委員会情報
委員会審査状況
教育・スポーツ委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年6月26日(水) 午後0時58分~
会 場 第5委員会室
出 席 者
中村竜彦、浦野隼次 正副委員長
直江弘文、佐藤英俊、神谷和利、朝日将貴、杉浦友昭、かじ山義章、
黒田太郎、おおたけりえ、岡 明彦、下奥奈歩 各委員
スポーツ局長、スポーツ監、アジア・アジアパラ競技大会推進局長、
アジア・アジアパラ競技大会推進監、
教育長、岡田教育委員、教育委員会事務局長、同次長兼管理部長、
教育部長、教育改革監、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第114号 愛知県立学校条例の一部改正について
第120号 業務委託契約の締結について
第124号 訴えの提起について(奨学金貸付金返還請求事件)
(結 果)
賛成多数をもって原案を可決すべきものと決した議案
第114号及び第124号
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第120号
○ 請 願
第 3 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮」について(教育関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第3号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 学校教育の充実及び施設整備について
2 生涯学習について
3 スポーツの振興について
4 スポーツ局及び教育委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(3件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 請願審査(1件)
4 委員長報告の決定
5 一般質問
6 休 憩(午後3時12分)
7 再 開(午後3時20分)
8 閉会中継続調査申出案件の決定
9 閉会中の委員会活動について
10 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
第114号議案、愛知県立学校条例の一部改正について、この議案は、来年4月から県立津島北高等学校と弥富市にある県立海翔高等学校を統合し、新たに津島北翔高等学校を設置するというものである。この計画が発表されたのは僅か3年前、2021年12月に県教育委員会が発表した県立高等学校再編将来構想、中学校卒業者数の急減期を見据えた県立高等学校の一層の魅力化、特色化と再編であった。
在校生や保護者、地域住民への丁寧な説明と合意が得られないまま、統廃合を強行するのは問題である。パブリックコメントでも厳しい意見が寄せられていた。
第一に、県立高校の地域的配置バランスの問題である。弥富市の海翔高等学校を廃止することで、弥富市、蟹江町、飛島村の3市町村、いわゆる海部南部地域には、県立高校が一つも存在しない空白地域になる。一方で、津島市内では県立高校が3校残ることになる。尾張西部地区は、他地区に比べて中学校卒業者数の減少の進行が早く、加えて弥富市や蟹江町などはJRや近鉄など、名古屋市への利便性が高く、名古屋市内の高校に進学する生徒が多いとされている。
しかし、パブリックコメントへの県教育委員会のコメントでは、海翔高等学校では名古屋市南部から通学している生徒が多いとの記載がある。地域の活性化という点でも、名古屋市が近いから地元の高校は要らないということでいいのか。海翔高等学校は、蟹江高等学校と海南高等学校を統合し、2005年に開校した。この20年で蟹江町からも弥富市からも県立高校がなくなり、弥富市は県内38市のうち、県立高校のない唯一の市になってしまう。これではこの地域が愛知県から見捨てられたと思われてしまうのではないか。どこに住んでいても安心して高校に通い、子供たちの学びを保障することは、県立高校を所管する愛知県教育委員会の果たす役割ではないか。この統廃合により、県立高校の空白地域を新たにつくることは問題ではないか。
【理事者】
海翔高等学校と津島北高等学校がある尾張西部地区は、他地区に比べて中学校卒業者数の減少の進行が早い状況にある。また、海翔高等学校では設立当初、生徒の7割程度が海部地区から通学していたが、徐々にその人数、割合は低下し、統合を決定した2021年当時は名古屋市から通学する生徒が4割程度と高い状況になっていた。
反対に海部南部地域の中学生の主な進学先は名古屋市となり、弥富市内の高校への進学者は愛西市内や津島市内の高校への進学者と比較しても少ない状況となった。
このように地域の中学校卒業者の推移や進学動向、海翔高等学校へ入学する生徒の出身地の状況を総合的に勘案し、海翔高等学校を統合することとしたものである。
【委員】
いろいろ理由を述べたが、統廃合してしまうことは、地域の教育力が衰退してしまうことや、長時間通学など幾つもの問題があり、また地域の存続にも関わる重大なことだと思っている。そうしたデメリットについては検討したのか。
【理事者】
デメリット等についてとのことであるが、海翔高等学校へ入学する生徒の出身地の状況、入学者の状況等を総合的に勘案し、決定したものである。
【委員】
そのことについては触れられなかったが、私は高校がなくなることは、まちづくりにも大きく影響してくることだと思う。
第二に、多くの生徒と教職員、保護者と地域の人々で育んできた海翔高等学校の特色ある教育をなくしてしまうことは、県の高等学校教育にとっても大きな損失になる。ホームページによると、2005年に開校した海翔高等学校は、コースを備えた普通科に福祉科を併置する総合選択制の学校であり、水郷地帯に位置しており、豊かな自然に囲まれているとのことである。
普通科には、環境防災、スポーツ、普通の3コースを備え、地域と密着した教育活動を推進してきた。
福祉科では、体験を重視した授業や、特別養護老人施設での実習等が充実しており、高齢社会を担う人材に求められる資質、能力を育んでいる。2年次には介護職員初任者研修、3年次には介護福祉士国家試験をそれぞれ受験するとある。
ゼロメートル地帯で環境防災を学ぶ貴重な場である。ここでなければ実感できないことも少なくないと思う。地元の介護施設と密接な関係を築いて、充実した実習を行い、介護や福祉分野で働く貴重な人材を育てている。高校と地域と施設との密接な連携があってこそ、高い教育的効果が発揮できたのである。
福祉科は新しい高校にも引き継がれるが、実習先の確保や信頼関係の確立など一からやり直すのか。これまで築いてきた地域との関係を壊すのはあまりにも乱暴である。パブリックコメントには、廃校対象の学校は教育困難校、あるいは教育困難校に準ずるような学校ばかりであるというコメントがあった。県立高校には地域のセーフティーネットの役割もある。
地元からは、中学校で不登校だった生徒も、海翔高等学校が安心できる居場所になり、育っていった、模試の費用や部活のジャージ代も親の負担が気になると話す生徒もいる、学校に来るだけで精いっぱいという子も少なくないなどの声が寄せられた。
様々な困難を抱えている子供たちを温かく迎え、励まし、育てる、貴重な役割をこの高校は果たしているのではないか。知事も県教育委員会も、誰一人取り残さないことを教育理念に掲げているはずである。
海翔高等学校の果たしている役割、とりわけ地域と一体感をもって子供たちを受け入れ、育てていることをどう評価しているのか。海翔高等学校が誰一人取り残さないと踏ん張り、地域で果たしている役割こそ守り、育てていくべきではないか。
【理事者】
海翔高等学校では、教職員の尽力もあり、生徒に寄り添ったきめ細かな教育が行われていると承知している。しかし、近年は入学を希望する生徒が減少するとともに、地元生徒の割合も低くなり、今後さらに子供の数が減少していく状況であるため、海翔高等学校を統合するという判断に至ったものである。
津島北翔高等学校には、海翔高等学校に設置している福祉科を移転させるが、海翔高等学校が築いてきた教育を引き継いでいけるよう取り組んでいく。
【委員】
海翔高等学校で生徒に寄り添った教育が行われていることを承知しながらも、生徒数が減っているからと機械的に学校の統合が行われているが、少人数だからこそ目が行き届く教育も実現できる。
第三に、校舎と施設、設備について聞く。津島北高等学校は、長い伝統がある高校である。一方で、校舎や施設、設備の老朽化が大きな課題となっている。海翔高等学校は、県内でも比較的新しく、改修工事も済んだばかりで、地域の避難所としても貴重な場と聞いている。
なぜ新しい校舎ではなく、古い校舎の方へ統合するのか。費用対効果を考えても納得できないという意見があるが、どう考えているか。新しい学校になることで、津島北高等学校の校舎や設備は一新されていくのか、現状維持なのか、併せて伺う。
【理事者】
まず、なぜ古い校舎に統合するのかであるが、統合後の高校に設置する福祉科は、県内に4校のみであり、通学範囲が広域となるため、交通の便のよい場所に設置することが望ましいことから、名鉄の駅から近い津島北高等学校の校地で新たな学校を開校することとした。
次に、統合による校舎の整備については、福祉科の実習に対応するため、実習棟の新築と既設校舎の一部を改修し、最新の実習設備を導入する。今回の統合に併せて、充実した実習環境を整えることで、今後ますます需要の高まる福祉分野で活躍できる人材を育成していく。
【委員】
最後に、弥富市では2022年に市民から地域や学校現場の声を聞き、意見が反映され、海翔高等学校の存続を望むという愛知県に対する意見書の採択を求める請願が提出された。否決されたものの、存続を求める市民の声がある。
海翔高等学校は、少人数学級が実現し、先生が丁寧に生徒をフォローしているそうである。また、福祉の現場で活躍している卒業生もいる。将来を担う子供たちの活躍の場を奪う統廃合は立ち止まるべきということを述べ、議案質疑を終わる。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
私からは、大きく分けて2点質問する。
まず、閉鎖されたSNS空間におけるトラブルの防止について質問する。
デジタル端末とアプリの普及により、教育の形が大きく変わっている。オンライン学習の普及や教育コンテンツのデジタル化により、学生はどこからでも学ぶことができ、個別化学習やインタラクティブな学習が進んでいる。これにより柔軟な学習、コスト削減、データ駆動の教育が実現されている。
また、教育でのタブレット端末の使用が進められていく中で、スマートフォンの使用に目を向けてみると、直近のNTTのデータでは、スマートフォンの所有開始の平均の年齢は2019年が11.3歳だったのが、直近3年間では10.6歳に下げ止まったとのデータもあり、平均で小学校の高学年に上がるタイミングでスマートフォンを所有しだしていることが分かる。
その中で、SNSの普及に伴い、小中学校における問題も深刻化している。SNS上でのいじめや個人情報の漏えい、不適切なコンテンツへのアクセスなどが増えており、これらが学生の精神的、社会的な発達に悪影響を与えている可能性がある。
それにもかかわらず、文部科学省の令和4年の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によると、ネットによる誹謗中傷によるいじめは全国で2万3,920件となっており、全認知件数68万1,948件あるうちのいじめの認知件数が3.5パーセントとなっている。これは、クローズされた環境の中で行われるLINEなどのメッセージアプリを利用したいじめが主かと思うが、こういったものは外部から見えにくく、認知しづらいため、認知率が低いだけではないか。実際に教師や保護者が気づかないまま深刻化するケースが多く報告されている。
デジタル技術は、教育をよりアクセスしやすく、個別化されたものにする一方で、これらの課題にも対応する必要があると考えるが、小中学校におけるLINEを含めたSNSが関係するいじめについて、県教育委員会はどのように把握しているか。また、その防止に対してどのような取組がされているのか。
【理事者】
SNSが関係するいじめについては、状況の把握が難しいことから、警察と一緒に対応する場合も多くなり、それらのうち対応が難しいものや悪質なものは、県教育委員会に報告があり、それ以外の事案については各教育事務所の生徒指導担当者が集まる会議において、各市町村教育委員会から事案が報告され、情報を共有している。
このようなSNSをはじめとするスマートフォン等の利用に伴うトラブルに対しては、学校と保護者が協力して、未然防止に取り組むことが大切であると考えており、これまでも文部科学省や警察庁等が作成する児童生徒や保護者向けの啓発リーフレットを市町村教育委員会を通して配布をしている。
また、夏休みなどの長期休業前には、スマートフォン等を使用した性犯罪やSNSトラブルを未然防止するための注意点をまとめた通知を市町村教育委員会や小中学校に送付している。
また、多くの小中学校においては、愛知県警察本部や通信事業者等と連携した児童生徒や保護者を対象とした研修会が実施されるなど、SNS等の適切な利用について学ぶ取組が行われている。
【委員】
研修会を行っているとのことであるが、小中学校における児童生徒や保護者を対象としたSNSなどの情報モラルに関する研修会はどの程度実施しているのか。
【理事者】
義務教育課が名古屋市を除く公立小中学校を対象に実施した調査では、令和4年度にSNSへの投稿や犯罪被害防止等、情報モラルに関する研修会を実施した学校の割合は、児童生徒を対象としたものが小学校で93.7パーセント、中学校で94.4パーセントであった。また、保護者を対象としたものが小学校で25.1パーセント、中学校で30.6パーセントであった。
【委員】
保護者対象は3割程度であり、多く実施されているとはいえない状況であると思う。児童生徒を対象に95パーセント近い学校で研修会が行われていること自体はよいが、さらにスマートフォンを持ち始める小学校の高学年になるタイミングでの研修会の充実が私は必要だと考えている。
最近、保護者から聞いた話では、子供たちの何気ないやり取りがきっかけとなるケースが幾つもあった。ある子供が複数の友達グループLINEから退会させられ孤立してしまうケース、また友達同士で人気投票がLINE上で行われ、本人たちも悪気はないものの、結果的に多くの人を深く傷つけることにつながったケース等も聞いている。
子供たちは、こうした問題を保護者に相談できず、もし相談できたとしても、次に自分がターゲットにされることを恐れて、ただ事態が過ぎるのを待つしかないという声も聞いた。友達同士の間で行われる無意識の行動が、時には命に関わる事態を引き起こすこともある。また、閉鎖されたプライバシー空間のため、保護者や教育関係者が気づくことができないこともたくさんあると思う。
このようにグループLINE等の閉鎖された空間の中でのトラブルは、学校でも家庭でも大きな問題となり続けている。こうした現状に対してどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
文部科学省が主催する生徒指導担当者連絡会議において、仲のよいグループ内のトラブルの一つであるいわゆるLINE外しなどは、ネットいじめの典型的な例として取り上げられている。
また、愛知県警察本部と連携して行う愛知県学校警察等連絡協議会において、スマートフォンを持ち始める小学校高学年からの啓発が重要であることが指摘されている。
義務教育課としては、小学校高学年に重点的に研修を行うよう依頼するとともに、LINE外しなど児童生徒間のSNSトラブルのポイントとなる具体的な事例を収集し、研修会や道徳教育において活用するよう指導をしていく。
【委員】
具体的な事例を基に研修会を行うことはよいことだと思うが、研修会だけではSNSトラブルに関するトラブルを阻止していくことは難しいのではないか。
そこで必要なのが、LINE等を運営する企業側の協力だと思うが、例えばリテラシーに反するような書き込みをそもそも入力できない機能や、不適切発言があった際の通報機能からアカウントの停止などの対策は、ネットゲーム等の中では、チャットによく取り入れられているが、チャット内のやり取りを解析し、何か危険なことがあれば、保護者にアラートが届くアプリもあるようである。
日頃からよく使うLINE等のクローズされたグループチャット内でのやり取りは、学校や保護者の努力によって防ぐことが非常に困難な部分ではないかと思う。だからこそ、LINEの運営会社などの企業側を巻き込んで、未然防止に取り組むことが必要ではないかと思うが、この件についてどのように考えるか。
【理事者】
子供たちがSNSを利用する際、機能が制限されたり、投稿内容を自動チェックされたりするといった部分は親や学校ができない部分でもあり、いじめの未然防止として効果的であると考える。
しかし、これができるのはSNS運営企業であり、容易なことではないので、どうしたら協力してもらえるか相談していく。
【委員】
続いて医療的ケア児の通学支援について質問する。
医療技術の進歩に伴い、特別支援学校に在籍する、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な医療的ケア児は年々増加している。医療的ケアは、日常生活に必要であり、保護者の負担軽減が課題であったが、2021年9月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行され、学校の設置者は、在籍する医療的ケア児が、保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアなどの支援を受けられるようにするため、必要な措置を講ずるものとされた。
県教育委員会では、法律制定以前から医療的ケア児がいる特別支援学校へ看護師を配置してきており、環境が整ってきている状況だと思う。
一方、通学については、多くの医療的ケア児が、1人で通学することやスクールバスに乗車することが難しく、保護者が登下校の送迎を行っているが、保護者の負担を軽減するための通学支援について、昨年度から名古屋特別支援学校をモデル校として、今年度からは港特別支援学校もモデル校に加え、2校で通学支援モデル事業を実施していると聞いている。昨年度の名古屋特別支援学校での利用実績、また今年度の状況はどうなのか伺う。
【理事者】
医療的ケア児通学支援モデル事業は、通学時の送迎に関する保護者の負担を少しでも減らすため、月に2回程度、保護者による送迎に代わって、車椅子やストレッチャーのまま乗車することができる福祉タクシー等に看護師が同乗し、医療的ケア児の送迎を行う事業である。
昨年度は、名古屋特別支援学校において6人の児童生徒がこの事業を利用し、延べ33回の利用実績があった。
今年度は、港特別支援学校を加えた2校において、4月に保護者説明会を実施し、現在のところ児童生徒5人が利用を開始している。
【委員】
昨年度実施した名古屋特別支援学校では、福祉タクシー等の利用に当たっては、タクシー料金が保護者の立て替えとなり、遠距離の場合、かなりの金額になることや、タクシー会社の2社見積りを徴収する必要があるのが負担であったと聞いている。
また、見積額が支払い上限となり、上限を超えた場合、差額は保護者の負担であったとも聞いているが、昨年度課題として挙がっていたことについて、今年度改善されたことはあるか。
【理事者】
改善点の一点目について、このモデル事業では、福祉タクシー等の経費の補助に国の特別支援教育就学奨励費を活用している。国の補助が、保護者の負担した経費に対して行われることから、昨年度はタクシー料金を一旦保護者に立て替えてもらったため、負担となっていた。今年度からは、運用面での改善を図り、保護者に立て替えてもらうことなく、学校から直接タクシー会社に支払うよう改善した。
二点目に、国の補助を活用していることから、利用に当たってタクシー会社2社の見積書を提出してもらっていたが、今年度からは1社のみの見積書でよいこととした。
三点目に、タクシー会社からの当初の見積額が支払いの上限となっていたため、事故渋滞等で見積りよりも高い料金になると自己負担が発生していたが、今年度からは見積額を超えた場合でもやむを得ない理由であれば、校長判断で支払うことができることとした。
四点目に、タクシーで付き添う看護師については、ふだんお願いしている看護師のほうが必要なケアの内容などを把握しており、安心感が高いことに加え、保護者が説明する負担も少ないことから、事業者の選定を保護者にお願いしている。
昨年度、モデル事業を進める中で、ふだん利用している事業所がモデル事業に対応できない場合、ほかの事業所を改めて探し、事業内容等を説明することが大きな負担となるとの声があった。このため、今年度はモデル事業への対応が可能と考えられるタクシー事業者や看護師派遣事業者の情報を保護者に提供するとともに、一目で事業の内容が分かるリーフレットや、子供の状況を伝えるための書式を整えるなど、保護者が事業者を探したり、説明したりする際の負担軽減を図っている。
【委員】
この医療的ケア児の通学支援の取組を今後どのように進めていくのか、県としての考えを伺う。
【理事者】
今年度のモデル校である名古屋特別支援学校及び港特別支援学校の保護者や事業者を対象に調査等を行い、成果と課題を整理した上で、さらに改善していく。将来的にはモデル事業の成果を踏まえて、医療的ケア児の通学支援を制度化し、県立特別支援学校全校での実施を目指していく。
【委員】
保護者や事業者を対象に調査を行い、さらに改善していくこと、将来的には医療的ケア児の通学支援を制度化し、県立特別支援学校での実施を目指していくとのことであるが、最後に大きく二点について要望したい。
まず一点目として、支援事業を受けるに当たって、保護者の負担軽減のためのワンストップな体制を整備できないか。先ほど説明もあったが、保護者が行う手続は非常に負担が大きい。福祉タクシー事業者や訪問看護事業者それぞれに保護者が依頼できるようにしたとのことであったが、依頼、事業の説明、保護者の要望、見積り、日程調整までを保護者自身が行い、それぞれの事業者に対し不明な部分を県が電話で説明し、サポートを行っていると聞いている。
そうしたことから、書類の作成や調整に非常に時間がかかり、例えば4月に見積りを取得しても、実際のサービス利用が開始されるのは夏頃になってしまうという話も聞いている。迅速な手続やサポートの柔軟な対応を実現するために、障害者支援センターやタクシー協会、ケアプランナーなどの関係機関との情報の共有と連携を強化し、保護者からの相談窓口を一つに集約して、ワンストップで支援が受けられる仕組みを構築してもらうことを要望する。
二点目に、こういった保護者負担の軽減を踏まえた上で、本県には小牧、一宮、ひいらぎ、にしお、岡崎、豊橋と全8校の肢体不自由児を受け入れる特別支援学校があるが、今回導入校以外の6校にも早期に拡大してもらうよう要望し、質問を終わる。
【委員】
私からは、昨年に続き、生理用品を全ての高校トイレにということと学校の校則の見直しについて、それぞれの進捗状況や取組を伺う。
昨年、生理用品を全ての高校のトイレに設置することを求めて質問した。まず、その後の状況について伺う。
昨年の委員会で、今年度の各学校における生理用品のトイレへの設置状況について、状況を調査する予定であり、来年度に向けてその結果を踏まえて取り組んでいくと答弁があった。
前回の委員会後、高校のトイレへの生理用品の設置状況を全て調査したと事前に聞いている。全てのトイレに設置、一部トイレに設置、未設置、それぞれの調査結果を示してほしい。
【理事者】
今年度の4月に実施した調査によると、生理用品の設置状況は、県立高校150校のうち、全てのトイレに備え付けている学校が18.7パーセントに当たる28校、一部のトイレに備え付けている学校が29.3パーセントに当たる44校、トイレには置かず、保健室等で手渡しをしている学校が52.0パーセントに当たる78校であった。
【委員】
一部のトイレに設置されている学校もあるものの、全てのトイレに設置している数だけ見ると18.7パーセントという状況で、まだまだ進んでいない状況である。取組を加速させていくことが必要である。
続いて、昨年度、委員会の際、生理の貧困に対応する予算額について確認した。昨年度は215万1,000円であった。事前に今年度の予算額も確認し、203万5,000円であった。
そこで伺う。この積算根拠を示してほしい。また、昨年度より今年度の予算が減っている理由は何なのか。
【理事者】
まず、積算根拠についてお答えする。この事業は、生理の貧困の取組として行っているため、奨学給付金受給者数をベースとして、全ての女子生徒の8パーセントに当たる人数に必要枚数と長期休業期間を除いた所要月数を乗じて積算している。
また、前年度より減額になった理由は、女子生徒全体の人数が減少したことと、生理用品の単価を実績ベースで見積もったことにより、前年度よりも下がったことによるものである。
【委員】
積算根拠は、奨学給付金を受けている女子生徒を対象にしたものであった。しかし、それだけでは不十分である。昨年の委員会の答弁では、人権の観点からも必要なときに生理用品を入手できるようにすることは大切だという重要な答弁もあった。ぜひこの観点で取り組んでもらうことを期待したい。
既に高校のトイレに生理用品が設置された他の自治体では、緊急時やナプキンを忘れたときに助かった、保健室に取りに行くのは恥ずかしかったけど、安心につながったという声があったそうである。
また、愛知県内でも小中学校のトイレに生理用品が置かれることになった話を聞いた高校生から、高校にもあるといいなと声が寄せられたと聞いた。子供たちから求められている。
岡山県の公立高校のトイレに生理用品を置くことを目指している高校生たちが、ニーズを把握するための実証実験を行ったという報道があった。実験とともに行ったアンケートでは、生徒965人のうち7割以上がトイレに置かれた生理用品を使ったと回答。また、急に生理になったときなど安心できるといった肯定的な意見も寄せられたそうである。
そこで伺う。生理用品は、全ての子供たちが心身の健康を維持し、安心して学校生活を送ることができる環境整備の一環として必要なものである。今回の調査を踏まえ、トイレットペーパーと同様に、女性にとっては日常的に使う生理用品も社会的インフラとして位置づけ、全ての高校のトイレに設置できるよう予算を増額し、積極的に取り組めるよう後押しすべきと考えるが、いかがか。また、全ての高校のトイレに設置する場合の試算を1人が1日必要な生理用品の枚数を基に示してほしい。
【理事者】
生理用品に関しては、種類やメーカーが多様で、使い慣れた製品を自分で持つというのが今のところ社会の一般的な感覚だと考えており、学校には経済的理由や急な生理、生理用品を切らした場合などに備えて、生徒が安心して学校生活を送るために必要な環境整備が求められているものと考えている。そのため、トイレに置いたり保健室等で配布したりすることにより、必要な生徒の手に確実に届くようにしていく。
続いて、全ての高校トイレに設置する場合の試算であるが、全ての高校トイレに設置する試算ではないが、女子生徒が学校以外で使う分も含めて、1回の生理で20枚程度使用するとして、所要月数を10か月として計算すると、およそ2億400万円程度になる。
【委員】
経済的理由などといろいろ言ったが、前回の答弁で、人権の観点から必要だということが共通認識になったと私は思っており、県がその認識を持っているのであれば、生理用品を全てのトイレに置くことが必要だと思う。生理が始まったばかりの数年は、周期が大変不安定だと言われている。生理が始まる時期にも個人差がある。生理用品が必要になったときに、手に届くトイレの個室に生理用品が置いてあることは安心につながる。
休み時間は大体10分ぐらいであり、保健室まで取りに行って、またトイレに戻ってというのを休み時間の中でやるのも大変だし、しかも下着を汚し、制服についてしまうといった不安もある。
前回、委員会の中で生理用品の配布について、コミュニケーションを伴う保健室での配布や対面によらないトイレへの備付けなど、学校の実情に応じて生徒の手に届きやすい方法で配布するよう指導していくと答弁があった。
また、生理用品を取りに来た生徒と養護教諭がコミュニケーションを行うことが、貧困やネグレクトなどを早期に発見する機会にもなっていることも聞いた。
そこで伺う。貧困やネグレクトなど、深刻な悩みや自分の体に関すること、学校生活で悩みを持っているのは生理のある生徒だけではない。スクールカウンセラーやソーシャルワーカーの増員、教員不足の解消を進め、生理用品をもらいに行ったときではなく、いつでも気兼ねなく相談できる体制をつくることこそ必要ではないか。
【理事者】
委員お示しのとおり、生徒の持つ悩みは様々である。また、誰にも相談できずに1人で悩みを抱えてしまう生徒もいる。そのため、日頃から教員が生徒一人一人に寄り添い、小さな変化に気づき、声かけをするとともに、専門的知識を持つスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携して対応することが大切である。
今後も引き続きスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの拡充に努め、生徒が悩みを相談しやすい環境づくりを進めていく。
【委員】
スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの拡充に努め、悩みを相談しやすい体制を拡充していくとの答弁であった。そういった生徒にきちんと目が行き届くようにするための対応はぜひやってほしい。
生理用品へのアクセスのサポートは、女性の生涯を通じた健康を守るための重要な取組である。ぜひ生理用品を全ての高校のトイレに設置することを、積極的に、前回の答弁を踏まえて進めてほしいと思う。
次に、進捗状況としてもう一つ確認しておきたいのが、昨年質問した学校における人権侵害の校則の見直しについてである。その際、校則を学校のホームページで全ての高校が公開することを聞いた。現状、全ての高校の校則が公開されているのか伺う。また、校則の見直しの進捗状況と校則の改定手続を設けている学校は何校あるのか示してほしい。
【理事者】
本年6月の県立高校を対象にした校則の見直しの状況の調査の結果、今月24日の時点で県立高校全校、全課程の150校、178課程が校則をホームページで公開している。
校則の見直しの進捗状況については、昨年度末までに全ての県立高校において見直しが行われた。今年度についても、さらに見直し中、あるいは見直し予定の学校が69.7パーセントの124課程ある。また、校則改定手続について、既に明文化している学校は64.0パーセントの114課程、検討中、あるいは検討予定の学校は31.5パーセントの56課程となっている。
【委員】
見直しも進んできているようだが、実際に子供たちの声を聞くと、見直しが不十分、あるいは子供が権利の主体として尊重されていないのではと思う。
私は、校則アンケートを現在実施している。そこには校則があることでとても疲れる、気分が落ち込む、監視されているようで窮屈、学校に行きたくなくなる、頭髪、服装、持ち物の指定などでお金がかかったという、子供たちに過度なストレスとなっている実態や経済的負担が生じている、こういう声が引き続き寄せられている。
見直してほしい校則には、スマートフォン持ち込み、メイクをオーケーにしてほしい、スカートの長さを自由にしたい、ツーブロックなど特定の髪型の禁止を変えたいなど、校則を変えたいという声であふれていた。
そこで校則を見直すに当たって、人権侵害になっていないか、財政的負担を強いていないかという点が大事だと思うが、県の認識を伺う。また、高校生らしい、品があるといった曖昧な表現や禁止の理由を説明できるだけの根拠があるかなど、説明できない校則について見直す必要があると思うがどうか。
【理事者】
県教育委員会では、校則の見直しに際して子供の人権を侵害するものがないか、個別の事情のある生徒への配慮に欠けるものがないかなどの観点で見直しを行うよう、各県立高校を指導している。
また、校則ではないが、制服等について、経済的負担が過重なものとならないよう留意することを各学校に伝えている。
なお、文部科学省が作成した生徒指導提要では、意義を適切に説明できないような校則については、学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うことが必要とされており、各学校でも校則の見直しが進んでいる。
具体的には、「高校生らしい、清潔感のある髪型、長さに整える」という表現や、「高校生らしい品位を保つように心がける」という表現を削除した学校もある。
【委員】
子供の人権侵害に配慮すると答弁があった。そこは大事なところだと思う。
5月の中日新聞の報道で、愛知商業高等学校はビジネスシーンにふさわしいオフィスメイクに親しむための取組を始めたとあった。これまでメイクは禁止していたが、社会人になる前に化粧に慣れたいとの声を受け、生徒会が中心となって週1回化粧して登校できる日をつくったという記事があった。生徒の声が反映された取組だと思う。
子供が意見を言うときに、大人がまず受け止めてくれるという安心感が必要である。子どもの権利委員会は、教育において意見を聴かれる子供の権利を尊重することは、教育に対する権利の実現にとって根本的に重要であると述べている。学校において、子供の意見表明を保障する環境をつくることが重要だと考えるが、県の認識を伺う。
【理事者】
生徒指導提要では、生徒指導の取組上の第一の留意点として、児童生徒の権利の理解が項目立てされており、児童の権利に関する条約における四つの原則の一つとして、児童生徒が自由に自分の意見を表明する権利が挙げられている。
県教育委員会としては、生徒指導提要の趣旨を踏まえて対応するよう、各県立高等学校を指導している。
【委員】
先ほどアンケートを行ったと述べたが、その中で子供たちの声が聞かれていると思わないという声があった。趣旨を踏まえて指導しているというが、現場はそうはなっていないのではないかと思う。これはもう一度学校に言ってもらう必要があるのではないかと思う。
校則がおかしいと思ったときに、決まりだから仕方がない、言っても変わらないと諦めさせるのではなく、声を上げてもいいし、変えていくことができると学ぶことは、子供の成長、発達にとって大変重要だと思う。
次に、子どもの権利条約について、子供たち自身が自分にこんな権利があると知ることと同時に、教職員も子どもの権利条約について学び、深めることが重要である。2022年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが行った調査で、子どもの権利条約の内容を知らないと答えた教員が3割に上ったと結果を発表した。
生徒指導提要には、安全・安心な学校づくりは生徒指導の基本中の基本であり、子どもの権利条約の理解は教職員、児童生徒、保護者、地域の人々等にとって必須と明記された。また、愛知県の人権推進プランには、学校においては子どもの権利条約の趣旨を認識し、児童生徒の人権に配慮し、一人一人を大切にした教育や学校運営に努めるとともに、子供自身に人権という権利があり、守られている存在だということを認知できるように努めると書かれている。
そこで、学校現場で子どもの権利条約の理解を深めることの重要性について、どのように認識しているのか伺う。また、県としてどのように理解を深める取組を進めていくのかも併せて伺う。
【理事者】
学校現場で児童の権利に関する条約の理解を深めることは大切であると認識している。県教育委員会としては、生徒指導を担当する教員が集まる会議や研修会において、児童の権利に関する条約について説明し、生徒に対して学校教育活動の中で理解を深めるよう伝えてきたが、今後も引き続き様々な機会を捉えて働きかけていく。
【委員】
大事な点であるので、引き続き理解を深めるよう働きかけてほしい。
前回、各学校が適切かつ不断に校則の見直しを進めていくことが必要であると考えており、機会を捉えて好事例を含め情報提供をしていくことで、校則の見直しを積極的に進めるよう促していくという答弁があった。
しかし、まだまだ子どもの権利が侵害されている実態がある状況である。校則の見直しといったときには、憲法や子どもの権利条約で一人一人に保障されている権利が脅かされていないかという視点が大変重要である。この点も踏まえて見直しを促すことを要望して、この質問について終わる。
続いて、大阪・関西万博への修学旅行についてである。今年4月8日付けで「修学旅行等における2025年日本国際博覧会、大阪・関西万博の活用について」という通達が国から都道府県教育長、都道府県知事宛てに送付された。
まず、愛知県教育委員会は、この通達をどのように取扱い、周知をしたのか伺う。
【理事者】
令和6年4月8日付けで、文部科学省初等中等教育局長から県内の市町村教育委員会へ周知するよう依頼があったので、4月16日付けで各教育事務所に対して管内の市町村教育委員会へ周知するよう依頼をした。
【委員】
活用についてという文書を送付したとあった。政府は、修学旅行と校外学習を合わせて120万人の子供たちに大阪・関西万博に来てもらうと表明し、文部科学省と都道府県を通じて、学校への働きかけを強めている。
そういう中で、既に愛知県内の主に中学校では、修学旅行先に大阪・関西万博を候補地に挙げた。保護者向けに説明会も開かれているが、子供たちを万博に動員することに心配の声が上がっている。
大阪・関西万博をめぐっては、幾つもの不安材料がある。3月28日、夢洲1区において溶接作業中に発生した火花が可燃性ガスに引火し爆発する重大事故が発生した。この夢洲は、現役の廃棄物最終処分場で、埋め立てたものの分解に伴って可燃性のメタンガスが発生し続けている。「いのち輝く」という万博のテーマに最もそぐわない場所である。また、災害などが起きた場合、夢洲へ行く二つのルートは通行不能になる可能性が高く、最大で1日22万7,000人の来場者が帰宅不能になるおそれがある。
そこで、修学旅行などの集団宿泊行事や遠足を行う際には、子供たちの安全確保が大変重要であるが、県教育委員会の基本的な認識を伺う。
【理事者】
修学旅行などの集団宿泊行事や遠足を行う際には、健康、安全の管理について細心の注意を払うなど、児童生徒の安全確保は何より大切だと認識している。
【委員】
安全確保が何よりも大切だということを確認した。
次に、小学校学習指導要領解説特別活動編というものがあるが、遠足・集団宿泊的行事実施上の留意点には、安全確認や安全配慮についてどのように書かれているのか。また、中学校学習指導要領解説特別活動編の旅行・集団宿泊的行事実施上の留意点についても、どのように書かれているのか示してほしい。
【理事者】
小学校学習指導要領解説では、あらかじめ実地踏査を行い、現地の状況や安全の確認、地理的環境や所要時間などを把握するとともに、それに基づいて現地施設の従業者や協力者等との事前打合せを十分に行う、また事故防止のための万全な配慮をする、特に安全への配慮から小学校の段階においては、活動する現地において集合や解散をすることは望ましくないことを十分に考慮すべきであるとされている。
中学校学習指導要領解説では、生徒の心身の発達の段階、安全、環境、交通事情、経済的な負担、天候、不測の事故、事故の発生時における対応策などに十分配慮し、学校や生徒の実態を踏まえた活動となるよう工夫すること。特に教師の適切な管理の下での生徒の活動が助長されるように、事故防止のための万全な配慮をする、また自然災害などの不測の事態に対しても自校との連絡体制を整えるなど、適切な対応ができるようにするとされている。
【委員】
学習指導要領の中身、そこでも安全確保が求められている。
続いて確認しておきたいが、修学旅行先を決めた際、事前に下見を必ず行うことでよいか。特に初めて行くような場所は、事前に現地の状況を把握しておくことが必要だと思う。下見ができない場所へ行くことはないか、確認のため伺う。
【理事者】
先ほど答弁した学習指導要領解説にあるように、あらかじめ実地踏査を行い、現地の状況や安全の確認等をすることになっているので、通常、学校は下見をした上で、修学旅行を実施していると考えている。
【委員】
通常、下見をした上で修学旅行を行うとのことであった。文部事務次官の通達にも、修学旅行における安全確保の徹底についてという文書があるが、現地の状況等について事前の実地踏査の実施についても述べられている。
しかし、万博会場は開幕前に下見をすることができない。万博への修学旅行について、保護者から爆発事故があったため心配という不安の声が寄せられている。また、昼食休憩所としている団体休憩場所は、爆発事故のあった現場のすぐ近くである。下見も安全確保もできない状況では不安の声が出るのは当然だと思う。
2025年日本国際博覧会協会は、5月30日、大阪・関西万博の中心、パビリオン地区(夢洲2区、3区)で、3月に同1区で爆発事故が起きたのと同じメタンガスが発生していたと発表した。会場のどこでも爆発の危険性があることが明白になった。
そこで2点伺う。一つ目として、下見できない、安全性に不安があり、爆発事故を踏まえた万博開催中の再発防止対策も不十分である場所を修学旅行先にする前に、安全性の確保の点から問題点を検証し、慎重に検討することが必要だと考えるが、県の認識を伺う。
二つ目に、安全性が確認できない場合は、行き先の変更や万博会場を選択しないことを検討するよう各教育委員会を通じて通知を出してほしいと思うが、いかがか。
【理事者】
まず一点目だが、文部科学省から4月8日付けで修学旅行等における2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の活用についての依頼が出ていることから考えても、大阪・関西万博を修学旅行先として計画することについては問題ないものと考えている。
次に二点目だが、これまでも下見の際に安全確保が十分でないと学校が判断した場合や、その後の情報の中で安全性が十分でないと判断した場合は、直前であっても訪問を中止したり、行き先を変更したりする対応を取っており、引き続き子供の安全を最優先し、適切な対応をするものと考えている。
県教育委員会としては、大阪・関西万博について安全確保に関する情報を把握した場合には、学校担当指導主事会等で情報提供した上で、児童生徒の安全に配慮した実施となるよう、改めて指導していく。
【委員】
問題ないというが、爆発事故もあったし、不安な点、不明確な点がたくさんある。大阪府が2025年の大阪・関西万博に小中学校の子供たちなどを招待する事業について、大阪府の教職員組合が5日に府や教育委員会に対し事業の中止を求める申立てを行った。理由として、メタンガス爆発事故や、下見ができず医療体制にも不安があることを挙げている。
6月19日の報道で、大阪・関西万博の運営主体、2025年日本国際博覧会協会が策定する防災計画の全容が示された中で、災害想定では大阪は7月から9月に落雷が多いとし、大屋根の上は落雷の危険性が高いとしたという報道もあった。
大阪・関西万博を修学旅行先に選択することは、安全面に関わる大きなリスクが伴うものである。会場の安全性に対する懸念や不安が解消されないままであるのに、そこは推奨すべきではない。
2010年6月18日、豊橋市内の中学校の野外活動中にカッターボードが転覆し、1人の尊い命を失う、大変痛ましい事故が起きた。子供たちの命を守る立場に立って、安全を何よりも最優先に考えた慎重な判断を促すべきことを述べて、修学旅行についての質問を終わる。
続いて、もう一つ質問する。アジア・アジアパラ競技大会についてである。
まず、大会経費について伺う。報道で大村知事は、経費節減、合理化をして頑張っているが、大変厳しいと述べており、大会経費の大幅な増大が見込まれるとのことであった。
5月15日のCBCの報道では、資材の高騰や人件費の上昇などを背景に、当初見込んでいた1,000億円の経費を大幅に上回る見通しとされている。県が行う様々な取組も物価高騰の影響を受けざるを得ない。アジア・アジアパラ競技大会だけがその影響を受けず、当初の発表の850億円、230億円という予算で取り組むことは難しいのではないか。
そこでアジア・アジアパラ競技大会の経費がどこまで膨れ上がる見込みか伺う。
【理事者】
大会経費については、簡素で合理的、機能的な大会運営により、予算の範囲で収まるよう、大会組織委員会や名古屋市をはじめ、関係者とともに様々な工夫をすることで、経費の抑制に努めている。
大会経費を精査していくためには、主催者であるOCAやAPC、競技団体など関係者と調整しながら、配宿や輸送、競技プログラムなど各種計画を具体化する必要がある。その際にはできるだけ経費を圧縮できるよう調整していくが、現時点では示すことができないことを理解願う。
【委員】
今年5月に大村秀章知事と名古屋市の河村たかし市長が大会経費について、昨年10月、今年2月に続いて3度目の支援要請を文部科学大臣に行っている。大臣は、財政当局とも協議しながら、できる範囲のことをやりたいと答えたとのことであった。
そこで、国に求める支援の中には大会経費の支援という項目もあったと思うが、その際、どのように提示したのか、どのような規模になると言ったのか。
【理事者】
先月5月14日の要請では、アジア競技大会については厳しい状況にある大会経費のうち、物価の高騰など社会経済状況の変動等による増額分について、国において必要となる支援を行うよう要請している。
また、アジアパラ競技大会については、多様性を尊重し合う共生社会の実現に貢献する大会の社会的意義を踏まえ、東京パラリンピックにおいては国が4分の1の経費を負担していることから、アジアパラ競技大会においても同様に国による支援を行うことを要請している。
【委員】
増額分と言ったが、その増額分は具体的に幾らと示したのか。
【理事者】
現在、各種計画を具体化するため、関係者と調整しているところであり、現時点では具体的な数字は示していない。
【委員】
具体的な数字が出てこないと、大会の議論そのものが進んでいかないと思う。そこはきちんと明らかにしていくことが、この大会を進めていく上で必要だと思うが、いつかそれが示される日が来るのか。いつまでに示されるのか。
【理事者】
繰り返しになるが、現在、各種計画を具体化するため、関係者と調整を進めているので、現時点では具体の数字を示すことができないことを理解願う。
【委員】
今は大会の2年前である。県には大会に係る経費を県民に明らかにしていく責任があると思う。アジア・アジアパラ競技大会の県民の機運を高めるために、経費の透明性が必要である。県民に歓迎される大会となるように、二つの大会のそれぞれの経費の見通しについて県民に公開する考えはあるか。
【理事者】
これまでも選手村の整備の取りやめや、一部の競技会場の変更、クルーズ船の活用など、大きな決定事項があれば、その都度、組織委員会の理事会や、記者発表などを通じて説明している。大会経費の見通しについても、引き続き県民に丁寧に説明していきたい。
【委員】
早急に増額分を示さないと、議会での議論もできないと思うので、全体像を早く示してほしい。
選手村について伺う。アジア大会の経費を抑え込む大きな手段の一つとして、名古屋競馬場跡地での選手村の建設を断念した。予定費用が300億円だったが、これがそのままゼロになるわけではない。ホテルなどの分散宿泊で対応するとしてきたが、組織委員会からは選手村の機能、役割への期待もあるといわれている。
大村秀章知事が組織委員会で5月8日にクルーズ船をチャーターし、ホテルシップとして選手団の宿泊施設として活用する案を発表し、11日のOCA総会でも反対する声は出なかったと報じられている。3,000人クラスの大型クルーズ船を名古屋港金城ふ頭に約20日間停泊させる計画である。
しかし、クルーズ船を単なるホテル代わりとするのなら、その代償は軽くない。金城ふ頭の接岸予定岸壁は、通常、完成自動車の輸出を取り扱うところで、ほぼ毎日大きな自動車運搬船が着岸している。愛知の自動車輸出のまさに心臓部である。そこを20日間も空けてくれというのは、港湾の職場としては相当きつい要請である。代わりの岸壁及びモータープールを確保することも大変である。名古屋港の施設にそんな余裕はない。20日間も使わずに済み、困らないのであれば、名古屋港の設備が過剰だと言われてしまう。
港湾関係者からは、今は協力する方向で検討している段階、クルーズ船の利用はまだ決定ではないと聞いた。単なるホテル代わりで港湾業務に過大なしわ寄せをしていいのか心配である。クルーズ船の利用について、港でどんな問題があるのか、港湾関係者との調整はついているのか、いつまでに利用が確定できるのか伺う。
【理事者】
クルーズ船をホテルシップとして活用するに当たっては、名古屋港の経済活動へ影響が生じないよう、また台風などの災害時の対応等について、港湾関係者と調整を行っている。
【委員】
調整を行っているというが、年内にその調整をするとなっているのか、期日を区切って話し合いをしているのか。
【理事者】
現在、まだ検討の段階であるので、関係者と共に早急に検討を進めていこうとしているが、期日を特別に切っていることはない。
【委員】
大会は海外から選手がたくさん来る大規模な国際大会である。それを今の段階で期日を区切ってないというのは、一定の見通しを立てないと、全体の準備の遅れにも繋がることだと思う。
選手村をつくらないことは経費の節約になる面はあるが、大会運営上、逆に多くの経費を必要とするおそれも少なくない。選手村よりもかえって高くつくのではないかと思う。
例えば食事の問題である。イスラム圏の国々も多く、ハラル対応が必要となってくる。そのほかにも選手団の警備、安全の確保、医療班の配置、ドーピング検査体制など、各施設に、つまり約50のホテルごとに分散して整えることが必要となる。
宿泊施設には宿泊する選手団とは別に、組織委員会としてどんな業務が必要となり、どれくらいの人員が必要となるのか、その費用はどう積算しているのか。
【理事者】
選手の警備や食事の提供、競技会場までの輸送など、選手村としての機能について、現在関係者と調整を行っているところであり、費用についても調整中である。
【委員】
クルーズ船も含めると費用が大変心配である。仮設の選手村をつくったほうが、ホテルの借り上げ、クルーズ船を含む分散宿泊よりも費用が少なくて済むのではないかと思うが、一度丁寧に試算して比較することを考えてもらえないか。
【理事者】
先ほど答弁したとおり、選手団の宿泊施設については、クルーズ船の活用を含め、現在関係者と調整を行っているところであり、費用について現時点で具体の数字を示すことはできないが、簡素で合理的、機能的な大会運営という方針の下、組織委員会や名古屋市をはじめ関係者とともにできる限り費用が少なくなるよう努めていく。
【委員】
不確定要素が多いと思う。有識者からの提言の受け止めについて伺う。今年3月にアジア・アジアパラ競技大会に関する懇談会から提言が出され、「アジアの子どもの未来のために」という新たな理念が提案された。提言の特徴は何か、どう受け止め、どう活かしていくのか、県の認識を伺う。
【理事者】
初めに特徴としては、懇談会は愛知・名古屋2026大会が県民、市民から支持される大会になるよう、事業モデルをイノベーションし、時代のニーズに応えた大会の開催を目指し設置されたものである。
そのため、ボランティアなどの県民、市民の参加を基盤に、持続可能な社会、ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、地域づくりを新たな理念を支える三本の柱として設定し、施策の方向を定めている。
次に、提言をどう受け止め、どう活かしていくかについてであるが、多様性の尊重、持続可能な社会づくりなど、現代社会が抱える様々な課題を解決するに当たり、国際スポーツ大会が果たす役割は大きいと認識している。
今後、新たな理念の実現に向け、アジアの子供の未来につながるよう、提言で示された施策の方向性を踏まえ、具体的な施策を展開していきたい。
【委員】
いろいろ課題はあるが、今日はジェンダーギャップの改善について質問する。提言では、過去の国際イベントにおける成果と課題について、ジェンダー平等への体系的な取組の不十分さがあったと述べられている。委員からは、大会を社会課題の解決の契機とする必要があると発言があった。
世界経済フォーラムの2024年ジェンダーギャップ指数が発表され、日本は146か国中118位、G7の中では最下位、アジア競技大会参加国の中でジェンダーギャップ指数調査に参加している国27か国中20位となっている。アジア・アジアパラ競技大会を契機に、ジェンダーギャップの改善をまず足元から、スポーツ団体から変えていきたいと思い質問する。
アジア・アジアパラ競技大会推進局の職員及び役職者の男女比、公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会の職員及び役職者の男女比、併せてスポーツ局の職員及び役職者の男女比、そして公益財団であり県内のスポーツ団体のまとめ役でもある公益財団法人愛知県スポーツ協会の役職者の男女比は今どうなっているのか、数値と現状認識を伺う。そして、2026年の大会を契機に、どのように変えようと考えているのか、そのためどういう戦略を立てて目標を立てていくのか、スポーツ局に伺う。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会推進局、公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会、スポーツ局のそれぞれの職員及び主査級以上の役職者の男女比、公益財団法人愛知県スポーツ協会の評議員、理事、参事などを含めた役職者の男女比についてお答えする。
アジア・アジアパラ競技大会推進局の職員は女性25.5パーセント、男性74.5パーセント、役職者は女性13.0パーセント、男性87.0パーセントである。
公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会は、女性23.1パーセント、男性76.9パーセント、役職者が女性11.8パーセント、男性88.2パーセントである。
スポーツ局は、女性33.3パーセント、男性66.7パーセント、役職者は女性23.5パーセント、男性76.5パーセントとなっている。
また、公益財団法人愛知県スポーツ協会の役職者は、女性10.1パーセント、男性89.9パーセントとなっている。
現状についてであるが、一つの指標として愛知県では、2020年12月に愛知県職員の女性活躍促進・子育て応援プログラムを策定し、2021年度から2025年度までの5年間を計画期間として、女性職員の活躍促進などに取り組んでおり、管理職に占める女性の割合については15パーセント、課長補佐級班長に占める女性の割合については25パーセントという目標を定めている。
この目標に対して2024年度における管理職に占める女性の割合は、全庁では14.8パーセント、アジア・アジアパラ競技大会推進局で14.3パーセント、公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会で5.0パーセント、スポーツ局で10.0パーセントとなっている。
また、課長補佐級班長に占める女性の割合は、全庁では27.1パーセント、アジア・アジアパラ競技大会推進局でゼロパーセント、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会では13.6パーセント、スポーツ局で42.9パーセントとなっている。
目標を達成している指標もあるが、引き続き積極的な取組が必要であると考えている。
なお、アジア競技大会・アジアパラ競技大会を活用した地域活性化ビジョンにおいては、「すべての人が活躍できる愛知をつくる」を目標に掲げている。大会を所管するアジア・アジアパラ競技大会推進局、スポーツ局としても、さらなる女性職員の活躍促進に向けて、女性職員の積極的な登用を促進することをはじめ、女性職員がキャリアや働き方について相談できる体制の整備、仕事に対するモチベーションの喚起などに取り組んでいく。
【委員】
先ほど聞いた数字では、圧倒的に女性の職員が少ない。この大会を契機に女性職員登用を進めていくと答弁したが、ぜひ積極的に増やしていくよう尽力してほしい。
平和の祭典に向けた取組について伺う。OCA憲章では2章の根本原則で、OCAはスポーツの公平な競争を通じ、アジアの若者のスポーツ、文化、教育および道徳的、身体的な資質の発達を助け、国際的な尊敬、友情、親善、平和及び環境の促進に寄与すると述べている。
また、オリンピック憲章では、オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることであると述べられている。
今、パレスチナではイスラエルによる激しい攻撃が続いている。このままでは大会参加国であるパレスチナの選手団が無事参加できるかどうか不安である。既にパリ五輪に向けての報道で、ガザ地区での戦闘によって多くの選手が競技を続けるのが困難な状況にあると実態が示されている。
そこで伺う。愛知県は「人類永遠の平和と幸福実現に努力する」という平和県宣言を行っている県である。この趣旨に照らして、平和のメッセージを発信する大会にしていくことが必要である。アジア競技大会の成功のためにも、イスラエルによる攻撃停止の声を発信すべきではないか。
【理事者】
アジア競技大会は、第二次世界大戦後間もない1951年、戦禍によって引き裂かれたアジア諸国の絆をスポーツを通じて取り戻し、アジアの恒久平和に寄与したいとの願いを込め、第1回大会がインドのニューデリーで開催されている。以来、スポーツにより友情を育み、多様性を認め合うことを通じて、国際平和に寄与する一大イベントとなっている。
アジアの45の国と地域から多くの選手団、大会関係者が参加するアジア競技大会が国際交流と相互理解を促進し、国際平和の推進に貢献する大会となるよう準備を進めていく。
なお、昨年10月16日にイスラエル、パレスチナ武装勢力間の衝突に対して、知事名でコメントを発信している。
【委員】
知事名のコメントは私も知っているが、それは10月時点のコメントであって、そこから事態はさらに悪化している。さきの衆議院の決議では、ガザ地区における人道情勢の改善と速やかな停戦の実現を求める決議が上がった。
パレスチナは参加国の一つであるから、平和の祭典としても大会にどう取り組むのか、愛知県の姿勢が問われると私は思う。
大会に向けて、まだまだ課題が山積しており、先ほども述べたが、不確定要素がたくさんあると思う。今示せないことは早期に解決し、議会に示して、議論できるようにしてほしいと要望する。引き続きしっかりチェックしていきたい。
【委員】
教員不足については、2022年度が183人、昨年度が140人、未配置があったと聞いている。今年度の状況とその原因についてまず伺う。
【理事者】
2024年5月1日現在の教員の未配置数は、名古屋市を除く本県の公立小学校で44人、中学校で61人、高等学校で52人、特別支援学校で13人、合計で170人となっている。
原因としては、特別支援学級が見込みより増加したことや、このところ増加傾向にある産休・育休取得者の代替である臨時的任用教員が不足していることが原因として挙げられる。
【委員】
その教員不足の解消に向けてどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
教員不足の解消に向けてであるが、今後、児童生徒数が減少していくことが見込まれている。教員の必要数も減少していくと想定されるため、教員不足は徐々に解消していくものと考えているが、早期に解消するため、正規教員の積極的な採用を進めている。
具体的には、来年度は小学校710人、中学校430人、高等学校350人、特別支援学校170人、合計1,660人と、今年度と比較して90人増の採用を行う予定である。
引き続き、正規教員の積極的な採用に取り組んでいく。
【委員】
正規教員を増やすという発言があった。これは大変よいことだと思う。人口減少も踏まえて、将来的には少しずつなくなっていくとのことだが、答弁の中でもあった臨時的任用教員については課題が残ると思う。
産休や育休、休職への代替の制度で、必要数を確保していくことは、非常に困難であるとも聞いた。同じ時期に例えば産休・育休が複数取得される学校において、臨時的任用教員が見つからなかったという話も聞いている。
そこで育児休業取得者などの代替制度、この現状がどのようになっているのか伺う。
【理事者】
育児休業取得者の代替については、臨時的任用などの非正規で対応することとなっている。委員が示したように、臨時的任用教員が確保できない状況の中で、仮に正規教員を充てた場合には、義務教育費国庫負担金の対象外となるため、人件費が全額県費による負担となることとなる。
【委員】
現時点では、育休、産休が取りやすい環境、制度となっているか認識を伺う。
【理事者】
産休・育休については、年度途中から臨時的任用教員を探すことが困難な状況であることから、2023年度から前倒し任用として教諭等が4月から7月までに産休・育休に入ることが分かっている場合は、人材を確保しやすい年度当初の4月から臨時的任用教員を任用できる制度となっており、2024年度からは対象職種を養護教諭、栄養教諭等に拡大して、より取得しやすい状況となっている。
【委員】
2023年度から始まった前倒し任用制度については、私も話を聞いた。7月31日までの取得が見込まれている人に対しては、途中までは2人体制で、育休、産休を取ってからは1人となる。1年間採用できるという意味でも、非常によい制度であると思う。逆に言うと、その後の8月以降に取得する人々の育休、産休の取りにくさの解消には、また課題が残る。
年度途中からの教員不足はどのようにしていくと解消されるのか。冒頭に答弁のあった170人という数が、人口減少によってゼロに向かっていくとは私は考えていない。育休・産休制度の問題解消こそが教員の未配置数ゼロにつながると思う。そのために何をするのか、ほかの自治体の先例も踏まえて答えてほしい。
【理事者】
大阪市教育委員会においては、欠員が出たときに調整ができるように、正規教員を年度当初にあらかじめ全額市費で採用し、専科指導や副担任、授業補助を行い、年度途中に欠員が発生した場合にその学校へ代替の教員として配置し、学級担任等の業務を担う特別専科教諭という制度を導入している。
この制度は、年度途中からの教員不足の対応策の一つであると考えるが、義務教育費国庫負担金の対象となっていない。教育委員会としては、育児休業取得者等が担当していた職務を正規教員が行う場合にも義務教育費国庫負担金の対象となるよう、制度の見直しについて引き続き国に要望していく。
【委員】
最後に一つ要望して終わりたいと思うが、先ほど話したとおり、この産休・育休代替の教員を確保するのは非常に困難を極めると聞いた。そもそも臨時教員を確保しようと思った場合、臨時教員は年度途中までどう過ごすのかと私は思う。
では、既に働いている教員の免許を持っている人に、この月から急に頼むといったところで、基本的には受けられる話ではないのではないか。やはり県の裁量を増やすよう、国の制度を改める必要があると考える。
その上で正規教員の人数をある程度確保しながら、人事とともに県の裁量をもっと増やして、より育休、産休が取りやすい制度となるように今後も努めてもらうことを要望する。
【委員】
私からは大きく三つ取り上げたいと思う。
まず一つ目である。新たな時代を開くチェンジメーカーを育てるよう、県教育委員会が取り組み始めた県立学校の魅力づくり、県立高等学校再編将来構想の最大の肝が中高一貫校であることは言うまでもない。そして今、県教育委員会はその成功を期して、粛々と中高一貫校開校への準備をしていると思う。
失敗が許されない取組であるがゆえに、私たちも努力、協力を惜しまず、県教育委員会をフォローするときだと私は思っている。その上で考えられる懸念を払拭する道筋を明らかにするよう、今回は国際バカロレア教育についてまず質問したいと思う。
中高一貫校のうち、津島、西尾、時習館の3校は、国際バカロレア教育の導入を目指すとしている。国際バカロレア教育では、中学校はミドル・イヤーズ・プログラム、高校ではDPと呼ばれる、ディプロマ・プログラムという教育プログラムを実施すると聞いているが、それぞれがどのような教育内容なのかまず伺う。
【理事者】
国際バカロレア教育の教育プログラムのうち、中学生を対象とするMYP、ミドル・イヤーズ・プログラムでは、国語に相当する言語と文学や英語に相当する言語の習得など8教科を学習する。教科間の関連性を重視し、学習と社会とのつながりを学ばせることに特徴がある教育内容となっている。全ての教科について日本語での実施が可能とされている。
次に、高校生を対象とするDP、ディプロマ・プログラムでは、母国語を学ぶ言語と文学や外国語を学ぶ言語の習得などの6科目に加えて、コアと呼ばれる三つの科目、課題論文、知の理論、奉仕活動を履修する。
これらのカリキュラムを全て履修して、最終試験で所定の成績を収めることにより、国際的に認められる大学入学資格を取得することができる。
全ての科目を英語で履修するものではないが、少なくとも英語を含む2科目を英語で履修していくこととなる。
【委員】
非常に多岐にわたるレベルの高い教育だと思うが、そういった教育を行うためには、通常の教員に加えて特別な人材が必要になると考えるが、どのような人材が必要になるのか。
【理事者】
国際バカロレア教育を行うためには、先ほどのミドル・イヤーズ・プログラム、ディプロマ・プログラムともに、いずれも担当する全ての教員が、国際バカロレア機構が実施するワークショップと呼ばれる研修を受講する必要がある。
また、各校にミドル・イヤーズ・プログラム、ディプロマ・プログラム等を統括するコーディネーターをそれぞれ1人ずつ配置する必要があり、教科間の学習内容の連携を図り、国際バカロレア機構との連絡調整を行うといった役割を担う。本県では、このコーディネーターについて、英語ができる、英語に堪能な教員を配置する。
こうしたコーディネーターのほかにも、少なくとも英語を含む2科目は英語で授業を行う必要があるので、英語以外の教科を英語で教えることができる人材が必要となってくる。
【委員】
私は国語の教員だったので教員経験があるわけだが、ほかの先生を見ていても英語で自分の教科を教えるのは大変ハードルが高いと思う。
英語科以外の教員が必要なわけだが、英語で高校のほかの教科を指導できる人材は今現在、本県にどれぐらいいるのか。
【理事者】
本県の県立高校の英語科の採用教員のうち、高校の他教科の教員免許を所有している者は、実人数で39人いる。所有する教科の教員免許は、国語10人、社会3人、公民12人、地歴8人、理科2人、その他の教科が9人となっている。なお、39人のうち3教科以上の教員免許を所有する者は5人となっている。
また、英語科以外の教員で高校英語の教員免許を所有している教員は18人いる。内訳は、国語9人、情報3人、地歴2人、公民1人、数学1人、保健体育1人、商業1人となっている。
【委員】
ディプロマ・プログラムは6教科必要であるが、その中で数学と自然史系は、6教科のうちの二つに当たる。全て英語でなくてもよいが、今聞いている限りだと、自然科学系で英語のダブル免許を持っている人はほとんどおらず、数学はゼロである。
そういう状況であるので、改めて質問するが、そういった教育ができる教員を今後どのように確保、採用していくのか。
【理事者】
教員の人材確保については、まず教員採用選考試験による採用が考えられる。現行の採用試験においては、複数教科の教員免許を所有する受験者に対して、一次試験で一定の加点を行っているほか、他の自治体で現職教諭として通算3年以上の勤務実績のある者に対して、一次試験の教職教養を免除する現職教諭特別選考を活用して、他の自治体で国際バカロレア教育に携わった教員を採用することが考えられる。
新規採用以外の方法としては、定期人事異動により複数免許の所有者を異動させることや、公募制度の活用なども考えられる。
また、他県の事例として、宮城県の仙台二華高校では、東北大学と連携し、外国人留学生を非常勤講師として活用を図っている。
こうした取組も参考としながら、採用や異動以外に外部人材の登用の方法も視野に入れて、人材の確保に努めていきたい。
【委員】
いずれにしても、3校予定しているので、今後できる教員を増やさなければならない。持続可能な形で人材を確保していくためには、新たな新規採用だけではなく、現職の教員を育成することも重要だと思う。
英語で教科指導ができる英語科以外の教員をどのように育成していくのか。先ほど述べたようにそういう訓練はしていないわけであるから、考えを伺いたい。
【理事者】
国際バカロレア教育を継続して実施していくためには、日本語と英語の両方が堪能で、国際バカロレア教育の趣旨を踏まえた探究的な学びを指導できる人材を育成していく必要がある。
そのためには、国際バカロレア教員養成プログラムを有する大学と連携して育成していく必要があると考えている。県教育委員会と連携協定を締結しているICU、国際基督教大学もこうしたプログラムを有する大学の一つである。今年度から国際基督教大学が開催する短期の研修プログラムに教員を派遣する取組を始めているところであり、今後はさらに連携の取組を進め、より専門的な研修への参加についても検討していきたい。
【委員】
国際バカロレアで求められる授業は、これまでの学習プログラムとは異なる、レベルの高いものであり、かつ多くは英語による授業が求められている。答弁にあったとおり、こういったものが必要になるディプロマ・プログラムは、高校1年生の秋の授業からスタートすると聞いている。ゆえに中高一貫導入校である津島高等学校の国際バカロレア授業が始まる4年後には、質疑で明らかになった特別な教員集団がいなければならない。
これまで全国で実施されていた国際バカロレア教育は失敗事例が大変多い。その第一原因は何かというと、教員の英語能力不足と言われている。英語での授業経験が少ない教員が担当して、専門用語や高度な内容を英語で効果的に伝えることが難しかったため、授業の質が低下したことが多く指摘されている。
残された期間、時間は約4年。国際バカロレア教育の成功の可否は、バカロレア教育ができる教員の採用と育成にかかっている。その課題を克服するよう、不退の決意をもって教員の確保と育成に努めてもらうよう要望して最初の質問を終わる。
二つ目に、県立特別支援学校における就労支援について質問したい。
近年の社会の変化により、新たな就労の流れが生まれたところにコロナ禍が拍車をかけ、就労はさらに多様化したと思う。
一方、障害者の就労においては、法定雇用率が引き上げられ、短時間就労でも法定雇用率に算入できるようになったこともあり、IT分野をはじめ、従来はあまり障害者の就労がなかった分野での雇用が広がっている。
特別支援学校の就労支援も、新たな分野に展開していく必要性がより高まっていると思う。障害者就労の広がりについて、私はこれまでの本会議やこの委員会、福祉医療委員会、経済労働委員会等で横断的に質問を繰り返してきたので、今回改めて質問したい。
2019年度から2023年度までを計画期間とした第2期愛知県特別支援教育推進計画では、推進方策の目標として、特別支援学校高等部卒業生の一般就労の就職率50パーセントを目指すとしていた。しかしながら、本年2月に策定された第3期愛知県特別支援教育推進計画では、就労支援に係る指標が見直され、特別支援学校高等部卒業生の一般就労については、就職希望者に対して就労率100パーセントを目指していくとしている。
第2期愛知県特別教育支援推進計画で目標としていた特別支援学校高等部卒業生の一般就労の就職率は、現状、どうなっているのか。また、第3期愛知県特別教育支援推進計画で、就労支援に係る指標を見直したのはなぜか。
【理事者】
特別支援学校高等部卒業生全体における一般就労の就職率は、第2期計画策定時である2017年度の38.2パーセントに対し、最終年度である2023年度は37.6パーセントとなっている。このような結果となった背景には、インクルーシブ教育システムについて社会の理解が進んだことにより、特別支援学級の中学生の高校進学率が高くなり、特別支援学校の高等部への進学率が低下していることにより、高等部卒業後に一般就労を希望しない生徒の割合が増えてきていることがあると考えている。
2013年度の高校進学率が約19パーセントであったのに対して、2022年度は約40パーセントが高校に進学している。また、特別支援学校高等部への進学率74パーセントが約53パーセントまで減少している。
こうした状況を踏まえ、これまで目標に掲げていた、卒業生全体における就職率50パーセントという目標ではなく、一般就労を希望する生徒の就職率、2022年度は92.9パーセントとなっているが、これを100パーセントにすることを目標とした。
今後は、一般就労を希望しない生徒も含め、生徒一人一人に合った進路の方向性を見いだすことに力を入れていきたい。
【委員】
新たな就労を特別支援学校でも進めていくという観点から、私は2021年9月定例議会の代表質問で取り上げた。県教育委員会では、障害者の新しい就労をサポートする民間企業の株式会社D&Iと、2022年3月に連携・協力に関する包括協定を締結している。
そこで伺うが、株式会社D&Iとの包括協定に基づく取組状況と成果はどうなっているのか。また、愛知県立特別支援学校就労促進アンバサダーとして、港特別支援学校の卒業生である佐藤仙務氏、有名な寝たきり社長さんに就任してもらっているが、この方はどういった活動に取り組んでいるのか。
【理事者】
県教育委員会では、障害者の就労をサポートする民間企業である株式会社D&Iと、2022年3月に連携・協力に関する包括協定を結び、その後、テレワークによる体験実習や、教員向けの研修を実施している。
2022年度は、病弱特別支援学校である大府特別支援学校で、テレワーク体験実習を行うとともに、教員向けの見学会を開催した。
2023年度は、肢体不自由児特別支援学校の港特別支援学校を加えて、テレワーク体験実習を行い、教員向け見学会には、約6割の学校から、主に進路指導を担当する教員が参加した。
生徒へのアンケートでは、8割以上の生徒が内容によってはテレワーク勤務を進路の一つとして検討できると回答し、重度の身体障害や病弱の生徒にとって、将来を考える、大変有意義な取組となっている。
今年度は、全ての特別支援学校の進路指導担当教員に、テレワーク体験実習についてのオンライン説明会を6月末に行うとともに、8月のテレワーク体験実習の参加生徒を募集していく。
また、港特別支援学校の卒業生で、ウェブ制作を行う株式会社仙拓の代表取締役社長である佐藤仙務氏については、愛知県立特別支援学校就労促進アンバサダーとして、障害のある生徒の一般就労の拡充に向けて、情報発信してもらうとともに、当事者としての体験や、一般就労した特別支援学校の卒業生からの相談事例などを基に、キャリア教育や就労支援に関するアドバイスをもらっている。
佐藤仙務氏には、特別支援学校と労働・福祉等の関係機関が、発達段階に応じたキャリア教育及び就労支援の在り方を協議するキャリア教育・就労支援推進委員会の委員にも就任してもらっている。
【委員】
新たな就労に向けて、教育委員会が少しずつ取り組んでいることは確認できた。その点については評価をしたいと思うが、その一方で県立特別支援学校では、まさにモノづくり県愛知の特徴を鏡で映し出したかのように、製造業への就労を目指す傾向が強いことが従来言われ続けていた。
その一方で、生徒の特性、適性というのは様々である。製造業へ就職したものの、ミスマッチを起こして早期辞職をしてしまう生徒もいることは、しばしば聞く。部品を組み立てるよりも、お客さんと会話することに向いている、そういう人もいる。ほかのことの方が得意な生徒がいるから、当然のことだと思う。
私は、2020年12月の定例県議会の一般質問で、本県の特別支援学校の就労状況調査、産業別就職者数を見ると、製造業への就職が半数近くに上っており、本県の特徴であるものづくり企業が就職先として突出しているといえる。一方、小売業や飲食、IT関係等のサービス業や農業関係の分野は、全国と比べて少数の就職にとどまっている。では、県立特別支援学校のキャリア教育と就労支援において、障害者雇用の新たな流れにどう対応していくつもりか、教育長に質問した。ここで改めて伺う。特別支援学校では、以前に増して製造業以外の分野への就労支援を進めていく必要があると考える。今後、新たな分野で就労の可能性を広げるために、どのような取組を進めていくのか。
【理事者】
製造業への就労については、従来から作業学習でも製造業を意識した取組を行っており、一定程度成果を上げているものと認識している。製造業以外の分野への就労支援については、就労スキルを身につけるため、現在、パソコン、ワープロに関する職業技能検定を実施しており、認定を得ることにより生徒の就労につなげている。
さらに、様々な分野への就労を進めていくため、本年7月に開催を予定しているキャリア教育・就労支援推進委員会において、サービス業など、ほかの職種における職業技能検定の開発などについても、検討していく。
また、愛知・つながりプラン2028にも掲げているが、農福連携に取り組んでいる地域の福祉施設、または企業等と連携し、小学部段階での見学、中学部段階での体験実習などを充実させていく。
今後も製造業だけでなく、生徒一人一人の特性に合った様々な分野での就労支援を進め、県立特別支援学校における就労支援の充実を図っていく。
【委員】
最後に要望する。従来述べているとおり、社会で起きている障害者の就労支援、就労の在り方は変化している。そのパラダイムシフトを意識して、私は、保護者についてももっと理解を深めるような動きをすべきではないかと思う。保護者もこの愛知県で生きているわけであるから、製造業中心の就労のイメージを強く持っている。このため、接客業やICTを活用した就労など、新たに生まれている障害者の就労を、学校、保護者、そして生徒、皆が理解するような流れをつくってほしい。
そのためには、株式会社D&I、佐藤仙務氏、民間とうまく連携をして活用していくことも重要だと思う。今までとは違った手法も検討して、今述べたとおり、民間の力をより一層活用して、新しい取組を進めてほしい。
最後三つ目の質問に移る。愛知・名古屋2026大会における文化プログラムについて質問をしたい。
2024年度を迎えた今、アジア・アジアパラ競技大会の機運の醸成や県民・市民参加の流れを加速する段階にきている。ボランティアについていえば、大会ボランティアや都市ボランティアの募集、育成が秋以降、加速すると聞いている。
コロナ禍の東京オリンピックでは、注目度が低いものになった感もあるが、オリンピック開催に当たって必須となる文化プログラムは、大会の機運醸成とレガシー創出に寄与したと総括されていると聞いている。この文化プログラムでは、伝統文化からメディア芸術、また商品、サービスまでの幅広い日本文化が発信されるプログラムを実施したと聞いている。
そこで、愛知・名古屋2026大会において、東京2020大会でも同様の文化プログラムが実施されるようだが、文化プログラムとはそもそもどういうものか。具体の事例も含めて伺う。
【理事者】
東京2020大会の文化プログラムは、オリンピック憲章及びオリンピックアジェンダにおいて、スポーツと文化の融合を促進する取組としてその実施が義務づけられていた。東京2020大会においては、公式の文化プログラムとして組織委員会が主催、共催して行う取組と、自治体や非営利団体などが行う事業を組織委員会が認証する取組があり、例えば組織委員会が主催した取組として、各方面のアーティストによる公式アートポスターの制作、また認証した取組として子供による伝統文化体験会などが行われた。
【委員】
文化プログラムは、大会の2年前までに基本計画をOCAに提出し、承認を得ると聞いている。その基本計画の策定は、現在どのような状況か、また基本計画にはどのような内容が盛り込まれる予定か。
【理事者】
文化プログラムの計画については、計画の策定に先立ち、今月11日に開催された組織委員会の理事会において、実施内容や基本的な枠組みなど、文化プログラムの基本的な方針が組織委員会から示されたところである。
この方針を踏まえて、現在、組織委員会ではOCAに提出する計画の策定に向けて検討を進めている。計画には歴史や文化芸術、自然、産業、スポーツなどといった文化プログラムとしての実施分野を示すとともに、実施体制や実施方法など、基本的な枠組みが盛り込まれるものと承知している。
【委員】
今話のあった基本計画が策定された後は、文化プログラムの実施に当たり、どのように進めていくのか。
【理事者】
OCAに計画を提出し、その承認が得られたら、この計画に基づいて実施計画を策定していく。実施計画の策定に当たっては、市町村などに対して積極的な参画を呼びかけていくとともに、主催する事業の内容の検討や多様な団体が実施する認証事業として、大会の公式の文化プログラムであることを示す認証制度の創設など、実施体制を整えていく。
【委員】
東京2020大会の開催時には、今話のあったような大会組織委員会が認証する公式の文化プログラムとは別に、地域の文化芸術団体や学校など様々な主体が行う多様な文化的取組を統一感をもって展開する仕組み、ビヨンド2020プログラムと呼ばれるものがあったと認識している。
大きなプログラムは、今の話で一貫してできると思うが、やはり全体の地域が盛り上がっていくという意味でいうと、地域の文化芸術団体や、学校など、様々な主体が地域で行うプログラムがアジア・アジアパラ競技大会とリンクしていくような工夫が必要なので、私はビヨンド2020プログラムと呼ばれていた東京大会でのプログラムに注目をしたいと思っている。
そこで伺う。東京2020大会では、ビヨンド2020プログラムとしてどのような取組が行われていたのか、また、本県では今後どのような展開を図っていくつもりなのか。
【理事者】
東京2020大会で行われたビヨンド2020プログラムは、大会の公式文化プログラムとは別に、大会後のレガシー創出に向けて様々な主体が実施する文化的事業や活動を応援する制度として実施された。全国で約2万件の事業が認証を受け、日本文化の魅力発信や共生社会、国際化につながるような様々なプログラムが行われた。
愛知・名古屋2026大会においても、組織委員会が認証する大会の公式文化プログラムのほか、開催都市として営利、非営利を問わず、様々な地域団体が行う文化的な取組などを応援する枠組みを検討していく。
このような枠組みが整備され、多くの団体が参画すれば、大会を契機とした一体的な盛り上がりを生むだけではなく、地域の文化団体や経済団体などによる活発な活動が促進されることも期待できる。様々な取組への応援を通じて、大会の機運醸成を図るとともに、大会のレガシー創出や地域活性化につなげていきたい。
【委員】
文化芸術団体と最近話をすると、やはりコロナ禍の影響が極めて大きくて、地域の文化芸術活動が先細りになっているので、何とか先細り感を払拭したいという、意見を多く聞く。
そのようなことも含めると、愛知・名古屋2026大会が愛知県の文化芸術も含めた新たな文化の発展に地域から、地域に根のあるところからスタートしていく、再生をしていくという言い方もできるかもしれないと、そういうものになり得ると思う。そういう意味で大きなオリンピックの理念に沿った形で、文化プログラムを地域で細かく展開をしてほしいと要望した上で、もう一問質問する。
大会の機運醸成とレガシー創出で、東京2020大会では、スポーツの価値、国際異文化の理解、共生社会の理解、そういった様々なものを深めるためのオリンピック・パラリンピック教育というのが小学校、中学校、高校で実施をされていた。本県でもそのモデル校が複数指定をされていて、実施をされていた。
そこでこの質問するに当たって、愛知・名古屋2026大会におけるオリンピック・パラリンピック教育はどのようになるかと教育委員会に聞いた。そうしたら、東京2020大会時には学習指導要領にオリンピック・パラリンピック教育が掲げられていたので実施をした。しかし、愛知・名古屋2026大会では学習指導要領に掲げられていないので、教科のプログラムとしての実施は難しいと。しかし、学校教育の活動の一環としてはやっていきたい、進めていきたいと、こんな話があった。
学習指導要領に位置付けがないことが根拠になるわけだが、私は、愛知・名古屋2026大会は本県児童・生徒にとって極めて有意な教育材料がたくさんある大会で、先ほど述べたスポーツの価値、国際・異文化理解、平和の問題、共生社会、いっぱい教材が転がっている。まさに総合学習等で展開できる複線的なテーマを持つものがこのアジア・アジアパラ競技大会であり、ゆえに教育委員会が主体になって行わないことについては少々残念に思う。
そこで改めてアジア・アジアパラ競技大会推進局に伺いたいが、愛知・名古屋2026大会では大会の開催を契機とした教育的取組についてどのように考えているのか。
【理事者】
県内の小中高等学校へ向けて大会の理解を深めるとともに、アジア各国・地域の文化や宗教、価値観などの多様性を学び、国際理解を促進する教材を今年度作成する予定である。この教材は、障害や共生社会への理解を深めるための学習教材である、国際パラリンピック委員会が公認している教材「I’m POSSIBLE」と併せて活用できるよう考慮して作成する。
本県の児童・生徒が地元で開催される大会への関心を高め、また、大会を通じて多様性や共生社会を学ぶことで、次世代を担う人材の育成が図られるよう、教育現場での活用に向けて調整をしっかりと図っていく。
【委員】
簡潔に県立学校における熱中症対策について質問したい。
昨年に続いて今年も大変暑くなりそうな夏を迎えるが、環境省は気候変動適応法を改正し、これまでの熱中症警戒アラートに加えて、暑さ指数が35度に達する場合に発表する熱中症特別警戒アラートを新設して、特別警戒アラートの発表期間中は、環境省が運動や外出の自粛を呼びかけ、自治体には冷房を備えた公共施設や商業施設を開放するよう求めることにより、熱中症減少を目指すという、こういった改正がされた。
この改正を受けて、教育委員会として県立高校に対してどのような指導を行ったのか。
【理事者】
今回の法改正を受けて、県教育委員会が各学校に示している熱中症予防に向けたガイドラインを改訂し、5月に県立高校及び特別支援学校に対して通知を行った。これまで暑さ指数が31度以上の場合は、原則として活動の中止や延期、活動場所や活動内容の変更等を検討することとしていたが、今回の法改正により暑さ指数33度で熱中症警戒アラートが発表されることに伴い、それぞれの活動場所における暑さ指数が33度以上の場合は活動を中止することを追記し、暑さ指数に基づいて、確実に児童生徒の安全確保に努めるよう指導している。
【委員】
暑さ指数に基づいた熱中症対策を適切に行うために、暑さ指数計測器があり、これを各学校に配備する。例えば旭丘高校はこの計測器を30機ぐらい配備していると聞いているが、この状況について伺う。
【理事者】
暑さ指数計測器については、2019年に各県立学校へ1台ずつ措置したが、今回のガイドラインの改訂を受けて、運動場、体育館、武道場などそれぞれの活動場所で同時に暑さ指数の計測ができるよう、さらに3台分を追加で措置した。各学校において対策が適切に行われるよう、引き続き取り組んでいく。
【委員】
そうすると、各学校に最低4台計測器が配備されることになるが、旭丘高校のようにたくさん持ちたいという場合は、どういった予算の支援があるのか、それぞれ高校が独自の予算でやるのか。
【理事者】
今回、追加で予算を措置した分とは別に、各県立学校には各学校で様々な消耗品を購入する予算があるため、それを活用することで、各学校の実情に応じて設置が進められている。
【委員】
そうすると、あとは現場の教員の判断によると思うので、毎年のように学校で事故が起きているので、そういった事故が起きないように、教育委員会からしっかりと指導するよう要望する。
【委員】
私からは総合教育センター跡地利活用について伺う。
総合教育センターは、愛知県の教育と文化の振興を図るために必要な調査研究を行うことを目的として、昭和23年に愛知県教育文化研究所として開始し、愛知県科学教育センター等への名称変更や名古屋市内での移転を経て、昭和49年、現在の東郷町に移転した。また、平成12年には情報教育の拠点などの機能を統合し、現在の愛知県総合教育センターと名称を変更した。
本センターは、建築後50年が経過する建物の老朽化に対応するため、施設の更新とともに新しい時代に対応し、学校、教職員、子供を多面的にサポートする教育機関への刷新を図るために、岡崎市美合町へ移転することとなっている。現在、新たな施設の整備や組織改編など、移転に向けた準備を進めていると聞いている。
本センターが隣接する愛知池には愛知池漕艇場があり、中日本レガッタをはじめとして数多くのボート競技の大会が開催されている。今述べた中日本レガッタは、北は宮城県、南は長崎県、佐賀県、熊本県など全国から選手、応援団等を含め約2,600人が参加する大会である。大会が開催されるたびに、本センター駐車場及び臨時駐車場として運動場を主催者に貸出しており、愛知県ボート協会から、今年も4月から11月まで土日を中心に延べ27日間、駐車場の借用をお願いしていると聞いた。
本センターの移転時期は2026年4月を予定しているので、駐車場を借用できるシーズンは来年までとなっている。本センターの跡地利用については、周辺の住宅地の環境に配慮しつつ、研究開発系や工業系の土地利用を考えていると聞いている。
そこで質問していく。まず、事業者選定の準備状況はどうか。
【理事者】
東郷町にある総合教育センターの跡地利活用については、センター敷地の社会的ニーズを確認するため、2022年の6月から12月までの7か月間をかけて、企業に対してアンケート方式により意向調査を行い、関心を示した企業については個別に聞き取りを実施した。
この意向調査の結果、センター敷地については、名古屋市と豊田市の中間に位置し、研究開発系や工業系のニーズを相当数確認ができたので、本県の産業力強化に資する企業に売却することとし、2023年3月にセンター跡地の利活用方針として、周辺の住宅地の環境に配慮しつつ、研究開発系・研究開発施設や、工業系・製造拠点の土地利用による本県の産業力の強化及び地域の産業振興等を図っていくことを公表した。
この県の利活用方針を受けて、東郷町において2023年12月に都市計画マスタープランが改定され、センター敷地は住居系から研究開発、工業系に改められ、研究開発施設や製造拠点の立地が可能となった。
センター跡地の事業者選定の準備状況については、来年度早々に売却に向けた公募を行い、来年度末までには事業者を選定したいと考えており、現在その公募を行うための募集要項の作成等を進めている。
【委員】
周辺住宅地の環境に配慮するとのことだが、周辺住民から跡地利用について意見や要望があるのか。
【理事者】
先ほど述べたセンター跡地の利活用方針を2023年3月に公表した後、センターが所在する東郷町の諸輪地区の役員に利活用方針を説明し、10月には諸輪地区の住民に対して総合センターの移転の経緯や跡地の利活用方針を知らせるとともに、利活用方針についての意見を募った。
諸輪地区の住民から寄せられた意見では、森や池などの自然環境を守ってほしい、騒音など周辺環境に影響が出ないようにしてほしい、行事があるときは駐車場を提供してほしいなど、自然環境や生活環境への配慮、地域の行事への協力を求めるものがあった。
【委員】
駐車場を提供してほしいという要望があったと聞いたが、今、選定を進めている事業者に対して、ボート競技大会開催時等の駐車場の借用のお願いはできるのか。
【理事者】
愛知池を会場として行われるボート競技大会の駐車場の提供については、諸輪地区の役員や住民、また東郷町からも要望があり、昨年度、センター跡地に関心を示している企業にも聞いたところ、駐車場の提供についてはおおむね好意的な返事をもらっているので、選定された事業者に対し地元の要望をお伝えする。
【委員】
何とか利用できる明るい未来が待っていそうな答弁であった。
一点だけ要望する。廃止となる2026年シーズンの競技日程は、1年前となる来年につくっていくと考えられる。そこで、解体や整地等のスケジュールも愛知県ボート協会と調整をして、大会の開催時には駐車場として利用してもらえるように調整をしてほしい。
【委員】
三つのテーマについて質問する。
まず一つ目は、不登校の生徒への対応について伺う。
かなり一般的に知られるようになってきたSDGsの第4の目標は、「質の高い教育をみんなに」である。日本においては、しっかりした義務教育体制があり、全ての子供にこのような環境を提供できているように思いがちだが、私はここからこぼれ落ちてしまっているのが不登校児であると感じている。
この教育を十分に受けられていない子供に対して、学校に来ないほうが悪い、生徒が学校に合わせなければならないという立場を取ることなく、誰一人取り残さないという思いで対応していくべきだと思っているが、不登校生徒に対する教育について、県教育委員会としての見解を伺う。
【理事者】
愛知県においても、家から全く出られない状態であったり、市町村が設置している教育支援センターや民間フリースクール等を利用していたり、校内教育支援センターを利用していたり、様々な状況の不登校児童生徒がいる。
毎年増加し続けている不登校児童生徒への対応は、喫緊の課題と捉えている。文部科学省が昨年3月に策定したCOCOLOプラン、正式名称は、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策で、主な取組として不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思ったときに学べる環境を整えることなどが挙げられている。
委員の発言のとおり、誰一人取り残さないという思いで不登校対策に取り組むことが重要だと認識をしている。
【委員】
同じ思いだと感じた。
次に、不登校の子供がどのぐらいいるのか、最新の人数を聞く。また、学校以外の施設に通っている子供の人数と不登校児童生徒数には開きがあると思うが、最新のデータで県内の小中学校の不登校の子供の人数から、学校以外の施設に通っている人数を引いたどこにも通えず自宅にいる子供の人数を伺う。
【理事者】
2022年度の調査によると、名古屋市を除いた県内の不登校の児童生徒の人数は、小学生5,545人、中学生9,883人、合計1万5,428人である。市町村教育委員会が設置する教育支援センター、学校内にある校内教育支援センター、民間等が運営するフリースクール等に通っている人数を引いた、どこの施設にも通っていないと考えられる児童生徒の人数は、小学生3,479人、中学生5,500人、合計8,979人となっている。
【委員】
私は2020年3月の教育・スポーツ委員会でもこの質問をしたが、そのときはどこにも通えていない児童生徒は約7,500人との答弁であったので、4年間で1,479人も増えたことが分かる。特に小学生が大幅に増えていると感じる。中学生はどこかに通えている子は増えていると感じた。
この児童生徒たちに何とかその子供に合った教育の機会の保障をしていかなければならない。この子供たちに誰も取り残さない教育を行うために、教育委員会としてどのように対処していくのか。
【理事者】
学校では、精神的な面でも学習の面でも取り残さないために、その子供の状況に合わせたきめ細かな対応をしている。
精神的な面では、教職員による家庭訪問、スクールカウンセラーによるカウンセリング、1人1台端末を使用したチャットや面談、別室登校による養護教諭への相談など、様々な機会に本人の気持ちや状況についてしっかり話を聞くとともに、保護者との情報共有や話合いを行っている。
また、学習の面では、ICTを活用したオンライン学習、プリントを利用した学習、校内フリースクールや市町村の教育支援センター等での個別指導など、その子に合った学びの保障に努めている。
県教育委員会としては、各市町村における学びの場や居場所を見いだす好事例などの情報共有を図り、不登校対策、COCOLOプランに沿った取組が行われるように促していく。
【委員】
先生が限られた時間の中で精いっぱい対応しているのは理解をしている。しかし、時間などの制限からできないことも多いのも事実である。子供にとっての教育の機会の保障として、十分な対応ができているとは言えないのではないかと感じている。せめて他の自治体が取り組んでいる施策を愛知県でも行うなど広げていけたらと思う。
学校に一定期間行けておらず、学校に行く前にワンステップ必要な子供に対しては、市町村が設置している教育支援センターや民間が行っているフリースクールが、子供たちの居場所や学びの場としての役割を果たそうとしている。
教育支援センターは、市町村が設置しており、正規職員が配置されているところはほとんどなく、大半が非常勤教員による指導である。そのことにより資質向上の面で取組が十分でないと感じている。
そこで、教育支援センターにおける不登校の子供への対応スキルや事例検討、ケース会議など、さらに充実させていくべきだと考えるが、教育委員会の考えを伺う。
【理事者】
市町村の教育支援センターの中には、音楽や美術などの専門知識を持った人材をボランティア教師として招聘して、魅力的な学習を行っているところもある。こうした魅力的な指導を身近で観察することは、指導者の資質向上にもつながっていると聞いている。
県教育委員会では、市町村の教育支援センターで指導に関わる人を対象とした研修を実施しており、その中で不登校の子供への関わり方や支援の在り方などを取り上げている。今後、この研修を充実させることで、指導者の資質向上に努めていく。
【委員】
教育支援センターが子供に合わなかった場合などに、民間のフリースクールが居場所の選択肢となる。フリースクールへの支援について、昨年12月議会でのますだ裕二議員の一般質問において、憲法第89条に抵触しないよう意識した代表的な取組をしている例として、東京都を挙げ、フリースクール等に通う不登校児童生徒へ直接補助金を支払う制度ではなく、フリースクール等に子供が通う保護者を対象に、教育委員会が実施する調査研究に協力してもらうことを前提に、調査協力金という形で支援する取組が紹介された。
ほかにも教育支援センターの多様な相談、支援の対応を民間のフリースクール等に業務委託するという制度が紹介された。
これらが文部科学省の不登校児童生徒支援調査研究事業となっていることを示し、愛知県もこのような制度を利用して不登校支援の充実を求めたことに対して、教育長はこの二つの調査研究事業を活用していく旨を答弁した。
しかし、実態は活用が広がっていないように感じている。今年度県内の市町村でこの二つの調査研究事業を実施している市町村は把握できているのか。
【理事者】
二つの調査研究事業のうち、経済的に困窮した家庭の不登校児童生徒に対する経済的支援の在り方に関する調査研究事業については、県内の市町村で実施しているところを把握していない。
なお、もう一つの教育支援センターの民間委託に関する調査研究事業については、今年度は募集がなかった。
【委員】
把握していないことと、一つは終わってしまったことだと思う。また、このような調査研究事業での部分的な支援ではなくて、正面から教育委員会が目指す誰一人取り残さない教育を体現するために、きちんとした補助制度を創設すべきではないか。
先ほど取り上げた質問以降、フリースクールへの補助は憲法第89条に抵触するのではという認識が広がっているように感じる。今回、憲法が専門の南山大学法学部、河合正雄准教授に見解を聞いたので、その内容を紹介する。
憲法は、人権を保障するためにあり、憲法第41条以下の統治機構に関する条文についても、人権を保障するための規定である。条文の解釈は、問題となる条文単独ではなく、関連する条文と併せて総合的に解釈をする必要がある。
民間フリースクールへの補助は、何らかの事情があって、学校教育法第1条で定める学校、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校に通うことが難しい子供の教育を受ける権利を実質的に保障するための措置であり、憲法第89条後段の解釈に当たっては、憲法第26条、教育を受ける権利や第14条、学校教育法第1条で定める学校に通う子供との実質的平等、そして第25条の要請も踏まえて考える必要がある。
憲法第26条や第14条の要請からすると、第89条後段の公の支配は、緩やかに解釈すべきであり、業務や会計の状況に関し報告を徴すなど、予算について必要な変更すべき旨を勧告する程度の監督権を持っていれば、助成は合憲とされる。
民間フリースクールが何らかの事情で学校教育法第1条に規定する学校に通うことや、通い続けることが難しい子供の受皿となっている現実が存在するのであれば、憲法第26条、第14条、第25条の観点から、むしろ補助事業を実施することが憲法上要請されるとのことであった。
つまり、憲法第89条によって民間フリースクールへ補助することが妨げられるべきではなく、むしろ憲法上保障されている教育を受ける権利を尊重すべきと考える。憲法うんぬんの理由で愛知県がフリースクールへの補助をちゅうちょすることのないようにお願いしたい。
ここで他の都道府県の例を紹介する。東京都では、先ほど取り上げた昨年度までのアンケートを書いた保護者に対し、その調査費として支援する形の制度をやめ、今年度から東京都フリースクール等利用者等支援事業として、フリースクールに通う児童生徒の保護者に対し上限2万円の補助制度を創設し、来月7月8日から今年度4月からの分の申請が始まるそうである。
鳥取県では、鳥取県不登校児童生徒支援事業費補助金を県内の義務教育段階にある児童生徒が学校以外の施設に通う場合の経費に対する支援を行うため、令和2年度に制定した。これは、市町村または市町村教育委員会が通年経費を補助した場合に、市町村等に対して補助金を交付するものである。令和3年度からは、交通費及び実習費等が補助対象経費に追加された。
茨城県では、フリースクールについて県内に所在する各施設の活動内容等を県教育委員会が把握し、積極的に周知していたが、多くのフリースクールが個人経営のため、不安定な運営となっている事態などが見られたことから、令和3年度からフリースクール連携推進事業を立ち上げ、一定の要件を満たす施設への運営費、常勤職員の人件費、フリースクールとして児童生徒が使用する施設、建物の賃借料及び管理費、教材費、図書購入費、事務用品費、その他児童生徒を支援するために必要な経費の補助、補助対象経費の実質額の2分の1以内、1施設当たり年間100万円を限度と、利用者のうち経済的な事情のある世帯への授業料等補助を実施している。
群馬県では、令和5年から群馬県フリースクール等支援事業補助金としてフリースクールに対して補助金を交付されている。また、県教育委員会で任用した専門的人材をフリースクール等に派遣し、経営施設運営等の助言など、経営基盤強化のための支援も行われている。
なお、愛知県内では田原市と大府市がフリースクールへの利用料補助を行っている。なお、補助交付先としては、田原市はフリースクールに対して、大府市は通う児童生徒の保護者に対して行われている。
コロナ禍を経て、不登校児童生徒がさらに増えており、対策が必要なことから、各都道府県市町村の制度創設は急速に広がっている。このような他の都道府県、または市町村の取組は、憲法第89条、条文は公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならないだが、第89条違反の制度と考えるのか、愛知県教育委員会の見解を伺う。また、本県でも利用料などの費用が払えず、どこにもつながれていない児童生徒をなくすため、他の実施している都道府県や市町村の例を参考にして、補助制度の創設を検討するのか伺う。
【理事者】
それぞれの自治体が、憲法違反がないものと判断して実施をしていると考えている。フリースクールに対する補助制度の導入については、憲法第89条との関係などについて、様々な意見があると承知しており、現時点では考えていないが、今後他の都道府県や市町村の取組状況について研究をしていきたい。
【委員】
研究をしていくという答弁、期待したいと思う。
次に、子供たちの学びの場として機能することが期待されているのが校内フリースクールである。今年度、校内フリースクールが県内五つのモデル校に設置された。これまでの効果をどう捉えているのか伺う。また、モデル校以外にも同様の校内フリースクールを設置している市町村もある。教育委員会にはどの市町村で行っているか、情報が入っているようである。その各市町の状況をきちんと把握して、全県内で校内フリースクールが行われるよう促していくべきだと考えるが、考えを伺う。
【理事者】
昨年度、モデル事業に取り組んだ2校では、各校でおよそ10人程度の生徒が利用した。その結果、登校はできているが、教室にいづらいと感じている生徒が安心感を持って自分のペースで学習に取り組むことができた、長期間自宅から出ることができなかった生徒が登校できるようになったなどの効果があった。
各市町村の状況については、学校別に調査を実施しており、令和5年度においては専用の教室を設置して、校内フリースクールを運営している学校は、中学校において69パーセント、小学校においては14パーセントであった。
専用の教室を設置できないまでも、空き教室等を有効活用して運営している学校を合わせると、中学校で85パーセント、小学校においては46パーセントであった。
こうした状況を各市町村の担当指導主事が参加する会議において情報共有するとともに、モデル事業の効果を発信し、各市町村における校内フリースクールの自主的な取組を今後も引き続き促していく。
【委員】
ぜひ全県内で校内フリースクールを広げてほしい。
次に、不登校の子供が使う教材について、子供の主体的な学びをサポートして、自発的に自分のペースで自分の習熟度に合った学習を進められる、タブレットに入れられる学習ソフトなどが必要であると考える。県として不登校児童生徒に対し、自ら自分のペースで学習できる教材を提供する考え、あるいは東京都が行っているように1人1台の学習端末を利用した不登校対策の各自治体の効果的な取組を紹介する考えについて伺う。
【理事者】
不登校児童生徒に対して自らのペースで学習できる教材を提供することは、有効な取組であると考えている。1人1台の学習用端末を利用した効果的な支援については、県内の市町村においても利用を始めており、よい事例については紹介をしていきたいと考えている。
【委員】
それでは、次に国際バカロレア教育について、私も委員の関連で伺っていきたい。
私立で国際バカロレア教育に携わっている人に聞くと、講師の選定は肝だといっていた。わざわざ外国まで行って専門的人材、語学もできて、そして英語以外の科目も教えられて、そして探究学習も深められるという人材を探してくるのに本当に苦労したという話を聞いた。やはり保護者や関係者からそういう心配の声も聞いているので、ぜひここに力を入れて取り組んでほしいと思っている。
国際バカロレア教育を実施する中高一貫校は、中学校3年間、国際バカロレア教育を受けた後、その後にエスカレーターで進学した高校で国際バカロレアではない普通科に転属できるのかどうか、中学入学時に80人定員の場合、80人全員が高校でも国際バカロレア教育を選ばないとならないのか、国際バカロレア教育ではない普通科に進学することもできるのか伺う。また、もし何らかの事情で欠員が生じた場合、欠員分は希望する生徒を入学させてはと思うが、高校入学時に普通科の中学から入れる可能性はあるのか。
【理事者】
本県が国際バカロレア教育の導入を目指しているのは、津島高校、西尾高校、時習館高校の3校である。それぞれの附属中学に入学した生徒は、高校生の1年生の秋頃に国際バカロレアの高校生向けの教育プログラムであるDP、ディプロマ・プログラムを履修するかどうかの決定をする。
ディプロマ・プログラムの履修者は最大で25人までを予定しているので、ディプロマ・プログラムを履修しない生徒は、津島高校だと国際探究科やほかの普通科の中の国際バカロレアではない課程を選択することとなる。
また、市町村の中学校から高校入試を経て入学した生徒についても、ディプロマ・プログラム履修者の選考を経て、履修できる仕組みにしていきたい。
【委員】
いろいろ選択肢があるのは大事だと思う。
国際バカロレア教育は、海外の大学に入るには確かに有利であると思う。しかし、日本の大学入試において、国際バカロレア教育を受けた生徒は一般の大学入試でなく、IB入試で大学受験を受ける例が大半だと聞いたが、国内のIB入試導入大学は増えてはきているものの、まだ78大学、それも学部も限られるため、希望大学の希望の学部でIB入試が行われていない可能性もある。
このような情報提供は、生徒本人や保護者にきちんと説明する場はあるのか、また途中から一般入試を目指したいと思った場合は、生徒の希望がかなうよう、何らかの配慮ができるのか。
【理事者】
国際バカロレア教育を受けた生徒が高校卒業後にどのような進路に進むことができるかについては、昨年度に開催した学校説明会でも説明したが、今年8月31日に開催する津島高校の学校説明会及びその午後にある国際バカロレア教育推進イベントや、秋に実施する予定の西尾高校、時習館高校の説明会においても、誤った選択とならないように、児童生徒に丁寧に説明をしていきたい。
また、附属中学に入学した後も生徒が適切に進路を選択できるよう、国内外で進学できる大学の情報なども含めて、しっかりと情報提供を行っていく。
次に、途中から一般入試を目指したいと思った場合についてであるが、国際バカロレア教育の導入を目指している3校については、当然のことながらいわゆる一条校であるので、国際バカロレア教育の資格を得ても仮に得られなかったとしても、高校卒業すれば大学入試を受験する資格は得ることはできる。
ディプロマ・プログラムの履修者には、できる限り最後まで修了してもらいたいと考えているが、万が一進路変更を希望した場合には、生徒の意思を尊重した上で、一般のクラスへ変更するなど、生徒の事情を考慮しながら丁寧に指導していきたい。
【委員】
小坂井高校の避難路整備について伺う。
県立小坂井高校は、昨年6月2日の豪雨の際に高校周辺が浸水した。小坂井高校生が通学に使っている道路周辺は、大きい鳥居のある五社稲荷社という神社があり、また国道151号と国道1号が交わる交差点がある。この周辺が全国ニュースに何度も取り上げられたほどの大きな被害であった。
現在、県建設局により豊川水系河川整備計画の策定、そして調節池の計画と豪雨の対策が進められている。小坂井高校では、先日5月28日の雨の際も、午後3時には生徒たちを帰宅させる判断をしたそうである。校長はじめ教職員は、生徒たちの安全のためできるだけ早く帰宅させようという方針と聞いている。
しかし、海の潮の満ち引きで急に浸水が広がってくることもあるそうだし、浸水した水の中を歩いて帰宅すると、水圧でマンホールの蓋が開いているなど、川や側溝との境目が見えなくて、誤って転落してしまうことも考えられるので、水に浸かった状態でその中を歩くことは避けたいものである。
小坂井高校から西側は低くなっており、水に浸かってしまうが、反対の南東側には豊川放水路があり、その堤防はかなり高くなっている。こちらに逃げられる避難路があれば、生徒たちは水に浸かることなく帰宅できる。
そこで、小坂井高校の生徒がいざというときでも安全に帰宅できるように避難路があるとよい。少し高くなっており、安全なグラウンドの東側フェンスに人が通れるぐらいの開口部を設け、2メートルほどある水路の上を安全に通行できる避難路を設置してはという関係者の意見もあるが、考えを伺う。
【理事者】
小坂井高校の周辺地域は土地が低く、大雨が降った際には浸水する場合もあることは認識している。委員の示した避難路については、学校に確認したところ、生徒の安全対策の一つとしてその必要性を認識しており、校内で避難路の設置について検討を進めていくと聞いている。
先ほど委員から関係者の意見として紹介のあった内容については、学校敷地からの避難路を市が所管する水路の上と国が所管する堤防に設置することから、土地の所有者である豊川市と国との調整が必要となる。
今後は、こうした調整や費用面を確認しながら、大雨の際にどのような避難が生徒にとって最も安全な方法であるのかという観点も含め、学校と相談、検討していきたい。
【委員】
私は、外国人生徒を対象とした公立高等学校の入学者選抜をテーマに質問する。
日本の人口減少による労働力不足を補うため、定住外国人をはじめとする外国人労働者が近年増加している。それに伴い、外国人児童生徒も増加していると考える。ものづくり愛知と言われている本県は、その増加率がやはり高いと思われる。
そんな中、今回は外国人生徒を対象とした公立高等学校の入学者選抜について伺う。
まず、公立高校入試において、全日制課程では外国人生徒を対象にした特別な選抜を実施しているとのことであるが、出願資格や入学検査の内容、実施される学校数について聞く。
【理事者】
全日制課程で実施している外国人生徒を対象とした特別な選抜である「外国人生徒等に係る入学者選抜」について答える。
この選抜に出願できる者は、本人が外国籍を有するか、保護者が外国籍を有する者で、日本での滞在期間が一定以下という考えから、小学校4年生以上の学年に編入学した者、また入国後6年以内の者としている。
入学検査については、個人面接及び学力検査を行う。なお、学力検査は、国語、数学、英語の基礎的な内容で、漢字にルビを付した問題で行う。
実施校については、普通科7校、工業科2校、商業科1校、総合学科2校合わせて12校で実施している。
【委員】
では、全日制課程での外国人生徒を対象とした特別な選抜の志願者は、ここ数年どのような状況なのか。また、今後の見込みについて教育委員会はどのように分析しているのか。
【理事者】
志願者数については、令和4年度で62人、令和5年度で73人、令和6年度で95人と年々増加傾向にある。新型コロナウイルス感染症の影響が薄れていく中、今後より多くの外国人就労者が入国する状況が見込まれ、その子女数も併せて増加することが見込まれることから、外国人生徒等選抜の志願者はしばらく増加傾向が続くのではないか。
【委員】
次に、定時制課程において外国人生徒を対象とした受検上の配慮を行っているとのことであるが、申請条件や配慮内容、実施されている学校数について教えてほしい。
【理事者】
外国人を対象とした受検上の配慮については、別枠の受検とはしないものの、申請により面接は個人面接とし、基礎学力検査は漢字にルビを付した問題とすることで、外国人生徒が学びの機会を得やすくするものである。
この配慮に申請できる者は、全日制課程の外国人生徒等に係る入学者選抜と同様で、外国籍を有する者、または保護者が外国籍を有する者で、小学校4年生以上の学年に編入学した者、または入国後6年以内の者としている。
実施校については、定時制課程の全ての高校30校で配慮を行っている。
【委員】
定時制課程での外国人生徒を対象とした受検上の配慮について、ここ数年申請はどのような状況なのか、また今後の見込みについて教育委員会はどのように分析しているのか。
【理事者】
申請者数については、令和4年度で147人、令和5年度で182人、令和6年度で204人となっている。全体で見ると、全日制課程の外国人生徒等選抜と同様、年々増加傾向にある。特に昼間定時制課程については、令和4年度で39人、令和5年度で61人、令和6年度で86人と急激に増加している。夜間定時制については高止まりになっている状況があるが、昼間定時制については全日制課程と同様、しばらく増加傾向が続くと思われる。
【委員】
最後に、今後の外国人生徒を対象とした公立高等学校の入学者選抜の在り方について、教育委員会はどのように考えるか。
【理事者】
全日制課程の外国人生徒等選抜の実施校の拡大や、定時制課程前期選抜のみで行っていた受験上の配慮を後期選抜においても申請できるようにするなど、これまでも状況に応じた改善を行ってきた。この制度を活用する外国人生徒も増えてきており、制度が適切に機能していると考えている。
今後も中学校関係者や保護者などから意見を聴く機会を利用して、外国人生徒のニーズを捉え、必要に応じて見直しを行うとともに、この制度についてより多くの人に知ってもらえるよう、引き続き関係者への周知に力を入れていく。
【委員】
外国人労働者を愛知県に呼び込む一つの魅力として、外国人児童生徒の環境は大きいと思う。教育委員会においても、これからまだまだ外国人生徒は増加すると考えていると思う。幅広い対応がこれから求められると思うので、これからよろしくお願いする。
【委員】
教育分野から一つ、スポーツ分野から一つ質問する。
まず、教育である。人工呼吸器を使用している子供が県立特別支援学校で医療的ケアを開始するには、申請書類を用意して校長会で検討会後、医療的ケア連絡協議会で諮るなど、手続に時間がかかり、保護者が半年ほど付き添うと聞いた。
そこで聞くが、県立特別支援学校において医療的ケアを実施する場合、どのような手続が必要なのか。また、人工呼吸器を使用する子供の場合、医療的ケアの手続に時間がかかるのはどうしてなのか。
【理事者】
医療的ケアを実施するまでの手続であるが、保護者から申請書や医師の指示書等の関係書類を提出してもらい、まず児童生徒の実態把握をした上で、校内委員会において個別のマニュアルを策定する。
次に、医師による看護師の手順等の研修の後、保護者の前で学校看護師による医療的ケアを試行して、保護者の同意を得た上で実施を決定している。
ただし、人工呼吸器は使用する児童生徒の症状により機種や設定も異なり、また自発呼吸の有無や急変のリスクなど、児童生徒一人一人の状況が異なっていることから、県の医療的ケア連絡協議会において、学校長等の教育関係者だけでなく、医療的ケア指導医等の専門的な知識を持つ医療関係者も交え、個別の児童生徒ごとに内容を審議している。
そのため、人工呼吸器を使用している児童生徒については、審議を必要としないほかの医療的ケアに比べ手続に時間を要している。
【委員】
必要な手続については理解したが、半年の付き添いは負担が大き過ぎると思う。県として、県立特別支援学校における医療的ケアの手続について、短縮や簡略化するなど今後見直しをする予定はあるか。
【理事者】
これまでも、県の医療的ケア連絡協議会における意見や他の自治体の実施状況を参考にして、新規で行う医療的ケアをスムーズに開始できるようにするための改善を進めている。
2022年度からは、主治医が認めた場合は、主治医が行う看護師への手順等の研修を、学校の医療的ケア指導医による研修とすることができるように改善した。また、2023年度からは医療的ケアの内容が比較的簡易で、看護師が研修することなく、安全に実施できると主治医及び医療的ケア指導医が認め、保護者及び学校から研修の希望がない場合は、主治医及び医療的ケア指導医による看護師の研修を不要としている。
さらに、医療的ケア連絡協議会において、真に審議が必要なものを整理し、より安全かつ早期に学校における医療的ケアを開始できるよう、県立特別支援学校における医療的ケアガイドラインを策定することとした。準備会議を昨年度から実施しており、今年度は検討会議を開き、年度末までに策定する。これにより、人工呼吸器を含め、協議会に諮る必要のないものについて、ガイドラインを基に学校で判断できるようになることから、速やかに医療的ケアを始められると考えている。
【委員】
改善が図られていることについては高く評価をしたいと思うが、ガイドラインの策定が年度末ということについて、もう少し早めることはできないか。
【理事者】
人工呼吸器を使用する児童生徒の医療的ケアについて、万が一のときは生命に関わることから、医療的な知見も十分に踏まえた上で進めていく必要がある。
昨年度は、ガイドラインの策定に向けて準備会議を2月に開催し、課題整理や方策等について検討し、今年度は8月と12月の年2回検討会議を開催して、策定に向けた検討を進めていく。
また、今年6月、10月、2月の年3回開催予定の医療的ケア連絡協議会とも連携を図り、そこに参加する多くの専門的な知識を持つ医療関係者や教育関係者にも、検討会議で出た意見等を共有して、専門的な助言等も受け、内容を確認して基準を定めるなど、丁寧に策定作業を進めていきたい。
こうしたことから、策定時期については今年度の2月以降となる見込みである。来年4月からの施行を予定しているので、今年度のできるだけ早い時期に学校や関係機関等に周知していく。
【委員】
いろいろ検討していることが分かったので、難しいことを百も承知の上で要望する。答弁にあったように人の命に関わることであるから、検討は慎重に慎重を期してだと思う。
その一方で、生徒やその家族には生活という現実に日々直面しているわけであるから、どちらに偏っても駄目で、両方やらないといけない。慎重にやりながらも、早くやらなければいけないという大変難しいことではあるが、そこをあえて要望したいと思う。
次に、あいちスポーツイノベーションプロジェクトについてである。
国が令和4年に策定した第3期スポーツ基本計画では、スポーツの成長産業化として2018年に約9兆円であったスポーツ市場規模を、2025年までに15兆円にするという目標を掲げている。
このような流れの中で、愛知県では社会課題の解決と地域活性化を図る官民連携プロジェクトの創出を目指す革新事業創造戦略の枠組みにより、昨年12月に中日新聞社からの提案であるあいちスポーツイノベーションプロジェクトを採択した。このプロジェクトは、スポーツの成長産業化、スポーツを通じた地域の活性化を目指す意欲的な取組であると認識している。
プロジェクトを進めるには多くの関係団体に参画してもらうことが重要である。推進母体としてのあいちスポーツイノベーションコンソーシアムAiSIAが今月設立されたが、AiSIAはどのような組織か。
【理事者】
6月11日に設立したあいちスポーツイノベーションコンソーシアムAiSIAは、今年10月のSTATION Aiのオープン、来年7月のIGアリーナの開業、2026年秋のアジア競技大会及びアジアパラ競技大会の開催などを起爆剤として、スポーツに関係した革新的な事業や新サービスを創出することで、スポーツの成長産業化及びスポーツを通じた地域活性化を図ることを目的とするものである。
設立時点では、中日ドラゴンズや名古屋グランパスなど、スポーツチーム14団体に加えて、競技団体、大学、経済団体、行政機関、企業など計75団体が参画している。また、設立後も参加への意向を示す問合せがある。
こうしたAiSIAの会員が中心となって、スポーツの成長産業化、スポーツを通じた地域活性化に向け連携した取組を進めていきたい。
【委員】
既に多くの団体が参画しているとのことだが、あいちスポーツイノベーションコンソーシアムAiSIAを中心としてあいちスポーツイノベーションプロジェクトとしては、どのような取組を行っていくのか。
【理事者】
AiSIAでは、参画する会員相互間で連携しながら、愛知県のスポーツから新たなイノベーションを巻き起こしていくために、三つの柱を推進していきたい。
まず柱の一つ目は、スポーツ産業を支える人材の育成である。マネジメント人材の育成、スポーツ産業の高度化を担う人材の育成などに取り組むものであり、大学生等を対象にスポーツ人材を育成する連続講座をスポーツチーム等と連携して開催する。
続いて柱の二つ目は、アスリート、スポーツチームの価値向上である。スポーツ事業の高付加価値化やスポーツのブランド化に取り組むものであり、初年度の取組としてはスポーツチーム共通の課題である集客力の向上に着目した実証事業などに取り組んでいく。
最後に柱の三つ目は、スポーツと他産業の融合である。異分野や異業種の技術、アイデアなどを組み合わせて新たな価値を生み出すオープンイノベーションを通じて、スポーツによる他産業の高付加価値化やスポーツを通じた地域課題の解決を目指していく。
【委員】
私としては、産業振興や地域活性化という視点から、AiSIAの目的に掲げられている革新的な事業、新サービスの創出に期待しており、先ほど説明のあった取組の中では、特に柱の三つ目、スポーツと他産業の融合に注目をしている。現時点ではどのような取組を想定しているのか。
【理事者】
柱の三つ目の取組としては、今年度、スポーツ関係団体、他産業、自治体等がそれぞれの技術やアイデアなどを持ち寄って、スポーツによる地域課題の解決を目指す取組を県のモデル事業として行うことを予定している。現在、AiSIAの会員等に対してモデル事業の提案を募集する準備を進めており、準備が整い次第事業を実施していきたい。
具体的な取組については、公募案件の選定後となるが、教育や観光、地産地消など、幅広い分野からの提案が想定される。事業の提案を基に、スポーツと他産業が融合した革新的な事業、新サービスの創出を目指していく。
【委員】
ここ愛知県は、プロチーム、実業団チームなど多くのスポーツチームが存在しているし、また歴史ある大相撲や世界最大の女子マラソンとしてギネス世界記録にも認定されているウィメンズマラソンなど、多くのスポーツイベントが開催されており、スポーツの成長産業化に関しては非常に高いポテンシャルを持っていると考えている。
愛知県のスポーツの成長産業化に向けて、今後どのようにこのプロジェクトを進めていくのか。
【理事者】
今年度は、スポーツチーム共通の課題である集客力の向上に関し、事業、サービスの提案を広く募集し、選定した上で、試合会場等での実証支援を行っていく。
こうした実証支援をモデル的に行いながら、集客力向上につなげていくことで、先ほど答弁したスポーツと他産業の融合の面においても、好循環が生まれることが期待できる。
委員指摘のとおり、愛知県のスポーツ産業は高いポテンシャルを持っているので、異分野や異業種の技術、アイデアなどを組み合わせて、新たな価値を生み出すオープンイノベーションの手法も効果的に用いながら、愛知のスポーツの成長産業化、スポーツを通じた地域の活性化に向けて、AiSIAの会員と共に本プロジェクトを推進していく。
【委員】
それでは、要望する。すばらしい取組だと思う。ただ、そうは言っても始まったばかりということで、成果が求められると思う。成果が出てくると予算も取れるようになって、よい循環になっていくと思うので、最初の成果はそんなに大きくなくてもよいと思うが、確実にこういう成果が出たということをまず取りに行くことを要望して発言を終わる。
【委員】
現在、公立・県立高校164校の中で学科の割合はどうなっているのか。工業系、普通科、それから商業科、総合学科、どのような割合か。
【理事者】
割合について、まず、全日制については、普通科が100校、農業科が9校、工業科が16校、商業科が15校、家庭科が15校、福祉科が4校、看護科が2校、その他の学科を設置しているところが10校、そして総合学科が14校という割合になっている。
定時制については、普通科が21校、工業科が6校、商業科が2校、そして総合学科が1校という割合になっている。
【委員】
今やデジタル時代、IT革命、さらにAI産業革命という時代にもなってきた。私は、この割合があまりにも文系に、普通科に偏り過ぎているといっても過言ではないと思うし、2022年から普通科でも情報科が設置された。当然と思うが、やはりこれからはSTEAM教育と言われる科学、技術、工学、芸術、数学、こういうものが時代の隅々まで行き渡ってきているし、これからAIがほとんどの人間のやる仕事をやると言われている時代に、STEAM教育の割合を大きくしていくことは必要ではないか。
そうしないと、ほとんどが高校卒業すると大学へ行って、就職をして、家庭を持つわけであるから、やはり早いうちにそれぞれの個性・能力、今までは偏差値とか記憶力、これが優れた人がすばらしいと言われてきた時代で、あまりにも平均化された教育をしてきたから、あまり欲がなくなってきた。ましてや海外に行って活躍しようという気持ちを持っている子供は少ないように思える。特にこれからアジアが一つの大きなマーケットであるし、貿易の面でもそれから人材の登用の問題でも、アジアが一つの商圏になってくると思う。そういう中で今からでも遅くないから、アジアで、世界で活躍できる人材をつくっていかないといけないと思う。
そういった意味で、各教科を横断するSTEAM教育、各教科での学習を実社会での問題発見、解決に生かしていくための教科横断的教育を、文部科学省も進めているので、これに基づいてバランスをもっと、STEAM教育のウエートを高くしていくことが必要だと思う。
今世界でいわゆるIT企業の経営者、幹部はほとんど理数系である。時代が大きく変わってきて、問題の答えがない時代に、新たに問題を見つけて、解決していく、自分でそれをITという道具でどんどん学習していける時代である。今の子供たちはパソコンでもタブレットでもスマートフォンでも自由に扱える、我々と違った世界にいるのだから、それを伸ばすと。突出した、稼げる大人になってもらう、稼げる人間の教育をある面でやってかないと、あまり教養だとかリベラルばかりを扱ってもいけないし、そこに日本の戦後教育の失敗の例があると思う。そういった意味で、今から変えていかないといけないと思うが、どうか。
【理事者】
今、委員からAIの時代ということで、そもそも今、愛知県の学校教育で行っていること自体をきちんともう一度足元を見直して、時代に合ったものにしていくべきだという指摘、そして発破をかけてもらったと認識をしている。
委員の指摘のとおり、世の中にIoT、そしてAIが、IT技術がぐっと出てきて、そして我々の生活、そしてビジネス自体が変わってきている。そうすると、そこに出ていく高校生たちは、当然のことながら基礎学力を持ちながらも、そういったものにアジャストできるITの能力をしっかり持った人間でなければ、世の中で活躍できないという委員の指摘は、本当にそのとおりだと思っているので、しっかりと子供たちの教育の中に埋め込んでいきたいと思う。
そういった意味でいうと、今までの特に普通科を中心としてやってきたいわゆる知識偏重、詰め込み式、暗記といった学びを変えていかなければいけない時期に来ているとも思う。その考え方としては、やはり物事の原理、または理論というものを、しっかりと理屈というものを理解した上で、そして物事がどういうふうに成り立っているかという、まさに理系の発想になるが、そういったところがきちんと理解できる子供に育てていかなければいけない。そのためには、非常によい処方箋として、AIなどを使って、子供たちがそれと対話をしながら、自分の仮説を立てて、そしてそれを結論に導いていくという、そんな学びをぜひやっていきたいと思っている。
大変ありがたいことに、今年度の予算でDXハイスクールに、職業系を中心に30校指定された。これは5年間でそういったDX人材をつくっていくという文部科学省の事業であり、1年目は1,000万円もらい、ハイスペックなパソコン、それから3Dプリンターを用意するとともに、カリキュラムの中にAI、データサイエンスを組み込んで、そして子供たちがそれをきちんと身につけた上で卒業していけるようにしていきたい。それをより広くやっていくのはSTEAM教育だと思っているので、我々としてもこれからそういったDX人材をつくるとともに、STEAM教育、要は分野横断でいろいろなところを考えられる人材をつくっていけるような、学校づくりを進めていきたい。
その一つのモデルは、今日の委員会でも質問があったが、中高一貫校だと思っている。特に国際バカロレア教育というのは英語で英語を教えていかなければならない。そういったまさにグローバルな世界で生きていく基礎をつくっていく学校であるので、しっかりとやれるように、そこを出発点として、広くそれを広げていけるように頑張っていきたいと思うので、ぜひよろしく指導してもらえればと思う。
【委員】
これから完全にIoT、AIの時代になると、AIと会話をしながらやっていって、AIに全部インプットすればAIがある程度の解決策を見つけ出してくれる。そうすると、語学力が要るそうだ。日本語能力も、もちろん英語もそうだが、やはりある程度最低のそういう基礎力は持ちながら、AIをうまく指示する人、プロンプトエンジニアというのがこれから主力になってくるが、そういうきちっとAIに指示できる、指示文を書ける、そういうエンジニアが要るわけである。
だから、あまり文系とか理系にこだわらずに、横断的なことやっていかないといけないと思うので、ぜひお願いしたい。
それから、兵庫県では2年前からSTEAM教育の実践モデル校というのがもうスタートしているそうだが、愛知県はそういうところはあるか。
【理事者】
STEAM教育のモデル校として指定されている学校はないが、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール、SSHに指定されている学校は8校あり、その学校の中では科学技術人材を育成する先進的な教育を行っている。理科、数学、工学、あとは情報系のDXも取り入れながら、AIやプログラミングなどデータサイエンスも今SSHの中では頑張って取り組んでいるので、そういった学校の取組を広くほかの学校にも周知していきたいと考えている。
【委員】
兵庫県の先駆的な取組の情報を集めて、参考にしてほしい。
それともう一点、今まで偏差値だと記憶力が重要であった時代から大きく変わってくるので、偏差値はよくなくても、違う能力を持っている子がたくさんいる。皆、子供を望遠鏡で見ているが、顕微鏡で見ると、よいところがある。それを見つけ出して、そこに特化して伸ばしていく、それも一つの大きな教育ではないか。
今までは横並びに真ん中に照準を合わせるから、できる子は塾に行って、記憶力のよい子はどんどん勉強して伸びていくけども、真ん中から下の子はほったらかしみたいな時代があって、随分悪くなった時代もあったが、それは総合高校によって蘇ってきている。
なぜかというと、高校に入ってきたときに、あなたはどういう職業に就きたいですかと夢を聞き、それに合わせた、特化したカリキュラムを組んであるから、生き生きとして子供たちが勉強している。私はそれを大いに伸ばすのが大事な教育だと思う。
当然、効果は承知の上だと思うが、どの子でも得手不得手はあるから、得手のほうを伸ばしてあげて、そしてそれを深掘りしていくと思いがけない人物が現れるわけである。そういう教育をぜひ進めてほしい。