委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月13日(水) 午後0時58分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第10款 災害復旧費の内
第1項 農林水産施設災害復旧費
第2条(繰越明許費)の内
第6款 農林水産費
第3条(債務負担行為)の内
農業総合試験場施設設備改修工事
農業近代化資金貸付金利子補給
国家戦略特別区域農業保証融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
漁業近代化資金貸付金利子補給
栽培漁業センター施設設備整備工事
かんがい排水事業明治用水西井筋地区管水路工事
水質保全対策事業占部用水地区管水路工事
水質保全対策事業高落2期地区管水路工事
経営体育成基盤整備事業三郷地区区画整理工事
経営体育成基盤整備事業東細谷地区揚水機場設置工事
経営体育成基盤整備事業東細谷地区区画整理工事
経営体育成基盤整備事業和地太田地区区画整理工事(そ
の1)
経営体育成基盤整備事業和地太田地区区画整理工事(そ
の2)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その3)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業大野瀬地区用排水路工事
農業水利施設保全対策事業巨海地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業貝吹地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業西奥田地区排水機場機械設備
工事
農業水利施設保全対策事業八王子地区排水機場機械設備
工事
農業水利施設保全対策事業宇塚地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業一本松下地区排水機場機械設
備工事
たん水防除事業小牧小木2期地区排水機場設置工事
たん水防除事業豊明東部2期地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新大江地区排水機場設置工事
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場設置工事
(その1)
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場設置工事
(その2)
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場機械設備工
事
たん水防除事業片原一色第2地区排水機場設置工事
たん水防除事業新十三沖永地区排水機場設置工事
たん水防除事業新立田輪中地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新立田輪中地区樋管工事委託契約(国土
交通省)
たん水防除事業前野地区排水機場設置工事
たん水防除事業生田第2地区排水機場設置工事
たん水防除事業平坂地区排水機場設置工事
たん水防除事業平坂地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業上郷2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新高師地区排水機場撤去工事
たん水防除事業野依地区排水機場設置工事
たん水防除事業野依地区排水機場機械設備工事
用排水施設整備事業吉根地区堰改修工事
用排水施設整備事業丹羽排水地区調節池工事
用排水施設整備事業光堂地区堰改修工事
地盤沈下対策事業木曽川用水2期地区揚水機場機械設備
工事
地盤沈下対策事業飛島北部地区排水路工事
海岸整備事業鍋田2期地区海岸改修工事
海岸整備事業東億田2期地区樋門工事
防災ダム事業春日井奥池地区ため池改修工事
防災ダム事業皿池地区ため池改修工事
防災ダム事業午ヶ池地区ため池改修工事
防災ダム事業東の池地区ため池改修工事
防災ダム事業愛敬池地区ため池改修工事
防災ダム事業口無池地区ため池改修工事
防災ダム事業本坪池地区ため池改修工事
防災ダム事業山田池地区ため池改修工事
防災ダム事業稲基池・古堤池地区ため池改修工事
防災ダム事業洞ヶ入池地区ため池改修工事
防災ダム事業彦田池地区ため池改修工事
特定農業用管水路特別対策事業平坂地区管水路工事
震災対策農業水利施設整備事業扶桑地区揚水機場機械設
備工事
震災対策農業水利施設整備事業枝下用水地区用水路工事
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備
工事(その1)
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備
工事(その2)
排水施設保全対策事業目比川河口地区排水機場機械設備
工事
排水施設保全対策事業小栗東地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業円楽寺地区排水機場設置工事
緊急農地防災事業大海用地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業大村東地区排水機場機械設備工事
吉良古川頭首工機械設備工事
坂崎揚水機場機械設備工事(その1)
坂崎揚水機場機械設備工事(その2)
第 7 号 令和6年度愛知県就農支援資金特別会計予算
第 8 号 令和6年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計予算
第 9 号 令和6年度愛知県県有林野特別会計予算
第 10 号 令和6年度愛知県林業改善資金特別会計予算
第 59 号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金について
第 60 号 県の行う農村総合環境整備事業に対する市町村の負担金につい
て
第 61 号 県の行う林道事業に対する市町村の負担金について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第7号から第10号まで及び第59号から第61号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員
会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後3時13分)
6 再 開(午後3時23分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書(1)の199ページ、特産畑作振興指導費の内容について伺う。
【理事者】
特産作物振興指導費は、お茶や漬物などの生産振興を図るための経費である。
毎年、愛知県の茶業振興大会や漬物の講習会を実施するための予算であるが、来年度は愛知県、岐阜県、滋賀県、三重県、京都府及び奈良県のお茶の関係者の持ち回りで運営している関西茶業振興大会が本県で開催されるため、負担金220万円を経費として計上している。大会行事として出品茶審査会を豊田市で、入札販売会と大会式典を西尾市で開催する計画となっている。
【委員】
本県で7年ぶりに、2024年度の関西茶業振興大会が開催され、私の地元西尾市では入札販売会と大会式典が開催される。
西尾市では、2019年に第73回全国お茶まつり愛知大会が開催され、全国の茶業関係者が一堂に集い、茶の生産技術向上と消費拡大を図るため様々な催しが行われ、盛り上がったことが記憶に新しく、大規模なお茶の行事が地元で開催されることを大変うれしく思う。
地元の茶業関係者の激励もあり、2017年に豊田市で開催された第70回関西茶業振興大会に参加した。大会式典のほか、出展茶の展示、茶業関連資機材展、茶のPRイベントとして、出品茶の販売、ご当地アイドルのライブ、体験型のコンテンツ、抹茶の石臼びき体験や無料呈茶や抹茶スイーツの販売などが会場の内外で行われ、大変にぎわっていた。前回の豊田市での大会を踏まえ、大会の内容について伺う。
まず、関西茶業振興大会の予算の詳細、目的、主催者、日程、会場など大会の内容、実行委員会や事務局がどこに設置され、今後どのような会議体で詳細が決まっていくのか、後援、協賛などはどうなっていくのか伺う。
また、生産者は出品時期に合わせて手間暇をかけて特別に栽培するが、茶業振興大会に出品することの意義は何か。また、それが本県の茶業にどのような影響を与えるのか。
さらに、大会の出品茶審査会では、どのくらいの出品数があり、茶種を誰がどのように審査するのか、どのような賞があるのか。大変な準備だと思うが、事務局側の体制についても、課題があれば伺う。
【理事者】
関西茶業振興大会は6府県で生産されるお茶の特性を明らかにし、生産技術や品質向上を図るとともに、お茶の需要拡大と茶業の振興を図ることを目的としている。
来年度は愛知県をはじめ、関係6府県と関西茶業協議会、愛知県茶業連合会、県内の関係市である西尾市、豊田市、新城市、豊橋市及び田原市の共催により開催し、4月に関係者で実行委員会を設置し、大会を運営する。なお、事務局は、本県園芸農産課内に設置する予定である。
大会全体の予算額は、関係6府県、関係市や愛知県茶業連合会の負担金や、出品茶の販売手数料などを収入として1,000万円程度を予定している。
次に、大会行事のメインとなる茶の出来栄えを競う出品茶審査会は、7月31日から8月2日までの3日間で開催する予定である。出品点数は約600点を見込んでおり、普通煎茶、深蒸し煎茶、かぶせ茶、玉露及び碾茶の5種類ごとに、お茶の見た目である外観、香り、入れたお茶の色や味について審査を行う。
審査員は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農林水産省東海農政局や6府県のお茶の研究者、お茶の販売事業者である茶商など25人程度を予定している。審査の結果、茶種ごとに農林水産大臣賞を最高賞として、日本茶業中央会長賞、全国茶生産団体連合会長賞など、全体で六つの特別賞を決定する。
入札販売会は、9月5日に西尾市の西三河農業協同組合本店で実施予定であり、茶商などを対象に出品されたお茶の販売を行う。
大会式典は、11月16日に西三河農業協同組合事務センターで開催予定であり、特別賞を受賞した生産者に賞状等の授与を行う。
また、大会の後援・協賛は、農林水産省のほか公益社団法人日本茶業中央会や全国茶生産団体連合会、愛知県茶商工業協同組合など、お茶関係の団体に依頼する予定である。
次に、審査会に出品する意義などについては、県内の生産者は特別賞の受賞に向けて勉強会を開催し、よりよいお茶を生産する努力を続けており、お茶生産者のモチベーションが高まっている。また、生産者が自らのお茶のレベルを確認する機会となり、今後の品質の高いお茶の生産における生産技術の向上につながるとともに、特別賞を受賞すれば生産者のお茶の評価が高まると考える。
最後に、大会は県職員だけで運営することができないため、関係市や県内のお茶の生産者の協力が欠かせないと考える。そのため、関係者の協力を得て、しっかりと連携していくことが最も重要である。
【委員】
品評会では、県内の生産者が上位入賞を目指して産地を挙げて切磋琢磨しながら取り組んでもらうことで、地域ブランド西尾の抹茶やとよた茶、しんしろ茶、豊橋茶などをはじめとした県内の産地、あいちの茶の知名度が向上し、茶業生産振興需要拡大のきっかけとなることを期待している。
今回大会式典は、11月16日に西三河農業協同組合事務センターで行うとのことだが、地元西尾市では11月16日、17日の2日間大会に合わせて抹茶の日を同時開催し、西尾の抹茶を中心としたブースの出展など、大会を盛り上げるPRイベントを開催するための費用として600万円を来年度予算に計上している。西尾市は2日間で約3万人の来場を想定し、茶道用抹茶だけでなくスイーツ向けにも西尾の抹茶がナンバーワンであることを広めるため、西尾の抹茶を使用したスイーツの発信に注力し、地域向上を図る場となるよう準備を進めている。可能であれば、発信力のあるゲストをキャスティングし、ブランド価値の確立を図っていく意気込みであると地元紙で報じられていた。
県内茶業の振興のために、茶業振興大会を広く県民に注目してもらい、西尾市外からも多くの人に来てもらいたい。
今回の会場の道路反対側には、年間約100万人が訪れる西尾市の観光スポットでもある、憩の農園ファーマーズガーデン・ファーマーズマーケットがあり、PRイベントが開催される週末も特に来場者が多い。この施設の来場者は西尾市内からが約45パーセント、西尾市を除く愛知県内が約53パーセントであるため、ぜひ連携してPRイベントの集客につなげてほしい。
そこで質問する。
まず、大会式典では、お茶メーカーや茶生産者など関係者の参加人数はどのくらいの規模になるのか。
また、豊田市での大会は1日開催であるのに対し、今回のPRイベントは2日間であるが、県としてどのようにPRイベントに関わり、サポートするのか。また、どのように関西茶業振興大会関連イベントをPRしていくのか、大会ポスターやビラ、ホームページ、県のネット媒体での発信、式典会場である憩の農園の事業者である西三河農業協同組合や西尾市との連携を踏まえて伺う。
【理事者】
大会式典の参加人数は、受賞者や生産者、お茶メーカーなど関係者約300人を想定している。
西尾市が実施する抹茶の日のイベントは関西茶業振興大会の関連行事として位置づけ、大会と一体的に開催する予定である。このイベントは、愛知県産のお茶をPRする絶好の機会のため、愛知県のブースを2日間設置して、県産のお茶の販売促進などを検討する。
次に、大会のPRについてはポスター及びチラシを作成し、県内の関係市や茶業関係者のほか、京都府をはじめ大会に参加する府県にも配付して大会をPRする。また、県のホームページでも、関西茶業振興大会や関連行事の内容を発信し、PRする予定である。
最後に、大会式典会場である西三河農業協同組合事務センターに隣接する憩の農園は、年間約100万人と多くの人が訪れる施設である。このため、憩の農園の来場者が関連イベントに来場するよう、西三河農業協同組合や西尾市と連携し、それぞれの広報紙、ホームページの掲載、憩の農園へのポスター掲示によりPRする。
【委員】
地元西尾市の茶業関係者に話を聞いたところ、茶業振興大会の審査会で賞を取ることがいかに難しいことだと実感した。
関西の人たちは、産地の歴史とプライドをかけて真剣勝負で挑む。中には、LEDを当てるとキラキラするような素晴らしい技術のお茶もあるとのことで、1人の農家が頑張るのではなく、多くの人が産地の今後を思い、意欲を持って本気で取り組まないと賞を取ることは難しいため、県としてもサポートをお願いしたい。
また、PRイベントでは、地元の農産物や県産品の知名度向上のための取組、特に、愛知発の新しいブランドウナギ、葵うなぎはまさに一色町の御当地であるため、関連団体とも協議して、積極的にPRしてもらいたい。
また、茶業全体の課題として、茶農家の経営力の悪化の問題、兼業農家が事業承継せずに廃業した際に、これまで農地の受け手となっていた専業農家も人手の限界や、量を作っても茶価が上がらない中で、これ以上は規模の拡大が難しいと判断すると、今後さらに放棄茶園が増えていく可能性がある。また、廃業する場合も、棚を片づけ、木だけの状態まで戻さなければならない。さらに繁忙期の人手不足、農薬や肥料・資機材の高騰、特に肥料はお茶を作るための経費が高くなっている一方、茶の価格が上がらないことから採算が取れず苦しい状態である。個別の茶農家では工場の老朽化が進んでいるが、費用の関係で何もできない状態である。
県としても「あいちの茶」振興計画(第8次愛知県茶業振興計画)に基づき、まずは担い手である専業農家がしっかりともうかる仕組み、茶業の未来に夢を持てる取組を進めてほしい。
最後に、関西茶業振興大会やPRイベントを通じて、県としてお茶の生産振興、消費拡大にどのように取り組むのか伺う。
【理事者】
関西茶業振興大会を契機として、このような大会やイベントをはじめ様々な機会を捉えてお茶の即売会等によるPRを行い、あいちのお茶の一層の消費拡大に努める。
また、品評会に出品されたお茶の特長を分析し、県内各生産者と比較することにより、栽培加工方法の改善や有望な品種の導入を進める。
なお、県内におけるお茶の栽培面積は、農家の高齢化等により減少傾向にある。栽培が行われなくなった茶園の担い手へのスムーズな集積を進めるとともに、補助事業を活用して、乗用型摘採機、茶園の被覆資材などの導入を支援し、作業効率や品質の向上を図る。
県としても関西茶業振興大会の成果を生かし、栽培指導や機械等の導入支援を継続し、今後もお茶の担い手農家の経営発展ができるよう取り組む。
【委員】
第9号議案令和6年度愛知県県有林野特別会計予算について伺う。
県有林野には尾張、賀茂、鳳来寺の三つの事業区があり、約6,000ヘクタールの民有地を有している。
まず、歳入について伺う。
予算に関する説明書(1)、県有林野特別会計歳入歳出予算事項別明細書387ページから388ページの歳入、第3款財産収入、第2項財産売払収入、第3目生産物売払収入について、生産物売払収入には林業経営によるものと鉱山経営によるものの二つがある。
そこで、新年度は、それぞれどの程度の数量、金額ベースを予定しているのか、歳入の収入見込みについて伺う。
【理事者】
生産物売払収入1億2,083万1,000円の内訳は、林業経営の木材売払いによる収入が4,668万1,000円、鉱山経営の鉱物資源売払いによる収入が7,415万円である。
木材の内訳は、主伐による木材生産が1,300立方メートルで2,322万1,000円、間伐等による木材生産が1,910立方メートルで2,346万円である。
また、鉱物資源の内訳は、粘土類が2万6,500トンで2,171万7,000円、珪砂類が17万8,300トンで5,243万3,000円である。
【委員】
林業経営による収入、鉱山経営による収入は、令和5年度当初予算と比較すると、約549万4,000円の減額である。
また、経年の収入と比較するとかなり増減があるが理由は何か。
【理事者】
林業経営の木材売払いによる収入は、令和6年度当初予算では4,668万1,000円を計上しており、令和5年度当初予算の3,547万円から1,121万1,000円増となっている。
木材生産は、主に怒田沢県有林をはじめとする模範造林地で行っており、民有林の模範となる森林施業を実施し、地域産業の振興に寄与することを目的としている。木材生産は木材需要や市況を見て、木材生産を実施する場所を決定しており、樹木の形質等により計画量が変動することに加え、販売単価を木材市場価格に基づき算定していることから、売払い収入は年度ごとに変動している。
次に、鉱山経営による収入のうち鉱物資源売払いによる収入は、令和6年度当初予算では7,415万円であり、令和5年度当初予算の9,085万5,000円から1,670万5,000円の減となっている。
鉱物資源の採掘は、瀬戸市の印所鉱区で行っており、有限な鉱物資源を計画的に採掘し、安定的な供給を行うことにより、資源の有効活用及び地場産業の振興に寄与することを目的としている。
採掘量は、県、愛知県陶磁器工業協同組合、愛知県珪砂鉱業協同組合及びとこなめ焼協同組合による需給調整会議を通じて需要動向を把握して計画量を定めており、年度ごとに変動している。
【委員】
それぞれの市況等を踏まえながら計画的に取り組んでもらっていると理解した。
続いて歳出について伺う。
予算に関する説明書(1)、県有林野特別会計歳入歳出予算事項別明細書390ページから391ページの歳出、第1款県有林野経営費、第1項県有林野経営費、第2目県有林野事業費について伺う。
県有林野事業費のうち林業経営管理費と鉱山経営管理費は、それぞれどのような支出で、どのようなところと契約を結んでいるのか。
【理事者】
林業経営管理費は主に苗木を植栽する造林事業、除伐、間伐及びつる切り等の保育事業、生育した植栽木を伐採して搬出する生産事業などの森林整備に係る歳出経費であり、令和6年度当初予算では7,750万1,000円を計上している。
生産事業などは、県が木材の需要や市況を見て、木材生産を実施する範囲や生産量を決定した上で、伐採、搬出などの作業について競争入札を行い、地元森林組合や民間事業者と契約している。
鉱山経営管理費は主に鉱物の採掘に係る歳出経費であり、令和6年度当初予算では1億745万円を計上している。
採掘事業は、県が地元窯業界に必要な鉱物量を把握した上で採掘料を決定し、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号による技術・技能を有し印所鉱区内で採掘実績のある愛知県陶磁器工業協同組合及び愛知県珪砂鉱業協同組合と随意契約している。
【委員】
続いて、事業費の中に森林公園管理運営事業費と県民の森管理運営事業費が計上されているが、主な支出の内容、令和5年度と比較してどのような状況にあるのか伺う。
【理事者】
森林公園管理運営事業費は、指定管理者への運営委託費や施設整備費が主である。
施設整備は、老朽化した施設の更新としてトイレの水洗化やそれに接続する上水道管の整備などを行う。
令和5年度当初予算の7億5,052万6,000円に対し、令和6年度当初予算では4億2,558万3,000円を計上しており、3億2,494万3,000円の減額となっている。減額の主な理由は、愛知県公共施設等総合管理計画に基づく施設の長寿命化初期改修工事の終了によるものである。
次に、県民の森管理運営事業費も同様に、指定管理者への運営委託費や施設整備費が主である。
施設整備は、県民の森の各施設に上水を送水するための揚水管が令和4年12月に漏水し、利用者に影響を及ぼしたことから、来年度、取替え工事を行う費用を計上している。令和5年度当初予算の9,366万9,000円に対し、令和6年度当初予算では1億1,062万6,000円を計上しており、1,695万7,000円の増額となっている。増額の主な理由は、揚水管取替え工事に伴う施設整備のためである。
【委員】
森林公園や県民の森の施設もかなり老朽化している部分が多くあると思うが、維持管理についてどのように考えているのか。
【理事者】
森林公園及び県民の森は、多くの施設、設備で老朽化が進んでいる。指定管理者と連携を密に取り、まずは日常の施設の維持管理をしっかりと行う。
また、県は施設管理者として利用者の安全に関わるものについて、速やかに対応する。利用者の快適さに関わるもの、例えば、トイレの水洗化、洋式化などについては、計画的に実施する。加えて、森林公園については、令和5年度に愛知県公共施設等総合管理計画に基づく長寿命化初期改修工事を実施し、屋上防水工事や空調設備改修などの予防的補修を行った。また、県民の森についても、今後、長寿命化初期改修工事を実施する予定である。
今後も、施設の維持管理については、日常点検と併せて緊急的な対応や中長期的視点に立った対応を組み合わせて、利用者の安全と快適さの確保に努める。
【委員】
それぞれ計画的に取組を進めているとのことだが、かなり老朽化しているところが多くあるため、しっかりと計画的に取り組んでもらうようお願いする。
【委員】
畜産総務費の畜産振興費について伺う。
畜産環境対策費1,570万6,000円は、牛のげっぷによるメタン対策のための予算と聞いている。今年の1月26日の新聞の県内版にもそのような記事が載っている。改めて、畜産メタン削減実証事業を実施するに当たった経緯及び事業の内容について伺う。
【理事者】
メタンガスは温室効果ガスの一つであり、国内排出量は温室効果ガス全体の0.7パーセントであり、それほど高くないものの二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きい。また、国内で排出されるメタンガス全体のうち約27パーセントが牛のげっぷ由来といわれている。
2021年5月、農林水産省が策定したみどりの食料システム戦略でも、牛のげっぷに含まれるメタンガスの排出削減について、農林水産分野での温室効果ガス削減に向けた取組の一環として位置づけられている。
また、本県でも2022年12月に改定したあいち地球温暖化防止戦略2030では、本県での温室効果ガスの排出量を2030年度までに、2013年度水準と比較して46パーセント削減する目標を掲げている。
また、環境に配慮した持続可能な畜産業の実現の動きが国内外で活発になっており、牛のげっぷに含まれるメタンガスの排出量削減についても、その一つとして研究が行われている。
このような状況の下、乳用牛の飼養頭数が全国8位の酪農県である本県でも、牛のげっぷ由来のメタンガス削減に取り組んでいく必要がある。
来年度の本事業について、牛のげっぷに含まれるメタンガスを削減する技術の確立に向けた実証試験を農業総合試験場で実施する。また、畜産農家等に対して、農林水産分野における地球温暖化防止対策の必要性の理解促進を図る。
温暖な海に生息している海藻のカギケノリやカシューナッツの殻から抽出した成分を牛に食べさせるとメタンガスが削減された報告があるため、まずは、この成分を乳牛に食べさせ、その牛の生産への影響、その牛から搾った生乳、ミルクの品質や安全性への影響について調査する。また、牛のげっぷに含まれるメタンガス削減に関する研究を先行して実施している国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構をはじめ、国内外の研究機関との連携を図りながら、実用化に向け共同研究などについても検討していく。
一方、畜産農家や飼料メーカーなどの関係者に対し、農業総合試験場での試験結果や調査結果などを踏まえ、メタン削減の取組に対する理解促進を図っていく。
【委員】
農林水産省でメタンガスの削減計画を立てたと聞くが、財源には国費も含まれるのか。
【理事者】
本事業は、次年度は全額一般財源で計上している。
【委員】
メタンガスの発生を抑える飼料として、海草やカシューナッツの殻が挙げられたが、従来の飼料と比べてコストは高いのか。
【理事者】
カシューナッツの殻は廃棄するものを利用しており、一部、飼料化及び製品化されているものもあるため、リーズナブルな価格と想定している。一方、カギケノリについては、現在、研究途中であるため、コストについても実証の中で併せて検討していくこととしている。
【委員】
温室効果ガス全体のうちの0.7パーセントを削減することに力点を置くのがよいのかどうか、若干疑問を感じるが、事業内容については理解した。
【委員】
予算に関する説明書(1)の204ページ、水産業振興費の栽培漁業センター管理運営事業費の運営委託費について、その内訳と委託内容を伺う。
【理事者】
本県の栽培漁業の取組は、県有施設の栽培漁業センターでクルマエビやトラフグなど7魚種について採卵、ふ化させて稚魚まで育てる種苗生産を行い、生産された種苗は漁業者団体が干潟などで放流している。
運営委託費1億1,005万8,000円は、県が種苗生産業務を行うための予算である。委託費の内容と内訳は、餌や資材、親魚などの購入費及び水光熱費など、種苗生産に係る費用が5,857万2,000円、電気保安業務や機器点検などの費用及び通信費などの施設の管理に係る費用が795万5,000円、人件費が4,353万1,000円である。
【委員】
この質問に至る前に、包括外部監査の結果報告書の中に栽培漁業センターの記載があった。そこでの指摘事項は、業務一式について県が同じところを契約相手として選定し続けているとのことであった。説明のあった餌代の購入費や保安費、人件費は、令和4年度以前も同じような委託内容だったのか。
【理事者】
包括外部監査で指摘された点は、固有職員の退職金を委託費で支払っていたことである。その点については、愛知県水産業振興基金運営費補助金で固有職員の退職金を出すよう予算計上している。
また、栽培漁業の委託先は、これまで公益財団法人愛知県水産業振興基金に委託して実施している。
【委員】
1億1,005万8,000円の内訳が令和4年度以前も同じようなものだったのか。
【理事者】
同じである。
【委員】
金額は変動があるが、主に三つの項目で支出していたということか。
【理事者】
金額は上下するが、内容は同じである。
【委員】
そうすると、委託せずに県が直接購入するという手段を取らないのはなぜか。
【理事者】
栽培漁業センターで行われている種苗生産の業務は、種苗生産に特化した業務であるため、昔から漁業者団体が業務で生産を行っており、現在もこの体制を取っている。
【委員】
昔からということを聞いているのではなく、なぜ委託費として購入しなければならないのかを質問している。
【理事者】
ほかにも種苗生産している民間企業もあるが、県として7魚種の種苗を購入して放流することから、7業種購入し放流するため、委託して購入している。
【委員】
質問の趣旨は、なぜ委託して購入しているのかである。需用費や役務費で直接県が購入すればよいのではないか。
【理事者】
種苗生産は非常に繊細な業務である。例えば、東北から買ってきてそれを放流すればよいということではなく、場所ごとで遺伝的多様性も考慮しなければならない。また、海の中で生き残っていくためには、より良質な種苗を確保しなければならないため、種苗を作る業務は非常に難しい。そのような業務を同じところで長くやってもらうことにより、より良質な種苗が生産できるため、これまで長い間も委託方式で、愛知県水産業振興基金に委託して実施している。
確かに民間企業でも種苗を作っている会社はあるが、そのようなところから購入すると、安定したよい種苗を大量に確保することは非常に難しくなるため、委託方式を取っている。
【委員】
愛知県でも水産試験場でいろいろな研究をしている。中には最先端の研究もあり、三河湾や伊勢湾に特化した研究もあると思う。そのノウハウが委託でないと生かせないというのはなかなか理解しづらいが、そこをもう少し分かりやすく説明してもらいたい。
【理事者】
水産試験場では種苗生産の技術開発に取り組んでいる。数年後種苗生産を開始するハマグリ、ミルクイの技術開発を行っており、その技術開発ができたため、その技術を栽培漁業センターに移管していく。栽培漁業センターでは種苗生産に特化した業務を行っている。
【委員】
栽培漁業センターでは最先端の研究成果を基に、広く愛知県に特化した技術でやっているという説明だったと思うが、そこになぜ委託してまで買わなければならないのか。愛知県が開発した技術であれば、その技術を利用して、直接、役務費や需用費で購入できるような気がするが、なぜそこにワンクッション入れなければならないのか。
【理事者】
栽培漁業の技術開発については、水産試験場で何年かかけて行っている。漁業者から例えばトラフグの種苗を放流したいとの要望が出たら、まず、水産試験場で技術開発に着手する。そして、どのくらいまで安定して生産できるかがわかったら、栽培漁業センターに移管して種苗生産を始めるという役割分担ができている。
愛知県が直営で行うことも検討したことはあるが、栽培漁業の業務は昭和54年度からやっており、できるだけこのような生産業務はアウトソーシングする流れのもと、外部委託している。
【委員】
先日、栽培漁業センターには愛知県水産業振興基金に出向した県職員が愛知県水産業振興基金の職員として業務を行っており、その職員の多くは水産試験場に所属していた職員であるという説明を聞いた。逆に、愛知県水産業振興基金の職員は現地にもいると聞いたが、今の説明では、現地の職員も栽培漁業センターにいるとのことであるため、そこがあまり理解できなかった。
県が開発した技術で稚魚を育てて放流するのであれば、水産試験場の県職員が栽培漁業センターに行けば、ノウハウはとてもよいものができると思う。
しかし、愛知県水産業振興基金の職員もいるとの話だったため、愛知県水産業振興基金のための栽培漁業センターという理解ができるのではないかということで、質問した。今の説明を踏まえ、出向した県職員の職種、栽培漁業センターでの職種、また、愛知県水産業振興基金の職員との職種の違いについて伺う。
【理事者】
職種に県職員と固有職員の別はない。県から派遣職員が9人行っており、現地の固有職員が5人いる。県からの派遣職員9人については、1人が栽培漁業部長という課長級の職員であり、統括的な業務をしている。また、栽培漁業センターは7魚種の種苗を生産しており、三つのグループがある。三つのグループのそれぞれの班長が主査として、県から3人派遣している。それぞれの班に合計5人の職員がおり、主任・技師級の職員がついている。固有職員については、生産課長という生産を統括する職員が1人おり、残りの3人が主任・技師としてそれぞれの班に配置されている。あと1人は代務員で、宿直代務員が1人いる。このように、固有職員、派遣職員の別はなく、生産業務に同じく携わっている。
【委員】
水産試験場のノウハウを持った県職員は、愛知県水産業振興基金に出向し、栽培漁業センターで、愛知県水産業振興基金の職員として責任を持って業務を行っているとの話であったため、そこが、本当に水産試験場で研究した成果が生かせる形になるのか質問した。
先ほど水産課長は、愛知県に適した魚種、地元の要望を満たしたような魚種でないといけないとの説明をした。水産試験場の成果がそのまま生かせる職場が、なぜ、愛知県水産業振興基金に出向して、栽培漁業センターの班長としてやらなければならないのか。
【理事者】
県職員について、派遣で愛知県水産業振興基金で働く期限が3年であるため、3年たったら愛知県に戻る。ずっと栽培漁業センターや水産試験場にいるのではなく、いろいろな職場をローテーションしてスキルを高める必要がある。
一方、固有職員、愛知県水産業振興基金栽培漁業部に長くいる職員は、何十年も種苗生産業務をしている。それにより種苗生産のノウハウだけでなく、機械の管理にも習熟していく。古い施設のため、壊れているところもある。機械を管理することも長いキャリアがある職員がいなければうまくいかないため、栽培漁業センターには愛知県水産業振興基金の固有職員が長くおり、その人たちを中心にいろいろな技術の伝承を図る。そこに、県の派遣職員が行き、水産試験場の技術を伝えつつ、一緒に業務に当たる形で双方の役割を果たしながら、よりよい種苗を生産していく。
【委員】
委託費で購入する稚魚や卵について、委託でなくても買える、委託ではない形のほうがより研究成果が出るならば、ぜひ検討を進めてほしい。
説明にあった保安費などは施設に関わる話のため、愛知県水産業振興基金の職員が技術の伝承のために機器を長く管理するのであれば保安費などは委託でもよいと思うが、購入費はなぜ委託して買わなければならないのか。研究しているのは愛知県のため、ぜひ検討を進めてほしい。
《一般質問》
【委員】
委託先の公益財団法人愛知県水産業振興基金の主な事業について伺う。
【理事者】
愛知県水産業振興基金は県内における水産物の安定供給と水産業の発展に寄与することを目的に七つの事業を推進している。
一つ目が、水産資源の維持増大を図る水産資源増大対策事業である。
二つ目が、漁場内の障害物の除去など廃船・漁網等の処分経費を助成する漁場環境改善対策事業である。
三つ目が、漁場内に標識灯を設置する費用を助成する漁業操業安全対策事業である。
四つ目が、漁業者の不慮の事故に対する遺族への救済金などを支給する漁業救済等対策事業である。
五つ目が、漁業経営の近代化・安定化を図るための共同利用施設の整備経費等を助成する漁業経営安定対策事業である。
六つ目が、漁業者の担い手確保のための活動への助成をする漁業者育成対策事業である。
七つ目が、漁業者団体が行う消費拡大・ブランド化の推進等の取組に対して助成する啓発普及事業である。
【委員】
七つの事業の予算額は同様か。
【理事者】
一番大きいものが、漁業経営の近代化・安定化を図るために共同利用施設の助成をする漁業経営安定対策事業であり、直近の実績で約2億円である。
また、一つ目の水産資源増大対策事業は約1億9,700万円、廃船などの処分経費は約300万円、標識灯を設置する事業は約1,900万円、不慮の事故で亡くなり残された漁業者遺族の救済金等に約60万円、先ほど説明した共同利用施設への助成金が約2億円、担い手確保のための助成金が約130万円、最後に、ブランド化の普及啓発が約90万円である。
【委員】
愛知県水産業振興基金は漁業経営の安定と水産資源の維持増大が2大事業であると理解した。
次に、愛知県の漁業の邪魔になるようなごみはどのようなものがあるのか伺う。
【理事者】
ほとんどが大きな流木や貝殻などの自然物である。また、人工物は、空き缶、ペットボトル、ビニール袋、空き瓶、昔は大きいもので、自転車、冷蔵庫、テレビなどもあった。
【委員】
処分経費300万円はあまり大きな金額ではないとの説明を聞いたが、300万円をかけたごみはどのようなごみだったのか。
【理事者】
愛知県水産業振興基金で対象としているのが、廃船や使わなくなったロープ、網、出港の妨げになる岩などの障害物であり、特に廃船や漁網など、漁業者自身で使わなくなったごみの処分費用にも充てられている。過去3年の実績だと廃船やロープ、障害物の除去に使われていると聞いている。
【委員】
世間一般で言われるごみの処分ではなく、漁業者が本当に困っているごみの処分に、愛知県水産業振興基金が費用を出して処分したとのことである。愛知県が管理している漁港もあると思うが、例えば、愛知県が管理している漁港のごみは、どのように処分しているのか。
【理事者】
県管理漁港のごみについて、管理しているのは都市・交通局であるが、漁港内に漂着、漂流しているごみは、漁港機能維持の観点から、漁港管理者が回収処理を行っていると聞いている。
【委員】
漁業者が処分しているとのことだが、漁業者を監督しているのは愛知県のどの部署になるのか。
【理事者】
漁港については都市・交通局が管理しているが、漁業者の漁業活動を所管しているのは水産課である。
【委員】
漁業者に対してごみの指導はどのように行っているのか。
【理事者】
陸と同じく、自分が出したごみはその原因者がしっかり処分すべきであるため、折に触れ指導している。漁業者も廃船等を放置しているわけではなく、ごみがある程度たまったら漁業協同組合から処理業者に委託して処理している。
【委員】
愛知県水産業振興基金で支出した漁場環境保全のための費用は、本来は、愛知県水産業振興基金が支払うべきものではないと思うがどうか。
【理事者】
愛知県水産業振興基金は、漁業振興のために漁業者が困っていること、漁業者のためになることを補助として行うことを目的として設立された基金である。ごみを捨てる場合の費用は発生源である者が負担すべきである。当然、原因者である漁業者の自己負担はあるが、その一部を補助しているため、愛知県水産業振興基金の業務としては正当なものだと考える。
【委員】
近年、いろいろな産業においても担い手不足による事業承継の課題がある中で、人の営みの基本が食の根幹を担う一次産業であり、その担い手不足や就業者不足も深刻な状況である。
そこで、農業分野における女性の活躍推進について伺う。
女性の農業への参画は、戦後から令和にかけての変遷が農林水産省のホームページにも記載されている。高度経済成長期には、男性の農外就労機会の拡大によって、三ちゃん農業への形態変化や、稲作機械の導入などによる省力化等で、男性が農外就労していても休日の稲作作業が可能になったことにより、女性が生活改善や特産品づくり、農産物の直売などの起業活動に取り組めるようになったことなど、女性ならではの発想や知恵を持って女性の資産形成に一定の役割を果たし、自らの意思によって経営等にも参画してきたとのことである。
その後、農林水産省は農山漁村の発展促進に向けて女性の三つの能力、知恵、技、経験を発揮してほしいという願いを込めて、農山漁村婦人の日、後の農山漁村女性の日を農作業が比較的少ない毎年3月10日に定めた。平成3年には、西暦2000年に向けての新国内行動計画が定められ、翌年にはそれを具体化するために中長期ビジョンが策定され、女性の参画促進、家族経営協定の締結及び女性の起業支援等が明記された。それらを経て、平成11年に社会全体で性別に関わりなく個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現を目的とし、男女共同参画社会基本法が施行された。農政においても食料・農業・農村基本法で男女共同参画の規定が盛り込まれた経緯がある。
これに基づき、男女共同参画の普及啓発、家族経営協定の締結促進、企業や6次産業化への支援、認定農業者になるための研修などが各都道府県でも実施されるに加え、強い農業・担い手づくり総合支援交付金や、農山漁村振興交付金等の事業においても女性活躍推進に向けた措置が設けられた。
このように女性農業者の地位向上や農業経営の女性参画推進に取り組みながら平成25年度に農林水産省が立ち上げた農業女子プロジェクトによって女性農業者の意識もさらに高まり、改革や経営力の発展、自動車や農業機械、衣料品メーカーなど、女性でも扱いやすい農機具や自動車等の開発などに携わり、女性も働きやすい環境づくりが女性の手によって整えられた。また、女性ならではの取組によって農園や農産物への付加価値も高められている。
愛知県では、1994年3月にあいち農山漁村女性プランを策定し、その後二度改定があり、2016年には第4次となるあいち農山漁村男女共同参画プラン2020を策定し、男女共同参画による活力ある地域社会の形成という基本理念に基づき、パートナーシップ経営で輝く農林水産業の実践や、女性が活躍する地域社会への実現を推進した。その結果、女性就農者の増加や女性による地域農政への提言などの機会も増え、新型コロナウイルス感染症による経営への影響や労働環境の変化、スマート農業の促進など、環境の変化がある中、2021年3月に策定されたのが第5次のあいち農山漁村男女共同参画プラン2025だと理解をしている。そこで、プランの進捗状況、家族経営協定の締結数及び女性役員がいる農業法人の割合について伺う。
【理事者】
あいち農山漁村男女共同参画プラン2025では、ワーク・ライフ・バランスの取れた役割分担を基本的施策の一つとして掲げており、具体的な取組として、家族経営協定の締結を推進している。
家族経営協定とは、農林漁業経営を共同で営むために、経営主やその配偶者、後継者などが家族内で話し合い、一人一人の給料や休日等の就業条件、経営方針や営農計画等についての協定を結ぶものである。
プランでは、2025年度までに1,883戸締結することを目標値としており、進捗状況は、2022年度末時点で1,832戸締結している。また、経営発展につながる女性の活躍促進を基本的施策の一つに掲げており、具体的な取組として、女性の経営参画につながる法人化を推進している。
本県における女性が役員となっている農業法人の割合は、2025年度までに50パーセントとすることを目標値としており、進捗状況は、2022年度末時点で47.65パーセントである。
【委員】
女性が地域で活躍するためには経営の参画だけではなく、様々な場面で女性の活躍が必要不可欠である。
そこで、県内の農業協同組合の女性役員の割合、農業委員や農地利用最適化推進委員に占める女性の割合について伺う。
【理事者】
あいち農山漁村男女共同参画プラン2025では、政策や方針決定の場での女性の活躍促進も基本的施策の一つとしており、地域のリーダーとして活動する女性の発掘、育成を図り、農業協同組合役員や農業委員などにおける登用割合を高め、女性の意識向上、社会参画を推進している。
プランでは、2025年度までに県内の農業協同組合の女性役員の割合を15パーセントとすることを目標値としている。2022年度末時点で15.3パーセントであり、目標を達成している。
また、農業委員や農地利用最適化推進委員における女性の割合は、2025年度までに15パーセントとすることを目標としているが、2022度末時点で10.5パーセントのため、県農業会議等関係団体に対して働きかけを行うなど、引き続き登用率の向上に取り組む。
【委員】
あいち農山漁村男女共同参画プランの推進においては、モデル的な取組事例を広く紹介してもらい、世の中に広めることも大切だと思う。そこで、県内の女性参画事例があれば伺う。
【理事者】
県内の農業への女性参画の一例は、本年2月に先進的な経営理念で地域社会に積極的な役割を果たしている若手農業者らを表彰する中日農業賞の優秀賞を受賞した碧南市の永井千春氏の活動が挙げられる。永井千春氏は、地元のブランドニンジンであるへきなん美人やタマネギを栽培しており、2016年に県青年農業士の認定を受け、2018年には碧南市青年農業士会の代表を務めた。また、地元の生産者有志でニンジン・タマネギPR会を立ち上げるとともに、本人が管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロの資格を生かした食育活動や、SNSによる情報発信などに取り組んでいる。産地のブランド力向上に貢献するとともに、農福連携を通じて障害者の就労や生きがいづくりの場を生み出すなど、地域貢献にも取り組んでおり、女性農業者や地域の若手農業者の中心的存在として積極的に活動している。
【委員】
最後に、女性のさらなる農業分野での活躍に対し、今後どのような取組を考えているのか伺う。
【理事者】
農業分野で女性に活躍してもらうためには、誇りを持って農業に取り組む女性の経営参画を促進するとともに、自らのキャリアを生かした社会参画も促進する必要がある。
県ではプランに基づき、女性農業者を対象としたセミナーや、リーダー育成研修などを開催して女性農業者が経営参画や社会参画に必要な知識、技術の習得及び活躍できる場の設定を支援し、男女が対等に活躍できる地域社会の実現を目指している。
こうした取組は継続した実施が必要なため、今後も、女性の活躍推進に向けた取組をしっかりと進める。
また、現行プランにおいては2025年度までの5年間を対象期間としているため、来年度は、次期プランの作成に向け、農業者に対して男女共同参画に関する意識調査を実施するなど、現行プランの効果を検証する。
【委員】
最後に三点要望する。
まず、地方では人口減少という大きな課題がある。人口減少を食い止めるには若い女性が都市部に流出することを食い止めることだともいわれているため、ぜひ女性が活躍できる魅力ある農業づくりをしてもらい、女性に地方に戻ってもらう。
次に、今後来ると言われている食糧不足や、現に抱えている担い手不足、耕作放棄地の解消などの課題も解決しなければならないため、現在の農業では、作って終わりではなく、様々なアイデアを用いて創意工夫しながら加工し、販売戦略なども考える6次産業化も進んでいる。そこには多くの女性の知恵や活躍もあるため、そのような環境を縮小させることなく広げて健康志向の向上や環境に配慮した取組、海外労働者の受入れによるネットを駆使した口コミでの海外への販路の拡大など、スマート農業を用いた省力化と生産力の向上に取り組んでもらい、持続可能な農業をつくる。
最後に、現在取り組んでいる農福連携について、障害を持った人には男性も女性もいるため、男性だけでなく女性からのサポートも必要である。しっかりとしたサポート体制を整えて本来の目的である障害者の就労、自立につなげてもらいたい。
以上のことから、人口減少や担い手不足、耕作放棄地の増加、就労先となる企業の存続にしても、さらなる女性の活躍でこれらの課題を解決できるのではないかと考えるため、新しい農業形態を構築していくべきである。
そのために、女性がさらに農業にやりがいを持って気軽に参入できるような支援体制を、国をはじめ、愛知県でもしっかりと取り組んでほしい。
【委員】
農作業事故について伺う。
現在の国会で議論が進んでいる食料・農業・農村基本法改正案では、望ましい農業構造の確立について、多様な農業者により地域を挙げて農業・農地を守る内容が含まれている。これは、基幹的農業従事者が今後20年で現在の4分の1の30万人に減る予測もある中で、これまで担い手に政策が集中し少数精鋭化してしまったこと、高齢化が進んで、担い手だけでは農業や農地を維持できないという強い危機感が背景にある。
この多様な農業者には、安定的な農業経営を営む基幹的農業従事者のほか、定年退職後に本格的に農業に時間を割くようになった高齢者や新規就農する若者、女性、移住者、外国人など様々な担い手や支え手が含まれている。例えば、農業分野では来年度から5年間の受入れ上限が、現在の3万6,000人から倍の7万8,000人となり、同様に漁業も枠が倍増し、林業や木材産業の枠は新設されるとの報道や、育成就労では、これまでの技能実習ではなかった稲作や肉用牛を含む農業の全分野で就労が可能となり、転籍や既存の農作業受入れ方式に加えて派遣形態での就労も認められる方針であるとの報道があった。
このように外国人材を含む多様な人材が農業現場で働くなら、農業が安全な産業で安心して働ける環境でなければならない。しかし、農林水産省が本年2月に公表した2022年度の調査では、全国で農作業事故による死亡者は238人であり、前年から4人減ったものの、農業従事者10万人当たりでは、前年より0.6人増えて11.1人となり、過去最高値である。これは、全産業平均1.2人の10倍近い数字であり、農業における死亡事故の発生率は、ほかの産業に比べてかなり高水準で推移している。また、危険な作業が伴う建設業の5.9人の2倍の発生率となっており、数字からは、農業は危険と隣り合わせの産業であるといえる。
農作業死亡事故の内訳は農業機械に関するものが最も多く、64パーセントで152人を占めており、その約半分の72人が機械の転倒・転落が原因である。最近では熱中症が原因の死亡事故が12パーセントで29人を占め、その割合が増加傾向である。また、死亡者は高齢者が多く80歳以上が全体の42パーセント、65歳以上が86パーセントと、年代に偏りがある。
そして、昨年10月、私の地元西尾市の畑でトラクターがひっくり返り、下敷きとなって82歳の男性が胸部圧迫のため死亡するという事故が起こった。報道によると、畑を耕している中、トラクターが斜面を上った途中でバランスを崩し、ひっくり返った可能性が高いと検証されていた。また、西尾市では、昨年7月に畑で90代の女性が倒れているのが発見され、熱中症の疑いで緊急搬送されたが死亡したという事故もあった。
このような痛ましい死亡事故のみならず、死亡以外の事故も多くあると推測されるが、農作業では災害事故の発生確率に関する豊富な統計データはないに等しいため、けがなどの死亡以外の災害を含めた農作業事故のリスクを体系的に捉えることは非常に難しく、農作業事故の全体像がつかめていないのが現状である。
質問するに当たり、確認できた調査は主に三つある。
一つは厚生労働省の労働災害・死亡災害件数の集計である。これは、労働者死傷病報告を出したことにより、所轄の労働基準監督署が調査して死亡労働災害を把握した際に作成する死亡災害報告を集計したものである。死傷病報告の対象となるのは、労働安全衛生法で保護の対象となる雇用されている労働者であり、ここから分かるのは業務上で死亡した人数である。
もう一つが先ほど紹介した農林水産省の農作業死亡事故調査である。これは厚生労働省の人口動態調査の死亡死傷表等からの情報を利用して集約している。このように集計するため、公表は2年遅れになる。これは労働者だけでなく、労働者でない人、自営農家者も含まれ、農作業従事中など全ての農作業の死亡事故の件数が含まれているが、けがは含まれていない。
最後の一つが、全国共済農業協同組合連合会の行っている調査である。これは、共済金支払いデータに基づき、農作業事故の発生状況について分析したものである。具体的には全国共済農業協同組合連合会の様々な共済のうち、事故状況説明が確認可能な傷害共済と自動車共済を対象としており、その中から農作業事故を抽出したものであり、けがを含めた事故全体の把握が可能である。この調査の最新のものが、全国共済農業協同組合連合会が昨年8月に農林水産省が主催した令和5年秋の農作業安全確認運動推進会議の中で報告されたものである。約3万6,000件の共済金支払いデータに基づき農作業事故の発生状況を分析した結果、傷害事故の年間発生件数は死亡事故の約266倍であり、精神的・肉体的な障害が継続する後遺障害を伴う深刻な事故は死亡事故の2倍に上ること、そして、この分析データの割合を先ほどの農林水産省の調査の令和3年の年間死亡者240人に当てはめると、266倍となるため、年間の農作業事故が発生している件数は約6万5,000件、これを割ると全国で1日当たり約180件の農作業事故が発生していると推計できる。農作業事故の全体像から考えると、公表されている死亡事故は氷山の一角であることがわかる。
農業の将来を多様な農業者に託すなら、より安全性の高い環境への改善が必要である。そのためには、地域ごとにけがを含めた農作業事故情報の正確な実態把握と分析が肝要であるが、事故情報を吸い上げる法的な仕組みがないことが問題である。通常は、労働安全衛生法が適用される労働者に労働災害が発生した場合は、事業主が所轄の労働基準監督署長に労働死傷病報告の提出義務があるが、そもそも自営の農業従事者は労働者に当たらないことから、死傷病報告の義務がなく、事故の情報を把握するすべはなく、明確な加害者がいない限りは自己責任であるとしか言いようがない。だからこそ原因を追求し、再発防止につなげるなどの作業が行われない。
これらの農作業事故の実態を踏まえ、何点か伺う。
本県では、どのような仕組みで農作業事故の情報を把握しているのか、死亡事故以外の把握についてはどのように行っているのか、そして、本県における農作業事故の発生状況、種類と傾向、どのような年齢割合で、事故の背景にどのようなことがあると分析しているのか。
【理事者】
本県では、農作業事故防止対策に生かすため、関係機関の協力を得て県内で発生した農作業事故の軽傷から死亡までの情報を収集している。
農業経営課では、消防署が把握した農作業事故情報を所轄する農林水産事務所農業改良普及課に情報提供してもらうよう防災安全局に協力を要請し、消防署が把握している農作業事故の情報を随時収集する体制を取っている。また、農業改良普及課では、消防署からの農作業事故に関する情報のほか、市町村や農業協同組合が把握した農作業事故情報も随時収集している。加えて農業経営課では毎年5月頃、全国共済農業協同組合連合会から農作業事故による共済の活用実績の情報提供を受け、事故情報を収集している。
こうした情報を農業経営課で集約し、トラクターの転倒による事故などの具体的な発生事例を事故防止の注意喚起に活用し、農作業事故発生防止に取り組んでいる。
農業経営課で把握している令和4年の農作業事故の発生件数は80件で、近年減少傾向である。農作業事故の発生原因別に見ると、圃場での転倒や転落が28件、草刈り機などの農業機械による負傷が14件と多くなっている。事故発生件数の年齢割合は、40代以下が19パーセントであるのに対し、50代が16パーセント、60代が20パーセント、70代が30パーセント、80代以上が15パーセントであり、70代が最も多い。
このように高齢者で事故が多いのは、全農業従事者のうち70代の占める割合が29パーセントと高いこと、こうした年代では運動機能や認知機能が低下傾向にあることが背景にあると考える。
【委員】
熱中症を原因とする事故は特定が難しいと思うが、近年、大変猛暑であり、農業は一人作業が多く、周囲の目も届きにくいこともあるため、家族などの近い人が効果的に注意喚起できるようなものがあるとよい。農林水産省が熱中症対策をはじめ、各種作業の安全を普及啓発するイラストのステッカー作っており、データをホームページから印刷して使うものがある。このようなものを配布し、目に付く場所に設置することや、事故のさらなる分析のために、農機メーカーや関係団体から情報収集をしてもらいたい。
昨年、厚生労働省が安全衛生対策として、家族経営の農家など、個人事業主の労災事故の実態把握する仕組みづくりを検討中との報道があった。実効性が担保されるかまだ不明だが、具体的には休業4日以上の死傷事故を起こした場合、労働基準監督署に情報を提供するものである。このような国の動向を見つつ、県として把握した農作業事故の全体像を基に、農作業安全対策を現場へ還元し、具体的には指導体制の整備やより実効性のある研修を行い、農作業事故を減らすことが重要である。
農作業安全に関して農林水産省はこれまで、春と秋に農作業安全確認運動を展開してきた。シートベルトの装着呼びかけや、近年では農業機械事故対策に焦点を絞り、農家への注意喚起を重点的に行い、農機死亡者を2022年までに2017年から半減させ、105人とする計画だったが、結果は152人で未達成であった。研修の事故予防効果は立証されている一方、実効性に課題がある。これを踏まえ、本年2月に農作業安全対策全国推進会議で、来年度の農作業安全対策の推進方針と取組が発表され、より現場の実情に即した知識を取得してもらうことが重要であるとして、来年度からはこれまでの農作業安全運動に変わり、農家への研修を実施する強化期間を設けること、2024年から2026年までの3年間を集中対策期間として、2026年の農作業事故全体の死亡者を2022年から半減させて、119人以下とする新たな目標が掲げられた。具体的には、5月から7月の強化期間には熱中症対策を、農業者が受講しやすい農閑期12月から翌年2月の強化期間には最大の事故要因である農業機械事故の安全知識の向上をテーマに、農林水産省が作成した分かりやすいコンテンツを使用した基礎研究と、農機の操作方法についての実施・実践研修を、農作業安全に関する指導者を活用して実施し、研修会の受講を農家に促そうとしている。また、推進目標として、全ての都道府県で研修実施回数を令和5年度よりも増やすことを掲げている。
本年2月現在、農作業の安全に関する指導者は、全国で行政、農業協同組合、農機メーカー、販売店の職員など約5,300人が育成されているが、地域で実施されている研修の約55パーセントの指導者しか活動できていないことから、農林水産省は指導者の育成と活動の推進に力を入れ、来年度の指導者育成研修の実施回数を、今年度の6回から7回に増やす取組を行う。また、農作業安全研修において指導者の活用を促すため、地域内の研修等をリスト化した研修会リストの作成と、都道府県が取りまとめた機関による協議会内の農作業安全に関する指導者リストの整備を行い、関係機関で共有を進め、参加機関による指導者のマッチングを推進する。その他の取組として、注意喚起の実施、都道府県の地域単位の推進体制の強化について、農業者を対象とした農作業安全に関する研修の開催など、県や地域の段階において農作業安全対策を効果的に講じるためには、行政、生産者団体、農業者や販売店などの関係機関が事故情報や普及啓発方策を共有し、一体的に取り組んでいくことが重要であるとして、地域段階の協議会の設置が求められている。
関連して、労働安全衛生法の規則改正が本年4月に施行されることに伴い、個人農家や農業法人が雇用形態によらず雇い入れた労働者に対し、農作業中の事故防止を指導する雇入れ時教育の省略規定が廃止される。これまで全産業共通の義務であった事故時の応急措置などの4項目に加え、機械の危険性や安全装置の保護具の性能・取扱方法など各作業の手順、各作業開始時の点検の4項目を新たに義務づけるものである。違反すると罰金を科される場合もあり、農作業安全を事業主から意識づけするためには非常によいと思うが、どのように周知していくかが課題である。
このような農林水産省の運動方針を受けた愛知県の動向や、雇入れ時教育の変更点などの周知について伺う。
農林水産省の資料では、より多くの農家に研修を行った県のほうが死亡者が減る傾向があると分析され、第二の推進目標として研修実施回数を増やすことになっている。これまでの本県における農業機械事故や農作業中の熱中症に対する啓発、講習会・研修の実績、どこで誰を対象にどのように行われているのか、本県で労働者を雇用する事業者、経営体のうち、常雇い・臨時雇いの人数、開催時の課題について伺う。また、農作業安全に関する指導者研修を受けている人数、県職員ではどのような人が受けているのか、指導者リストや研修会リストは公表されているのか、その他の取組の地域段階の協議会は、本県でどのように設置され、注意喚起を行っているのか、雇入れ時の省略規定廃止ではどのように周知を図るのか伺う。
【理事者】
本県では、農作業事故防止を目的として、農繁期である4月から5月及び9月から10月を、熱中症防止を目的として7月を農作業事故ゼロ運動強化月間としている。
本年度は、農作業事故防止と熱中症予防に関するリーフレットを約1万部作成し、強化月間期間中に関係機関を通じて農業者等に配布し、農作業事故防止を啓発している。また、農業協同組合、市町村に対して広報紙への農作業事故防止や熱中症予防に関する記事の掲載を依頼し、農作業事故防止に取り組んでいる。
農作業安全講習会については、農業者が集まる機会を捉え、農業改良普及課が実施している。令和4年度は298回、6,657人を対象に実施し、農作業事故や農作業中の熱中症予防に取り組んでいる。
また、農林業センサスによると、本県で労働者を雇用する農業形態は3,604形態であり、常雇い、臨時雇いはそれぞれ6,090人、1万4,772人である。研修開催に当たり、農作業安全の内容だけでは参加者が集めにくいことが課題であり、他の研修内容と併せて研修会を開催してもらうことなどの工夫をしている。
農作業安全に関する指導者研修の人数、県職員の受講者、指導者リスト、研修会リスト、取りまとめと公表について、国は農作業安全に関する指導者を育成するため、令和3年度から県や農業協同組合等の職員を対象に指導者向け研修会を実施している。
本県では指導者向け研修会を令和3年度から令和5年度までの3年間で、県職員のほか農業協同組合や農業機械販売店の職員等226人が受講した。県職員については、現場で農業者の指導に当たる農業改良普及課の職員が中心となり受講している。
県では指導者向け研修会を修了した人を指導者としてリスト化し、取りまとめたものが国から公表される。また、県では年間の研修計画をまとめた研修会リストを作成している。しかし、農作業安全に関する研修会は特定の農業者が集まる機会を捉えて実施していることから、研修会リストを公表して一般農家の参加を募集することは行っていない。
地域段階の協議会の設置とその注意喚起等の取組と、雇入れ時の省略規定廃止の周知について、国では行政や農業団体などの地域の関係機関が情報交換等を行い、連携しながら、農作業安全について現場への啓発を進めていくことが重要であるとし、都道府県など関係機関に対して、都道府県段階及び地域段階の農作業安全推進協議会等の設置を進めている。
本県では平成16年に県段階の協議会として、愛知県農業会議、愛知県農業協同組合中央会、愛知県経済農業協同組合連合会、全国共済農業協同組合連合会、愛知県農業機械商業協同組合等で構成する県域の愛知県農作業事故ゼロ運動推進会議を設置している。令和4年度は、各農業改良普及課が管内の市町村、農業協同組合等の関係機関で構成する地域協議会を設置し、5月から7月を中心に年1回以上開催し、県内の事故発生状況や事故防止対策の共有など、地域の実情に応じた農作業安全への取組などを進めている。
また、労働安全衛生法規則が改正され、雇入れ時教育の省略規定が廃止されたことに伴い、雇い入れた労働者に対して農作業中の事故防止を指導することが必要となっている。農業改良普及課等が講師を務める農作業安全に関する研修会等で周知を図ることなどを進めていく。
【委員】
県の研修会は特定の農業者が集まる機会の中でとのことだが、恐らく事業主が多いのではないかと思っている。研修内容を受講者からその先で働いている労働者や受講していない人にどのように伝えていくのかが重要であるため、一般参加募集などの対象者拡大が難しいのならば、例えば、研修内容を動画で確認できる、受講者が他の人に内容を共有できるような仕組みづくりを検討してほしい。
また、研修会の参加率や、参加した際の学びの意欲を高めるためには答弁のとおり、農業者に興味を持ってもらうような研修の抱き合わせが必要である。地域協議会でも、どうすれば情報が隅々まで行き渡るか、研修会の内容やクオリティー向上について議論してもらいたい。
先月、全国共済農業協同組合連合会が春の農作業安全確認運動に合わせ、10代から50代の男女約1万人を対象に実施した農業に関する意識実態調査が公表され、農業に5年以上従事している100人と農業に興味がある未経験者600人に、農業で心配に感じることを複数回答で聞いたところ、5年以上の農業従事者のうち45パーセントが農作業中のけが・事故を挙げ、自然災害に次いで2番目に多く、7割が農作業中に事故の危険を感じるヒヤリ・ハットの経験があると答えた。一方、未経験者の農作業中のけが・事故という回答は、全体の10番目であり、天候不良や自然災害のほか人手不足、病害虫などへの心配を下回っていた。
当たり前かもしれないが、農業の未経験者は、異常気象や自然災害・不作などを強く心配する一方、農作業中のけがや事故への不安や危機意識はベテランの従事者に比べ薄いことが確認された。
このことから、新規就農者らに農作業安全の意識をどう高めてもらうのかが課題である。また、農作業事故が起こった際は、経営が傾いたり離農につながりかねないことから、備えとして公的な補償や保険が必要だと思うが、全国共済農業協同組合連合会の農作業中における農機具使用中の障害共済等に加入している人もいるものの、農作業などの業務上等のけがや死亡等に対する補償には、国の制度である労働者災害補償保険への加入も有効である。労働者災害補償保険は、企業などで働く場合は強制加入となるが、農業において従業員を雇用する場合は、法人経営は1人以上雇用すれば強制適用事務所、個人経営の場合は雇用する人が5人未満の場合は任意の適用事務所となっている。本来は労働者の業務災害に対する補償が目的の制度だが、労働者ではない農業経営者や家族労働者であっても労働者と同様の作業をしており、作業実態等から判断し、特に労働者に準じて保護する必要があると認められる者に対しては特別加入の制度が設けられており、保護の対象となる。しかし、全国の農業での労働者災害補償保険の特別加入者数は2021年の時点で、基幹的農業者全体の1割、約13万284人にすぎないことから、農林水産省も、来年度の農作業安全対策推進方針に労災保険特別加入促進を盛り込んでおり、その資料の中で、愛知県は特に基幹的農業従事者数に対して労働者災害補償保険特別加入者が低く、取組が進んでいない都道府県として挙げられている。
愛知労働局に確認したところ、2022年時点で、本県では労働者災害補償保険に特別加入するための加入窓口の一つである特別加入団体、特定農作業従事者の枠が6団体約500人、指定農業機械作業従事者の枠が9団体150人、合計約650人しかこの制度を利用していない状況であり、任意適用となる人々にも万が一の補償制度の活用、労働者災害補償保険特別加入制度をPRし浸透させていく取組が必要である。
そこで、農業の入り口での教育と、労働者災害補償保険などの周知について伺う。
本県の所管する農業の入り口、例えば、農業大学校等での学生への農作業安全に関する教育や研修状況はどうなっているのか。また、その中で、労働者災害補償保険などの制度についての教育は行われているのか。さらに、農業大学校で、農作業機械、特に公道走行時の大型特殊自動車免許及び牽引免許の取得研修時に、公道走行中のみならず農作業中の安全管理や労働者災害補償保険などの制度は内容に含まれているのか伺う。
【理事者】
本県の農業大学校では、まず、1年生全員を対象に農作業事故の発生原因と防止対策などを農業機械利用の講義や実習で教えている。
農業大学校生以外では、新規参入希望者や農業を始めて間もない農業者などを対象とした研修で農作業安全に関する講義や実習を行っている。
また、農業大学校は県内では、平針の運転免許試験場以外で唯一トラクターの運転コースを有しており、農業者を対象に農耕車限定の大型特殊免許や牽引免許を取得できる研修を行っている。今年度は、大型特殊免許研修に農業大学校生も含め162人が受講し、牽引免許研修は23人が受講している。
このような農業大学校の講義や研修で労働者災害補償保険の特別加入制度も周知している。
【委員】
雇用する側の農業者に対する労働者災害補償保険特別加入制度があると理解していても、いざ加入するとなると保険料の壁が非常に高い。他県では、労働者災害補償保険特別加入促進の取組として、保険料の一部を助成する取組等もあると聞くため、関係局で連携して研究してもらいたい。
最後に、農業従事者以外の農作業安全について伺う。
私の地元では、多面的機能支払事業が各地で盛んに行われており、農村環境が維持されている。私は農村集落に住んでいるため、家の農地だけでなく、いわゆる実行組合の役員や多面的機能支払事業における活動団体の共同作業等で、刈払機やチェーンソーを取り扱うことがある。現在、このような共同作業については様々な意見が出ているが、実際に汗を流して作業することから、地域のすばらしい景観や環境をつないでいかなければならない思いにもなるため、このような作業も必要であると考える。しかし、一度この作業で事故が起きると、必ずその後の活動にも影響が出てしまう。特に農村集落では高齢化が進んでおり、どこに行っても作業を行う人の平均年齢はかなり高く、親の世代が体力的に厳しいためリタイアし、子供の世代にバトンタッチしたくても、子供の世代は子育て等も落ち着いておらず余裕がないのが現状である。また、農地の所有者といっても専業農家は、ほぼいない状況であり、兼業や定年退職後に農地維持管理に取り組む人が多いため、そもそも農業機械を使った作業に不慣れな人も多く、農地所有者以外の、例えば集落全員が1世帯1人参加するような作業、いわゆる川役、道役といわれる日常的に刈払機等の農機具を使わない人が自己責任で農機具を使うため、さらにリスクが高くなる。例えば刈払機を使って草刈りをする場合、労働者ならば、厚生労働省が事業者に対し、丸1日6時間の安全衛生教育の実施を勧奨しており、農業大学校でも研修講座があるが、このような作業に参加する人々がこのような安全衛生教育を受けているのか、同じような知識を習得した上で作業を行っているのか、誰も確認しない上、問題視されることもない。
どのような組織でもリーダーが粉骨砕身の努力で、農作業安全対策も活動計画に基づき取り組み、多面的機能支払事業に対応したイベント共済に加入し、リスクヘッジに取り組んでいるが、責任の重大さゆえ、リーダーの成り手が今後出てくるのか危惧している。
このような地域の現状を踏まえ、農業従事者以外の農作業、環境維持活動に取り組む人々への安全対策や安全確認の取組が進むよう、行政からも積極的に呼びかけを行っていく必要がある。
そこで、多面的機能支払事業では、農家だけでなく地域住民も参加して草刈りや泥上げなど、農用地や水路・農道等の保全管理を行っており、不慣れな草刈り作業等で事故が起きることも懸念されるが、県としてどのような安全管理を行っているのか。代表者が参加する講習会などから各組織へどのように展開されているのか、安全管理チェックリストなどの実効性についてフォローアップされているのか伺う。また、今後、多様な人材が参入しても、農作業中の重傷事故が相次げば、離農につながり生産基盤を維持できなくなることから、食料安全保障や農地農村の維持のためには農作業現場の安全対策強化が必要であり、他産業と比べても低いと思われる作業者自身の安全意識を向上させる取組が必要だと思うが、今後県として、農作業安全にどのように目標を立てて取り組んでいくか。
【理事者】
多面的機能支払事業の活動組織は、活動期間の5年間に1回以上、刈払機などの機械の安全使用に関する研修や講習会を開催または参加することが義務づけられている。
また、県から市町村を通じて活動組織へ、安全確認チェックリストや草刈り作業中の留意点などを分かりやすくまとめた共同活動の安全のしおりを含め、多面的機能支払の共同活動に係る安全管理の徹底を毎年通知している。
さらに、昨年度は他の模範となる優良な活動組織を表彰する農地・水・環境のつどいにおいて、約400人の活動組織の人々が参加し、専門家を講師に招き、安全な草刈り作業の講習を行った。
今後も機会を捉えて安全管理の指導を行うとともに、万が一に備えた保険の加入についても啓発する。
【理事者】
今後、県としての農作業安全の取組について、農業の機械化が進展する一方、農業機械の利用等に起因する農作業事故は発生し続けている。農作業事故は人命に関わることに加え、人命を損なわなくても農業経営に大きな影響を及ぼすため、農作業事故防止を推進する必要がある。
そのため本県では、引き続き農作業事故ゼロ運動強化月間を設定し、啓発活動を集中して実施するほか、農作業安全に関するリーフレットの配布や、農業協同組合や市町村の広報誌への掲載依頼により農作業安全を啓発する。
また、国の熱中症対策研修実施強化月間である5月から7月及び農作業安全研修実施強化期間である12月から2月に、農作業安全講習会の実施回数を増やして啓発に取り組む。
【委員】
農作業安全総合推進協議会が2021年に作成した農作業安全指導マニュアルにおいて、法律や制度以外での農作業事故は減らない理由、多くの農業者に見られる傾向が以下のとおり挙がっている。田畑の端をぎりぎりまで機械で作業する、田畑に隙間があれば少しでも余った種や苗を植える、暗くなっても作業を続ける、作業や作物の生育状況が近所に遅れていることを強く気にする、農業機械に安全性を求めると不細工なカバーがついて使いづらくなり値段が高くなると考える、作業中にけがをすると自分の不注意だけを責める、高齢になるほど家族の制止を聞かなくなる、事故調査は他人の不幸に首を突っ込むものであるため良くないものと考える、事故を起こすと自分の不注意だけを責め黙り込むなどの行動や思考パターンが挙げられていた。けがをしても自業自得、不注意だけを原因だと考える極めて日本人的な感覚が多いと感じた。
県としても農作業安全対策に意識を高めてもらい、今年の事故が1件でも減るよう、可能な限りの対策強化をお願いする。
【委員】
畜産物の輸出について伺う。
我が国の農林水産物食品の輸出については、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律に基づき、令和2年4月に農林水産省内に農林水産物・食品輸出本部が設置された。輸出本部の設置は、政府全体での統一した取組と戦略的な方針の下で輸出拡大を目指している。
具体的には農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を策定し、その戦略の下で多角的なアプローチを実施している。主な取組として、輸入国における日本の農林水産物及び食品に対する規制の緩和や撤廃を目指す国際協議の推進、輸出を行うための施設整備や、その施設の認定手続の迅速化が挙げられる。また、これらの取組を支えるために輸出に関心を持つ事業者に対する支援も強化されている。
2023年の畜産物輸出実績は1,080億円であり、2012年以降年々増加している。この中でも牛肉の輸出は特に際立っており、全体の約57パーセントに当たる578億円を占めている。この数字は日本農畜産物が国際市場でどのように受け入れられているかを示す重要な指標となっている。さらに政府は2030年に向けて畜産物の輸出目標を設定しており、その内容は牛肉が3,600億円、豚肉が60億円、鶏肉が100億円、鶏卵が196億円、牛乳・乳製品が720億円となっている。
これらの目標額は日本の農林水産物、食品の国際競争力を高め、さらなる市場拡大を目指す政府の意欲を反映している。
品目ごとの国地域別輸出実績に目を向けると、牛肉は上から順に、台湾、アメリカ、香港、カンボジア、EU、シンガポール、イスラム諸国、タイと続く。豚肉は香港、シンガポールで94パーセントを占めており、鳥肉、鶏卵は香港が90パーセント以上を占めている。牛乳・乳製品はベトナム、香港、台湾、シンガポールが主な輸出先となっている。
畜産物を海外へ輸出する際には、まず、輸出先の国が定める法律や安全基準を理解し、適合するために必要な証明書や書類を準備することが求められる。これは輸出される畜産物がその国の要求を満たしていることを保障するために不可欠である。
次に、畜産物が高い品質を維持できるよう、適切な飼育、処理、包装の方法を採用することが必要になる。これにより海外の消費者にも満足してもらえる製品を提供できる。また、成功を収めるために、輸出先の市場ニーズや消費者の好みを深く理解し、これに合ったマーケティング戦略を立てることが大切である。こうすることで競争の激しい市場でも日本産の畜産物が目立ち、好まれる可能性が高まる。さらに畜産物を安全かつ効率的に目的地まで輸送するための適切な物流手段を選び、品質を維持するための措置を講じていることが求められる。
輸出先での成功は、現地のビジネスパートナーとの良好な関係に大きく依存する。長期的な関係を築き、信頼を得ることで、スムーズなビジネス運営と成長が期待できる。この一連のステップを慎重に実行し、常に市場の動向や法規制の更新に敏感であることが畜産物輸出の成功の鍵となる。
以上のとおり、本県でも国の輸出戦略に連動し、畜産物の輸出の促進を図る必要がある。そこで、畜産物の輸出について、県はこれまでどのように取り組んできたのか、また、来年度はどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
本県における畜産物の輸出について、全国的なシェアからすると僅かだが、牛肉や鶏肉などがタイ、香港にそれぞれ毎年20トン程度輸出している。こうした中、本県では畜産物の輸出をさらに促進するため、2021年度から国の畜産物輸出コンソーシアム推進対策事業を活用し、畜産物の輸出に取り組む事業者を支援している。この事業は生産者や輸出事業者等の関係者が連携し、コンソーシアムを設立し、輸出相手国でのプロモーションやマーケティングの実施について支援する。2021年度から2023年度までの3年間は、新鮮卵としてシンガポールへ輸出する事業に取り組むコンソーシアムに対して助成した。この事業により2023年度の取組主体の輸出額は、補助事業実施前の2022年度と比べて87パーセント増加している。
引き続きこの国の畜産物輸出コンソーシアム推進対策事業を活用し、来年度は鶏肉の輸出拡大を支援する。養鶏農家、食鳥処理事業者、輸出事業者のコンソーシアムの設立、またはコンソーシアムが輸出ターゲット国として、香港やベトナムを想定しており、輸出相手国でのプロモーション活動などの支援を進める。
【委員】
愛知県内にはみかわ牛、知多牛などのブランド牛や、豚についても様々な銘柄豚がある。豚肉輸出については、依然豚熱の発生とワクチン接種状況により厳しい状況が続いているが、愛知県のブランド牛肉、特にみかわ牛や知多牛のような和牛や国産牛、交雑種の輸出拡大には大きな可能性がある。
昨年、タイのバンコクへ行った友人の話では、タイ、バンコクの百貨店サイアム・パラゴンでは、日本各地の和牛がそろう中、みかわ和牛A5のリブロースが100グラム1,000バーツ、日本円にして100グラム4,146円である。これは国内販売価格の約3倍の金額に当たる。また、ロンドンの老舗デパート、ハロッズの食肉販売コーナーでは、神戸牛A5ヒレブロックが100グラム当たり78ポンド、日本円にして100グラム1万5,210円にもなる。加工品の和牛カツサンドや和牛ステーキサンドイッチは28ポンド、日本円にして5,460円で販売されている。
このことからブランド牛の神戸牛や松阪肉、飛騨牛は国内においてもブランドの確立がされた高級和牛だが、海外ではこの価格でも消費されている。この理由として、一つ目に円安であることと併せて諸外国の所得水準が日本以上に上昇していること、二つ目に食と観光が連動していることが非常に深く関係していると考えられる。特に二つ目の神戸市に行ったら神戸牛を食べる、三重県に行けば松阪肉を、飛騨高山や白川郷に行けば飛騨牛を食べるように、愛知県に行ったらみかわ牛、知多牛を食べるとなるように観光と食を連動させたブランディングをすることにより、海外でも今以上にブランド価値が高められる。
本県でも名古屋コーチンは全国区のブランドとして認知されていると思うが、愛知県産の牛肉についても県を挙げた食と観光の連動したブランディングの支援をしていくことが必要である。特に海外における日本産牛肉の人気は高く、海外に愛知県産の牛肉をPRし、輸出可能な国や地域を広げていくことは、観光にも直結するブランディング戦略の一つとして重要である。
現在、牛肉について愛知県内の認定施設から輸出できる国は、マカオ、タイ、ベトナム、ミャンマーと限られている。輸出牛肉の大消費地であるアメリカ、香港、台湾、シンガポール等へは愛知県からダイレクトに輸出ができない状況にあるため、認定施設の拡大や新設に向けた取組が輸出拡大につながり、愛知県産の牛肉を世界中の多くの人々に楽しんでもらう機会となり、食を通じて観光誘客へつながることも期待される。
愛知県としても輸出拡大のための認定施設の拡大や新設、既存輸出国への販路拡大に向けた支援強化を通じて、地元の畜産業をさらに盛り上げていくことが重要である。
これらの取組がみかわ牛、知多牛をはじめ愛知県産の畜産物のさらなる価値向上と輸出拡大につながり、より多くの観光客が愛知県を訪れ、国内でも愛知県産の畜産物を今まで以上に消費してもらえるよう、強力に後押ししてもらいたい。
【委員】
愛知ブランド葵うなぎの今後のセールスプロモーションについて伺う。
養殖ウナギの9割以上が生育過程で雄になるが、雌のウナギのほうが大きく生育し、しかも、身が柔らかいことに着目し、愛知県水産試験場が5年以上の研究期間を費やし、大豆に含まれる大豆イソフラボンをウナギの餌に与えることで、効率的にウナギを雄から雌にする特許を取得したことが話題になった。本年1月には大きくて、やわらかくて、おいしい愛知ブランドのウナギは葵うなぎと一般公募から命名され、西尾市のウナギ生産者が大村秀章知事を訪問して葵うなぎの試食と、葵うなぎにかける意気込みを伝えたことも新聞で報じられた。そして1月27日から2月12日までの期間、西尾市内のウナギの老舗3店舗で、1日当たり各店舗20食限定で販売された。
そこで、3店舗での葵うなぎ限定販売はどうであったのか伺う。
【理事者】
葵うなぎの開発に協力してもらった生産者の直営店3店舗において、丸ごと1尾を使った長焼き単品が消費税込み4,950円で提供され、販売数は3店舗合わせて306食であった。
【委員】
値段が4,950円で306食とのことだが、3店舗で1店舗当たり20食ずつだと、限定販売は最大1,020食となるため、306食は、約3分の1であり、少し寂しい数字だと感じた。そこで、販売結果について、農業水産局の見解、限定販売から見つかった課題について伺う。
【理事者】
限定販売に当たり、各店舗で葵うなぎを食べた人を対象にアンケートを行った。アンケート結果によると、食味については、ほとんどの人が、身が柔らかい、脂の乗りがよいと回答するなど、高評価であった。また、価格については、6割の人が許容できると回答した一方で、4割近くが高いと回答し、評価が分かれた。食味や価格などを総合的に判断し、9割近くが満足、どちらかといえば満足との回答であったため、葵うなぎの魅力は十分に伝わったと考える。
ただし、見つかった課題として、価格が高いとの回答が4割近くあったことから、今後はうな丼やひつまぶし、1尾を2人でシェアするなど、葵うなぎの大きさを活かした提供方法の検討が必要だと考える。
また、販売数が予定数に達しなかったことから、葵うなぎのさらなる認知度の向上が必要である。
【委員】
アンケートの結果から高評価だとわかるものの、少しPR不足感は否めない。
それで、今後、愛知ブランド葵うなぎのセールスプロモーションについて、どのように取り組むのか伺う。
【理事者】
既に葵うなぎの提供が始まっているところもある。また、県内外のウナギを取り扱う流通業者や飲食店から仕入れの問合せがあることから、県ではこのような店舗に対し、県で作成した葵うなぎのポスターやのぼりを提供し、認知度の向上を図る。
また、来年度はより多くの消費者に葵うなぎの魅力を広く知ってもらうため、SNSを活用したキャンペーンを進めるとともに、次の葵うなぎの出荷が始まる12月頃に、通常のウナギとの食べ比べや、葵うなぎの開発技術の紹介などを内容とするPRイベントを開催する予定である。
なお、事業の実施に当たり、民間の柔軟な発想やノウハウを活用できるよう、プロポーザル方式により事業者を決定して委託する仕組みを考えている。これにより、斬新なアイデアによる効果的なPRイベントが開催できると考えている。
また、葵うなぎの開発目的である1尾のシラスウナギを大きく育てることにより、資源の有効利用と県産ウナギの供給量の増大を目指して、引き続き生産者と一体となって葵うなぎのPRに取り組む。
【委員】
葵うなぎは話題性があるため、一色産ウナギの新ブランドとして、県内外に積極的にぜひともPRしてもらいたい。
次に、愛知県農業総合試験場の毎年の10大成果について伺う。
農業総合試験場では新品種や新技術の開発などの試験研究について、研究成果の中から特に優れたものや社会的関心の高いものを選定し、毎年12月に今年の10大成果を公表している。
2023年の10大成果も昨年末に発表され、1位は、安価で自作可能な栽培環境モニタリング装置の開発、2位は、暑さ寒さに強いスプレーギク2品種の開発などだったことをウェブページで知った。そして農業総合試験場の10大成果の発表が、2004年からスタートし今年で20年になる。
そこで、この20年間の試験研究10大成果を振り返り、20年間を代表する成果について伺う。
【理事者】
農業総合試験場は本県農業の生産振興を図るため、生産力強化に向けた技術や品種の開発に取り組んでいる。20年間の10大成果全200件のうち、栽培などの技術開発に関するものが143件、残りが品種の開発である。品種が10大成果として選ばれた数年後に、その品種の栽培技術に関するものが選ばれることも多くある。
20年間の代表的な成果として、小麦の品種開発とその栽培技術の開発を挙げる。
農業総合試験場は、2000年から収量性が高く高品質な小麦品種の開発に取り組み、2009年にうどんに向くきぬあかり、2012年にパンに向くゆめあかりを相次いで開発した。また、2017年から2023年までの間にこれらの品種に対応した栽培技術が5件、10大成果に選ばれている。きぬあかり、ゆめあかりは本県の気候に合い、生産者が作りやすい小麦品種であり、生産から製造に至る各業界団体と一体となって普及定着を図った結果、うどんやパンなどの利用拡大が急速に進んでいる。さらに本県の小麦栽培が収量性の高いこれらの2品種に切り替わったことで、本県の小麦の10アール当たりの収穫量は、2023年産で575キログラムであり、全国平均の473キログラムを大きく上回り、水田作農家の経営安定に大きく貢献したものと考えている。
【委員】
7年前に農林水産委員会に所属していたとき、みそ煮込みうどんに合うきぬあかり、中華麺やパンに合うゆめあかりを農業総合試験場で試験開発し、品種登録されたことが話題になった。今、町なかを歩いていると、パン屋の前にのぼりで愛知県産ゆめあかりを使用していること、行列のできるうどん屋で、愛知県産きぬあかりを使用していることをアピールする店も増え、消費者の中にゆめあかりやきぬあかりが溶け込んできたと痛感し、これも農業総合試験場の大きな成果だと感じる。
20年間いろいろな研究開発をしてもらったが、当然、試験研究の内容も時代や社会の変化とともに変わっている。人口減少による社会構造の変化、地球温暖化など気候変動が危惧される中で、農業分野の試験研究も時代とともに変わってきていると推察される。そこで、20年間の試験研究の対象や傾向の変遷について伺う。
【理事者】
20年間で本県農業の主要な作目に大きな変化はないため、試験研究の対象とする作目は変わっていない。一方、研究内容については、県内農業の生産振興のための技術開発という大きな柱は変わらないが、2010年以降は気候変動や労働力不足など、現場の課題に対応する試験研究が増加傾向にある。
このうち気候変動については、近年夏の高温の影響が特に問題となっているため、収量や品質の低下を防ぐ技術や暑さに強い品種の開発を行っている。
例えば、夏の高温条件下でも安定して高品質な米が生産できる水稲品種として、2014年に愛ひとつぶを開発し、2019年には愛知135号を開発している。
さらに労働力不足や高齢化などの課題に対応するため、AIやICTなどの先端技術を活用し、省力化や生産性向上を目指すスマート農業技術などの試験研究も増えている。
品種開発など時間を必要とする地道な取組も多いが、最近では特に開発にもスピード感が求められるようになった。今後も、生産者の期待に応えることができるよう、あいち農業イノベーションプロジェクトなどの共同研究開発や現地実証などの取組を強化し、早期の社会実装に向けて取り組む。
【委員】
気候変動や労働力不足など農業が抱える問題が山積する中で、現場ニーズに即した新技術と品種の開発に取り組む農業総合試験場の果たす役割は非常に大きい。引き続き持続可能な農業のためのイノベーションを進めることをお願いする。
【委員】
愛知県の農業振興について伺う。
令和5年12月に、農林水産省から令和4年の農業産出額が公表された。本県の農業産出額は3,114億円であり、前年の2,922億円から192億円、6.6パーセント増加した。順位は変動なかったが、これまでは、いわゆる3位グループと呼べない2,000億円台だったため、久しぶりに3位グループと公言できるようになった。これも県の尽力のたまものである。今回の2月定例議会における本会議の議案質疑でも多くの議員が質問した。内容は、スマート農業、土地改良、森林クレジット、農業イノベーション、木材利用拡大、農地集積などであり、このような質問をする議員はこれまでと比べて多かったと思う。これらは、議員、地域の人々からの農業に対する期待だけでなく、心配の表れもあると思う。そのため、さらに農業振興を図るような施策を進めてもらいたい。
あいち型産地パワーアップ事業の新年度予算は、3億円が計上されるとのことである。昨年度の、当初予算が約2億6,000万円であり、予算の補正で3億円となったが、新年度予算では、当初から3億円を組んでもらった。意気込みを感じるものの、先ほど、3位グループになった話をしたが、品目別で見ると減っている内容もあり、果実が9億円のマイナス、乳用牛が11億円のマイナス、その他が8億円のマイナスとなっている。
乳用牛について、本会議の議案質疑で戸数が減っている、酪農家が減っていることが触れられ、県内で225戸のところが198戸、マイナス27戸となっていると聞いた。また、さらに限定的な地域で約15戸の酪農家がなくなるとの質問もあった。伸ばしたい部分に力を入れるべきであるが、このような状況は大変心配である。そこで、県内の減少傾向にある酪農家の現状及び愛知県の対応について伺う。
【理事者】
まず、本県における酪農の状況について、愛知県酪農農業協同組合の組合員が、2022年4月現在で225戸から2023年4月現在で198戸となり27戸減少し、2024年4月で185戸になる見込みである。
国の統計調査は、1年ほど時間のずれがあるが、2023年2月1日現在で飼養戸数が220戸であり、先ほどの220戸と相関している。時点が違うため少しずれがあるが、対前年10.9パーセント減少となっている。また、飼養頭数が対前年比7.1パーセント減少の1万9,600頭で、2万頭を割っている。例年飼養戸数は大体5パーセント前後、飼養頭数は3パーセント前後の減少で10年ほど推移していたが、海外から輸入している飼料原料の価格高騰並びに高止まりが顕著となって以降は、飼料高騰の要因が大きく影響し、畜産農家の中でも、特に、酪農家の廃業が加速している。
したがって、2024年2月1日現在の調査が間もなく公表されるが、その調査の数字においても、飼養戸数や飼養頭数の減少が見込まれる。
そのような状況下での対応、対策について、酪農家の廃業が加速している中、飼料高騰による畜産経営の影響を緩和するため、他の都道府県に先駆け2021年10月から本年3月まで、餌メーカーから買う配合飼料の購入費に対して、国の補助制度と連動して切れ目なく助成している。
また、2022年10月から本年3月まで、酪農家あるいは肉用牛農家が使う乾牧草などの粗飼料の購入費に対しても、切れ目なく県独自で助成を行っている。
さらに、海外から輸入する飼料・原料の動向に左右されない畜産経営に転換するために、自給飼料生産振興事業費の中の耕畜連携支援強化事業により、県内で飼料作物の栽培を拡大する取組を進めている。
また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)関連対策の一環として我が国の畜産経営、畜産経営基盤の強化を目的に措置されている畜産クラスター事業により、既存農家の生産拡大や収益力の拡大・向上を図るとともに、本事業を活用して新規に酪農に取り組む担い手の確保にも努めている。
令和5年12月定例議会で約5億8,000万円の補正予算計上した畜産クラスター事業について、知多地域の牧場で雇用されている従業員が独立し、新たに酪農を開始するための施設を整備するための予算として計上している。
これらの対策に加え、国の加工原料乳生産者補給金制度のような経営安定対策、畜産フェスタを中心としたイベントでの消費者へのアピール、消費拡大対策なども、引き続き推進し、本県の酪農業の基盤強化に努める。
【委員】
先ほどの藤原聖委員の質問のように、農作業事故などの問題から農業労働者が集まらない。また、今年度何度も取り上げ、本会議の議案質疑の中でも取り上げられたとおり、高齢化を理由に離農せざるを得ない人、あるいは相続で農地は持つものの、農業に従事しない土地持ち非農家が増えている現状は変わってない。まずはこれを解決しなければならない。本会議の議案質疑では、豊川のような土地改良、農地集積を図ることが挙げられた。それをしっかりと行えるところはよいが、耕作放棄地が飛び地でまとめられないことがある。要するに、継がせられない農業になっているため、国で議論している食料の安定供給の確保や農業の持続的な発展はなかなか見通しが立たない。
少し視点を変えるが、弁当の日というドキュメンタリー映画を地元で見た。学校の校長が子供たちに台所に立ってもらうため、児童、生徒が自宅で弁当を作り、持ち寄って学校で食べる弁当の日を設定した。初めは、何も分からない小さな子供もいるため、母親も黙って横で見ている。そうすると、子供たちは食事を作ることの大変さを理解していく。そのように食育し、得た経験から学校でいろいろな会話ができる。もちろん家庭の中でも会話が増える。宮城県はこの取組を県で条例にしているとのことである。
今、農業は厳しい状況にあるが、物価が上がる中でも農産物の物価はそれほど上がってない。上がらない理由は、消費者がこの値段で買えると思っているからであり、先ほどの映画のとおり、苦労があって作られる農作物を味わって食べなければならず、本当はもっと高くてもよいと地元の人には伝えている。県職員には使命感に燃えて仕事してもらっていると思うが、そのようなことをさらにアピールすべきだと思う。
愛知県は、とても熱心かつ真面目に取り組んでいるが、PRが足りない部分が相当あると思う。また、今の農家は、土地を引き継いでやっている小さな個人経営の農家ばかりである。それが大きくなると利益が出せるようになる。そのようなことも含めて対策を考えてほしい。
令和5年9月定例議会の農林水産委員会で話をした経済産業局の産業空洞化対策減税基金について、中小企業を救うとの名目で始まっていることからすれば、農業についても、先ほどから話しているとおり、本当に大切であることを考慮すれば、基金増設も可能だと考える。
ちなみに、就農支援資金特別会計について、さらに改善できるのではないかと思っていたが、かなり前にできた制度で、農機具を買う融資の関係で行っており、今は非常に金利が安いため、借り手もほとんどなく、終息に向かっているとのことだった。また、公益財団法人愛知県農業振興基金は、最初に積んだ基金の利息や投資利益で賄うとのことなので非常に規模が小さく、産業空洞化対策減税基金とは全く違う規模のものである。さらに、水産関係のほうで以前、森下利久県議が豊かな海づくり税をぜひ創設したいとの話をしていた。県からは難しいとのことだったが、産業空洞化対策減税基金のような、少なくとも愛知県の農林水産も含め、林については、あいち森と緑づくり税があるが、農林水産分野でやれるようなものは真剣に考える必要があると思う。
農業水産局として、農業振興に資する財源確保の手だてについて伺う。
【理事者】
産業空洞化対策減税基金について、県内の中小企業等を中心に設備投資、研究開発に対する助成を行う基金であると聞く。
これに関し、農業の分野で既にそうした取組は、あいち型産地パワーアップ事業も、それぞれの農業者が投資する場合に県単独事業で助成する事業である。2年前までは1億円という規模であり、昨年度は2022年12月補正予算で6,000万円、2023年当初予算で2億4,000万円、今年度は当初予算3億円で増額で計上している。
そして、国の事業としての産地生産基盤パワーアップ事業についても6億3,000万余円の予算が確保されている。こうした予算を使い、農業者の投資は県としてもしっかりと支援する。
財源の確保について、現在、あいち型産地パワーアップ事業についても、ほぼ農業者からの要望を充足できている状態である。重要な要請があった場合に予算が足りないと断っている状況ではないため、現在は、新たに財源を確保するより、あいち型産地パワーアップ事業等を有効に活用し、農業者の投資を進めて県内農業の生産性向上にしっかりと努める。
ただし、農業者の高齢化、土地持ち非農家の増加、担い手不足に対しては、我々も非常に危機感を持っている。その中で、地域の担い手に対し、まずは、耕作放棄地や高齢化により農地を維持できない人がいた場合は、まずは担い手に集積する取組を進めていきたい。そのため、農地中間管理事業を使い、農地を集めるとともに、一方で労働力不足などに対してはスマート農業の技術を開発、導入をして、競争力のある体制にする必要がある。
また、地域によっては担い手がいない、小規模な農家が多いことがある。これは、集落全体で農業を守らなければならないため、集落営農を進める、あるいは6次産業化などにより地域の資源を有効活用して収益を得る仕組みをつくる、そのようなことを県として積極的に考えていく。
さらに、国の事業だが、農業次世代人材投資資金という、農業を新たに始めた農業者に対し、年間150万円の資金が支給される仕組みがあるため、これも有効活用して新規就農者のハードルをできる限り下げ、農業にしっかり取り組んでもらう。
なお、このような人材の確保、担い手への農地の集積、農業総合試験場で新しい技術、他県に先駆ける技術などを現場に普及するため、愛知県の農業を競争力のある形で発展させ、食料の安定的供給に結びつけたいと考える。
【委員】
例えばあいち型産地パワーアップ事業についても、昨年の愛知県単独で行った産地パワーアップ事業は予算消化しているが、先日の早く議決を要する議案を審査する農林水産委員会で扱った国の産地生産基盤パワーアップ事業では、約3億円が減額になっている。今回は6億3,000万円計上しているが、国の産地生産基盤パワーアップ事業予算は、条件が厳しいためあいち型産地パワーアップ事業をつくったとのことだが、あいち型産地パワーアップ事業でもまだ拾えない部分もある。議論したいのはその部分で、農家は代々の農地を守りたいと思っているものの、担い手がいないため、農地を売り払いたい、譲りたいという状況になっている。しかし、例えば、息子、孫に継がせたいが、新たな投資をしてまで継がせるのかとなってしまう。このようなところは、新規就農扱いであれば、産地パワーアップ事業で対応できると思うが、要件が違うため、それは認められない。その部分をもう少し吟味してもらい、また、国の産地生産基盤パワーアップ事業の執行残が出ることは、制度が使いにくいという実態を国に伝えてほしい。
酪農については、代替わりしたいものの、畜舎を新設する体力がないため、譲ることを考えている間に廃業になったなど、もちろん酪農の牛乳自体の消費が少なくなっていることもあるが、しっかりと目配せしてもらいたい。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年3月13日(水) 午後0時58分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和6年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第10款 災害復旧費の内
第1項 農林水産施設災害復旧費
第2条(繰越明許費)の内
第6款 農林水産費
第3条(債務負担行為)の内
農業総合試験場施設設備改修工事
農業近代化資金貸付金利子補給
国家戦略特別区域農業保証融資に係る愛知県信用保証協
会損失補償
漁業近代化資金貸付金利子補給
栽培漁業センター施設設備整備工事
かんがい排水事業明治用水西井筋地区管水路工事
水質保全対策事業占部用水地区管水路工事
水質保全対策事業高落2期地区管水路工事
経営体育成基盤整備事業三郷地区区画整理工事
経営体育成基盤整備事業東細谷地区揚水機場設置工事
経営体育成基盤整備事業東細谷地区区画整理工事
経営体育成基盤整備事業和地太田地区区画整理工事(そ
の1)
経営体育成基盤整備事業和地太田地区区画整理工事(そ
の2)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事(その3)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業大野瀬地区用排水路工事
農業水利施設保全対策事業巨海地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業貝吹地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業西奥田地区排水機場機械設備
工事
農業水利施設保全対策事業八王子地区排水機場機械設備
工事
農業水利施設保全対策事業宇塚地区排水機場機械設備工
事
農業水利施設保全対策事業一本松下地区排水機場機械設
備工事
たん水防除事業小牧小木2期地区排水機場設置工事
たん水防除事業豊明東部2期地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新大江地区排水機場設置工事
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場設置工事
(その1)
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場設置工事
(その2)
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場機械設備工
事
たん水防除事業片原一色第2地区排水機場設置工事
たん水防除事業新十三沖永地区排水機場設置工事
たん水防除事業新立田輪中地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新立田輪中地区樋管工事委託契約(国土
交通省)
たん水防除事業前野地区排水機場設置工事
たん水防除事業生田第2地区排水機場設置工事
たん水防除事業平坂地区排水機場設置工事
たん水防除事業平坂地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業上郷2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新高師地区排水機場撤去工事
たん水防除事業野依地区排水機場設置工事
たん水防除事業野依地区排水機場機械設備工事
用排水施設整備事業吉根地区堰改修工事
用排水施設整備事業丹羽排水地区調節池工事
用排水施設整備事業光堂地区堰改修工事
地盤沈下対策事業木曽川用水2期地区揚水機場機械設備
工事
地盤沈下対策事業飛島北部地区排水路工事
海岸整備事業鍋田2期地区海岸改修工事
海岸整備事業東億田2期地区樋門工事
防災ダム事業春日井奥池地区ため池改修工事
防災ダム事業皿池地区ため池改修工事
防災ダム事業午ヶ池地区ため池改修工事
防災ダム事業東の池地区ため池改修工事
防災ダム事業愛敬池地区ため池改修工事
防災ダム事業口無池地区ため池改修工事
防災ダム事業本坪池地区ため池改修工事
防災ダム事業山田池地区ため池改修工事
防災ダム事業稲基池・古堤池地区ため池改修工事
防災ダム事業洞ヶ入池地区ため池改修工事
防災ダム事業彦田池地区ため池改修工事
特定農業用管水路特別対策事業平坂地区管水路工事
震災対策農業水利施設整備事業扶桑地区揚水機場機械設
備工事
震災対策農業水利施設整備事業枝下用水地区用水路工事
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備
工事(その1)
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備
工事(その2)
排水施設保全対策事業目比川河口地区排水機場機械設備
工事
排水施設保全対策事業小栗東地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業円楽寺地区排水機場設置工事
緊急農地防災事業大海用地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業大村東地区排水機場機械設備工事
吉良古川頭首工機械設備工事
坂崎揚水機場機械設備工事(その1)
坂崎揚水機場機械設備工事(その2)
第 7 号 令和6年度愛知県就農支援資金特別会計予算
第 8 号 令和6年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計予算
第 9 号 令和6年度愛知県県有林野特別会計予算
第 10 号 令和6年度愛知県林業改善資金特別会計予算
第 59 号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金について
第 60 号 県の行う農村総合環境整備事業に対する市町村の負担金につい
て
第 61 号 県の行う林道事業に対する市町村の負担金について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第7号から第10号まで及び第59号から第61号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員
会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後3時13分)
6 再 開(午後3時23分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書(1)の199ページ、特産畑作振興指導費の内容について伺う。
【理事者】
特産作物振興指導費は、お茶や漬物などの生産振興を図るための経費である。
毎年、愛知県の茶業振興大会や漬物の講習会を実施するための予算であるが、来年度は愛知県、岐阜県、滋賀県、三重県、京都府及び奈良県のお茶の関係者の持ち回りで運営している関西茶業振興大会が本県で開催されるため、負担金220万円を経費として計上している。大会行事として出品茶審査会を豊田市で、入札販売会と大会式典を西尾市で開催する計画となっている。
【委員】
本県で7年ぶりに、2024年度の関西茶業振興大会が開催され、私の地元西尾市では入札販売会と大会式典が開催される。
西尾市では、2019年に第73回全国お茶まつり愛知大会が開催され、全国の茶業関係者が一堂に集い、茶の生産技術向上と消費拡大を図るため様々な催しが行われ、盛り上がったことが記憶に新しく、大規模なお茶の行事が地元で開催されることを大変うれしく思う。
地元の茶業関係者の激励もあり、2017年に豊田市で開催された第70回関西茶業振興大会に参加した。大会式典のほか、出展茶の展示、茶業関連資機材展、茶のPRイベントとして、出品茶の販売、ご当地アイドルのライブ、体験型のコンテンツ、抹茶の石臼びき体験や無料呈茶や抹茶スイーツの販売などが会場の内外で行われ、大変にぎわっていた。前回の豊田市での大会を踏まえ、大会の内容について伺う。
まず、関西茶業振興大会の予算の詳細、目的、主催者、日程、会場など大会の内容、実行委員会や事務局がどこに設置され、今後どのような会議体で詳細が決まっていくのか、後援、協賛などはどうなっていくのか伺う。
また、生産者は出品時期に合わせて手間暇をかけて特別に栽培するが、茶業振興大会に出品することの意義は何か。また、それが本県の茶業にどのような影響を与えるのか。
さらに、大会の出品茶審査会では、どのくらいの出品数があり、茶種を誰がどのように審査するのか、どのような賞があるのか。大変な準備だと思うが、事務局側の体制についても、課題があれば伺う。
【理事者】
関西茶業振興大会は6府県で生産されるお茶の特性を明らかにし、生産技術や品質向上を図るとともに、お茶の需要拡大と茶業の振興を図ることを目的としている。
来年度は愛知県をはじめ、関係6府県と関西茶業協議会、愛知県茶業連合会、県内の関係市である西尾市、豊田市、新城市、豊橋市及び田原市の共催により開催し、4月に関係者で実行委員会を設置し、大会を運営する。なお、事務局は、本県園芸農産課内に設置する予定である。
大会全体の予算額は、関係6府県、関係市や愛知県茶業連合会の負担金や、出品茶の販売手数料などを収入として1,000万円程度を予定している。
次に、大会行事のメインとなる茶の出来栄えを競う出品茶審査会は、7月31日から8月2日までの3日間で開催する予定である。出品点数は約600点を見込んでおり、普通煎茶、深蒸し煎茶、かぶせ茶、玉露及び碾茶の5種類ごとに、お茶の見た目である外観、香り、入れたお茶の色や味について審査を行う。
審査員は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農林水産省東海農政局や6府県のお茶の研究者、お茶の販売事業者である茶商など25人程度を予定している。審査の結果、茶種ごとに農林水産大臣賞を最高賞として、日本茶業中央会長賞、全国茶生産団体連合会長賞など、全体で六つの特別賞を決定する。
入札販売会は、9月5日に西尾市の西三河農業協同組合本店で実施予定であり、茶商などを対象に出品されたお茶の販売を行う。
大会式典は、11月16日に西三河農業協同組合事務センターで開催予定であり、特別賞を受賞した生産者に賞状等の授与を行う。
また、大会の後援・協賛は、農林水産省のほか公益社団法人日本茶業中央会や全国茶生産団体連合会、愛知県茶商工業協同組合など、お茶関係の団体に依頼する予定である。
次に、審査会に出品する意義などについては、県内の生産者は特別賞の受賞に向けて勉強会を開催し、よりよいお茶を生産する努力を続けており、お茶生産者のモチベーションが高まっている。また、生産者が自らのお茶のレベルを確認する機会となり、今後の品質の高いお茶の生産における生産技術の向上につながるとともに、特別賞を受賞すれば生産者のお茶の評価が高まると考える。
最後に、大会は県職員だけで運営することができないため、関係市や県内のお茶の生産者の協力が欠かせないと考える。そのため、関係者の協力を得て、しっかりと連携していくことが最も重要である。
【委員】
品評会では、県内の生産者が上位入賞を目指して産地を挙げて切磋琢磨しながら取り組んでもらうことで、地域ブランド西尾の抹茶やとよた茶、しんしろ茶、豊橋茶などをはじめとした県内の産地、あいちの茶の知名度が向上し、茶業生産振興需要拡大のきっかけとなることを期待している。
今回大会式典は、11月16日に西三河農業協同組合事務センターで行うとのことだが、地元西尾市では11月16日、17日の2日間大会に合わせて抹茶の日を同時開催し、西尾の抹茶を中心としたブースの出展など、大会を盛り上げるPRイベントを開催するための費用として600万円を来年度予算に計上している。西尾市は2日間で約3万人の来場を想定し、茶道用抹茶だけでなくスイーツ向けにも西尾の抹茶がナンバーワンであることを広めるため、西尾の抹茶を使用したスイーツの発信に注力し、地域向上を図る場となるよう準備を進めている。可能であれば、発信力のあるゲストをキャスティングし、ブランド価値の確立を図っていく意気込みであると地元紙で報じられていた。
県内茶業の振興のために、茶業振興大会を広く県民に注目してもらい、西尾市外からも多くの人に来てもらいたい。
今回の会場の道路反対側には、年間約100万人が訪れる西尾市の観光スポットでもある、憩の農園ファーマーズガーデン・ファーマーズマーケットがあり、PRイベントが開催される週末も特に来場者が多い。この施設の来場者は西尾市内からが約45パーセント、西尾市を除く愛知県内が約53パーセントであるため、ぜひ連携してPRイベントの集客につなげてほしい。
そこで質問する。
まず、大会式典では、お茶メーカーや茶生産者など関係者の参加人数はどのくらいの規模になるのか。
また、豊田市での大会は1日開催であるのに対し、今回のPRイベントは2日間であるが、県としてどのようにPRイベントに関わり、サポートするのか。また、どのように関西茶業振興大会関連イベントをPRしていくのか、大会ポスターやビラ、ホームページ、県のネット媒体での発信、式典会場である憩の農園の事業者である西三河農業協同組合や西尾市との連携を踏まえて伺う。
【理事者】
大会式典の参加人数は、受賞者や生産者、お茶メーカーなど関係者約300人を想定している。
西尾市が実施する抹茶の日のイベントは関西茶業振興大会の関連行事として位置づけ、大会と一体的に開催する予定である。このイベントは、愛知県産のお茶をPRする絶好の機会のため、愛知県のブースを2日間設置して、県産のお茶の販売促進などを検討する。
次に、大会のPRについてはポスター及びチラシを作成し、県内の関係市や茶業関係者のほか、京都府をはじめ大会に参加する府県にも配付して大会をPRする。また、県のホームページでも、関西茶業振興大会や関連行事の内容を発信し、PRする予定である。
最後に、大会式典会場である西三河農業協同組合事務センターに隣接する憩の農園は、年間約100万人と多くの人が訪れる施設である。このため、憩の農園の来場者が関連イベントに来場するよう、西三河農業協同組合や西尾市と連携し、それぞれの広報紙、ホームページの掲載、憩の農園へのポスター掲示によりPRする。
【委員】
地元西尾市の茶業関係者に話を聞いたところ、茶業振興大会の審査会で賞を取ることがいかに難しいことだと実感した。
関西の人たちは、産地の歴史とプライドをかけて真剣勝負で挑む。中には、LEDを当てるとキラキラするような素晴らしい技術のお茶もあるとのことで、1人の農家が頑張るのではなく、多くの人が産地の今後を思い、意欲を持って本気で取り組まないと賞を取ることは難しいため、県としてもサポートをお願いしたい。
また、PRイベントでは、地元の農産物や県産品の知名度向上のための取組、特に、愛知発の新しいブランドウナギ、葵うなぎはまさに一色町の御当地であるため、関連団体とも協議して、積極的にPRしてもらいたい。
また、茶業全体の課題として、茶農家の経営力の悪化の問題、兼業農家が事業承継せずに廃業した際に、これまで農地の受け手となっていた専業農家も人手の限界や、量を作っても茶価が上がらない中で、これ以上は規模の拡大が難しいと判断すると、今後さらに放棄茶園が増えていく可能性がある。また、廃業する場合も、棚を片づけ、木だけの状態まで戻さなければならない。さらに繁忙期の人手不足、農薬や肥料・資機材の高騰、特に肥料はお茶を作るための経費が高くなっている一方、茶の価格が上がらないことから採算が取れず苦しい状態である。個別の茶農家では工場の老朽化が進んでいるが、費用の関係で何もできない状態である。
県としても「あいちの茶」振興計画(第8次愛知県茶業振興計画)に基づき、まずは担い手である専業農家がしっかりともうかる仕組み、茶業の未来に夢を持てる取組を進めてほしい。
最後に、関西茶業振興大会やPRイベントを通じて、県としてお茶の生産振興、消費拡大にどのように取り組むのか伺う。
【理事者】
関西茶業振興大会を契機として、このような大会やイベントをはじめ様々な機会を捉えてお茶の即売会等によるPRを行い、あいちのお茶の一層の消費拡大に努める。
また、品評会に出品されたお茶の特長を分析し、県内各生産者と比較することにより、栽培加工方法の改善や有望な品種の導入を進める。
なお、県内におけるお茶の栽培面積は、農家の高齢化等により減少傾向にある。栽培が行われなくなった茶園の担い手へのスムーズな集積を進めるとともに、補助事業を活用して、乗用型摘採機、茶園の被覆資材などの導入を支援し、作業効率や品質の向上を図る。
県としても関西茶業振興大会の成果を生かし、栽培指導や機械等の導入支援を継続し、今後もお茶の担い手農家の経営発展ができるよう取り組む。
【委員】
第9号議案令和6年度愛知県県有林野特別会計予算について伺う。
県有林野には尾張、賀茂、鳳来寺の三つの事業区があり、約6,000ヘクタールの民有地を有している。
まず、歳入について伺う。
予算に関する説明書(1)、県有林野特別会計歳入歳出予算事項別明細書387ページから388ページの歳入、第3款財産収入、第2項財産売払収入、第3目生産物売払収入について、生産物売払収入には林業経営によるものと鉱山経営によるものの二つがある。
そこで、新年度は、それぞれどの程度の数量、金額ベースを予定しているのか、歳入の収入見込みについて伺う。
【理事者】
生産物売払収入1億2,083万1,000円の内訳は、林業経営の木材売払いによる収入が4,668万1,000円、鉱山経営の鉱物資源売払いによる収入が7,415万円である。
木材の内訳は、主伐による木材生産が1,300立方メートルで2,322万1,000円、間伐等による木材生産が1,910立方メートルで2,346万円である。
また、鉱物資源の内訳は、粘土類が2万6,500トンで2,171万7,000円、珪砂類が17万8,300トンで5,243万3,000円である。
【委員】
林業経営による収入、鉱山経営による収入は、令和5年度当初予算と比較すると、約549万4,000円の減額である。
また、経年の収入と比較するとかなり増減があるが理由は何か。
【理事者】
林業経営の木材売払いによる収入は、令和6年度当初予算では4,668万1,000円を計上しており、令和5年度当初予算の3,547万円から1,121万1,000円増となっている。
木材生産は、主に怒田沢県有林をはじめとする模範造林地で行っており、民有林の模範となる森林施業を実施し、地域産業の振興に寄与することを目的としている。木材生産は木材需要や市況を見て、木材生産を実施する場所を決定しており、樹木の形質等により計画量が変動することに加え、販売単価を木材市場価格に基づき算定していることから、売払い収入は年度ごとに変動している。
次に、鉱山経営による収入のうち鉱物資源売払いによる収入は、令和6年度当初予算では7,415万円であり、令和5年度当初予算の9,085万5,000円から1,670万5,000円の減となっている。
鉱物資源の採掘は、瀬戸市の印所鉱区で行っており、有限な鉱物資源を計画的に採掘し、安定的な供給を行うことにより、資源の有効活用及び地場産業の振興に寄与することを目的としている。
採掘量は、県、愛知県陶磁器工業協同組合、愛知県珪砂鉱業協同組合及びとこなめ焼協同組合による需給調整会議を通じて需要動向を把握して計画量を定めており、年度ごとに変動している。
【委員】
それぞれの市況等を踏まえながら計画的に取り組んでもらっていると理解した。
続いて歳出について伺う。
予算に関する説明書(1)、県有林野特別会計歳入歳出予算事項別明細書390ページから391ページの歳出、第1款県有林野経営費、第1項県有林野経営費、第2目県有林野事業費について伺う。
県有林野事業費のうち林業経営管理費と鉱山経営管理費は、それぞれどのような支出で、どのようなところと契約を結んでいるのか。
【理事者】
林業経営管理費は主に苗木を植栽する造林事業、除伐、間伐及びつる切り等の保育事業、生育した植栽木を伐採して搬出する生産事業などの森林整備に係る歳出経費であり、令和6年度当初予算では7,750万1,000円を計上している。
生産事業などは、県が木材の需要や市況を見て、木材生産を実施する範囲や生産量を決定した上で、伐採、搬出などの作業について競争入札を行い、地元森林組合や民間事業者と契約している。
鉱山経営管理費は主に鉱物の採掘に係る歳出経費であり、令和6年度当初予算では1億745万円を計上している。
採掘事業は、県が地元窯業界に必要な鉱物量を把握した上で採掘料を決定し、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号による技術・技能を有し印所鉱区内で採掘実績のある愛知県陶磁器工業協同組合及び愛知県珪砂鉱業協同組合と随意契約している。
【委員】
続いて、事業費の中に森林公園管理運営事業費と県民の森管理運営事業費が計上されているが、主な支出の内容、令和5年度と比較してどのような状況にあるのか伺う。
【理事者】
森林公園管理運営事業費は、指定管理者への運営委託費や施設整備費が主である。
施設整備は、老朽化した施設の更新としてトイレの水洗化やそれに接続する上水道管の整備などを行う。
令和5年度当初予算の7億5,052万6,000円に対し、令和6年度当初予算では4億2,558万3,000円を計上しており、3億2,494万3,000円の減額となっている。減額の主な理由は、愛知県公共施設等総合管理計画に基づく施設の長寿命化初期改修工事の終了によるものである。
次に、県民の森管理運営事業費も同様に、指定管理者への運営委託費や施設整備費が主である。
施設整備は、県民の森の各施設に上水を送水するための揚水管が令和4年12月に漏水し、利用者に影響を及ぼしたことから、来年度、取替え工事を行う費用を計上している。令和5年度当初予算の9,366万9,000円に対し、令和6年度当初予算では1億1,062万6,000円を計上しており、1,695万7,000円の増額となっている。増額の主な理由は、揚水管取替え工事に伴う施設整備のためである。
【委員】
森林公園や県民の森の施設もかなり老朽化している部分が多くあると思うが、維持管理についてどのように考えているのか。
【理事者】
森林公園及び県民の森は、多くの施設、設備で老朽化が進んでいる。指定管理者と連携を密に取り、まずは日常の施設の維持管理をしっかりと行う。
また、県は施設管理者として利用者の安全に関わるものについて、速やかに対応する。利用者の快適さに関わるもの、例えば、トイレの水洗化、洋式化などについては、計画的に実施する。加えて、森林公園については、令和5年度に愛知県公共施設等総合管理計画に基づく長寿命化初期改修工事を実施し、屋上防水工事や空調設備改修などの予防的補修を行った。また、県民の森についても、今後、長寿命化初期改修工事を実施する予定である。
今後も、施設の維持管理については、日常点検と併せて緊急的な対応や中長期的視点に立った対応を組み合わせて、利用者の安全と快適さの確保に努める。
【委員】
それぞれ計画的に取組を進めているとのことだが、かなり老朽化しているところが多くあるため、しっかりと計画的に取り組んでもらうようお願いする。
【委員】
畜産総務費の畜産振興費について伺う。
畜産環境対策費1,570万6,000円は、牛のげっぷによるメタン対策のための予算と聞いている。今年の1月26日の新聞の県内版にもそのような記事が載っている。改めて、畜産メタン削減実証事業を実施するに当たった経緯及び事業の内容について伺う。
【理事者】
メタンガスは温室効果ガスの一つであり、国内排出量は温室効果ガス全体の0.7パーセントであり、それほど高くないものの二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きい。また、国内で排出されるメタンガス全体のうち約27パーセントが牛のげっぷ由来といわれている。
2021年5月、農林水産省が策定したみどりの食料システム戦略でも、牛のげっぷに含まれるメタンガスの排出削減について、農林水産分野での温室効果ガス削減に向けた取組の一環として位置づけられている。
また、本県でも2022年12月に改定したあいち地球温暖化防止戦略2030では、本県での温室効果ガスの排出量を2030年度までに、2013年度水準と比較して46パーセント削減する目標を掲げている。
また、環境に配慮した持続可能な畜産業の実現の動きが国内外で活発になっており、牛のげっぷに含まれるメタンガスの排出量削減についても、その一つとして研究が行われている。
このような状況の下、乳用牛の飼養頭数が全国8位の酪農県である本県でも、牛のげっぷ由来のメタンガス削減に取り組んでいく必要がある。
来年度の本事業について、牛のげっぷに含まれるメタンガスを削減する技術の確立に向けた実証試験を農業総合試験場で実施する。また、畜産農家等に対して、農林水産分野における地球温暖化防止対策の必要性の理解促進を図る。
温暖な海に生息している海藻のカギケノリやカシューナッツの殻から抽出した成分を牛に食べさせるとメタンガスが削減された報告があるため、まずは、この成分を乳牛に食べさせ、その牛の生産への影響、その牛から搾った生乳、ミルクの品質や安全性への影響について調査する。また、牛のげっぷに含まれるメタンガス削減に関する研究を先行して実施している国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構をはじめ、国内外の研究機関との連携を図りながら、実用化に向け共同研究などについても検討していく。
一方、畜産農家や飼料メーカーなどの関係者に対し、農業総合試験場での試験結果や調査結果などを踏まえ、メタン削減の取組に対する理解促進を図っていく。
【委員】
農林水産省でメタンガスの削減計画を立てたと聞くが、財源には国費も含まれるのか。
【理事者】
本事業は、次年度は全額一般財源で計上している。
【委員】
メタンガスの発生を抑える飼料として、海草やカシューナッツの殻が挙げられたが、従来の飼料と比べてコストは高いのか。
【理事者】
カシューナッツの殻は廃棄するものを利用しており、一部、飼料化及び製品化されているものもあるため、リーズナブルな価格と想定している。一方、カギケノリについては、現在、研究途中であるため、コストについても実証の中で併せて検討していくこととしている。
【委員】
温室効果ガス全体のうちの0.7パーセントを削減することに力点を置くのがよいのかどうか、若干疑問を感じるが、事業内容については理解した。
【委員】
予算に関する説明書(1)の204ページ、水産業振興費の栽培漁業センター管理運営事業費の運営委託費について、その内訳と委託内容を伺う。
【理事者】
本県の栽培漁業の取組は、県有施設の栽培漁業センターでクルマエビやトラフグなど7魚種について採卵、ふ化させて稚魚まで育てる種苗生産を行い、生産された種苗は漁業者団体が干潟などで放流している。
運営委託費1億1,005万8,000円は、県が種苗生産業務を行うための予算である。委託費の内容と内訳は、餌や資材、親魚などの購入費及び水光熱費など、種苗生産に係る費用が5,857万2,000円、電気保安業務や機器点検などの費用及び通信費などの施設の管理に係る費用が795万5,000円、人件費が4,353万1,000円である。
【委員】
この質問に至る前に、包括外部監査の結果報告書の中に栽培漁業センターの記載があった。そこでの指摘事項は、業務一式について県が同じところを契約相手として選定し続けているとのことであった。説明のあった餌代の購入費や保安費、人件費は、令和4年度以前も同じような委託内容だったのか。
【理事者】
包括外部監査で指摘された点は、固有職員の退職金を委託費で支払っていたことである。その点については、愛知県水産業振興基金運営費補助金で固有職員の退職金を出すよう予算計上している。
また、栽培漁業の委託先は、これまで公益財団法人愛知県水産業振興基金に委託して実施している。
【委員】
1億1,005万8,000円の内訳が令和4年度以前も同じようなものだったのか。
【理事者】
同じである。
【委員】
金額は変動があるが、主に三つの項目で支出していたということか。
【理事者】
金額は上下するが、内容は同じである。
【委員】
そうすると、委託せずに県が直接購入するという手段を取らないのはなぜか。
【理事者】
栽培漁業センターで行われている種苗生産の業務は、種苗生産に特化した業務であるため、昔から漁業者団体が業務で生産を行っており、現在もこの体制を取っている。
【委員】
昔からということを聞いているのではなく、なぜ委託費として購入しなければならないのかを質問している。
【理事者】
ほかにも種苗生産している民間企業もあるが、県として7魚種の種苗を購入して放流することから、7業種購入し放流するため、委託して購入している。
【委員】
質問の趣旨は、なぜ委託して購入しているのかである。需用費や役務費で直接県が購入すればよいのではないか。
【理事者】
種苗生産は非常に繊細な業務である。例えば、東北から買ってきてそれを放流すればよいということではなく、場所ごとで遺伝的多様性も考慮しなければならない。また、海の中で生き残っていくためには、より良質な種苗を確保しなければならないため、種苗を作る業務は非常に難しい。そのような業務を同じところで長くやってもらうことにより、より良質な種苗が生産できるため、これまで長い間も委託方式で、愛知県水産業振興基金に委託して実施している。
確かに民間企業でも種苗を作っている会社はあるが、そのようなところから購入すると、安定したよい種苗を大量に確保することは非常に難しくなるため、委託方式を取っている。
【委員】
愛知県でも水産試験場でいろいろな研究をしている。中には最先端の研究もあり、三河湾や伊勢湾に特化した研究もあると思う。そのノウハウが委託でないと生かせないというのはなかなか理解しづらいが、そこをもう少し分かりやすく説明してもらいたい。
【理事者】
水産試験場では種苗生産の技術開発に取り組んでいる。数年後種苗生産を開始するハマグリ、ミルクイの技術開発を行っており、その技術開発ができたため、その技術を栽培漁業センターに移管していく。栽培漁業センターでは種苗生産に特化した業務を行っている。
【委員】
栽培漁業センターでは最先端の研究成果を基に、広く愛知県に特化した技術でやっているという説明だったと思うが、そこになぜ委託してまで買わなければならないのか。愛知県が開発した技術であれば、その技術を利用して、直接、役務費や需用費で購入できるような気がするが、なぜそこにワンクッション入れなければならないのか。
【理事者】
栽培漁業の技術開発については、水産試験場で何年かかけて行っている。漁業者から例えばトラフグの種苗を放流したいとの要望が出たら、まず、水産試験場で技術開発に着手する。そして、どのくらいまで安定して生産できるかがわかったら、栽培漁業センターに移管して種苗生産を始めるという役割分担ができている。
愛知県が直営で行うことも検討したことはあるが、栽培漁業の業務は昭和54年度からやっており、できるだけこのような生産業務はアウトソーシングする流れのもと、外部委託している。
【委員】
先日、栽培漁業センターには愛知県水産業振興基金に出向した県職員が愛知県水産業振興基金の職員として業務を行っており、その職員の多くは水産試験場に所属していた職員であるという説明を聞いた。逆に、愛知県水産業振興基金の職員は現地にもいると聞いたが、今の説明では、現地の職員も栽培漁業センターにいるとのことであるため、そこがあまり理解できなかった。
県が開発した技術で稚魚を育てて放流するのであれば、水産試験場の県職員が栽培漁業センターに行けば、ノウハウはとてもよいものができると思う。
しかし、愛知県水産業振興基金の職員もいるとの話だったため、愛知県水産業振興基金のための栽培漁業センターという理解ができるのではないかということで、質問した。今の説明を踏まえ、出向した県職員の職種、栽培漁業センターでの職種、また、愛知県水産業振興基金の職員との職種の違いについて伺う。
【理事者】
職種に県職員と固有職員の別はない。県から派遣職員が9人行っており、現地の固有職員が5人いる。県からの派遣職員9人については、1人が栽培漁業部長という課長級の職員であり、統括的な業務をしている。また、栽培漁業センターは7魚種の種苗を生産しており、三つのグループがある。三つのグループのそれぞれの班長が主査として、県から3人派遣している。それぞれの班に合計5人の職員がおり、主任・技師級の職員がついている。固有職員については、生産課長という生産を統括する職員が1人おり、残りの3人が主任・技師としてそれぞれの班に配置されている。あと1人は代務員で、宿直代務員が1人いる。このように、固有職員、派遣職員の別はなく、生産業務に同じく携わっている。
【委員】
水産試験場のノウハウを持った県職員は、愛知県水産業振興基金に出向し、栽培漁業センターで、愛知県水産業振興基金の職員として責任を持って業務を行っているとの話であったため、そこが、本当に水産試験場で研究した成果が生かせる形になるのか質問した。
先ほど水産課長は、愛知県に適した魚種、地元の要望を満たしたような魚種でないといけないとの説明をした。水産試験場の成果がそのまま生かせる職場が、なぜ、愛知県水産業振興基金に出向して、栽培漁業センターの班長としてやらなければならないのか。
【理事者】
県職員について、派遣で愛知県水産業振興基金で働く期限が3年であるため、3年たったら愛知県に戻る。ずっと栽培漁業センターや水産試験場にいるのではなく、いろいろな職場をローテーションしてスキルを高める必要がある。
一方、固有職員、愛知県水産業振興基金栽培漁業部に長くいる職員は、何十年も種苗生産業務をしている。それにより種苗生産のノウハウだけでなく、機械の管理にも習熟していく。古い施設のため、壊れているところもある。機械を管理することも長いキャリアがある職員がいなければうまくいかないため、栽培漁業センターには愛知県水産業振興基金の固有職員が長くおり、その人たちを中心にいろいろな技術の伝承を図る。そこに、県の派遣職員が行き、水産試験場の技術を伝えつつ、一緒に業務に当たる形で双方の役割を果たしながら、よりよい種苗を生産していく。
【委員】
委託費で購入する稚魚や卵について、委託でなくても買える、委託ではない形のほうがより研究成果が出るならば、ぜひ検討を進めてほしい。
説明にあった保安費などは施設に関わる話のため、愛知県水産業振興基金の職員が技術の伝承のために機器を長く管理するのであれば保安費などは委託でもよいと思うが、購入費はなぜ委託して買わなければならないのか。研究しているのは愛知県のため、ぜひ検討を進めてほしい。
《一般質問》
【委員】
委託先の公益財団法人愛知県水産業振興基金の主な事業について伺う。
【理事者】
愛知県水産業振興基金は県内における水産物の安定供給と水産業の発展に寄与することを目的に七つの事業を推進している。
一つ目が、水産資源の維持増大を図る水産資源増大対策事業である。
二つ目が、漁場内の障害物の除去など廃船・漁網等の処分経費を助成する漁場環境改善対策事業である。
三つ目が、漁場内に標識灯を設置する費用を助成する漁業操業安全対策事業である。
四つ目が、漁業者の不慮の事故に対する遺族への救済金などを支給する漁業救済等対策事業である。
五つ目が、漁業経営の近代化・安定化を図るための共同利用施設の整備経費等を助成する漁業経営安定対策事業である。
六つ目が、漁業者の担い手確保のための活動への助成をする漁業者育成対策事業である。
七つ目が、漁業者団体が行う消費拡大・ブランド化の推進等の取組に対して助成する啓発普及事業である。
【委員】
七つの事業の予算額は同様か。
【理事者】
一番大きいものが、漁業経営の近代化・安定化を図るために共同利用施設の助成をする漁業経営安定対策事業であり、直近の実績で約2億円である。
また、一つ目の水産資源増大対策事業は約1億9,700万円、廃船などの処分経費は約300万円、標識灯を設置する事業は約1,900万円、不慮の事故で亡くなり残された漁業者遺族の救済金等に約60万円、先ほど説明した共同利用施設への助成金が約2億円、担い手確保のための助成金が約130万円、最後に、ブランド化の普及啓発が約90万円である。
【委員】
愛知県水産業振興基金は漁業経営の安定と水産資源の維持増大が2大事業であると理解した。
次に、愛知県の漁業の邪魔になるようなごみはどのようなものがあるのか伺う。
【理事者】
ほとんどが大きな流木や貝殻などの自然物である。また、人工物は、空き缶、ペットボトル、ビニール袋、空き瓶、昔は大きいもので、自転車、冷蔵庫、テレビなどもあった。
【委員】
処分経費300万円はあまり大きな金額ではないとの説明を聞いたが、300万円をかけたごみはどのようなごみだったのか。
【理事者】
愛知県水産業振興基金で対象としているのが、廃船や使わなくなったロープ、網、出港の妨げになる岩などの障害物であり、特に廃船や漁網など、漁業者自身で使わなくなったごみの処分費用にも充てられている。過去3年の実績だと廃船やロープ、障害物の除去に使われていると聞いている。
【委員】
世間一般で言われるごみの処分ではなく、漁業者が本当に困っているごみの処分に、愛知県水産業振興基金が費用を出して処分したとのことである。愛知県が管理している漁港もあると思うが、例えば、愛知県が管理している漁港のごみは、どのように処分しているのか。
【理事者】
県管理漁港のごみについて、管理しているのは都市・交通局であるが、漁港内に漂着、漂流しているごみは、漁港機能維持の観点から、漁港管理者が回収処理を行っていると聞いている。
【委員】
漁業者が処分しているとのことだが、漁業者を監督しているのは愛知県のどの部署になるのか。
【理事者】
漁港については都市・交通局が管理しているが、漁業者の漁業活動を所管しているのは水産課である。
【委員】
漁業者に対してごみの指導はどのように行っているのか。
【理事者】
陸と同じく、自分が出したごみはその原因者がしっかり処分すべきであるため、折に触れ指導している。漁業者も廃船等を放置しているわけではなく、ごみがある程度たまったら漁業協同組合から処理業者に委託して処理している。
【委員】
愛知県水産業振興基金で支出した漁場環境保全のための費用は、本来は、愛知県水産業振興基金が支払うべきものではないと思うがどうか。
【理事者】
愛知県水産業振興基金は、漁業振興のために漁業者が困っていること、漁業者のためになることを補助として行うことを目的として設立された基金である。ごみを捨てる場合の費用は発生源である者が負担すべきである。当然、原因者である漁業者の自己負担はあるが、その一部を補助しているため、愛知県水産業振興基金の業務としては正当なものだと考える。
【委員】
近年、いろいろな産業においても担い手不足による事業承継の課題がある中で、人の営みの基本が食の根幹を担う一次産業であり、その担い手不足や就業者不足も深刻な状況である。
そこで、農業分野における女性の活躍推進について伺う。
女性の農業への参画は、戦後から令和にかけての変遷が農林水産省のホームページにも記載されている。高度経済成長期には、男性の農外就労機会の拡大によって、三ちゃん農業への形態変化や、稲作機械の導入などによる省力化等で、男性が農外就労していても休日の稲作作業が可能になったことにより、女性が生活改善や特産品づくり、農産物の直売などの起業活動に取り組めるようになったことなど、女性ならではの発想や知恵を持って女性の資産形成に一定の役割を果たし、自らの意思によって経営等にも参画してきたとのことである。
その後、農林水産省は農山漁村の発展促進に向けて女性の三つの能力、知恵、技、経験を発揮してほしいという願いを込めて、農山漁村婦人の日、後の農山漁村女性の日を農作業が比較的少ない毎年3月10日に定めた。平成3年には、西暦2000年に向けての新国内行動計画が定められ、翌年にはそれを具体化するために中長期ビジョンが策定され、女性の参画促進、家族経営協定の締結及び女性の起業支援等が明記された。それらを経て、平成11年に社会全体で性別に関わりなく個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現を目的とし、男女共同参画社会基本法が施行された。農政においても食料・農業・農村基本法で男女共同参画の規定が盛り込まれた経緯がある。
これに基づき、男女共同参画の普及啓発、家族経営協定の締結促進、企業や6次産業化への支援、認定農業者になるための研修などが各都道府県でも実施されるに加え、強い農業・担い手づくり総合支援交付金や、農山漁村振興交付金等の事業においても女性活躍推進に向けた措置が設けられた。
このように女性農業者の地位向上や農業経営の女性参画推進に取り組みながら平成25年度に農林水産省が立ち上げた農業女子プロジェクトによって女性農業者の意識もさらに高まり、改革や経営力の発展、自動車や農業機械、衣料品メーカーなど、女性でも扱いやすい農機具や自動車等の開発などに携わり、女性も働きやすい環境づくりが女性の手によって整えられた。また、女性ならではの取組によって農園や農産物への付加価値も高められている。
愛知県では、1994年3月にあいち農山漁村女性プランを策定し、その後二度改定があり、2016年には第4次となるあいち農山漁村男女共同参画プラン2020を策定し、男女共同参画による活力ある地域社会の形成という基本理念に基づき、パートナーシップ経営で輝く農林水産業の実践や、女性が活躍する地域社会への実現を推進した。その結果、女性就農者の増加や女性による地域農政への提言などの機会も増え、新型コロナウイルス感染症による経営への影響や労働環境の変化、スマート農業の促進など、環境の変化がある中、2021年3月に策定されたのが第5次のあいち農山漁村男女共同参画プラン2025だと理解をしている。そこで、プランの進捗状況、家族経営協定の締結数及び女性役員がいる農業法人の割合について伺う。
【理事者】
あいち農山漁村男女共同参画プラン2025では、ワーク・ライフ・バランスの取れた役割分担を基本的施策の一つとして掲げており、具体的な取組として、家族経営協定の締結を推進している。
家族経営協定とは、農林漁業経営を共同で営むために、経営主やその配偶者、後継者などが家族内で話し合い、一人一人の給料や休日等の就業条件、経営方針や営農計画等についての協定を結ぶものである。
プランでは、2025年度までに1,883戸締結することを目標値としており、進捗状況は、2022年度末時点で1,832戸締結している。また、経営発展につながる女性の活躍促進を基本的施策の一つに掲げており、具体的な取組として、女性の経営参画につながる法人化を推進している。
本県における女性が役員となっている農業法人の割合は、2025年度までに50パーセントとすることを目標値としており、進捗状況は、2022年度末時点で47.65パーセントである。
【委員】
女性が地域で活躍するためには経営の参画だけではなく、様々な場面で女性の活躍が必要不可欠である。
そこで、県内の農業協同組合の女性役員の割合、農業委員や農地利用最適化推進委員に占める女性の割合について伺う。
【理事者】
あいち農山漁村男女共同参画プラン2025では、政策や方針決定の場での女性の活躍促進も基本的施策の一つとしており、地域のリーダーとして活動する女性の発掘、育成を図り、農業協同組合役員や農業委員などにおける登用割合を高め、女性の意識向上、社会参画を推進している。
プランでは、2025年度までに県内の農業協同組合の女性役員の割合を15パーセントとすることを目標値としている。2022年度末時点で15.3パーセントであり、目標を達成している。
また、農業委員や農地利用最適化推進委員における女性の割合は、2025年度までに15パーセントとすることを目標としているが、2022度末時点で10.5パーセントのため、県農業会議等関係団体に対して働きかけを行うなど、引き続き登用率の向上に取り組む。
【委員】
あいち農山漁村男女共同参画プランの推進においては、モデル的な取組事例を広く紹介してもらい、世の中に広めることも大切だと思う。そこで、県内の女性参画事例があれば伺う。
【理事者】
県内の農業への女性参画の一例は、本年2月に先進的な経営理念で地域社会に積極的な役割を果たしている若手農業者らを表彰する中日農業賞の優秀賞を受賞した碧南市の永井千春氏の活動が挙げられる。永井千春氏は、地元のブランドニンジンであるへきなん美人やタマネギを栽培しており、2016年に県青年農業士の認定を受け、2018年には碧南市青年農業士会の代表を務めた。また、地元の生産者有志でニンジン・タマネギPR会を立ち上げるとともに、本人が管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロの資格を生かした食育活動や、SNSによる情報発信などに取り組んでいる。産地のブランド力向上に貢献するとともに、農福連携を通じて障害者の就労や生きがいづくりの場を生み出すなど、地域貢献にも取り組んでおり、女性農業者や地域の若手農業者の中心的存在として積極的に活動している。
【委員】
最後に、女性のさらなる農業分野での活躍に対し、今後どのような取組を考えているのか伺う。
【理事者】
農業分野で女性に活躍してもらうためには、誇りを持って農業に取り組む女性の経営参画を促進するとともに、自らのキャリアを生かした社会参画も促進する必要がある。
県ではプランに基づき、女性農業者を対象としたセミナーや、リーダー育成研修などを開催して女性農業者が経営参画や社会参画に必要な知識、技術の習得及び活躍できる場の設定を支援し、男女が対等に活躍できる地域社会の実現を目指している。
こうした取組は継続した実施が必要なため、今後も、女性の活躍推進に向けた取組をしっかりと進める。
また、現行プランにおいては2025年度までの5年間を対象期間としているため、来年度は、次期プランの作成に向け、農業者に対して男女共同参画に関する意識調査を実施するなど、現行プランの効果を検証する。
【委員】
最後に三点要望する。
まず、地方では人口減少という大きな課題がある。人口減少を食い止めるには若い女性が都市部に流出することを食い止めることだともいわれているため、ぜひ女性が活躍できる魅力ある農業づくりをしてもらい、女性に地方に戻ってもらう。
次に、今後来ると言われている食糧不足や、現に抱えている担い手不足、耕作放棄地の解消などの課題も解決しなければならないため、現在の農業では、作って終わりではなく、様々なアイデアを用いて創意工夫しながら加工し、販売戦略なども考える6次産業化も進んでいる。そこには多くの女性の知恵や活躍もあるため、そのような環境を縮小させることなく広げて健康志向の向上や環境に配慮した取組、海外労働者の受入れによるネットを駆使した口コミでの海外への販路の拡大など、スマート農業を用いた省力化と生産力の向上に取り組んでもらい、持続可能な農業をつくる。
最後に、現在取り組んでいる農福連携について、障害を持った人には男性も女性もいるため、男性だけでなく女性からのサポートも必要である。しっかりとしたサポート体制を整えて本来の目的である障害者の就労、自立につなげてもらいたい。
以上のことから、人口減少や担い手不足、耕作放棄地の増加、就労先となる企業の存続にしても、さらなる女性の活躍でこれらの課題を解決できるのではないかと考えるため、新しい農業形態を構築していくべきである。
そのために、女性がさらに農業にやりがいを持って気軽に参入できるような支援体制を、国をはじめ、愛知県でもしっかりと取り組んでほしい。
【委員】
農作業事故について伺う。
現在の国会で議論が進んでいる食料・農業・農村基本法改正案では、望ましい農業構造の確立について、多様な農業者により地域を挙げて農業・農地を守る内容が含まれている。これは、基幹的農業従事者が今後20年で現在の4分の1の30万人に減る予測もある中で、これまで担い手に政策が集中し少数精鋭化してしまったこと、高齢化が進んで、担い手だけでは農業や農地を維持できないという強い危機感が背景にある。
この多様な農業者には、安定的な農業経営を営む基幹的農業従事者のほか、定年退職後に本格的に農業に時間を割くようになった高齢者や新規就農する若者、女性、移住者、外国人など様々な担い手や支え手が含まれている。例えば、農業分野では来年度から5年間の受入れ上限が、現在の3万6,000人から倍の7万8,000人となり、同様に漁業も枠が倍増し、林業や木材産業の枠は新設されるとの報道や、育成就労では、これまでの技能実習ではなかった稲作や肉用牛を含む農業の全分野で就労が可能となり、転籍や既存の農作業受入れ方式に加えて派遣形態での就労も認められる方針であるとの報道があった。
このように外国人材を含む多様な人材が農業現場で働くなら、農業が安全な産業で安心して働ける環境でなければならない。しかし、農林水産省が本年2月に公表した2022年度の調査では、全国で農作業事故による死亡者は238人であり、前年から4人減ったものの、農業従事者10万人当たりでは、前年より0.6人増えて11.1人となり、過去最高値である。これは、全産業平均1.2人の10倍近い数字であり、農業における死亡事故の発生率は、ほかの産業に比べてかなり高水準で推移している。また、危険な作業が伴う建設業の5.9人の2倍の発生率となっており、数字からは、農業は危険と隣り合わせの産業であるといえる。
農作業死亡事故の内訳は農業機械に関するものが最も多く、64パーセントで152人を占めており、その約半分の72人が機械の転倒・転落が原因である。最近では熱中症が原因の死亡事故が12パーセントで29人を占め、その割合が増加傾向である。また、死亡者は高齢者が多く80歳以上が全体の42パーセント、65歳以上が86パーセントと、年代に偏りがある。
そして、昨年10月、私の地元西尾市の畑でトラクターがひっくり返り、下敷きとなって82歳の男性が胸部圧迫のため死亡するという事故が起こった。報道によると、畑を耕している中、トラクターが斜面を上った途中でバランスを崩し、ひっくり返った可能性が高いと検証されていた。また、西尾市では、昨年7月に畑で90代の女性が倒れているのが発見され、熱中症の疑いで緊急搬送されたが死亡したという事故もあった。
このような痛ましい死亡事故のみならず、死亡以外の事故も多くあると推測されるが、農作業では災害事故の発生確率に関する豊富な統計データはないに等しいため、けがなどの死亡以外の災害を含めた農作業事故のリスクを体系的に捉えることは非常に難しく、農作業事故の全体像がつかめていないのが現状である。
質問するに当たり、確認できた調査は主に三つある。
一つは厚生労働省の労働災害・死亡災害件数の集計である。これは、労働者死傷病報告を出したことにより、所轄の労働基準監督署が調査して死亡労働災害を把握した際に作成する死亡災害報告を集計したものである。死傷病報告の対象となるのは、労働安全衛生法で保護の対象となる雇用されている労働者であり、ここから分かるのは業務上で死亡した人数である。
もう一つが先ほど紹介した農林水産省の農作業死亡事故調査である。これは厚生労働省の人口動態調査の死亡死傷表等からの情報を利用して集約している。このように集計するため、公表は2年遅れになる。これは労働者だけでなく、労働者でない人、自営農家者も含まれ、農作業従事中など全ての農作業の死亡事故の件数が含まれているが、けがは含まれていない。
最後の一つが、全国共済農業協同組合連合会の行っている調査である。これは、共済金支払いデータに基づき、農作業事故の発生状況について分析したものである。具体的には全国共済農業協同組合連合会の様々な共済のうち、事故状況説明が確認可能な傷害共済と自動車共済を対象としており、その中から農作業事故を抽出したものであり、けがを含めた事故全体の把握が可能である。この調査の最新のものが、全国共済農業協同組合連合会が昨年8月に農林水産省が主催した令和5年秋の農作業安全確認運動推進会議の中で報告されたものである。約3万6,000件の共済金支払いデータに基づき農作業事故の発生状況を分析した結果、傷害事故の年間発生件数は死亡事故の約266倍であり、精神的・肉体的な障害が継続する後遺障害を伴う深刻な事故は死亡事故の2倍に上ること、そして、この分析データの割合を先ほどの農林水産省の調査の令和3年の年間死亡者240人に当てはめると、266倍となるため、年間の農作業事故が発生している件数は約6万5,000件、これを割ると全国で1日当たり約180件の農作業事故が発生していると推計できる。農作業事故の全体像から考えると、公表されている死亡事故は氷山の一角であることがわかる。
農業の将来を多様な農業者に託すなら、より安全性の高い環境への改善が必要である。そのためには、地域ごとにけがを含めた農作業事故情報の正確な実態把握と分析が肝要であるが、事故情報を吸い上げる法的な仕組みがないことが問題である。通常は、労働安全衛生法が適用される労働者に労働災害が発生した場合は、事業主が所轄の労働基準監督署長に労働死傷病報告の提出義務があるが、そもそも自営の農業従事者は労働者に当たらないことから、死傷病報告の義務がなく、事故の情報を把握するすべはなく、明確な加害者がいない限りは自己責任であるとしか言いようがない。だからこそ原因を追求し、再発防止につなげるなどの作業が行われない。
これらの農作業事故の実態を踏まえ、何点か伺う。
本県では、どのような仕組みで農作業事故の情報を把握しているのか、死亡事故以外の把握についてはどのように行っているのか、そして、本県における農作業事故の発生状況、種類と傾向、どのような年齢割合で、事故の背景にどのようなことがあると分析しているのか。
【理事者】
本県では、農作業事故防止対策に生かすため、関係機関の協力を得て県内で発生した農作業事故の軽傷から死亡までの情報を収集している。
農業経営課では、消防署が把握した農作業事故情報を所轄する農林水産事務所農業改良普及課に情報提供してもらうよう防災安全局に協力を要請し、消防署が把握している農作業事故の情報を随時収集する体制を取っている。また、農業改良普及課では、消防署からの農作業事故に関する情報のほか、市町村や農業協同組合が把握した農作業事故情報も随時収集している。加えて農業経営課では毎年5月頃、全国共済農業協同組合連合会から農作業事故による共済の活用実績の情報提供を受け、事故情報を収集している。
こうした情報を農業経営課で集約し、トラクターの転倒による事故などの具体的な発生事例を事故防止の注意喚起に活用し、農作業事故発生防止に取り組んでいる。
農業経営課で把握している令和4年の農作業事故の発生件数は80件で、近年減少傾向である。農作業事故の発生原因別に見ると、圃場での転倒や転落が28件、草刈り機などの農業機械による負傷が14件と多くなっている。事故発生件数の年齢割合は、40代以下が19パーセントであるのに対し、50代が16パーセント、60代が20パーセント、70代が30パーセント、80代以上が15パーセントであり、70代が最も多い。
このように高齢者で事故が多いのは、全農業従事者のうち70代の占める割合が29パーセントと高いこと、こうした年代では運動機能や認知機能が低下傾向にあることが背景にあると考える。
【委員】
熱中症を原因とする事故は特定が難しいと思うが、近年、大変猛暑であり、農業は一人作業が多く、周囲の目も届きにくいこともあるため、家族などの近い人が効果的に注意喚起できるようなものがあるとよい。農林水産省が熱中症対策をはじめ、各種作業の安全を普及啓発するイラストのステッカー作っており、データをホームページから印刷して使うものがある。このようなものを配布し、目に付く場所に設置することや、事故のさらなる分析のために、農機メーカーや関係団体から情報収集をしてもらいたい。
昨年、厚生労働省が安全衛生対策として、家族経営の農家など、個人事業主の労災事故の実態把握する仕組みづくりを検討中との報道があった。実効性が担保されるかまだ不明だが、具体的には休業4日以上の死傷事故を起こした場合、労働基準監督署に情報を提供するものである。このような国の動向を見つつ、県として把握した農作業事故の全体像を基に、農作業安全対策を現場へ還元し、具体的には指導体制の整備やより実効性のある研修を行い、農作業事故を減らすことが重要である。
農作業安全に関して農林水産省はこれまで、春と秋に農作業安全確認運動を展開してきた。シートベルトの装着呼びかけや、近年では農業機械事故対策に焦点を絞り、農家への注意喚起を重点的に行い、農機死亡者を2022年までに2017年から半減させ、105人とする計画だったが、結果は152人で未達成であった。研修の事故予防効果は立証されている一方、実効性に課題がある。これを踏まえ、本年2月に農作業安全対策全国推進会議で、来年度の農作業安全対策の推進方針と取組が発表され、より現場の実情に即した知識を取得してもらうことが重要であるとして、来年度からはこれまでの農作業安全運動に変わり、農家への研修を実施する強化期間を設けること、2024年から2026年までの3年間を集中対策期間として、2026年の農作業事故全体の死亡者を2022年から半減させて、119人以下とする新たな目標が掲げられた。具体的には、5月から7月の強化期間には熱中症対策を、農業者が受講しやすい農閑期12月から翌年2月の強化期間には最大の事故要因である農業機械事故の安全知識の向上をテーマに、農林水産省が作成した分かりやすいコンテンツを使用した基礎研究と、農機の操作方法についての実施・実践研修を、農作業安全に関する指導者を活用して実施し、研修会の受講を農家に促そうとしている。また、推進目標として、全ての都道府県で研修実施回数を令和5年度よりも増やすことを掲げている。
本年2月現在、農作業の安全に関する指導者は、全国で行政、農業協同組合、農機メーカー、販売店の職員など約5,300人が育成されているが、地域で実施されている研修の約55パーセントの指導者しか活動できていないことから、農林水産省は指導者の育成と活動の推進に力を入れ、来年度の指導者育成研修の実施回数を、今年度の6回から7回に増やす取組を行う。また、農作業安全研修において指導者の活用を促すため、地域内の研修等をリスト化した研修会リストの作成と、都道府県が取りまとめた機関による協議会内の農作業安全に関する指導者リストの整備を行い、関係機関で共有を進め、参加機関による指導者のマッチングを推進する。その他の取組として、注意喚起の実施、都道府県の地域単位の推進体制の強化について、農業者を対象とした農作業安全に関する研修の開催など、県や地域の段階において農作業安全対策を効果的に講じるためには、行政、生産者団体、農業者や販売店などの関係機関が事故情報や普及啓発方策を共有し、一体的に取り組んでいくことが重要であるとして、地域段階の協議会の設置が求められている。
関連して、労働安全衛生法の規則改正が本年4月に施行されることに伴い、個人農家や農業法人が雇用形態によらず雇い入れた労働者に対し、農作業中の事故防止を指導する雇入れ時教育の省略規定が廃止される。これまで全産業共通の義務であった事故時の応急措置などの4項目に加え、機械の危険性や安全装置の保護具の性能・取扱方法など各作業の手順、各作業開始時の点検の4項目を新たに義務づけるものである。違反すると罰金を科される場合もあり、農作業安全を事業主から意識づけするためには非常によいと思うが、どのように周知していくかが課題である。
このような農林水産省の運動方針を受けた愛知県の動向や、雇入れ時教育の変更点などの周知について伺う。
農林水産省の資料では、より多くの農家に研修を行った県のほうが死亡者が減る傾向があると分析され、第二の推進目標として研修実施回数を増やすことになっている。これまでの本県における農業機械事故や農作業中の熱中症に対する啓発、講習会・研修の実績、どこで誰を対象にどのように行われているのか、本県で労働者を雇用する事業者、経営体のうち、常雇い・臨時雇いの人数、開催時の課題について伺う。また、農作業安全に関する指導者研修を受けている人数、県職員ではどのような人が受けているのか、指導者リストや研修会リストは公表されているのか、その他の取組の地域段階の協議会は、本県でどのように設置され、注意喚起を行っているのか、雇入れ時の省略規定廃止ではどのように周知を図るのか伺う。
【理事者】
本県では、農作業事故防止を目的として、農繁期である4月から5月及び9月から10月を、熱中症防止を目的として7月を農作業事故ゼロ運動強化月間としている。
本年度は、農作業事故防止と熱中症予防に関するリーフレットを約1万部作成し、強化月間期間中に関係機関を通じて農業者等に配布し、農作業事故防止を啓発している。また、農業協同組合、市町村に対して広報紙への農作業事故防止や熱中症予防に関する記事の掲載を依頼し、農作業事故防止に取り組んでいる。
農作業安全講習会については、農業者が集まる機会を捉え、農業改良普及課が実施している。令和4年度は298回、6,657人を対象に実施し、農作業事故や農作業中の熱中症予防に取り組んでいる。
また、農林業センサスによると、本県で労働者を雇用する農業形態は3,604形態であり、常雇い、臨時雇いはそれぞれ6,090人、1万4,772人である。研修開催に当たり、農作業安全の内容だけでは参加者が集めにくいことが課題であり、他の研修内容と併せて研修会を開催してもらうことなどの工夫をしている。
農作業安全に関する指導者研修の人数、県職員の受講者、指導者リスト、研修会リスト、取りまとめと公表について、国は農作業安全に関する指導者を育成するため、令和3年度から県や農業協同組合等の職員を対象に指導者向け研修会を実施している。
本県では指導者向け研修会を令和3年度から令和5年度までの3年間で、県職員のほか農業協同組合や農業機械販売店の職員等226人が受講した。県職員については、現場で農業者の指導に当たる農業改良普及課の職員が中心となり受講している。
県では指導者向け研修会を修了した人を指導者としてリスト化し、取りまとめたものが国から公表される。また、県では年間の研修計画をまとめた研修会リストを作成している。しかし、農作業安全に関する研修会は特定の農業者が集まる機会を捉えて実施していることから、研修会リストを公表して一般農家の参加を募集することは行っていない。
地域段階の協議会の設置とその注意喚起等の取組と、雇入れ時の省略規定廃止の周知について、国では行政や農業団体などの地域の関係機関が情報交換等を行い、連携しながら、農作業安全について現場への啓発を進めていくことが重要であるとし、都道府県など関係機関に対して、都道府県段階及び地域段階の農作業安全推進協議会等の設置を進めている。
本県では平成16年に県段階の協議会として、愛知県農業会議、愛知県農業協同組合中央会、愛知県経済農業協同組合連合会、全国共済農業協同組合連合会、愛知県農業機械商業協同組合等で構成する県域の愛知県農作業事故ゼロ運動推進会議を設置している。令和4年度は、各農業改良普及課が管内の市町村、農業協同組合等の関係機関で構成する地域協議会を設置し、5月から7月を中心に年1回以上開催し、県内の事故発生状況や事故防止対策の共有など、地域の実情に応じた農作業安全への取組などを進めている。
また、労働安全衛生法規則が改正され、雇入れ時教育の省略規定が廃止されたことに伴い、雇い入れた労働者に対して農作業中の事故防止を指導することが必要となっている。農業改良普及課等が講師を務める農作業安全に関する研修会等で周知を図ることなどを進めていく。
【委員】
県の研修会は特定の農業者が集まる機会の中でとのことだが、恐らく事業主が多いのではないかと思っている。研修内容を受講者からその先で働いている労働者や受講していない人にどのように伝えていくのかが重要であるため、一般参加募集などの対象者拡大が難しいのならば、例えば、研修内容を動画で確認できる、受講者が他の人に内容を共有できるような仕組みづくりを検討してほしい。
また、研修会の参加率や、参加した際の学びの意欲を高めるためには答弁のとおり、農業者に興味を持ってもらうような研修の抱き合わせが必要である。地域協議会でも、どうすれば情報が隅々まで行き渡るか、研修会の内容やクオリティー向上について議論してもらいたい。
先月、全国共済農業協同組合連合会が春の農作業安全確認運動に合わせ、10代から50代の男女約1万人を対象に実施した農業に関する意識実態調査が公表され、農業に5年以上従事している100人と農業に興味がある未経験者600人に、農業で心配に感じることを複数回答で聞いたところ、5年以上の農業従事者のうち45パーセントが農作業中のけが・事故を挙げ、自然災害に次いで2番目に多く、7割が農作業中に事故の危険を感じるヒヤリ・ハットの経験があると答えた。一方、未経験者の農作業中のけが・事故という回答は、全体の10番目であり、天候不良や自然災害のほか人手不足、病害虫などへの心配を下回っていた。
当たり前かもしれないが、農業の未経験者は、異常気象や自然災害・不作などを強く心配する一方、農作業中のけがや事故への不安や危機意識はベテランの従事者に比べ薄いことが確認された。
このことから、新規就農者らに農作業安全の意識をどう高めてもらうのかが課題である。また、農作業事故が起こった際は、経営が傾いたり離農につながりかねないことから、備えとして公的な補償や保険が必要だと思うが、全国共済農業協同組合連合会の農作業中における農機具使用中の障害共済等に加入している人もいるものの、農作業などの業務上等のけがや死亡等に対する補償には、国の制度である労働者災害補償保険への加入も有効である。労働者災害補償保険は、企業などで働く場合は強制加入となるが、農業において従業員を雇用する場合は、法人経営は1人以上雇用すれば強制適用事務所、個人経営の場合は雇用する人が5人未満の場合は任意の適用事務所となっている。本来は労働者の業務災害に対する補償が目的の制度だが、労働者ではない農業経営者や家族労働者であっても労働者と同様の作業をしており、作業実態等から判断し、特に労働者に準じて保護する必要があると認められる者に対しては特別加入の制度が設けられており、保護の対象となる。しかし、全国の農業での労働者災害補償保険の特別加入者数は2021年の時点で、基幹的農業者全体の1割、約13万284人にすぎないことから、農林水産省も、来年度の農作業安全対策推進方針に労災保険特別加入促進を盛り込んでおり、その資料の中で、愛知県は特に基幹的農業従事者数に対して労働者災害補償保険特別加入者が低く、取組が進んでいない都道府県として挙げられている。
愛知労働局に確認したところ、2022年時点で、本県では労働者災害補償保険に特別加入するための加入窓口の一つである特別加入団体、特定農作業従事者の枠が6団体約500人、指定農業機械作業従事者の枠が9団体150人、合計約650人しかこの制度を利用していない状況であり、任意適用となる人々にも万が一の補償制度の活用、労働者災害補償保険特別加入制度をPRし浸透させていく取組が必要である。
そこで、農業の入り口での教育と、労働者災害補償保険などの周知について伺う。
本県の所管する農業の入り口、例えば、農業大学校等での学生への農作業安全に関する教育や研修状況はどうなっているのか。また、その中で、労働者災害補償保険などの制度についての教育は行われているのか。さらに、農業大学校で、農作業機械、特に公道走行時の大型特殊自動車免許及び牽引免許の取得研修時に、公道走行中のみならず農作業中の安全管理や労働者災害補償保険などの制度は内容に含まれているのか伺う。
【理事者】
本県の農業大学校では、まず、1年生全員を対象に農作業事故の発生原因と防止対策などを農業機械利用の講義や実習で教えている。
農業大学校生以外では、新規参入希望者や農業を始めて間もない農業者などを対象とした研修で農作業安全に関する講義や実習を行っている。
また、農業大学校は県内では、平針の運転免許試験場以外で唯一トラクターの運転コースを有しており、農業者を対象に農耕車限定の大型特殊免許や牽引免許を取得できる研修を行っている。今年度は、大型特殊免許研修に農業大学校生も含め162人が受講し、牽引免許研修は23人が受講している。
このような農業大学校の講義や研修で労働者災害補償保険の特別加入制度も周知している。
【委員】
雇用する側の農業者に対する労働者災害補償保険特別加入制度があると理解していても、いざ加入するとなると保険料の壁が非常に高い。他県では、労働者災害補償保険特別加入促進の取組として、保険料の一部を助成する取組等もあると聞くため、関係局で連携して研究してもらいたい。
最後に、農業従事者以外の農作業安全について伺う。
私の地元では、多面的機能支払事業が各地で盛んに行われており、農村環境が維持されている。私は農村集落に住んでいるため、家の農地だけでなく、いわゆる実行組合の役員や多面的機能支払事業における活動団体の共同作業等で、刈払機やチェーンソーを取り扱うことがある。現在、このような共同作業については様々な意見が出ているが、実際に汗を流して作業することから、地域のすばらしい景観や環境をつないでいかなければならない思いにもなるため、このような作業も必要であると考える。しかし、一度この作業で事故が起きると、必ずその後の活動にも影響が出てしまう。特に農村集落では高齢化が進んでおり、どこに行っても作業を行う人の平均年齢はかなり高く、親の世代が体力的に厳しいためリタイアし、子供の世代にバトンタッチしたくても、子供の世代は子育て等も落ち着いておらず余裕がないのが現状である。また、農地の所有者といっても専業農家は、ほぼいない状況であり、兼業や定年退職後に農地維持管理に取り組む人が多いため、そもそも農業機械を使った作業に不慣れな人も多く、農地所有者以外の、例えば集落全員が1世帯1人参加するような作業、いわゆる川役、道役といわれる日常的に刈払機等の農機具を使わない人が自己責任で農機具を使うため、さらにリスクが高くなる。例えば刈払機を使って草刈りをする場合、労働者ならば、厚生労働省が事業者に対し、丸1日6時間の安全衛生教育の実施を勧奨しており、農業大学校でも研修講座があるが、このような作業に参加する人々がこのような安全衛生教育を受けているのか、同じような知識を習得した上で作業を行っているのか、誰も確認しない上、問題視されることもない。
どのような組織でもリーダーが粉骨砕身の努力で、農作業安全対策も活動計画に基づき取り組み、多面的機能支払事業に対応したイベント共済に加入し、リスクヘッジに取り組んでいるが、責任の重大さゆえ、リーダーの成り手が今後出てくるのか危惧している。
このような地域の現状を踏まえ、農業従事者以外の農作業、環境維持活動に取り組む人々への安全対策や安全確認の取組が進むよう、行政からも積極的に呼びかけを行っていく必要がある。
そこで、多面的機能支払事業では、農家だけでなく地域住民も参加して草刈りや泥上げなど、農用地や水路・農道等の保全管理を行っており、不慣れな草刈り作業等で事故が起きることも懸念されるが、県としてどのような安全管理を行っているのか。代表者が参加する講習会などから各組織へどのように展開されているのか、安全管理チェックリストなどの実効性についてフォローアップされているのか伺う。また、今後、多様な人材が参入しても、農作業中の重傷事故が相次げば、離農につながり生産基盤を維持できなくなることから、食料安全保障や農地農村の維持のためには農作業現場の安全対策強化が必要であり、他産業と比べても低いと思われる作業者自身の安全意識を向上させる取組が必要だと思うが、今後県として、農作業安全にどのように目標を立てて取り組んでいくか。
【理事者】
多面的機能支払事業の活動組織は、活動期間の5年間に1回以上、刈払機などの機械の安全使用に関する研修や講習会を開催または参加することが義務づけられている。
また、県から市町村を通じて活動組織へ、安全確認チェックリストや草刈り作業中の留意点などを分かりやすくまとめた共同活動の安全のしおりを含め、多面的機能支払の共同活動に係る安全管理の徹底を毎年通知している。
さらに、昨年度は他の模範となる優良な活動組織を表彰する農地・水・環境のつどいにおいて、約400人の活動組織の人々が参加し、専門家を講師に招き、安全な草刈り作業の講習を行った。
今後も機会を捉えて安全管理の指導を行うとともに、万が一に備えた保険の加入についても啓発する。
【理事者】
今後、県としての農作業安全の取組について、農業の機械化が進展する一方、農業機械の利用等に起因する農作業事故は発生し続けている。農作業事故は人命に関わることに加え、人命を損なわなくても農業経営に大きな影響を及ぼすため、農作業事故防止を推進する必要がある。
そのため本県では、引き続き農作業事故ゼロ運動強化月間を設定し、啓発活動を集中して実施するほか、農作業安全に関するリーフレットの配布や、農業協同組合や市町村の広報誌への掲載依頼により農作業安全を啓発する。
また、国の熱中症対策研修実施強化月間である5月から7月及び農作業安全研修実施強化期間である12月から2月に、農作業安全講習会の実施回数を増やして啓発に取り組む。
【委員】
農作業安全総合推進協議会が2021年に作成した農作業安全指導マニュアルにおいて、法律や制度以外での農作業事故は減らない理由、多くの農業者に見られる傾向が以下のとおり挙がっている。田畑の端をぎりぎりまで機械で作業する、田畑に隙間があれば少しでも余った種や苗を植える、暗くなっても作業を続ける、作業や作物の生育状況が近所に遅れていることを強く気にする、農業機械に安全性を求めると不細工なカバーがついて使いづらくなり値段が高くなると考える、作業中にけがをすると自分の不注意だけを責める、高齢になるほど家族の制止を聞かなくなる、事故調査は他人の不幸に首を突っ込むものであるため良くないものと考える、事故を起こすと自分の不注意だけを責め黙り込むなどの行動や思考パターンが挙げられていた。けがをしても自業自得、不注意だけを原因だと考える極めて日本人的な感覚が多いと感じた。
県としても農作業安全対策に意識を高めてもらい、今年の事故が1件でも減るよう、可能な限りの対策強化をお願いする。
【委員】
畜産物の輸出について伺う。
我が国の農林水産物食品の輸出については、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律に基づき、令和2年4月に農林水産省内に農林水産物・食品輸出本部が設置された。輸出本部の設置は、政府全体での統一した取組と戦略的な方針の下で輸出拡大を目指している。
具体的には農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を策定し、その戦略の下で多角的なアプローチを実施している。主な取組として、輸入国における日本の農林水産物及び食品に対する規制の緩和や撤廃を目指す国際協議の推進、輸出を行うための施設整備や、その施設の認定手続の迅速化が挙げられる。また、これらの取組を支えるために輸出に関心を持つ事業者に対する支援も強化されている。
2023年の畜産物輸出実績は1,080億円であり、2012年以降年々増加している。この中でも牛肉の輸出は特に際立っており、全体の約57パーセントに当たる578億円を占めている。この数字は日本農畜産物が国際市場でどのように受け入れられているかを示す重要な指標となっている。さらに政府は2030年に向けて畜産物の輸出目標を設定しており、その内容は牛肉が3,600億円、豚肉が60億円、鶏肉が100億円、鶏卵が196億円、牛乳・乳製品が720億円となっている。
これらの目標額は日本の農林水産物、食品の国際競争力を高め、さらなる市場拡大を目指す政府の意欲を反映している。
品目ごとの国地域別輸出実績に目を向けると、牛肉は上から順に、台湾、アメリカ、香港、カンボジア、EU、シンガポール、イスラム諸国、タイと続く。豚肉は香港、シンガポールで94パーセントを占めており、鳥肉、鶏卵は香港が90パーセント以上を占めている。牛乳・乳製品はベトナム、香港、台湾、シンガポールが主な輸出先となっている。
畜産物を海外へ輸出する際には、まず、輸出先の国が定める法律や安全基準を理解し、適合するために必要な証明書や書類を準備することが求められる。これは輸出される畜産物がその国の要求を満たしていることを保障するために不可欠である。
次に、畜産物が高い品質を維持できるよう、適切な飼育、処理、包装の方法を採用することが必要になる。これにより海外の消費者にも満足してもらえる製品を提供できる。また、成功を収めるために、輸出先の市場ニーズや消費者の好みを深く理解し、これに合ったマーケティング戦略を立てることが大切である。こうすることで競争の激しい市場でも日本産の畜産物が目立ち、好まれる可能性が高まる。さらに畜産物を安全かつ効率的に目的地まで輸送するための適切な物流手段を選び、品質を維持するための措置を講じていることが求められる。
輸出先での成功は、現地のビジネスパートナーとの良好な関係に大きく依存する。長期的な関係を築き、信頼を得ることで、スムーズなビジネス運営と成長が期待できる。この一連のステップを慎重に実行し、常に市場の動向や法規制の更新に敏感であることが畜産物輸出の成功の鍵となる。
以上のとおり、本県でも国の輸出戦略に連動し、畜産物の輸出の促進を図る必要がある。そこで、畜産物の輸出について、県はこれまでどのように取り組んできたのか、また、来年度はどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
本県における畜産物の輸出について、全国的なシェアからすると僅かだが、牛肉や鶏肉などがタイ、香港にそれぞれ毎年20トン程度輸出している。こうした中、本県では畜産物の輸出をさらに促進するため、2021年度から国の畜産物輸出コンソーシアム推進対策事業を活用し、畜産物の輸出に取り組む事業者を支援している。この事業は生産者や輸出事業者等の関係者が連携し、コンソーシアムを設立し、輸出相手国でのプロモーションやマーケティングの実施について支援する。2021年度から2023年度までの3年間は、新鮮卵としてシンガポールへ輸出する事業に取り組むコンソーシアムに対して助成した。この事業により2023年度の取組主体の輸出額は、補助事業実施前の2022年度と比べて87パーセント増加している。
引き続きこの国の畜産物輸出コンソーシアム推進対策事業を活用し、来年度は鶏肉の輸出拡大を支援する。養鶏農家、食鳥処理事業者、輸出事業者のコンソーシアムの設立、またはコンソーシアムが輸出ターゲット国として、香港やベトナムを想定しており、輸出相手国でのプロモーション活動などの支援を進める。
【委員】
愛知県内にはみかわ牛、知多牛などのブランド牛や、豚についても様々な銘柄豚がある。豚肉輸出については、依然豚熱の発生とワクチン接種状況により厳しい状況が続いているが、愛知県のブランド牛肉、特にみかわ牛や知多牛のような和牛や国産牛、交雑種の輸出拡大には大きな可能性がある。
昨年、タイのバンコクへ行った友人の話では、タイ、バンコクの百貨店サイアム・パラゴンでは、日本各地の和牛がそろう中、みかわ和牛A5のリブロースが100グラム1,000バーツ、日本円にして100グラム4,146円である。これは国内販売価格の約3倍の金額に当たる。また、ロンドンの老舗デパート、ハロッズの食肉販売コーナーでは、神戸牛A5ヒレブロックが100グラム当たり78ポンド、日本円にして100グラム1万5,210円にもなる。加工品の和牛カツサンドや和牛ステーキサンドイッチは28ポンド、日本円にして5,460円で販売されている。
このことからブランド牛の神戸牛や松阪肉、飛騨牛は国内においてもブランドの確立がされた高級和牛だが、海外ではこの価格でも消費されている。この理由として、一つ目に円安であることと併せて諸外国の所得水準が日本以上に上昇していること、二つ目に食と観光が連動していることが非常に深く関係していると考えられる。特に二つ目の神戸市に行ったら神戸牛を食べる、三重県に行けば松阪肉を、飛騨高山や白川郷に行けば飛騨牛を食べるように、愛知県に行ったらみかわ牛、知多牛を食べるとなるように観光と食を連動させたブランディングをすることにより、海外でも今以上にブランド価値が高められる。
本県でも名古屋コーチンは全国区のブランドとして認知されていると思うが、愛知県産の牛肉についても県を挙げた食と観光の連動したブランディングの支援をしていくことが必要である。特に海外における日本産牛肉の人気は高く、海外に愛知県産の牛肉をPRし、輸出可能な国や地域を広げていくことは、観光にも直結するブランディング戦略の一つとして重要である。
現在、牛肉について愛知県内の認定施設から輸出できる国は、マカオ、タイ、ベトナム、ミャンマーと限られている。輸出牛肉の大消費地であるアメリカ、香港、台湾、シンガポール等へは愛知県からダイレクトに輸出ができない状況にあるため、認定施設の拡大や新設に向けた取組が輸出拡大につながり、愛知県産の牛肉を世界中の多くの人々に楽しんでもらう機会となり、食を通じて観光誘客へつながることも期待される。
愛知県としても輸出拡大のための認定施設の拡大や新設、既存輸出国への販路拡大に向けた支援強化を通じて、地元の畜産業をさらに盛り上げていくことが重要である。
これらの取組がみかわ牛、知多牛をはじめ愛知県産の畜産物のさらなる価値向上と輸出拡大につながり、より多くの観光客が愛知県を訪れ、国内でも愛知県産の畜産物を今まで以上に消費してもらえるよう、強力に後押ししてもらいたい。
【委員】
愛知ブランド葵うなぎの今後のセールスプロモーションについて伺う。
養殖ウナギの9割以上が生育過程で雄になるが、雌のウナギのほうが大きく生育し、しかも、身が柔らかいことに着目し、愛知県水産試験場が5年以上の研究期間を費やし、大豆に含まれる大豆イソフラボンをウナギの餌に与えることで、効率的にウナギを雄から雌にする特許を取得したことが話題になった。本年1月には大きくて、やわらかくて、おいしい愛知ブランドのウナギは葵うなぎと一般公募から命名され、西尾市のウナギ生産者が大村秀章知事を訪問して葵うなぎの試食と、葵うなぎにかける意気込みを伝えたことも新聞で報じられた。そして1月27日から2月12日までの期間、西尾市内のウナギの老舗3店舗で、1日当たり各店舗20食限定で販売された。
そこで、3店舗での葵うなぎ限定販売はどうであったのか伺う。
【理事者】
葵うなぎの開発に協力してもらった生産者の直営店3店舗において、丸ごと1尾を使った長焼き単品が消費税込み4,950円で提供され、販売数は3店舗合わせて306食であった。
【委員】
値段が4,950円で306食とのことだが、3店舗で1店舗当たり20食ずつだと、限定販売は最大1,020食となるため、306食は、約3分の1であり、少し寂しい数字だと感じた。そこで、販売結果について、農業水産局の見解、限定販売から見つかった課題について伺う。
【理事者】
限定販売に当たり、各店舗で葵うなぎを食べた人を対象にアンケートを行った。アンケート結果によると、食味については、ほとんどの人が、身が柔らかい、脂の乗りがよいと回答するなど、高評価であった。また、価格については、6割の人が許容できると回答した一方で、4割近くが高いと回答し、評価が分かれた。食味や価格などを総合的に判断し、9割近くが満足、どちらかといえば満足との回答であったため、葵うなぎの魅力は十分に伝わったと考える。
ただし、見つかった課題として、価格が高いとの回答が4割近くあったことから、今後はうな丼やひつまぶし、1尾を2人でシェアするなど、葵うなぎの大きさを活かした提供方法の検討が必要だと考える。
また、販売数が予定数に達しなかったことから、葵うなぎのさらなる認知度の向上が必要である。
【委員】
アンケートの結果から高評価だとわかるものの、少しPR不足感は否めない。
それで、今後、愛知ブランド葵うなぎのセールスプロモーションについて、どのように取り組むのか伺う。
【理事者】
既に葵うなぎの提供が始まっているところもある。また、県内外のウナギを取り扱う流通業者や飲食店から仕入れの問合せがあることから、県ではこのような店舗に対し、県で作成した葵うなぎのポスターやのぼりを提供し、認知度の向上を図る。
また、来年度はより多くの消費者に葵うなぎの魅力を広く知ってもらうため、SNSを活用したキャンペーンを進めるとともに、次の葵うなぎの出荷が始まる12月頃に、通常のウナギとの食べ比べや、葵うなぎの開発技術の紹介などを内容とするPRイベントを開催する予定である。
なお、事業の実施に当たり、民間の柔軟な発想やノウハウを活用できるよう、プロポーザル方式により事業者を決定して委託する仕組みを考えている。これにより、斬新なアイデアによる効果的なPRイベントが開催できると考えている。
また、葵うなぎの開発目的である1尾のシラスウナギを大きく育てることにより、資源の有効利用と県産ウナギの供給量の増大を目指して、引き続き生産者と一体となって葵うなぎのPRに取り組む。
【委員】
葵うなぎは話題性があるため、一色産ウナギの新ブランドとして、県内外に積極的にぜひともPRしてもらいたい。
次に、愛知県農業総合試験場の毎年の10大成果について伺う。
農業総合試験場では新品種や新技術の開発などの試験研究について、研究成果の中から特に優れたものや社会的関心の高いものを選定し、毎年12月に今年の10大成果を公表している。
2023年の10大成果も昨年末に発表され、1位は、安価で自作可能な栽培環境モニタリング装置の開発、2位は、暑さ寒さに強いスプレーギク2品種の開発などだったことをウェブページで知った。そして農業総合試験場の10大成果の発表が、2004年からスタートし今年で20年になる。
そこで、この20年間の試験研究10大成果を振り返り、20年間を代表する成果について伺う。
【理事者】
農業総合試験場は本県農業の生産振興を図るため、生産力強化に向けた技術や品種の開発に取り組んでいる。20年間の10大成果全200件のうち、栽培などの技術開発に関するものが143件、残りが品種の開発である。品種が10大成果として選ばれた数年後に、その品種の栽培技術に関するものが選ばれることも多くある。
20年間の代表的な成果として、小麦の品種開発とその栽培技術の開発を挙げる。
農業総合試験場は、2000年から収量性が高く高品質な小麦品種の開発に取り組み、2009年にうどんに向くきぬあかり、2012年にパンに向くゆめあかりを相次いで開発した。また、2017年から2023年までの間にこれらの品種に対応した栽培技術が5件、10大成果に選ばれている。きぬあかり、ゆめあかりは本県の気候に合い、生産者が作りやすい小麦品種であり、生産から製造に至る各業界団体と一体となって普及定着を図った結果、うどんやパンなどの利用拡大が急速に進んでいる。さらに本県の小麦栽培が収量性の高いこれらの2品種に切り替わったことで、本県の小麦の10アール当たりの収穫量は、2023年産で575キログラムであり、全国平均の473キログラムを大きく上回り、水田作農家の経営安定に大きく貢献したものと考えている。
【委員】
7年前に農林水産委員会に所属していたとき、みそ煮込みうどんに合うきぬあかり、中華麺やパンに合うゆめあかりを農業総合試験場で試験開発し、品種登録されたことが話題になった。今、町なかを歩いていると、パン屋の前にのぼりで愛知県産ゆめあかりを使用していること、行列のできるうどん屋で、愛知県産きぬあかりを使用していることをアピールする店も増え、消費者の中にゆめあかりやきぬあかりが溶け込んできたと痛感し、これも農業総合試験場の大きな成果だと感じる。
20年間いろいろな研究開発をしてもらったが、当然、試験研究の内容も時代や社会の変化とともに変わっている。人口減少による社会構造の変化、地球温暖化など気候変動が危惧される中で、農業分野の試験研究も時代とともに変わってきていると推察される。そこで、20年間の試験研究の対象や傾向の変遷について伺う。
【理事者】
20年間で本県農業の主要な作目に大きな変化はないため、試験研究の対象とする作目は変わっていない。一方、研究内容については、県内農業の生産振興のための技術開発という大きな柱は変わらないが、2010年以降は気候変動や労働力不足など、現場の課題に対応する試験研究が増加傾向にある。
このうち気候変動については、近年夏の高温の影響が特に問題となっているため、収量や品質の低下を防ぐ技術や暑さに強い品種の開発を行っている。
例えば、夏の高温条件下でも安定して高品質な米が生産できる水稲品種として、2014年に愛ひとつぶを開発し、2019年には愛知135号を開発している。
さらに労働力不足や高齢化などの課題に対応するため、AIやICTなどの先端技術を活用し、省力化や生産性向上を目指すスマート農業技術などの試験研究も増えている。
品種開発など時間を必要とする地道な取組も多いが、最近では特に開発にもスピード感が求められるようになった。今後も、生産者の期待に応えることができるよう、あいち農業イノベーションプロジェクトなどの共同研究開発や現地実証などの取組を強化し、早期の社会実装に向けて取り組む。
【委員】
気候変動や労働力不足など農業が抱える問題が山積する中で、現場ニーズに即した新技術と品種の開発に取り組む農業総合試験場の果たす役割は非常に大きい。引き続き持続可能な農業のためのイノベーションを進めることをお願いする。
【委員】
愛知県の農業振興について伺う。
令和5年12月に、農林水産省から令和4年の農業産出額が公表された。本県の農業産出額は3,114億円であり、前年の2,922億円から192億円、6.6パーセント増加した。順位は変動なかったが、これまでは、いわゆる3位グループと呼べない2,000億円台だったため、久しぶりに3位グループと公言できるようになった。これも県の尽力のたまものである。今回の2月定例議会における本会議の議案質疑でも多くの議員が質問した。内容は、スマート農業、土地改良、森林クレジット、農業イノベーション、木材利用拡大、農地集積などであり、このような質問をする議員はこれまでと比べて多かったと思う。これらは、議員、地域の人々からの農業に対する期待だけでなく、心配の表れもあると思う。そのため、さらに農業振興を図るような施策を進めてもらいたい。
あいち型産地パワーアップ事業の新年度予算は、3億円が計上されるとのことである。昨年度の、当初予算が約2億6,000万円であり、予算の補正で3億円となったが、新年度予算では、当初から3億円を組んでもらった。意気込みを感じるものの、先ほど、3位グループになった話をしたが、品目別で見ると減っている内容もあり、果実が9億円のマイナス、乳用牛が11億円のマイナス、その他が8億円のマイナスとなっている。
乳用牛について、本会議の議案質疑で戸数が減っている、酪農家が減っていることが触れられ、県内で225戸のところが198戸、マイナス27戸となっていると聞いた。また、さらに限定的な地域で約15戸の酪農家がなくなるとの質問もあった。伸ばしたい部分に力を入れるべきであるが、このような状況は大変心配である。そこで、県内の減少傾向にある酪農家の現状及び愛知県の対応について伺う。
【理事者】
まず、本県における酪農の状況について、愛知県酪農農業協同組合の組合員が、2022年4月現在で225戸から2023年4月現在で198戸となり27戸減少し、2024年4月で185戸になる見込みである。
国の統計調査は、1年ほど時間のずれがあるが、2023年2月1日現在で飼養戸数が220戸であり、先ほどの220戸と相関している。時点が違うため少しずれがあるが、対前年10.9パーセント減少となっている。また、飼養頭数が対前年比7.1パーセント減少の1万9,600頭で、2万頭を割っている。例年飼養戸数は大体5パーセント前後、飼養頭数は3パーセント前後の減少で10年ほど推移していたが、海外から輸入している飼料原料の価格高騰並びに高止まりが顕著となって以降は、飼料高騰の要因が大きく影響し、畜産農家の中でも、特に、酪農家の廃業が加速している。
したがって、2024年2月1日現在の調査が間もなく公表されるが、その調査の数字においても、飼養戸数や飼養頭数の減少が見込まれる。
そのような状況下での対応、対策について、酪農家の廃業が加速している中、飼料高騰による畜産経営の影響を緩和するため、他の都道府県に先駆け2021年10月から本年3月まで、餌メーカーから買う配合飼料の購入費に対して、国の補助制度と連動して切れ目なく助成している。
また、2022年10月から本年3月まで、酪農家あるいは肉用牛農家が使う乾牧草などの粗飼料の購入費に対しても、切れ目なく県独自で助成を行っている。
さらに、海外から輸入する飼料・原料の動向に左右されない畜産経営に転換するために、自給飼料生産振興事業費の中の耕畜連携支援強化事業により、県内で飼料作物の栽培を拡大する取組を進めている。
また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)関連対策の一環として我が国の畜産経営、畜産経営基盤の強化を目的に措置されている畜産クラスター事業により、既存農家の生産拡大や収益力の拡大・向上を図るとともに、本事業を活用して新規に酪農に取り組む担い手の確保にも努めている。
令和5年12月定例議会で約5億8,000万円の補正予算計上した畜産クラスター事業について、知多地域の牧場で雇用されている従業員が独立し、新たに酪農を開始するための施設を整備するための予算として計上している。
これらの対策に加え、国の加工原料乳生産者補給金制度のような経営安定対策、畜産フェスタを中心としたイベントでの消費者へのアピール、消費拡大対策なども、引き続き推進し、本県の酪農業の基盤強化に努める。
【委員】
先ほどの藤原聖委員の質問のように、農作業事故などの問題から農業労働者が集まらない。また、今年度何度も取り上げ、本会議の議案質疑の中でも取り上げられたとおり、高齢化を理由に離農せざるを得ない人、あるいは相続で農地は持つものの、農業に従事しない土地持ち非農家が増えている現状は変わってない。まずはこれを解決しなければならない。本会議の議案質疑では、豊川のような土地改良、農地集積を図ることが挙げられた。それをしっかりと行えるところはよいが、耕作放棄地が飛び地でまとめられないことがある。要するに、継がせられない農業になっているため、国で議論している食料の安定供給の確保や農業の持続的な発展はなかなか見通しが立たない。
少し視点を変えるが、弁当の日というドキュメンタリー映画を地元で見た。学校の校長が子供たちに台所に立ってもらうため、児童、生徒が自宅で弁当を作り、持ち寄って学校で食べる弁当の日を設定した。初めは、何も分からない小さな子供もいるため、母親も黙って横で見ている。そうすると、子供たちは食事を作ることの大変さを理解していく。そのように食育し、得た経験から学校でいろいろな会話ができる。もちろん家庭の中でも会話が増える。宮城県はこの取組を県で条例にしているとのことである。
今、農業は厳しい状況にあるが、物価が上がる中でも農産物の物価はそれほど上がってない。上がらない理由は、消費者がこの値段で買えると思っているからであり、先ほどの映画のとおり、苦労があって作られる農作物を味わって食べなければならず、本当はもっと高くてもよいと地元の人には伝えている。県職員には使命感に燃えて仕事してもらっていると思うが、そのようなことをさらにアピールすべきだと思う。
愛知県は、とても熱心かつ真面目に取り組んでいるが、PRが足りない部分が相当あると思う。また、今の農家は、土地を引き継いでやっている小さな個人経営の農家ばかりである。それが大きくなると利益が出せるようになる。そのようなことも含めて対策を考えてほしい。
令和5年9月定例議会の農林水産委員会で話をした経済産業局の産業空洞化対策減税基金について、中小企業を救うとの名目で始まっていることからすれば、農業についても、先ほどから話しているとおり、本当に大切であることを考慮すれば、基金増設も可能だと考える。
ちなみに、就農支援資金特別会計について、さらに改善できるのではないかと思っていたが、かなり前にできた制度で、農機具を買う融資の関係で行っており、今は非常に金利が安いため、借り手もほとんどなく、終息に向かっているとのことだった。また、公益財団法人愛知県農業振興基金は、最初に積んだ基金の利息や投資利益で賄うとのことなので非常に規模が小さく、産業空洞化対策減税基金とは全く違う規模のものである。さらに、水産関係のほうで以前、森下利久県議が豊かな海づくり税をぜひ創設したいとの話をしていた。県からは難しいとのことだったが、産業空洞化対策減税基金のような、少なくとも愛知県の農林水産も含め、林については、あいち森と緑づくり税があるが、農林水産分野でやれるようなものは真剣に考える必要があると思う。
農業水産局として、農業振興に資する財源確保の手だてについて伺う。
【理事者】
産業空洞化対策減税基金について、県内の中小企業等を中心に設備投資、研究開発に対する助成を行う基金であると聞く。
これに関し、農業の分野で既にそうした取組は、あいち型産地パワーアップ事業も、それぞれの農業者が投資する場合に県単独事業で助成する事業である。2年前までは1億円という規模であり、昨年度は2022年12月補正予算で6,000万円、2023年当初予算で2億4,000万円、今年度は当初予算3億円で増額で計上している。
そして、国の事業としての産地生産基盤パワーアップ事業についても6億3,000万余円の予算が確保されている。こうした予算を使い、農業者の投資は県としてもしっかりと支援する。
財源の確保について、現在、あいち型産地パワーアップ事業についても、ほぼ農業者からの要望を充足できている状態である。重要な要請があった場合に予算が足りないと断っている状況ではないため、現在は、新たに財源を確保するより、あいち型産地パワーアップ事業等を有効に活用し、農業者の投資を進めて県内農業の生産性向上にしっかりと努める。
ただし、農業者の高齢化、土地持ち非農家の増加、担い手不足に対しては、我々も非常に危機感を持っている。その中で、地域の担い手に対し、まずは、耕作放棄地や高齢化により農地を維持できない人がいた場合は、まずは担い手に集積する取組を進めていきたい。そのため、農地中間管理事業を使い、農地を集めるとともに、一方で労働力不足などに対してはスマート農業の技術を開発、導入をして、競争力のある体制にする必要がある。
また、地域によっては担い手がいない、小規模な農家が多いことがある。これは、集落全体で農業を守らなければならないため、集落営農を進める、あるいは6次産業化などにより地域の資源を有効活用して収益を得る仕組みをつくる、そのようなことを県として積極的に考えていく。
さらに、国の事業だが、農業次世代人材投資資金という、農業を新たに始めた農業者に対し、年間150万円の資金が支給される仕組みがあるため、これも有効活用して新規就農者のハードルをできる限り下げ、農業にしっかり取り組んでもらう。
なお、このような人材の確保、担い手への農地の集積、農業総合試験場で新しい技術、他県に先駆ける技術などを現場に普及するため、愛知県の農業を競争力のある形で発展させ、食料の安定的供給に結びつけたいと考える。
【委員】
例えばあいち型産地パワーアップ事業についても、昨年の愛知県単独で行った産地パワーアップ事業は予算消化しているが、先日の早く議決を要する議案を審査する農林水産委員会で扱った国の産地生産基盤パワーアップ事業では、約3億円が減額になっている。今回は6億3,000万円計上しているが、国の産地生産基盤パワーアップ事業予算は、条件が厳しいためあいち型産地パワーアップ事業をつくったとのことだが、あいち型産地パワーアップ事業でもまだ拾えない部分もある。議論したいのはその部分で、農家は代々の農地を守りたいと思っているものの、担い手がいないため、農地を売り払いたい、譲りたいという状況になっている。しかし、例えば、息子、孫に継がせたいが、新たな投資をしてまで継がせるのかとなってしまう。このようなところは、新規就農扱いであれば、産地パワーアップ事業で対応できると思うが、要件が違うため、それは認められない。その部分をもう少し吟味してもらい、また、国の産地生産基盤パワーアップ事業の執行残が出ることは、制度が使いにくいという実態を国に伝えてほしい。
酪農については、代替わりしたいものの、畜舎を新設する体力がないため、譲ることを考えている間に廃業になったなど、もちろん酪農の牛乳自体の消費が少なくなっていることもあるが、しっかりと目配せしてもらいたい。