本文
1 病原菌
Erwinia herbicola (Lohnis 1991) Dye 細菌
2 被害の様子
病徴はもみに限定され、他の組織にはほとんどみられない。もみの中でも内穎のみが特異的に褐変し、外穎が褐変することは少ない。もみの関連組織では、護穎が褐変することもあるが、枝梗や副護穎はほとんど褐変しない。もみ内部の組織では鱗皮が褐変していることが多い。
もみの変色は最初はやや薄く部分的に起こるが、1~2日のうちに内穎全体に及び、褐色~濃紫色になる。褐変は登熟がすすむにつれて退色するが、収穫期まで残る。発病もみから得られる玄米の多くは変色米となり、完全米は少ない。
本病とイネもみ枯細菌病の初期症状はよく似ているが、イネもみ枯細菌病による発病もみは変色し始めて数日後には、内外穎を含むもみ全体が淡褐色に変わることで区別できる。
3 病原菌の生態
本菌は、周鞭毛を有する短桿菌で運動性があり、大きさは0.5~1×1~3μm。グラム反応は陰性で、非水溶性黄色色素を産生する。生育適温は27~30℃、最高温度は32~40℃。
主要な感染時期は出穂直後の短期間で、出穂の3、4日後から7日後ごろまでに発病する。本菌は、イネや畦畔雑草の表面で腐生生活をしており、風雨によって穂に運ばれる。本細菌のもみへの侵入部位は下表皮および上表皮の気功で、柔組織の細胞間隙中で増殖する。また、もみの開花と発病は密接に関連しており、開花中に病原組織が侵入することもあり得る。種子伝染の可能性については、十分検証されていない。
4 発生しやすい条件
・高温年に発生が多い。夏季の高温は、増殖適温が30~35℃と高い本細菌の葉上での増殖を促進する。
・出穂時の降雨が発生を助長する。
5 防除対策
・発生生態に不明な点が多く、有効な耕種的防除策はないが、中肥、穂肥の窒素多用は発生を助長するので、窒素過多にならないように注意する。
内穎褐変病による症状
内穎と外穎