本文
1 病原ウイルス
Tomato spotted wilt virus(TSWV )
2 被害の様子
一般に、葉に退緑とえそ輪紋を生じ、その後えそ斑へと進行し、やがて枯死する。
枯死葉の付近の茎にえそ条斑が認められる。症状は幼苗期から現れるが、病徴がはっきりするのは出蕾期であることが多い。本病の病徴は、品種や感染時期により異なり、ほとんど病徴を現さない場合もある。
3 病原ウイルスと伝染
病原ウイルスは、主にミカンキイロアザミウマによって虫媒伝染される。ふ化後間もない1 齢幼虫が罹病植物を吸汁することでウイルスを獲得し、一旦、ウイルスを獲得すると死ぬまで伝搬する能力を持つ。種子伝染、土壌伝染はしないと考えられている。
ナス科、キク科等の作物においてウイルスによる発病が確認されている。
4 ミカンキイロアザミウマについて
病原ウイルスを媒介するミカンキイロアザミウマは、雌成虫の体長が約1.7mmで、雄成虫は約1.0mm。雌は葉肉内に産卵し、ふ化した幼虫は新芽、花等を吸汁加害して2齢を経過した後、土中で蛹になる。羽化して土中から脱した成虫は、葉や花を吸汁加害する。吸汁により花弁の部分的な色抜け、排泄物による汚れ、葉表のケロイド様症状を引き起こす。寄主植物はキク科、ウリ科、ナス科など極めて広い。成虫は青色に誘引される習性があるので、青色の粘着トラップを設置しておくと発生消長を把握することができる。
5 防除対策
・発生ほ場では、発病株の抜き取り、埋却処分を行い、二次伝染防止に努める。発生ほ場では、親株の感染も予想されるため、無病親株への更新を行う。
・媒介虫であるミカンキイロアザミウマを防除する。特に、親株床での防除を徹底する。
・ミカンキイロアザミウマの防除にあたっては薬剤による防除だけでなく、ハウス開口部への防虫ネット( 0. 5mm 目合) 被覆による成虫侵入防止、ほ場および周辺の雑草や植物などの除去等物理的・耕種的防除法を取り入れる。
・栽培終了後は施設内を蒸し込み、ミカンキイロアザミウマを死滅させ、周辺への分散を防止する。同時に施設内に植物を栽培しない期間を設ける。
TSWVによるえそ斑
ミカンキイロアザミウマ
雄成虫(上)と雌成虫(下)