【記者】 |
長良川河口堰の運用が間もなく20年を迎えますが、知事が前回の知事選挙でもマニフェストに掲げられた開門調査についてお聞かせください。
まず1点目として、専門家の検討委員会で検討を続けていますが、未だに開門調査の実施に至っていないことについての知事の所感をお伺いします。
2点目として、開門調査の実現をめぐる現下の情勢を、どのように受け止めているのかお聞かせください。
3点目として、開門調査の今後の進め方や見通しについて、どのようにお考えか教えてください。 |
【知事】 |
長良川河口堰について、これで20年ということでありますから、そのことについてご質問をいただきました。
長良川河口堰の開門調査につきましては、私は4年前の選挙のときのマニフェスト、そしてまた今回の選挙でも公約に掲げさせていただいて、それを踏まえてプロジェクトチームや専門委員会をつくりまして、濃密な議論の上で色々な意見集約をしていただき、5年間の開門調査や、国と県との合同会議の設置というのをご提言いただいたわけでございます。
これまで積み重ねてきた議論は、もう既に皆さんもご案内のとおりだと思います。平成23年、24年、25年、26年、今年、平成27年もチーム会議とか色々な検討会議をずっと積み重ねております。そういう提言に基づいて、県庁の中の庁内検討チームとか外部有識者による愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会をつくって、知見を集約し、議論を進めております。
国との合同会議につきましては、中部地方整備局や水資源機構に対しまして設置を提案しておりますが、残念ながら準備会を2回開催したというところで現在止まっています。
今のところはそこまでということであり、なかなか動いていないというのが現状だと思いますが、私どものスタンスは変わっておりませんので、引き続き働きかけをしていきたいと思っております。
そして、開門調査をめぐる現下の情勢でありますけれども、現在はこの私ども愛知県の最適運用検討委員会が国や水資源機構に対し、開門調査の具体化に向けた検討を進める上で確認が必要な質問事項について質問し、回答を依頼いたしました。それについて回答を受けたところでございます。1月に文書で質問させていただいて、5月末に国から回答の提出がありました。
当面は、この最適運用検討委員会の中でその回答の内容をしっかり議論するなど、この開門調査の具体化に向けた検討を進めていくことになると考えております。来月の後半にも、この最適運用検討委員会の開催を予定いたしているところでございます。そこで議論をしていただければと思っております。
この回答は、資料を含めてA4で400ページ以上の大部なものでございまして、これはホームページに載せさせていただいたので、ご覧いただいていると思いますが、大変大部なものなので、内容を検証しながら、分析しながら、また議論をしていただくということでございます。
改めて治水、利水、環境、それから塩害防止といった色々な、また水質、魚類などへの影響、様々な論点がありますから、そういったものをまた検証していくこということが必要ではないかと思っております。
現状をどう受け止めるかということでありますが、正直言って、我々愛知県の中のものであれば、私が申し上げて、そういった方向に進めていけるということでありますが、関係者が愛知県だけではなくて隣県にも渡るということ、そしてまた運用しているのが国直轄の水資源機構ということでもございますので、そういった方々と十分議論をしていかなければ進んでいかない。そういった皆さんに理解をしていただかなければ進んでいかないということでありますから、粘り強くやっていくということに尽きると思っております。
私はこうした大型の公共事業については、別にこれを止めてしまえと言っているつもりはないので。やはり色々なご意見がありますから、色々なご意見を踏まえて検証していくということが必要ではないかと思います。とにかく造ってしまったのだから、まあいいじゃないのということではないのではないかと。やはり、常に常に、公共事業というのは、別に個人のお金で造ったわけでも何でもなくて、多くの国民、県民の皆さんの税金で造っているわけですから、それについて、本当にこれが今どういう状況で、どういう機能を果たして役に立っているかということを検証しながら、その検証したものをまたフィードバックして、また次なる様々な公共、いわゆる税金でやる、国民、県民、市民のためにやる事業にどう生かしていくかということを議論してやっていくという、やっぱりそういう姿勢が必要なのではないかと思います。ですから、引き続きこの点については粘り強く働きかけをし、粘り強く申し上げていきたいと思っています。 |
【記者】 |
知事は今、公共事業については、フィードバックやどのように役立っていくかの検証が必要だとおっしゃいました。長良川河口堰は来月で本格運用から20年が経ちますが、長良川河口堰が果たした役割について、良かった点、悪かった点は何だと思われますか。 |
【知事】 |
これは多くの方が言われておられるし、国も水資源機構も各県も、そして私ども愛知県がつくった最適運用検討委員会でも、その前のプロジェクトチームでも大分議論をして、その一定の報告で、様々な観点で治水、利水、それから環境面などについて分析しておりますから、それを私は率直に受けとめるということだと思います。私があまり評価めいたことを言わない方がいいのではないかと思いますから、そういったものをまたご覧をいただければと思っております。
そういう上においても、そういった様々なご意見がある中においても、これができて良かったという声もあれば、これができてやっぱり環境面にちょっといかがなものかという意見もあれば、じゃあ利水の点で十分その想定分を使っているのかというご意見もあれば、いやこれは塩害がどうなんだというご意見もあり、様々な意見がありますので、それを総合して検証していただくのが必要ではないかということを申し上げているので、私の立場ではそれについて評価めいたことを申し上げるのは控えたいと思っています。 |
【記者】 |
良かった面も悪かった面もあるので検証したうえで、ということですか。 |
【知事】 |
そういう関係の方々、多くの利害関係の方々、それから多くの有識者の方々から色々なご意見をいただいていますから、私としてはそういったものを率直に、真摯に受けとめて、それを踏まえて検証をすることが有意義ではないかということを、私の意見としてはそう申し上げたいと思います。 |
【記者】 |
知事は初当選した2011年と今年2月の知事選挙で、開門調査を公約に掲げられました。今もまだそれが必要だというお考えは変わらないと思いますが、4年経ってそれがまだ実現していないことについては、どのように思われますか。
また、先ほど、開門調査の実現は愛知県だけの問題ではなく、岐阜県や三重県の近隣県が関係してくるとのことでしたが、愛知・岐阜・三重の合意が得られないと国への合同協議ができないと思います。特に、三重県は塩害への懸念が根強く開門調査には反対していますが、三県の合意を得るために、愛知県として具体的にどのようなことをすべきかについて、お考えがあればお聞かせください。 |
【知事】 |
私はこれは県ではないと思うんですね。国ですよ。国の姿勢だと思います。地元の地域の県単位で協議して合意する、それは難しいでしょう。国の姿勢ですよ。国がやるかどうかということなので。
塩害といったって、別にずっと開けてしまうわけではなくて、調査をして、色々な前提を置いてそういうことにならないように調査したらどうかということを、この委員会は申し上げているんですね。私はやっぱり国の姿勢に尽きると思いますよ。 |
【記者】 |
三県が同じような方向で一緒になって国に働きかけたりすることはないのですか。 |
【知事】 |
いや、違うと思います。私はそういうふうには思っていません。国です。国がやると決めればやれることだと思います。それは県同士で話をしたって、話はつかない。そりゃそういうものですよ。あくまでも国がそういう姿勢に立つかどうかということにかかっているでしょう。そういう意味で私は、これはずっと申し上げていきますけど。それは検証するのが正しいと思っているから、政治家として申し上げているのであってね。私が言わなくなったら、これはこれでもう無しと。やれやれと、済んじゃったということになるのでしょう。でも、それではいけないと思っていますから、私はずっと申し上げていきたいと。政治家としてずっと申し上げていくということです。 |
【記者】 |
他県に働きかけていくかとか、三県同士でということではないということですか。 |
【知事】 |
それは余り意味がないと思う。そういうことじゃないと思います。国です。国がやると言えばやれるだけのことです。私も国の役人をやってきたからよく分かりますけどね。別に止めてしまうとかなくなってしまうとか、そういうことを言っているわけじゃなくて。
例えば諫早の干拓事業のように、あれはもう開けちゃえとか、違う判断の裁判が出てあれしていることとは違う。あれは開けるか閉めるかという話になっているわけでしょう。そうじゃなくて、これは検証したらどうだということを申し上げているので、それは、国がやる気になればいつでもできる、すぐできる。そんな難しい話ではないと思いますね。
だから、何でそれをしないかというと、それはやりたくない理由があるのでしょう。そこのところを、私はよく国民の皆さんとか県民、有権者の皆さんによく見ていただきたいなと。それを、もう何年たっても動かないから、じゃあもう止めたらどうだというのだったら、誰が喜ぶかということだと思いますよ。だから、そういうふうにならないように頑張るということですね。 |
【記者】 |
先ほど知事は長良川河口堰のご所感の中で、国の姿勢の問題だと思うとおっしゃいましたが、国の姿勢で一番問題だと感じている部分はどこですか。また、開門調査に向けて、あるいは検証作業の過程で、国を同じ土俵の上に乗せるために必要なことはどんなことだと思われますか。 |
【知事】 |
粘り強く申し上げていくことに尽きるのではないのでしょうか。今回、今年の1月に出した質問に対して5月に、何か月もたちましたけど、400ページという大部なものなので、これも大変だったんだろうなと思いますが、そうやって回答いただいたということなので、それは私は大変評価をしておりましてね。やはりこういった形でキャッチボールをしながら、そこを検証していきましょうということを積み重ねていければと思っております。
ですから、そういう意味では粘り強く粘り強くやっていくと、そういう声を上げていくということに尽きるのではないでしょうか。 |
【記者】 |
今回のように書面でのやり取りが続くのは仕方ないのですか。 |
【知事】 |
国との合同会議は、提案していますけど、それは拒否されていますからね。準備会を2回やって終わりなので。だとすれば、こっちが物を言ったって門前払いなら、その後、文書を投げて、返してちょうだいよということを、とにかく積み重ねていくということではないでしょうか。
それも止めてしまえば、それで終わりですよ。国民とか県民、市民は、それはそれでいいよと望んでいるとは思わないね。やっぱり検証した方がいいんじゃないかと思っている人の方が私は多いと思いますよ。民主主義なので、多くの国民、市民の、有権者の声を受けた形で検証したらいいのではないかということを引き続き申し上げていくということだと思います。 |
【記者】 |
長良川河口堰ができて20年が経ち、河川法が改正されたり、公共投資のやり方も変わってきたりしていると思いますが、国の長良川河口堰に対する考え方は変わっていないと思われますか。 |
【知事】 |
私が言う話ではないと思うけども、大分変わってきたと思いますよ。やはり長良川河口堰の利水の面では、使っているのは16%ですしね。その分我々はもう既に愛知県の県民の税金を払っちゃっているわけですよ。そこのところも含めて検証していくということが、その姿勢が必要なのではないかということだと思います。もう造っちゃったから、もう済んじゃったからいいじゃないかと、何を今さら言っているんだと。国民、市民はそんなこと誰も望んでいないんだと。おまえが言っているだけだと。何ひとり芝居しているんだと言うのだったら、私もしませんよ。だけど、僕は違うと思うから申し上げているのであってね。
ただ、残念ながら日本では大型の公共事業を後で検証するというシステムがないでしょう。そういう意味ではそういったものも含めて、私は色々議論をしていくということが必要なんではないかということを申し上げているんですけどね。 |
【記者】 |
知事が開門調査は必要だとお考えになる中でのフィードバックの必要性について、環境や事業の費用対効果など色々な観点があると思いますが、どのような点が最も重要だとお考えですか。 |
【知事】 |
全ての面だと思います。今は治水がメインだというのだったら、その治水の観点でどうなんだということも、1,500億円かけたあの事業が一番良かったのですかということも含めて、やっぱり色々な角度から検証できるのではないでしょうか。
それから利水に至っては、現に圧倒的に多くを使ってないわけですから、それをどういった形で積算してやってきたのかと。今後どうするんだということとかね。
あとは環境の問題については、魚類への影響とかを含めて、どう考えるんだと。アユの遡上が何か減ってきたというような話もちょっと聞きますけど、そういった面をどう考えるのか。色々な面で議論、検証は必要ではないかと私は思っています。
|