【記者】 |
昨日、いわゆる大阪都構想の住民投票が否決されました。この結果についてどのように思われますか。 |
【知事】 |
昨日の夜11時ぐらいですか、記者クラブの皆さんからご要請をいただいており、結果が判明次第コメントをということでありましたので、コメントを出させていただきました。そのコメントどおりでありますけど、今回の結果については、大阪市民の方が府と市のあり方について議論を尽くされた上での選択であり、その結果を率直に受けとめたいと思っております。
ただ、こうした住民投票でその地域の行政の形を選択するということは、長い地方自治の歴史の中でも初めての、画期的な出来事だと思います。ですから、こういった形に取り組まれた橋下市長、松井知事には心から敬意を表したいと思っています。
私は、国際的な都市間競争がますます激しくなる中での、こういった大都市のあり方、大都市制度というのは、やはり国力、国の力の源でもあると思いますので、今後とも大都市のあり方、大都市制度、行政、政治体制のあり方が議論されてくると、更に議論は活発になると思います。そういった点は大いに歓迎したいと私は思っております。
今回、大阪の橋下さんが仕掛けたこういった形のものが、日本全体の国のあり方、統治機構のあり方、そして大都市制度のあり方に大きな大きな議論の一石を投じたというのは、本当に画期的なことだと思っております。
ですから、我々も、この愛知・名古屋の発展のために、こうした状況を踏まえて、更にしっかりと議論を積み重ね、世界と闘える愛知・名古屋、日本を代表する大都市をつくっていければと思っています。
そういう意味で、私も中京都構想を4年以上ずっと、前回の選挙、そして今回の選挙も掲げさせていただいておりますので、引き続き、その方向に向けてしっかり取組をしていきたいと思っております。 |
【記者】 |
中京都構想を進めるにあたって、今回の大阪都構想の否決の結果で参考になる部分はありましたか。 |
【知事】 |
元々進むべきといいますか、考え方というか、方向が全く一緒ではありませんのでね。そういう意味では、大阪は大阪の一つの事情の中で、状況の中でやられたと受けとめております。ですから、我々愛知・名古屋はそれにふさわしい方向を、またしっかり議論して進めていくということだと思っています。 |
【記者】 |
今回の否決は、中京都構想を進めるにあたってマイナスではない、また、影響はないということですか。 |
【知事】 |
それはわかりません。わかりません。
一つあるのは、確かに今回70万票対69万票ですからね。色々なデータを、前日までのデータ、それから昨日の色々なデータもお聞きし、最後にこれはきわどいと。我々選挙をやる者にとって、未明までかかるような、しびれるような展開になるのではないかと思っておりました。まさにそのとおりの展開になって、本当に固唾をのんで見守るような形で、私もテレビの開票速報といいますか、あの報道をずっと見ておりましたけれども、まさにそのとおりでありましてね。
投票率も67%まで上がってですね。政令市である大阪市で67%というのは、驚異的な数字だと思いますね。4年前の大阪府知事、市長のダブル選挙で、確か60%ぐらいだったですよね。ですから、それを7ポイント上回るということですから、そういう意味では、昨日、橋下さんが会見で、大阪市民の皆さんに感謝したいと。私は、本当に率直な気持ちだと思いますね。あれだけの皆さんが投票行動していって、それもほぼ僅差だということですから。
私は、今回、大阪市民の皆さんは市役所をなくすというところまでは、若干躊躇されたということだと思いますが、じゃあ今のままの大阪の府と市の体制でいいのかということについては、あれだけ拮抗したわけですから、やはりそこは何らかの改革がなければいけないのではないかというのが今回の結果だと思います。その点は今後、そういった結果を踏まえて、賛成、反対、双方の方々が胸襟を開いてより良い姿を議論し、構築していくということになっていくのではないか、そういう責任を、それに携わる政治家の皆さんが、大阪の知事も市長もそうでしょうけれども、府議さんも市議さんもそういう責任を負ったのではないかと思っています。
我々としては、それとは方向は違うということでありますが、中京都構想は、4年前に申し上げた、公約で掲げたものと、その後、中京独立戦略本部で合意をさせていただいた、2回目までに合意文書を出しましたね。司令塔を一つにする、二重行政を解消するために行政改革をやっていく、県と市を合体する、そういったベースのところがあるわけですから、私はそこのベースの原点を踏まえながら、原点に返ってしっかりと議論をしていくということが、私にとっても県民の皆さんに対するお約束でありますから、それはしっかりとやっていくということだと思っています。 |
【記者】 |
かねてから知事は地方から政治を変えるとおっしゃっていますが、盟友の橋下市長が政界からいなくなるということにより、知事ご自身にはどんな影響がありますか。 |
【知事】 |
私にとって影響ということはないというか、ありませんけどね。ありませんけれども、橋下さんとは友人として、そういう意味では何といいますか、歯切れよくあれだけの発信力のある方はそういませんからね。正直言って僕も「ちょっとやり過ぎではないか」ということは何回か申し上げたことはありますけどね。そういうのは物ともせずに突き進んでいく突破力と突進力と発信力というのは、並大抵のことではありませんからね。私はまだまだ政治の世界でさらにやることはたくさんあると思いますよ。さらに期待する人もたくさんおられると思うし。
今回、住民投票はほぼ拮抗で、1万票反対の方が多かったとしても、反対された方でも橋下さんの支持者、支持をされるという方はたくさんおられるはずですよね。ただ、橋下さんは応援するけど、いきなり市役所廃止、解体まではどうかということへの躊躇がこの差だと思いますから、そういう意味では、私は、まだまだやることはあると思いますし、やっていただきたいなと思います。もっともっと政治で頑張ってくれと、やることは幾らでもあるぞという待望論というのは、まだいっぱい出てくると思いますね。ですから、そういう意味で、私はぜひ期待したいなと思います。
ただ、あの性格ですからね、あそこまで言い切った以上は。11月まであと半年の任期で、しっかり色々な課題を整理してやっていくと言われていますから、まずは任期をしっかりやっていただいて、その上で今後どうされるかをよくよくお考えいただければかなと思っています。
この春に何回か電話で話したこともあります。この4月に観光局長の加納さんを大阪から私が呼び込んだような形になりましたので、その点についても色々話をさせていただきました。「一回どこかで一杯やるかね」と言ったら、「5月17日までちょっと、とてもじゃないけどそういう余力はないので、終わったらゆっくりやりましょう」という話をしてましたのでね、一回ゆっくりお話ができればと思います。ただ、やはりご自身の判断ですから、今後どうされるかは私も注視をしていきたいなと思っています。 |
【記者】 |
知事は愛知、名古屋でもしっかり議論を積み重ねていきたいとおっしゃいましたが、中京独立戦略本部会議は1年以上開催されていません。どのような形で具体的な議論を積み重ねていく予定ですか。 |
【知事】 |
中京独立戦略本部は、1年前の経過をお調べいただければすぐわかると思いますけれども、一つの議論の区切りとして、これで一つ区切りますと申し上げたので、開かれていないというか区切りなので。その当時の記事を読んでいただければいいんじゃないでしょうかと思います。
どういう形でというか、これは私と河村さんで話をしていくということに尽きるのではないでしょうか。事務方でやってもしようがないので、話をしていく。要は、政治の公約で掲げたわけですから、その公約を踏まえて、そしてお互い協議をして、これで合意と2回目までに合意文書をつくったわけですよね。そこが原点ですよ、議論としてそこまでなんですよ。そこは合意しているわけですから、その原点に返ってどういうふうにしていくかということ以外にはないのではないでしょうかと思っています。 |
【記者】 |
中京独立戦略本部で合意した、その原点から次の具体的な形については、いつ頃までに示すなどありますか。 |
【知事】 |
今の現段階で、いつまでにどうのこうのというご質問について申し上げることはありません。 |
【記者】 |
大阪都構想と知事が考える中京都構想は違うとのことですが、改めてどこが違うのか、また、中京都構想の実現の可能性について一言お願いします。 |
【知事】 |
今申し上げたように、私の公約とそれまでの中京独立戦略本部で議論してきたこと、そして合意をして、ここは合意しましたということで発表したことをご覧いただければ、それに尽きるということでありますけれども。
私は、かねてから日本の大都市制度ということについて、大阪で橋下さんが大阪都構想を言われた2010年、私は2010年末、2011年の選挙において中京都構想を申し上げて進めてまいりました。ですから、強い大都市をつくっていく、大阪は府と市を一つにする、この愛知も愛知と名古屋を、県と市を一つにするという方向でやっていこうということで申し上げてきました。ですから、その点は全くベクトルは一緒だと思っております。
ただ、前からずっと申し上げておりますように、東京都のように特別区をつくってというのは、ややこの愛知・名古屋の状況といいますか、現状には合わないのではないかと。東京というのは、東京23区は都の人口の7割以上ですから。東京府と東京市を合体したというのは、結局、東京市が東京府をのみ込んだ形なんですね。23区、人口900万の市があるということはあり得ないので、ですから分割をしたという歴史的な経過であります。
そういう意味からすれば、私は、愛知・名古屋にふさわしいあり方というのは、司令塔を一つにして、あとはそれぞれの行政体でやっていけばいいという意味で司令塔を一つ、それがホールディングスという形でわかりやすいので申し上げています。それは形はどうでもいいんですよ。ただ、司令塔を一つにしていくということでベクトルを一つにしていくということが望ましいのではないかということを申し上げさせていただきました。それを引き続き、また申し上げながら議論をしていくということだと思っております。ですから、どういう形で進んでいくかはこれからだと思っています。
ただ、前回の会見でも申し上げましたが、今回色々なマスコミ報道等でもありました二重行政という形について、国民の皆さんがそういう認識を持ったということはあるかと思います。こういう形での議論がある限りといいますかね、政令指定都市という制度との整合性をどう考えていくかということになると、必ずそういう二重行政をどうするんだという話がやっぱり出てくるので。
基本的には、完全に一つにしてしまうか、完全に別にするかでなければ、それはあるんですよ。絶対にないことはないので。だからそういう意味で、私は全体的な方向性というか、司令塔は一つにして、あとはそれぞれのところで仕分けをしていけば、そこはほぼ解決できると思いますので、そういう意味で申し上げているのでね。一番合理的な方向ではないのかなと思います。
ただ、やはり色々な考え方の方がおられるのは事実ですから、そういった方々としっかりご議論しながら進めていければと思っています。それに至るまでは、できるだけ、愛知県と名古屋市が色々なテーマごとに協議をしながら、ベクトルが違わないように、齟齬を来さないようにやっていく。それが県民市民の皆さんが望んでいるということではないかなと思っています。 |
【記者】 |
ネーミングの問題ですが、国民、県民に「都構想」というものが終わったのだというイメージが強くなるかと思います。今後、「中京都」という名前を変えるつもりはありますか。 |
【知事】 |
全く考えておりません。これはこれから議論していこうということですから、そういうことでよろしいんじゃないでしょうか。やっぱり「都」という言葉はいいですよ。
大阪都構想は、何もしないということではきっと済まされないと思いますよ。今回のこのやり方とは違った形での大阪府と市の協議のあり方は、という議論になっていくんじゃないでしょうか。 |
【記者】 |
改めて、今回の住民投票について、否決された場合にはリーダーが政治生命を絶つことまでして、都市制度の在り方を住民投票で選んでもらうという意思決定の方法について、率直にどのように受け止めていますか。 |
【知事】 |
色々な見方があるんじゃないでしょうか。私は今回のこのやり方、特に住民投票で、最後その市を、ある意味で大阪府と合体させる、吸収させる、それで特別区をつくるという形を大きく変換することについて、例えば、その市の色々なことに関して色々な住民投票の例がありますけれども、そういう中でも一番重い選択ではなかったかなと私は思います。
ですから、今回の住民投票というのは、私は大変画期的な意義があったんではないかと思いますね。それも有権者210万人の大阪市で140万人の方が投票に行ったと、67%の投票率があったと。私は最初、正直言って、こういう行政の機構のことだとすると投票率は相当低いんじゃないかと思いましてね。住民投票が告示された最初なんかは、非常に関心が低いとか何とかという話を聞いていたので、40%も行かないんじゃないかと思っていたんですけれども、それが段々段々連休明けてからこれは相当高いぞという話になってきて、本当かねと。57%、58%まで行くんじゃないかと言っていたら、とうとう67%ですからね。正直言って、大阪市という大政令市のあり方を問うのに、ああいう大都市の方が、市民の方がこれだけ投票に行ったということは、私は驚嘆すべき出来事だったんではないかと思います。
昨日橋下さんが会見で大阪市民の皆さんに感謝したいと言っていたのは全く本音で、あの会見をライブで聞いていたというか、テレビ中継、テレビでずっと聞いていましたけど、あの会見は、彼の本音そのものだと思います。まさに感謝したいということと、さばさばしててやるだけのことはやったと、政治家冥利に尽きると、本当に彼らしい言い方で、全く本心そのものがそのままにじみ出ているというか、そのまま吐露しているという感じで受けとめました。
そういう意味では、私は今回の大阪都構想の住民投票というのは、戦後の日本のこういう地方自治制度というか、自治制度の中でも画期的な出来事だと思っています。ですから、あとはこれを次にどういうふうに、これで終わりということじゃなくて、どういうふうに大阪の発展のために生かしていただけるのか。橋下さんもあと半年任期があるわけですから、橋下さんもそれから市議の皆さんも、各政党の皆さんも、私はそういう意味では相当、責任を負ったと思いますね。そのことは引き続き、しっかりと注視をしていきたいなと思っています。
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