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三河木綿の色調を生かしたセルロースナノファイバーを開発 ~企業のアップサイクル※1をあいち産業科学技術総合センターが支援~
あいち産業科学技術総合センター(本部、豊田市。以下「センター」という。)は、株式会社イチオリ(蒲郡市)の協力のもと、三河木綿※2の色調を生かした植物由来の次世代素材「三河木綿セルロースナノファイバー(CNF)※3」を開発しました。
開発した「三河木綿CNF」は抗菌剤に加工され、2025年版愛知県手帳限定版に使用されています。手帳は、10月18日(金曜日)より販売を開始します(愛知県手帳の一般販売については、同時発表)。
また、「三河木綿CNF」、2025年版愛知県手帳限定版及びCNF応用品(ハンガー)は、10月30日(水曜日)から11月1日(金曜日)まで、ポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催される「メッセナゴヤ2024」、10月24日(木曜日)と10月25日(金曜日)に、ふじさんめっせ(静岡県)で開催される「ふじのくにセルロース循環経済国際展示会」及び11月15日(金曜日)と11月16日(土曜日)に、蒲郡商工会議所(蒲郡市)で開催される「テックスビジョン2024ミカワ」で展示します。
1 開発の背景、概要
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター(蒲郡市)、あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター(一宮市)は、繊維の総合産地である三河・尾張地域において、生活関連素材や産業用素材の研究開発、製品評価を実施するとともに、産地としての基盤を生かした、企業の新分野への進出を支援しています。
また、あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市)では、環境対応製品開発が求められる企業に対して、植物素材の利用、分析などの技術支援を行っています。中でも、新規素材として期待されるCNFについて、自動車部品、繊維処理剤、金属研磨剤、フィルター、建材及び食品など、多くの産業分野に向けた開発に取り組んでいます。
今年度は、この3つのセンターが連携して行う取組が、令和6年度(公財)科学技術交流財団の事業である「産学協創チャレンジ研究開発事業(大学シーズ型)」に採択され、三河木綿のアップサイクルを目的とした研究開発(テーマ名「三河木綿のナノファイバー加工と高機能化技術の開発」)を行っています。今回発表の「三河木綿CNF」はこの事業成果の一部です。
2 開発の詳細
(1)三河木綿CNFについて
センターは、織物を製造する地元企業である株式会社イチオリの協力を得て、様々な色彩に染色された残糸や多重ガーゼ等の端材を回収しました(図1)。回収した綿素材を、センター保有の機械粉砕技術(特許第5232976号)で、太さ100nm(ナノメートル)以下の「三河木綿CNF」に加工しました(図2)。
従来技術では、着色剤として使用するCNFの染色工程は1回の処理量が少なく、また、染色後の小さな粒子の回収ロスがありました。今回の開発では、既に染色された残糸をCNFに加工するため、薬剤、エネルギー及び洗浄水の削減が期待できます。
図1 三河木綿の端材
(染色済み)
図2 様々な色彩の「三河木綿CNF」
(染色工程不要、高分散性素材)
(2)2025年版愛知県手帳限定版表紙の抗菌処理
開発した「三河木綿CNF」は、センターが特許出願している技術により抗菌剤に加工され、蒲郡市及び三河織物工業協同組合の協力のもと、愛知県手帳の表紙へ抗菌加工を行いました(特願2021-117558)(図3)。
抗菌加工の主な特徴は、以下の通りです。
・植物素材のCNFで抗菌活性粒子を織物に定着させるため、石油系の合成品に比べ環境にやさしく、天然繊維の風合い※4が残ります。
・織物に吸水乾燥させるだけで、容易に抗菌処理ができます。
・抗菌剤には、水野金属商事株式会社(名古屋市東区)の抗菌性銅粒子を用いました。
・一般社団法人日本銅センターのCU STAR(シーユー スター)認証※5を受けた高い抗菌活性を有します。
図3 2025年版愛知県手帳限定版(三河木綿)の表紙
(3)三河木綿CNF応用品(ハンガー)
「三河木綿CNF」は、綿や紙などの着色剤に利用できます。繊維業界のアップサイクルを目的に、回収した三河木綿で様々な色彩のハンガーを試作しました(図4)。色調の濃淡やハンガーの強度は「三河木綿CNF」の形態、添加量及び添加方法により調整が可能です。
図4 「三河木綿CNF」を使用したハンガー試作品
3 技術移転を目指した今後の予定
センターでは、繊維製品の開発、セルロース加工技術・応用技術開発及びアップサイクルに関心のある企業の方々からの相談や問合せに随時対応しています。
また、本研究成果を「メッセナゴヤ2024」をはじめとして展示会に出展し、愛知県特産品の三河木綿のPRと共に開発技術を紹介します。
4 問合せ先
(メッセナゴヤ2024、ふじのくにセルロース循環経済国際展示会、CNF及び手帳の抗菌処理に関すること)
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター環境材料室
担当:伊藤(雅)、北尾、森川
刈谷市恩田町一丁目157番地1 電話:0566-45-6901
URL:https://www.aichi-inst.jp/
(三河木綿、テックスビジョン2024ミカワに関すること)
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター製品開発室
担当:平石、佐藤
蒲郡市大塚町伊賀久保109 電話:0533-59-7146
URL:https://www.aichi-inst.jp/mikawa/
(繊維の試験に関すること)
あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター素材開発室
担当:浅野、加藤(一)
一宮市大和町馬引字宮浦35 電話: 0586-45-7871
URL:https://www.aichi-inst.jp/owari/
(抗菌剤に関すること)
水野金属商事株式会社豊田支店営業部 主任 佐藤 幸治(さとう こうじ)
豊田市駒場町田戸51-1 電話:0565-57-5311
URL:https://www.mizunokinzoku.com/company/
(CNFを用いた抗菌処理の特許技術に関すること(特願2021-117558))
日清紡(にっしんぼう)テキスタイル株式会社大阪支社
執行役員 蓮蔵 和彦(れんぞう かずひこ)
大阪市中央区北久宝寺町2丁目4番2号 電話:06-6267-5536
URL:https://www.nisshinbo-textile.co.jp/index.html
(愛知県手帳に関する問合せ先)
愛知県統計協会
担当:近藤、福永
名古屋市中区三の丸3-1-2 愛知県県民文化局県民生活部統計課内
電話:052-954-6101
メール:toukei@pref.aichi.lg.jp
URL:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/toukei/aichitoukeikyoukai.html
【参考】展示会の概要
(1)メッセナゴヤ2024
開催日時:2024年10月30日(水曜日)から11月1日(金曜日)まで
各日午前10時から午後5時まで
場所:ポートメッセなごや 第1展示館(名古屋港金城ふ頭)
名古屋市港区金城ふ頭二丁目2番地 (電話:052-398-1771 (代表))
概要:業種・業態の枠を超え、多種多様な出展者の持ち寄る最新の製品や技術、サービスを一堂に集め、販路拡大や人脈形成を図っていただく日本最大級の異業種交流展示会。
入場料:無料
主催:メッセナゴヤ実行委員会
URL:https://www.messenagoya.jp/
(2)ふじのくにセルロース循環経済国際展示会
開催日時:2024年10月24日(木曜日)午後1時から午後4時まで
2024年10月25日(金曜日)午前9時から午後3時まで
場所:富士市産業交流展示場「ふじさんめっせ」大展示場
静岡県富士市柳島189-8 (電話:0545-65-6000)
概要:CNFを始めとした環境に優しいセルロース素材を活用した製品開発を促進するため、国内外の関連メーカーや応用製品開発企業等の出展企業と来場者による国内最大級の専門展示会
入場料:無料
主催:ふじのくにセルロース循環経済フォーラム
URL:https://www.pref.shizuoka.jp/sangyoshigoto/kigyoshien/shuseki/1054121.html
(3)テックスビジョン2024ミカワ
開催日時:2024年11月15日(金曜日)・11月16日(土曜日)
両日午前10時から午後4時まで
場所:蒲郡商工会議所 1階 コンベンションホール
蒲郡市港町18番23号 (電話:0533-68-7171)
概要:繊維総合展示会。開発製品の展示や三河産地の活性化を図るための講演会を実施。
入場料:無料
主催:テックスビジョンミカワ開催委員会
URL:https://texvision-mikawa.jp/
【用語説明】
※1 アップサイクル
未利用で廃棄される素材や製品に新たな価値を与えて再生すること。デザインや機能などの付加価値が与えられ、素材としての寿命が長くなることが期待される。
※2 三河木綿
愛知県三河地方産の綿織物。2007年2月に特許庁の地域団体商標に登録されている(商標登録番号:第5023103号、三河織物工業協同組合)。
三河地方では、他の地域に先駆けて綿業が発展したとされ、明治時代には「三河木綿」というブランド名で全国に知れ渡った質の良い綿製品。
※3 セルロースナノファイバー(CNF)
植物由来の次世代素材。主に光合成をする植物を原料にして、化学加工や機械加工により得られる100nm以下の太さのナノサイズの繊維状物質。環境負荷が少ないプラスチックの代替素材として、既に家電、建材、化粧品などに活用されている。
※4 風合い
“こし”“ぬめり”“ふくらみ”などの用語で表現される布の手触り感。風合い試験機で、「引張試験」「せん断試験」「曲げ試験」「圧縮試験」「表面試験」という五つの評価試験から得られる布の力学特性から、数値として換算することができる。
※5 CU STAR認証
銅の超抗菌性能を生かした材料、製品を世の中に広く普及させる目的で、(一社)日本銅センターが独自に行っている認証制度。日本国内のみ有効で、抗菌銅材料及び抗菌銅製品に対して認証を行う。
CU STAR認証製品のロゴ
このページに関する問合せ先
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
環境材料室(担当:伊藤(雅)、北尾、森川)
刈谷市恩田町一丁目157番地1
ダイヤルイン:0566-45-6901
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター
製品開発室(担当:平石、佐藤)
蒲郡市大塚町伊賀久保109
代表:0533-59-7146
あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター
素材開発室(担当:浅野、加藤(一))
一宮市大和町馬引字宮浦35
代表:0586-45-7871