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1 病原菌
学名 Pythium helicoides Drechsler (糸状菌 鞭毛菌類)
2 被害の様子
はじめ下葉が黄化し、やがて萎凋が認められるようになる。根では、はじめ一部が暗褐色水浸状に腐敗し、それが全根域に広がっていく。さらに症状が進むと最終的に株は落葉、枯死する。発病は主に7~9月で、最低気温が20℃以上の時期に多い。発病適温は35℃付近で、40℃でも生育する。夏期後半に感染した株は秋以降に症状が回復することがあり、低温期には被害はほとんど認められない。また、本病は他のピシウム菌や疫病菌と同様、養液を循環利用する場合に被害が大きい。
本菌は、国内では平成8年にバラの養液栽培で初めて発生が確認されている。ピシウム属菌は一般に、遊走子を水中に大量に放出し水媒伝染するため、養液栽培における最重要病害である。
3 病原菌の生態
本菌は被害残さとともに卵胞子の形で養液内や土中に残り、伝染する。このような卵胞子は土壌水分が過多になったり、温度が20℃前後になるなど、適当な温湿度条件が整うと発芽し、その先端に球のう(球状胞子のう)を形成する。球のうは成熟すると遊走子を放出し、それが植物体に感染する。植物体内に侵入すると菌糸を組織中に蔓延させ、卵胞子の形成、発芽、遊走子の放出が行われ、急速に蔓延する。
本菌は、高温条件下でも生育可能なピシウム属菌の1種であり、カランコエ、イチゴでも本菌による被害が報告されている。
4 発生しやすい条件
高温多湿
5 防除対策
・被害株を早急に抜き取る 。
・根痛みが起きると感染を助長するので、適正な栽培管理に努める。
・発生ほ場では、作期終了後に栽培資材の消毒を行い、次作に菌を持ち込まないようにする。
根腐病の病徴
ピシウム属菌の卵胞子