【記者】 |
今日、長良川河口堰の本格運用から20年の節目となります。改めて、知事の所感をお願いします。 |
【知事】 |
長良川河口堰の本格運用からちょうど今年で20年。6日ということだから、今日で20年ということですね。そういう意味では造るまでも相当ご意見、ご議論があり、構想ができてから40年以上ですよね、1970年代ですから。実際に建設し、運用を始めて20年ということでございまして、時の流れるのは早いものだなと思います。
私としては、前もここで申し上げたかと思いますが、かねてから申し上げておりますように、そういった様々な経過を経てでき上がり、運用し、それで20年の節目を迎えているものでありますから、色々な観点で、私はこういった大型の公共事業というのは造ってしまえば終わり、やってしまえばもう済みだということではなくて、現にそういった施設もあるかもしれませんが、これはやはり、そこに人を置いて、日々それを運用していく。水は常にたまり流れるものですから、常にゲートの開け閉めも含めて運用していくものなんですよね。ですからそういう意味で、その運用も含めて、何が一番ベストな運用なのか。だから、私ども県においても最適運用の検討という研究会を設けて、多くの学識経験者の皆さんに来ていただいて、色々なご意見をお伺いしているわけであります。
改めて私はこの長良川河口堰20年を踏まえて、この河口堰の意義、そして当初の目的、そして今の現状の役割、評価、そうした面をありとあらゆる角度から多くの皆さんで議論し意見をいただいて検証していくということが必要ではないかと思います。
それは木曽三川の中の大河である長良川を、ある意味で河口部分はあそこでコントロールしているわけですから、それについての意義、役割。治水面、利水面、それから環境面、そして漁業とかそういった様々な面があると思います。もちろん、そしてそれを財政的な負担、はっきり言って税金で支えている、賄っているわけですよね。国、県、市の負担、そうした巨額の負担で支えているわけですし、建設費も相当なお金を愛知県は払いました。金利も入れて七百数十億だと思いましたがね。運営費もこの20年間で相当な額を我々県としては負担をしている。これからも負担をしていかなければいけないということでありますから、そうした面でそれを検証していく。これまでの果たしてきた役割、そして今後の役割、そのあるべき姿、そうしたものをしっかり検証していくということは、私はどんな公共事業でもなければいけないと思いますね。
私は、そういったことを申し上げているのであって、ぜひ、そうしたことを国、水資源機構も真摯に受けとめていただいて、その検証について、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと私は思っております。
我々がこれだけずっと申し上げていても、そういう形で全く取り合っていただけないということになりますと、私から見れば、国民の皆さんはどういうふうに見るかというと逃げているんじゃないかと。要は、それを検証すると何か不都合なことがあるのかと、不都合なことがあるから逃げているんじゃないかと受けとめられるというのは、私はよろしくないと思います。
公共事業は、これで終わりではないわけですから。これからも、河川だけじゃない、河川も道路も、海岸だって、堤防のことだって、また様々な農業関係の施設であったって、空港、港湾、色々な公共事業があるわけですから、それはやはり常に、費用対効果、B/Cだけが全てではありませんけど、そうした巨額の費用がかかればかかるだけ、やはり私はそれだけ真摯に、謙虚にそれを検証して、そして必要な方策を見出していく。見直すべきは見直していくという、謙虚な姿勢が必要ではないか、そういうことを私は申し上げているだけでありまして、至極全うな正論ではないかと自分で思っております。何でこういう正論が届かないのかということが不思議でならないですけどね。もう4年以上申し上げておりますが、そういう意味では、この数年来、特に状況が変わっていかないのは非常に残念であります。
ただ、日本は民主主義の国ですから、私が申し上げていることが余り大きな声になっていないのかなと思わざるを得ないのかもしれませんけどね。それは残念なことだなと。いや、そんなことないと思いますがね。私は、私が今申し上げていることに多くの国民、有権者の皆さんから賛同していただけるんじゃないかと思いますけどね。引き続き、同じことでありますけれども、しっかり申し上げていきたいと思っています。
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【記者】 |
開門調査に反対する方のご意見として、塩害が出るというものがあります。検証そのものがやりにくい、検証そのものが難しいという公的機関もあると思いますが、そのような意見に対して、知事はどうお考えですか。 |
【知事】 |
私は完全な専門家ではありませんが、皆さんも取材していただければご理解いただけると思いますが、私ども県の長良川河口堰最適運用検討委員会で開門調査5年というのを数年前に提案したわけです。そのときは確かに塩水が遡上していくということはあるでしょう。ですから、それをずっと開けていればずっと上っていって塩害ということが起きてくる可能性も、危惧もあるものですから、そうならないように、例えば開けるのを何日間までにしようとか、それでまた、常に定点的に塩分濃度を調べて、それが濃くなってきたら閉めるとか、そういう色々なやり方で調べるということはできるんですよ。ずっと開けて、開けっ放しで何とかなんて、そんな提案してませんから。
そういう運用のやり方で幾らでもやれるということを申し上げているにもかかわらず、それには耳をふさいで、「いやいや、塩害、塩害」というのは全くはなからやる気がないといいますか、聞く耳を持たないという証左ではないでしょうか。
私は、そういうことを言い募るというのは、極めて不誠実だと思います。いや、それはそうしたくないんでしょう。そうしたくないから、それはだめなんだということと、私は一緒だと思います。
我々の研究会はそういったことではなくて、こういうやり方があるじゃないかということまで提案し、さらにそれを実際やるのであれば、まずやるかやらないかを決める前に、どうしたら塩害が起こらないように調査ができるかを一緒に研究しましょうよとまで言っているのですよ。それも一切聞く耳を持たないということで、協議の場にも、テーブルにも着いていただけないということは、非常に残念です。何で着かないかといったら、それはテーブルに着いたら分が悪いからとしか思えないですね。
そういう意味では、非常に残念だなという気がします。やり方なんか幾らでもあると思いますよ。そういうふうに提案をしているわけです。ぜひテーブルに着いて、協議をしていただきたい。
塩害を防ぐようなこういう方法を、こうしてこうしてこうしてやればこういう調査ができるじゃないかということを協議して、それでも納得できなかったら、その段階で「いや、それじゃだめでしょう」と言っていただければいいのであって、はなからテーブルにも着かないというのは、私はいかがなものかと申し上げざるを得ないと思います。 |
【記者】 |
長良川河口堰の開門調査について、知事は先程、今後も、国側に検証から目を背けないようにしっかり申し上げていきたいというお話をされたと思いますが、私の認識では、知事は就任されてから、国側に直接議論の席に着いてくれと打診されたのは、副知事を通して1回あったことが最初で最後だと認識していますが、今後、知事として中部地方整備局や水資源機構に何かアクションを起こされる予定はありますか。 |
【知事】 |
私が行政の長として具体的なことをするということになりますと、要請を受ける受けないということもありますし。そのことも含めて副知事から中部局長に話をしてもらいましたが、当然、色々なチャネルで、様々なルートで話をしていることは事実であります。ですから、一回副知事が言ったから、それだけでやっているわけでは全くありません。
そういう意味ではやっておりますが、正直言って、私が言って、向こうが「いや」とか言って、「じゃ、何だ」とか言って、要はどなり合いのけんかをやってもしようがないですからね。ということだと思いますよ。そういう意味では粘り強くきちっとやっていくということだと思っております。
最適運用検討委員会は今月末にもやりますから、またそういうことも含めて、しっかりとアクションをしていきたいと思っております。正直そういったところで、具体的に色々な論拠に基づいたものを、データに基づいたものをつくって、論点を整理してまたつくって、また球を投げていく。今年1月に検討委員会の方から投げたものに対しては、大変膨大な量の回答書を国からもいただいたわけでありますから、そういったものをまた検討して、またそういったものを投げ返すといった形で、キャッチボールをやっていくということが必要ではないでしょうか。
私は主張は主張としてですけれども、やはりきちっと、具体的な客観的なデータを積み上げた上での質問状も含めて、そういったキャッチボールをしっかりやりながら、その必要性を訴えていくということだと思っております。
私が行って、「ああ、そうですか」と言うことは、そんなこと幾らでもできますけど、それをやったって何か意味があるかということだと思いますよ。私はできるだけ具体的に色々なものを積み上げて、キャッチボールしていくということになるのではないかと思っております。
二つあって、政治の大きな判断というのももちろんあるかと思いますが、それに至るまでに、いわゆる河川行政できちっと、何と言いますか積み上げてやってきている、その行政屋さんがたくさんおいでになるわけです。そういう人たちの中で、何と言うんだろう、退職してからやっぱりあれはいけなかったと言うのではなくて、やっぱり現職のときに。私もそういう役所勤めをやったことがあるので、中で色々な議論があるんですよ。一枚岩で、「いや、こんなもの聞く耳持たない」というので、パーンとやってしまえとかいうだけではないはずなんですよ。そういった人たちの中での声が、やはりもっと大きくなっていただけるように、私は働きかけをしていくということじゃないかと思います。
やっぱり現場で運用する皆さんが、きっちりこれはやらなければいけないと思ってもらえるとかね。あとそういった現場の運用をやれると、こういうふうにやったらうまくいくというようなデータとか、色々なものを提供していくというやり方しかないんじゃないかなという気がいたしますけどね。そういう意味で、粘り強くやっていくということではないかと思っております。
あと、公共事業のあり方にも関わると思いますけれども、財源が無尽にあると。高度経済成長時のように湯水のように税収が入り、天からお金が降ってくると。だからどんどん使うんだと、使えや使えだという時代ならいざ知らずですよ。そうではなくて、限られた財源をどういうふうに有効に活用していくのかということが求められているときに、最初の話に戻りますが、私は造ってしまったらそれで終わりだと、済みだということではないのではないかと思います。
国もそうだし、我々地方自治体というか、いわゆるオールジャパンでいえば、もうこれまでに整備した、造ってしまった公共事業、公共施設の維持補修、維持管理をどうしていくんだねということが非常に大きなテーマになっているじゃないですか。河川施設もそうですよ。堤防だって護岸だって何だって、あと道路だってですよ。愛知県だって、今も道路延長を着々とやっていますけども、段々新規よりも、維持補修だけでえらいことになってくるわけです。高速道路だってそうでしょう。NEXCOもそうだし、名古屋高速だって、結局償還期限を延長せざるを得ない。そうしないと、やっぱり構造物の塊ですから当然劣化してくるわけですね。そういったものも含めてやっていこうと。
長良川河口堰も20年たって、やはり色々な構造物とか施設とかは、やっぱり50年、100年、何もしないでもつなんてことはありませんから。20年たてば、機械系は相当メンテナンスを入れていかないといけないんですよね。そういったことも含めて、ずっと一本調子で、そんなもの造ってしまったからあとは知らない、知ったことか、というようなことでは、私はいずれ済まないというか、もうそこまで来ていると思っていますから、この際色々な意味も含めて点検しましょうよということを引き続き、粘り強く申し上げていくということかなと思っています。 |
【記者】 |
今後テーブルに着いていただきたいというお話が知事からありましたが、それはあくまで、国や水資源機構に対してということで、三重県や岐阜県に対して愛知県がリーダーシップを取ってまとめていくという道筋はありますか。 |
【知事】 |
いや、国と水資源機構で十分だと思います。
こういうこと言うとあれですけど、地方自治体、岐阜県、三重県にしても、国と水資源機構が「うん」と言わなければ、しないでしょう。どうせ裏で「おまえら反対しろ」とやっているんですから。だから、そこと話をしなければ意味ないということです。
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