【記者】 |
日本創成会議の提言に関して、愛知県として2040年の介護ベッド数を試算しているものはありますか。 |
【知事】 |
2040年はないだろう。まだ余りにも先過ぎるので。試算というか推計です。また部局に聞いてもらえますか。 |
【記者】 |
先ほど知事は、この提言は日本創成会議の信頼性を失うものだとまでおっしゃいましたが、日本創成会議に対して、何らかの行動を取るとか、申し入れをするなど考えていますか。 |
【知事】 |
これは、日本の世の中は言論の自由だから、誹謗中傷とかそういうのはいけませんが、学者さんがそれぞれに何を言ったって、自由なので、それは研究の成果ということなんでしょう。これについて、私の方から具体的に何か言っても詮ないことなので、こういう形で反論するということではないでしょうか。 |
【記者】 |
日本創成会議の試算の方法に非常に問題があるとのご指摘でしたが、一方で、愛知県の介護が必要となる高齢者は、名古屋や西三河を中心に急増するという事実があると思います。そのような中で、知事としては、地方への移住をせず、地元で高齢者を受け入れる体制をつくっていくことができるということでしょうか。 |
【知事】 |
当然です。特に介護保険制度というのは、施設じゃなくて在宅介護を中心に、これからの日本の高齢化社会を乗り切っていこうということでつくられているわけですね。施設をどんどんつくっていけば一見いいように見えますけど、それはサステイナブルではないわけですよ。施設をつくれば、当然介護保険料にドーンとはね返ってきますから。介護保険は、自己負担の1割以外は保険料で半分、半分は税金で賄うわけですね。ですから、税金の方も出ていくということなので。
そういう意味では、全ての皆さんのコンセンサスだと思いますけれども、特別養護老人ホームといった重い施設について、特に重度の方が、要介護度が高い方がこれから増えていくので、もちろん必要な数がある場合、着実に整備していかざるを得ないと思いますが、要介護度が低い方までそういったところに入っていただくと、どんどん保険料が上がってもたないので、そういう意味でできるだけ在宅介護、それからグループホーム、それからサービス型の高齢者住宅、サ高住、そういったもので、特に住まいの場を用意しながら対応していこうという形になってくるのだと思います。
この地域は、ご案内のように、愛知県より市町村の方がお金持ちなわけですから、それでもって東京のような過密ということではなくてスペースもありますから、そういう意味では着実にやっていける。東京、大阪に比べれば全く問題ない、ノープロブレムで対応できるということだと思っています。 |
【記者】 |
今回の日本創成会議の試算はベッド数だけを基準にしているところにも問題があると、知事はお考えですか。 |
【知事】 |
ベッド数というか、だから2015年と2040年を全く今の数字をそのまま前提にして比較すれば、人口構成が若いところが足りませんねって出てくるに決まっているんですよ。だから、去年出した人口減少のデータとか提言に対するギルティ・コンシャスでもあったのかもしれませんけど、そのリカバーみたいな感じで東京圏から全国に移住した方がいいですよという結論ありきで、そういうデータを後づけで付けたのではないかと私は受けとめていますけどね。
さっき申し上げたように、日本は言論の自由で、何を言ったって自由ですから、そういった形で提言されるということなのかなと受けとめていますけどね。あまりきゃんきゃら言っても仕様がないから、こういう形で事実を申し上げて反論はしていきたいということです。 |
【記者】 |
そもそもの発想として、生産期が終わった高齢者の方を大都市圏から地方に移住させる方が良いと思われますか。また、これは移住してきた地方の道府県にとっても大きな負担になるのではないかと思いますが、このような提言自体について、知事としてはどのように思われますか。 |
【知事】 |
そういう議論もありますよね。マスコミ報道でも、高齢者だけじゃなくて、やはり若い人が来てほしいという声もあるということなんですけど、今から6〜7年前に群馬県のたまゆらホームの火災事故の件がありました。あれは東京都の区の高齢者といいますか、生活保護の方を受け入れるところがないということで、そういう業者さんが全部一括して受けて、いわゆる言葉はあれですけど、貧困ビジネスみたいな形で全部受け入れて、ああいう火災事故が起きて、多くの方が亡くなられたという悲惨な事故でありました。当時私も厚生労働副大臣をやっていたので、あの当時、東京都の副知事の猪瀬さんとかがよく来られましたけどね。
東京は確かに地価が非常に高いので、都内でそういう施設を全部つくるというのは不可能ですから、東京都としては定期借地権を設定して、都がドーンとお金を出してそういったものをどんどん整備していくという、そういう新たな事業スキームをつくられたのが2008年、2009年ということでした。そういった底流はあると思いますよ。
住民票も移さずに都に置いておいて、東京都の生活保護を受けて、要はそうするとそういう受け入れる会社は、安定的にもらえるわけですね。一旦入れば、ずっと回っていくと。そういう事業者からすれば、ビジネスモデルが現実に今でもありますよ。それがいいかどうかと。
しかし一方で、東京都内、特に23区でそういう高齢者の方を受け入れるところが、それも寝たきりになった方とか認知症の方とか、お一人で住まわれた方を受け入れるところがあるのかということになると、当時の東京都の関係の方が言われたのは、「そんなこと言ったって、我々にどうしろというのですか。きれいごとじゃないですよ。我々としてはその事業者をしっかりチェックしながら、そういった形でやっています。」という言い方でしたけどね。
私はそういう意味で、それが本来あるべき姿ではなくて、これからの福祉というのは、やっぱり住みなれたところに住んで、そしてそこで介護にしても在宅の介護で、地域社会全体で支えていこうということなんだと思いますから、そういった点を踏まえて、何が一番いいやり方なのかというのを多くの皆さんで、みんなで考えてやっていくということではないかと思います。
例えば愛知県に直してみても、現実に名古屋市内の都心部にずっと住んでいたから、そこで引き続き高齢者の福祉介護施設に住まわせてくれと言われても、なかなか難しいというのは現実にあるんでしょう。やっぱり地価が高いところはそれだけでコストかかりますからね。現実に名古屋市内でも、名古屋市の郊外、さらに名古屋市以外のところに高齢者の方が行っているという例は大変ありますよね。
今から20何年前、最初に特別養護老人ホーム、介護施設ができたときは、三河部の地方だと、地元の方は、うちのおじいさんおばあさんはやっぱり家で面倒見ないといかんということで、なかなか施設に入れなかったんですね。そうすると半分以上が名古屋からの人という場合が、僕の地元でもありましたよ。それが段々、いやそうじゃないよと。なかなかもう家では面倒を見れないので、そういった施設に入っていただいて専門家の人に見てもらった方が、おじいちゃんおばあちゃんも幸せだよねとなって、段々地元の方の比率が上がってきているんですよ。だから、そういったことも考えていかなければいけないのかなと思います。
ですから、今回の日本創成会議のデータのつくり方は、僕はちょっと強引ではないかというか、相当強引だなと思いますけれども、大都市圏で全部が賄えるかということについて提言されたことは、それはみんなで耳を傾けて、よく考えていかなければいけない課題だと思います。
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