委員会情報
委員会審査状況
公営企業会計決算特別委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月23日(月) 午後0時58分~
会 場 第8委員会室
出 席 者
森井元志、成田 修 正副委員長
峰野 修、山下智也、今井隆喜、田中泰彦、村瀬正臣、平松利英、
河合洋介、桜井秀樹、阿部洋祐、井上しんや、園山康男 各委員
建設局長、同技監、治水防災対策監、監査委員事務局長、同次長、
病院事業庁長、病院事業次長、監査委員事務局長、同次長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 決 算
決算第13号 令和4年度愛知県県立病院事業会計決算
決算第17号 令和4年度愛知県流域下水道事業会計決算
(令和4年度愛知県流域下水道事業剰余金処分計算書(案)を含
む。)
(結 果)
全員一致をもって認定すべきものと決した決算
決算第13号、決算第17号
全員一致をもって原案を可決すべきものと決したもの
令和4年度愛知県流域下水道事業剰余金処分計算書(案)
<会議の概要>
Ⅰ 建設局関係
1 開 会
2 審査事項の概要説明
3 質 疑
4 採 決
5 休 憩(午後1時53分)
Ⅱ 病院事業庁関係
1 再 開(午後2時4分)
2 審査事項の概要説明
3 質 疑
4 採 決
5 委員長報告の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《建設局関係》
【委員】
決算附属書179ページで、令和4年度の11流域下水道で、約2億7,200万立方メートルの汚水を処理しているとある。その処理された汚水が、愛知県の場合は伊勢湾と三河湾へ排出される。そして、両方とも閉鎖性水域で、外海との水の交換がうまくいっていないため、窒素やリンなどの栄養塩類が滞留し、赤潮が発生しやすい海域であることから、これまで窒素やリンを取り除いてきた。しかし、海が綺麗になり過ぎてしまい、魚介類に影響が出ているため、矢作川と豊川では栄養塩類を管理運転で追加して放流している。
三浦孝司元県議からも、私たちは海を綺麗にするために一生懸命努力してきたが、何のためにやってきたのだろうかと、素朴な疑問をもらっている。
そのような意味で、自然環境を守る感覚と、海の生物を守ることとは、非常に相入れにくい事業だと感じている。
そこで、栄養塩管理運転における社会実験の、2022年度の実施状況について伺う。
【理事者】
矢作川及び豊川浄化センターにおける2022年度の社会実験の実施状況は、11月から3月まで期間を限定し、現行の窒素とリンの排出濃度を、2倍を上限として上げ、各浄化センター周辺海域の水質やノリの色、アサリの身入りなどを調査した。
この結果、極度の赤潮の発生は確認されず、環境への悪影響は見られなかったことや、ノリの色、アサリの身入りもよかったことから、実験の効果があったと考えている。
しかし、浄化センターの管理運転は、排出濃度が毎日変動するため、上限値を超えない範囲で、排出濃度を2倍に近づけるという過度の調整が必要となったことから、現場職員にかなりの負担がかかるとともに、期間中の平均排出濃度も1.1倍から1.4倍程度にとどまった。
【委員】
森下利久元県議が、このままではノリが黒くならず、売れなくなると危惧していた。そのため、さらに大胆に改善してほしいと強く要望していた。
窒素とリンには県基準と国基準があると思うが、2倍という数値の基準について、それは県基準か、国基準か伺う。
【理事者】
昨年度から実施した社会実験は、第9次の県の総量規制の基準の中で、県基準としては、窒素については1リットル中に10ミリグラム、リンについては、1リットル中に1.0ミリグラムまでという基準になっているところを、国の基準である窒素については20ミリグラム、リンについては2.0ミリグラムまで、2倍に緩和をする社会実験を行っている。
【委員】
農林水産委員会で水産試験場へ行ったときに、海中の窒素やリンがどのぐらい含まれているかを非常に丁寧に調べる県の努力を実感した。非常に努力していることは分かるが、漁業関係者にとっては死活問題である。そのときの資料によると、三河湾全域ではなく、矢作川流域下水道付近には効果が見られる。また、豊川も同じように限定的である。そのため、もう少し広範囲に効果が及ぶようにしてもらい、その内容がまだ初歩的な効果であるため、できるだけ速やかに効果が発揮できるような対応や体制をお願いしたい。
今後の取組について、どのように考えているのか。
【理事者】
この社会実験をより効果的に進めるため、学識経験者、漁業関係者、国、県、市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議を立ち上げており、実験結果に基づく効果の検証や社会実験終了後の管理運転の方向性などを検討している。
この中で、現場職員の負担軽減についても要望されているため、その対応なども議論していく。
今年度も9月から社会実験を行っているが、引き続き検討会議などを通じて関係者と連携しながら、水質の保全と豊かな海の両立の実現に向けて取り組みたい。
【委員】
直接的には関係ないかもしれないが、一般の情報として、瀬戸内海でも同じような状況が出ているため、何か実証実験のようなことをしていると聞いている。
できれば、愛知県もそのようなところと連携しながら、より効果が発揮できる仕掛けを水産試験場などと一緒に、漁業協同組合などの当事者たちと相談しながら、より効果が発揮できるよう速やかに対応してもらうことを要望する。
現在、愛知県が、11か所で直営の流域下水道事業を行っていると聞いている。以前、衣浦東部の流域下水道事業で汚泥を燃焼し、その燃焼したかすを燃料として配給、販売していると聞いた。
そのようなエネルギーとして利用していく視点から言うと、ぜひ進めてもらいたい事業である。似たようなことで、下水汚泥を炭化し、火力発電所で利用している。しかし、火力発電所のエネルギーの原料が100だとすると、恐らく0.01ほどしかないと思うが、効果がないとは思わないため、ぜひ進めてもらいたい。
また、豊川流域下水道でも、メタン発酵して出た熱とメタンを利用してトマトの温室栽培を始めたと聞いている。
さらに、下水道の事業用地では、将来の増設用地を、FIT(固定価格買取制度)を活用する太陽光発電業者への貸出しも行っていると聞く。
下水道の処理施設を、エネルギーの処理施設としてより有効的に使っていく取組は、もっと積極的に進めてもらいたい。エネルギー創出について、現状、どのようなところでどのようなことをやっているのか。
【理事者】
これまでのエネルギー創出の取組は、始めに衣浦東部浄化センターでは2012年4月から発生した下水汚泥をもとに、炭化燃料を製造する施設を稼働し、炭化燃料を隣接する碧南火力発電所で石炭と一緒に燃やすことで発電に利用している。
次に、豊川浄化センターでは、下水汚泥をメタン発酵し、発生したメタンガスを燃料とした発電を行い、2017年2月から固定価格買取制度により売電している。また、民間企業がミニトマト栽培ハウスを設置し、放流水の熱を保温に利用している。
さらに、矢作川浄化センターでは2016年12月からメタン発酵により、衣浦西部浄化センターでは2022年4月から焼却廃熱の利用により、それぞれの焼却炉で燃料や使用電力量の削減に取り組んでいる。
なお、下水道資産を活用したエネルギー創出の取組としては、豊川、衣浦西部、日光川下流の各浄化センターで、将来増設用地を貸し出し、民間企業が太陽光発電事業を行っている。
【委員】
メタン発酵は嫌気性発酵のため、あまり臭いは出ないと思うが、エネルギーとしてもう一度使い直すという発想は、大切なことである。イニシャルコストもかかるが、ぜひ、流域下水道の中で使えるエネルギーをもう一度つくっていく取組を積極的に進めてもらいたい。
新城市にある企業団地では、食品残渣や汚泥は持ち込んでいないと聞いているが、民間の施設で結構臭いが出る。このようなメタン発酵や中間処理施設で悪臭対策が非常に問題になるため、企業庁としてもそのようなことがないよう協力してもらう意味で、常にチェックをお願いしたい。環境局と新城市が担当しているが、臭いが出るときと出ないときもあり、処理の仕方の問題など、臭いはうまく処理できないのが実態である。ぜひ、そのような事業に対する下水汚泥の提供など、気をつけて対応してもらいたい。
【委員】
令和4年度愛知県公営企業会計決算審査意見書の24ページ、あいち下水道ビジョン2025における事業の進捗状況について伺う。
あいち下水道ビジョン2025の令和4年度までの事業の進捗状況で、処理場やポンプは、平成30年度に発生した地震の影響を受けたこともあり、耐震化未着手の施設が残る見込みとなり、遅れていることが報告されている。また、近年では原材料の高騰に加え人件費が上がる状況の下、事業への進捗の影響を心配している。
そこで、令和4年度に事業に取り組む中で課題等があれば伺う。
【理事者】
下水処理場、ポンプ場の耐震化が遅れている主な原因は、2018年の北海道胆振東部地震などにおいて長期間の停電が生じたことを契機として、非常用自家発電設備を限られた予算の中で優先して整備してきたことによる。
非常用自家発電設備は、当面の整備が2024年度に完了する見込みのため、今後は、施設の耐震化を重点的に進め、事業の進捗を図る。
また、近年、新型コロナウイルス感染症の蔓延や、ロシアのウクライナ侵攻を契機とした電子部品や鋼材・機械部品など資材確保の長期化や、人件費や材料費の高騰が問題となっている。
このため、資材の調達期間や設備の製作期間を確認することや、予算の繰越し制度により適正な工期を確保するとともに、工事価格に原材料費や人件費の高騰を反映させている。
さらに、予算の債務負担行為などを活用しながら、計画どおり事業の進捗を図るよう進めていく。
【委員】
次に、下水道の普及に関して伺う。
平成19年から豊田市議会議員であった当時と比べて、今は普及に関する考え方が変わってきた気がする。例えば、私の地元豊田市では、当初計画された地区から大きく縮小した。
その理由として、将来にわたって下水道施設を維持するコストと、簡易処理、合併処理浄化槽を推進する動きがある。そこで、本計画の中でどのように影響しているのか伺う。
【理事者】
汚水処理を行う施設には下水道のほか、農業集落排水施設、合併処理浄化槽などがある。
これら汚水処理施設の整備区域は市町村が定め、愛知県が全県域汚水適正処理構想として取りまとめている。この構想の中で汚水処理は、処理する人口の割合で下水道が93パーセントを担い、残りの7パーセントはその他の汚水処理施設が担っている。このため2016年に策定したあいち下水道ビジョン2025においては、下水道普及率は2025年度末の中期目標を85パーセント、最終的には93パーセントを目指して整備を行うこととしている。
しかし、近年では、人口の減少、下水道整備期間の長期化や費用の増大などが課題となっている。この課題に適切に対応するには市町からの財政支援を受けて、合併処理浄化槽を設置することがより効果的な手法であると考える。
このことから2023年3月に、主に市街地周辺の一部で処理区域の見直しを行った。この見直しにより最終的な下水道普及率の目標は90.5パーセントとなり、これに向けて整備を進めている。
【委員】
私の地元にも、下水道を整備しても、結局つながない人がいるため、課題があると思っている。
最後に、今後の下水道普及に関する愛知県の考え方と、取組の方向性について伺う。
【理事者】
県は、2023年3月の全県域汚水適正処理構想の見直しもあり、下水道の普及だけではなく、汚水処理全体の普及の向上も目指している。
汚水処理全体の普及は、具体的には、全人口のうち汚水処理施設を使うことのできる人口の割合である汚水処理人口普及率を、2021年度末の92.3パーセントから、2026年度末に概成となる95.2パーセントに向上させることを目標としている。
目標の達成に向けて各市町村は、整備手法を定めたアクションプランを作成し、進捗管理を行っている。
また、合併処理浄化槽は、整備時に宅内の配管やトイレの改装に要する費用についても助成対象とするなど財政支援の拡充を行っている。
県として、今後はアクションプランの進捗管理への支援などにより、汚水処理全体の普及を推進する。
【委員】
豊田市は918平方キロメートルでかなり広域であり、下水道を全部通すことはあり得ないと思っている。また、当初立てた計画を住民は覚えており、自分の地域はいつ来るのかと思っている。しかし、計画が見直され、そのことが地域に伝わらず、期待があっても結局来ないという実態がある。
今後、下水道ビジョン2025にもあるように、いろいろな計画、指標がある中で、下水道普及率も必要だが、例えば、答弁にあった汚水処理人口普及率など、分かりやすい指標を加えたほうが、そこに住んでる人がより理解しやすいと思う。
【委員】
公営企業会計決算審査意見書23ページの、愛知県の流域下水道事業会計における経営状況に関する審査意見の中身を見ると、引き続き電気料金の高騰による影響が懸念されるが、関係市町と連携した下水道の普及促進や汚水処理の広域化・共同化の取組を戦略的に進めるとともに、計画的かつ適切な施設整備・更新による費用の縮減を図るなど、中長期的な視点に立った健全な事業経営に努められたいと記載されている。
この件について、私は2018年の9月定例議会で、流域下水道における持続可能な事業運営に向けた対応策と取組状況を質問し、知事からは、施設の統廃合などの広域化・共同化が有効であり、県内全ての市町村とともに広域化・共同化計画の策定に向けて検討を着手したと答弁があった。
言うまでもなく下水道は日常生活で目立たない施設だが、常に適切に稼働することが求められる重要な社会インフラであり、その機能の持続のためには、汚水処理施設の広域化・共同化の推進が必要不可欠である。
そこで、県では昨年度末、広域化・共同化に関する計画を取りまとめたと聞いているが、その内容はどのようなものか、また、広域化・共同化に関する現在の状況について伺う。
【理事者】
本県では2023年3月に県内全市町村と連携し、汚水処理の広域化・共同化計画を策定している。この計画ではハード面の連携として、県内にある下水道や集落排水施設、コミュニティプラントという汚水を処理する247施設のうち、4割強に当たる103施設の統廃合を位置づけている。
この103施設のうち79施設が流域下水道へ接続される計画となっており、これは本県が11流域下水道を広域的に整備している特徴を生かし、流域下水道を核として広域化・共同化に取り組んでいる。
現在の進捗は、矢作川流域下水道で幸田町の2か所の農業集落排水施設を既に接続している。
また、日光川上流流域下水道へ一宮市単独公共下水道を接続する取組をはじめ4か所の施設で統廃合に向けた工事に着手している。これら施設の統廃合に加え、汚泥処理の共同化にも取り組んでいる。
衣浦西部浄化センターでは、単独公共下水道を運営している周辺3市と共同焼却炉を建設し、2022年度から運転を開始している。
さらに、県内11流域下水道を対象とした共同汚泥処理の取組として、衣浦西部浄化センターに共同焼却炉を整備することとしており、2023年度内の契約を目指している。
一方、ソフト面の連携では維持管理業務の共同化、下水道事務や災害訓練、人材育成など、様々な分野において共同化の取組を進めている。この取組により、業務の省力化や危機管理体制の強化、非常時を含めた人材の確保・育成を図ることで経営の安定化を図る。現在の進捗状況は、近隣市町での管路施設の点検、調査業務などの共同発注や、職員研修の共同化など、既に七つの取組を実施している。
【委員】
今後について、広域化・共同化をこの計画に沿って着実に進めていくためにどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
広域化・共同化計画を着実に進めていくために、本年度それぞれの取組について、完了までに解決が必要な課題やスケジュールなどを記載した進捗管理表を市町村とともに作成している。
今後は、この進捗管理表を用いて広域化・共同化を進める市町村に対し、着実な取組の推進に向けた情報提供や助言などの働きかけを行っていく。また、新たな取組についても、積極的に検討や調整を進め、必要に応じ5年を目途に行う計画見直し時に新たなメニューとして計画に追加する。
県としては引き続き市町村と連携して、しっかりと広域化・共同化を進める。
【委員】
市町村としっかり連携をしていくことが大変重要であるため、これからも、進捗管理表を作って、指導助言など働きかけをしっかりと行ってもらいたい。
次に、決算審査意見書24ページ、あいち下水道ビジョン2025の進捗状況に関する記載があるが、このビジョンの中で下水道の役割として、地域社会、地球温暖化対策へ貢献すると記載がある。温室効果ガスの低減が掲げられているが、温室効果ガス削減については世界的な脱炭素の流れの中、国は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言した。
本県でも2022年12月に、あいち地球温暖化防止戦略2030を策定し、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すという長期目標の下、その途上である2030年度を目標年度として、本県の温室効果ガスの排出量を2013年度比で46パーセント削減することとしている。
そこで、これまでの下水道事業における温室効果ガス削減の取組状況について伺う。
【理事者】
下水道は下水処理の過程で多くのエネルギーを使用する施設であり、あいち下水道ビジョン2025では地球温暖化対策の観点から、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量の削減に努める必要があるとしている。そのため、自ら使用するエネルギーを低減させ、また、自らが有するエネルギーを有効活用して、地球温暖化防止に貢献するという目標を掲げている。
下水処理から発生する温室効果ガスは、電力使用や燃料使用による二酸化炭素の排出、下水処理汚泥の焼却に伴うメタンと一酸化二窒素の排出がある。なお、メタンは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は二酸化炭素の298倍の温室効果がある。
これまでの取組はエネルギー利活用を積極的に進め、焼却補助燃料の削減や購入電力量を削減することで、これらに起因する温室効果ガス削減を進めてきた。そのほかに、使用電力量が多い機器は更新時に省電力型機器に変更したり、管理棟などの照明をLED化するなど電力消費量の削減による温室効果ガスの削減に努めてきた。
【委員】
しっかりと取り組んでいるが、2030年度に向けての取組状況を伺う。
【理事者】
温室効果ガス削減については、愛知県の事務事業における温室効果ガスの排出量削減のための計画であるあいちエコスタンダードを、環境局が本年8月に改定した。
この計画では、県の全ての事務事業から発生する温室効果ガスの削減目標が示されており、事務事業からの排出量の4割を占める下水道事業は、2030年度の排出量を2013年度比で53.8パーセント削減することを目標としている。
2030年度に向けての今後の取組として、温室効果が高い一酸化二窒素の排出量を削減するために排出抑制型焼却炉の導入、処理場で最も電気を使用する送風機について高効率型送風機の導入、温室効果ガスが発生しない太陽光発電により発電した電力の自家利用、機器特性を生かした運転方法の工夫による省エネ運転などにより温室効果ガス削減を進めている。53.8パーセントの削減目標に向けてこれらの取組を進めるとともに、2050年カーボンニュートラルに向けてさらなる新技術の導入を検討し、取り組みを進めていく。
【委員】
流域下水道における老朽化対策について伺う。
決算審査意見書24ページ、あいち下水道ビジョン2025に、2022年度末の下水道処理人口普及率は81.0パーセントと記載されている。
また令和4年度愛知県流域下水道事業の2ページ、愛知県下水道図には豊川流域下水道の供用年度が昭和55年度とあり、供用開始後42年が経過している。
私の地元岡崎市の下水道は本年度事業着手から100周年を迎え、普及率も89.3パーセントと整備も相当進んでおり、岡崎市からは、今後の整備は老朽化施設の更新が主体になってくると聞いている。
そこで、今後は老朽化施設が増大していくと思うが、流域下水道の老朽化対策の現状はどうなっているのか伺う。
【理事者】
下水道施設は県民生活を支える重要な施設であるため、日常生活や社会活動に重大な影響を及ぼす事故の発生や処理機能の停止を未然に防止することが重要と考えており、流域下水道の施設では損傷の劣化が進行する前に、適切な対策を行う予防保全型の維持管理を実施している。
具体的には、管路や機械設備のように点検により劣化状況を把握できるものについては、修繕を行うか更新するかを常時判断した上で、適切な時期に更新を行う。また、電気設備のような劣化状況の把握が難しいものについては、耐用年数などにより定期的に更新を行う。
こうした予防保全型の維持管理を流域下水道別にストックマネジメント計画として、点検方針、更新の実施方法や時期及びコスト縮減効果などを定め、効率的な老朽化対策を進めている。
【委員】
予防保全型の維持管理を進めているとのことだが、実施するに当たって今後どのような取組を進めていくのか、具体的に伺う。
【理事者】
予防保全型の維持管理をより効率的に実施していくためには、点検調査により得られた維持管理情報を蓄積し、そのデータを今後のストックマネジメントに活用していかなければならない。このため、まずは今年度管路台帳の電子化を進め、来年度から運用を開始する予定であり、以降、処理場施設台帳でも順次電子化を進める。
また、施設の健全度を適切に把握するためには、点検調査についても技術の高度化が必要と考えており、これにはデジタルトランスフォーメーションの推進が有効である。
例えば、下水道管路内調査点検用ドローンの技術があり、管路内の水位が高い場所で水上走行して点検調査するドローンや、管路内を飛行して点検調査するドローンなどがある。いずれも危険なマンホール内に入ることなく点検調査ができるため、作業員の安全を確保できる技術である。
今後は、このような新技術の活用についても検討しながら、継続的に効率的かつ安全な点検調査に取り組む。
《病院事業庁関係》
【委員】
決算審査意見書の28ページより、がんセンターでは令和3年度と比較して、令和4年度は入院・外来患者数とも減少している。
私の地元の病院に聞くと、コロナ禍の影響でそもそも病院から足を遠ざける、ワクチン接種にマンパワーを取られる、コロナ患者を受け入れる部屋を確保しなければならないなど、様々な要因があるので単純な話ではないと承知している。
地元の消化器専門の病院の理事長からは、通常だと例えば大腸がんでも初期段階で発見されるケースが多いが、病院離れが続き、症状がひどくなり検査をするとステージⅣであったなど、助けられる命が助けられなくなっているため、病院離れに悩まされているという話もあった。
がんセンターも同じ状況である中で、患者確保の観点では最先端の医療の提供が必要である。
令和2年2月定例議会の議案質疑で尋ねたが、がんセンターは令和元年9月にがんゲノム医療拠点病院という指定を国から受けており、最先端の医療であるがんゲノム医療を推進している。
そこで、このがんゲノム医療をどのように進めてきたのか、また、重点プロジェクト1期の成果及び2期の進捗状況について伺う。
【理事者】
がんゲノム医療に関してはがん組織を対象に、がん遺伝子パネル検査で多くの遺伝子を一度に調べて、個人に最適な治療を選択する医療であり、令和元年6月から保険診療として開始された。がんゲノム医療は最先端のゲノムを扱う研究的な医療のため、がんゲノム医療中核拠点病院と拠点病院でのみ行えるエキスパートパネルと呼ばれる専門家会議で検査結果を精査し、治療方針を主治医に提案するという拠点型で実施されている。エキスパートパネルには、医師以外にゲノム医科学、遺伝医療的、情報科学の専門家が必要になる。
愛知県がんセンターでは拠点病院として研究所と病院が協力することで、県民に最適ながんゲノム医療を提供できる体制を整えている。さらに、がん治療の受皿になるような治験あるいは臨床試験の数も国内屈指で、自施設でがん遺伝子パネル検査から治療まで完結できる体制を取っている。このため紹介患者も非常に多く、自施設でのがん遺伝子パネル検査数は国内でもトップクラスとなっているため、県民にがんゲノム医療を届けることができている。
もう一方の重点プロジェクトであるが、研究所と病院を併設しているがんセンターの総合がんセンターとしての機能を最大化することで、がん医療やがん予防の革新を実現し、県民にいち早く還元することを目的に開始されている。
第1期については、2019年度から2021年度までの3年間で、がんの新たな予防、診断、治療法の開発に有用な基盤となる生体試料、診療の情報などの収集、基盤技術の開発を行っている。これらの基盤を個別研究に発展させることで、研究成果の発出に加えて、外部研究資金獲得の大幅な増加による研究力の強化、特許の取得や企業との共同研究による臨床応用推進を実現してきた。
2022年度からの第2期に入ってからは、第1期のさらなる強化を図っており、がん診療のガイドラインを書き換える研究成果の発出、外部研究資金を獲得して、がんの全ゲノムを解析するがんゲノム医療の次に来る医療に当たる研究を実施し、県民への還元も実現している。
【委員】
がんゲノム医療拠点病院について、愛知県のみならず周辺の地域からもがんセンターへ入りたい、あそこで検査を受けたいという人が多数いると思う。ぜひ期待に応えてほしいが、通院、入院患者が令和4年度は少し減っていたため、これから回復し、さらに、がんセンターの進めている先進医療が周知されることを期待している。
次に、決算審査意見書の3ページに、今後は不足している医師を確保するとともに、職場定着を促進すると書かれている。そのようなことが求められている状況だが、現在の医師の充足状況及び医師の確保に向けて、どのように取り組んでいるのか。
【理事者】
医師の充足状況は本年10月1日現在で定数249人に対し、現員227人で22人の欠員となっている。
医師確保対策については、病院長や関係診療部長が大学医局等に直接出向いて働きかけを行っているほか、全国の医学系大学への公募やホームページでの募集等を継続して行っている。
さらに医師確保で最も重要なことは、高度な専門医療を習得できる魅力ある病院であることであり、最先端医療機器の導入や、がんゲノム医療の推進、小児救急といった高度・専門的かつ先進的な医療体制の整備・充実に取り組んでいる。
県民に良質な医療を提供し続けることは県立病院の使命でもあるため、今後もより一層診療機能を高め、医師にとって高度な専門医療を習得できる病院として魅力を感じてもらえるよう努めたい。
【委員】
22人医師が足りないことがよく分かった。優秀な人材の確保のためにも、病院職員の働き方改革が待ったなしである。
一方で、働き方改革を進めるためには、増員が必要であるが、病院の経営状況を見ると大変な状況の中で、増員を行うには、損益だけを見ればマイナスに働くと思うが、医師や看護師の負担軽減のための働き方改革にどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
時間外労働の上限規制が2024年度から医師にも適用されることを受け、これまで県立病院では様々な取組を行ってきた。例えば、ICTを活用して、職員の勤務状況を管理する勤怠管理システムの導入や、医師事務作業の補助者の配置をはじめとした他の職種へのタスクシフト、医師を対象にした意識改革の研修などの取組を順次実施している。
質の高い医療を提供しつつ、医師や看護師をはじめとした全てのスタッフが健康で充実して働き続け続けられる環境を実現するためにも、働き方改革は重要な課題であると認識しており、引き続き働き方改革に取り組んでいきたい。
【委員】
総論的に民間の病院は当然利益を上げなければいけない中で、不採算な分野にはなかなか手が出しにくいとなると、公営の県立病院等が積極的にそのような分野にも取り組んでいかねばならない。県立病院の根本は利益を追求することではないが、県民の税金であり、県民からも非常に注目される面もあるため、ぜひ、県民の期待に応えて県立病院の運営を行ってもらいたい。
【委員】
地域医療機関との連携について伺う。
決算審査意見書の3ページ、審査意見の中で、経営改善の一環として地域の医療機関との連携を一層推進するとある。県立病院は救急、小児、精神など、不採算・特殊部門に係る医療、また先ほど、がんゲノム医療についての説明もあったが、民間病院では限界のある高度、先進医療等を担っている面からも、今後も地域医療機関との連携を強化して、中核的な役割を果たしていくべきである。
そこで、地域医療との連携に向けた各病院の具体的な取組について伺う。
【理事者】
がんセンターでは地域医療連携の取組として、病診・病病連携を積極的に実施しており、医療連携室の土曜日稼働や、2次検診の積極的な受入れ、検診機関、区医師会長、開業医等への訪問、中部地区がん医療連携学術講演会を実施するなどの取組を進めている。
また、クリニックからの紹介をスムーズにするために、今年の8月からウェブサイトでの予約を開始した。診療科によっては、地域のクリニックや病院を集めた勉強会の実施、レントゲン写真やCT等の画像の読影、カンファレンスの実施によって顔の見える形で連携を図っている。
また、病院長は、月1回開催される千種区の医師会定例会議をはじめ医師会の集まりに参加をしている。さらに、相談支援センターを充実させ、今年の8月から新たに入退院支援加算1を取得し、収益の向上を図っており、12月頃から、場合によってはもう少し早くから入院時支援加算を算定することを予定している。
これらにより収益増のみならず、入院患者に対して、入院前から退院後まで一貫して滞りない支援を行うことで、より充実した支援が可能となると考えている。なお、令和4年度の紹介率は99.2パーセント、紹介件数は5,119件であり、連携している病院の数は令和5年8月現在で902である。
【理事者】
精神医療センターでは地域医療連携の取組として、ほかの病院では行えない修正型通電療法や、治療抵抗性統合失調症に対する唯一の薬であるクロザリルの投与などをより積極的に受け入れ、クリニックや入所施設などとの連携を強めるとともに、オープンホスピタルの導入により、地域診療所やクリニックの医師が当院の非常勤医師として準緊急枠という外来診療で最も入院に結びつく診療を担当してもらい、地域との連携を深めている。
また、地域の診療所やクリニックを対象としたアンケートの実施などによりニーズを把握し、それに応えていけるように努めている。
なお、令和4年度の紹介率は58.1パーセントで、紹介件数は447件である。
【理事者】
当センターでは地域医療連携の取組として、県民公開講座やあいち小児医療懇話会、あいち小児周産期セミナー、地域の医師団と連携した顔の見える地域連携の会などを開催して、症例に関する勉強会等の情報発信を積極的に行うとともに、周産期部門のセミオープンシステムと地域の診療所等との連携を強化した。
また、他の病院や行政機関等との連携をより迅速かつ円滑に行うため、これまで火曜日から土曜日だった診療日を、令和5年1月から月曜日から金曜日に変更した。
救急科及び集中治療科は愛知県小児重症患者相談システムを運営しており、愛知県内4大学のICUとの役割分担も含めて、愛知県全域から重症患者のスムーズな受入れ体制を整えている。
産科はNIPT(新型出生前診断)や、胎児エコーによる出生前診断を地域の産科医療機関に啓発する活動を積極的に行い、検査を希望したり、異常の見つかった妊婦の紹介を積極的に受け入れている。
小児心臓病センター及び新生児科は中京病院及び名古屋大学などと連携して、1人の患者に対する治療方針を協議して、治療の役割分担を行うこともしばしばある。愛知県周産期医療協議会、アレルギー疾患医療連絡協議会、あいち医療的ケア児支援センターなど、各分野における専門医療施設の協議会等に参加して、専門施設の中における当センターの特殊性をアピールしている。
なお、令和4年度の紹介率は67.1パーセント、紹介件数は7,224件であり、連携している病院の数は令和5年10月現在で1,133と、令和4年度と比較して16件増えている。
【委員】
地域医療機関との連携、取組を進めているとのことだが、中核的な病院の役割として、やはり地域医療の向上に向けた人材育成にも取り組んでいく必要がある。
地域医療の向上に向けた人材育成の取組について伺う。
【理事者】
人材育成を含めた地域医療の向上に資する取組を行うことは、県立病院の重要な役割の一つと考えている。県立病院はそれぞれの専門分野で地域医療の中核的役割を担っており、医師の専門研修の基幹病院として若手医師の研修を積極的に受け入れているほか、看護師等の養成校が行う実習の受入れ、地域の医療関係者が集まる勉強会の開催及び講師の派遣、医療関係者を含む一般県民を対象とした公開講座の開催などの取組を実施している。
特にがんセンターでは、都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受けていることから、県内の医師や医療従事者向けの研修会を開催しており、それぞれの病院において地域の医療水準の向上に努めている。
【委員】
最後に、いろいろな地域医療との交流、また、人材育成の取組があったが、外部の人材の活用を通じて、医師や看護師人材の確保についての取組を進めていくとよいのではないかという提案も含めて質問する。
今まで地域の医療機関と連携していくとともに、外部人材を活用していくことも不足する県立病院の人材確保という面でも有効であり、また、地域医療の医療技術の向上、医療機関の発展に向けた取組であると同時に、県立病院の人材確保という面でも有効だと考えるが、外部人材の活用の状況について伺う。
【理事者】
地域の医療機関と連携していく上で、外部人材を活用することも有益な手段の一つである。
実際、精神医療センターでは、オープンホスピタルという取組を行っており、地域の開業医の理解を得て精神医療センターの外来診療の一部を担ってもらうことにより、地域の患者に入院医療が必要となったときの外来から入院、またはその逆の入院から外来の流れをスムーズにするとともに、現在欠員が生じている医師の確保対策にも資するものとして実施している。
また、各病院の専門とは異なる手術や処置を行う必要が生じた際には、外部の医療機関の医師や医療従事者に依頼し、医療行為を行ってもらうことも実施している。
【委員】
決算審査意見書の28ページ、病床利用率の低下について伺う。
各センターの病床利用率は、各センターともコロナ禍前には戻っていないが、特にがんセンターの病床利用率が前年と比較して低下している。また決算審査意見書の4ページにあるように、各病院とも医師の欠員が生じている。医師の欠員により、患者の受入れが最大限できないのではないかという懸念がある。
そこで令和4年度の各病院の病床利用率についてどのように分析しているのか、また、医師の欠員が患者の受入れや病床利用率に与える影響について伺う。
【理事者】
まず、病床利用率について、決算審査意見書の29ページの病院全体の表に記載があるように、令和4年度の入院延べ患者数は全体で20万7,302人、稼働病床利用率は64.5パーセントである。
記載はないが、コロナ禍前の令和元年度の入院延べ患者数25万129人、稼働病床率77.6パーセントと比較すると4万2,827人、13.1ポイントの減であり、コロナ前を下回っている。
病院別の病床利用率の分析だが、令和3年度の実績との比較では、決算審査意見書の28ページに記載があるように、がんセンターについては令和4年度の稼働病床利用率は63.4パーセントであり、令和3年度の68.4パーセントと比較すると5.0ポイントの減少となった。
減少の主な理由は、新型コロナウイルス感染症の影響による5月及び12月に実施したセンター全体の入院制限や、各病棟の感染状況に応じて適宜実施した病棟閉鎖の影響によるものと考えている。
精神医療センターについては、令和4年度の稼働病床利用率は69.5パーセントであり、令和3年度の62.6パーセントと比較すると6.9ポイントの増加となった。
増加の主な理由は、医師の欠員対策として近隣のクリニックの医師を臨時雇用し、入院につながる外来の準緊急枠を増やしたことで新入院患者が増加したことなどによると考えている。
あいち小児保健医療総合センターについては、令和4年度の稼働病床利用率は61.1パーセントであり、令和3年度の63.3パーセントと比較すると2.2ポイントの減少となった。
減少の主な理由は、小児の新型コロナウイルス感染症の患者が増加し、新型コロナウイルス感染症専用病床及び他の感染症病床を確保するため、その他の疾患においても早期の退院を促す調整を進めたことによると考えている。
また、医師の欠員による影響だが、令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響による患者数の減少があったため、病床利用率減少への直接的な影響はないと考えているが、一般的には患者数に直結するため、引き続き医師の確保に努めたい。
【委員】
決算審査意見書の32ページの損益計算書について、経常損益が前年度と比較して約20.9億円の悪化、そして約6.2億円の赤字となっている。
令和3年度はコロナ関連の補助金などで黒字になっているが、令和4年度決算において、経常損益が大幅に悪化した要因について伺う。
【理事者】
令和4年度の経常損益が大きく悪化した主な要因は、収益面で病院事業全体の入院延べ患者数が、新型コロナウイルス感染症の影響などで前年度と比較して4,541人減少したことにより入院収益が約2億円、大規模集団接種会場における新型コロナウイルスワクチン接種事業の縮小によりワクチン接種料が約8.3億円減少したことである。
また、費用面で職員の欠員補充などにより給与費が約5.3億円、電気ガス調達価格の高騰により光熱費が約3.5億円増加したことなどによる。
【委員】
次に、経常損益が大幅に悪化した要因として、新型コロナウイルス予防接種事業の縮小が要因の一つとのことだが、新型コロナウイルス予防接種事業の具体的金額について伺う。
また併せて、新型コロナウイルス感染症関連の空床補償に係る補助金の金額についても伺う。
【理事者】
税込みだが、大規模接種会場でのワクチン接種料収入3.5億円余りから支出を控除した概算の収支差は約2.1億円であり、令和3年度の約7.7億円と比較して、約5.6億円の減少となっている。
なお、令和4年度の支出は、職員の手当・旅費等が0.2億円、他病院の医師等の人件費、旅費相当額が1.3億円である。
次に、新型コロナウイルス感染症関連の空床補償に係る補助金について、病院事業全体で、15億5,619万余円であり、昨年度の15億3,023万余円とほぼ同水準となっている。
病院別であると、がんセンターが1億7,756万余円、精神医療センターが9億3,088万余円、あいち小児保健医療総合センターが4億4,774万余円である。
【委員】
経常損益が大幅に悪化した原因の一つとして、給与費の増加が要因の一つとのことだが、前年度と比較して給与費が約5.3億円増加した主な要因について伺う。
【理事者】
給与費が増加した主な要因は、職員の欠員が補充できたことである。
年間平均の在職者の数は、あいち小児保健医療総合センターは10人増加、がんセンターは3人増加しており、給与費が増加した。このほか、給与改定による増、退職給付費の増、時間外勤務手当の増などがあり、合計で約5.3億円の増加となった。
良質な医療を提供していく上で医療スタッフの確保は必須であるが、給与費の増加は収益的にはマイナスに働くため、患者数に応じた適切な人員配置に努める。
【委員】
決算審査意見書の32ページの損益計算書を見ると、当年度の未処理欠損金が約453億円と多額になっている。
また、今後一般会計からの長期借入金の返済も始まる中で、昨年度の決算で経常損益は約6.2億円の赤字と大変厳しい経営状況である。また、人件費、給与改定による給料の増加、光熱水費の増加等も含めて義務的経費がかさむ中で、今後の経営改善に向けて各病院の経営改善の取組について伺う。
【理事者】
がんセンターの取組については、新型コロナウイルス感染症の影響で、一旦沈んだ患者数を回復させるためには時間がかかることや、引き続き新型コロナウイルス感染症対策を継続していることから、経営改善プロジェクトチーム及びその直下のワーキンググループを、収益最大化や新来患者獲得、手術室効率化、経費削減など、テーマごとに立ち上げていろいろな施策を推進している。
患者数の増加には、病診・病病連携が欠かせないと考えており、医療連携室の土曜日の稼働、手術室の稼働強化・増室、2次検診の積極的な受入れ、検診機関・区医師会長・開業医等の訪問、中部地区がん医療連携学術講演会などの取組を進めてきた。
これらの取組は新患患者数や、新入院患者数の確保につながっていくと考えており、今後も引き続き、患者確保の検討及び実施に努めたい。また、経費削減のための取組として、院長はじめ幹部職員によるベンチマークを用いた薬価交渉、診療材料費の価格交渉、後発医薬品の利用促進、手術室内の材料の在庫の適正化などに取り組んできた。
今後の収益確保に向けた経営戦略としては、昨年12月に特定機能病院に認定され、がんゲノム医療拠点病院などの機能強化とともに収益を図ってきたが、後発医薬品のみならずバイオシミラーの積極的な採用による診療報酬の加算、入退院支援センターとしての機能充実に向けた体制整備による入退院支援加算のさらなる取得など、各種加算の取得、特定機能病院の取得によるブランド力の向上、地域医療機関との連携強化による新規患者獲得の取組などを推進したい。
【理事者】
精神医療センターの今後の収益確保に向けた経営戦略は、当院が求められている精神科救急、児童青年期、医療観察法、成人発達障害などの専門的な機能をしっかりと発揮するとともに診療単価の高い救急や急性期病棟の患者の入院依頼に対し、最大限の対応を継続する。
また、ほかの病院では行えない、修正型通電療法などをより積極的に受け入れ、クリニックや入所施設などとの連携を強めるとともに、オープンホスピタルの導入により、地域診療所やクリニックの医師が当院の非常勤医師として治療に関与し、地域との連携を深め、入院患者の増加を図りたい。
さらに多職種チームで包括的な支援を行うACTなど、アウトリーチ型医療をさらに推進するとともに、地域医療連携体制を強化して限りある病床の効率的な運用を図り、1人でも多くの患者を受け入れたい。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターは高度急性期医療を行う施設へと役割が大きく変化したことに伴い、他の病院や行政機関等との連携をより迅速かつ円滑に行うため、これまで火曜日から土曜日だった診療日を、令和5年1月から月曜日から金曜日に変更した。
これにより、曜日間の稼働状況が平準化し、患者の割り振りがスムーズにできるようになったこともあり、長時間の手術も月曜から金曜まで均等にできるようになった。これは、手術件数全体の増加にもつながっている。また、同月からオンライン診療を開始し、8月以降その件数も増加している。
また、経費削減のための取組として、がんセンターとの医薬品の共同購入、ベンチマークシステムを用いた適正な材料費の単価設定による購入、後発医薬品の利用促進、委託業務等の仕様の検証などに取り組んできた。
今後の収益確保に向けた経営戦略としては、コロナ蔓延期においてその他の疾患群の早期の退院を促す調整や、経過観察中の外来患者の再診サイクルを伸ばす調整を行ってきたが、今後は通常運用に戻すことにより収益の回復を図りたい。
また、小児医療懇話会等で症例に関する勉強会等の地域への情報発信をより積極的に行い、地域の診療所等との連携を強化し患者増につなげるとともに、将来的にはPICU(小児集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)の稼働病床数を増やすことで、愛知県唯一の小児救命救急センターとして小児重症患者の受入れを増やしたい。
【委員】
人の命を救い守ることと、未処理欠損金についての比較は、いろいろ悩ましいところがあると思うが、大幅な赤字があること、未処理欠損金があることは事実であるため、ぜひ、経営改善してもらい、赤字を減らせる努力をしてもらうよう要望する。
【委員】
決算審査意見書の3ページの審査意見のとおり、引き続きこの4年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった。
がんセンター、精神医療センター、あいち小児保健医療総合センターで新型コロナウイルス感染症患者の受入れは、どのように対応してきたのか。
【理事者】
がんセンターでは新型コロナウイルス感染症患者用に1病棟を専用で確保している。そのほか、緊急入院患者に対しては1人につき一室4床を使用するため、通常運用が可能な病床数が少ない状況だった。
また、流行状況に基づく院内規定のフェーズ表を作り、感染症対策、入院時スクリーニング検査及び3日目検査を実施した。当院の新型コロナウイルス感染症の患者のほとんどが免疫不全患者、免疫が弱い患者であるため、外来及び入院において全症例感染症内科医が併診して専門的治療を行ってきた。
新型コロナウイルス感染症の患者の受入れについては、新型コロナウイルス検査陽性の外来患者は陰圧プレハブ室で対応し、入院患者は専用病棟で受け入れている。また、外部からの紹介は原則がん患者で中等症Ⅱまで対応し、かかりつけ患者は重症度にかかわらず全例受け入れて治療している。集中治療が必要な患者は、ICUの個室で対応してきた。
【理事者】
精神医療センターでは令和2年7月より、愛知県内の新型コロナウイルス感染症精神障害患者を受け入れる唯一の精神科単科病院として東2病棟を22床の専門病棟を設けた。その際、患者をほかの病棟に転棟させたり、他院への転院をお願いしたり、退院調整を進めたりした。また、開放病棟であった西4病棟を閉鎖病棟にして運用するなど、病院の診療機能に大きな影響があった。
当院での新型コロナウイルス感染症患者の受入れについては、外来病棟においても、発熱症状等の感染疑い患者と一般患者との動線を分離するなどにより、安全性を確保し、感染が拡大しないよう診療した。また、精神科専門病院として、ほかの精神科病院やグループホームや老人ホームなどの施設から新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ、公的医療機関としての役割を果たした。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターでは、令和3年5月からPICUと23病棟の中に最大23床の新型コロナウイルス感染症患者専用病床を確保して、愛知県全域から小児の新型コロナウイルス感染症患者を23病棟で400人、延べ1,326人、重症患者をPICUで40人、延べ191人受け入れてきた。これらを通して、愛知県における小児の新型ウイルス感染症患者の受入れは、公的医療機関としての一定の役割を果たしてきた。
なお、現在、確保病床はPICUの2床だけとなっているが、感染患者は通常の診療内でいつでも受入れ可能な状態で診療を継続している。
【委員】
大変厳しい環境の中で、各病院が様々な努力をしたことに改めて感謝を伝えたい。また、コロナ禍の影響で様々な話が出ているが、平時とは全く違う、本当に有事の年度の決算だと改めて感じる。各病院共に本当に新型コロナウイルス感染症患者の受入れに尽力してもらい、苦労があったと思う。
そこで働く医者をはじめとする医療従事者、それぞれの時間外勤務も増加したなど、職員の負担も非常に大きかったと思うが、職員の負担感について、離職率の状況なども踏まえて伺う。
【理事者】
新型コロナウイルス感染症患者の対応については、防護服の着用をはじめ様々な制約下で業務を行うため、職員の負担は相当なものとなる。なお、時間外勤務の状況について、時間外勤務手当の額は、コロナ禍前の2019年度が15億8,000万円余、コロナ禍の2020年度が15億3,000万円余、2021年度が15億2,000万円余、2022年度が15億8,000万円余となっており、大きくは変わっていない。
また、看護師の離職率については、コロナ禍前の2019年度が7.1パーセント、コロナ禍の2020年度も7.1パーセント、2021年度が7.8パーセント、2022年度が6.1パーセントとなっており、年度により若干変動はあるが、これも大きくは変わっていない。
【委員】
働き方改革について、有事平時関係なしの環境整備も引き続きお願いしたい。また、2024年度問題というと、私たちは運送業界をよく指すが、医療従事者も時間外勤務の上限に関して様々改正もあると聞く。ぜひ、人材確保ももちろん、その辺りの対応についてもお願いしたい。
次に、決算審査意見書の3ページの審査意見に、令和4年度に関しては新型コロナウイルスワクチン接種の収益が減少したと記載されている。収益自体は減少したものの、がんセンターにおいてはワクチン接種事業でも多大な貢献をしてもらったと理解している。
ワクチン接種者数の推移や接種に当たっての様々な労苦等も踏まえて、特筆するものがあれば伺う。
【理事者】
がんセンターでは令和3年5月から令和5年3月まで大規模接種会場において新型コロナウイルスワクチン接種事業を実施した。令和4年度の接種者数の実績は9万9,317人、令和3年度は37万4,841人であり、ワクチン接種事業へ協力することで新型コロナウイルス感染症の重症化や発症を予防でき、また、県の事業への協力及び県民の健康への貢献ができたと考える。
一方で、新型コロナウイルスワクチン接種事業の実施において苦労した点は、ワクチン接種事業へ医業従事者を派遣しなければならず、マンパワーが低下するため、そのやりくりには苦労した。それは医師だけではなく看護師、薬剤師、検査技師も含め、そのような状況であった。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターでは令和4年3月から名古屋空港ターミナルビルの大規模接種会場で、子供向けの新型コロナウイルスワクチン接種事業を実施した。令和4年度の接種者数の実績は3,626人で、令和5年3月に名古屋空港ターミナルビルでの大規模接種は終了した。その後も知的障害や発達障害、基礎疾患を有する子供への接種機会を提供するために、愛知県新型コロナワクチン接種センターを当センターの中に設置している。
また、このワクチン接種事業の実施において苦労した点は、がんセンターと同様であり、ワクチン接種事業への医療従事者を派遣するため院内のマンパワーが不足し、医師のみならず、各職種ともそのやりくりが大変であった。
【委員】
本当に当時のすさまじさを改めて感じる。民間の医療機関の協力もあったと思うが、やはり県立病院の対応は本当に頭の下がる思いであり、内容についても改めて理解させてもらった。
次に、決算審査意見書の5ページ、過年度医業未収金の状況について、令和4年度は前年度と比較して、金額は少し減少をしているが、件数は少し増えている。
この令和4年度時点の未収金の発生要因について、昨年度と比較してどのような割合で、また、それに対する見解があれば伺う。
【理事者】
令和4年度末時点の過年度未収金の発生要因の割合は、事業不振、失業、病気治療など、収入減を理由とする生活困窮に陥ってしまったケースが件数ベースで51.5パーセント、金額ベースで56.8パーセントと半数程度を占めており、令和3年度と比較すると、件数ベースでは53.1パーセントから1.6ポイント減少、金額ベースでは54.5パーセントから2.3ポイント増加と、ほぼ同水準となっている。
また、患者本人が死亡したケースは、件数ベースで15.9パーセント、金額ベースで25.5パーセントであり、令和3年度と比較すると、件数ベースでは17.2パーセントから1.3ポイント減少、金額ベースで26.7パーセントから1.2ポイント減少となっており、この二つが未収金発生の主な要因となっている。
【委員】
確認だが、コロナ禍で生活環境がいろいろあり、何か劇的に増えた、または、減ったというよりは、例年どおりの誤差の範囲だという認識でよいか。
【理事者】
そのように認識している。
【委員】
次に、あいち小児保健医療総合センターについて伺う。
あいち小児保健医療総合センターは私の地元にも近いところにあり、地域でも大変期待をしており、そして愛されている良い病院だと認識している。2019年にはPICUやNICUの整備や救急棟ができたり、ドクターヘリが離発着できる手術室もできるなど機能強化を進めてきた。当時は先行投資と呼んでおり、それが少しずつ花を開いて累積赤字なども減っていくときに、コロナ禍になった。そのような大変厳しい流れになっているが、あいち小児保健医療総合センターについても、審査意見書の3ページに、医療機能の充実・強化のために整備された施設を最大限活用することとある。
あいち小児保健医療総合センターは、救急棟の整備など施設整備完了後に、コロナ禍に入ってしまったという不幸な流れがあるが、当初期待されていた力がいまだに発揮できていないと思われる。経営の要となるべきPICU及びNICUの稼働状況について、現状どうなっているのか。また、稼働率向上の取組について伺う。
【理事者】
PICUは本来16床のところを14床、NICUは本来12床のところを10床と、まだフル稼働できていない状況である。PICUに関してはその中で、令和4年度は稼働率58.1パーセントと、前年度の62.1パーセントと比較して4パーセント減少している。
これは、新型コロナウイルスに対する感染防御対策が広く行われたことによって、感染症そのものの減少の影響を受けている。その反動を受けて、令和5年度前半にはRSウイルスを中心として各種の感染症が蔓延し、PICUは満床状態が2か月近く続いた。
そのような後押しも受け、地域の医療機関に対して愛知県の小児重症者相談システムの認知を広げ、より早いタイミングで一般病院から当センターに救急搬送の依頼をもらえるように働きかけている。
NICU10床に関しては、令和4年度病床稼働率54.6パーセント、前年度の65.1パーセントと比較して10.5パーセント減少している。その理由の一つは、NICU管理加算の算定期限を越えた長期の入院患者数人が令和4年度半ばに退室したことによるものである。これにより、患者単価は改善している。
現在は、少しマンパワー不足があるため、他大学から新生児科医師の応援なども得ながら、先天性心疾患に限らず脳神経外科の疾患などの受入れ件数も増やし、稼働率向上を目指している。
【委員】
あいち小児保健医療総合センターは医療の提供のみならず、治療を受ける子供やその家族のメンタルフォローやストレスの軽減、院内保育など様々な取組があると思う。
あいち小児保健医療総合センターにおける院内保育、メンタルフォロー等の実施体制や実施状況について伺う。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターではチャイルドライフ担当として、ホスピタルプレイスペシャリストという資格を併せ持つ常勤の保育士が5人と非常勤の保育士が在籍している。
療養環境下でのストレス軽減や、重い病気があっても子供らしく生きる発達援助やきょうだいの支援、あるいは、治療や検査を怖がらずに受けるためのプレパレーションなど多彩な活動を行っている。外来保育活動では、アトリウムでのピアノ演奏や外部主催の体験イベントなどを行っている。
病棟では、わくわくルームという名前の集団保育室及び病棟のプレイルームやベランダ、あるいはベッドサイドでの遊びの提供を行っている。手術の前にはおぺらチャンツアーという名前の術前プレパレーションとして、例えば手術の前日に実際に手術室の見学に行くなどを行っている。保育環境活動としては壁面や空間装飾など、行事のイベント活動は夏祭りやクリスマス会、きょうだいの会などを企画運営している。コロナ禍のため令和2年5月から停止していたが、犬が病棟に来て患者を癒やすドッグセラピーやボランティア活動の受入れも徐々に再開している。
最近では終末期の医療や脳死下臓器提供を行う場面での患者・家族・きょうだいの支援にも活躍している。
重症で予後不良の患者を扱う小児病院だからこそ保育士の存在は極めて大きく、その活動はなくてはならないものとしてスタッフからも厚い信頼を寄せられている。
【委員】
先ほどの話はとても重要で、ホスピタルクラウンの話やドッグセラピーについて、私も幾度となく本会議で取り上げた。また、ファシリティードッグという考えもあり、外部団体との連携もいろいろとやっているが、残念ながらボランティアでの受入れが非常に多い。もちろん院内にホスピタルプレイスペシャリストが常駐していることもあるため、その部分に本来予算を充ててほしいと提案していきたいが、なかなか本業の経営がうまく行っていないため、厳しい部分もあると思う。併せて大切なことは、コロナ禍を経て、乗り越えていく病院環境である。これはそれぞれの病院にも当てはまると思うため、まずは平時の状態にしっかり戻して、今ある施設を最大限に活用した上で、今後の話ができるよう各病院が努力してほしい。
【委員】
決算審査意見書の3ページ、4ページにある病院事業会計のうち、病院経営について伺う。
経営状況について、新型コロナウイルスの位置づけの変更や入院収益の減少及びワクチンの大規模集団接種の収益が減少したことにより、医業損失が大きく増加したとある。病院事業庁としては、もちろん新型コロナウイルス頼りの病院経営ではなく、継続的に患者の受入れを増やしていくために、中長期的な目線を持って取り組んでいると理解をしている。
各病院において経営改善に向けての機能強化や、新型コロナウイルスが5類に下がったことによる分、ほかの分野で患者数の受入れを増やしていくための人材の確保や、その取組、また、地道に患者数を増やしていくための地域との医療連携等が必要になってくると考える。
決算審査意見書の4ページの病院別経常損益に関連して、がんセンターについて伺う。
昨年度12月に特定機能病院の認定を取得しており、その際に年間約2億円の増収が見込まれていると話していたと思うが、令和4年度では7.1億円の経常損失となっている。
そこで、昨年度決算における特定機能病院の取得による増収額及び今年度の増収見込額について伺う。
【理事者】
がんセンターでは令和4年12月に特定機能病院を認定取得し、令和5年1月からDPC(診断群分類)機能評価係数が専門病院入院基本料7対1の0.1253から特定機能病院入院基本料7対1の0.1997へ変更し、係数が0.0744増加した。その結果、令和4年度決算における特定機能病院取得による増収額は1月から3月までの3か月しか増収にならなかったが、それにより5,029万2,338円の増収となっている。
また今年度の特定機能病院取得による増収見込額については4月から7月までの実績を基にした増収の年間推計は2億1,800万円を見込んでいる。
【委員】
もともと見込んでいた2億2,000万円の見込額に対して、実際にそれと同等レベルの増収額の見込みがあるということを理解した。先ほど答弁にあった医師会との協力、クリニックとの連携を通して、ぜひ、2億2,000万円ほどの増収額も今年度達成してほしい。
次に、決算審査意見書の3ページに記載があるように、不足している医師の人材確保は具体的な取組も含めて行っていると思う。
ただし、病院の経営、運営に当たっては、看護師等の医療スタッフの確保も重要だと考えており、患者数を増やすための集客活動や、増えた患者への対応を行うためにも看護師の確保は間違いなく必要となる。
先ほど、看護師の離職率は年々下がっているとの答弁があったが、現在の看護師の応募人数、採用、充足状況について伺う。
【理事者】
本年10月1日時点の看護師の充足状況は、定員882人に対し現員が898人で、16人の過員となっている。看護師は年度途中の産育休や退職等が多く、随時の代替補充が困難なため、条例定数の範囲内で一定数の過員を置く運用上の工夫を行い、病院運営に支障が生じないようにしている。
採用状況については、今年度は5月13日と14日に採用試験を実施し、受験者が179人に対して合格者が86人であり、来年度も大きな不足は生じないと見込んでいる。
看護師確保に向けてはチューター制度等による新人教育の充実や、民間マンション借り上げによる看護宿舎、また、院内保育所などの勤務環境の充実、受験者確保に向けた就職専門誌への掲載や企業展への参加、看護学校での説明会の開催などを行っていることもあり、2022年度の離職率は6.1パーセントと低くとどまっている。引き続き、こうした努力を続けていきたい。
【委員】
最後に1点要望する。
もちろん労働環境の改善、働き方改革も同時に取り組んでいると思う。ただし、私の知人に看護師がいるが、労働環境ももちろん大事であると同時に、給与面も大きな課題になってくる。仕事をすることにやりがいを感じているが、どうしても給与面で転職するほうが自分にとって必要だと感じている人もいるし、中には、この病院にはこの機能があるからそれをしたくて転職をする人がいることも事実である。
そのため、働き方改革で、環境面の整備、機能強化と同時に、賃金の改善も、もちろん予算の兼ね合いもあると思うが、両輪で進めてもらいたい。
【委員】
がんセンター愛知病院について伺う。
決算審査意見書の36ページに記載の特別利益は、主に岡崎市に割愛採用された派遣職員の退職手当相当額の岡崎市への支払いに係るものであるが、派遣職員の割愛採用は、愛知県がんセンター愛知病院の移管に関する覚書によるものと聞いている。
そこで、令和4年度の職員の割愛採用は終了したと考えてよいのか。また、覚書の内容はどのようなもので、今後、どのような負担が生じるのか。
【理事者】
平成31年4月の移管から令和4年度末で4年が経過したが、派遣期間中に育児休業したことなどにより、令和5年4月1日現在で4人が派遣を継続している。
また、旧がんセンター愛知病院の移管の際に岡崎市と締結した覚書は、移管の条件として、土地、建物、設備等を移管期日から10年を限度に県が無償で貸与する、岡崎市民病院の結核病床の整備に要する費用を全額負担する、岡崎市民病院の結核医療に要する経費に係る一般会計負担金について、移管期日から10年間県が全額負担する、医師以外の職員で岡崎市に移行希望がある者は、岡崎市への派遣期間が2年経過後、岡崎市が割愛採用する、岡崎市が割愛採用した職員の県職員としての勤務期間に係る退職手当金相当額を県が岡崎市に支払うなどが主な内容となっているため、今後の負担は、派遣を継続している残り4人に係る退職手当金相当額、岡崎市民病院の結核病床の整備、運営に要する費用の負担が生じることとなる。
【委員】
旧がんセンター愛知病院は平成31年4月に岡崎市に移管をされ、令和2年10月に県立の新型コロナウイルス感染症専門病院となり、令和5年3月末をもって休止している。
新型コロナウイルス感染症専門病院廃止後、将来的に土地、建物、整備等を所管する立場として、旧がんセンター愛知病院をどうするのか伺う。
【理事者】
覚書では10年間を限度として施設を無償で貸与できるため、新型コロナウイルス感染症専門病院休止後、病院事業庁へ施設が返還された後の利用等については、岡崎市の意向も確認しつつ、関係機関とも十分に調整の上検討する。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月23日(月) 午後0時58分~
会 場 第8委員会室
出 席 者
森井元志、成田 修 正副委員長
峰野 修、山下智也、今井隆喜、田中泰彦、村瀬正臣、平松利英、
河合洋介、桜井秀樹、阿部洋祐、井上しんや、園山康男 各委員
建設局長、同技監、治水防災対策監、監査委員事務局長、同次長、
病院事業庁長、病院事業次長、監査委員事務局長、同次長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 決 算
決算第13号 令和4年度愛知県県立病院事業会計決算
決算第17号 令和4年度愛知県流域下水道事業会計決算
(令和4年度愛知県流域下水道事業剰余金処分計算書(案)を含
む。)
(結 果)
全員一致をもって認定すべきものと決した決算
決算第13号、決算第17号
全員一致をもって原案を可決すべきものと決したもの
令和4年度愛知県流域下水道事業剰余金処分計算書(案)
<会議の概要>
Ⅰ 建設局関係
1 開 会
2 審査事項の概要説明
3 質 疑
4 採 決
5 休 憩(午後1時53分)
Ⅱ 病院事業庁関係
1 再 開(午後2時4分)
2 審査事項の概要説明
3 質 疑
4 採 決
5 委員長報告の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《建設局関係》
【委員】
決算附属書179ページで、令和4年度の11流域下水道で、約2億7,200万立方メートルの汚水を処理しているとある。その処理された汚水が、愛知県の場合は伊勢湾と三河湾へ排出される。そして、両方とも閉鎖性水域で、外海との水の交換がうまくいっていないため、窒素やリンなどの栄養塩類が滞留し、赤潮が発生しやすい海域であることから、これまで窒素やリンを取り除いてきた。しかし、海が綺麗になり過ぎてしまい、魚介類に影響が出ているため、矢作川と豊川では栄養塩類を管理運転で追加して放流している。
三浦孝司元県議からも、私たちは海を綺麗にするために一生懸命努力してきたが、何のためにやってきたのだろうかと、素朴な疑問をもらっている。
そのような意味で、自然環境を守る感覚と、海の生物を守ることとは、非常に相入れにくい事業だと感じている。
そこで、栄養塩管理運転における社会実験の、2022年度の実施状況について伺う。
【理事者】
矢作川及び豊川浄化センターにおける2022年度の社会実験の実施状況は、11月から3月まで期間を限定し、現行の窒素とリンの排出濃度を、2倍を上限として上げ、各浄化センター周辺海域の水質やノリの色、アサリの身入りなどを調査した。
この結果、極度の赤潮の発生は確認されず、環境への悪影響は見られなかったことや、ノリの色、アサリの身入りもよかったことから、実験の効果があったと考えている。
しかし、浄化センターの管理運転は、排出濃度が毎日変動するため、上限値を超えない範囲で、排出濃度を2倍に近づけるという過度の調整が必要となったことから、現場職員にかなりの負担がかかるとともに、期間中の平均排出濃度も1.1倍から1.4倍程度にとどまった。
【委員】
森下利久元県議が、このままではノリが黒くならず、売れなくなると危惧していた。そのため、さらに大胆に改善してほしいと強く要望していた。
窒素とリンには県基準と国基準があると思うが、2倍という数値の基準について、それは県基準か、国基準か伺う。
【理事者】
昨年度から実施した社会実験は、第9次の県の総量規制の基準の中で、県基準としては、窒素については1リットル中に10ミリグラム、リンについては、1リットル中に1.0ミリグラムまでという基準になっているところを、国の基準である窒素については20ミリグラム、リンについては2.0ミリグラムまで、2倍に緩和をする社会実験を行っている。
【委員】
農林水産委員会で水産試験場へ行ったときに、海中の窒素やリンがどのぐらい含まれているかを非常に丁寧に調べる県の努力を実感した。非常に努力していることは分かるが、漁業関係者にとっては死活問題である。そのときの資料によると、三河湾全域ではなく、矢作川流域下水道付近には効果が見られる。また、豊川も同じように限定的である。そのため、もう少し広範囲に効果が及ぶようにしてもらい、その内容がまだ初歩的な効果であるため、できるだけ速やかに効果が発揮できるような対応や体制をお願いしたい。
今後の取組について、どのように考えているのか。
【理事者】
この社会実験をより効果的に進めるため、学識経験者、漁業関係者、国、県、市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議を立ち上げており、実験結果に基づく効果の検証や社会実験終了後の管理運転の方向性などを検討している。
この中で、現場職員の負担軽減についても要望されているため、その対応なども議論していく。
今年度も9月から社会実験を行っているが、引き続き検討会議などを通じて関係者と連携しながら、水質の保全と豊かな海の両立の実現に向けて取り組みたい。
【委員】
直接的には関係ないかもしれないが、一般の情報として、瀬戸内海でも同じような状況が出ているため、何か実証実験のようなことをしていると聞いている。
できれば、愛知県もそのようなところと連携しながら、より効果が発揮できる仕掛けを水産試験場などと一緒に、漁業協同組合などの当事者たちと相談しながら、より効果が発揮できるよう速やかに対応してもらうことを要望する。
現在、愛知県が、11か所で直営の流域下水道事業を行っていると聞いている。以前、衣浦東部の流域下水道事業で汚泥を燃焼し、その燃焼したかすを燃料として配給、販売していると聞いた。
そのようなエネルギーとして利用していく視点から言うと、ぜひ進めてもらいたい事業である。似たようなことで、下水汚泥を炭化し、火力発電所で利用している。しかし、火力発電所のエネルギーの原料が100だとすると、恐らく0.01ほどしかないと思うが、効果がないとは思わないため、ぜひ進めてもらいたい。
また、豊川流域下水道でも、メタン発酵して出た熱とメタンを利用してトマトの温室栽培を始めたと聞いている。
さらに、下水道の事業用地では、将来の増設用地を、FIT(固定価格買取制度)を活用する太陽光発電業者への貸出しも行っていると聞く。
下水道の処理施設を、エネルギーの処理施設としてより有効的に使っていく取組は、もっと積極的に進めてもらいたい。エネルギー創出について、現状、どのようなところでどのようなことをやっているのか。
【理事者】
これまでのエネルギー創出の取組は、始めに衣浦東部浄化センターでは2012年4月から発生した下水汚泥をもとに、炭化燃料を製造する施設を稼働し、炭化燃料を隣接する碧南火力発電所で石炭と一緒に燃やすことで発電に利用している。
次に、豊川浄化センターでは、下水汚泥をメタン発酵し、発生したメタンガスを燃料とした発電を行い、2017年2月から固定価格買取制度により売電している。また、民間企業がミニトマト栽培ハウスを設置し、放流水の熱を保温に利用している。
さらに、矢作川浄化センターでは2016年12月からメタン発酵により、衣浦西部浄化センターでは2022年4月から焼却廃熱の利用により、それぞれの焼却炉で燃料や使用電力量の削減に取り組んでいる。
なお、下水道資産を活用したエネルギー創出の取組としては、豊川、衣浦西部、日光川下流の各浄化センターで、将来増設用地を貸し出し、民間企業が太陽光発電事業を行っている。
【委員】
メタン発酵は嫌気性発酵のため、あまり臭いは出ないと思うが、エネルギーとしてもう一度使い直すという発想は、大切なことである。イニシャルコストもかかるが、ぜひ、流域下水道の中で使えるエネルギーをもう一度つくっていく取組を積極的に進めてもらいたい。
新城市にある企業団地では、食品残渣や汚泥は持ち込んでいないと聞いているが、民間の施設で結構臭いが出る。このようなメタン発酵や中間処理施設で悪臭対策が非常に問題になるため、企業庁としてもそのようなことがないよう協力してもらう意味で、常にチェックをお願いしたい。環境局と新城市が担当しているが、臭いが出るときと出ないときもあり、処理の仕方の問題など、臭いはうまく処理できないのが実態である。ぜひ、そのような事業に対する下水汚泥の提供など、気をつけて対応してもらいたい。
【委員】
令和4年度愛知県公営企業会計決算審査意見書の24ページ、あいち下水道ビジョン2025における事業の進捗状況について伺う。
あいち下水道ビジョン2025の令和4年度までの事業の進捗状況で、処理場やポンプは、平成30年度に発生した地震の影響を受けたこともあり、耐震化未着手の施設が残る見込みとなり、遅れていることが報告されている。また、近年では原材料の高騰に加え人件費が上がる状況の下、事業への進捗の影響を心配している。
そこで、令和4年度に事業に取り組む中で課題等があれば伺う。
【理事者】
下水処理場、ポンプ場の耐震化が遅れている主な原因は、2018年の北海道胆振東部地震などにおいて長期間の停電が生じたことを契機として、非常用自家発電設備を限られた予算の中で優先して整備してきたことによる。
非常用自家発電設備は、当面の整備が2024年度に完了する見込みのため、今後は、施設の耐震化を重点的に進め、事業の進捗を図る。
また、近年、新型コロナウイルス感染症の蔓延や、ロシアのウクライナ侵攻を契機とした電子部品や鋼材・機械部品など資材確保の長期化や、人件費や材料費の高騰が問題となっている。
このため、資材の調達期間や設備の製作期間を確認することや、予算の繰越し制度により適正な工期を確保するとともに、工事価格に原材料費や人件費の高騰を反映させている。
さらに、予算の債務負担行為などを活用しながら、計画どおり事業の進捗を図るよう進めていく。
【委員】
次に、下水道の普及に関して伺う。
平成19年から豊田市議会議員であった当時と比べて、今は普及に関する考え方が変わってきた気がする。例えば、私の地元豊田市では、当初計画された地区から大きく縮小した。
その理由として、将来にわたって下水道施設を維持するコストと、簡易処理、合併処理浄化槽を推進する動きがある。そこで、本計画の中でどのように影響しているのか伺う。
【理事者】
汚水処理を行う施設には下水道のほか、農業集落排水施設、合併処理浄化槽などがある。
これら汚水処理施設の整備区域は市町村が定め、愛知県が全県域汚水適正処理構想として取りまとめている。この構想の中で汚水処理は、処理する人口の割合で下水道が93パーセントを担い、残りの7パーセントはその他の汚水処理施設が担っている。このため2016年に策定したあいち下水道ビジョン2025においては、下水道普及率は2025年度末の中期目標を85パーセント、最終的には93パーセントを目指して整備を行うこととしている。
しかし、近年では、人口の減少、下水道整備期間の長期化や費用の増大などが課題となっている。この課題に適切に対応するには市町からの財政支援を受けて、合併処理浄化槽を設置することがより効果的な手法であると考える。
このことから2023年3月に、主に市街地周辺の一部で処理区域の見直しを行った。この見直しにより最終的な下水道普及率の目標は90.5パーセントとなり、これに向けて整備を進めている。
【委員】
私の地元にも、下水道を整備しても、結局つながない人がいるため、課題があると思っている。
最後に、今後の下水道普及に関する愛知県の考え方と、取組の方向性について伺う。
【理事者】
県は、2023年3月の全県域汚水適正処理構想の見直しもあり、下水道の普及だけではなく、汚水処理全体の普及の向上も目指している。
汚水処理全体の普及は、具体的には、全人口のうち汚水処理施設を使うことのできる人口の割合である汚水処理人口普及率を、2021年度末の92.3パーセントから、2026年度末に概成となる95.2パーセントに向上させることを目標としている。
目標の達成に向けて各市町村は、整備手法を定めたアクションプランを作成し、進捗管理を行っている。
また、合併処理浄化槽は、整備時に宅内の配管やトイレの改装に要する費用についても助成対象とするなど財政支援の拡充を行っている。
県として、今後はアクションプランの進捗管理への支援などにより、汚水処理全体の普及を推進する。
【委員】
豊田市は918平方キロメートルでかなり広域であり、下水道を全部通すことはあり得ないと思っている。また、当初立てた計画を住民は覚えており、自分の地域はいつ来るのかと思っている。しかし、計画が見直され、そのことが地域に伝わらず、期待があっても結局来ないという実態がある。
今後、下水道ビジョン2025にもあるように、いろいろな計画、指標がある中で、下水道普及率も必要だが、例えば、答弁にあった汚水処理人口普及率など、分かりやすい指標を加えたほうが、そこに住んでる人がより理解しやすいと思う。
【委員】
公営企業会計決算審査意見書23ページの、愛知県の流域下水道事業会計における経営状況に関する審査意見の中身を見ると、引き続き電気料金の高騰による影響が懸念されるが、関係市町と連携した下水道の普及促進や汚水処理の広域化・共同化の取組を戦略的に進めるとともに、計画的かつ適切な施設整備・更新による費用の縮減を図るなど、中長期的な視点に立った健全な事業経営に努められたいと記載されている。
この件について、私は2018年の9月定例議会で、流域下水道における持続可能な事業運営に向けた対応策と取組状況を質問し、知事からは、施設の統廃合などの広域化・共同化が有効であり、県内全ての市町村とともに広域化・共同化計画の策定に向けて検討を着手したと答弁があった。
言うまでもなく下水道は日常生活で目立たない施設だが、常に適切に稼働することが求められる重要な社会インフラであり、その機能の持続のためには、汚水処理施設の広域化・共同化の推進が必要不可欠である。
そこで、県では昨年度末、広域化・共同化に関する計画を取りまとめたと聞いているが、その内容はどのようなものか、また、広域化・共同化に関する現在の状況について伺う。
【理事者】
本県では2023年3月に県内全市町村と連携し、汚水処理の広域化・共同化計画を策定している。この計画ではハード面の連携として、県内にある下水道や集落排水施設、コミュニティプラントという汚水を処理する247施設のうち、4割強に当たる103施設の統廃合を位置づけている。
この103施設のうち79施設が流域下水道へ接続される計画となっており、これは本県が11流域下水道を広域的に整備している特徴を生かし、流域下水道を核として広域化・共同化に取り組んでいる。
現在の進捗は、矢作川流域下水道で幸田町の2か所の農業集落排水施設を既に接続している。
また、日光川上流流域下水道へ一宮市単独公共下水道を接続する取組をはじめ4か所の施設で統廃合に向けた工事に着手している。これら施設の統廃合に加え、汚泥処理の共同化にも取り組んでいる。
衣浦西部浄化センターでは、単独公共下水道を運営している周辺3市と共同焼却炉を建設し、2022年度から運転を開始している。
さらに、県内11流域下水道を対象とした共同汚泥処理の取組として、衣浦西部浄化センターに共同焼却炉を整備することとしており、2023年度内の契約を目指している。
一方、ソフト面の連携では維持管理業務の共同化、下水道事務や災害訓練、人材育成など、様々な分野において共同化の取組を進めている。この取組により、業務の省力化や危機管理体制の強化、非常時を含めた人材の確保・育成を図ることで経営の安定化を図る。現在の進捗状況は、近隣市町での管路施設の点検、調査業務などの共同発注や、職員研修の共同化など、既に七つの取組を実施している。
【委員】
今後について、広域化・共同化をこの計画に沿って着実に進めていくためにどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
広域化・共同化計画を着実に進めていくために、本年度それぞれの取組について、完了までに解決が必要な課題やスケジュールなどを記載した進捗管理表を市町村とともに作成している。
今後は、この進捗管理表を用いて広域化・共同化を進める市町村に対し、着実な取組の推進に向けた情報提供や助言などの働きかけを行っていく。また、新たな取組についても、積極的に検討や調整を進め、必要に応じ5年を目途に行う計画見直し時に新たなメニューとして計画に追加する。
県としては引き続き市町村と連携して、しっかりと広域化・共同化を進める。
【委員】
市町村としっかり連携をしていくことが大変重要であるため、これからも、進捗管理表を作って、指導助言など働きかけをしっかりと行ってもらいたい。
次に、決算審査意見書24ページ、あいち下水道ビジョン2025の進捗状況に関する記載があるが、このビジョンの中で下水道の役割として、地域社会、地球温暖化対策へ貢献すると記載がある。温室効果ガスの低減が掲げられているが、温室効果ガス削減については世界的な脱炭素の流れの中、国は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言した。
本県でも2022年12月に、あいち地球温暖化防止戦略2030を策定し、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すという長期目標の下、その途上である2030年度を目標年度として、本県の温室効果ガスの排出量を2013年度比で46パーセント削減することとしている。
そこで、これまでの下水道事業における温室効果ガス削減の取組状況について伺う。
【理事者】
下水道は下水処理の過程で多くのエネルギーを使用する施設であり、あいち下水道ビジョン2025では地球温暖化対策の観点から、エネルギー使用量や温室効果ガス排出量の削減に努める必要があるとしている。そのため、自ら使用するエネルギーを低減させ、また、自らが有するエネルギーを有効活用して、地球温暖化防止に貢献するという目標を掲げている。
下水処理から発生する温室効果ガスは、電力使用や燃料使用による二酸化炭素の排出、下水処理汚泥の焼却に伴うメタンと一酸化二窒素の排出がある。なお、メタンは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は二酸化炭素の298倍の温室効果がある。
これまでの取組はエネルギー利活用を積極的に進め、焼却補助燃料の削減や購入電力量を削減することで、これらに起因する温室効果ガス削減を進めてきた。そのほかに、使用電力量が多い機器は更新時に省電力型機器に変更したり、管理棟などの照明をLED化するなど電力消費量の削減による温室効果ガスの削減に努めてきた。
【委員】
しっかりと取り組んでいるが、2030年度に向けての取組状況を伺う。
【理事者】
温室効果ガス削減については、愛知県の事務事業における温室効果ガスの排出量削減のための計画であるあいちエコスタンダードを、環境局が本年8月に改定した。
この計画では、県の全ての事務事業から発生する温室効果ガスの削減目標が示されており、事務事業からの排出量の4割を占める下水道事業は、2030年度の排出量を2013年度比で53.8パーセント削減することを目標としている。
2030年度に向けての今後の取組として、温室効果が高い一酸化二窒素の排出量を削減するために排出抑制型焼却炉の導入、処理場で最も電気を使用する送風機について高効率型送風機の導入、温室効果ガスが発生しない太陽光発電により発電した電力の自家利用、機器特性を生かした運転方法の工夫による省エネ運転などにより温室効果ガス削減を進めている。53.8パーセントの削減目標に向けてこれらの取組を進めるとともに、2050年カーボンニュートラルに向けてさらなる新技術の導入を検討し、取り組みを進めていく。
【委員】
流域下水道における老朽化対策について伺う。
決算審査意見書24ページ、あいち下水道ビジョン2025に、2022年度末の下水道処理人口普及率は81.0パーセントと記載されている。
また令和4年度愛知県流域下水道事業の2ページ、愛知県下水道図には豊川流域下水道の供用年度が昭和55年度とあり、供用開始後42年が経過している。
私の地元岡崎市の下水道は本年度事業着手から100周年を迎え、普及率も89.3パーセントと整備も相当進んでおり、岡崎市からは、今後の整備は老朽化施設の更新が主体になってくると聞いている。
そこで、今後は老朽化施設が増大していくと思うが、流域下水道の老朽化対策の現状はどうなっているのか伺う。
【理事者】
下水道施設は県民生活を支える重要な施設であるため、日常生活や社会活動に重大な影響を及ぼす事故の発生や処理機能の停止を未然に防止することが重要と考えており、流域下水道の施設では損傷の劣化が進行する前に、適切な対策を行う予防保全型の維持管理を実施している。
具体的には、管路や機械設備のように点検により劣化状況を把握できるものについては、修繕を行うか更新するかを常時判断した上で、適切な時期に更新を行う。また、電気設備のような劣化状況の把握が難しいものについては、耐用年数などにより定期的に更新を行う。
こうした予防保全型の維持管理を流域下水道別にストックマネジメント計画として、点検方針、更新の実施方法や時期及びコスト縮減効果などを定め、効率的な老朽化対策を進めている。
【委員】
予防保全型の維持管理を進めているとのことだが、実施するに当たって今後どのような取組を進めていくのか、具体的に伺う。
【理事者】
予防保全型の維持管理をより効率的に実施していくためには、点検調査により得られた維持管理情報を蓄積し、そのデータを今後のストックマネジメントに活用していかなければならない。このため、まずは今年度管路台帳の電子化を進め、来年度から運用を開始する予定であり、以降、処理場施設台帳でも順次電子化を進める。
また、施設の健全度を適切に把握するためには、点検調査についても技術の高度化が必要と考えており、これにはデジタルトランスフォーメーションの推進が有効である。
例えば、下水道管路内調査点検用ドローンの技術があり、管路内の水位が高い場所で水上走行して点検調査するドローンや、管路内を飛行して点検調査するドローンなどがある。いずれも危険なマンホール内に入ることなく点検調査ができるため、作業員の安全を確保できる技術である。
今後は、このような新技術の活用についても検討しながら、継続的に効率的かつ安全な点検調査に取り組む。
《病院事業庁関係》
【委員】
決算審査意見書の28ページより、がんセンターでは令和3年度と比較して、令和4年度は入院・外来患者数とも減少している。
私の地元の病院に聞くと、コロナ禍の影響でそもそも病院から足を遠ざける、ワクチン接種にマンパワーを取られる、コロナ患者を受け入れる部屋を確保しなければならないなど、様々な要因があるので単純な話ではないと承知している。
地元の消化器専門の病院の理事長からは、通常だと例えば大腸がんでも初期段階で発見されるケースが多いが、病院離れが続き、症状がひどくなり検査をするとステージⅣであったなど、助けられる命が助けられなくなっているため、病院離れに悩まされているという話もあった。
がんセンターも同じ状況である中で、患者確保の観点では最先端の医療の提供が必要である。
令和2年2月定例議会の議案質疑で尋ねたが、がんセンターは令和元年9月にがんゲノム医療拠点病院という指定を国から受けており、最先端の医療であるがんゲノム医療を推進している。
そこで、このがんゲノム医療をどのように進めてきたのか、また、重点プロジェクト1期の成果及び2期の進捗状況について伺う。
【理事者】
がんゲノム医療に関してはがん組織を対象に、がん遺伝子パネル検査で多くの遺伝子を一度に調べて、個人に最適な治療を選択する医療であり、令和元年6月から保険診療として開始された。がんゲノム医療は最先端のゲノムを扱う研究的な医療のため、がんゲノム医療中核拠点病院と拠点病院でのみ行えるエキスパートパネルと呼ばれる専門家会議で検査結果を精査し、治療方針を主治医に提案するという拠点型で実施されている。エキスパートパネルには、医師以外にゲノム医科学、遺伝医療的、情報科学の専門家が必要になる。
愛知県がんセンターでは拠点病院として研究所と病院が協力することで、県民に最適ながんゲノム医療を提供できる体制を整えている。さらに、がん治療の受皿になるような治験あるいは臨床試験の数も国内屈指で、自施設でがん遺伝子パネル検査から治療まで完結できる体制を取っている。このため紹介患者も非常に多く、自施設でのがん遺伝子パネル検査数は国内でもトップクラスとなっているため、県民にがんゲノム医療を届けることができている。
もう一方の重点プロジェクトであるが、研究所と病院を併設しているがんセンターの総合がんセンターとしての機能を最大化することで、がん医療やがん予防の革新を実現し、県民にいち早く還元することを目的に開始されている。
第1期については、2019年度から2021年度までの3年間で、がんの新たな予防、診断、治療法の開発に有用な基盤となる生体試料、診療の情報などの収集、基盤技術の開発を行っている。これらの基盤を個別研究に発展させることで、研究成果の発出に加えて、外部研究資金獲得の大幅な増加による研究力の強化、特許の取得や企業との共同研究による臨床応用推進を実現してきた。
2022年度からの第2期に入ってからは、第1期のさらなる強化を図っており、がん診療のガイドラインを書き換える研究成果の発出、外部研究資金を獲得して、がんの全ゲノムを解析するがんゲノム医療の次に来る医療に当たる研究を実施し、県民への還元も実現している。
【委員】
がんゲノム医療拠点病院について、愛知県のみならず周辺の地域からもがんセンターへ入りたい、あそこで検査を受けたいという人が多数いると思う。ぜひ期待に応えてほしいが、通院、入院患者が令和4年度は少し減っていたため、これから回復し、さらに、がんセンターの進めている先進医療が周知されることを期待している。
次に、決算審査意見書の3ページに、今後は不足している医師を確保するとともに、職場定着を促進すると書かれている。そのようなことが求められている状況だが、現在の医師の充足状況及び医師の確保に向けて、どのように取り組んでいるのか。
【理事者】
医師の充足状況は本年10月1日現在で定数249人に対し、現員227人で22人の欠員となっている。
医師確保対策については、病院長や関係診療部長が大学医局等に直接出向いて働きかけを行っているほか、全国の医学系大学への公募やホームページでの募集等を継続して行っている。
さらに医師確保で最も重要なことは、高度な専門医療を習得できる魅力ある病院であることであり、最先端医療機器の導入や、がんゲノム医療の推進、小児救急といった高度・専門的かつ先進的な医療体制の整備・充実に取り組んでいる。
県民に良質な医療を提供し続けることは県立病院の使命でもあるため、今後もより一層診療機能を高め、医師にとって高度な専門医療を習得できる病院として魅力を感じてもらえるよう努めたい。
【委員】
22人医師が足りないことがよく分かった。優秀な人材の確保のためにも、病院職員の働き方改革が待ったなしである。
一方で、働き方改革を進めるためには、増員が必要であるが、病院の経営状況を見ると大変な状況の中で、増員を行うには、損益だけを見ればマイナスに働くと思うが、医師や看護師の負担軽減のための働き方改革にどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
時間外労働の上限規制が2024年度から医師にも適用されることを受け、これまで県立病院では様々な取組を行ってきた。例えば、ICTを活用して、職員の勤務状況を管理する勤怠管理システムの導入や、医師事務作業の補助者の配置をはじめとした他の職種へのタスクシフト、医師を対象にした意識改革の研修などの取組を順次実施している。
質の高い医療を提供しつつ、医師や看護師をはじめとした全てのスタッフが健康で充実して働き続け続けられる環境を実現するためにも、働き方改革は重要な課題であると認識しており、引き続き働き方改革に取り組んでいきたい。
【委員】
総論的に民間の病院は当然利益を上げなければいけない中で、不採算な分野にはなかなか手が出しにくいとなると、公営の県立病院等が積極的にそのような分野にも取り組んでいかねばならない。県立病院の根本は利益を追求することではないが、県民の税金であり、県民からも非常に注目される面もあるため、ぜひ、県民の期待に応えて県立病院の運営を行ってもらいたい。
【委員】
地域医療機関との連携について伺う。
決算審査意見書の3ページ、審査意見の中で、経営改善の一環として地域の医療機関との連携を一層推進するとある。県立病院は救急、小児、精神など、不採算・特殊部門に係る医療、また先ほど、がんゲノム医療についての説明もあったが、民間病院では限界のある高度、先進医療等を担っている面からも、今後も地域医療機関との連携を強化して、中核的な役割を果たしていくべきである。
そこで、地域医療との連携に向けた各病院の具体的な取組について伺う。
【理事者】
がんセンターでは地域医療連携の取組として、病診・病病連携を積極的に実施しており、医療連携室の土曜日稼働や、2次検診の積極的な受入れ、検診機関、区医師会長、開業医等への訪問、中部地区がん医療連携学術講演会を実施するなどの取組を進めている。
また、クリニックからの紹介をスムーズにするために、今年の8月からウェブサイトでの予約を開始した。診療科によっては、地域のクリニックや病院を集めた勉強会の実施、レントゲン写真やCT等の画像の読影、カンファレンスの実施によって顔の見える形で連携を図っている。
また、病院長は、月1回開催される千種区の医師会定例会議をはじめ医師会の集まりに参加をしている。さらに、相談支援センターを充実させ、今年の8月から新たに入退院支援加算1を取得し、収益の向上を図っており、12月頃から、場合によってはもう少し早くから入院時支援加算を算定することを予定している。
これらにより収益増のみならず、入院患者に対して、入院前から退院後まで一貫して滞りない支援を行うことで、より充実した支援が可能となると考えている。なお、令和4年度の紹介率は99.2パーセント、紹介件数は5,119件であり、連携している病院の数は令和5年8月現在で902である。
【理事者】
精神医療センターでは地域医療連携の取組として、ほかの病院では行えない修正型通電療法や、治療抵抗性統合失調症に対する唯一の薬であるクロザリルの投与などをより積極的に受け入れ、クリニックや入所施設などとの連携を強めるとともに、オープンホスピタルの導入により、地域診療所やクリニックの医師が当院の非常勤医師として準緊急枠という外来診療で最も入院に結びつく診療を担当してもらい、地域との連携を深めている。
また、地域の診療所やクリニックを対象としたアンケートの実施などによりニーズを把握し、それに応えていけるように努めている。
なお、令和4年度の紹介率は58.1パーセントで、紹介件数は447件である。
【理事者】
当センターでは地域医療連携の取組として、県民公開講座やあいち小児医療懇話会、あいち小児周産期セミナー、地域の医師団と連携した顔の見える地域連携の会などを開催して、症例に関する勉強会等の情報発信を積極的に行うとともに、周産期部門のセミオープンシステムと地域の診療所等との連携を強化した。
また、他の病院や行政機関等との連携をより迅速かつ円滑に行うため、これまで火曜日から土曜日だった診療日を、令和5年1月から月曜日から金曜日に変更した。
救急科及び集中治療科は愛知県小児重症患者相談システムを運営しており、愛知県内4大学のICUとの役割分担も含めて、愛知県全域から重症患者のスムーズな受入れ体制を整えている。
産科はNIPT(新型出生前診断)や、胎児エコーによる出生前診断を地域の産科医療機関に啓発する活動を積極的に行い、検査を希望したり、異常の見つかった妊婦の紹介を積極的に受け入れている。
小児心臓病センター及び新生児科は中京病院及び名古屋大学などと連携して、1人の患者に対する治療方針を協議して、治療の役割分担を行うこともしばしばある。愛知県周産期医療協議会、アレルギー疾患医療連絡協議会、あいち医療的ケア児支援センターなど、各分野における専門医療施設の協議会等に参加して、専門施設の中における当センターの特殊性をアピールしている。
なお、令和4年度の紹介率は67.1パーセント、紹介件数は7,224件であり、連携している病院の数は令和5年10月現在で1,133と、令和4年度と比較して16件増えている。
【委員】
地域医療機関との連携、取組を進めているとのことだが、中核的な病院の役割として、やはり地域医療の向上に向けた人材育成にも取り組んでいく必要がある。
地域医療の向上に向けた人材育成の取組について伺う。
【理事者】
人材育成を含めた地域医療の向上に資する取組を行うことは、県立病院の重要な役割の一つと考えている。県立病院はそれぞれの専門分野で地域医療の中核的役割を担っており、医師の専門研修の基幹病院として若手医師の研修を積極的に受け入れているほか、看護師等の養成校が行う実習の受入れ、地域の医療関係者が集まる勉強会の開催及び講師の派遣、医療関係者を含む一般県民を対象とした公開講座の開催などの取組を実施している。
特にがんセンターでは、都道府県がん診療連携拠点病院の指定を受けていることから、県内の医師や医療従事者向けの研修会を開催しており、それぞれの病院において地域の医療水準の向上に努めている。
【委員】
最後に、いろいろな地域医療との交流、また、人材育成の取組があったが、外部の人材の活用を通じて、医師や看護師人材の確保についての取組を進めていくとよいのではないかという提案も含めて質問する。
今まで地域の医療機関と連携していくとともに、外部人材を活用していくことも不足する県立病院の人材確保という面でも有効であり、また、地域医療の医療技術の向上、医療機関の発展に向けた取組であると同時に、県立病院の人材確保という面でも有効だと考えるが、外部人材の活用の状況について伺う。
【理事者】
地域の医療機関と連携していく上で、外部人材を活用することも有益な手段の一つである。
実際、精神医療センターでは、オープンホスピタルという取組を行っており、地域の開業医の理解を得て精神医療センターの外来診療の一部を担ってもらうことにより、地域の患者に入院医療が必要となったときの外来から入院、またはその逆の入院から外来の流れをスムーズにするとともに、現在欠員が生じている医師の確保対策にも資するものとして実施している。
また、各病院の専門とは異なる手術や処置を行う必要が生じた際には、外部の医療機関の医師や医療従事者に依頼し、医療行為を行ってもらうことも実施している。
【委員】
決算審査意見書の28ページ、病床利用率の低下について伺う。
各センターの病床利用率は、各センターともコロナ禍前には戻っていないが、特にがんセンターの病床利用率が前年と比較して低下している。また決算審査意見書の4ページにあるように、各病院とも医師の欠員が生じている。医師の欠員により、患者の受入れが最大限できないのではないかという懸念がある。
そこで令和4年度の各病院の病床利用率についてどのように分析しているのか、また、医師の欠員が患者の受入れや病床利用率に与える影響について伺う。
【理事者】
まず、病床利用率について、決算審査意見書の29ページの病院全体の表に記載があるように、令和4年度の入院延べ患者数は全体で20万7,302人、稼働病床利用率は64.5パーセントである。
記載はないが、コロナ禍前の令和元年度の入院延べ患者数25万129人、稼働病床率77.6パーセントと比較すると4万2,827人、13.1ポイントの減であり、コロナ前を下回っている。
病院別の病床利用率の分析だが、令和3年度の実績との比較では、決算審査意見書の28ページに記載があるように、がんセンターについては令和4年度の稼働病床利用率は63.4パーセントであり、令和3年度の68.4パーセントと比較すると5.0ポイントの減少となった。
減少の主な理由は、新型コロナウイルス感染症の影響による5月及び12月に実施したセンター全体の入院制限や、各病棟の感染状況に応じて適宜実施した病棟閉鎖の影響によるものと考えている。
精神医療センターについては、令和4年度の稼働病床利用率は69.5パーセントであり、令和3年度の62.6パーセントと比較すると6.9ポイントの増加となった。
増加の主な理由は、医師の欠員対策として近隣のクリニックの医師を臨時雇用し、入院につながる外来の準緊急枠を増やしたことで新入院患者が増加したことなどによると考えている。
あいち小児保健医療総合センターについては、令和4年度の稼働病床利用率は61.1パーセントであり、令和3年度の63.3パーセントと比較すると2.2ポイントの減少となった。
減少の主な理由は、小児の新型コロナウイルス感染症の患者が増加し、新型コロナウイルス感染症専用病床及び他の感染症病床を確保するため、その他の疾患においても早期の退院を促す調整を進めたことによると考えている。
また、医師の欠員による影響だが、令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響による患者数の減少があったため、病床利用率減少への直接的な影響はないと考えているが、一般的には患者数に直結するため、引き続き医師の確保に努めたい。
【委員】
決算審査意見書の32ページの損益計算書について、経常損益が前年度と比較して約20.9億円の悪化、そして約6.2億円の赤字となっている。
令和3年度はコロナ関連の補助金などで黒字になっているが、令和4年度決算において、経常損益が大幅に悪化した要因について伺う。
【理事者】
令和4年度の経常損益が大きく悪化した主な要因は、収益面で病院事業全体の入院延べ患者数が、新型コロナウイルス感染症の影響などで前年度と比較して4,541人減少したことにより入院収益が約2億円、大規模集団接種会場における新型コロナウイルスワクチン接種事業の縮小によりワクチン接種料が約8.3億円減少したことである。
また、費用面で職員の欠員補充などにより給与費が約5.3億円、電気ガス調達価格の高騰により光熱費が約3.5億円増加したことなどによる。
【委員】
次に、経常損益が大幅に悪化した要因として、新型コロナウイルス予防接種事業の縮小が要因の一つとのことだが、新型コロナウイルス予防接種事業の具体的金額について伺う。
また併せて、新型コロナウイルス感染症関連の空床補償に係る補助金の金額についても伺う。
【理事者】
税込みだが、大規模接種会場でのワクチン接種料収入3.5億円余りから支出を控除した概算の収支差は約2.1億円であり、令和3年度の約7.7億円と比較して、約5.6億円の減少となっている。
なお、令和4年度の支出は、職員の手当・旅費等が0.2億円、他病院の医師等の人件費、旅費相当額が1.3億円である。
次に、新型コロナウイルス感染症関連の空床補償に係る補助金について、病院事業全体で、15億5,619万余円であり、昨年度の15億3,023万余円とほぼ同水準となっている。
病院別であると、がんセンターが1億7,756万余円、精神医療センターが9億3,088万余円、あいち小児保健医療総合センターが4億4,774万余円である。
【委員】
経常損益が大幅に悪化した原因の一つとして、給与費の増加が要因の一つとのことだが、前年度と比較して給与費が約5.3億円増加した主な要因について伺う。
【理事者】
給与費が増加した主な要因は、職員の欠員が補充できたことである。
年間平均の在職者の数は、あいち小児保健医療総合センターは10人増加、がんセンターは3人増加しており、給与費が増加した。このほか、給与改定による増、退職給付費の増、時間外勤務手当の増などがあり、合計で約5.3億円の増加となった。
良質な医療を提供していく上で医療スタッフの確保は必須であるが、給与費の増加は収益的にはマイナスに働くため、患者数に応じた適切な人員配置に努める。
【委員】
決算審査意見書の32ページの損益計算書を見ると、当年度の未処理欠損金が約453億円と多額になっている。
また、今後一般会計からの長期借入金の返済も始まる中で、昨年度の決算で経常損益は約6.2億円の赤字と大変厳しい経営状況である。また、人件費、給与改定による給料の増加、光熱水費の増加等も含めて義務的経費がかさむ中で、今後の経営改善に向けて各病院の経営改善の取組について伺う。
【理事者】
がんセンターの取組については、新型コロナウイルス感染症の影響で、一旦沈んだ患者数を回復させるためには時間がかかることや、引き続き新型コロナウイルス感染症対策を継続していることから、経営改善プロジェクトチーム及びその直下のワーキンググループを、収益最大化や新来患者獲得、手術室効率化、経費削減など、テーマごとに立ち上げていろいろな施策を推進している。
患者数の増加には、病診・病病連携が欠かせないと考えており、医療連携室の土曜日の稼働、手術室の稼働強化・増室、2次検診の積極的な受入れ、検診機関・区医師会長・開業医等の訪問、中部地区がん医療連携学術講演会などの取組を進めてきた。
これらの取組は新患患者数や、新入院患者数の確保につながっていくと考えており、今後も引き続き、患者確保の検討及び実施に努めたい。また、経費削減のための取組として、院長はじめ幹部職員によるベンチマークを用いた薬価交渉、診療材料費の価格交渉、後発医薬品の利用促進、手術室内の材料の在庫の適正化などに取り組んできた。
今後の収益確保に向けた経営戦略としては、昨年12月に特定機能病院に認定され、がんゲノム医療拠点病院などの機能強化とともに収益を図ってきたが、後発医薬品のみならずバイオシミラーの積極的な採用による診療報酬の加算、入退院支援センターとしての機能充実に向けた体制整備による入退院支援加算のさらなる取得など、各種加算の取得、特定機能病院の取得によるブランド力の向上、地域医療機関との連携強化による新規患者獲得の取組などを推進したい。
【理事者】
精神医療センターの今後の収益確保に向けた経営戦略は、当院が求められている精神科救急、児童青年期、医療観察法、成人発達障害などの専門的な機能をしっかりと発揮するとともに診療単価の高い救急や急性期病棟の患者の入院依頼に対し、最大限の対応を継続する。
また、ほかの病院では行えない、修正型通電療法などをより積極的に受け入れ、クリニックや入所施設などとの連携を強めるとともに、オープンホスピタルの導入により、地域診療所やクリニックの医師が当院の非常勤医師として治療に関与し、地域との連携を深め、入院患者の増加を図りたい。
さらに多職種チームで包括的な支援を行うACTなど、アウトリーチ型医療をさらに推進するとともに、地域医療連携体制を強化して限りある病床の効率的な運用を図り、1人でも多くの患者を受け入れたい。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターは高度急性期医療を行う施設へと役割が大きく変化したことに伴い、他の病院や行政機関等との連携をより迅速かつ円滑に行うため、これまで火曜日から土曜日だった診療日を、令和5年1月から月曜日から金曜日に変更した。
これにより、曜日間の稼働状況が平準化し、患者の割り振りがスムーズにできるようになったこともあり、長時間の手術も月曜から金曜まで均等にできるようになった。これは、手術件数全体の増加にもつながっている。また、同月からオンライン診療を開始し、8月以降その件数も増加している。
また、経費削減のための取組として、がんセンターとの医薬品の共同購入、ベンチマークシステムを用いた適正な材料費の単価設定による購入、後発医薬品の利用促進、委託業務等の仕様の検証などに取り組んできた。
今後の収益確保に向けた経営戦略としては、コロナ蔓延期においてその他の疾患群の早期の退院を促す調整や、経過観察中の外来患者の再診サイクルを伸ばす調整を行ってきたが、今後は通常運用に戻すことにより収益の回復を図りたい。
また、小児医療懇話会等で症例に関する勉強会等の地域への情報発信をより積極的に行い、地域の診療所等との連携を強化し患者増につなげるとともに、将来的にはPICU(小児集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)の稼働病床数を増やすことで、愛知県唯一の小児救命救急センターとして小児重症患者の受入れを増やしたい。
【委員】
人の命を救い守ることと、未処理欠損金についての比較は、いろいろ悩ましいところがあると思うが、大幅な赤字があること、未処理欠損金があることは事実であるため、ぜひ、経営改善してもらい、赤字を減らせる努力をしてもらうよう要望する。
【委員】
決算審査意見書の3ページの審査意見のとおり、引き続きこの4年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった。
がんセンター、精神医療センター、あいち小児保健医療総合センターで新型コロナウイルス感染症患者の受入れは、どのように対応してきたのか。
【理事者】
がんセンターでは新型コロナウイルス感染症患者用に1病棟を専用で確保している。そのほか、緊急入院患者に対しては1人につき一室4床を使用するため、通常運用が可能な病床数が少ない状況だった。
また、流行状況に基づく院内規定のフェーズ表を作り、感染症対策、入院時スクリーニング検査及び3日目検査を実施した。当院の新型コロナウイルス感染症の患者のほとんどが免疫不全患者、免疫が弱い患者であるため、外来及び入院において全症例感染症内科医が併診して専門的治療を行ってきた。
新型コロナウイルス感染症の患者の受入れについては、新型コロナウイルス検査陽性の外来患者は陰圧プレハブ室で対応し、入院患者は専用病棟で受け入れている。また、外部からの紹介は原則がん患者で中等症Ⅱまで対応し、かかりつけ患者は重症度にかかわらず全例受け入れて治療している。集中治療が必要な患者は、ICUの個室で対応してきた。
【理事者】
精神医療センターでは令和2年7月より、愛知県内の新型コロナウイルス感染症精神障害患者を受け入れる唯一の精神科単科病院として東2病棟を22床の専門病棟を設けた。その際、患者をほかの病棟に転棟させたり、他院への転院をお願いしたり、退院調整を進めたりした。また、開放病棟であった西4病棟を閉鎖病棟にして運用するなど、病院の診療機能に大きな影響があった。
当院での新型コロナウイルス感染症患者の受入れについては、外来病棟においても、発熱症状等の感染疑い患者と一般患者との動線を分離するなどにより、安全性を確保し、感染が拡大しないよう診療した。また、精神科専門病院として、ほかの精神科病院やグループホームや老人ホームなどの施設から新型コロナウイルス感染症患者を受け入れ、公的医療機関としての役割を果たした。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターでは、令和3年5月からPICUと23病棟の中に最大23床の新型コロナウイルス感染症患者専用病床を確保して、愛知県全域から小児の新型コロナウイルス感染症患者を23病棟で400人、延べ1,326人、重症患者をPICUで40人、延べ191人受け入れてきた。これらを通して、愛知県における小児の新型ウイルス感染症患者の受入れは、公的医療機関としての一定の役割を果たしてきた。
なお、現在、確保病床はPICUの2床だけとなっているが、感染患者は通常の診療内でいつでも受入れ可能な状態で診療を継続している。
【委員】
大変厳しい環境の中で、各病院が様々な努力をしたことに改めて感謝を伝えたい。また、コロナ禍の影響で様々な話が出ているが、平時とは全く違う、本当に有事の年度の決算だと改めて感じる。各病院共に本当に新型コロナウイルス感染症患者の受入れに尽力してもらい、苦労があったと思う。
そこで働く医者をはじめとする医療従事者、それぞれの時間外勤務も増加したなど、職員の負担も非常に大きかったと思うが、職員の負担感について、離職率の状況なども踏まえて伺う。
【理事者】
新型コロナウイルス感染症患者の対応については、防護服の着用をはじめ様々な制約下で業務を行うため、職員の負担は相当なものとなる。なお、時間外勤務の状況について、時間外勤務手当の額は、コロナ禍前の2019年度が15億8,000万円余、コロナ禍の2020年度が15億3,000万円余、2021年度が15億2,000万円余、2022年度が15億8,000万円余となっており、大きくは変わっていない。
また、看護師の離職率については、コロナ禍前の2019年度が7.1パーセント、コロナ禍の2020年度も7.1パーセント、2021年度が7.8パーセント、2022年度が6.1パーセントとなっており、年度により若干変動はあるが、これも大きくは変わっていない。
【委員】
働き方改革について、有事平時関係なしの環境整備も引き続きお願いしたい。また、2024年度問題というと、私たちは運送業界をよく指すが、医療従事者も時間外勤務の上限に関して様々改正もあると聞く。ぜひ、人材確保ももちろん、その辺りの対応についてもお願いしたい。
次に、決算審査意見書の3ページの審査意見に、令和4年度に関しては新型コロナウイルスワクチン接種の収益が減少したと記載されている。収益自体は減少したものの、がんセンターにおいてはワクチン接種事業でも多大な貢献をしてもらったと理解している。
ワクチン接種者数の推移や接種に当たっての様々な労苦等も踏まえて、特筆するものがあれば伺う。
【理事者】
がんセンターでは令和3年5月から令和5年3月まで大規模接種会場において新型コロナウイルスワクチン接種事業を実施した。令和4年度の接種者数の実績は9万9,317人、令和3年度は37万4,841人であり、ワクチン接種事業へ協力することで新型コロナウイルス感染症の重症化や発症を予防でき、また、県の事業への協力及び県民の健康への貢献ができたと考える。
一方で、新型コロナウイルスワクチン接種事業の実施において苦労した点は、ワクチン接種事業へ医業従事者を派遣しなければならず、マンパワーが低下するため、そのやりくりには苦労した。それは医師だけではなく看護師、薬剤師、検査技師も含め、そのような状況であった。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターでは令和4年3月から名古屋空港ターミナルビルの大規模接種会場で、子供向けの新型コロナウイルスワクチン接種事業を実施した。令和4年度の接種者数の実績は3,626人で、令和5年3月に名古屋空港ターミナルビルでの大規模接種は終了した。その後も知的障害や発達障害、基礎疾患を有する子供への接種機会を提供するために、愛知県新型コロナワクチン接種センターを当センターの中に設置している。
また、このワクチン接種事業の実施において苦労した点は、がんセンターと同様であり、ワクチン接種事業への医療従事者を派遣するため院内のマンパワーが不足し、医師のみならず、各職種ともそのやりくりが大変であった。
【委員】
本当に当時のすさまじさを改めて感じる。民間の医療機関の協力もあったと思うが、やはり県立病院の対応は本当に頭の下がる思いであり、内容についても改めて理解させてもらった。
次に、決算審査意見書の5ページ、過年度医業未収金の状況について、令和4年度は前年度と比較して、金額は少し減少をしているが、件数は少し増えている。
この令和4年度時点の未収金の発生要因について、昨年度と比較してどのような割合で、また、それに対する見解があれば伺う。
【理事者】
令和4年度末時点の過年度未収金の発生要因の割合は、事業不振、失業、病気治療など、収入減を理由とする生活困窮に陥ってしまったケースが件数ベースで51.5パーセント、金額ベースで56.8パーセントと半数程度を占めており、令和3年度と比較すると、件数ベースでは53.1パーセントから1.6ポイント減少、金額ベースでは54.5パーセントから2.3ポイント増加と、ほぼ同水準となっている。
また、患者本人が死亡したケースは、件数ベースで15.9パーセント、金額ベースで25.5パーセントであり、令和3年度と比較すると、件数ベースでは17.2パーセントから1.3ポイント減少、金額ベースで26.7パーセントから1.2ポイント減少となっており、この二つが未収金発生の主な要因となっている。
【委員】
確認だが、コロナ禍で生活環境がいろいろあり、何か劇的に増えた、または、減ったというよりは、例年どおりの誤差の範囲だという認識でよいか。
【理事者】
そのように認識している。
【委員】
次に、あいち小児保健医療総合センターについて伺う。
あいち小児保健医療総合センターは私の地元にも近いところにあり、地域でも大変期待をしており、そして愛されている良い病院だと認識している。2019年にはPICUやNICUの整備や救急棟ができたり、ドクターヘリが離発着できる手術室もできるなど機能強化を進めてきた。当時は先行投資と呼んでおり、それが少しずつ花を開いて累積赤字なども減っていくときに、コロナ禍になった。そのような大変厳しい流れになっているが、あいち小児保健医療総合センターについても、審査意見書の3ページに、医療機能の充実・強化のために整備された施設を最大限活用することとある。
あいち小児保健医療総合センターは、救急棟の整備など施設整備完了後に、コロナ禍に入ってしまったという不幸な流れがあるが、当初期待されていた力がいまだに発揮できていないと思われる。経営の要となるべきPICU及びNICUの稼働状況について、現状どうなっているのか。また、稼働率向上の取組について伺う。
【理事者】
PICUは本来16床のところを14床、NICUは本来12床のところを10床と、まだフル稼働できていない状況である。PICUに関してはその中で、令和4年度は稼働率58.1パーセントと、前年度の62.1パーセントと比較して4パーセント減少している。
これは、新型コロナウイルスに対する感染防御対策が広く行われたことによって、感染症そのものの減少の影響を受けている。その反動を受けて、令和5年度前半にはRSウイルスを中心として各種の感染症が蔓延し、PICUは満床状態が2か月近く続いた。
そのような後押しも受け、地域の医療機関に対して愛知県の小児重症者相談システムの認知を広げ、より早いタイミングで一般病院から当センターに救急搬送の依頼をもらえるように働きかけている。
NICU10床に関しては、令和4年度病床稼働率54.6パーセント、前年度の65.1パーセントと比較して10.5パーセント減少している。その理由の一つは、NICU管理加算の算定期限を越えた長期の入院患者数人が令和4年度半ばに退室したことによるものである。これにより、患者単価は改善している。
現在は、少しマンパワー不足があるため、他大学から新生児科医師の応援なども得ながら、先天性心疾患に限らず脳神経外科の疾患などの受入れ件数も増やし、稼働率向上を目指している。
【委員】
あいち小児保健医療総合センターは医療の提供のみならず、治療を受ける子供やその家族のメンタルフォローやストレスの軽減、院内保育など様々な取組があると思う。
あいち小児保健医療総合センターにおける院内保育、メンタルフォロー等の実施体制や実施状況について伺う。
【理事者】
あいち小児保健医療総合センターではチャイルドライフ担当として、ホスピタルプレイスペシャリストという資格を併せ持つ常勤の保育士が5人と非常勤の保育士が在籍している。
療養環境下でのストレス軽減や、重い病気があっても子供らしく生きる発達援助やきょうだいの支援、あるいは、治療や検査を怖がらずに受けるためのプレパレーションなど多彩な活動を行っている。外来保育活動では、アトリウムでのピアノ演奏や外部主催の体験イベントなどを行っている。
病棟では、わくわくルームという名前の集団保育室及び病棟のプレイルームやベランダ、あるいはベッドサイドでの遊びの提供を行っている。手術の前にはおぺらチャンツアーという名前の術前プレパレーションとして、例えば手術の前日に実際に手術室の見学に行くなどを行っている。保育環境活動としては壁面や空間装飾など、行事のイベント活動は夏祭りやクリスマス会、きょうだいの会などを企画運営している。コロナ禍のため令和2年5月から停止していたが、犬が病棟に来て患者を癒やすドッグセラピーやボランティア活動の受入れも徐々に再開している。
最近では終末期の医療や脳死下臓器提供を行う場面での患者・家族・きょうだいの支援にも活躍している。
重症で予後不良の患者を扱う小児病院だからこそ保育士の存在は極めて大きく、その活動はなくてはならないものとしてスタッフからも厚い信頼を寄せられている。
【委員】
先ほどの話はとても重要で、ホスピタルクラウンの話やドッグセラピーについて、私も幾度となく本会議で取り上げた。また、ファシリティードッグという考えもあり、外部団体との連携もいろいろとやっているが、残念ながらボランティアでの受入れが非常に多い。もちろん院内にホスピタルプレイスペシャリストが常駐していることもあるため、その部分に本来予算を充ててほしいと提案していきたいが、なかなか本業の経営がうまく行っていないため、厳しい部分もあると思う。併せて大切なことは、コロナ禍を経て、乗り越えていく病院環境である。これはそれぞれの病院にも当てはまると思うため、まずは平時の状態にしっかり戻して、今ある施設を最大限に活用した上で、今後の話ができるよう各病院が努力してほしい。
【委員】
決算審査意見書の3ページ、4ページにある病院事業会計のうち、病院経営について伺う。
経営状況について、新型コロナウイルスの位置づけの変更や入院収益の減少及びワクチンの大規模集団接種の収益が減少したことにより、医業損失が大きく増加したとある。病院事業庁としては、もちろん新型コロナウイルス頼りの病院経営ではなく、継続的に患者の受入れを増やしていくために、中長期的な目線を持って取り組んでいると理解をしている。
各病院において経営改善に向けての機能強化や、新型コロナウイルスが5類に下がったことによる分、ほかの分野で患者数の受入れを増やしていくための人材の確保や、その取組、また、地道に患者数を増やしていくための地域との医療連携等が必要になってくると考える。
決算審査意見書の4ページの病院別経常損益に関連して、がんセンターについて伺う。
昨年度12月に特定機能病院の認定を取得しており、その際に年間約2億円の増収が見込まれていると話していたと思うが、令和4年度では7.1億円の経常損失となっている。
そこで、昨年度決算における特定機能病院の取得による増収額及び今年度の増収見込額について伺う。
【理事者】
がんセンターでは令和4年12月に特定機能病院を認定取得し、令和5年1月からDPC(診断群分類)機能評価係数が専門病院入院基本料7対1の0.1253から特定機能病院入院基本料7対1の0.1997へ変更し、係数が0.0744増加した。その結果、令和4年度決算における特定機能病院取得による増収額は1月から3月までの3か月しか増収にならなかったが、それにより5,029万2,338円の増収となっている。
また今年度の特定機能病院取得による増収見込額については4月から7月までの実績を基にした増収の年間推計は2億1,800万円を見込んでいる。
【委員】
もともと見込んでいた2億2,000万円の見込額に対して、実際にそれと同等レベルの増収額の見込みがあるということを理解した。先ほど答弁にあった医師会との協力、クリニックとの連携を通して、ぜひ、2億2,000万円ほどの増収額も今年度達成してほしい。
次に、決算審査意見書の3ページに記載があるように、不足している医師の人材確保は具体的な取組も含めて行っていると思う。
ただし、病院の経営、運営に当たっては、看護師等の医療スタッフの確保も重要だと考えており、患者数を増やすための集客活動や、増えた患者への対応を行うためにも看護師の確保は間違いなく必要となる。
先ほど、看護師の離職率は年々下がっているとの答弁があったが、現在の看護師の応募人数、採用、充足状況について伺う。
【理事者】
本年10月1日時点の看護師の充足状況は、定員882人に対し現員が898人で、16人の過員となっている。看護師は年度途中の産育休や退職等が多く、随時の代替補充が困難なため、条例定数の範囲内で一定数の過員を置く運用上の工夫を行い、病院運営に支障が生じないようにしている。
採用状況については、今年度は5月13日と14日に採用試験を実施し、受験者が179人に対して合格者が86人であり、来年度も大きな不足は生じないと見込んでいる。
看護師確保に向けてはチューター制度等による新人教育の充実や、民間マンション借り上げによる看護宿舎、また、院内保育所などの勤務環境の充実、受験者確保に向けた就職専門誌への掲載や企業展への参加、看護学校での説明会の開催などを行っていることもあり、2022年度の離職率は6.1パーセントと低くとどまっている。引き続き、こうした努力を続けていきたい。
【委員】
最後に1点要望する。
もちろん労働環境の改善、働き方改革も同時に取り組んでいると思う。ただし、私の知人に看護師がいるが、労働環境ももちろん大事であると同時に、給与面も大きな課題になってくる。仕事をすることにやりがいを感じているが、どうしても給与面で転職するほうが自分にとって必要だと感じている人もいるし、中には、この病院にはこの機能があるからそれをしたくて転職をする人がいることも事実である。
そのため、働き方改革で、環境面の整備、機能強化と同時に、賃金の改善も、もちろん予算の兼ね合いもあると思うが、両輪で進めてもらいたい。
【委員】
がんセンター愛知病院について伺う。
決算審査意見書の36ページに記載の特別利益は、主に岡崎市に割愛採用された派遣職員の退職手当相当額の岡崎市への支払いに係るものであるが、派遣職員の割愛採用は、愛知県がんセンター愛知病院の移管に関する覚書によるものと聞いている。
そこで、令和4年度の職員の割愛採用は終了したと考えてよいのか。また、覚書の内容はどのようなもので、今後、どのような負担が生じるのか。
【理事者】
平成31年4月の移管から令和4年度末で4年が経過したが、派遣期間中に育児休業したことなどにより、令和5年4月1日現在で4人が派遣を継続している。
また、旧がんセンター愛知病院の移管の際に岡崎市と締結した覚書は、移管の条件として、土地、建物、設備等を移管期日から10年を限度に県が無償で貸与する、岡崎市民病院の結核病床の整備に要する費用を全額負担する、岡崎市民病院の結核医療に要する経費に係る一般会計負担金について、移管期日から10年間県が全額負担する、医師以外の職員で岡崎市に移行希望がある者は、岡崎市への派遣期間が2年経過後、岡崎市が割愛採用する、岡崎市が割愛採用した職員の県職員としての勤務期間に係る退職手当金相当額を県が岡崎市に支払うなどが主な内容となっているため、今後の負担は、派遣を継続している残り4人に係る退職手当金相当額、岡崎市民病院の結核病床の整備、運営に要する費用の負担が生じることとなる。
【委員】
旧がんセンター愛知病院は平成31年4月に岡崎市に移管をされ、令和2年10月に県立の新型コロナウイルス感染症専門病院となり、令和5年3月末をもって休止している。
新型コロナウイルス感染症専門病院廃止後、将来的に土地、建物、整備等を所管する立場として、旧がんセンター愛知病院をどうするのか伺う。
【理事者】
覚書では10年間を限度として施設を無償で貸与できるため、新型コロナウイルス感染症専門病院休止後、病院事業庁へ施設が返還された後の利用等については、岡崎市の意向も確認しつつ、関係機関とも十分に調整の上検討する。