委員会情報
委員会審査状況
教育・スポーツ委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月15日(金) 午後0時58分~
会 場 第5委員会室
出 席 者
河合洋介、平松利英 正副委員長
坂田憲治、川嶋太郎、田中泰彦、中村竜彦、宮島謙治、谷口知美、島 孝則、
大久保真一、下奥奈歩 各委員
スポーツ局長、スポーツ監、アジア・アジアパラ競技大会推進監、
教育長、岡田教育委員、教育委員会事務局長、同次長兼管理部長、教育部長、
教育改革監、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第9款 教育・スポーツ費の内
第1項 教育総務費
第2項 小学校費
第3項 中学校費
第4項 高等学校費
第5項 特別支援学校費
第6項 生涯学習費
第7項 保健体育費
第10項 スポーツ費
第2条(繰越明許費)の内
第9款 教育・スポーツ費
第3条(債務負担行為)の内
総合教育センター移転整備工事
高等学校施設長寿命化推進工事
稲沢緑風館高等学校整備工事
時習館高等学校併設中学校整備工事
豊田西高等学校併設中学校整備工事
西尾高等学校併設中学校整備工事
小牧特別支援学校整備工事
いなざわ特別支援学校整備工事
特別支援学校施設長寿命化推進工事
岡崎特別支援学校移転整備工事
社会教育・野外活動施設整備工事
名古屋競馬場跡地後利用基盤整備事業費負担
アジア・アジアパラ競技大会愛知・名古屋合同準備会負担
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会負担
アジア・アジアパラ競技大会市町村施設改修事業費補助
宿泊施設バリアフリー整備推進事業費補助
武道館施設設備改修工事
総合射撃場施設設備改修工事
新体育館整備推進業務委託契約
第 21 号 公立学校情報機器整備基金条例の制定について
第 50 号 愛知県スポーツ施設及び社会教育施設条例等の一部改正について
第 53 号 愛知県立学校条例の一部改正について
(結 果)
賛成多数をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第50号及び第53号
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第21号
○ 請 願
第 43 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮」について(教育関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第43号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 学校教育の充実及び施設整備について
2 生涯学習について
3 スポーツの振興について
4 スポーツ局及び教育委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(4件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 請願審査(1件)
4 委員長報告の決定
5 一般質問
6 休 憩(午後2時54分)
7 再 開(午後3時5分)
8 閉会中継続調査申出案件の決定
9 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
令和6年2月定例愛知県議会予算に関する説明書(1)の266ページ、教育・スポーツ費の中の学校整備費に関して、今回予算計上されている県立高校体育館等への空調設備について伺う。
県立高校の体育館及び武道場への空調設置については、今月4日に我が党の今井隆喜議員が一般質問でも取り上げたが、その際、大村秀章知事からは、熱中症対策として2024年度から2027年度までの4年間で180億円を投じ、145校の体育館と武道場292棟の空調設備整備を進め、そして、一日でも早く使用できるよう、設計施工一括発注、デザインビルド方式として、予算の議決を条件とした上で、3月上旬から順次入札公告を行っていくと答弁があった。
整備初年度となる2024年度は36校74棟を整備することになっているが、その整備スケジュールについて伺う。
【理事者】
整備スケジュールであるが、対象となる36校74棟を地域ごとに数校程度を一つのグループとして10程度のグループをつくり、グループごとに順次入札を進めていく。
まず、3月11日、今週の月曜日には、予算の議決を条件として、最初の二つのグループ、合わせて6校の入札公告を行っている。残りのグループについても、1週間程度の間隔を設けるなどしながら、4月中に全ての入札公告を完了する予定としている。
その後は、入札公告を完了したグループごとに4月下旬から6月中旬までに開札及び参加資格の審査を経て、契約締結は5月中旬から6月下旬に順次行う。工事については、学校との調整を行いながら、早期の設置完了ができるよう取り組んでいく。
【委員】
次に、高校体育館や武道場に設置する空調設備であるが、入札公告時に示す要求水準書には、熱中症対策としてどのようなことが記載されているのか。
【理事者】
熱中症対策として、要求水準書に記載する内容については、生徒が快適に授業等で体育館等を使用できる室内環境を実現することを基本的な考え方の一つとして記載している。
また、空調設備等の機能及び性能として、空調設備を使用する夏の期間において稼働時には原則温度が28度以下となるよう求めている。
【委員】
知事答弁では、多くの県立高校が避難所となっており、避難者の生活環境の改善にも資するとあった。私も今後空調設備が整備される高校の体育館、武道場を避難所として活用してほしいと考えているが、市町村に対しての働きかけ等を行うのか伺う。
【理事者】
市町村からの要請に基づく避難所の指定については各学校長の権限としている。これまでにも、県立学校長に対して積極的に協力をするよう文書を発出している。今回、体育館、武道場に空調設備を整備することから、2月26日に避難所の指定に積極的に協力するよう文書を改めて発出した。
併せて、2月28日には、防災安全局からも市町村の防災担当部署に対し、県立学校における体育館や武道場の災害対策基本法上の指定避難所への指定を積極的に進めていただくとともに、既に指定済みの県立学校においては日頃から訓練を実施するなど、連携協力体制の構築に努めてもらう文書が発出されている。
【委員】
各県立学校長に対しても避難所の指定に積極的に協力するようにと改めて文書を発出したとの答弁もあり、先ほどのように、大村秀章知事からも多くの高校が避難所となっており、避難者の生活環境の改善にも資すると答弁もあった。
今回、我が党の今井隆喜議員の一般質問において、教育長からは、熱源については電気、都市ガス、LPガス方式が一般的であり、初期費用や維持費用のほかにも燃料の備蓄性など、それぞれに強みがあることから、今回の要求水準書の中には、県から熱源の方式を指定せず、事業者による多様な提案によることとしたいとの答弁があった。
一部の市町ではあるが、豊田市は拠点避難所26校にLPガス方式を、また、みよし市、大府市、武豊町は全ての小中学校の体育館がLPガス方式を導入していると聞いている。
当然のことながら、災害発生時には停電も考えられる。県としても今後、整備していく避難所に指定されている体育館、武道場については、避難した人が避難先で暑さや寒さに耐えられるように、災害が発生した際にも空調設備が使えるような熱源方式を県として検討しているのか。
【理事者】
今回の空調整備については、学校現場における熱中症対策として実施するものであるが、空調設備の設置については避難者の生活環境の改善に資するものである。
宮島謙治委員が示すとおり、市町村が設置する小中学校の体育館には、LPガス等を熱源とした空調整備が進められていることは承知しているが、今回整備する県立高校については蓄電池の設置や都市ガスとLPガスの併用方式といった仕様とはしていない。業者の選定については、予定価格の範囲内で最も安価な価格で入札した業者を選定する。
熱中症対策として、来年度に整備する36校74棟については、一日も早く整備が完了するようしっかりと取り組んでいく。
【委員】
今後、この地域でも南海トラフ地震が70パーセントから80パーセントの確率で発生すると予測されている中で、万が一停電が起きた際に、例えば、電気方式や都市ガス方式は、すぐには使用ができないため、避難をしてきた人が、空調設備が導入されていながら使用できずに暑さや寒さに耐えながら避難所生活を送ることになる。
一方で、災害に強い熱源方式として、LPガス方式は問題なく使用できるものの、電気方式であれば蓄電装置、都市ガス方式であれば貯蓄できるバルクを備えるなど、県として災害が発生した際、停電時にも使用できる熱源方式を取り入れる考えがあるのか再度伺う。
【理事者】
今回実施する県立高校145校299棟の体育館、武道場への空調整備については、近年の猛暑の中にあっても、体育や部活動を継続できるよう、熱中症対策として4年間で180億円を投じて実施するものであり、スピード感を持って取り組むことが必要である。
2年目以降の空調整備については、今回実施する入札業者からの提案内容や、落札状況を踏まえ、熱源等の仕様や落札者の決定方法について考えていく。
【委員】
避難所としての機能のみを考えれば、LPガス方式の一択であると思っているが、市町村の小中学校における体育館の空調整備には、文部科学省からの2分の1の国庫補助があるのに対して、県立高校にはそれが適用されず、今回全て県の単費での整備となり、限られた予算の中で何とか早期に整備を進めたいという当局の気持ちもよく分かる。
熱源方式として想定される電気方式、都市ガス方式、LPガス方式の中であれば、やはりLPガス方式は導入コストが高くつくようであるが、全ての県立高校をLPガス方式にするのもコスト的にも、リスク分散の観点からもいかがなものかとも考える。
そこで、私からの提案であるが、近隣に避難所となり得る小中学校がない地域に立地している県立高校で避難所として指定されている体育館、武道場にはLPガス方式を用いて、地域の避難所として災害発生時にも安心して利用してもらい、それ以外の県立高校は、コスト重視かつ生徒の熱中症対策重視の観点からの早期整備をするような対応を取ってほしい。
避難所の基本は、地域のコミュニティーの中心である市町村の小中学校である。しかし、それらをカバーすべき県立高校としては、小中学校の手薄な地域の県立高校に熱中症対策に加えて避難所としての機能を重視した空調設備を導入すれば、合理的かつ限られた予算内で実現が可能ではないかと考える。
また、避難所の活用については、防災安全局とも連携し、市町村に対して避難所指定を働きかけているとのことであった。災害が起こった際、避難する人々は乳幼児から高齢者、さらには障害のある人など様々である。避難所での生活は、健康面でも大きな負担となることが懸念される。
熱中症対策として整備される県立高校の体育館、武道場ではあるが、避難所として活用されることも今一度考えに入れ、例えば避難所に指定されている体育館、武道場においては、災害に強い熱源方式を入札公募の条件に盛り込むこと、さらには、文部科学省の補助金の対象にはならないが、経済産業省の災害バルク補助金などを活用することもぜひ検討しながら、避難をしてきた人々が不自由することなく、安心して避難所生活が送れるようにしてもらうことと、全ての県立高校が価格ありきの一律での熱源方式を採用するのではなく、地域の状況に応じたそれぞれの対応をしてもらうことを期待するとともに、強く要望する。
早期整備に向けて発注が既に始まっていること、今後契約まで発注スケジュールについて答弁をしてもらったので、一日も早い整備が行われるようにしっかりと取り組んでほしい。
【委員】
エアコンの設置についてと中高一貫校についての二つの議案質疑を行う。
まず、歳出第9款教育・スポーツ費、第4項高等学校費について伺う。
今回、来年度予算案に県立高校体育館等への空調設備の整備の予算が盛り込まれた。このことは、熱中症対策として私たちも求めてきたので歓迎したい。
私は、学校が夏休みの期間に豊橋市内の高校を訪問し、懇談、調査を行ってきた。その実態も踏まえて、9月定例議会の際に、この委員会の場で、暑さ対策として、県の責任で体育館へのエアコン設置も進めてほしいことを質問した。その際の答弁は、県立学校については、老朽化対策として長寿命化改修に毎年100億円を超える事業費で取り組んでいるところであり、これらの状況を踏まえると、県立高校の体育館へのエアコン設置をすぐに進めることは難しいと考えているというものであった。
9月定例議会の時点では、体育館へのエアコン設置がすぐに難しいと答えていたものが、態度を変えて、来年度予算案に盛り込まれた経緯について伺う。
【理事者】
9月定例議会での委員会時点においては、今年度から2025年度までの3か年で特別支援学校の体育館に空調整備を進めていること、県立学校の老朽化対策として、長寿命化改修に毎年100億円を超える事業費で取り組んでいること、他県においても公立高校の空調設置率は、スポットクーラーの設置も含め全国平均で8.1パーセントであること、これらのことから県立高校の体育館へのエアコン設置をすぐに進めていくことは困難であることを答弁している。
しかしながら、昨年の夏は9月に入っても気温が30度以上の真夏日が26日となるなど、熱中症のリスクが高い状況となっていた。こうした中、国においては、昨年11月29日に成立した補正予算において、私立学校等を対象に熱中症対策として体育館等への空調整備を支援する補助制度が創立されている。こうした状況を勘案し、子供たちの命と健康を守りながら、体育や部活動といった教育活動が継続できるよう、全ての県立高校においても体育館、武道場に空調設備を整備することとしたものである。
【委員】
子供たちの命を守るために、そのように決断したとのことである。他の事業を進めているから財政的に困難であると言っても、決断すればできるということではないか。お金がないわけではない。学校教室のエアコン代の保護者負担もぜひなくしてほしい。
次に、県立高校の理科室や音楽室といった特別教室へのエアコンについて、費用は保護者負担となっている。クラスの教室についても、当初は保護者負担になっていた。今回、体育館等へのエアコン設置は、今の答弁にもあったように、熱中症対策として大変重要なものである。しかし、これまでのように保護者負担が再び発生してしまわないかを心配している。
体育館等に設置するエアコンについては、県が責任を持って全額費用負担すべきで、保護者負担を生じさせないようにすべきではないか。
【理事者】
今回整備する高校の体育館、武道場の空調設備の光熱費については、体育館の授業、学校行事のほか、部活動での活用も含めて全額公費で負担する。
【委員】
途中から保護者負担に切り替わらないようにしてほしいと重ねて要望する。
以前、県内のある高校で、立ち止まっていても汗が出るような暑さの中、講堂も体育館も、エアコンは既に設置されているにもかかわらず、どんなに頼んでも、金銭的な理由でエアコンをつけずに、夏休みに部活動をさせられたという事例があった。この部活の部員の中には、そのせいで熱中症になり、病院に行った人もいた。
体育館等へのエアコン設置後、金銭面を理由にエアコン使用を控えることなく、適切な使用がされるよう、各学校に通知するのか。
【理事者】
空調機器の使用については、これまでも各県立学校長に対し、熱中症予防の観点から、児童生徒及び職員の健康と安全を第一に考え、冷房設備を適切に使用するよう文書を発出している。
なお、今年度は5月18日付けで文書を発出しており、この文書には電気代等に不足が見込まれる場合は予算の追加配分を行うことも明記している。今回整備する体育館等への空調についても、従前と同様の取扱いとしていく。
【委員】
そのような形できちんと使用されるようにしてほしい。
昨年の8月、ゼロエミッションを実現する会が、断熱改修をするとエアコンの効用もよくなり、コスト削減にもなるとして断熱改修を国に求めた。小中学校への体育館へのエアコン設置の国から出る補助金は断熱改修が条件になっている。
体育館等へのエアコン設置と併せ、断熱化を進めることも必要であると考えるが、認識を伺う。
【理事者】
今回、入札公告時に示す要求水準書には、室内温度は28度以下としており、空調設備の能力だけでなく、屋根等の断熱により28度以下とする方法も可能としている。民間事業者からの提案により、断熱効果を含めた空調設備の整備に取り組んでいきたい。
【委員】
エアコンの設置、使用とともに、学校の断熱化も進めてほしい。年々気温が上昇する夏に、子供たちの命と健康を守るために尽力してもらうことを要望する。
続いて、歳出第9款教育・スポーツ費第1項教育総務費のうち、愛知県で既に進められている中高一貫校に関して伺う。
中高一貫校は、学力検査は行わずに適性検査と面接を行うとしている。これまでの議会でも受験競争の過熱化や低年齢化といった懸念の声があったということは聞いている。その際、県教育委員会は、過度な競争を招かないように、特に高度な知識やテクニック、知識の量を求めるような出題はしないことを答弁したと承知している。
しかし、進学塾がこぞって公立中高一貫校受験の専門コースや、公立中高一貫校受験対策クラスを設置し、塾のホームページには、中高一貫校合格には小学校の内容の確実な習得はもちろん、思考力、判断力、表現力などを鍛えるための専門的な対策が欠かせない、受験対策で適性検査に通用する学力を育成すると受験競争をあおっている。それは特に高度な知識やテクニック、知識の量を求めるような出題はしないと言いながら、実際には高度な知識が求められるものになっているのではないか。
出題内容にかかわらず、世間的には既に過度な受験競争をあおる要因になっているが、県の認識を伺う。
【理事者】
中高一貫校の中学入試で実施する適性検査の問題については、昨年12月26日にサンプル問題を公表し、小学校の学習範囲から出題することや、特に高度な知識やテクニック、知識の量を求めるものではなく、思考力、判断力を中心にはかるものであるということを具体的に示したところである。
下奥奈歩委員が示すとおり、学習塾がこれを商機と捉えて活発に塾の生徒の募集を行っていることは承知している。県教育委員会では、2025年4月に開校する附属中学校4校のウェブページを開設しているので、その中で、適性検査は小学校の学習範囲から出題することや、高度な知識やテクニックなどを求めるものではないことを引き続き周知するとともに、来年度に開催する学校ごとの説明会においても改めてそのことをしっかりと説明し、保護者の不安が軽減できるよう努めていく。
【委員】
しかし、事実上、学習塾が専門的な知識が必要ということを強調して、商機と捉える動きを加速させるような要因になっており、そうすると親は学習塾に連れていって合格させたいとなることは、受験競争を事実上あおっている要因をつくっていると考える。
こうした学習塾に通えるのは、経済的に余裕のある家庭である。ただでさえ格差と貧困が増大している中で、その開きがより大きくなることが心配される。
子供の成績は、家庭の経済的条件に影響されることがあり、経済的な格差が教育の格差につながる要因を、公教育として推し進めるのは問題ではないか。
【理事者】
小学校の段階から学習塾に通わせるか否かについては、各家庭の子供の教育に対する考え方によると認識している。また、適性検査は小学校の学習範囲から出題するので、学習塾に通い、小学校の学習範囲を超える内容まで学習しなければ解けない問題とはしない。
加えて、中高一貫教育の導入により設置する県立中学校は、地元の市町村立中学校と同様に入学料や授業料が不要であり、経済的条件に左右されずに通うことができるので、子供たちの学びの選択肢を増やすことになると考えている。
【委員】
しかし、事実上経済的な格差につながっている現状が既に起こりつつある。
中高一貫校の目指す教育に人材育成という記載がある。過度に競争主義的な教育を進め、子供の能力の早期選別を図ろうとしているように見える。学校では、過度の競争主義的教育が推進され、多くの子供が、成績評価を偏重した競争や格差づけの中に取り残され、落ちこぼれた子供は自己肯定感や希望を持てずに、能力や人格の発達も阻害されかねないことを危惧している。
国連の子どもの権利委員会から、三度にわたり過度な競争主義を改めるよう勧告が出されていることについての認識を伺う。
【理事者】
中学校や高校の教育では、生徒同士が切磋琢磨する中で知性や社会性を高めていくことが重要であると考えている。
県立中高一貫校では、チェンジ・メーカーの育成を目指して、正解のある問題を解くペーパーテストの成績のみを競うのでなく、中高6年間をかけて、答えがあらかじめ定められていない問題について研究や、自ら問いを立てて探究する活動に取り組む中で、生徒一人一人の興味、関心を大切にしながら、可能性を最大限に引き出し、新しい価値を生み出す力を伸ばしていきたいと考えている。
【委員】
競争主義的な内容を生むようなことを、公教育でやるべきではないと考える。
次に、過去の議会での答弁において、明和高校をはじめとする探究学習重視の中高一貫校は、県内有数の進学校でもあることから、難関大学へ進学するための指導を期待して受験する子供の割合が多くなるのではという声もあるが、大学受験に特化した指導は行わないと述べていた。
明和高校などは進学校と言われ、難関大学合格者も輩出している。そのような学校で、大学受験に特化しない学習とはどのようなものになるのか。説明会に参加した児童や保護者に、どのように説明したのか。
【理事者】
中高一貫校でどのような学びを実践するのかは重要なポイントであるので、昨年10月から11月にかけて開催した中高一貫校ごとの児童保護者説明会では、開催時間の90分のうちの多くの時間をかけて、大学受験に特化した先取り学習や詰め込み学習は行わず、探究的な学びを重視した授業を展開することで、社会の様々な分野でチェンジ・メーカーとなる人材の育成を目指していくことを、意を尽くして説明した。
【委員】
進学校であるため、そのように思う保護者も多いのではないか。意を尽くして説明したということではあるが、進学校で東京大学などに合格者を輩出している学校が多いため、そこを説明したということであっても、それを期待している子はいるのではないか。
塾教育研究会が、数少ない公立中高一貫校の人気が上がってくるほど、その過熱化がもたらす影響も心配されると指摘をしている。公教育が教育格差や経済格差を増大させる中高一貫校は見直すべきである。
《請願関係》
〈委員外議員発言〉
【理事者】
小中高生の新型コロナワクチン接種後、体調不良者への合理的配慮の請願書に関して、幾つか伺う。
新型コロナワクチン接種後の体調不良に関しては、3月8日に、岐阜県議会で、副反応疑いについて、3月から月1回公表するということで大きなニュースとして取り上げられている。これを調べると愛知県でも副反応疑いはもうホームページに載っているが、なぜニュースバリューがあるかというと、自民党の県政自民クラブの人たちの一般質問への答弁ということである。
それに重なるような形で、今、店頭に並んでいる文藝春秋の記事を読んだ人もいるかと思うが、愛知県がんセンターの医師であった京都大学名誉教授の福島雅典氏が非常に詳しくこのワクチン後遺症の真実について執筆している。文藝春秋にも出るということは、日本の知識層や、経営者の目に触れることになるので、私もずっとこの問題を訴えてきて、少し肩の荷が下りた。
今、学校現場ではワクチン接種後に体調不良になった学生たちにどのような対応をしているのか。
【理事者】
学校では、ワクチンの副反応によらず、体調の悪い生徒についてはオンライン学習などの形で学校の授業についていける配慮をしている。
【理事者】
先日、中日新聞の社会面に私の記事が大きく取り上げられた。卒業式祝辞に「コロナは捏造」ということで、このように取り上げられたことは大変ありがたいと思っている。この祝辞に込めた一つの意味としては、県の教育委員会もワクチン接種を勧めたということである。1年半前の秋ごろに、私立学校、公立学校にバスを仕立てて集団接種会場に連れていき、10パーセント程度の生徒がワクチンを接種したと聞いている。
そのため、ワクチン接種を勧めた側の責任も当然ある。そして、出席停止ではなくて欠席扱いとなってしまうため、卒業することができず、退学を余儀なくされたという人もいると聞いた。そのような人がいる中で、今回卒業式おめでとうと卒業した生徒だけ褒めたたえるというようなことは、私は手放しで祝えない。ましてや、学校現場の教員にはそこの責任を重く自覚してほしい。
ところが、今回、教員は、お祝いの言葉ではない、有権者にアピールしようと卒業式を利用しているとコメントしている。私は顔も名前も出して矢面に立っている。本委員会の委員も政治家である。特に、公人というべき学校の校長や教員が名前も出さずにリークするようなコメントをしていることは非常に残念である。
コロナワクチンを打って体調不良になり、欠席扱いにされて卒業できなかった人への配慮をしてほしい。これではもう落ちこぼれや、弱者切捨ての教育現場であると言われてしまうのではないか。
特にこの請願項目の3について、出席停止扱いにしてほしい、合理的配慮をしてほしいことを何度も言っている。教育現場は弱者切捨て、落ちこぼれは見捨てることでよいか。
【理事者】
出席停止措置となっても、授業に出席したことにはならないため、先ほど末永けい議員が言ったように、場合によっては欠席日数が増えて、単位数や授業日数が不足して進級や卒業できない生徒が出てしまう。それを防止するため、自宅にいてもオンライン学習を受けることで出席扱いにすることができるようになった。
そのため、出席停止ではなく、そのような生徒が自宅でも授業を受けて出席扱いにすることによって、勉強が遅れることなく、進級や卒業ができるようにする取組をしている。
【理事者】
かなり明確な答弁であるので、現在、そのような対応をしていると理解した。
とにかく教育現場としても、学校に通えるように全力でサポートしてほしい。
《一般質問》
【委員】
特別支援学級担任の資質向上について伺う。
少子化の流れが急激に加速しており、文部科学省によると義務教育段階の全児童生徒数は2012年度に約1,040万人であったが、2022年度には約952万人となっており、10年間で約1割の減少となっている。一方、同じ義務教育段階で特別支援学校、特別支援学級、通級による指導を受ける児童生徒数は、2012年度に約30万2,000人であったが、2022年度は約61万8,000人となっており、10年間で2倍を超えているのが現状である。
地元知多市の特別支援学級児童生徒数を聞いたところ、平成26年に129人であったのが令和5年には288人と、10年間で2倍以上増加していた。また、知多市内の教員数に対する特別支援学校教諭免許状保有数は、令和5年の小学校10校で全教員数が239人、特別支援学級数が45学級、特別支援学校教諭免許保有数は全教員中の24人で、そのうち特別支援学級の担任をしている教員は現在10人である。
同じ知多市内、令和5年の中学校5校では、全教員数が141人、特別支援学級数が13学級、特別支援学級の教員免許保有数が全教員中7人で、そのうちの特別支援学級の担任は現在2人という状況であった。
この中で今回取り上げる特別支援学級では、小中学校において障害による学習上または生活困難を克服するため、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、それから視覚障害、聴覚障害、言語障害、自閉症・情緒障害といった七つの障害種別ごとに少人数の学級編制によるきめ細かい支援、指導が行われている。
現在、愛知県の公立小中学校の特別支援学級の在籍児童生徒数や学級数はどのようになっているのか。また、10年前と比べてどのように変化しているのか。
【理事者】
本県の公立小中学校の特別支援学級における今年度の在籍児童生徒数は1万6,975人、学級数は4,203学級となっている。10年前と比べて児童生徒数は約2倍、学級数は約1.7倍にそれぞれ増加している。
【委員】
小中学校の特別支援学級は今後も増加が想定され、増加すれば必然的にそれだけ特別支援学級を担任する教員が必要となる。しかしながら、小中学校の教員はそれぞれの学校の免許状があれば勤務できるため、誰もが特別支援学校の教諭免許状を保有しているわけではない。
特別支援学級を担当する教員は、専門性の観点から特別支援学校教諭免許状を保有し、専門的な支援、指導を行うことが望ましいと考えるが、特別支援学校教諭免許状の保有について現状どのようになっているのか。また、特別支援学校教諭免許状保有率の向上のために、県としてどのように対応しているのか。
【理事者】
本県の公立小中学校において、今年度特別支援学級を担当している教員が特別支援学校教諭免許状を保有している割合は26.4パーセントである。なお、全国平均は31.0パーセントとなっている。
また、特別支援学校教諭免許状保有率の向上に向けては、市町村教育委員会を通じて小中学校の教員に特別支援学校教諭免許状の取得を働きかけるとともに、免許状の取得に必要な単位を修得できる県教育委員会主催の認定講習や大学の公開講座、通信教育などがあることを周知している。
【委員】
現状では特別支援学級担任の特別支援学校教諭免許状保有率は約4分の1とのことであるが、保護者などからは、初めて特別支援学級を担任するという教員が小学校6年間で3人いたという声や、専門性が低いと感じる再任用の先生が担任に充てられているといった声を聞いている。また、学校現場からは、特別支援学級での教育を望む保護者のニーズに対し、特別支援学校教諭免許状を保有する教員がそもそも少なく、計画的に担任を配置することが難しいという声も上がっている。
さらに、現在小学校にて、初めて特別支援学級の担任を任された特別支援学校教諭免許状を持っていない教員からは、障害特性を持った児童生徒との関わり方が分からなくて日々どうしていいのか不安でつらいといった声も聞いた。実際に知多市教育委員会に聞いた話によると、ベテランの特別支援学級の教員であっても鬱病となり、休職する人もいるのが現状である。
特別支援学校教諭免許状の取得に当たり、資格を取得するまでの期間と受講料などはどのようになっているのか。また、特別支援学校教諭免許状を持たない、特別支援教育の経験の少ない担任の資質向上に向けて、県としてどのように取り組んでいるのか。
【理事者】
特別支援学校教諭免許の取得についてであるが、小学校教員としての在職期間が3年以上の者が特別支援学校教諭二種免許状を取得する場合は、県教育委員会主催の認定講習では、取得に要する期間は最短で2年、認定講習料は4,800円である。
大学の公開講座や通信教育では、個人差があるものの、取得に要する期間は最短で6か月、平均して1年程度で取得する人が多い。また、受講料については、大学側が開設する講座内容により差があるが、およそ5万円から12万円程度の経費が必要となる。
【理事者】
特別支援教育の経験の少ない担任の資質向上についてであるが、小中学校で初めて特別支援学級を受け持った教員は、4月当初、校内の特別支援学級担任経験者などから助言を受けるなど、OJTで支援や指導の方法を学びながら学級を運営している。
県教育委員会では、5月から特別支援学級担任教員初心者研修を行っている。この初心者研修では、全員がe-ラーニングで自閉症や情緒障害、知的障害、肢体不自由など、様々な障害の特性とそれぞれの障害に応じた基本的な支援や指導の方法などを学ぶ。その後、担任している子供の障害の特性に応じた支援や指導の方法を身に付けるために、県立特別支援学校や愛知県総合教育センターにおいて授業を参観してノウハウを学んだり、実際のケースについて詳しく学ぶことで支援や指導を行う力をつける。
また、特別支援学級を受け持った経験の少ない者に対しては、夏休み期間中に特別支援学級担当教員スキルアップ研修を行っている。このスキルアップ研修では、県立特別支援学校の教員を講師として、担任している子供の障害の特性に応じた具体的な支援や指導の方法、学級運営などについて学んでいる。
また、日頃の実践についてまとめたレポートを持ち寄り、工夫している点などを受講者同士で発表し合い、講師から助言を受けることで、2学期以降自信を持って子供たちの支援、指導ができるようにしている。
【委員】
教員の資格手当はどのようになっているのか。
また、小中学校で今年度末、来年度末で60歳となる特別支援学校教諭免許状の保有者が何人いるのか。
【理事者】
特別支援学級の担任を受け持つ場合には給料に一定の加算がされる給与制度となっているが、特別支援学校教諭免許状を取得していることに対する資格手当はない。
小中学校で今年度末60歳となる者のうち、特別支援学校教諭免許状の保有者は38人、来年度末で60歳となる者では44人となっている。
【委員】
特別支援学級の運営に当たっては、担任だけに任せるのではなく、学校全体で取り組むべきであり、校内の支援体制の充実が必要だと考えているが、県としてどのように取り組んでいるのか。
【理事者】
特別支援学級の運営に当たっては、宮島謙治委員が示すとおり、担任だけに任せるのではなく、校内の支援体制を充実させる必要がある。そのためには、管理職や各校で指名されている特別支援教育コーディネーターの教員が果たす役割が重要であると考えている。
まず、管理職に対するリーダーシップ向上研修では、特別支援教育に関する最近の動向や小中学校などにおける支援体制の好事例を学ぶなど、リーダーとしての資質を高める研修を行っている。
次に、特別支援教育コーディネータースキルアップ研修では、校内でのコーディネーターの役割や、医療や福祉など関係機関との連携について学ぶ研修を行っている。
また、小中学校の個別の児童生徒について助言を求める依頼があった場合には、県立特別支援学校の教員が出向いて、具体的な支援や指導の方法などについて専門的な視点からの助言を行っている。その際には、特別支援学級の担任だけでなく、その児童生徒に関わっている教員や特別支援教育コーディネーターにも参加してもらい、組織的な支援が行われるよう促している。
このような地域の特別支援教育を支える特別支援学校のセンター的機能については、その強化に向けて力を入れている。
今後も小中学校の特別支援学級を担当する教員の資質向上と校内の支援体制の充実を図っていく。
【委員】
最後に三点要望する。
一点目は資格手当についてである。先ほどの答弁では、教員免許状と特別支援学校教諭免許状の両方を持っていても手当が同じということであるが、企業では一つの資格ごとに資格手当がつくのが一般的であるので、特別支援学校教諭免許状を保有している教員には資格手当をつけてもらえるように検討してほしい。特に現在特別支援学級にて担任を持っている教員には手厚く手当をつけてほしい。
二点目であるが、特別支援学校教諭免許状の資格取得の費用は全て自己負担のようであるが、これも企業であれば職場にて必要な資格の一つであるので、全額補助もしくは一部補助が一般的ではないか。
ある程度の条件は必要であるものの、例えば私が議員になる前に勤めていた会社では、一つの資格に2回まで挑戦できる受験費用の全額補助があった。3回目に挑戦する場合は、全額自己負担という制度であったが、資格取得の際、自己負担が軽減されることで教員が特別支援学校教諭免許状の資格取得へ挑戦し、資格者を増やしていけるような制度づくりも必要である。
三点目は、今年度、来年度の特別支援学校教諭の免許状を保有し、実際に特別支援学校や特別支援学級での経験のある教諭を再任用して、特別支援学級の担任に慣れていない教員の指導、または補助者として特別支援学級の教員の育成や資質向上を図ることにより、特別支援学級の教員の負担を軽減できるようなサポート体制の構築が必要である。
【委員】
県立高校における防災教育の取組について伺う。
1月1日に発生した能登半島地震から約2か月が経過し、本県からも官民様々な応援が現地入りしているものの、まだまだ復旧には時間を要し、改めて今回の地震による被害の大きさを感じている。
それと同時に、本県を含む東海エリアにおいても、南海トラフ地震で今想定される最悪の死者数が32万人、全壊や焼失の建物が240万棟と想定されていると聞いている。改めてこの能登半島地震を契機に、防災の準備を進めていかなければいけない、そんな必要性を感じている。
ただし、災害は、いつ発生するか予想できない。今回の能登半島地震は休日の夕方に発生したが、生徒たちが学校にいる時間帯や登下校の時間帯に被災することも十分考えられる。そのため、各学校における防災教育を充実させていきながら、生徒一人一人が、自らの命を守るための力を身につけていくことが大切である。
1月1日の揺れた瞬間、私は自宅のリビングにいた。孫を含め小学生4人も一緒にいたが、揺れた瞬間、小学生4人の子供は、テーブルの下にしっかりと潜っている。それで、気が付いたら、大人4人、5人がじっと座っている状況であった。反省させられたと同時に、防災教育は繰り返し訓練していくことで意識できることも改めて感じた中で伺うが、現在県立高校の防災教育はどのように行われているのか。また、県立高校の防災教育の充実を目指して、県の教育委員会としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
県立高校における防災教育の現状については、毎年全校で避難訓練を実施しており、山間部にある学校では土砂災害、河川に近い学校では洪水、沿岸部にある学校では津波など、立地によって発生する可能性の高い災害を想定した訓練を行っている。
また、高校生全員が履修する地理総合の授業では、地形や土地利用の状況と自然災害との関係を学んでおり、学校と生徒の居住地周辺の地形図やハザードマップを使って発生する可能性のある災害や災害発生時の被害をできるだけ抑えるための備えなどについて学習している。
県教育委員会の取組としては、学校や地域の防災力の向上に貢献する防災リーダーを育成するため、名古屋大学と防災安全局との共催による高校生防災セミナーを毎年実施している。この高校生防災セミナーは、名古屋大学の減災館を会場として、県が2年間の研究指定をした15校の研究指定校から生徒が4人ずつ参加し、被災地でボランティアを行った人の講義や学校が避難所となった場合を想定したロールプレイング実習などを実施している。
研究指定校では、講義や実習で学んだ内容を基に地域と連携した防災訓練を行ったり、市町村役場と協力して地域住民向けの防災啓発ビデオを作成し、市町村のホームページに掲載したりするなど、学校と地域の防災力向上に向けた取組を行っている。生徒がその成果をセミナーで発表し、専門家から助言を受け、次年度以降の取組に生かしている。
このセミナーは2010年度から開始し、コロナ禍による中断を挟んで全ての県立高校が研究指定校として2年間の活動を行った。本県でもいつ大規模な災害が発生してもおかしくない状況であるので、来年度からは各学校が3年に1度指定校となって、生徒や教員が当事者意識を持って防災について学び続けられるようリニューアルしていく。
【委員】
学校の生徒に対する防災教育を進めるに当たっては、生徒の教育と併せて教員の防災に関する理解も深めていくことが大変重要である。県立高校の教員が防災について理解を深めるために、教育委員会としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
県立高校の教員が防災への理解を深めるための取組については、県教育委員会では、採用2年目の教員と、校長や教頭などの管理職を対象に防災に関する研修を毎年実施している。採用2年目の教員を対象とする研修では、教員自身が災害発生時の対応の流れと自分の役割を日頃から確認しておくことや、生徒が想定外の状況に対して自分で判断できる能力を高められるよう、探求的な学びを充実させることなどを学んでいる。
管理職を対象とする研修では、自然災害に備える意識をさらに高め、学校が避難所となった場合の組織的な対応などについて学んでいる。また、学校安全を担当する教員を対象とする防災教育指導者研修会も毎年実施している。
今年度の研修会では、東北大学の教授を招き、東日本大震災を教訓に、それまで学校と自治体で別々に作成されていた避難計画を、学校と地域が一緒になって作成することにより、避難経路や避難場所をより合理的に設定することができた実践例を講義してもらい、学校と地域が連携して防災対策を進めることの重要性などを学んだ。
今後この研修での学びを生かし、各学校において自治体との避難計画の共有化を進めていく。このような取組を通じ、引き続き県立高校における防災教育の充実を図っていく。
【委員】
今の答弁のように、災害が発生した際には、各学校だけではなく、自治体、町内会、様々な機関、組織が連携、協働しなければ、取り残される人が出てくる。児童生徒、全ての子供を守ることができるよう、今後はそのような地域を含め、連携を強化していく視点で防災教育も実践的に取り組むことが重要であるので、様々な連絡体制、誰が指揮を執って、どのように動いていくのか、誰がどう段取りをするのか、そのようなことが少しでもスムーズに進むように要望する。
【委員】
私からは、3項目について質問する。
まず、一点目に、県内地域におけるスポーツ振興の課題について伺う。
昨年6月に東三河スポーツ地域振興財団の主催で開催されたアイアンマン70.3東三河ジャパンin渥美半島は、愛知県も大会の構成団体として大会の機運醸成に向けて協力をしたと承知しているが、どのような取組を行ったのか。
【理事者】
主に大会の盛り上げや会場となった田原市及び豊橋市の魅力を発信し、大会を通じた地域活性化の取組を行った。具体的には、大会情報や地元の観光情報などを掲載した観戦観光ガイドの作成及び配布、大会終了後に開催したアワードパーティーでの地域特産品の提供のほか、SNSを活用した大会PRなど、大会と地域の魅力発信を行った。また、そのほかにも、競技コースの設定に際し、警察や道路管理者との調整、大会ボランティアの募集にも協力した。
【委員】
そのような尽力もあり、参加したアスリートからは大変好評であったということで、地元としても継続した開催を期待していたが、本年1月末に主催者側から地元とのコミュニケーション不足を理由に2024年度の大会参加を見送り、2025年以降の開催を目指し、検討していくという報道発表があった。コースの選定や大会趣旨の説明などが十分準備できていなかったという声があったと聞いているが、そのような声を県としてどのように受け止めているのか。
【理事者】
交通規制を伴うスポーツ大会は地元に不便、負担をかけるものであり、地元の人々の理解と協力がなければ開催することができない。本大会は初めての開催で、事前の想定どおりとはならない場面もあり、結果として住民に大きな不便と負担をかけることとなり、実行委員会の構成員として大変申し訳なく思っている。
今後は明らかになった課題を解決し、それを関係者間でしっかり共有して、次回の開催に向け、住民の理解と協力を得る努力を丁寧に行っていくことが重要であると考えている。
【委員】
当然主催者側と開催地域、市との間で検討すべき課題ではあるとは思うが、県としても構成団体として関わっており、今、答弁があったように、事前の想定どおりにならなかったとのことであるが、どのようなことを想定し、また事前に対応できることはなかったのか。
【理事者】
県としても、渋滞緩和を図るため、大会開催に伴う交通規制情報等について、県の広報媒体等を通じた事前周知に努めたが、住民をはじめとする地域の合意形成については、実行委員会事務局である一般財団法人東三河スポーツ地域振興財団と開催地元市の役割分担として調整されてきたものである。
今回の経験を踏まえ、実行委員会の構成員同士がより密に情報共有を図り、役割分担にかかわらず全体の準備状況や課題を相互に把握するなど、大会の成功に向けて主催者と地元市をしっかりと支援していく。
【委員】
そのような部分を地元に対してもしっかりと取り組んでほしい。またアジア・アジアパラ競技大会の開催に向けて機運醸成をより図っていこうとしていく中で、地域からこのような声が出ることは非常にもったいない。
豊橋市、田原市においても、空手やテコンドー、サーフィンといった各種競技が行われることを思うと、県全体として大会を盛り上げていく中で、今回のアイアンマンの開催で地域から出た声に対して十分な説明を尽くし、スポーツ大会の開催について理解を深めていくことが非常に大事である。
報道にあったとおり、主催者側は2025年以降、まだ引き続きアイアンマン70.3東三河ジャパン開催を目指していくとのことであるので、そのような点も含めて県としてもしっかりとバックアップすることを要望する。
次に、中高一貫教育について伺う。
中高一貫教育一次導入校の開校が1年後に迫ってきた。保護者からも、どのような授業を行うのかなどの具体的な質問も聞く。
県教育委員会は、昨年11月29日にリベラルアーツ教育に力を入れている国際基督教大学(ICU)と包括連携協定を締結している。非常に大きな後ろ盾を得たと感じているが、ICUとの連携を通して中高一貫校でどのような取組を進めていくのか。
【理事者】
ICUは教養学部の1学部のみを有する大学であり、1953年の開学以来、一貫してリベラルアーツ教育を実践し、幅広い知識と批判的思考力、複数の言語でのコミュニケーション能力を身につけた人材の育成を行っている。また、高校段階で国際バカロレアのディプロマプログラムを修了した学生を積極的に受け入れており、国際バカロレア機構が認定する教員資格が取得できる日本国内に八つしかない大学の一つである。
県教育委員会としては、このようなICUが有するリベラルアーツ教育や国際バカロレア教育に関する専門的な知見を中高一貫校の探究的な学びに積極的に取り入れたい。具体的な取組については今後大学と協議して決定をしていくが、例えば中高6年間を通した探究的な学びのカリキュラム作成への助言や、国際バカロレアの導入を予定している津島高校、時習館高校、西尾高校に対する指導を依頼したい。
【委員】
中高一貫校の教育について、児童生徒や保護者の理解を得るためには、中高一貫校でどのような教育に取り組んでいくのかを具体的に説明していく必要がある。今後どのようなスケジュールで児童や保護者に説明していくのか。
【理事者】
中高一貫校のうち、2025年4月に開校する明和高校、半田高校、刈谷高校及び津島高校の第一次導入校4校については、2023年10月23日に各校の教育の概要を公表し、公表した概要に基づいて10月29日から11月26日にかけて学校ごとに児童、保護者を対象とした説明会を実施した。また、開校前年度となる2024年度は7月から8月にかけて学校ごとに説明会を開催し、今年度に説明した内容よりもさらに具体的に教育内容などを説明する。
2026年4月に開校する時習館高校をはじめとした併設型の第二次導入校5校については、今年の秋頃に各校の概要についての説明会を開催し、開校前年度の2025年度には、より具体的な説明会を開催する予定である。
【委員】
先日、福岡県の人づくり・県民生活部青少年育成課が児童を対象にICT教育の推進を目的とした体験活動を行っており、視察に行った。その内容は、ICT機器を活用してコマ撮り動画づくりにチャレンジするというものであった。ICT機器を使用して子供の創造力を養うことが狙いで、その狙いに即した内容の体験学習が実施されていた。
福岡県の担当者に聞いたところ、企画自体は包括連携協定を締結している第一生命保険株式会社から紹介を受けた株式会社ティーガイアという企業からの提案であったと聞き、改めてそのような企業間連携の有効性を感じた。
また昨日、県教育委員会と連携協力に関する包括協定を締結している株式会社D&I協力の下、テレワークによる在宅就労に係る体験実習が行われるため、大府特別支援学校を視察した。オンラインでチラシの校正を生徒に体験させるものであったが、見ていて在宅就労支援に非常に有効であることはもちろんのこと、特別支援学校におけるキャリア教育にも応用が利く実習であると感じた。
例えば今回体験活動をやっていたものを、中学部で実施しているチャレンジ体験や、職場体験の選択肢の一つに取り入れることも有効である。様々な教育プログラムを進めていく上で、企業と連携することにより、可能性は広がっていく。
中高一貫教育を進めていく上で、また夏に向けてプログラム等を具体的にしていくということであるので、大学との連携はもちろん、ノウハウを持った企業との連携も十分に図りながら、さらなる充実を図っていくことを要望する。
最後に、教員の働き方改革について伺う。
この質問は昨年9月の委員会でも答弁があり、その中で、民間委託による教員の勤務実態把握分析事業である、学校における働き方改革に係る業務改善取組実践研修会において、参加対象となるモデル校を、今まで県立高校のみであったものを、今年度は小学校、中学校、高校、特別支援学校と全校種20校を対象にして行っていくとのことであった。
県教育委員会としてもそのような全体感に立った取組を行ったこと、またモデル校以外の学校のオンライン参加できる環境の拡充を図るなど、課題に対して非常に危機感を持って取り組んでいると感じた。非常に評価すべき点である。
まず今年度の取組の成果について伺う。
【理事者】
今年度はモデル校として、県立学校10校、小中学校10校、合わせて20校が参加した。モデル校として参加した学校からは、業務改善として、小中学校においては運動会などの学校行事の実施時期を業務が比較的落ち着いている時期に移動させる、成績処理などによる繁忙期に授業時間を減らして採点時間を確保するなどの取組の報告があった。
県立学校においては、マラソン大会の廃止、校内での発表会の回数の縮減、アプリの導入による欠席連絡、毎日の清掃活動を週3日に変更、学校の施錠時間を30分程度早く設定などを行い、時間外在校等時間の縮減につながったとの報告を受けている。
さらに、本事業への参加をきっかけに、遅くまで学校に残る雰囲気がなくなった、仕事に見通しを持つように互いに声を掛け合う雰囲気ができたなどの声を聞くこともできた。また、時間外在校等時間の縮減に向けて、学校改善のためのアイデアを全職員から募集する、学校のビジョンを作成して学校が目指すものを明確にするなど、働き方改革に対する意識の変革が見られたという報告も上がっている。モデル校に参加した学校の一部からは、前年度と同じ月の時間外在校等時間を比較したところ、職員全体で平均して56時間から42時間に減少する効果があったと報告も受けている。
大久保真一委員が示したように、今年度はモデル校以外の学校も参加できるオンライン研修を実施したが、参加校からはモデル校の具体的な取組例や他校種の状況について情報共有することができ、自校の取組の参考になったという声も聞いている。
【委員】
教員の働き方改革を進める上で、教員や学校がどのように意識を変えていくのかが一つのポイントになってくる。そのような点において非常に有意義な事業である。
その上で、この事業は新年度においても同数規模で取り組んでいくのか。また、校種のバランスは改めて検討していくのか。また、モデル校の選定はどのような基準で選んでいくのか。
【理事者】
来年度についても、20校程度での実施を考えており、校種についても、今年度と同様、県立学校10校、小中学校10校を考えている。なお、モデル校以外の学校も参加できるオンラインによる研修会については参加校を増やしたい。
モデル校の選定については、県立学校では普通科や専門学科など、学校ごとに状況が異なるため、できるだけ多くの学校に成果を還元できるよう、学科等のバランスを考慮しながら決定していく。
小中学校においては、五つの教育事務所ごとに管内小中学校に参加希望を募り、小中学校各1校を選出する予定である。複数の希望がある場合は、昨年度の業務改善の実績等を参考にしてより効果が見込まれる学校を選定する。
【委員】
県教育委員会としても、土曜日、日曜日の少なくともどちらか1日は教員も児童も生徒も完全休養日にすると目標を掲げ、啓発している。働き方改革に取り組む中で重要なテーマであると考える。その実現に向け、柱となる取組がこの学校における働き方改革に係る業務改善取組実践研修会である。この事業を継続し、より充実した内容を図り、早期に教員の実感が伴う働き方改革が県内全域に波及することを一層の期待を込めて要望する。
【委員】
生理用品の無償提供が国際的な流れになっている。生理用品が買えないと、仕事や学校を休んだり、女性の精神面にも影響を与えたりする可能性がある。そこで、この格差を生理用品の無償化や無料配布で解消し、女性の社会参加や教育機会を促進する国や地域が増えている。
現在、スコットランド、ニュージーランド、アメリカなど10か国以上で生理用品の無料配布が行われている。日本では、新型コロナウイルス感染症の影響による経済不況で、生理用品を手にすることができない生理の貧困というのが浮き彫りになった。単なる貧困対策だけではなく、全ての女性に関わる人権の問題であるリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)として考えることが必要である。生理用品がないということは、まともに学校生活を送ることができないことにつながる。
まず、生理用品は女子生徒にとって安心して学校生活を過ごす上で必要不可欠なものであると認識しているのか。また、貧困対策としてだけではなく、人権の視点で捉えることが必要であると考えるが、認識を伺う。
【理事者】
生理用品は生徒が学校生活を送る上で必要なものの一つであると認識している。
また、女性にとっては必要不可欠なものであるので、人権の観点からも必要なときに生理用品を入手できるようにすることは大切であると考えている。
【委員】
生徒にとって必要なもの、人権の観点からも必要であるとの答弁をもらった。権利を守るという視点に立ってこの問題を考えていくことが必要である。
#みんなの生理という団体が日本の若者の生理に関するアンケートを実施した。その中で生理用品の入手状況に関する質問があり、結果は他のものを我慢して生理用品を購入するなど、生理用品を買うのに苦労したとの回答が約5人に1人の割合であった。さらに、金銭的な理由で友達などに生理用品を譲ってもらったことがある、生理用品を交換する頻度、回数を減らした、生理用品でないものを使った、生理用品代を節約するために、生理用品の種類を変えたについても、それぞれ約3割の人がその経験をしたという実態が明らかになったと公表した。
健康に関わるものであるのにもかかわらず、節約のために不衛生な状態を強いられている人がいる深刻な実態である。生理用品の入手が困難なとき、生理用品の交換回数を減らす、生理用品でないものを使う、あるいは1日中付け続ける状況にせざるを得ない状況では、かぶれやかゆみ、また感染症といった健康トラブルを引き起こす。
生理を経験する子供たちが安心して学べて健康に快適に過ごせる環境づくりを進めるため、生理用品にすぐアクセスできるよう県立高校のトイレに置くことが必要と考えるが、認識を伺う。
【理事者】
県立高校の中には生理用品をトイレに置いている学校もあるが、女子生徒が多い学校などでは、すぐになくなってしまうことが多いため、必要な生徒の手に確実に届くよう、各学校にはトイレへの設置と併せて、保健室などでも配布できる体制を取るよう依頼している。
また、生理用品を取りに来た生徒と養護教諭がコミュニケーションをとることが、貧困やネグレクトなどを早期に発見する機会にもなっていると聞いている。
【委員】
トイレにも置きつつ、保健室でも渡している学校があるということであり、ネグレクトなどの様々な相談や情報共有にもつながるが、その相談は性別にかかわらず、様々な子供たちからの相談を聞くことはまた別の問題として必要になってくると考えるので、県立高校のトイレに置くことをぜひ進めてほしい。生理用品は、生理のある生徒にとって、なくてはならない必需品であるため、全てのトイレに当たり前のように置かれているトイレットペーパーと同様に、自然に配置すべきものという認識を持ってほしい。
トイレに生理用品を設置してある県立高校が何校あるのか。また、実際に利用した子供たちの声を聞いているのか。
【理事者】
今年度から生理の貧困に対応するための予算を措置し、各学校に配分している。一部の学校の配備状況を聞き取ったところ、33校のうち全てのトイレに備え付けている学校が13校、一部のトイレに備え付けている学校が10校あった。
子供たちの声については把握していない。今後、今年度の各学校の状況を調査する予定である。来年度に向けてその結果を踏まえて取り組んでいく。
【委員】
最初は調査を少し渋られたので、どのような答弁になるかと思ったが、このように数字を明らかにしてもらい、各学校についても調査し、そして取組を進めていくという答弁をもらった。
今年から予算措置をされたとのことであるが、予算措置の額について伺う。
【理事者】
今年度の予算額については約215万円である。
【委員】
東京都立学校250校で生理用品の配布がスタートした。公費で生理用品ナプキンを購入し、女子トイレに配置した。学校によって差はあるが、少ない学校で月70枚、多い学校で月300枚ほどが使われているとのことである。
以前は生理用品が必要になった生徒は保健室に行き、必要な旨を伝えて受け取るスタイルで、実際に生徒が使った生理用品は年間で10枚ほどであった。しかし、5月に女性トイレに配布を始めてから半年間で800枚が使われたということで、利用は単純計算で160倍にも増えたことになる。
また、神奈川県では、来年度予算案に県立高校の女子トイレへの生理用品設置に約328万円計上している。また、令和4年度に生理用品がトイレに置かれたことへのアンケートを実施し、学校のトイレに置かれていることで安心して在校時間を過ごせるが95パーセント、今後もあるとよいが99パーセントとの回答結果になったとのことである。
さらに千葉県では、全ての県立高校で生理用品を提供し、任意で利用状況を把握している。
生理用品を県立高校のトイレに設置することは、不安を抱えながら授業を受けている生徒にとって気兼ねなく利用でき、不安の解消につながるが、県の考えを伺う。
【理事者】
生理用品を学校に持参することができない生徒が必要なときに気兼ねなく使えるようにすることは大切なことであるので、引き続き各学校に対してコミュニケーションを伴う保健室での配布や、対面によらないトイレへの備付けなど、学校の実情に応じて生徒の手に届きやすい方法で配布するよう指導していく。
【委員】
保健室での配布も残しながらということになるが、全ての高校のトイレに設置することを強く求める。
生理用品の無償化は経済的な負担を減らし、あらゆる女性が尊厳を持って生理期間を過ごすために大変重要なことである。生理用品が入手できずに学ぶ機会が奪われることが起こらないように、全ての高校のトイレに生理用品を設置してほしい。
今回生理用品を学校のトイレに設置することについて質問をしたが、それだけにとどまらず、包括的性教育も必要である。生理への無理解、タブー視をなくし、生理を経験する子供たちの権利を守るために、皆の問題意識として一緒に考えてほしい。
続いて、高校のWeb出願を巡る問題について伺う。
県教育委員会では、この春の公立高校の受検から出願方法について、紙媒体をやめ、Web出願システムの利用を開始した。このことについて、インターネット環境に不慣れな方や日本語が不自由な外国にルーツを持つ子供たちへの配慮が足りないのではないかとの声が寄せられている。
新しいシステムを採用する際は、当分の間これまでのシステムとの併用を認めるなどの、スムーズな導入に向けて一定の試行期間を設けることが一般的である。ところが、今回は全面的に出願方法をWeb出願に切り替えたと聞いている。なぜ、出願方法をWeb出願のみに切り替えたのか。これまでの紙媒体での願書提出を一切認めないとした理由は何か。
【理事者】
公立高校入試にWeb出願システムを導入した理由については、中学校を含めてスマートフォンが普及し、様々な手続のオンライン化が進んできたため、受検生や保護者の利便性を向上するとともに、中学校や高等学校での事務作業の軽減を図るため、今回の入試からWeb出願システムを導入した。
紙媒体の願書による出願を廃止してWeb出願のみとしたのは、紙媒体と
Web出願を併用すると、出願を確認して調査書を発行する中学校や、出願を受け付ける高等学校での事務手続が煩雑になって、ミスが生じやすくなり、結果として受検生に不利益が生じる可能性があるからである。
【委員】
幾つか答弁があったが、多様な受検生がいることが想定されていたのか。あまりにも強引な進め方なのではないか。
愛知県公立高等学校入学選抜Web出願システム利用規約には、第5条でシステム利用者は本システムを利用するために必要な全ての機器等を自己の負担により用意するものとする、本システムを利用するための通信費用、印刷費用、その他一切の費用はシステム利用者の負担とするとある。つまり、高校入試のために必要なウェブ環境を整えるために、生徒と保護者に新たな負担を求めたのである。
スマートフォンが普及したとはいえ、今でもいわゆるガラケーを使用している人や、スマートフォンが手元にない人もいるほか、全ての家庭にプリンターがあるとは思えない。また、経済的に困難な家庭もあると思うが、中学校では代わりに印刷してもらえるのか。さらに、一念発起して通信制の高校を受検したいと思った夜間中学で学ぶ高齢者がこの仕組みに対応できずに今年の進学を断念したという話も聞いた。
高校は全日制だけではなく、定時制や通信制の高校もある。そして、受検を希望する人の年齢や経済状況も多様である。中学校からサポートを受けられる人ばかりではない。新たなシステムのために費用負担を課したのは問題である。経済的にWeb出願の環境が整えられない受検生にどのようにサポートしたのか。自宅でプリントアウトできない方はどこでプリントアウトできるのか。全て学校で印刷代行できるようにすべきではないのか。
プリンターやスマートフォン、パソコンがない人や、十分に扱えない受検希望者へのサポートはどうしていたのか。
また、中学校からサポートを受ける条件がない人へのサポート体制はどうなっていたのか。
【理事者】
受検票を印刷するためのプリンターが自宅にない場合は中学校で印刷するよう依頼しているほか、コンビニエンスストアにある複合機でも印刷できるようになっている。
スマートフォンやパソコンがない、または自分でうまく操作できない生徒については、中学校の教員に支援を依頼した。
また、中学校のサポートを受けることが難しく、高等学校教育課に電話をした人については丁寧に説明し、電話だけでは対応が難しい場合には県庁に来庁してもらい、担当者がサポートしながらWeb出願システムで出願してもらうなどの対応をした。
【委員】
私は現場の学校の関係者から話を聞き、その中で、志願者が出願について高校に直接問い合せるケースが多数あり、志願者へのサポートが不足していると感じたとの声があった。また、不登校やひきこもりなど、再出発し、受検に挑戦する場合に中学校からサポートを受けづらい受検生のフォローが必要であるという声も寄せられた。
また、外国にルーツのある人も、中学校からサポートを受けられたとしても、その子に付きっきりになることは困難であるとの、リアルな現場の声があった。取り残されてしまう受検生がいないように、サポート体制のさらなる充実を要望する。
次に、多様性がある受検希望者の中で、外国にルーツを持ち、日本語が不自由な人には温かな配慮が必要と考える。願書を出して受検する仕組みはWeb出願となっても基本的には変わらないということであるが、日本語が不自由な人にはシステムの利用規約をはじめ、煩雑な手続を理解することは大変である。システム上で簡略化できないのか。受検生と関係者の声をよく聞き、今後に生かしてほしい。
どのようなことに困ったのかについては、DV被害を受けた母子家庭の住所表記は、避難した現住所か、住民票上の住所なのか、外国で義務教育を終えたが、外国の中学校名は簡単に入力できず、卒業証明の名前の表記もアルファベットか片仮名で書くのか、ルビ付きの入試問題を希望するのにも、いつから日本にいるのかを調べるシステムになっているが、母国と何度か行き来しており、うまく設問に回答できなかったなどの例を聞いた。日本語が不自由な受検希望者が直面したこのような疑問に丁寧に寄り添ってサポートする体制が必要である。
今は電話での対応が中心であると思うが、対面で相談できる窓口をつくることや、これまでどおり紙媒体での願書も受け付けるなど、柔軟な対応が必要ではないのか。
【理事者】
高等学校教育課に電話などで相談があった場合は、出願方法などを丁寧に説明している。来日して間もない人など、電話だけでの対応が難しい場合については、先ほどと同様に、出願資格の確認を兼ねて県庁に来庁してもらい、対面でサポートしている。
また、日本語の支援が必要な人には、グーグル翻訳などのインターネットの翻訳サービスを利用することで、入力したい内容を母国語から日本語に変換し、コピーアンドペーストできるため、紙媒体の願書よりもWeb出願のほうが手続しやすいと考えている。
なお、ウェブの利用が難しく、サポートを受けられない人については、引き続き高等学校教育課の窓口で対応する。
【委員】
様々な対応をしているということであるが、寄せられた声にあるように、多様な志願者を想定した上で、Web出願の導入は紙媒体の願書と併用して段階的に行う必要があったのではないか。また全面的にWeb出願に移行したのであれば、インターネット環境がない人や、言語の理解が難しいといった人への最大限の配慮が求められる。
教育の専門用語が多い説明文は理解するのが難しく、やさしい日本語に直したり、多言語で表記したりしてほしいという声があった。また、学校の関係者からも、やさしい日本語のWeb出願の手引は必要、できれば英語のほかにベトナム語、中国語などの多言語版も必要であるとの声がある。英語だけでなく、多言語に対応することについて伺う。
【理事者】
インターネット出願になったことによりウェブでの翻訳サービス等を利用することで外国の方でも十分対応することができると考えている。
また、困った際は、高等学校教育課に相談をしてもらい、必要な対応をしていきたい。
【委員】
様々な相談が多く寄せられているため、受検生に丁寧に対応するために、多言語化を進めてほしい。
出身地に関係なく対等、平等に受検を希望する人たちが安心して利用できるシステムへと改善するためにも、外国にルーツのある子供を支援する団体や、様々な学習支援に取り組む人からも意見を聴取することも必要ではないのか。
【理事者】
今回導入したWeb出願システムの利便性について、現在インターネットによるアンケートを実施している。このアンケートは、Web出願システムによる合格発表の画面や高等学校教育課のウェブページ上で案内している。受検生本人と保護者だけでなく、出願や受検に際して支援した団体や様々な学習支援に取り組む人からも意見を伺えればと思っている。
今回のWeb出願システムの導入に際しては、本番で円滑に手続できるよう、秋に公立中学校3年生全員を対象としたテストを行い、準備をしてきたが、実施途上で受検生や保護者に負担や心配をかけた点もあるので、アンケートの結果も踏まえ、システムのさらなる安定性、利便性の向上に努めていく。
【委員】
支援者の声を積極的に聞き、その声を受け止めた上でよりよいものに改善してほしい。また、ウェブ環境への適応も時代の流れや、スマートフォンを持つ人が増加しているという流れもある。しかし、その中で排除される人が出ることは絶対にあってはならない。
教員は、次の受検生に向けて、また改善すればよいとなるが、受検生本人にとっては、その年が勝負であるため、移行期間をつくって丁寧な対応が必要であり、全面的に導入するのは拙速であった。多様性を尊重することが求められており、様々な背景を持った高校受検希望者に寄り添った対応を求める。
今、経済的な格差をなくすために、高校授業料の実質無償化も進んできた。このようなときに受検のための新たな負担を課すことも問題である。公立高校の受検を希望する全ての人に開かれたWeb出願システムとなるよう、必要な見直しを行うことを求める。
次に、給食の無償化について伺う。このテーマについては6月定例議会においても質問したが、再び質問する。
今、食料品や日用品、光熱費等をはじめとする物価高騰が家計を直撃しており、特にコロナ禍で影響を受けたまま回復できない困窮家庭が打撃を受けている。認定NPO法人キッズドアが2023年夏、物価高騰に係る緊急アンケートを実施した。去年の夏と比較した日々の食事の変化についての質問に、親の食事を減らしたり抜いたりしているが54パーセント、子供に十分な食事を与えられないが60パーセントで、2021年の同じ調査から14ポイント増えている。
また、子供は1日3食食べられている子が68パーセント、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアンケートを見ると、ふだん子供が十分な食事が取れていると思うかの質問に、学校がある期間の昼食は十分に取れている、まあまあ取れているが約85パーセント、長期休暇中など給食がない期間の昼食では、十分に取れている、まあまあ取れているが49パーセントへと激減しているため、給食の役割が大きく影響している。保護者の経済力により、子供の栄養や食べ物の種類、食事の回数まで格差が生じているだけに、学校で全ての児童生徒がそろって栄養バランスの整った給食を食べることは非常に有意義と考える。
どのような家庭環境の子供も安心して自分らしく育つことができるよう支援することは、子供の最善の利益を第一に考える教育行政を推し進めていく観点から学校給食無償化は意義のあることであると考えるが、県の認識を伺う。
【理事者】
学校給食法の制定後、半世紀以上が経過し、少子化の進展等の社会情勢が変化する中、長期的な視点で切れ目なく学校給食等の保護者負担の軽減を図る必要があるため、地方六団体から国に具体的な施策を示すよう要請を行っているところであり、県においても同様の認識を持っている。
【委員】
6月定例議会の際に質問した中で、学校給食の無償化は学校現場の負担軽減にもつながることと、先生たちは授業の準備に加え、学校給食費の実務もやらなければならない問題について指摘した。答弁の中で、現在学校給食費の公会計化を市町村に促し、これにより学校給食費の徴収管理業務を学校ではなく、自治体の業務とすることで教員の負担軽減になると考えていると述べていた。
学校給食費の公会計化は、現在どこまで進んでいるのか。
【理事者】
直近の調査結果によると、2022年5月1日現在、愛知県内で学校給食費について公会計制度を導入し、徴収管理事務を学校ではなく地方自治体自らが行っている市町が9市町あり、2024年度からさらに半田市、新城市、高浜市の3市において実施予定である。
【委員】
本県の状況について回答があったが、実施している市町の比率で言うと17.3パーセントで、全国平均は34.8パーセントであるため、全国平均以下という状況である。文部科学省が示している学校給食費の公会計化等に関するQ&Aに、公会計化等の導入により1校当たり年間190時間の業務削減効果が見込まれる自治体もあるとの記載がある。
それだけの業務負担を現状担っているということである。公会計化も進まず、学校給食が有償である限り、学校事務職員や学級担任、行政職員など、徴収事務を担う人が保護者の給食費未納に対し、督促事務を続けることになる。
続いて、県教育委員会は市町村での学校給食無償化など、負担軽減に向けた取組について、今年度の県内の実施状況を把握しているのか伺う。
【理事者】
今年度、県内の市町村では、国の重点支援地方交付金を活用するなどして、小中学校の給食費の無償化や保護者の負担を軽減する取組が行われている。具体的には、飛島村、設楽町、豊根村の3町村において、小中学校全ての児童生徒を対象に年間を通して給食費を無償化している。
また、期間や対象を限定した無償化を実施した、または実施している市町は15市町ある。これら以外にも、給食費の減額や物価上昇分を負担するなどして保護者の負担軽減を行っている市町が33市町ある。
【委員】
小中学校の全額無償化ということで紹介があったが、現在来年度の予算案に盛り込まれて、審議中ではあるが、みよし市、豊田市、津島市、また東栄町や、あと小中学校半額助成で大口町や稲沢市、豊橋市など、各地で様々なやり方で学校給食の負担を軽減することが行われている。
そのような中で、先ほどは半額助成や全額無償化の話をしたが、中には中学校のみの無償化や、学年単位での無償化などの様々な方法があり、努力を行っている。さらに今回、国の交付金だけではなく、一般財源を使用していることも注目すべきところである。
学校給食無償化は、全国各地の市町村単位で取組が広がってきた。しかし、仕組みは違うが、東京都、青森県、和歌山県が来年度、学校給食無償化に向けた予算を計上し、市町村の負担軽減に向け動き出した。
東京都は、国の方策が講じられるまでの間、本来は国の責任において進めるべき都内区市町村が行う学校給食費の保護者負担軽減に向けた取組の支援として239億円を計上している。これは区市町村が全額負担軽減に取り組む場合に都が半額を補助するものである。都の方針を受けて、財政的に弱い多摩地域でも無償化に踏み出す自治体が相次ぎ、10市1町1村と4割に広がったと東京民報が報じている。都道府県が踏み出すことは市町村が学校給食無償化を進める後押しになっている。
憲法第26条の義務教育は無償であるとの立場から、子供たちに給食を通じた豊かな教育を保障するためにも、住んでいる自治体によって格差を生じさせてはならない。県の補助として、学校給食無償化実施の市町村にその費用の半額を県として負担する仕組みを設けるべきではないか。
【理事者】
学校給食法では、給食の食材に係る費用については保護者の負担とされているが、これに自治体が補助することを妨げるものでないことは国会における政府答弁で明らかになっているため、まずは小中学校の設置者である市町村がそれぞれの実情に応じて判断し、実施されるものである。
給食費の無償化の実現に向けて、国は昨年6月に閣議決定したこども未来戦略方針において、全国の自治体の実態調査を速やかに行い、本年6月までにその結果を公表し、その上で給食の実施状況の違いや法制面なども含めた課題の整理を丁寧に行い、具体的方策を検討する。
県としては、全国知事会などを通じ、国全体として学校給食費等の負担の在り方を抜本的に整理した上で、国の責任で財源を含め具体的な施策を示すよう、国に対して引き続き要請をしていく。
【委員】
先ほども言ったように、東京都は、国が実施することはもちろんだが、実施するまでの間は都が頑張ると決意した。市町村の格差を生じさせている現状を解消していかなければならない。物価高騰で格差と貧困が広がっている今、決断して県が対応しなければならない。県も責任を持って国にも求めながら、県が頑張ることで、多摩地域のように市町村が給食無償化に踏み出すその一歩につながると思うが、認識を伺う。
【理事者】
県としても、市町村の取組が進むように、国に対して引き続き要請をしていく。
【委員】
国に対して市町村の取組が進むように要請するとのことで、県の支援は検討もしないということである。学校給食無償化について、食費などお金がかかるから、少しでも家計への負担が減るのはいいと思う。私のもとには、小学校に通う子供がいるので、学校給食費が無償化になったらうれしい、豊橋の学校給食無償化は助かっていたが、半額になってしまうのは残念、と学校給食費無償化を求める声が寄せられている。子供の教育を受ける権利や成長発達権を保障するためにも、他の都県の動きも踏まえ、もちろん国にも求めるのは当然であるが、その間、県として学校給食無償化に向けて大きく踏み出してほしい。
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会について伺う。
この競技大会については、選手村が開設ないことから、その対応について学校との関係で質問する。
まず選手等の移動の確保についてである。選手村を開設しないため、アジア・アジアパラ競技大会の選手の移動手段のバスの確保と、それに加えて、県内外、国外からも観戦者などが来て、その移動手段を確保することが必要になるが、その準備をどのように進めているのか。
【理事者】
大会の運営に当たっては、選手をはじめ審判などの競技役員、メディア関係者、観客など、多くの人に対して安全で時間に正確な輸送サービスを提供する必要がある。そのため、愛知県、名古屋市、公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会において、交通事業者やバスなどの業界団体、警察、経済団体などを構成員とする輸送連絡調整会議を昨年11月に設置し、輸送関係者などからの意見を踏まえながら、大会の輸送方針を策定する。
また、大会関係者や観客等の輸送に関して、具体的な内容を検討するため輸送連絡調整会議内に実務担当者から成る作業部会を設置し、輸送ルート案の調整や、輸送ルート上の渋滞箇所の把握や課題の洗い出し、必要となるバス台数の検討などを進めている。
選手や観客を輸送するためのバスについては、関係者と調整を図っているところであり、必要となる台数を確保し、円滑な輸送サービスを提供していく。
【委員】
輸送関係については、人手不足などの様々な課題があるので、早めに対応してほしい。
もう一点、アジア競技大会の開催期間が2026年9月19日から10月4日、アジアパラ競技大会の開催期間が10月18日から24日であり、学校の修学旅行や遠足などの時期と重なる。その際に県内の学校もバスの確保に苦慮することにならないかを心配しているが、それに対してどのように対応をしていくのか。また、児童生徒の観戦についてはどのように考えているのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会には、選手や競技役員、メディア関係者など約3万人の大会関係者のほか、多くの観客の来県が見込まれる。大会関係者、観客の輸送には多数のバス車両が必要となる見込みであり、大会の開催期間が秋の行楽シーズンや修学旅行などの学校行事と重なるため、バスの確保が困難となることが想定される。
このため、本年1月から市町村教育長会議や校長会などにおいて、大会期間中はバス台数が不足することを説明した上で、2026年度の修学旅行や校外学習などのバスを利用する学校行事について、大会の開催期間と重ならない時期への変更などの協力、調整を依頼し、2月には県教育委員会及び県民文化局を通じて、県内の公立、私立学校に対して文書にて協力、調整を依頼の依頼を行っている。
次に、児童生徒の観戦についてである。アジアトップクラスのアスリート、特にアジアパラ競技大会でのパラアスリートのパフォーマンスを間近に見ることは、子供たちがスポーツのすばらしさや多様性を学ぶことができる絶好の機会であり、一人一人の心に夢や感動が残るものと考えている。
このため、まずは多くの児童生徒に競技会場で観戦したいと思ってもらうことが重要であり、大会の開催意義やアジアの国や地域の状況、共生社会などについて学習できる教材を来年度作成し、学校などで活用することを予定している。多くの児童生徒に競技を見てもらうことができるよう、今後組織委員会や関係部署と連携し、競技観戦の実施についての検討を進めていきたい。
【委員】
学校に修学旅行の時期変更を依頼しなければならない状況であるようなので、学校としても大変であると思うが、アジアパラ競技大会と共生社会など、多様なことを学ぶことができる有意義な大会にしてほしい。
また、それだけ学校に無理を言うことになるので、学校に配慮した対応をするよう要望する。
次に、選手同士の交流について伺う。
選手村があればその中で選手同士の交流ができるが、選手村がないため、交流の場が競技場やホテルなどに限られてしまうのではないか。交流の場が限られると、愛知・名古屋に来訪する選手たちの感動が少し薄れてしまうのではないかと心配している。選手同士の交流も考えることが必要であるが、この交流をどのように考えているのか。
【理事者】
国際スポーツ大会における選手間の交流は、アスリートが国や競技、ジェンダーなどの違いを超えて互いを理解する大切な機会であると認識している。
愛知・名古屋大会においては選手村を新たに整備せず、既存の宿泊施設を活用しながら必要なサービスを提供していくこととしているため、例えば施設内において文化的な催しや地域産品の紹介など、選手間の交流が図られるような取組を考えていく。
加えて、名古屋城やジブリパークのある愛・地球博記念公園など、愛知・名古屋の観光拠点となる施設において、異なる国や競技の選手が交流できる場の確保を進めていくことを検討している。これらの様々な場面で効果的な選手同士の交流が行われるよう、今後、大会組織委員会や名古屋市とも連携し、準備を進めていく。
【委員】
開催まで時間があるようでないので、様々な観点で準備を進めてほしい。
次に、多忙化解消ロードマップについて伺う。
9月定例議会において、教育長より、国における教員の働き方改革の動きを受け、3年間で多忙化解消の道筋をつけるロードマップを夏頃までに作成し、毎年度進捗状況の確認を進めるとの答弁があった。それに先立ち、平成29年3月には、教員の多忙化解消プランが策定されており、そのプランに基づく取組の進捗状況については、フォローアップ会議が開催されて令和3年度以降も記載があった。
そのフォローアップ会議は現在も開催されているのか。また、令和3年度以降の取組の方向性についての進捗は把握しているのか。
【理事者】
教員の多忙化解消プランは計画期間の満了である令和2年度末をもって終了したが、フォローアップ会議は令和3年度以降も実施しており、令和2年度のフォローアップ会議で示された令和3年度以降の取組の検討の方向性を踏まえ、毎年度の取組状況を取りまとめ、外部有識者に意見を聴取している。
【委員】
県立学校と市町村立学校は多忙化解消ロードマップの策定に向け、それぞれどのような検討を始め、進捗状況を確認する項目としてどのような内容を考えているのか。県立学校と市町村立学校について、それぞれ伺う。
【理事者】
ロードマップの策定に向けては、今後3年間で時間外勤務が45時間を超える教員がゼロになることを目指し、校務分掌や学習指導、生徒指導、部活動及び全般的な業務内容について、モデル事業における取組例や現在行われている好事例を踏まえ、県教育委員会関係各課で協議している。
今後は、関係各課で協議された多忙化解消に向けた具体的な取組方法と削減効果について、外部有識者や学校関係者を委員とした会議で検討を進め、夏頃までにロードマップを公表したい。
進捗状況を確認する項目として、県立学校での時間外在校等時間の主な従事内容を見ると、部活動に費やす時間の割合が多い状況が見られる。このような状況を踏まえ、部活動ガイドラインに示された休養日や活動時間が遵守されているかを引き続き確認していく必要があると考える。
また、学習指導においては、補習、検定試験及び学校行事で業務量が増加しているとの声もあるため、縮減に向けた取組状況を確認する必要がある。
市町村立学校においては、部活動の地域移行や地域連携が推進されているか、授業のために作成した教材の共有化など、授業準備に要する業務の削減に向けた工夫がされているかなどを確認する。
【委員】
令和2年度に発出された教員多忙化解消プランの総括において、月80時間を超える教員について調査結果を見ると、市町村立学校と県立学校ではその主な理由が大きく違っていた。県立学校については部活動関係、市町村立学校については授業関係で月80時間を超えたとの回答が多かった。
その中で、例えば先日の本会議で、県立学校はデジタル採点システムの導入に向けて前向きな答弁があったが、市町村立学校についても、デジタル採点システムの導入状況を把握しているのか。
【理事者】
市町村立学校におけるデジタル採点システムの導入状況については、名古屋市では中学校と高校の全校に導入されていると承知している。
他の市町村の導入状況については把握していないが、導入を検討している市町村もあると聞いている。
【委員】
導入していない市町村に対して、県はどのような取組をするのか。
【理事者】
国はGIGAスクール構想による小中学校の児童生徒1人1台端末とネットワークなどの環境整備に対して財政的な支援を行うとともに、GIGAスクール構想の下での校務のDX化を進めている。そのような中で、市町村が国の財政措置を活用してICTを活用した教育と校務のDX化を進められるよう、都道府県は市町村の伴走支援を行うことが役割とされている。
デジタル採点システムは、現在県教育委員会において校務のDX化を進める上での効果を検証するため、一部の県立高校において試行的に導入を進めている段階である。市町村がデジタル採点システムを導入するための財政的な支援を、県が独自に行うことは現時点では難しいと考えているが、今後県立学校での検証により把握した効果や課題、活用事例などについて、市町村の参考となるよう情報提供をしていきたい。
【委員】
多忙化が解消できない市町村は、規模や財政状況を理由に解消が難しいことを回答しているところもあったかと思う。市町村がどのように取り組んでいくのかについて、例えばデジタル採点システムは、先ほど国でもDX化を進めていると答弁があったが、国の予算が入ってくれば各市町村はそれを利用することはできるのか。
【理事者】
国の補助金等の措置があるとの情報があった場合は、県としても市町村に情報提供をし、それを受けるに当たっての事務の補助や、必要な情報提供等の支援をする予定である。
【委員】
先ほどから教員の多忙化解消に向けて、働き方改革や、業務改善などの様々な話があった。行事の精選、授業時数や時間の設定については他県でも多様な取組をしているので、本県としても改革提案をして進めてほしい。
次に、先ほど教員多忙化解消プランの内容をどう進めていくのかに関して、例えば教材の共有なども進めるという話があった。私は以前から愛知県総合教育センターの資料提供などの充実について要望していた。しかし、先ほどもホームページを見たが、余り進んでおらず、県の教育総合センターは県立高校に関する教材の資料の情報が多く掲載されていた。
他県の例を見ると、小中学校の教材の資料も共有されている。愛知県総合教育センターは今度新たに移転するため、資料のアップロードも含め、ホームページも充実させてほしい。
様々な要望がある中で、部活動も地域移行している途中である。これまでも県大会や全国大会を目指して部活動が過熱してきた面もある。これから地域移行や、部活動の時間の削減状況が異なってくることに伴い、学校や市町村の試合の参加状況も変わってくると思うので、課題を把握しながら対応してほしい。
また、これも先日の本会議において、教員不足による多忙化解消に向け、義務教育段階に教員免許のない人材の採用を検討する旨の答弁があったが、今の学校は言葉一つにしても様々な配慮が必要で、それが多忙化や疲労感につながることもある。
現状から考えると、教員免許のない社会人を採用して教員の不足を補うことも一つの手法かもしれないが、先ほど特別支援学校教諭免許状についても話があったほか、今、技術家庭科は教員が不足しているとの話を聞いているので、例えば1人の先生が複数の免許を取得して、例えばその取得についての費用のサポートや、認定講習を実施することも検討に値するのではないかと考える。以前、私が司書教諭免許を取得した際は、大学に通学して取得したサポートがあったと思う。
また、社会人を採用した際は、教員免許の取得を条件にすることも必要であると考える。多忙化の中、若い教員が退職する現状や、教員不足に資する取組についてもロードマップとして示していく考えはあるか。
【理事者】
若い教員が退職する理由として、家庭の事情や転職等様々な理由があるが、多岐にわたる業務を遂行することに不安を持ち、仕事を続けることに自信を失う教員がいることも課題である。また、必要な教員が配置されないことにより教員一人一人の業務量が増加し、長時間業務につながることも大きな課題である。
この課題を解決していくことは教員の多忙化解消には不可欠なことであるので、今後も引き続き対策に取り組むとともに、ロードマップに取組を示していく。
【委員】
多忙化解消、時間外勤務45時間超えをゼロにするハードルはとても高いと考えているので、そのハードルを越えていく際に、時間外勤務の管理を強化するだけにはならないよう要望する。
時間外勤務の要因のうち、授業や生徒指導などの学校として本質的な部分についてもロードマップの中に組み込むのか。
【理事者】
小中学校の教員が授業準備に要する時間は業務の中でも大きな割合を占めている。
そこで、授業のために用意する教材を学年で共有化する、次年度にも引き継いで毎年僅かな修正で教材を使用することができるようにするなど、授業の準備に要する時間を減らす工夫をロードマップに示し、他の学校でも実施するように促していく。
また、保護者対応を含む児童生徒指導に要する時間も教員の業務の中で大きな割合を占めている。人間関係のトラブルや、からかいなど、いじめや不登校につながる小さな芽に対して早い段階から対応していくことがその後の対応に係る時間の縮減につながる。そのためには、日頃から教員が子供一人一人に向き合う時間を十分に確保することが必要である。
そこで、教員ではなくてもできる業務を担うスクール・サポート・スタッフをさらに多くの市町村で活用できるよう、引き続き予算の確保に努めるとともに、専門的な知識を持ったスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充にも努める。
【委員】
そのような事項をロードマップに記載していくことを要望する。
前回の多忙化解消プランの際には、タイトルとして「持続可能な教員の質の向上を目指して」が掲げられていた。そのことを地域や保護者にもチラシとして配布したほか、学校現場には、学校における業務改善の手引や、魅力ある職場であり続けることを目指してと記載されていた。今回の多忙化解消ロードマップはどのような学校の姿を目指していくのか。
多忙化解消が目的ではなく、多忙化解消により実現していきたい姿を示していくことが必要であると考える。県教育委員会の今後に向けた姿勢として、ロードマップが目指す学校のあるべき姿として、どのような姿を思い描いて示しているのか。
【理事者】
教職員の長時間労働を改善し、誇りや情熱を失うことなく、意欲、やりがいを高め、健康で充実して働くことができるようにしていくことで、教職員が一人一人の児童生徒に丁寧に関わりながら、質の高い授業や個に応じた指導を実現していくことが喫緊の課題であると認識している。
多忙化解消を進めることで教員が本来力を入れるべき授業の準備をしたり、子供と向き合ったりする時間を確保できるものと考えている。教員が自らの授業を磨くとともに、その人間性や創造性を高め、児童生徒に対して効果的な教育活動を行うことができるようにすること、教職員はもとより、児童生徒が通いたいと思えるような魅力ある学校となることをあるべき姿としてロードマップにしっかりと明示した上で、より実効性のあるものとなるように取り組んでいく。
【委員】
そのことが端的に表現できる言葉が見つかることを期待する。
これまでも各学校では様々な取組を実施していると思うが、なかなか進まない現状もある。人材や財源を確保することも必要であると思うので、ぜひ県教育委員会として尽力してほしい。教員に余裕ができ、子供たちと向き合い、その中で教員が自主的に学び続けることができる環境となることを期待する。また、そのことが、子供たちが自ら探究する姿勢にもつながっていくと考える。
難しい部分はあるかと思うが、多忙化解消に向け、単なる管理強化となることなく、様々な知恵を重ね合わせながら、ロードマップに示すことを要望する。
また、時間外勤務45時間超えゼロという大変高いハードルであるが、地域や、社会全体などを、巻き込んでいかないといけないと考えるので、その対応も合わせて要望する。
【委員】
県立高校の制服について伺う。
近年、学校の魅力の向上や、LGBTQへの対応として、制服のジェンダーレス化のためにブレザーに変更する学校が増加している。私の地元の公立中学校でもブレザー化が進んできている。
私たちが通った頃の詰め襟やセーラー服は、性的な固定イメージが非常に強くなってしまっている。ブレザー化によって制服の固定的なイメージを払拭することは、一つの時代の流れであると捉えている。
私の長女も来年度から中学生ということもあり、知り合いの保護者や学校の教員から制服のブレザー化について様々な話を聞く。例えば名古屋市立の中学校では、学校ごとの対応となっているため、教員の負担が非常に大きい。制服の変更は何度もあることではないので、大多数の教員が初めての体験であり、学校としても大きな負担になっているという話であった。
例えばデザインやボタンについて、生徒に希望を聴取する学校もあるようだが、非常に凝ったものになり、とても高額になってしまった話や、また制服メーカーが1社独占で、法的に問題ないのかという話など、様々な意見を聴いている。
そのような中、2月26日の読売新聞の朝刊での報道にもあったが、公正取引委員会の調査結果によると、公立の中学校や、高校の制服について、学校間で販売価格に最大6万円の差が生じていることや、取引先のメーカーや販売店の固定化が価格の高止まりを招いている可能性があるとのことである。また、公正取引委員会は制服の価格を抑制するために、メーカーや販売店は入札や見積り合わせでの選定や、新規参入業者にも制服の仕様を明らかにすることなどを提言しているとのことであった。
制服をめぐっては、公正取引委員会は2020年7月に本県豊田市にある県立高校6校の制服販売において価格カルテルを結んでいたとして、同市の販売業者3社に対し独占禁止法違反で再発防止を求める排除措置命令を行っている。大変残念な前例であるが、そのような前例のある本県としては、制服の取扱いが公正に行われているかという点について、緊張感を持って注視していく必要がある。
県立高校における制服の見直しの状況や業者の選定方法の現状はどのようになっているのか。
【理事者】
委員が指摘するとおり、近年、県立高校でも学校の魅力化や性的少数者への配慮などを理由に制服の見直しを進めている。制服を見直す際にはコンペを実施し、生徒や保護者などの意見も踏まえ、制服のデザインや品質、おおよその価格、供給体制やアフターフォローなど、様々な観点から総合的に選定している。
かつては、制服といえば詰め襟やセーラー服が中心であったが、現在は詰め襟が約4割、セーラー服が約2割となっており、ブレザーが主流になりつつある。なお、女子がスラックスを着用できる学校は約8割で、今後さらに増える見込みである。
業者の選定については、一つのメーカーが制服を製造する一社縫製方式と、仕様書を公開して複数のメーカーが製造に参入できるマスターメーカー方式とがあるが、一つのメーカーが製造に責任を負う一社縫製方式は、特別に大きなサイズや特別に小さなサイズにもメーカーに対応が可能というメリットがある。
また、複数のメーカーが製造に参入できるマスターメーカー方式は、競争による価格の低下が期待される一方で、各メーカーの製造量が少なくなるため、思ったよりも価格が下がらなかったり、特別なサイズへの対応が難しくなったりすることもある。
従って、各学校が生徒数などの実情に応じ、いずれかの方式を選択している。昨年7月に確認したところ、全日制高校では一社縫製方式が約7割、マスターメーカー方式は約2割となっている。残りの約1割は、特にメーカーを指定せずに既製の制服を着用している。
【委員】
一社縫製方式が7割ということで、正直かなり多い印象である。この数字を見ると、新規参入を希望する業者も多くあるのではないかと想定されるが、新規参入を希望する制服販売店や制服メーカーへの対応はどのようになっているのか。
【理事者】
新規参入を希望する販売店から学校に申入れがあった場合は、特段の事情がない限りは受け入れ、新規参入を認めるよう学校を指導している。また、販売店だけでなく、メーカーからの新規参入の申入れがあった場合も、制服を見直す際のコンペに新たに参加できるようにしている。
なお、公正取引委員会は、合理的な理由なく長期にわたって販売店やメーカーの指定を変更しないことは望ましくないとしているので、制服を変更しない場合でも販売店の指定については5年、6年で見直しを行うよう学校を指導していく。
【委員】
長期的には変更していくことは、制服自体を変更するというわけではないが、販売の形については、適切に目を入れていこうとする意思があると理解した。
今後も制服を見直す県立高校において、制服の選定が適切に行われるようにするため、県教育委員会として今後どのように取り組んでいくのか。
【理事者】
昨年10月に文部科学省から発出された、学校における通学用服等の学用品等の適正な取扱いについてという通知では、保護者の経済的負担が過重なものにならないように留意することとされている。
また、同じく昨年10月に公正取引委員会からは、競争が有効に働き、保護者の経済的負担の軽減につながるよう、学校がコンペや入札、見積り合わせといった方法でメーカーや販売店等を選ぶことなどが示されている。
これらを受け、昨年11月に行った校長会では、質のよい制服をできるだけ安価に購入できるよう、また、メーカーや販売店の公正な競争を阻害しないよう、学校が留意すべき点などをまとめ指導した。今後も制服を見直す際には、公正な競争の下で適正な価格により選定が行われるよう、継続的に学校を指導していく。
【委員】
今回質問するに当たり、様々な人に話を聞いたが、そこから見えてきたことが幾つかある。
一つは少子化によって制服業界のパイが縮小していて、今後も縮小が続いていくだろうということ。もう一つ、世の中のジェンダーレス化の流れが制服業界にも押し寄せてきて制服のブレザー化が近年急展開で進んでいること。そして、このブレザー化の進展が制服業界を弱肉強食の世界にしてしまっていることである。
詰め襟やセーラー服はある意味一般的になっているもので、一般的であった制服がブレザー化することによって個別化したところが大きなポイントとなる。
最初のデザインの段階の部分を考えると分かりやすいが、今までは小さな縫製会社でも詰め襟やセーラー服の型は分かっていて、製造について特に苦労なく十分対応できた。しかし、ブレザー化するに当たり、個別のデザインの設定から始まると、企画提案力のある大手が強みを発揮できる状況になっていると言える。
また、制服の変更は、頻繁に行われるものではないため、ブレザーに変わっていくのをチャンスとして、パイが小さくなっている部分を何とか保つために囲い込みをする動きが見られる。
一社縫製方式とマスターメーカー方式には、どちらにもメリットがあるが、そのような状況にもかかわらず、学校に対して一社縫製方式の利点を殊さら強調して説明し、さらに独占禁止法に抵触しないラインや、デザインコンペの実施方法まで指南をしている例があると聞いている。このこと自体は法に抵触するわけではないが、これが公立の学校に関して行われていることであると考えたときに、本当にこれが公平で公正であるのかということに関しては、私自身疑問を感じずにはいられない。
また、一社縫製方式であっても、販売店は特段の事情がない限りは参入させる指導をし、販売店は複数になるため、一定程度の公平で平等な価格競争があると考えていたが、調査すると、とある愛知県内の県立高校では、一社縫製のメーカーが直営店を参入させ、明らかに他店よりも安く販売しているという状況が見受けられた。
詳しい人に聴取したところ、ほかの販売店の卸価格ではとても直営店のような値段はつけられず、安価で製造できるメーカーを自身で探すこともできるが、一社縫製方式でメーカー指定であるため、そこから買うしかないという話であった。この段階で公正な競争が行われないという状況もあることが分かった。
また、この人の話では、たとえ複数縫製を認めても、デザインの決定段階でそのメーカーが、布地業者に交渉し、全部布を買うので、そのメーカーのために製造してほしい素材を指定したデザインを作成することで、実質他の業者が参入できないような状況にすることもできるとのことであった。このことを専売という意味のモノポリー製品というそうである。実際起こっているかどうかは詳しく聞かなかったが、そのようなこともできるという話を聞いた。
このような状況の中で、県内の学生服を扱っていた縫製業者が何社も廃業に追い込まれている状況があるようである。まさに弱肉強食の世界である。公正な競争の上でこれが起こっているのであればよいが、私が調べた範囲では、制服業界は、公正な競争が行われていないように感じた。その結果が今回の公正取引委員会が指摘している価格の高止まりを生んでいるということであるならば、県教育委員会としても積極的に対応すべきではないか。
一社独占で競争原理が働かない場合、価格の高止まりや、品質の低下が起こることも考えられる。複数のメーカーが参入できるようにすることや、材料等もどのメーカーでも仕入れ可能なものを使用するなど、公正な競争が確保されるように、ぜひ県立の各学校に働きかけるよう要望する。
また、直接は難しいとは思うが、公立の中学校に対しても目配りをしてほしい。調べた範囲では、比較的マスターメーカー方式で公正な競争が行われている状況があるように思ったが、一つの市町村に対して1社だけが製造しているケースもあった。
もちろん利点等もあるため、一概にそれが絶対に間違っているということを言うつもりはないが、特に公立中学校の場合は義務教育であり、どうしてもそこに通学しなければならず、そのようなところで公正な競争もなく高いものがもし売られているのであれば、いかがなものかと思う。そのため、ぜひそのような部分にも目配りをしていくことを要望する。
最後に、別の視点からであるが、公立学校の制服はあまり華美であってはならないと思っている。ブレザーに変更する際に、デザインやボタンが凝ったものになり価格が高くなってしまった話もある。なぜ制服が必要なのかを考えたときに、学校としての一体感や、魅力づくりという面もあるが、私はそれぞれの家庭の所得にかかわらず皆が同じものを着用することが非常に重要な点だと考えている。
昨今の物価高の状況を鑑みても、制服についての家計の負担を考えなくてはならない。今回公正な競争や取引を依頼するのに合わせ、より安価で品質の高い制服が生徒や保護者の手に渡るような環境を整備することを併せて要望する。