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「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期」 光合成リアルタイム測定技術を活用した次世代セミクローズド温室によるトマト栽培の実証実験を公開します

ページID:0060118 掲載日:2024年1月18日更新 印刷ページ表示

 愛知県と公益財団法人科学技術交流財団(豊田市)では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクト※1IV期」を2022年度から実施しています。

 作物にとって光合成は成長に必要な栄養素を作る活動でもあり、空気中のCO2濃度を低減させる効果もあります。豊橋技術科学大学の高山(たかやま)弘太郎(こうたろう)教授、シンフォニアテクノロジー株式会社(豊橋市)らの研究グループは、光合成速度の向上のために高CO2濃度を長時間維持し換気を最小化することで高収量・高品質・高効率な作物生産の実現と、カーボンニュートラルに貢献する次世代型のセミクローズド温室の開発を進めています。

 温室の開発に併せて、光合成をリアルタイムに計測できる技術を駆使した実証実験の様子を2024年1月26日(金曜日)に、知の拠点あいち(豊田市)の実証研究エリアに報道機関向けに公開しますのでお知らせします。

 この実証実験は、「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期」における「プロジェクトSDGs※2」の研究テーマである「地域CNに貢献する植物生体情報活用型セミクローズド温室の開発※3」によるものです。本プロジェクトにおいては、収穫量は従来比50%以上増の達成を目標としています。

1 開発の背景

 農林水産省が2023年に発表した「スマート農業をめぐる情勢について」では、2025年までにほぼ全ての農業の担い手によるデータ活用型農業の実践が、2021年に発表した「みどりの食料システム戦略」では2050年までに施設園芸における化石燃料ゼロを達成することが国家目標となっています。この国家目標では、農作物の食料自給率向上だけでなく、カーボンニュートラル※4・SDGsといった社会的ニーズへの対応や、昨今の国際情勢を受け、化石燃料に依存しない施設園芸の確立が求められています。そのため、省エネ・省資源でありながらも高品質な農作物を持続的に生産するスマート農業への転換が急務となっています。

2 セミクローズド温室の概要

 「知の拠点あいち」内の実証研究エリアに設置したセミクローズド温室の外観と内観(制御室)を図1に示します。

セミクローズド温室の外観(上)

セミクローズド温室の内観(制御室)(下)

 図1 セミクローズド温室の外観(上)と内観(制御室)(下)

 植物の成長のためには、高CO2​濃度だけではなく、水分の確保、土壌中の肥料の吸収、湿度調節と蒸散の促進が重要です。湿度が過度に低下すると、乾燥ストレスにより、植物は気孔を閉じて蒸散を抑制します。気孔が閉じると、植物体内へのCO2の取り込みができなくなるため、光が十分にあり、高CO2濃度の条件下であっても光合成が行われなくなります。このような状態を回避するためには、植物生体情報に基づいて環境を最適に制御する必要があります(図2)。

セミクローズド温室の環境制御において光合成速度を高い水準に保つために考慮すべき生体情報とその位置付け

図2 セミクローズド温室の環境制御において光合成速度を高い水準に保つために考慮すべき生体情報とその位置付け

 そのため、コンピュータ管理による温室内環境(光、CO2、温湿度、気流)制御により、効率的な施肥(せひ)等のオぺレーションの最適化を図っています。更に、今回整備したセミクローズド温室では、本プロジェクトチームで開発した光合成チャンバ※5(図3)を備えています。このチャンバ内で消費されるCO2濃度の変化を測定することで、作物の生体情報(光合成速度、蒸散速度、成長速度)をモニタリングすることが可能となりました。これにより、収穫時期の予測、高収益、コストダウンが可能となりました。
 なお、収穫量は従来比50%以上増を目指します。

光合成チャンバ

         図3 光合成チャンバ

3 公開実験(報道機関向け)

(1) 実施日時

   2024年1月26日(金曜日) 午後1時から午後3時まで

(2) 場所

   知の拠点あいち実証研究エリア (豊田市八草町秋合1267-1 電話:0561-76-8889)

   ※ 当日は、知の拠点あいち内のあいち産業科学技術総合センター1階講習会室へお越しください。

(3) 対象

   報道機関

(4) スケジュール

   午後1時     受付(あいち産業科学技術総合センター1階 講習会室)

   午後1時15分 開発及び実験の概要説明

                豊橋技術科学大学 教授 高山 弘太郎 氏

   午後1時45分 実証研究エリアへ移動・セミクローズド温室の概要説明

               シンフォニアテクノロジー株式会社 コントロ一ラ開発営業室

                                                            室長  爪(つめ) 光男(みつお) 氏

             ※ セミクローズド温室内でトマトの生育状態と実際の環境計測制御機器、温室内環境と光合成速度のモニタリングの様子を御覧いただきます。

   午後2時30分 講習会室へ移動・質疑応答

   午後3時     終了

(5) その他

   取材の事前申込みは不要です。

 

4 期待される成果と今後の展開

 開発成果の事業化・普及の拠点とすべく、見学可能な実験用温室を整備し、実証実験としてトマトの栽培を開始しました。最先端のスマート農業を実践する設備として、温室環境のモニタリングと制御の様子及び作物の生体情報のモニタリング状況(植物によるCO2の吸収の指標である光合成のリアルタイムモニタリング)を見学できます。

 今後は、作物の生育状態を判断する画像計測ロボットの導入等、一層のDX化を進め、通年での実証実験を行います。本セミクローズド温室は、スマート農業をけん引する施設として公開し、農業従事者と産学の情報交換等を通じて、新しい農業の担い手となる人材の育成にも活用します。

                                       

5 社会・県内産業・県民への貢献

社会への貢献

バイオガス発電と組合せて提案することで、新しい循環型社会ビジネスの創出とCO2削減の両立が可能。

県内産業への貢献

データ駆動型農業生産技術開発の促進等、アグリテック関連産業の活性化。2020年11月に県が策定した「あいちビジョン2030」における、東三河地域の“めざすべき将来像”である「先端技術を活用したスマート農業等による生産性向上と持続可能な発展」の実現に寄与。

県民への貢献

本セミクローズド温室をカーボンニュートラル(CN)のための施設園芸プラットフォームに位置づけることで、愛知県のCNの取組のシンボルの一つとして活用。

 

6 問合せ先 

【重点研究プロジェクト全体に関すること】

・あいち産業科学技術総合センター 企画連携部
担当:藤田、日渡、山田
所在地:豊田市八草町秋合1267番1
電話:0561-76-8306

・公益財団法人科学技術交流財団​ 知の拠点重点研究プロジェクト統括部
担当:松村、渡邊、田草川
所在地:豊田市八草町秋合1267番1
電話:0561-76-8360

 

【本開発内容に関すること】

(開発技術に関すること) 
・豊橋技術科学大学
担当:教授 高山 弘太郎
所在地:豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1
電話:0532-81-5154

(温室に関すること)
・シンフォニアテクノロジー株式会社
担当:コントロ一ラ開発営業室 室長 爪 光男
所在地:東京都港区芝大門1-1-30 芝NBFタワ-
電話:03-5473-1812

 

【用語説明】

※1  知の拠点あいち重点研究プロジェクト

 高付加価値のモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に実施している産学行政の共同研究開発プロジェクト。2011年度から2015年度まで「重点研究プロジェクトI期」、2016年度から2018年度まで「重点研究プロジェクトII期」、2019年度から2021年度まで「重点研究プロジェクトIII期」を実施し、2022年8月から「重点研究プロジェクトIV期」を実施しています。

「重点研究プロジェクトIV期」の概要

実施期間

2022年度から2024年度まで

参画機関

15大学 7研究開発機関等 88社(うち中小企業59社)

(2023年11月時点)

プロジェクト名

・プロジェクトCore Industry

・プロジェクトDX

・プロジェクトSDGs

 

※2 プロジェクトSDGs

概要

 SDGs 達成に向けた脱炭素社会・安心安全社会の実現と社会的課題の解決に資する技術開発に取組みます。

研究

テーマ

【分野】カーボンニュートラル 

1 地域の資源循環を支える次世代の小規模普及型メタン発酵システム

2 インフォマティクスによる革新的炭素循環システムの開発

【分野】感染症対策・ライフサイエンス

3 健康と食の安全・安心を守る多項目遺伝子自動検査装置の開発

4 多感覚ICTを用いたフレイル予防・回復支援システムの研究開発

5 管法則に基づく血管のしなやかさの測定システムの開発

6 安心長寿社会に資する認知情動を見守り支える住まいシステム開発

【分野】災害対策・自然利用・複合分野

7 地域CNに貢献する植物生体情報活用型セミクローズド温室の開発

8 全固体フッ化物電池の開発とその評価技術の標準化

9 血中循環腫瘍細胞からがんオルガノイド樹立が可能な1細胞分取装置の開発

参画

機関

8大学 5研究開発機関等 26企業(うち中小企業19社)

(2023年11月時点)

 

※3 地域CNに貢献する植物生体情報活用型セミクローズド温室の開発

概要

 植物生育状態のリアルタイムモニタリング(光合成計測チャンバ&植物画像計測ロボット)に基づいて、換気の最小化と室内空気循環の最適化を可能にするセミクローズド(半閉鎖型)温室を開発し、この温室において高CO2濃度かつ最適温湿度の栽培条件を長時間維持することで、高収量・高品質・高効率、かつ、カーボンニュートラルの施設生産を実現する。同温室を用いたトマト栽培において従来比で収穫量50%以上の向上・CO2利用効率50%向上・環境制御戦略策定プロセスの50%の自動化を達成し、製品化することを目的としている。

研究リーダー

豊橋技術科学大学 教授 高山 弘太郎 氏

事業化リーダー

シンフォニアテクノロジー株式会社 爪 光男 氏

PLANT(プラント) DATA(データ)株式会社 北川(きたがわ) 寛人(ひろと) 氏

参加機関

(五十音順)

〔企業〕

イノチオアグリ株式会社(豊橋市)、サーラエナジー株式会社(豊橋市)、シンフォニアテクノロジー株式会社(東京都港区)、株式会社にじまち(半田市)、株式会社ビオクラシックス半田(半田市)、PLANT DATA株式会社(愛媛県)

〔大学〕

豊橋技術科学大学

〔公的研究機関〕

あいち産業科学技術総合センター、公益財団法人科学技術交流財団、JAあいち経済連

 

※4 カーボンニュートラル(CN)

 カーボンニュートラルとは、ある活動やプロセスによる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を減らし、残った排出を吸収することで、環境への影響をゼロに近づけることです。つまり、地球に出す炭素を減らして、出した分を取り戻すことを目指しています。企業や団体がカーボンニュートラルを目指すことで、環境への負荷を軽減し、持続可能な社会への貢献を目指しています。

 

※5 光合成チャンバ

 トマトの苗全体を透明な袋で覆うことで密閉な空間とし、内部の二酸化炭素(CO2)濃度をセンサにより経時的に測定することで光合成速度を調べる実験装置。

 

このページに関する問合せ先

​あいち産業科学技術総合センター企画連携部
企画室(担当:藤田、日渡、山田)
豊田市八草町秋合1267-1
電話:0561-76-8306​