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1 病原菌
学名 Phytophthora cactorum(Lebert & Cohn) Schroter ほか
2 被害の様子
主幹、主枝、亜主枝、前年枝、新梢、新生葉、幼果などに発生する。
新梢、新生葉、幼果などには不正形の黒褐色病斑を生じ、少雨時などには枝と花そうの基部に黄色みがかった白色の遊走子のうの塊を形成する。
病斑の進展は急速で、新梢、葉、幼果などは黒色に変色し、葉は固着し落葉せず、果実は黒色化し軟弱とならず、ミイラ化して秋まで枝に付着する。
新梢などから前年枝または主枝、主幹などに侵入した病菌は表皮下の形成層部を黒褐色化し、縞状に進展する。病斑は外部の表皮部の病斑先端部より先に進展している。病斑部は病菌侵入部付近から徐々にしわを生じてくる。
主幹など古い枝は、新梢の枯死した基部から表皮および形成層が黒色化し7月下旬以降病斑の進展が停止した後亀裂を生じ、病斑部と健全部との境がはっきりする。
若木に発生した場合病斑は一周し、被害は大きい。
病斑の進展は高温期には停止し、翌年その病斑部から拡大することはない。
3 病原菌の生態
土の中で卵胞子のかたちで越冬する。休眠に入った卵胞子は、低温に数ヶ月間遭遇した後適当な水分と温度があると発芽し、遊走子のうを形成する。ここから遊走子が出て、雨水などで飛散して新梢、葉や幼果などに到達する。ここで被のう胞子となり、発芽して気孔から侵入する。
本病原菌は5℃~30℃の範囲で生育し、適温は25~27℃。潜伏期間は23℃付近で約3日である。
4 発生しやすい条件
・水はけが悪い
・風通しが悪い
5 防除対策
・長い間水たまりが残ることがないように水はけをよくする。
・清耕栽培の場合は敷きわらなどを設置して、病原菌を含んだはねが上がらないようにする。
・降雨中または降雨直後の草刈りは、病原菌を枝上や葉上へ跳ね上げる原因となるので避ける。
・発病した芽、発病枝の病斑、被害果などは除去するか削り取る。除去や、削り取ったり病部分は 園外に持ち出し、処分する。
平成7年に多発
<参考 平成7年の疫病の記録>
1 発生地域
県下全域
2 発生経過
(1) 5月上旬、幼果のていあ部(花落ち部)、果そう全体やその基部周辺の枝表面が黒変する症状が散見された。
(2) 黒変した果そう等は、放置すると症状が拡大し、発生の著しい枝では発病部から先の部分は枯死した。
(3) 2年から3年生までの幼木では、主幹部に発生するものも見られ、これらは枯死したり、生育不良により改植しなくてはならないものがほとんどであった。
(4) 初発生から梅雨が終わるまで、被害部を除去しているにもかかわらず、発生が続いたが、樹、園内での部分的発生であり、罹病部の早期除去等により、著しく蔓延することなく、収量に直接影響することは少なかったと思われる。ただし、幼木で発生した場合は、被害が大きかった。
(5) 7月第5半旬の前半に梅雨が終了し、以後、高温小雨であったため、発生はあまり認められなくなった。
(6) ナシ栽培地に広域的に発生し、品種間による発病の差はあまり認められなかった。
3 発生原因
(1) 伝染源である土中の卵胞子から形成された遊走子は、雨水または風で飛散し、感染が助長される。
(2) 4月下旬、5月中旬、6月上旬にまとまった降雨があり、遊走子の飛散が高率に行われ、さらに5月中旬から6月中旬までの気温が平年より低く推移したため、発病が助長されたと考えられる。
4 防除の概要
(1) 発病部を切り取った。
(2) ナシに登録があり、他の作物で本菌に効果のあるジネブ剤やキャプタン剤を散布した。