【記者】 |
例えば、豊田市の場合、自助努力ではなく、たまたま、大企業であるトヨタ自動車(株)の本社があって税収が増えているだけなので、格差是正のために再配分しても良いのではという見方もあるかと思いますが、どう考えますか。 |
【知事】 |
それは先程明快に申し上げたでしょ。企業という存在というものは、人が働いて初めて成り立つわけですよ。企業という人間がいるわけではないんですね。トヨタ自動車7万数千人の社員の方が、一生懸命働いてつくっているわけです。
その社員の方々は、大方というか7、8割は豊田市、みよし市、あの地域に住んでおられる。そこの市民が一生懸命働いてグローバル競争を闘って、付加価値を得て、果実を得てやっているということですし、あえて言えば企業さんだって社会的な存在ではないですか。法人格という形であるわけですね、認められているわけです。そういった活動を企業がやっている。
そこに立地をしていたって、元々こんなグローバル企業がいきなりポンといって東京から舞い降りてきたわけではなくて、戦前にあんな苦しい思いをして、戦後一旦潰れかかった、そういう時代だってあったわけですね。あそこの企業誘致をしたときに、当時の挙母町は、土地の実勢価格と企業立地のための土地の価格で、当時の町の予算の相当分をはたいてこちらに誘致したとか、色々なことをやっているわけですよ。
しかし、日本全国を見てください。そうやって企業立地、産業振興がうまくいった例はむしろ少ないんですよ。むしろ失敗している方が多い。それだけリスキーなんです。自分で企業、産業を興して、自分の足で自立してやっていこうということは非常にリスキーなんですよ。今ないことをやるわけだから、チャレンジしなければ。そのことを一生懸命やって、たまたま、たまたまそういったことがうまく何とか回っているということなんですね。
元々ルールに基づいてやっていたわけですね。税というのは租税法定主義ですから、国税も地方税も法律に基づき、条例に基づいてやってきている。そういう租税法定主義があり、民主主義、資本主義の世の中では、やはり予測可能性があって初めてビジネスが成り立つわけですね。それにもかかわらず、その予測可能性をことごとく覆して、いわゆる海外の新興国、途上国のような形で、ある日突然税制が変わって、今年からこれだけ税よこせとか、金をよこせというようなことが、何で日本で起きるのかということだと思います。
私は全く、そんなこと言われるのは、極めて心外だし、論外だしね。そういうことを言う方は、もう地方自治体は努力するなと、何もしなくて国からの施しを待っていた方がいいのだと、努力するからばかなんだと。今回の措置は、私は一生懸命頑張った者に対するペナルティーだと。頑張った罰ということかと。そういうふうに言い直せと。日本はそういう国なのだと。そういうふうになったのだと。
今の政権が目指す地方創生というのは、頑張った者に罰を与えるんだと。頑張るなということだったら、そういうふうに言ってくださいよ。違うのだったら違うと言ってくださいよ。違うのでしょ。違うのだったら、是非こんなやり方を、この措置を直してほしい。当然のことを言っているだけです。 |
【記者】 |
国の地方交付税等による市町村間の格差是正が行き過ぎだということですか。
それとも、今回のやり方が問題だということですか。 |
【知事】 |
今回のやり方が問題なんですよ。自治体間の財源の是正というか、財源の調整というのは、国税5税でプールして地方交付税で均てん化するということがありますよ。だからこういう自治体は、そういう意味では、地方交付税は1円ももらってないわけです。愛知県だって、かつてそれをもらわないときがあった。それは仕方ないんですよ。国税をこんなに払っていたって。
愛知県もリーマンショック前の多かったときは、愛知県内の、県、名古屋市、市町村で得ている税収が3兆円、国に払っている税収は3兆5,000億円という時代が長く続きましたよ。
それはちょっといかがなものかとは思うけど、だけどもそれは決められたルールかなと思いますが、私は、今回、消費税収が東京、名古屋、大阪の大都市に集まるからそれを均てん化するという趣旨について、それがいけないとは言っていないんですよ。それをやるなら、もっと納得する形でやっていただきたいということで申し上げているのであって、特にそれを調整することについて、私は、ある程度やむを得ないとは思いますよ。今回の、地方税を使うというものはおかしいと思いますけど。やり方は色々あるだろうと思いますが、要は、このことによって大きく減収になる、消費税が上がるけれども税収がマイナスになるということがいけないと。それはおかしいでしょ。どう考えたって理屈がつかない。
全国に七つの市町村しかないと、全部足したって100何十億円だというのだったら、そこを調整してくれと言っているのですよ。そう難しくない。地方交付税は、来年度の予算だって16兆円あるんだよ。それを、おまえら頑張ったからおまえらだけ罰を与えるというようなやり方が地方創生ですか。これは、一事が万事だと思いますよ。こんなことはあり得ない。
本来あるべき姿は、地方交付税の原資を増やして、国税から地方交付税に回るものを増やして、この16兆円を増やして、そこで消費税が上がってもあまり増収にならないところに配っていくというのが本来のあり方なんでしょうね。ただ、その原資がないから税の間で配分するということですけど。法人課税だけ使うとこういう話になって、私の先程の説明の一番最後の5ページにあるように、市町村で法人市町村民税の割合がこれだけ高いところは他にないので、こういうことが起きる。しかし、かつての霞が関、かつての自治省だったら、このくらい分かるはずだけどね。それが分からないのが、分からないというか、あえて目をつぶったのか、それとも本当に分かってなかったのか。知らないふりして突っ走っていけば最後は数でどうにかなるとでも思っているのかということですけど、私は断固反対だと、こんなやり方はないだろうということは申し上げたい。申し上げるのは私の責任だから、それは申し上げなければいけないですから。 |
【記者】 |
今後、国に対して、具体的な是正の提案をしていくのですか。
提案をしていく場合は、その提案内容について、現段階である程度の考えがあるのですか。それとも、今後検討していくのですか。 |
【知事】 |
我々が検討したって、彼らにそれがどうしたと言われたらそれまででしょう。だから、私はこれはけしからんと、問題だと、税の原則に反すると、民主主義の原則に反すると、社会的正義に反するということを申し上げているのであって、これは強くここで申し上げておりますし、全国会議員にはこの資料を渡して説明をさせていただきますから、大いに国会で議論していただきたい。本当にこんなのが通るのですかということで、議論をしていただきたい。その上で、是正措置をしっかりと講じていただきたいということを申し上げていきたいと思っております。
はっきり言って、そんな難しい話でも何でもないよ。全然難しくない。
はっきり言って、これは失念していたのでしょう。ただそれだけだと思いますよ。だから難しくも何ともないのだから、これはきっちりやっていただきたいということを申し上げていくということだけです。 |
【記者】 |
抜本的にシステムを変えると言うよりも、救済措置を考えるべきだということですか。 |
【知事】 |
当たり前ではないですか。色々なやり方があると思いますが、私が言っているのは、都道府県単位でいいとは言いませんよ。この愛知県の分の法人事業税、法人県民税が召し上げられていくということについては、いいとは言いませんよ。いいとは言わないけど、それ以上に、今回、全国1,700の区分けになっている市町村が、消費税が上がるにもかかわらずドーンと税収が落ちるということになると、それはやっていけないということですよね。
それが全国で愛知県内の七つしかないということですから、その七つをどうにかしてくれと言っているわけですよ。私のこの文面に、「全ての自治体の財政運営に悪影響が生じないように必要な対策を講じてもらいたい」というのはそういうことです。だからそう難しくないでしょと言っているんです。
それは制度全般を見直してくれた方がいいよ。いいけど、多分そういう形にならないでしょう。法案は、予算とセットだから、この後もうすぐ、2月に入ったらすぐ閣議決定して出ていくのでしょう。あと、どういうやり方があるかと、そんなの幾らでもやり方あるよ。そもそもやる気がないというのだったら、我々は闘うしかないね。それは断固闘うね。愛知県民は見てると思う。
何もなしで、国会で法律を通しますと、どんどんやっていきますと、知ったことかと言う。それは愛知県民は見ているよ。民主主義の世の中だから、これは選挙が答えを出してくれるでしょう。愛知県民は見ていますよ。それはそういうことではないんですか。それは私は強く申し上げていきたいと思います。 |
【記者】 |
愛知県の試算では、東京等では税収がマイナスになる市町村はなく、マイナスになるのは県内の7市町村だけということです。これは、総務省が、トヨタグループの大企業があり、基準財政収入を大きく上回る自治体の税収をマイナスになるようにしているような気がしますが、知事はどう見ますか。 |
【知事】 |
それは聞いてください、そういうことではないと思うよ。いつもいつも議論になるのは、東京都の話ですもんね。東京都で毎年何千億円も超過税収が上がってくるということをどうするんだと。消費税を地方税として割り振ったから、その分また東京にドーンと乗っていく、それをどうするんだということでいつも議論がされているんですね。
そこに、特に最初の法人事業税の議論のときは、リーマンショックの前だったので、平成19年の年末、8年前は愛知県も不交付団体だったから、そういう意味では、東京都ほどではないけど、東京、愛知という感じの対象だったのでしょうけど、今は、私ども愛知県はリーマンショックの後、交付税をもらう交付団体に落ちぶれているので、あまり偉そうなことは言えないんですけれども、それでも東京都はずっと、何千億円も毎年超過税収がたまるという形になっているので、常にそこが問題になって、そこを議論したら、他のところが、今回の県内のこういう市町村、特に法人市町村民税のウエイトが非常に高い市町村がおざなりになったというか、はっきり言って失念していたと、忘れていたということではないんですか。
一言の説明もないよ。私は秋からずっと言ってきたよ。県内の市町村にこういうのが出てくるのは、おかしくないかと言っていたら、はあはあはあというような感じです。何か5億円、10億円ぐらいのことだと思ったのでしょう。それでもいいとは言いませんよ。だけど、これ、毎年100億円ですからね。
先程申し上げたように、物事というのは程度問題がありまして、一般会計8兆円の東京都が、新国立ですったもんだしてやっているでしょう。あれだけ、すったもんだやって395億円負担するのに法律つくるんですよ。1,700~1,800億円の予算の豊田市が毎年、平年度ベースにすると120億円ぐらいになるのだが。110億円、120億円も毎年、理由もなく、消費税が上がったからごめんねで減収になるなんて、こんなの社会的正義に全く反すると思いますね。そのことは強く申し上げていきたいと思います。 |
【記者】 |
租税原則の公平・中立・簡素の観点から見た場合、愛知県にとって、今回の地方法人課税の見直しは、公平・中立の点から厳しい状況だと思います。
簡素の点から見ても、分かりづらく、住民の方にとっても、自分の知らない間に自分の住む市町村の税収が減っていたということになりかねないという感じさえ受けます。
簡素の観点から見た場合、知事はもう少し税制の制度全体を見直すべきだと思いますか。 |
【知事】 |
それはまた別の観点で、私は常に地方の税収というか、国と地方の税収構造を見直すべきだということは申し上げていますけどね。地方自治体でいわゆる地方交付税をもらわない不交付団体は東京都だけだと、愛知県は財政力指数が2番目か3番目にもかかわらず、交付税をいっぱいもらわなければやっていけないというところにまで落ちぶれたということは、やはり、これはやり方がおかしいのだと思うんです。
あと、全国でも市町村で、地方交付税の不交付団体は、愛知県内が26年度今のところ13団体。それを入れて、30団体か40団体ではなかったかな。やはり変は変ですよね。だから、どこを基準にしてどういうふうにするかというのは、それは、色々議論はあるけど、それはあると思います。
ただ、それはそれとして、本来の制度論ですが、今回のような、今の制度を前提にして消費税の税収を配分し直すということは、何らかのやり方ではやらなければいけないのでしょうとは思いますが、それをやったときにこういう副作用が出てくるなら、その副作用にはやはり手当てをしなければいけないのではないんですか。そのことをしっかり申し上げたいと思います。
法人事業税の2分の1を国に召し上げて配り直すというのは、8年前に議論があったとき、当時私は自民党愛知県連会長でしたけど、当時の福田さんの総理執務室まで怒鳴り込みに行きましたよ。
当時、自民党の政調会長をやっていた谷垣さんと私で覚書を結んで、愛知県の財政には影響及ぼさないという形で一札巻いて、制度の本体ではなくて、色々な措置でその負担を和らげるというやり方をやりましたよ。今回はまるでない。まるで何にもありませんから。
市町村だから当時のあれよりもはるかにひどいよ。予算規模の大きいところもあれば小さいところもあるけど、そういったところは一生懸命爪に火をともして、お金を、税収を集めて、みんな一生懸命努力してやって、そんな派手なこととかぜいたくなことはやっていませんよ。そういったところから、そんな100億円、10何億円、何億円とドコーンと一方的に召し上げていく。それも消費税が上がったのを機会に召し上げていくというのは、一体何の理屈があるのかと。何でそんなことが手当てできないのだろうか、何でそんな議論がなかったのかということについて、極めて疑問だね。
これは愛知県民は見てますよ。 |
【記者】 |
自民党税制調査会が興味をなくしたということでしょうか。 |
【知事】 |
それは、よその県の人は興味ないかもしれないわね。地元の人は、愛知県の国会議員さんはもっと興味を持ってほしいわね。私はそのことは、ずっと言ってきたよ。 |
【記者】 |
8年前の偏在是正の時は大きな議論になりました。今回はそのような感じではなかったと思いますが、知事はどのように思いますか。 |
【知事】 |
最後まで議論になったよ。最後まで議論になったけど、議論の焦点は東京都をどうするかという話でしたね。 |
【記者】 |
地方法人課税の問題について、当該7市町村には連絡はしたのですか。また、例えば、協議会を立ち上げるなど、現段階で計画があれば教えてください。 |
【知事】 |
7市町村には、こういう数字になりますよということと、25日月曜日ですね、こういう形で私から記者会見をして、しっかりと対応してくれと、対策をつくってくれと言って、国に対して緊急声明を出しますということは説明をし、7市町村みんな、県が先頭に立ってやってくれるのはありがたいと、我々もしっかり訴えていきたいと。我々は決して、そんな裕福だとか豊かだとか、そんなことは全然ないと。とにかく、毎日住民のニーズに応えてやっていくことで必死なんだというお話でございました。
7市町村でどうのこうのというよりも、愛知県には市長会、町村会がありますから、そういった市長会、町村会の皆さんにも、もう既に説明してありますけども、よく相談しながら。これは、それぞれの7市町村の問題ではなくて、他にもぎりぎりのところがありますからね。愛知県の市長会、町村会、そして愛知県、いわゆる県の地方行政、地方自治体全体の問題として取り組んでいきたいと思っております。
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