基本は文脈が近いところでというが、その文脈にはたくさんの意味があり、例えば、日本で考えているものについて、アメリカの事例が使えるのかという議論があったりする。日本とアメリカでは全然文脈が違うから使えないみたいな議論はすごく乱暴な議論になっており、もっと細かく具体的なところを見ていく必要があると思っている。
それは特に何かというと、問題の構造がどうなっているのかである。そもそも表面的には同じ取組であるが、その取組がどういう問題に対して対処しようとしている取組なのか、どういう問題の原因があるからそれをやっているのかがある。
そこで、表面的には同じ取組であるが、目的が違うことがある事例というのはなかなかここでは使えないことがあるかもしれないが、別の国で行った事例でも、自分たちが直面している状況と問題の構造、何が原因になっていて、そういう問題が起きているのかというところが似通っている文脈であれば、アメリカやヨーロッパでの状況にかかわらず、場合によっては使えることがあるのかもしれないため、まず、その問題がどういうふうになっているのかという問題構造が類似しているかが一つ、参照点としてあると思う。
その上で、具体的に実施方法としては、いろいろな政治的な制度や、法制度みたいなところに違いがあるため、全然違う文脈というのは使えないのかもしれないが、どういうことをやっていけばよいかという中身の部分に関しては、そういった問題構造というところに注目をすることにより、必ずしも愛知県は、東京都や神奈川県などの事例しか使えないのではなく、細かく見ていけば、場合によっては北海道で起きていることや事例なども参照になることは、あり得ると思うので、その辺はケース・バイ・ケースになるが、何を参照として持ってくるかというのは、いろいろな考え方がある。
【委員】
恐らく、大都市ならではの問題であると思うが、全国的に注目されていることで、まだあまりやることがないものを、他都市の事例の先例としてやっていかなければならない部分もあると思っているため、そういった場合にデータがあまりにも少ない場合には、どう利用していくことがふさわしいのか。
【参考人】
先進的な取組であれば、その効果をきちんと検証していくことが必要である。そこで、これはうまくいくとか、場合によってはうまくいかないというところも含めての学びになると思うが、先進を行く自治体ならではであれば、後続の参考になるように、何かこういうことをやったというところで終わりにするのではなく、やった結果、問題を解決できたのかをきちんと検証していくことが、非常に重要な役割としてあると思う。
【委員】
政治に対してデータとエビデンスの利活用をと言われているが、経験的に、データとエビデンスが一番生かされやすい分野と生かされにくい分野はあるのか。
【参考人】
分野による違いは大きくないと思う。
現状では、ある程度、データが豊富な分野が出てくることはあるため、先ほど言ったとおりである。例えば、警察はすごく細かいデータがたくさんあり、教育分野もそれなりにデータがあると言われており、いろいろな分析がされていることが多いケースにはなってくる。
そうしたところで、この分野だからデータの活用の意義が低いなどの話はないと思うが、現実問題として、利用可能なデータというものが分野によって限られていることはある。
【委員】
データとエビデンスという意味では、何をやったら交通事故が減ったというのが一番分かりやすいと思うが、子育て支援とか、将来を見越した上で何かをやろうとしたときに、財政課がそれをやって何の効果があるのかと言われ、そのようなものに予算は出せないとなってくると、子育ては結構、長期的な視野を考えてやるものであり、そこに心理的なものがかかり、余計に数値で表せないことになってきた場合、行政が持っていない現場から聞いてきた声を、自らのデータをエビデンスにするしかないと思うが、どうか。
【参考人】
すごく難しいと思っており、データが全くないような状況で、何らかの意思決定をしなければいけないとき、事例、意見及びエピソードがあったことは、根拠の一つとなる。
全く何もないよりは、そういう具体的な生の声があったほうが、当然、何かを考える上の材料になるので、全くないよりは、あったほうがいいという話もある。そこはそうした生の声だから駄目というわけではなく、そのようなものも含めて、いろいろな検討材料にしていくことになってくる。ならざるを得ないと思う。
【委員】
本県にもかなり膨大なデータがあると思うが、それを処理していく上で、ChatGPTで、職員がコンサルに相談しなくても自分たちでやっていけるようになれば、膨大なデータも生かせると思う。参考人の立場でChatGPTについて、これからのデータの活用の仕方として将来的にすごくよくなるとか、あれは危ないからやめたほうがよいとかあれば教えてほしい。
【参考人】
新しいツールは、非常に有力になってくると思う一方で、データを使って何をしたいかを考えないと、幾ら便利なツールがあっても使えない。
こういうデータがあれば、こういうことが分かるかもしれないと仮説を立てることは、一番データ分析において重要である。その仮説を検証するためにはどういう分析をすればよいかは、例えば、ある程度自動化してくれているのかもしれないが、何を明らかにするためにデータの分析をするという最初の問題設定は、新しいAI的なものが代替してくれるものではないと思うため、データ分析をして何を知りたいかの設定が重要になってくる。
最近、生成AIがはやっているが、あくまでそれはツールだと思う。よって、そのツールを使って何をするかというところの何が重要なのかなと思っており、たくさんデータがある中、データを使ってこういうことを知りたいところの設定というものは、常に職員がやっていかなければけならないと思う。
他方で、この間の分析というものを非常に簡略化できるというポテンシャルはあると思うため、そこにおいて使うことは十分、あり得ると思う。
【委員】
先ほどから少子化の話が出ていたが、例えば、愛知県では2060年に720万人の人口を残すという目標を立てているが、それに対して合計特殊出生率を2030年までに1.8に上げて、それから10年後の2040年には2.07に上げていくとしており、その中で期限が決まってくるが、バックキャスティングがある。目標に対してどういう政策を打っていくかにEBPM(証拠に基づく政策立案)は何か使えるツールになるのか。
今ある政策に対してエビデンスがあるかどうかはすごく分かりやすいが、そういった将来に向けて考えていくときのツールとして使える可能性があるのか。
【参考人】
まず、最初の、弊社のほうで生成AI等を使っているかについて、一部、使い始めているところがある。
特に情報収集でかなりコストを下げられるようになってきたところで、エビデンスでいうと、たくさん国内外の論文とかを探して、そこで何が言われているのかを調査をすることが結構ある。
ある取組、例えば少子化問題なら少子化問題で、そこについてどういうこれまでの研究の蓄積があるのか、こういう取組に対してどういうエビデンスがあるのかというときに、そういったものを使い、学術論文とか報告書というものを効率的に収集し、さらに、そこで見つかった論文の要約を作ってくれるところまで一気通貫でやってくれるものが開発されており、そうしたものは情報収集をしていく中で、学生を雇って集中的に論文を読んでもらい、まとめてもらうことをしていたが、その辺の代替ができる目星がついてきているレベルではないかと思っている。当然、完全に任せることはできないが、そういうところでの可能性は高いと思う。
質問からずれてしまうかもしれないが、そうしたいろいろなことを知りたいが、情報収集や得られた報告書を一から十まで全部読んでいられないときに、そこの要約を作ったり、そういうところではすぐにでも使っていけるような部分はあるのかなと思う。
もう一つの質問の、バックキャスティング的な思考は、別にEBPMだからという話ではなく、物事は、特に問題解決とか政策については、目指すべきところからバックキャスティングで考えていくことが本当に基本的なところであり、それは何のためにやっているのかという話で、取組からこじつけのように目指すべきところにつなげることが実際起きているため、EBPMに限らず、目指すべきところをやるためには何が必要かで、それをやるためには、どういうことをやっていけばいいのかという考え方は、基本的なところになる。
よく弊社でもアウトカム志向というような言い方をしているが、こっちが目指すところがあっての取組だという話は常にしている。
【委員】
人口の話であると、積み上げていくのかこっちから来ているのか分からないが、求める答えは720万人に対して何かほかの方法を見つけてくれるような、人口の合計特殊出生率だけではなく、何か新しい答えがあればありがたいと思い伺った。政策は自分たちでつくるということで考えていきたいと思う。