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「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期」 IT・AI技術を結集した医療業務支援システムを開発しました~音声入力によるAIカルテ作成と循環器画像のAI自動診断が可能に~

ページID:0070217 掲載日:2025年2月17日更新 印刷ページ表示

  愛知県と公益財団法人科学技術交流財団(豊田市)では、産学行政連携の研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクト※1IV期」を2022年度から実施しています。

 この度、「プロジェクトDX※2」の研究テーマ「IT・AI技術を結集したスマートホスピタルの実現※3」において、豊橋技術科学大学(豊橋市)の北岡 教英(きたおかのりひで)教授、愛知県立大学(長久手市)、名古屋市立大学(名古屋市瑞穂区)、豊橋ハートセンター(豊橋市)、株式会社イマジナリー(名古屋市中区)、株式会社ヴィッツ(名古屋市中区)、株式会社フェロー(豊橋市)らの研究グループが、IT・AI技術を結集して、(1)音声入力によるAIカルテ作成支援システム、(2)循環器画像からのAI自動診断システムを開発しました。

 「音声入力によるAIカルテ作成支援システム」では、音声入力された問診結果を自動的にカルテ様式に変換して入力することができます。また、「循環器画像からのAI自動診断システム」では循環器画像から、心臓狭窄(きょうさく)疾患や心臓の石灰化※4の有無の判定を自動で行い可視化することができます。これらのシステムにより、医師、看護師らの医療業務の効率化と負担軽減が期待できます。

 今後は、豊橋ハートセンターを始めとする病院での実証実験を繰り返し、社会実装に向けてブラッシュアップを重ねることで医療現場における活用を目指します。​

1 開発の背景

 日本では高齢化により、医療を必要とする人は増加の一途をたどっています。しかし医療従事者の不足が予想されることから、医療従事者の負担増大と、医療を受ける側も十分な医療を受けられないといった問題が懸念されています。医療従事者の負担を軽減するためには、IT技術で医療を高度化・効率化することが期待されており、IT・AI専門の研究者・医学専門家・医療従事者・システム開発者が一体となって実現する必要があります。

 本研究では、近年劇的な進化を遂げているIT・AI技術(音声認識、画像認識、生成AIなど)を活用し、医療従事者の負担を軽減する具体的方策として、(1)看護師や医師による患者の回診・問診・診察時の負担の軽減、(2)医師や技師による疾病診断の支援に取り組みました。

2 開発の概要

​(1)音声入力によるAIカルテ作成支援システムの開発

 音声認識と大規模言語モデルを活用したAIカルテ作成支援システムを開発しました(図1)。深層学習※5に基づく音声認識を、独自の手法により医療用語発話に適応させました。また、大規模言語モデルを医療用に適応させた独自モデルを構築しました。これらを用いて、スマートフォンアプリに入力した音声を認識し、自動的にカルテに反映させるシステムを構築しました。

 豊橋ハートセンターでのスマートフォンアプリを用いた実証実験では、従来のパソコン上での入力より高速かつ効率的に、電子カルテ入力が可能でした。また、本システムを用いた回診時の発話の認識性能として90%を達成しました。今後は、特に医療用語の認識性能を向上させ、医療現場における活用を目指していきます。

図1
​図1 音声入力によるAIカルテ作成支援システム

 

(2)循環器画像からのAI自動診断システムの開発

 深層学習に基づき医用画像を解析し、心臓狭窄疾患及び石灰化の有無を自動で判定可能なシステムを開発しました(図2)。本技術では、深層学習モデルを用いることにより、患者に負担がかかる造影剤が不要な単純CT画像から自動的に、狭窄の有無や、石灰化を定量化したカルシウムスコア※6を推定することに成功しました。本システムの健常者と心臓狭窄症患者との判別技術により、90%以上の判別が可能になりました。

 またCT画像をシステムに入力すると、疾患箇所が画像上に表示される可視化システムを構築しました。画面上に診断結果の所見をテキスト表示することも可能なため、医療従事者が容易に利用可能になりました。

 今後更なる実証実験により、認識性能を向上させ、医療現場における活用を目指していきます。

図2

図2 循環器画像からのAI自動診断システム

                           

3 期待される成果と今後の展開

 「音声入力によるAIカルテ作成支援システム」では、医療現場において、特に看護師や医師による患者の回診・問診時の負担を軽減できることから、患者とのコミュニケーションを活性化し、患者側に寄り添った形の医療を実現することに役立ちます。

 「循環器画像からのAI自動診断システム」では、医師や技師が容易に活用可能な仕様でシステムを構築することができ、より正確な診断かつ診断時間の短縮が可能になり、疾病診断を支援することに役立ちます。

 今後は豊橋ハートセンターを始めとする病院において実証実験を繰り返し、社会実装に向けてブラッシュアップを重ね、医療現場における活用を目指していきます。

 なお、本発表内容の詳細について、2月20日(木曜日)午前10時30分より、豊橋技術科学大学定例記者会見において、北岡教英教授により説明があります。

 

4 社会・県内産業・県民への貢献

社会への貢献

医療従事者の負担を軽減することができ、かつより正確な診断が実現できることから、従来不十分であった患者側に寄り添った形での医療を実現できる。

県内産業への貢献

県内の医療関係企業と早期に取り組むことにより、本技術の特徴を理解し、県外より先行して事業化できる。

県民への貢献

医療現場等において、医療従事者の負担を軽減することに役立つ。先行して愛知県内で実証実験を行うことにより、本技術の特徴及び利点を、より早期に医療従事者が理解できる。それにより、県への導入もスムーズに実行でき、医療現場での実施も早期に可能になる。

                                     

5 問合せ先

【重点研究プロジェクト全体に関すること】

あいち産業科学技術総合センター 企画連携部企画室
担当:日渡、佐藤、村上
所在地:豊田市八草町秋合(あきあい)1267番1
電話:0561-76-8306

 

公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部
担当:佐野、安藤、金田
所在地:豊田市八草町秋合1267番1
メール:juten-dx@astf.or.jp
電話:0561-76-8370 (*原則、メールにてお問合せ下さい)

 

【本開発内容に関すること】

国立大学法人豊橋技術科学大学 情報・知能工学系
担当:北岡 教英
所在地:愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘(てんぱくちょうひばりがおか)1-1
電話:0532-44-6878

 

【用語説明】

※1  知の拠点あいち重点研究プロジェクト

   付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に大学等の研究シーズを活用したオープンイノベーションにより、県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新たなサービスの提供を目指す産学行政の共同研究開発プロジェクト。2011年度から2015年度まで「重点研究プロジェクトI期」、2016年度から2018年度まで「重点研究プロジェクトII期」、2019年度から2021年度まで「重点研究プロジェクIII期」を実施し、2022年8月から「重点研究プロジェクトIV期」を実施しています。

 

「重点研究プロジェクトIV期」の概要

実施期間

2022年度から2024年度まで

参画機関

16大学 7研究開発機関等 88社(うち中小企業59社)

(2024 年12月時点)

プロジェクト名

・プロジェクトCore Industry

・プロジェクトDX

・プロジェクトSDGs

 

※2 プロジェクトDX

研究テーマ

【研究開発分野】デジタルテクノロジー・ICT

D1 モノづくり現場の試作レス化/DXを加速するトライボCAE開発

D2 DXと小型工作機械が織り成す機械加工工場の省エネ改革

D3 MIをローカルに活用した生産プロセスのデジタル革新

D4 IT・AI技術を結集したスマートホスピタルの実現
【研究開発分野】ロボティクス

D5 繊維産業に於けるAI自動検査システムの構築に関する研究開発

D6 〈弱いロボット〉概念に基づく学習環境のデザインと社会実装

D7 愛知農業を維持継続するための農作業軽労化汎用機械の開発と普及
【研究開発分野】自動車・航空宇宙等機械システム(ソフト)

D8 自動運転技術のスマートシティへの応用

D9 自動運転サービスを実現する安全性確保技術の開発と実証

参画機関

7大学 4研究開発機関等 30社(うち中小企業19社)(2024年12月時点)

 

※3 IT・AI技術を結集したスマートホスピタルの実現

研究リーダー

豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授 北岡 教英 氏

事業化

リーダー

株式会社イマジナリー 大西 秀一(おおにし しゅういち)氏

株式会社フェロー 鈴木 賢太朗(すずき けんたろう) 氏

参加機関

〔大学〕豊橋技術科学大学、名古屋市立大学、愛知県立大学、豊橋ハートセンター

〔企業〕株式会社イマジナリー、株式会社ヴィッツ、株式会社フェロー

※4 心臓の石灰化

 心臓の血管内にカルシウムが沈着することにより、血管が硬化する現象のことです。心臓血管の石灰化が進行すると、以下のような影響があります。 

(1)血管の硬化と狭窄: 血管が硬化し、柔軟性を失うことで狭くなり、血流を妨げ、心臓や他の臓器への血液供給が不足することがあります。

(2)動脈硬化の進行: 石灰化は動脈硬化の一因となり、これが進行すると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなります。

(3)血管破裂のリスク: 石灰化が進むと血管壁が脆くなり、血管が破裂するリスクが増加します。

 

※5 深層学習

 多層ニューラルネットワークを用いて、データから自動的に特徴を抽出し学習する技術です。画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で優れた性能を発揮します。

 

※6 カルシウムスコア

 心臓の冠動脈における石灰化の程度を数値化したもので、動脈硬化などのリスク評価に用いられます。

このページに関する問合せ先

​あいち産業科学技術総合センター企画連携部
企画室(担当:日渡、佐藤、村上)
豊田市八草町秋合1267-1
電話:0561-76-8306​