委員会情報
委員会審査状況
県民環境委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月14日(木) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
環境局長、同技監、環境政策部長、地球温暖化対策監、資源循環推進監、
関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第3款 県民環境費の内
第5項 環境対策費
第6項 自然環境費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 文化芸術の振興及び文化財の保護について
2 青少年の健全育成及び県民・NPOとの協働の推進について
3 男女共同参画社会の形成の促進について
4 生活環境及び自然環境の保全について
5 地球温暖化対策について
6 県民文化局及び環境局の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
まず初めに、あいち地球温暖化防止戦略費の戦略推進費のうち、PPAについて伺う。
PPAとは、パワー(電力)、パーチェス(購入する)、アグリーメント(契約)の略で、電力購入契約あるいは電力販売契約と言われ、発電事業者が電気の需要家、今回でいうと自治体や企業になるが、敷地内の建物や土地に太陽光発電設備を設置して、所有及び維持管理をした上で、発電した電気を需要家に供給するもので、需要家は、太陽光発電設備の導入の初期費用を負担することなく、使用する電気を再生可能エネルギー電気に切り替えて、自ら排出する温室効果ガスを削減することができる仕組みである。
電気の需要家、施設所有者とPPA事業者、電力使用者と、それぞれにメリットがあり、事業所の再生可能エネルギーの導入促進に向けられた切り札として、今、社会的に期待されている。
カーボンニュートラルの実現には、本県自らも、事業者、消費者としての立場から、県の事務事業に伴い発生する温室効果ガスを率先して削減することが必要である。そのような中、県は昨年8月に全ての事務事業について、環境負荷軽減に向けた率先行動内容や取組目標、推進体制を定めた、愛知県庁の環境保全のための行動計画であるあいちエコスタンダードを一部改正し、県の事務事業に伴い発生する温室効果ガスの排出量の削減目標の引上げや取組の強化を行っている。
あいちエコスタンダードでは、県有施設や県有地における温室効果ガスの削減のため、建物や土地における自家消費型の太陽光発電設備の導入を促進し、必要に応じてPPAモデルの活用も検討する。
まず、PPAの事業目的と、今年度どのように取り組み、どのような結果になっているのか伺う。
【理事者】
本県では、今年度、県有施設、県有地への太陽光発電設備の積極的な導入を推進し、県の事務事業に伴って排出される温室効果ガスを削減するため、県の建築物や土地におけるPPAの実施可能性を調査した。
この調査では、全ての県有施設、県有地を対象として、PPAによる太陽光発電設備の導入希望を庁内各課室に照会し、希望があった18施設の中から、設置する設備の重さに耐えられないと判断した10施設を除いた8つの県有施設、県有地について、詳細な分析、検討を行った。
具体的には、PPAで県が負担する1キロワット時当たりの電気料金は、導入する太陽光発電設備の自家消費率や発電効率等に左右され、現在払っている電気料金よりも高くなるおそれがある。このため、8施設について太陽光発電設備の最適な規模や配置等を検討した上で、PPAを実施した場合に想定される1キロワット時当たりの電気料金を試算し、現在の電気料金等と比較、検討を行った。
この結果、PPAの電気料金と大手電力会社が供給するCO2フリー電気相当の電気料金を比較した場合には、8施設のうち、1施設はPPAの電気料金はCO2フリー電気の電気料金を下回り、2施設は同水準、残りの5施設は上回ると試算された。
【委員】
初年度に18施設の応募があり、そのうち可能性がある8施設について検討しているということで理解した。
コストについては、CO2フリー電気の電気料金を下回るのが1施設、同水準が2施設、残り5施設が上回るとのことである。
それを受けて、来年度はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
来年度は、今年度の試算結果を踏まえ、PPAの電気料金がCO2フリー電気相当料金を下回る1施設と同水準の2施設について、各施設を管理する課室と協議し、PPAの実施の可否を見極めた上で、PPA事業者の公募、審査を行い、太陽光発電設備の導入を進めていきたい。
【委員】
8施設のうち3施設、電気料金のコストが下回る施設と同水準の施設については実施し、コストが上回る5施設については実施しないことと理解した。
本事業は、温室効果ガスの削減をコストで賄うかどうかの議論だと思うが、私はあまりコストをかけてCO2を削減させることを是としていないため、今の答弁の方針でよいのではないかと考えている。
最後に、今年度は愛知県全庁に導入希望をかけて、18施設の応募があり、県有施設の分母から考えれば少ないと思うが、来年度は、もう一度応募をかけ、今年度の取組を実施していくのか。
【理事者】
今年度の庁内照会において、施設管理を担当する各課室が今回のPPAの調査等を希望しなかった理由として、屋根や未利用地において一定規模の設置スペースが確保できない、建物が住宅地に存在するため、反射光や変圧機器の振動、騒音による住民への影響が懸念される、建物の老朽化が進んでおり、今後、長寿命化工事や屋根の防水工事など建物の改修工事を行う予定であり、10年から20年という長期のPPA契約を締結すると、これらの工事に支障を来す可能性があるという意見であった。
また、PPAに対する施設管理担当課室の理解が十分でなかったことも要因ではないかと考えている。
そこで、今回導入希望がなかった施設等についても、今年度の結果を踏まえ、各種庁内会議等を通じてPPAに対する理解への浸透を図るとともに、導入をまた新たに働きかけて、需要を掘り起こしていきたい。
【委員】
今年度の取組を来年度ももう一度働きかけることも必要だと思うが、本来は面積や温室効果ガスの削減など一定の目標があり、そのために必要な施設数を検討すべきではないかと思う。全庁的に、目的と目標を明確にしながら取り組んでほしい。
また、今回手を挙げた施設の中に学校が入っていない。もちろんこのPPAを導入すると、15年、20年、長ければ30年と施設の改修等が行えないため、長期的に見ると手を挙げにくいことは分かるが、学校も県有施設であり対象施設になると思う。学校は避難所にもなり得る場所であり、太陽光発電設備にあわせて蓄電池を設置するケースもあるため、蓄電池の設置について要望する。
このPPA事業は、愛知県の事業であるが、社会的に期待されている仕組みでもあり、愛知県の事例が今後、社会に普及していくこともある。他県では民間の取組に補助制度を設けている事例もあるため、検討してほしい。
以前は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により太陽光発電の急速な拡大につながったが、これからは、売電収入に加えて一定の補助金を上乗せした金額が支払われる制度(FIP制度)や、PPAがこれからの太陽光発電の普及、拡大を担う主力のスキームになると思う。FITから脱却を余儀なくされる発電事業者と、再生可能エネルギー電気を求める企業とを結びつけるのがPPAであり、事業所の再生可能エネルギーの導入に向けた切り札として期待されているため、愛知県の取組が先進的な事例になるよう期待する。
次にSDGs推進フェア開催費について伺う。
SDGs、日本語で持続可能な開発目標に掲げる、2016年から2030年までの15年間で達成すべき17のゴールと169のターゲットに取り組み、達成することは必要であり、環境分野においては、カーボンニュートラルの実現、地球温暖化防止対策、循環型社会の形成、生物多様性の保全などの項目がある。
ただ、SDGsとさえ言えば、実際に実態が伴っていなくてもよいことをしているという風潮も感じており、そのような実態が伴っていないことを揶揄する表現でSDGsウォッシュという言葉があるが、若干違和感を覚えることもある。また、SDGsが環境問題のことと捉えられている風潮にも異論がある。
SDGsは先ほども言ったとおり、持続可能な開発目標、その持続可能な社会、世界を築き上げるために、世界中にある社会問題を世界全体で解決していこうとするもので、17のゴールと169のターゲットで構成されている。そこには多くの地球環境や自然環境に関する問題が含まれているが、差別、貧困、格差、人権、ジェンダー、経済など、重要な社会課題もSDGsの大きな目標として掲げられている。SDGsに取り組むならば、こうした分野にも目を向けるべきである。
169のターゲットのうち、環境分野がどれだけあるかを調べたが、明確にする文献や資料はなく、所管課にも確認をしたが、区分けは困難とのことであった。
そもそも持続可能な3側面で、環境、経済、社会というのは一体不可分、統合されており、分けたり切り離したりできないという考え方が基本的に貫かれているため、環境分野だけ区分けするのが難しいことは分かっている。
それでも、環境分野が多く占めていることに私自身異論はないが、先ほど話したように、169のターゲットのうち、環境分野以外にも重要な社会課題が多く占めているのも事実であり、少なくともSDGsイコール環境問題ではないことは、誰もが理解しなければならない。
そうした考え方の中、環境局の予算で、環境局がSDGs推進フェアを所管することに違和感がある。環境に関するイベントならよいが、本来はSDGs全般のフェア、イベントであるため、県全体でSDGsを所管し、取りまとめ等を行っている部局が行うべきである。そして、SDGsの大多数を占める環境分野に関しては、環境局が担うのが筋である。
そこでまず、県として、SDGs全般の取組や推進体制についてどこの部局が所管するのか、そして、このSDGs推進フェアは既に2020年から4年間開催されているイベントであるが、このイベントは環境分野に特化した環境イベントなのか、SDGs全般の普及啓発を推進するイベントなのか、さらにその考え方や、事業の目的、具体的内容、これまでの成果などを伺う。
【理事者】
まず、SDGs全般の推進の体制についてであるが、本県では、知事を本部長とする愛知県SDGs推進本部の下、SDGs全体の取りまとめを政策企画局が担当し、県民文化局、保健医療局、教育委員会など、各分野に関係する部局がそれぞれの取組を進めている。
環境局においても、SDGs達成に向けて環境分野の取組を行っているところであり、その一環としてSDGs推進フェア、正式にはSDGs AICHI EXPOと言っているが、これについては環境政策課が担当している。
次に、SDGsフェアの目的、内容等であるが、SDGsの達成には、経済、社会及び環境という三つの側面を、調和を図りながら統合的に向上させていく必要があるため、SDGs AICHI EXPOは、SDGs全般について、県内全域への普及、浸透を図り、企業、大学、NPO等の各主体間のコミュニケーションの促進やパートナーシップの構築を目的として開催している。
具体的な内容としては、出展企業、学校、NPO等を募集し、各ブースでSDGsを意識した事業や商品、サービス、SDGsに貢献する取組などを紹介、PRしてもらうほか、ステージイベントとして企業向けのSDGs経営セミナーなどの講演、NPOやユネスコスクールの取組紹介、さらには家庭向けのSDGsを題材にした様々なショーやお笑いステージなども実施している。
これまでの成果として、出展者の数では、1回目の2020年度は89者、2回目は102者、3回目は120者、4回目の今年度は125者と年々増加している。また、参加者数も毎年度増加しており、今年度は1万6,967人であった。
さらに、来場者アンケートを実施しているが、8割以上の人がSDGsに関する理解が深まったと回答しており、SDGsに対する理解促進につながったと考えている。
【委員】
環境局に言うのは違うと思うが、SDGs全般の所管については、今答弁があったとおり政策企画局である。また、SDGs推進フェアが環境に特化したイベントではなく、SDGs全般のイベントであれば、環境局が所管するのはおかしいと思う。
先ほども言ったように、SDGsイコール環境問題と思われるのが本意ではないため、SDGs全体をバランスよく進めるためにも、再考してもらえたらと思う。
今年度のフェアについて、私も現地へ行ったが、様々な企業、団体等の出展があり、新たな技術、取組などすばらしい出展がたくさんあった。また、多くの来場者でにぎわっており、イベントとしてはすばらしいものだと感じている。
一方で、SDGsフェアと言いながら、やはり環境関係の出展が多かったように感じている。環境局が所管すると、どうしても環境分野に偏ってしまうという懸念があるが、昨年のフェアについて、環境分野以外の出展状況と、どのような出展募集をしているのか伺う。
そして、SDGs推進フェアでは、主催者である県も広いブースを出展していたが、県の展示内容はどのように決め、どのような内容になっていたのか。
【理事者】
出展については、特に環境分野だけに絞らず、SDGsの幅広い取組を対象としており、例年3月に記者発表を行い、県のウェブページに掲載するとともに、過去の出展団体や企業、学校、自治体等にも情報提供を行い、積極的な参加を呼びかけている。
今年度の環境分野以外の出展内容は、例えば、障害者の自立支援をしている企業や、留学生等の就労支援や知的障害に関する福祉サービスを提供するNPO、国際協力や企業の海外展開支援を行う団体などが出展していた。
また、大学、学校のブースでは、SDGs全般の取組を紹介するブースが多かったが、予防医学や理学療法に関する紹介を行った学校もあった。自治体等のブースでは、分野に限らず、優れた取組を行っているNPOを紹介するブースや、障害者支援の活動を紹介するブースもあった。
また、県のブースについて、SDGsは環境以外の多くの分野が関わるため、県庁の全部局から希望を募り、ブース内の配置や展示時間等を調整し、できる限り出展できるようにした。
今年度は、あいちCOOL CHOICEや、三河湾環境再生プロジェクトなどの環境分野の取組紹介に加え、歩行環境シミュレーターを用いた交通安全の体験講座や、家具固定の実演をする防災対策の紹介、そして、女性活躍応援制度の紹介なども実施した。
【委員】
環境局が主催ではあるが、環境に特化したイベントでなく、SDGs全般のイベントになっており安心した。ただ、SDGsイコール環境問題で、環境だけが大事と思われないよう、バランスの取れた取組を進めてほしい。
私の主観も含まれるが、環境分野はカーボンニュートラルや温暖化、循環型社会や生物多様性など、それだけで社会の認知があるが、SDGsの大事な要素である人権や差別、貧困やジェンダーといった問題は、なかなか日の目が当たらないため、そうした問題こそ、SDGsという推進力を使いながら、社会の理解促進を図るべきであると思う。決して環境問題が悪いとは言わないが、SDGsというのであれば、ぜひバランスを取ったイベントになるようにしてほしい。
【委員】
あいち地球温暖化防止戦略費の戦略推進費のうち、あいち脱炭素経営支援プラットフォーム事業について伺う。
本県は日本一の産業県であり、温室効果ガス総排出量は全国最多クラスである。排出量のうち約6割を占めるのが、産業、業務部門であり、この削減は非常に重要である。
大企業については、カーボンニュートラルの実現に向けて、削減目標や削減計画の策定、省エネルギー及び再生可能エネルギー設備の導入など様々な取組を進めていると思うが、サプライチェーンの一端を担う多くの中小企業については、資金や人材等の課題があり、脱炭素経営に向けての取組はまだまだ十分進んでいないと感じる。
2023年の7月に商工中金が実施した、中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査においても、約7割の企業がカーボンニュートラルの影響を受けていると回答したものの、具体的な方策を実施していると回答した企業は2割弱にとどまっているのが現状である。
そのため、本県は今年度、環境省の地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業において、全国16のモデル地域の一つに選ばれ、金融機関や経済団体等と連携しながら、中小企業の脱炭素経営の支援に取り組んでいると聞いている。
この事業を来年度もやっていくとのことであるが、今年度のモデル事業についてどのような事業を実施したのか。
【理事者】
中小企業等の脱炭素経営は、資金や人材等に課題があるため、ふだんから接点を持っている地域の金融機関や、商工会議所をはじめとする経済団体等によるプッシュ型支援が効果的である。
そこで、モデル事業では、昨年11月に本県が中心となって、金融機関や経済団体、行政機関など56機関による、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを設立し、プッシュ型で中小企業等の脱炭素経営を地域ぐるみで支援する体制を構築した。
また、このプラットフォームでは、中小企業等に対する個別の支援として、様々な相談に対応するワンストップ相談窓口を設置するとともに、金融機関等が専門家による省エネ診断の受診を働きかけ、診断後のフォローアップまで行う伴走型省エネ診断のほか、中小企業や金融機関等の職員を対象に、脱炭素の知識を持つ人材の育成を実施した。
【委員】
プッシュ型支援が大事ということで、56機関のプラットフォームをつくり、ワンストップ相談窓口の設置や、伴走型支援をしてきたとのことである。
この支援のうち、伴走型省エネ診断について、具体的に伺いたい。今年度の伴走型省エネ診断の対象企業数はどのように決定されたのか。また、どのような業種や規模の企業が選ばれたのか。
また、支援内容として、金融機関や経済団体等と連携した省エネ診断による温室効果ガス排出量の削減に関するアドバイスが行われたと承知しているが、支援の実施状況や成果、その満足度等々を示すデータや事例があるか。
さらに、伴走型省エネ診断を通じて、対象企業の温室効果ガス排出量の削減量や削減率、経営効率や競争力の向上等の効果がどの程度見込まれるのか、また、それを定量的に評価できる指標や方法があるのか。
そして、伴走型省エネ診断の実施に当たり、どのような課題や困難があったのか、また、その対策や改善策はどのように検討されたのか。
【理事者】
まず、伴走型省エネ診断の対象企業数については、環境省の予算の制約や事業内容の検討に時間を要し、募集開始が10月下旬に遅れたため、24社となった。
診断を受けた中小企業等の業種は、製造業22社、サービス業1社、卸売・小売業1社であり、規模は資本金1億円以下の企業が22社である。
次に、支援の実施状況や成果などについてであるが、専門家が24社に訪問の上、設備確認やヒアリング等を行い、運転管理の改善や設備導入による126件の省エネ提案を実施した。CO2削減効果としては、1,683トンが見込まれている。
また、診断後のアンケートでは、回答があった全ての関係者から、伴走型省エネ診断の仕組みは効果的であるとの回答を得るとともに、企業からは、専門家による改善提案が有益である、金融機関等による診断後のフォローアップが心強い、金融機関等からは、企業との協力関係が築きやすい、脱炭素経営に関する知識が深まるといった、大変好評な意見を多数得た。
そして、省エネ診断を通じた効果については、診断結果を踏まえ、今後、受診企業には、改善提案の実施の可否を金融機関等のフォローアップを受けながら検討し、約1年後を目途に取組状況を報告してもらうことになっている。
最後に、伴走型省エネ診断の課題としては、事業の実施期間が短い、診断の結果報告を丁寧に実施してほしい、取組の実施に向けては人材確保が難しいといった意見をもらっている。
このため、募集の前倒しや、省エネ診断の受診企業を対象とした人材育成事業の実施等の改善を図っていきたい。
【委員】
大体の企業が非常に満足しており、温室効果ガスに関しても削減量が見込まれている、また、今年度の場合は予算の制限や、準備等々で募集開始が10月下旬からであり、対象企業は24社ということであった。
そこで、来年度のプラットフォーム事業は、今年度の成果や評価を踏まえて継続、拡大する予定があるのか、また、継続、拡大する場合は、対象企業の選定基準、選定方法、選定数をどのように決めていくのか。
最後に、支援内容について、今年度のモデル事業の経験やフィードバックを基に、どのように改善、強化するのか、また、新たに取り入れるべき支援の内容や方法があるのか。
【理事者】
まず、来年度のプラットフォーム事業の予定についてであるが、今年度のモデル事業の成果を踏まえ、ワンストップ相談窓口の設置や伴走型省エネ診断、人材育成を引き続き実施するとともに、プラットフォームへのさらなる参画を関係機関に呼びかけていく。
次に、伴走型省エネ診断についてであるが、中小企業等を対象に、今年度と同様、先着順で23社を予定している。
そして、今年度のモデル事業を踏まえた改善等についてであるが、伴走型省エネ診断の受診企業には、ワークショップ等の人材育成事業にも参加してもらい、脱炭素経営に関する人材育成を進めるとともに、診断結果の丁寧な説明等により、省エネ診断実施後の実効性の向上を図っていく。また、新たに脱炭素経営体制の構築や経営方針の策定等をコンサルティングしていく。
こうした取組により、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを核として、様々な機関と連携しながら、中小企業の取組状況に応じたきめ細かな支援を進めていきたい。
【委員】
今年度は国の事業であった支援事業であるが、来年度は県において継続して進めていくことについて、大変評価、期待している。
燃料高の昨今、燃料費の削減も企業にとってありがたい取組であり、その過程で温室効果ガスが削減される見込みがあるということであれば、双方にとってメリットがある。
今年度の事業では、24社の企業に専門家の伴走型省エネ診断が行われ、実際にどのような効果があったのか、具体的な数字や感想を聞くことができて大変参考になった。特に温室効果ガス約1,700トンの削減効果があること、126件の省エネ提案を実施したという結果は、省エネによる環境貢献だけではなく、経営効率や競争力の向上にもつながっていくのではないか。
また、企業からのフィードバックや感想では、専門家の的確な診断や指導に満足している声も聞かれたが、改善点ということであれば、募集から省エネ診断の実施までの事業期間や予算が確保できれば、より多くの企業の診断ができるのではないか、また、していかなければならないのではないかと思う。いろいろな意味で、経済が活性化すれば税収にも反映されるため、こういったことも考えた上で進めてほしい。
来年度のプラットフォーム事業を継続、拡大し、今後さらに多くの企業が伴走型支援を受けられるようになっていけば、県として温室効果ガスを減らすことができ、企業も経営効率が上がっていくという双方を実現する事業であるため、ぜひとも来年度の中でしっかりと事業を検証し、次々年度にも向けて頑張ってほしい。
【委員】
予算に関する説明書128ページの先進環境対応自動車導入促進費補助金について伺う。
これは、中小企業や旅客貨物運送事業者に対して、先進環境対応自動車を購入した際に補助金を出すというものであり、まず、補助単価の見直しとして、燃料電池自動車(FCV)については60万円から100万円の増額、もう一つは、燃料電池(FC)トラックを新規に補助対象に追加するという説明があった。
一方、補助単価の見直しの中で、プラグインハイブリッド(PHV)については、車両の普及状況に応じて補助単価を見直すため20万円から10万円に減額されるが、この辺りのいきさつについて伺う。
【理事者】
先進環境対応自動車導入促進費補助金における乗用車の補助単価については、限られた予算の中で効果的な補助制度とするため、車両の普及状況や環境性能に応じて今回見直しを行うものである。
PHVについては、補助金の申請台数が2021年度は190台、2022年度は334台、今年度2023年度の見込みが852台と年々増加しており、FCVやEVと比較して普及が進んでいること、またガソリン走行があることなどを踏まえ、現行の20万円から10万円に引き下げることとした。
《一般質問》
【委員】
来年度予算、今年度予算もそうだが、毎年のようにカーボンニュートラルや地球温暖化対策、いわゆる温室効果ガス削減に向けて様々な事業があり、多額の予算が投じられている。
これらの事業は温室効果ガス削減目標に向けての手段であるが、こうした予算や事業を行いながら、どの程度温室効果ガスが削減され、目標に対して現在どのような状況にあるかを伺う。
背景として、国において2021年10月に地球温暖化対策計画が改定され、2050年にカーボンニュートラルを実現することと、その中間、2030年度の温室効果ガス総排出量を2013年度比から46パーセント削減する目標を、国がまず掲げた。
これを受けて、本県においても国の計画と整合する形で、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指し、2030年度の温室効果ガス総排出量の削減目標を、2013年度比で26パーセント削減だったものを46パーセント削減、国と同じに引き上げることとして、2022年12月にあいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)を策定した。
そのような中、昨年の世界平均気温は、気象庁によれば統計開始以来最も高い値となった。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、地球温暖化の時代は終わった、地球沸騰化の時代が到来したと述べるなど、気候変動の深刻さはますます危機迫るものがあり、地球温暖化対策は喫緊の課題となっている。
そのような中、国の2020年度の温室効果ガス総排出量は、2013年度比で21.8パーセント削減となっているが、昨年3月に発表された本県の2020年度の排出量は2013年度比で15.8パーセント削減となっており、国よりも削減が進んでいない。
国より進んでいないことも気になるが、それ以上に、2030年度まであと10年もない中で、今の削減量が目標に対して、計画どおりなのか、それとも全然達成できていないのかが不明である。
愛知県の温室効果ガス削減目標は、2030年度で2013年度比46パーセント削減であるが、産業、業務、家庭、運輸など、主要部門における削減目標値と、部門ごとの2020年度の削減状況はどのようか。
そして、これが一番肝腎だが、本県の温室効果ガス総排出量について、2030年度の2013年度比46パーセント削減、中間の目標に対しての進捗をどのように評価しているのか。
【理事者】
2030年度における部門ごとの削減目標であるが、産業部門で34.6パーセント削減、業務部門で69.2パーセント削減、家庭部門で77.6パーセント削減、運輸部門で46.2パーセント削減など、各部門で戦略に基づく施策による温室効果ガスの排出削減を見込んでおり、これらを合算することで県内の温室効果ガス総排出量は2013年度比で46パーセント削減となり、これを削減目標としている。
それから、2020年度における部門ごとの削減状況であるが、産業部門が13.1パーセント削減、業務部門が30.2パーセント削減、家庭部門が25.6パーセント削減、運輸部門が15.0パーセント削減となっている。
進捗の評価であるが、本県の温室効果ガス総排出量は、2013年度以降は減少傾向にある。また、最新の2020年度の排出量は、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、算定を始めた1990年度以降で最小となっている。
しかしながら、本県では、2022年12月に温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げたところであり、日本一のモノづくり県である本県にとって、2030年度における2013年度比46パーセント削減の目標は、大変厳しい目標であると認識している。
2022年度以降は、事業者を対象とした再生可能エネルギー設備及び省エネルギー設備等の導入補助や、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを核とした金融機関や経済団体等と連携した中小企業の脱炭素経営支援など、新たな施策を開始しており、今後もさらに取組を強化していく必要があると認識している。
【委員】
私も感覚的には同じだが、今の値は目標に対して大変厳しい状況である。
2013年度から、2030年度、2050年度へと、単純に直線で総排出量のほうが下がるのか、削減量が上がるのか分からないが、直線なものになるものではないため、本来、その中間地点にそれぞれ目標があるかと思ったが、そういう訳ではない。
そのため、現在地が分かりづらく、2030年になってみないと分からないが、技術革新やイノベーションが伴ってくるため、時代とともに削減量は上がると思う。技術革新を見越しているのであれば、今の段階で計画が立てにくいことは何となく理解できる。
目標の達成が厳しいとのことであるが、2030年度に温室効果ガス削減目標、2013年度比46パーセント削減を達成するため、様々な施策を進めているが、達成するために今後どのように考えているのか、今何が一番必要な対策と考えているのか。
【理事者】
目標の達成に向けては、県民、事業者、市町村等との連携、協働により、産業、業務、家庭、運輸など、あらゆる分野で取組を強化する必要があると考えている。とりわけカーボンニュートラルの実現に向けては、従来の取組の延長線上にはない、革新的、独創的なイノベーションを具体化していくことが必要になる。
このため、来年度、CO2固定コンクリートの社会実装を目指すカーボンリサイクルプロジェクトや、物流のFC化モデルを構築する物流脱炭素化プロジェクトといった、愛知発の技術革新を伴うプロジェクトの事業化を支援し、県内に幅広く展開していく。
また、新たに、街中における低炭素水素の需要を創出するためのモデルタウン事業や、EV・PHVの充電設備を設置する事業者等への補助を開始するなど、目標達成に向け、引き続きしっかりと取り組んでいく。
【委員】
温室効果ガスの削減の目標があり、そのための手段として様々な施策があることは分かっている。12月定例議会でも発言したが、このような施策をするとこれだけ排出量が削減できる、目標を達するためにこのようなことが必要であるということが連動すれば納得できるが、その手段とゴールがしっくりこない。それも必ずしもできるものだとは思っていないが、もう少し分かりやすくなるといいと思う。
大きく二つのポイントがあると思っているが、一つは生活や意識の変容、そしてもう一つは、一番大事なポイントであるが、やはり技術革新やイノベーションである。
生活等の変容は必要であるが、科学、技術によって、ふだんの生活における幸せを享受しながら、温室効果ガスの削減ができることが望ましい。
このような環境問題はどうしてもコストがかかってしまう。どれだけお金を使うかという議論もあるが、イノベーションが起きれば、産業として取り組んで利益が上がり、新たな雇用創出につながるなどのメリットがある。環境分野だけの話ではないが、ぜひとも愛知県の持つメリットや力を生かしながら、特にイノベーションや技術革新にも力を入れてほしい。
【委員】
ごみ処理の広域化・集約化の取組について、本県ではこの取組を1990年代より続けており、現在の取組は2021年度から2030年度までの第3次愛知県ごみ処理広域化・集約化計画の中に位置づけられている。
これまで、ダイオキシンの削減や、3R、すなわちごみ減量、再利用、再資源化など、時代の要請とともに計画の着眼点も変わってきている。
そこで、現在進行しているごみ処理広域化・集約化の第3次計画の内容や特徴など、その概要について、過去の第1次計画、第2次計画の内容と比較してどのようになっているか。
【理事者】
第1次及び第2次の愛知県ごみ焼却処理広域化計画は、1990年代に大きな社会問題となっていた廃棄物の焼却に伴うダイオキシン類の排出削減やリサイクルの推進、市町村財政負担の低減等の観点から、市町村のごみ焼却施設を集約化し、広域的な処理を図ることを目的としていた。
第3次の計画となる愛知県ごみ処理広域化・集約化計画では、廃棄物処理経費の縮減のほか、気候変動対策の推進、災害への対応、環境学習の場など地域への新たな価値の創出等、五つの基本方針を定め、この基本方針を前提に、市町村等の考え方を踏まえた施設整備としている。
具体的には、県内を13ブロックに区割りし、将来のごみ総排出量推計結果を基に、ごみ焼却施設をおおむね1日300トン以上の施設への統合を目指すこととしている。また、2030年度までの10年計画に加え、ごみ焼却施設は20年以上と長期間利用されることから、30年後までの中長期的な方向性も示している。
【委員】
ごみ処理の広域化・集約化の第3次計画では、県内を13のブロックに分けて、広域化・集約化を進めているということである。
私の地元一宮市も、ブロックでいえば尾張西部であるが、稲沢市との間でごみ処理の広域化・集約化について合意し、2030年度には間に合わないが、2034年度の稼働を目指して新たなごみ焼却施設の建設を検討することになっている。
そこで、県内の各ブロックにおけるごみ焼却施設の広域化の数値目標はあるのか、また、既に広域化・集約化が達成できているブロック、あるいは、現在焼却施設の工事が進行中のブロックなどがあると思うが、どのようなところで進んでいるのか。
【理事者】
現在の第3次計画では、2030年度までに、13ブロックで36施設から28施設に集約することを目標としている。その内訳は、現状の施設規模で基準を満たしていることや、期間内で更新のタイミングが合わないことから、七つのブロックでは現状維持となるが、六つのブロックでは17施設から9施設に集約化していく。
また、ブロックの状況について、2030年度までに集約化を目指すブロックは六つある。その内訳として、集約が完了しているのは一つで、知多南部では2022年度に武豊町での集約化が完了している。また、集約化に向けた焼却施設の工事に着手しているブロックが四つあり、尾張北部、春日井、知多北部、豊橋田原が該当する。
このほか、集約化を前提とした工事の環境アセスメントを手続中のブロックが一つあり、岡崎西尾が該当する。さらに、2030年度以降、2050年度までの中長期的な方向として、尾張西部など、六つのブロックで今後の集約化に向けた検討が進められている。
【委員】
第3次の計画の中で、2030年度までに13ブロックのうち6ブロックの集約化が見込まれており、2030年度以降も様々なブロックで集約化を検討しているとのことであった。
ごみ焼却施設の建設というのは、市町村の財政規模を考えたとき、多額の費用を要するために、大きな政策判断が求められる案件であることは間違いない。また、住民の意見を丁寧に聴かなければならないがゆえに、住民意見によって方向性が左右されることもある。
また、個別の話を言えば、収集運搬車両の移動距離が増える、中継施設が新たに必要になる、運搬車両から発生するCO2が増える、分別ルールを統一しなければならないなどの課題も生じてくる。
そうした中で、ごみ焼却施設の広域化・集約化を着実に進めていくため、県はどのように市町村を支援していくのか。
【理事者】
県は、計画の推進に関しても、市町村が立ち上げた広域化ブロック会議に参加するなど、市町村等と情報を共有しつつ、各ブロックにおける課題の解決に向けて助言や先行事例等の情報提供を行っている。
市町村のごみ焼却施設の整備には多額の費用が必要なことから、国の交付金が欠かせないものとなっている。交付金の要件としては、人口要件や、ごみ処理の広域化に関する地域計画を策定することが義務づけられている。また、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法で、新たに市町村の努力義務とされた使用済みプラスチック製品の分別収集、再商品化に対応する必要がある。
このため、県としては、国の交付金が確実に受けられるよう、施設の規模、設備仕様等の助言を行うとともに、プラスチック資源回収に関しては、昨年度より市町村向け研修会を開催し、新制度へのスムーズな対応を後押ししている。
引き続き、各地域で開催される広域化ブロック会議に参加し、進捗状況等の情報共有、技術的な助言を行うなど、計画に基づき、各ブロックのごみ焼却施設の広域化・集約化が図られるよう支援を続けていく。
【委員】
今、県の調整業務や支援業務の一部を紹介してもらったが、最後に要望する。
ごみ焼却施設の広域化の主体は市町村ではあるが、必ずしも市町村に必要な情報が届いているわけではなく、十分なノウハウがあるわけでもない。県には、先行事例、技術情報、交付金申請手続に至るまで、様々な情報を提供し、共有させてほしい。
また、ごみ焼却施設は、かつてのように大量のごみを安全・安心に処分できればよいというだけではなく、地域に対して、例えば頑丈な施設を利用して災害時の防災拠点としての活用や、廃棄物発電によるエネルギーの活用など、新しい価値の提供が求められている。また、地球温暖化対策の観点も必要である。
ごみ焼却施設に対しては、このように多面的な社会ニーズがある中で、市町村を調整する県の果たす役割は大変大きいため、今後もしっかりと市町村への支援に尽力してほしい。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月14日(木) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
環境局長、同技監、環境政策部長、地球温暖化対策監、資源循環推進監、
関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第3款 県民環境費の内
第5項 環境対策費
第6項 自然環境費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 文化芸術の振興及び文化財の保護について
2 青少年の健全育成及び県民・NPOとの協働の推進について
3 男女共同参画社会の形成の促進について
4 生活環境及び自然環境の保全について
5 地球温暖化対策について
6 県民文化局及び環境局の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
まず初めに、あいち地球温暖化防止戦略費の戦略推進費のうち、PPAについて伺う。
PPAとは、パワー(電力)、パーチェス(購入する)、アグリーメント(契約)の略で、電力購入契約あるいは電力販売契約と言われ、発電事業者が電気の需要家、今回でいうと自治体や企業になるが、敷地内の建物や土地に太陽光発電設備を設置して、所有及び維持管理をした上で、発電した電気を需要家に供給するもので、需要家は、太陽光発電設備の導入の初期費用を負担することなく、使用する電気を再生可能エネルギー電気に切り替えて、自ら排出する温室効果ガスを削減することができる仕組みである。
電気の需要家、施設所有者とPPA事業者、電力使用者と、それぞれにメリットがあり、事業所の再生可能エネルギーの導入促進に向けられた切り札として、今、社会的に期待されている。
カーボンニュートラルの実現には、本県自らも、事業者、消費者としての立場から、県の事務事業に伴い発生する温室効果ガスを率先して削減することが必要である。そのような中、県は昨年8月に全ての事務事業について、環境負荷軽減に向けた率先行動内容や取組目標、推進体制を定めた、愛知県庁の環境保全のための行動計画であるあいちエコスタンダードを一部改正し、県の事務事業に伴い発生する温室効果ガスの排出量の削減目標の引上げや取組の強化を行っている。
あいちエコスタンダードでは、県有施設や県有地における温室効果ガスの削減のため、建物や土地における自家消費型の太陽光発電設備の導入を促進し、必要に応じてPPAモデルの活用も検討する。
まず、PPAの事業目的と、今年度どのように取り組み、どのような結果になっているのか伺う。
【理事者】
本県では、今年度、県有施設、県有地への太陽光発電設備の積極的な導入を推進し、県の事務事業に伴って排出される温室効果ガスを削減するため、県の建築物や土地におけるPPAの実施可能性を調査した。
この調査では、全ての県有施設、県有地を対象として、PPAによる太陽光発電設備の導入希望を庁内各課室に照会し、希望があった18施設の中から、設置する設備の重さに耐えられないと判断した10施設を除いた8つの県有施設、県有地について、詳細な分析、検討を行った。
具体的には、PPAで県が負担する1キロワット時当たりの電気料金は、導入する太陽光発電設備の自家消費率や発電効率等に左右され、現在払っている電気料金よりも高くなるおそれがある。このため、8施設について太陽光発電設備の最適な規模や配置等を検討した上で、PPAを実施した場合に想定される1キロワット時当たりの電気料金を試算し、現在の電気料金等と比較、検討を行った。
この結果、PPAの電気料金と大手電力会社が供給するCO2フリー電気相当の電気料金を比較した場合には、8施設のうち、1施設はPPAの電気料金はCO2フリー電気の電気料金を下回り、2施設は同水準、残りの5施設は上回ると試算された。
【委員】
初年度に18施設の応募があり、そのうち可能性がある8施設について検討しているということで理解した。
コストについては、CO2フリー電気の電気料金を下回るのが1施設、同水準が2施設、残り5施設が上回るとのことである。
それを受けて、来年度はどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
来年度は、今年度の試算結果を踏まえ、PPAの電気料金がCO2フリー電気相当料金を下回る1施設と同水準の2施設について、各施設を管理する課室と協議し、PPAの実施の可否を見極めた上で、PPA事業者の公募、審査を行い、太陽光発電設備の導入を進めていきたい。
【委員】
8施設のうち3施設、電気料金のコストが下回る施設と同水準の施設については実施し、コストが上回る5施設については実施しないことと理解した。
本事業は、温室効果ガスの削減をコストで賄うかどうかの議論だと思うが、私はあまりコストをかけてCO2を削減させることを是としていないため、今の答弁の方針でよいのではないかと考えている。
最後に、今年度は愛知県全庁に導入希望をかけて、18施設の応募があり、県有施設の分母から考えれば少ないと思うが、来年度は、もう一度応募をかけ、今年度の取組を実施していくのか。
【理事者】
今年度の庁内照会において、施設管理を担当する各課室が今回のPPAの調査等を希望しなかった理由として、屋根や未利用地において一定規模の設置スペースが確保できない、建物が住宅地に存在するため、反射光や変圧機器の振動、騒音による住民への影響が懸念される、建物の老朽化が進んでおり、今後、長寿命化工事や屋根の防水工事など建物の改修工事を行う予定であり、10年から20年という長期のPPA契約を締結すると、これらの工事に支障を来す可能性があるという意見であった。
また、PPAに対する施設管理担当課室の理解が十分でなかったことも要因ではないかと考えている。
そこで、今回導入希望がなかった施設等についても、今年度の結果を踏まえ、各種庁内会議等を通じてPPAに対する理解への浸透を図るとともに、導入をまた新たに働きかけて、需要を掘り起こしていきたい。
【委員】
今年度の取組を来年度ももう一度働きかけることも必要だと思うが、本来は面積や温室効果ガスの削減など一定の目標があり、そのために必要な施設数を検討すべきではないかと思う。全庁的に、目的と目標を明確にしながら取り組んでほしい。
また、今回手を挙げた施設の中に学校が入っていない。もちろんこのPPAを導入すると、15年、20年、長ければ30年と施設の改修等が行えないため、長期的に見ると手を挙げにくいことは分かるが、学校も県有施設であり対象施設になると思う。学校は避難所にもなり得る場所であり、太陽光発電設備にあわせて蓄電池を設置するケースもあるため、蓄電池の設置について要望する。
このPPA事業は、愛知県の事業であるが、社会的に期待されている仕組みでもあり、愛知県の事例が今後、社会に普及していくこともある。他県では民間の取組に補助制度を設けている事例もあるため、検討してほしい。
以前は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により太陽光発電の急速な拡大につながったが、これからは、売電収入に加えて一定の補助金を上乗せした金額が支払われる制度(FIP制度)や、PPAがこれからの太陽光発電の普及、拡大を担う主力のスキームになると思う。FITから脱却を余儀なくされる発電事業者と、再生可能エネルギー電気を求める企業とを結びつけるのがPPAであり、事業所の再生可能エネルギーの導入に向けた切り札として期待されているため、愛知県の取組が先進的な事例になるよう期待する。
次にSDGs推進フェア開催費について伺う。
SDGs、日本語で持続可能な開発目標に掲げる、2016年から2030年までの15年間で達成すべき17のゴールと169のターゲットに取り組み、達成することは必要であり、環境分野においては、カーボンニュートラルの実現、地球温暖化防止対策、循環型社会の形成、生物多様性の保全などの項目がある。
ただ、SDGsとさえ言えば、実際に実態が伴っていなくてもよいことをしているという風潮も感じており、そのような実態が伴っていないことを揶揄する表現でSDGsウォッシュという言葉があるが、若干違和感を覚えることもある。また、SDGsが環境問題のことと捉えられている風潮にも異論がある。
SDGsは先ほども言ったとおり、持続可能な開発目標、その持続可能な社会、世界を築き上げるために、世界中にある社会問題を世界全体で解決していこうとするもので、17のゴールと169のターゲットで構成されている。そこには多くの地球環境や自然環境に関する問題が含まれているが、差別、貧困、格差、人権、ジェンダー、経済など、重要な社会課題もSDGsの大きな目標として掲げられている。SDGsに取り組むならば、こうした分野にも目を向けるべきである。
169のターゲットのうち、環境分野がどれだけあるかを調べたが、明確にする文献や資料はなく、所管課にも確認をしたが、区分けは困難とのことであった。
そもそも持続可能な3側面で、環境、経済、社会というのは一体不可分、統合されており、分けたり切り離したりできないという考え方が基本的に貫かれているため、環境分野だけ区分けするのが難しいことは分かっている。
それでも、環境分野が多く占めていることに私自身異論はないが、先ほど話したように、169のターゲットのうち、環境分野以外にも重要な社会課題が多く占めているのも事実であり、少なくともSDGsイコール環境問題ではないことは、誰もが理解しなければならない。
そうした考え方の中、環境局の予算で、環境局がSDGs推進フェアを所管することに違和感がある。環境に関するイベントならよいが、本来はSDGs全般のフェア、イベントであるため、県全体でSDGsを所管し、取りまとめ等を行っている部局が行うべきである。そして、SDGsの大多数を占める環境分野に関しては、環境局が担うのが筋である。
そこでまず、県として、SDGs全般の取組や推進体制についてどこの部局が所管するのか、そして、このSDGs推進フェアは既に2020年から4年間開催されているイベントであるが、このイベントは環境分野に特化した環境イベントなのか、SDGs全般の普及啓発を推進するイベントなのか、さらにその考え方や、事業の目的、具体的内容、これまでの成果などを伺う。
【理事者】
まず、SDGs全般の推進の体制についてであるが、本県では、知事を本部長とする愛知県SDGs推進本部の下、SDGs全体の取りまとめを政策企画局が担当し、県民文化局、保健医療局、教育委員会など、各分野に関係する部局がそれぞれの取組を進めている。
環境局においても、SDGs達成に向けて環境分野の取組を行っているところであり、その一環としてSDGs推進フェア、正式にはSDGs AICHI EXPOと言っているが、これについては環境政策課が担当している。
次に、SDGsフェアの目的、内容等であるが、SDGsの達成には、経済、社会及び環境という三つの側面を、調和を図りながら統合的に向上させていく必要があるため、SDGs AICHI EXPOは、SDGs全般について、県内全域への普及、浸透を図り、企業、大学、NPO等の各主体間のコミュニケーションの促進やパートナーシップの構築を目的として開催している。
具体的な内容としては、出展企業、学校、NPO等を募集し、各ブースでSDGsを意識した事業や商品、サービス、SDGsに貢献する取組などを紹介、PRしてもらうほか、ステージイベントとして企業向けのSDGs経営セミナーなどの講演、NPOやユネスコスクールの取組紹介、さらには家庭向けのSDGsを題材にした様々なショーやお笑いステージなども実施している。
これまでの成果として、出展者の数では、1回目の2020年度は89者、2回目は102者、3回目は120者、4回目の今年度は125者と年々増加している。また、参加者数も毎年度増加しており、今年度は1万6,967人であった。
さらに、来場者アンケートを実施しているが、8割以上の人がSDGsに関する理解が深まったと回答しており、SDGsに対する理解促進につながったと考えている。
【委員】
環境局に言うのは違うと思うが、SDGs全般の所管については、今答弁があったとおり政策企画局である。また、SDGs推進フェアが環境に特化したイベントではなく、SDGs全般のイベントであれば、環境局が所管するのはおかしいと思う。
先ほども言ったように、SDGsイコール環境問題と思われるのが本意ではないため、SDGs全体をバランスよく進めるためにも、再考してもらえたらと思う。
今年度のフェアについて、私も現地へ行ったが、様々な企業、団体等の出展があり、新たな技術、取組などすばらしい出展がたくさんあった。また、多くの来場者でにぎわっており、イベントとしてはすばらしいものだと感じている。
一方で、SDGsフェアと言いながら、やはり環境関係の出展が多かったように感じている。環境局が所管すると、どうしても環境分野に偏ってしまうという懸念があるが、昨年のフェアについて、環境分野以外の出展状況と、どのような出展募集をしているのか伺う。
そして、SDGs推進フェアでは、主催者である県も広いブースを出展していたが、県の展示内容はどのように決め、どのような内容になっていたのか。
【理事者】
出展については、特に環境分野だけに絞らず、SDGsの幅広い取組を対象としており、例年3月に記者発表を行い、県のウェブページに掲載するとともに、過去の出展団体や企業、学校、自治体等にも情報提供を行い、積極的な参加を呼びかけている。
今年度の環境分野以外の出展内容は、例えば、障害者の自立支援をしている企業や、留学生等の就労支援や知的障害に関する福祉サービスを提供するNPO、国際協力や企業の海外展開支援を行う団体などが出展していた。
また、大学、学校のブースでは、SDGs全般の取組を紹介するブースが多かったが、予防医学や理学療法に関する紹介を行った学校もあった。自治体等のブースでは、分野に限らず、優れた取組を行っているNPOを紹介するブースや、障害者支援の活動を紹介するブースもあった。
また、県のブースについて、SDGsは環境以外の多くの分野が関わるため、県庁の全部局から希望を募り、ブース内の配置や展示時間等を調整し、できる限り出展できるようにした。
今年度は、あいちCOOL CHOICEや、三河湾環境再生プロジェクトなどの環境分野の取組紹介に加え、歩行環境シミュレーターを用いた交通安全の体験講座や、家具固定の実演をする防災対策の紹介、そして、女性活躍応援制度の紹介なども実施した。
【委員】
環境局が主催ではあるが、環境に特化したイベントでなく、SDGs全般のイベントになっており安心した。ただ、SDGsイコール環境問題で、環境だけが大事と思われないよう、バランスの取れた取組を進めてほしい。
私の主観も含まれるが、環境分野はカーボンニュートラルや温暖化、循環型社会や生物多様性など、それだけで社会の認知があるが、SDGsの大事な要素である人権や差別、貧困やジェンダーといった問題は、なかなか日の目が当たらないため、そうした問題こそ、SDGsという推進力を使いながら、社会の理解促進を図るべきであると思う。決して環境問題が悪いとは言わないが、SDGsというのであれば、ぜひバランスを取ったイベントになるようにしてほしい。
【委員】
あいち地球温暖化防止戦略費の戦略推進費のうち、あいち脱炭素経営支援プラットフォーム事業について伺う。
本県は日本一の産業県であり、温室効果ガス総排出量は全国最多クラスである。排出量のうち約6割を占めるのが、産業、業務部門であり、この削減は非常に重要である。
大企業については、カーボンニュートラルの実現に向けて、削減目標や削減計画の策定、省エネルギー及び再生可能エネルギー設備の導入など様々な取組を進めていると思うが、サプライチェーンの一端を担う多くの中小企業については、資金や人材等の課題があり、脱炭素経営に向けての取組はまだまだ十分進んでいないと感じる。
2023年の7月に商工中金が実施した、中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査においても、約7割の企業がカーボンニュートラルの影響を受けていると回答したものの、具体的な方策を実施していると回答した企業は2割弱にとどまっているのが現状である。
そのため、本県は今年度、環境省の地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業において、全国16のモデル地域の一つに選ばれ、金融機関や経済団体等と連携しながら、中小企業の脱炭素経営の支援に取り組んでいると聞いている。
この事業を来年度もやっていくとのことであるが、今年度のモデル事業についてどのような事業を実施したのか。
【理事者】
中小企業等の脱炭素経営は、資金や人材等に課題があるため、ふだんから接点を持っている地域の金融機関や、商工会議所をはじめとする経済団体等によるプッシュ型支援が効果的である。
そこで、モデル事業では、昨年11月に本県が中心となって、金融機関や経済団体、行政機関など56機関による、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを設立し、プッシュ型で中小企業等の脱炭素経営を地域ぐるみで支援する体制を構築した。
また、このプラットフォームでは、中小企業等に対する個別の支援として、様々な相談に対応するワンストップ相談窓口を設置するとともに、金融機関等が専門家による省エネ診断の受診を働きかけ、診断後のフォローアップまで行う伴走型省エネ診断のほか、中小企業や金融機関等の職員を対象に、脱炭素の知識を持つ人材の育成を実施した。
【委員】
プッシュ型支援が大事ということで、56機関のプラットフォームをつくり、ワンストップ相談窓口の設置や、伴走型支援をしてきたとのことである。
この支援のうち、伴走型省エネ診断について、具体的に伺いたい。今年度の伴走型省エネ診断の対象企業数はどのように決定されたのか。また、どのような業種や規模の企業が選ばれたのか。
また、支援内容として、金融機関や経済団体等と連携した省エネ診断による温室効果ガス排出量の削減に関するアドバイスが行われたと承知しているが、支援の実施状況や成果、その満足度等々を示すデータや事例があるか。
さらに、伴走型省エネ診断を通じて、対象企業の温室効果ガス排出量の削減量や削減率、経営効率や競争力の向上等の効果がどの程度見込まれるのか、また、それを定量的に評価できる指標や方法があるのか。
そして、伴走型省エネ診断の実施に当たり、どのような課題や困難があったのか、また、その対策や改善策はどのように検討されたのか。
【理事者】
まず、伴走型省エネ診断の対象企業数については、環境省の予算の制約や事業内容の検討に時間を要し、募集開始が10月下旬に遅れたため、24社となった。
診断を受けた中小企業等の業種は、製造業22社、サービス業1社、卸売・小売業1社であり、規模は資本金1億円以下の企業が22社である。
次に、支援の実施状況や成果などについてであるが、専門家が24社に訪問の上、設備確認やヒアリング等を行い、運転管理の改善や設備導入による126件の省エネ提案を実施した。CO2削減効果としては、1,683トンが見込まれている。
また、診断後のアンケートでは、回答があった全ての関係者から、伴走型省エネ診断の仕組みは効果的であるとの回答を得るとともに、企業からは、専門家による改善提案が有益である、金融機関等による診断後のフォローアップが心強い、金融機関等からは、企業との協力関係が築きやすい、脱炭素経営に関する知識が深まるといった、大変好評な意見を多数得た。
そして、省エネ診断を通じた効果については、診断結果を踏まえ、今後、受診企業には、改善提案の実施の可否を金融機関等のフォローアップを受けながら検討し、約1年後を目途に取組状況を報告してもらうことになっている。
最後に、伴走型省エネ診断の課題としては、事業の実施期間が短い、診断の結果報告を丁寧に実施してほしい、取組の実施に向けては人材確保が難しいといった意見をもらっている。
このため、募集の前倒しや、省エネ診断の受診企業を対象とした人材育成事業の実施等の改善を図っていきたい。
【委員】
大体の企業が非常に満足しており、温室効果ガスに関しても削減量が見込まれている、また、今年度の場合は予算の制限や、準備等々で募集開始が10月下旬からであり、対象企業は24社ということであった。
そこで、来年度のプラットフォーム事業は、今年度の成果や評価を踏まえて継続、拡大する予定があるのか、また、継続、拡大する場合は、対象企業の選定基準、選定方法、選定数をどのように決めていくのか。
最後に、支援内容について、今年度のモデル事業の経験やフィードバックを基に、どのように改善、強化するのか、また、新たに取り入れるべき支援の内容や方法があるのか。
【理事者】
まず、来年度のプラットフォーム事業の予定についてであるが、今年度のモデル事業の成果を踏まえ、ワンストップ相談窓口の設置や伴走型省エネ診断、人材育成を引き続き実施するとともに、プラットフォームへのさらなる参画を関係機関に呼びかけていく。
次に、伴走型省エネ診断についてであるが、中小企業等を対象に、今年度と同様、先着順で23社を予定している。
そして、今年度のモデル事業を踏まえた改善等についてであるが、伴走型省エネ診断の受診企業には、ワークショップ等の人材育成事業にも参加してもらい、脱炭素経営に関する人材育成を進めるとともに、診断結果の丁寧な説明等により、省エネ診断実施後の実効性の向上を図っていく。また、新たに脱炭素経営体制の構築や経営方針の策定等をコンサルティングしていく。
こうした取組により、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを核として、様々な機関と連携しながら、中小企業の取組状況に応じたきめ細かな支援を進めていきたい。
【委員】
今年度は国の事業であった支援事業であるが、来年度は県において継続して進めていくことについて、大変評価、期待している。
燃料高の昨今、燃料費の削減も企業にとってありがたい取組であり、その過程で温室効果ガスが削減される見込みがあるということであれば、双方にとってメリットがある。
今年度の事業では、24社の企業に専門家の伴走型省エネ診断が行われ、実際にどのような効果があったのか、具体的な数字や感想を聞くことができて大変参考になった。特に温室効果ガス約1,700トンの削減効果があること、126件の省エネ提案を実施したという結果は、省エネによる環境貢献だけではなく、経営効率や競争力の向上にもつながっていくのではないか。
また、企業からのフィードバックや感想では、専門家の的確な診断や指導に満足している声も聞かれたが、改善点ということであれば、募集から省エネ診断の実施までの事業期間や予算が確保できれば、より多くの企業の診断ができるのではないか、また、していかなければならないのではないかと思う。いろいろな意味で、経済が活性化すれば税収にも反映されるため、こういったことも考えた上で進めてほしい。
来年度のプラットフォーム事業を継続、拡大し、今後さらに多くの企業が伴走型支援を受けられるようになっていけば、県として温室効果ガスを減らすことができ、企業も経営効率が上がっていくという双方を実現する事業であるため、ぜひとも来年度の中でしっかりと事業を検証し、次々年度にも向けて頑張ってほしい。
【委員】
予算に関する説明書128ページの先進環境対応自動車導入促進費補助金について伺う。
これは、中小企業や旅客貨物運送事業者に対して、先進環境対応自動車を購入した際に補助金を出すというものであり、まず、補助単価の見直しとして、燃料電池自動車(FCV)については60万円から100万円の増額、もう一つは、燃料電池(FC)トラックを新規に補助対象に追加するという説明があった。
一方、補助単価の見直しの中で、プラグインハイブリッド(PHV)については、車両の普及状況に応じて補助単価を見直すため20万円から10万円に減額されるが、この辺りのいきさつについて伺う。
【理事者】
先進環境対応自動車導入促進費補助金における乗用車の補助単価については、限られた予算の中で効果的な補助制度とするため、車両の普及状況や環境性能に応じて今回見直しを行うものである。
PHVについては、補助金の申請台数が2021年度は190台、2022年度は334台、今年度2023年度の見込みが852台と年々増加しており、FCVやEVと比較して普及が進んでいること、またガソリン走行があることなどを踏まえ、現行の20万円から10万円に引き下げることとした。
《一般質問》
【委員】
来年度予算、今年度予算もそうだが、毎年のようにカーボンニュートラルや地球温暖化対策、いわゆる温室効果ガス削減に向けて様々な事業があり、多額の予算が投じられている。
これらの事業は温室効果ガス削減目標に向けての手段であるが、こうした予算や事業を行いながら、どの程度温室効果ガスが削減され、目標に対して現在どのような状況にあるかを伺う。
背景として、国において2021年10月に地球温暖化対策計画が改定され、2050年にカーボンニュートラルを実現することと、その中間、2030年度の温室効果ガス総排出量を2013年度比から46パーセント削減する目標を、国がまず掲げた。
これを受けて、本県においても国の計画と整合する形で、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指し、2030年度の温室効果ガス総排出量の削減目標を、2013年度比で26パーセント削減だったものを46パーセント削減、国と同じに引き上げることとして、2022年12月にあいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)を策定した。
そのような中、昨年の世界平均気温は、気象庁によれば統計開始以来最も高い値となった。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、地球温暖化の時代は終わった、地球沸騰化の時代が到来したと述べるなど、気候変動の深刻さはますます危機迫るものがあり、地球温暖化対策は喫緊の課題となっている。
そのような中、国の2020年度の温室効果ガス総排出量は、2013年度比で21.8パーセント削減となっているが、昨年3月に発表された本県の2020年度の排出量は2013年度比で15.8パーセント削減となっており、国よりも削減が進んでいない。
国より進んでいないことも気になるが、それ以上に、2030年度まであと10年もない中で、今の削減量が目標に対して、計画どおりなのか、それとも全然達成できていないのかが不明である。
愛知県の温室効果ガス削減目標は、2030年度で2013年度比46パーセント削減であるが、産業、業務、家庭、運輸など、主要部門における削減目標値と、部門ごとの2020年度の削減状況はどのようか。
そして、これが一番肝腎だが、本県の温室効果ガス総排出量について、2030年度の2013年度比46パーセント削減、中間の目標に対しての進捗をどのように評価しているのか。
【理事者】
2030年度における部門ごとの削減目標であるが、産業部門で34.6パーセント削減、業務部門で69.2パーセント削減、家庭部門で77.6パーセント削減、運輸部門で46.2パーセント削減など、各部門で戦略に基づく施策による温室効果ガスの排出削減を見込んでおり、これらを合算することで県内の温室効果ガス総排出量は2013年度比で46パーセント削減となり、これを削減目標としている。
それから、2020年度における部門ごとの削減状況であるが、産業部門が13.1パーセント削減、業務部門が30.2パーセント削減、家庭部門が25.6パーセント削減、運輸部門が15.0パーセント削減となっている。
進捗の評価であるが、本県の温室効果ガス総排出量は、2013年度以降は減少傾向にある。また、最新の2020年度の排出量は、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、算定を始めた1990年度以降で最小となっている。
しかしながら、本県では、2022年12月に温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げたところであり、日本一のモノづくり県である本県にとって、2030年度における2013年度比46パーセント削減の目標は、大変厳しい目標であると認識している。
2022年度以降は、事業者を対象とした再生可能エネルギー設備及び省エネルギー設備等の導入補助や、あいち脱炭素経営支援プラットフォームを核とした金融機関や経済団体等と連携した中小企業の脱炭素経営支援など、新たな施策を開始しており、今後もさらに取組を強化していく必要があると認識している。
【委員】
私も感覚的には同じだが、今の値は目標に対して大変厳しい状況である。
2013年度から、2030年度、2050年度へと、単純に直線で総排出量のほうが下がるのか、削減量が上がるのか分からないが、直線なものになるものではないため、本来、その中間地点にそれぞれ目標があるかと思ったが、そういう訳ではない。
そのため、現在地が分かりづらく、2030年になってみないと分からないが、技術革新やイノベーションが伴ってくるため、時代とともに削減量は上がると思う。技術革新を見越しているのであれば、今の段階で計画が立てにくいことは何となく理解できる。
目標の達成が厳しいとのことであるが、2030年度に温室効果ガス削減目標、2013年度比46パーセント削減を達成するため、様々な施策を進めているが、達成するために今後どのように考えているのか、今何が一番必要な対策と考えているのか。
【理事者】
目標の達成に向けては、県民、事業者、市町村等との連携、協働により、産業、業務、家庭、運輸など、あらゆる分野で取組を強化する必要があると考えている。とりわけカーボンニュートラルの実現に向けては、従来の取組の延長線上にはない、革新的、独創的なイノベーションを具体化していくことが必要になる。
このため、来年度、CO2固定コンクリートの社会実装を目指すカーボンリサイクルプロジェクトや、物流のFC化モデルを構築する物流脱炭素化プロジェクトといった、愛知発の技術革新を伴うプロジェクトの事業化を支援し、県内に幅広く展開していく。
また、新たに、街中における低炭素水素の需要を創出するためのモデルタウン事業や、EV・PHVの充電設備を設置する事業者等への補助を開始するなど、目標達成に向け、引き続きしっかりと取り組んでいく。
【委員】
温室効果ガスの削減の目標があり、そのための手段として様々な施策があることは分かっている。12月定例議会でも発言したが、このような施策をするとこれだけ排出量が削減できる、目標を達するためにこのようなことが必要であるということが連動すれば納得できるが、その手段とゴールがしっくりこない。それも必ずしもできるものだとは思っていないが、もう少し分かりやすくなるといいと思う。
大きく二つのポイントがあると思っているが、一つは生活や意識の変容、そしてもう一つは、一番大事なポイントであるが、やはり技術革新やイノベーションである。
生活等の変容は必要であるが、科学、技術によって、ふだんの生活における幸せを享受しながら、温室効果ガスの削減ができることが望ましい。
このような環境問題はどうしてもコストがかかってしまう。どれだけお金を使うかという議論もあるが、イノベーションが起きれば、産業として取り組んで利益が上がり、新たな雇用創出につながるなどのメリットがある。環境分野だけの話ではないが、ぜひとも愛知県の持つメリットや力を生かしながら、特にイノベーションや技術革新にも力を入れてほしい。
【委員】
ごみ処理の広域化・集約化の取組について、本県ではこの取組を1990年代より続けており、現在の取組は2021年度から2030年度までの第3次愛知県ごみ処理広域化・集約化計画の中に位置づけられている。
これまで、ダイオキシンの削減や、3R、すなわちごみ減量、再利用、再資源化など、時代の要請とともに計画の着眼点も変わってきている。
そこで、現在進行しているごみ処理広域化・集約化の第3次計画の内容や特徴など、その概要について、過去の第1次計画、第2次計画の内容と比較してどのようになっているか。
【理事者】
第1次及び第2次の愛知県ごみ焼却処理広域化計画は、1990年代に大きな社会問題となっていた廃棄物の焼却に伴うダイオキシン類の排出削減やリサイクルの推進、市町村財政負担の低減等の観点から、市町村のごみ焼却施設を集約化し、広域的な処理を図ることを目的としていた。
第3次の計画となる愛知県ごみ処理広域化・集約化計画では、廃棄物処理経費の縮減のほか、気候変動対策の推進、災害への対応、環境学習の場など地域への新たな価値の創出等、五つの基本方針を定め、この基本方針を前提に、市町村等の考え方を踏まえた施設整備としている。
具体的には、県内を13ブロックに区割りし、将来のごみ総排出量推計結果を基に、ごみ焼却施設をおおむね1日300トン以上の施設への統合を目指すこととしている。また、2030年度までの10年計画に加え、ごみ焼却施設は20年以上と長期間利用されることから、30年後までの中長期的な方向性も示している。
【委員】
ごみ処理の広域化・集約化の第3次計画では、県内を13のブロックに分けて、広域化・集約化を進めているということである。
私の地元一宮市も、ブロックでいえば尾張西部であるが、稲沢市との間でごみ処理の広域化・集約化について合意し、2030年度には間に合わないが、2034年度の稼働を目指して新たなごみ焼却施設の建設を検討することになっている。
そこで、県内の各ブロックにおけるごみ焼却施設の広域化の数値目標はあるのか、また、既に広域化・集約化が達成できているブロック、あるいは、現在焼却施設の工事が進行中のブロックなどがあると思うが、どのようなところで進んでいるのか。
【理事者】
現在の第3次計画では、2030年度までに、13ブロックで36施設から28施設に集約することを目標としている。その内訳は、現状の施設規模で基準を満たしていることや、期間内で更新のタイミングが合わないことから、七つのブロックでは現状維持となるが、六つのブロックでは17施設から9施設に集約化していく。
また、ブロックの状況について、2030年度までに集約化を目指すブロックは六つある。その内訳として、集約が完了しているのは一つで、知多南部では2022年度に武豊町での集約化が完了している。また、集約化に向けた焼却施設の工事に着手しているブロックが四つあり、尾張北部、春日井、知多北部、豊橋田原が該当する。
このほか、集約化を前提とした工事の環境アセスメントを手続中のブロックが一つあり、岡崎西尾が該当する。さらに、2030年度以降、2050年度までの中長期的な方向として、尾張西部など、六つのブロックで今後の集約化に向けた検討が進められている。
【委員】
第3次の計画の中で、2030年度までに13ブロックのうち6ブロックの集約化が見込まれており、2030年度以降も様々なブロックで集約化を検討しているとのことであった。
ごみ焼却施設の建設というのは、市町村の財政規模を考えたとき、多額の費用を要するために、大きな政策判断が求められる案件であることは間違いない。また、住民の意見を丁寧に聴かなければならないがゆえに、住民意見によって方向性が左右されることもある。
また、個別の話を言えば、収集運搬車両の移動距離が増える、中継施設が新たに必要になる、運搬車両から発生するCO2が増える、分別ルールを統一しなければならないなどの課題も生じてくる。
そうした中で、ごみ焼却施設の広域化・集約化を着実に進めていくため、県はどのように市町村を支援していくのか。
【理事者】
県は、計画の推進に関しても、市町村が立ち上げた広域化ブロック会議に参加するなど、市町村等と情報を共有しつつ、各ブロックにおける課題の解決に向けて助言や先行事例等の情報提供を行っている。
市町村のごみ焼却施設の整備には多額の費用が必要なことから、国の交付金が欠かせないものとなっている。交付金の要件としては、人口要件や、ごみ処理の広域化に関する地域計画を策定することが義務づけられている。また、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法で、新たに市町村の努力義務とされた使用済みプラスチック製品の分別収集、再商品化に対応する必要がある。
このため、県としては、国の交付金が確実に受けられるよう、施設の規模、設備仕様等の助言を行うとともに、プラスチック資源回収に関しては、昨年度より市町村向け研修会を開催し、新制度へのスムーズな対応を後押ししている。
引き続き、各地域で開催される広域化ブロック会議に参加し、進捗状況等の情報共有、技術的な助言を行うなど、計画に基づき、各ブロックのごみ焼却施設の広域化・集約化が図られるよう支援を続けていく。
【委員】
今、県の調整業務や支援業務の一部を紹介してもらったが、最後に要望する。
ごみ焼却施設の広域化の主体は市町村ではあるが、必ずしも市町村に必要な情報が届いているわけではなく、十分なノウハウがあるわけでもない。県には、先行事例、技術情報、交付金申請手続に至るまで、様々な情報を提供し、共有させてほしい。
また、ごみ焼却施設は、かつてのように大量のごみを安全・安心に処分できればよいというだけではなく、地域に対して、例えば頑丈な施設を利用して災害時の防災拠点としての活用や、廃棄物発電によるエネルギーの活用など、新しい価値の提供が求められている。また、地球温暖化対策の観点も必要である。
ごみ焼却施設に対しては、このように多面的な社会ニーズがある中で、市町村を調整する県の果たす役割は大変大きいため、今後もしっかりと市町村への支援に尽力してほしい。