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「あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター研究試作展」を開催します~知の拠点あいち重点研究プロジェクトの成果を活用した「着るセンサ」などを展示~
あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター(一宮市。以下「センター」という。)では、繊維業界への技術支援の一環として、新技術に関する研究開発を実施し、企業の方々へ技術移転を行っています。
この度、研究開発成果品や試作品の展示・紹介を行う「あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター研究試作展」を開催します。
知の拠点あいち重点研究プロジェクトI期※1の成果を活用した着るセンサや、最新の素材、独自の技術を用いて試作した織編物(おりあみもの)などを多数展示します。
これらの研究試作品に興味のある方を始め、多くの方々の御来場をお待ちしています。
1 日時
2024年2月15日(木曜日)及び2月16日(金曜日) 両日午前10時から午後5時まで
(「第21回 JAPAN YARN FAIR(ジャパン ヤーン フェア) & THE BISHU(ザ ビシュウ)~糸と尾州の総合展~※2」内において開催)
2 場所
一宮市総合体育館 いちい信金アリーナ
(一宮市光明寺字白山前20番地 電話:090-6356-0436(会期中のみ))
3 入場料
無料
4 展示内容
展示会では、以下のものを含む各種研究試作品を展示します。
(1)センサ織物※3で作られた「ウェアラブルセンサ(着るセンサ)」
産学行政の共同研究(知の拠点あいち重点研究プロジェクトI期)で開発した、圧力分布の計測が可能な布で作られたシャツとズボンです(図1)。衣服表面に加えられた圧力の変化を検知して、モニタに表示することができます(図2)。
この衣服は将来、医療、介護などの分野で活用が期待されます。例として、介護の抱きかかえ方のトレーニングが挙げられます。要介護者がこの衣服をパジャマとして着用すると、身体のどこに圧力がかかっているかを本人に尋ねることなく知ることができ、適切な抱きかかえ方を習得するのに役立ちます。
本展示会では、このウェアラブルセンサの実物を展示します。
図1 着用例 | 図2 背中部分を加圧したときの反応 (圧力が増加した箇所を赤色で表示) |
(2)AI(人工知能)の活用による繊維鑑別
繊維製品に他の繊維が混入してしまった場合、混入した繊維の種類を鑑別して原因を調べます。繊維鑑別は、顕微鏡での観察、薬品による処理や機器分析などの結果から人が判断しています。精度良く判断できるようになるまでには多くの経験を必要とします。
労働力不足や技術伝承といった課題がある中、センターでは、AIを活用した効率的かつ迅速な繊維鑑別の研究に取り組んでいます。今回、機器分析では判断が難しいセルロース系繊維※4やポリアミド系繊維※5を対象として、その鑑別をAIで検討した成果(図3)を展示します。
図3 AIを活用した繊維鑑別 |
(3)センター試作品
(ア)自由に描ける和紙織物
和紙を素材とした糸で織った織物です。文字を書いたり絵を描いたりすることで自由にデザインできます(図4)。和紙には調湿性や消臭性があり、また、最終的には自然に還る環境に優しい素材です。和紙の糸に撚りをかけて丈夫にしたことで、洗濯やアイロンがけが可能な織物になりました。この織物は、衣料品としての利用が期待されます。
図4 和紙織物(絵を描き足すことができる) |
(イ)廃棄予定品を再生した織編物
廃棄予定であった梨地組織※7の毛織物を、絞り染めすることで再生させた織物(図5)と、長期在庫品として劣化黄変し廃棄予定であった綿糸を、再生繊維※8と組み合わせて編むことで白さと強さを再生させた編物(図6)です。繊維産業における環境負荷の低減が喫緊の課題となっている中で、SDGsを意識した試作品となっています。
廃棄予定だった毛織物 | 絞り染めで再生 | |
図5 再生毛織物 |
劣化黄変した綿糸 | 再生させた編物 |
図6 再生綿編物 |
5 問合せ先
あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター
素材開発室(担当:山内、浅野、長﨑、加藤(一))
一宮市大和町馬引字宮浦35
電話:0586-45-7871
メール:owari-kikaku@aichi-inst.jp
【用語説明】
※1 知の拠点あいち重点研究プロジェクトI期
高付加価値のモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に実施した産学行政の共同研究プロジェクト。2011年度から2015年度まで実施。
※2 第21回 JAPAN YARN FAIR & THE BISHU~糸と尾州の総合展~
「第21回 JAPAN YARN FAIR」は、「糸(YARN)」に特化した展示商談会で、商社、紡績、合繊メーカー、意匠撚糸メーカー、染色整理加工企業などが、機能性、意匠性に富んだ高付加価値の糸を提案し、染色整理技術や繊維関連機器を紹介。
「THE BISHU~糸と尾州の総合展~」は、尾州産地に関連する様々な事業や企業、団体の活動などを紹介する総合展示会。13回目となる今回は「ジャパン・テキスタイル・コンテスト(JTC)2023優秀作品展」等の常設展示を実施する他、「『THE BISHU ~糸と尾州の総合展~』ONLINE」と題して尾州産地に関する様々なコンテンツを発信。
主催:公益財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンター
共催:一宮市、愛知県繊維振興協会
特別協力:日本毛織物等工業組合連合会
後援:中部経済産業局、愛知県、一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会、中部羊毛産業協会、愛知県撚糸工業組合、名古屋毛織工業協同組合、尾西毛織工業協同組合、尾北毛織工業協同組合、津島毛織工業協同組合、岐阜県毛織工業協同組合
協力:日本化学繊維協会、日本紡績協会、日本羊毛産業協会、日本毛整理協会、ハローワーク一宮
※3 センサ織物
芯に導電性繊維が含まれる糸をたて・よこに使用した織物。織物表面を加圧したり除圧したりする際にたて糸とよこ糸の距離が変化し、そのときの静電容量の変化を計測することで圧力を検知する。圧力を検知する箇所を分割することで、一枚の織物で圧力分布を検知することが可能となる。
知の拠点あいち重点研究プロジェクトI期の「超早期診断技術開発プロジェクト」において、あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター、株式会社槌屋(つちや)(名古屋市中区)、名古屋大学が参画して開発を行った。
※4 セルロース系繊維
植物の細胞壁を構成する主成分であるセルロースから成る繊維。本研究では天然の植物から採取される綿や麻のほか、人工的に作られる再生繊維であるレーヨンやキュプラを用いている。
※5 ポリアミド系繊維
多数の単分子がアミド結合してできた高分子であるポリアミドから成る繊維。本研究では動物から採取される羊毛や絹のほか、化学合成により作られる合成繊維であるナイロンを用いている。
※6 畳み込みニューラルネットワーク
主に画像認識の分野で使用されている機械学習の手法。「畳み込み層」や「プーリング層」といった独自の構造を持ち、画像から特徴を抽出してパターンを学習し、識別や予測を可能とする。
※7 梨地組織
梨の皮のように細かい凹凸感を表現した組織。
※8 再生繊維
短い繊維から成る天然由来の原料を化学的に溶かした後、再び長い繊維としたもの。木材パルプを原料としたレーヨンや、綿の種子毛を原料としたキュプラがある。
このページに関する問合せ先
あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター
素材開発室(担当:山内、浅野、長﨑、加藤(一))
一宮市大和町馬引字宮浦35
電話:0586-45-7871
メール:owari-kikaku@aichi-inst.jp