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三河繊維技術センターの研究試作品を繊維製品の展示会「テックスビジョン2024ミカワ」で紹介します
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター(蒲郡市。以下「センター」という。)は、2024年11月15日(金曜日)及び11月16日(土曜日)の2日間、蒲郡商工会議所(蒲郡市)で開催される三河産地の繊維製品の展示会「テックスビジョン2024ミカワ」において、センターの研究試作品及びセンターが支援し、県内企業等が開発した研究試作品を展示します。
今回展示する研究試作品は、抗菌加工した三河木綿※1を表紙とした愛知県手帳(2024年10月11日発表済み。)やCFRTP(シーエフアールティーピー)※2構造部材用の引抜・ロール連続成形品などです。
これらの研究試作品に興味のある方を始め、多くの方々の御来場をお待ちしています。
1 展示会の概要
(1)名称
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター研究試作展
(「テックスビジョン2024ミカワ」内)
(2)会期
2024年11月15日(金曜日)及び11月16日(土曜日) 両日午前10時から午後4時まで
(3)場所
蒲郡商工会議所 1階 コンベンションホール
蒲郡市港町18番23号 電話:0533-68-7171
(4)入場料
無料
2 展示内容
展示会では、以下の5つを含む各種研究試作品を展示します。
(1)抗菌加工した三河木綿を表紙とした愛知県手帳~抗菌加工に三河木綿由来のCNF※3を使用~
県統計協会が発行する愛知県手帳の表紙に、地域ブランドの「三河木綿」を用いた限定品です。
抗菌剤を付与したCNFを三河木綿に定着しています。三河木綿本来の豊かな風合いを損なうことなく、抗菌性を付与しました。なお、このCNFは産地の織布工場から回収した、工程内で発生する染色された残糸や織物の端材を原材料としており、繊維のアップサイクル※4を目指しています。
2025年版愛知県手帳限定版(三河木綿)の表紙
(2)世界最大級の洋上風力発電施工用超高耐荷重な繊維スリング※5
近年、洋上風力発電において、風力発電機の大型化が進んでいます。そのため施工に必要な吊り具(スリング)にも一層の高耐荷重化が要求されています。(株)三浦組紐工場(みうらくみひもこうじょう)では、繊維スリングを構成する原糸や配置方法を検討しました。その結果、少ない糸本数での高耐荷重化に成功し、世界最大級となる700t超の荷重物を吊り下げ可能なスリングの生産を可能としました。
本取組は、2023年度新あいち創造研究開発補助事業の成果によるものです。
吊り具(スリング)を用いた荷重物の運搬の様子
(3)B反(びーたん)の三河帯芯(おびしん)からなるリメイク製品
西尾市を中心とする三州地域は、高級帯芯として知られる三河帯芯※6の産地です。しかし、製造工程で発生する織りキズが僅かでも発生すると二級品(通称B反)となってしまいます。本展示では、商品価値が低下した三河帯芯の再利用を試み、バッグやコースター等にリメイクしました。染色した帯芯や帯の端材を組み合わせ、新たな製品として提案します。
三河帯心のリメイク製品
(4)CFRTP及び天然由来複合材料の引抜・ロール連続成形品
2020年度から2022年度までサポイン事業※7(現Go-Tech事業)に採択され、県内企業2社、2大学と取り組んだ共同研究※8の成果品及び事業終了後の継続活動の成果品です。
従来のプレス成形では不可能だった、長尺で複雑な断面形状を持つ連続的なCFRTPの成形を実現しました。近年注目されている天然由来複合材料(亜麻/PLA:ポリ乳酸樹脂※9)での成形品も展示します。
CFRTP成形品(上)と天然由来複合材料成形品(下)
(5)多孔質酸化チタン光触媒ナノファイバー
無機・有機複合体を原料として、電界紡糸法(でんかいぼうしほう)※10にて多孔質酸化チタンナノファイバーを作成しました。この試料の光触媒※11性能をメチレンブルー分解法※12にて評価したところ、市販の粉末状高性能光触媒酸化チタンと同等の性能を示しました。高性能浄化フィルター、触媒材料等への応用が期待されます。
作成した多孔質酸化チタンナノファイバーの拡大写真
3 問合せ先
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター
製品開発室(担当:佐藤、村井)
蒲郡市大塚町伊賀久保109
電話:0533-59-7146
URL:https://www.aichi-inst.jp/mikawa/
【参考】
○テックスビジョン2024ミカワ
今年で70回目の開催実績を誇る三河産地の繊維総合展示会。開発製品の展示や三河産地の活性化を図るための講演会の実施などを通じて、三河産地のPRを図っている。
主催:テックスビジョンミカワ開催委員会
(蒲郡市、蒲郡商工会議所、三河繊維産元協同組合、三河織物工業協同組合、東三河染色協同組合、中部繊維ロープ工業組合)
後援:愛知県、日本紡績協会、日本化学繊維協会、一般財団法人メンケン品質検査協会、一般財団法人カケンテストセンター、一般財団法人ニッセンケン品質評価センター、ダイセン株式会社(繊維ニュース)、繊研新聞社
URL:https://texvision-mikawa.jp/2024/
【用語説明】
※1 三河木綿
愛知県三河地方産の綿織物。2007年2月に特許庁の地域団体商標に登録されている(商標登録番号:第5023103号、三河織物工業協同組合)。
三河地方では、他の地域に先駆けて綿業が発展したとされ、明治時代には「三河木綿」というブランド名で全国に知れ渡った質の良い綿製品である。
※2 CFRTP
Carbon Fiber Reinforced Thermo Plasticsの略で、炭素繊維と熱可塑性樹脂で構成された繊維強化プラスチック。
※3 セルロースナノファイバー(CNF)
植物由来の次世代素材。セルロースを含む植物や植物由来の加工品(紙、木綿、麻等)を原料として、化学加工や機械加工により得られる100n(ナノ)m以下の太さのナノサイズの繊維状物質。環境負荷が少ないプラスチックの代替素材として、既に家電、建材、化粧品などに活用されている。
※4 アップサイクル
未利用で廃棄される素材や製品に新たな価値を与えて再生すること。デザインや機能などの付加価値が与えられ、素材としての寿命が長くなることが期待される。
※5 スリング
主に工場や建設現場など重量物を持ち上げる際によく利用されている吊り具。繊維スリングはワイヤーロープやチェーン製より、軽量で柔軟性に優れており使いやすく、吊り荷に傷がつきにくいのが特徴である。
※6 三河帯芯
愛知県西三河地方で織られている帯のブランド芯地。小幅の綿織物で高密度に織られ、ハリとコシがあるのが特徴。帯芯は主に帯を補強し、着姿を美しく、締め心地を良くするために使用される。
※7 サポイン事業
経済産業省が実施していた「戦略的基盤技術高度化支援事業」のこと。サポーティング・インダストリーの略。2022年度より、「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」と「商業・サービス競争力強化連携支援事業(サビサポ事業)」が統合され、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)となった。
※8 県内企業2社、2大学と取り組んだ共同研究
研究課題:「自動車・航空機・建材等の CFRTP 構造部材用の引抜・ロール連続成形技術の高度化」
研究体制:あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター
株式会社佐藤鉄工所(名古屋市港区)
中部エンジニアリング株式会社(安城市)
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学(岐阜県岐阜市)
国立大学法人京都工芸繊維大学(京都府京都市)
※9 PLA:ポリ乳酸樹脂
PLA樹脂は、デンプンから作られる植物由来のプラスチック素材であり、20年ほど前から生分解性樹脂として注目されている樹脂である。最近は、3Dプリンター用のフィラメントとしても用いられることが多い樹脂である。
※10 電界紡糸法
原料ポリマーを溶解したポリマー溶液に高電圧を印加すると、チャージした溶液が分裂し溶媒が蒸発して、アースをとったターゲットに、繊維径が数100nmのナノファイバーが捕集されることを利用した紡糸法である。
※11 光触媒
光を照射すると、分解など化学反応を促進させる性質。酸化チタンが代表的光触媒材料の一つであり、ホルムアルデヒドなどの有害物質を分解・除去できるため、環境浄化材料として注目されている。
※12 メチレンブルー分解法
青色の化合物のメチレンブルーが、光触媒反応などで分解すると無色の化合物に変化することを利用して、性能評価を行う方法である。
このページに関する問合せ先
あいち産業科学技術総合センター三河繊維技術センター
製品開発室(担当:佐藤、村井)
蒲郡市大塚町伊賀久保109
電話:0533-59-7146