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リカレント教育の振興方策について
リカレント教育の振興方策について
はじめに
報告の第1部においては、リカレント教育とはと題して、リカレント教育の概念と本報告でのとらえ方を明らかにし、第2部においては、リカレント教育の現状と課題について、企業、民間の生涯学習関連機関、大学等高等教育機関、行政におけるそれぞれの状況を考察した。そして、これらの考察を受け、第3部においては、リカレント教育振興の視点と行政への期待を中心とした具体的方策について提言した。
第1部 リカレント教育とは
リカレント教育の振興方策を考察するにあたり、まずその歴史的な経緯や社会的要因及び本報告におけるとらえ方について述べる。
第1章 リカレント教育の概念
1 リカレント教育の歴史的経緯
リカレント教育という概念は、1969年(昭和44年)の第6回ヨーロッパ文相会議においてスウェーデン文相O.パルメが取り上げたのが最初である。1970年(昭和45年)に、OECD(経済協力開発機構)がこれを公式に採用し、生涯教育構想具体化の戦略の一つとして位置づけられるようになった。OECDにおけるリカレント教育は、青少年期という人生の早い時期に集中していた教育を「血液が人体を循環するように、個人の全生涯にわたって循環させよう」とするところに主要な特徴があった。
OECDの1973年(昭和48年)の報告書「リカレント教育-生涯教育の一政策-」では、リカレント教育の基本目標として、個人の発達を促すこと、同世代内及び世代間の不平等をなくすために教育の機会均等を図ること及び科学技術の進歩とともにますます重要となる教育と社会、とりわけ労働との相互作用を促進することの3点をあげている。そして、この報告書では、公教育体系の再編も説いているが、その目指すところは、社会人が生涯にわたって労働の合間に、あるいは一時的に職場から離れて、さらに退職後でも自由かつ平等に正規の学校に戻ることができる弾力的な教育システムの構築であったとも言える。
2 日本におけるリカレント教育
我が国でリカレント教育という概念が初めて登場したのは、昭和47年の日本経済調査協議会の報告書「新しい産業社会における人間形成-長期的観点からみた教育のあり方-」においてである。その後、昭和60年及び昭和61年の臨時教育審議会の教育改革に関する第1次答申及び第2次答申において、リカレント教育に関連して、高等学校、大学、短期大学、専修学校などへの社会人受入制度としての「リカレント制」の在り方の検討や、企業における勤労者の生涯職業能力開発の積極的な推進を述べている。
さらに、平成4年の生涯学習審議会の「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」の答申では、リカレント教育においては、大学等高等教育機関で行われる、職業人を主な対象とした専門的・体系的な教育が大きなウェイトを占めていると指摘している。このように、日本におけるリカレント教育は、主として高等教育機関及び職業人とのかかわりを重視してきたと言える。
3 リカレント教育が求められる社会的要因
今日の社会でリカレント教育が求められる要因としては、科学技術の進歩、国際化、情報化、高齢化の進展、男女共同参画社会の形成など、社会が刻々と変化し、新たな課題が生じていることがあげられる。人々が社会の変化に適切に対応して人間性豊かな生活を送るために、様々な場面で学習が必要となっている。
例えば、仕事の上では、技術革新の進展に伴って、より高度な知識・技術を習得するための学習が必要であったり、産業構造の変化等による労働力の流動化傾向が進む中で、新しい分野の専門的な学習も必要になったりしている。
また、人々の意識も、仕事中心になりがちな生活を改め家庭や地域社会での生活の比重を高めて、人生をさらに充実させようというように変わりつつある。そして、人間性を高め、自己実現を図るためには、仕事以外の様々な分野について、より深く、より専門的に学習することが必要になっている。
第2章 本報告でのリカレント教育のとらえ方
1 リカレント教育の定義
第1期の本審議会では、その答申「21世紀を展望した愛知県の生涯学習振興の基本方策について」(以下「第1期の本審議会の答申」という。)の中で、特にリカレント教育の中核機関として高等教育機関への期待を述べている。
この答申並びにリカレント教育の歴史的経緯、リカレント教育が求められる社会的要因及び今後の社会の動向等を踏まえると、リカレント教育は、社会人が、職業上の新たな知識・技術を習得するために、また、日常生活において人間性を高めるために必要とする高度で専門的な教育と考えることができる。
そこで、本報告では、リカレント教育を「職業能力の向上や人間性を豊かにするための社会人の再教育」と定義し、既に学校教育を修了した社会人に対する高度で専門的な教育を対象にすることとする。
2 リカレント教育の実施機関
リカレント教育の実施機関としては、歴史的な経緯等から高等教育機関にその中心的な役割を期待する。
しかしながら、企業、カルチャーセンター、生涯学習関係団体、行政など様々な機関でも社会人の多様なニーズに対応したリカレント教育が行われており、また、今後一層充実することが期待されるため、この報告では、広くこれらの機関を含めてリカレント教育の実施機関としてとらえることとする。
3 生涯学習とリカレント教育
生涯学習の理念が、個人の自発的な意思で行う学習を生涯にわたって支援する環境づくりを目指しているのに対して、リカレント教育は、第1章で概観したように、主として職業生活とのかかわりの中で学習の機会を保証することを目的としている。
また、リカレント教育を学習者の側から見ると、その学習はより広い概念である生涯学習に包摂されるものであり、両者の違いを明確に示すことは困難であるが、上記1で述べたように、本報告におけるリカレント教育では、職業能力の向上や人間性を豊かにするための高度で専門的な学習を対象とし、しかも学校教育を修了した主として成人期以降の社会人を対象とする。この点においても、幅広い学習活動やあらゆる世代を対象とした生涯学習との違いがある。
第2部 リカレント教育の現状と課題
ここでは、企業、民間の生涯学習関連機関、大学等高等教育機関、行政を取り上げ、各機関におけるリカレント教育の現状と課題あるいは今後への期待を考察する。
第1章 企業におけるリカレント教育
1 企業におけるリカレント教育の現状
我が国においては、人材育成という視点から、企業において従業員の教育訓練や能力開発が組織的、系統的に実施されている。これらは、社内教育を通じて企業の専門分野における高度な機能を有した研究・研修施設等において実施されることもあり、また、一部には国内留学、国外留学等により実施されることもある。
教育訓練には、OJT(仕事を通じての教育訓練)、Off-JT(仕事を一時的に離れて行う教育訓練)、自己啓発などがある。OJTは、仕事を通じて日常的に行われる教育訓練であるが、Off-JTと自己啓発は次のような内容で実施されている。
(1) Off-JT
愛知県労働部の調査によると、Off-JTの内容で多かったものは、業務知識・技能の習得、次いで、専門的知識の向上、基礎的・一般的知識の習得、OA機器等の操作の順になっている。これらの教育訓練が企業の実情に応じて社内集合研修、民間の教育訓練施設への派遣などの形態で行われている。
(2) 自己啓発
従業員個人が職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動が企業の支援等を受けて行われているが、近年の自己啓発気運の高まりなどにより、企業の支援の方向は、自己啓発の機会の提供及び自己啓発に関する情報の提供に重点が置かれ始めている。
2 企業におけるリカレント教育推進の視点
企業においては、従業員のリカレント教育システムの構築を進めることが望まれるが、それとともに人材育成への投資は企業の発展をもたらすだけでなく、広く社会の発展に貢献する投資だという視点から、地域社会への支援を進めることも望まれる。
(1) 従業員への支援
従業員へのリカレント教育の充実方策として、既に一部の企業等でも実施されている次のような制度がさらに広範に実施されることが望まれる。
ア 教育訓練の機会の充実
イ 国内外の高等教育機関、研究機関への従業員の派遣(留学制度の充実)
ウ 従業員の自主的な自己啓発及び資格取得の奨励
エ 有給教育訓練休暇制度の推進
オ 個人の学習意欲に対応した無給の長期休暇制度の導入
カ 労働時間の短縮、勤務体制と勤務場所の弾力化による自己啓発機会の拡大、フレックスタイム制などの導入
愛知県労働部の調査や労働省の調査によると、女性の教育訓練の1年間の受講率は、Off-JT、自己啓発のいずれにおいても男性に比べて低くなっている。このことから、女性の積極的参加を促すこと、女性が参加しやすい環境をつくることなどに一層の配慮が望まれる。
(2) 地域社会への支援
企業においては、社会の発展に貢献するという視点から、次のような地域社会への支援策が望まれる。
ア 地域における学習活動への指導者の派遣
イ 企業所有の研究・研修施設の地域開放
ウ 企業メセナ、企業博物館等の拡充
第2章 民間の生涯学習関連機関におけるリカレント教育
1 民間の生涯学習関連機関におけるリカレント教育の現状
民間の生涯学習関連機関として、専修学校、各種学校、カルチャーセンター、生涯学習関係団体などがあり、それぞれの機関において特色を生かしたリカレント教育が実施されている。
(1) 専修学校
職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として、組織的な教育を行う機関であり、・高等教育機関として位置づけられる専門課程、・後期中等教育の多様化を図る高等課程、・だれでも自由に専門的な知識や技術を学ぶことができる一般課程に区分されている。
そして、専修学校では、それぞれの課程において社会人の学習ニーズに対応した専門的職業に関する再教育及び実際生活に必要な技能に関する再教育が実施されている。
(2) 各種学校
学校教育に類する教育を行う機関として設置され、工業、芸術、美容、保健などに関する実践的教育が実施されている。
(3) カルチャーセンター
趣味・けいこ事に関する学習を中心に余暇活動の一環として発展してきたとも言えるが、今日では社会人の多様な学習ニーズに対応し、また、社会の要請に即応し、高度で専門的な学習機会も種々提供されている。
(4) 生涯学習関係団体
医師会、看護協会などの職業別の団体や社会教育関係団体など様々な生涯学習関係団体は、それぞれの設立趣旨に応じて、会員に対する能力向上に関する学習機会の提供、社会人に対する学習機会の提供等のリカレント教育の活動を行っている。
2 民間の生涯学習関連機関への期待
多様な学習ニーズに比較的柔軟に対応しうる民間の生涯学習関連機関への需要が一層高まるものと考えられる。
このような需要に対応して、民間の生涯学習関連機関には、リカレント教育における実践的、入門的な役割が期待され、職業や実際生活等に関する短期セミナーや、再就職・転職及び各種の資格取得のための中・長期的な能力開発コースの充実が望まれる。
第3章 大学等高等教育機関におけるリカレント教育
1 大学等高等教育機関におけるリカレント教育の現状
生涯学習に取り組む人が増加し、また、学習活動が活発になるのに伴い、学習内容が多様化、専門化、高度化する傾向がみられる。このような社会的要請にこたえられる教育・研究機能を有する機関として大学等高等教育機関への期待が一段と高まっており、各機関において社会人の受入に向けた様々な取組が行われている。
(1) 大学、大学院、短期大学、高等専門学校
大学、短期大学、高等専門学校では、その教育機能を社会人に開放する事業(制度)の充実に向けた努力が進められており、愛知県教育委員会の調査によると、平成8年度は県内にあるこれらすべての高等教育機関で何らかの事業が実施されている。その形態はそれぞれの機関の実情に応じて様々であるが、科目等履修生、公開講座、聴講生・研究生、社会人特別選抜入試、附属図書館等の施設の開放の順に多く実施されている。また、多くの大学院においては、大学などと同様な開放事業のほかに入学資格・修業年限の弾力化などが実施されている。
なお、文部省では、これらの機関における社会人・職業人を対象にした教育をリフレッシュ教育と称してその推進を図っている。
(2) 専修学校専門課程
専修学校専門課程(以下「専門学校」という。)においても、公開講座を始めとする社会人を対象とした開放事業が一部の学校で実施されている。また、文部大臣が認めた専門学校の修了者には専門士の称号が付与されることになっており、称号付与の目的は、修了者の社会的評価の向上と、併せて、生涯学習の振興に資することとされている。このように、リカレント教育を推進する高等教育機関として専門学校への期待も高まってきている。
(3) 放送大学愛知地域学習センター
放送大学は、テレビ・ラジオ等を活用して大学教育の機会を広く提供すること等を目的として設置されており、設置の目的そのものがリカレント教育と合致するものである。本県には、放送大学愛知地域学習センターが設置され、平成8年度には約 1,500名の学生が学んでいる。
2 大学等高等教育機関におけるリカレント教育推進の考え方
リカレント教育に求められる高度で専門的な知識・技術を体系的に提供する機関として、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校の高等教育機関(以下この項において「大学等」という。)への期待は極めて大きい。また、リカレント教育の推進によって大学等が地域や社会生活と密接にかかわり合うことは、その教育と研究が直接に社会のために生かされるだけでなく、大学等にとっても、社会の側から教育と研究についての様々な示唆を得ることができるなど、大学等の活性化を促す方策として期待することもできる。
(1) 大学等開放の積極的な推進
社会人特別選抜入試、科目等履修生、昼夜開講制などの制度を通じて教育機能をそのまま社会人に開放すること、公開講座における学習を大学等における正規の単位として認定することなど、単位認定につながる本質的な大学等の開放が望まれる。これらを含めた大学等開放の積極的な推進策として次のような方策が考えられる。
ア 生涯学習センター、エクステンションセンターなどの大学等におけるリカレント教育推進の中核となる組織・機関の設置
イ 社会人特別選抜入試制度における入学枠の拡大や有職者の経験の評価
ウ 科目等履修生制度などの充実
エ 大学院修士課程における高度職業人養成・再教育コースの開設・整備
オ 社会人が昼夜いずれの時間帯にも授業科目を履修できる昼夜開講制の促進
カ 社会人の生活形態に対応した夜間大学院等の設置と通信教育の促進
キ 短期大学、他の4年制大学などからの編入学の促進
ク 大学院における入学資格・修業年限の弾力化
ケ 交通の便のよい場所でのサテライト教室の開設
コ マルチメディアの活用などによる遠隔教育の実施
(2) 公開講座、セミナー等短期的な事業の拡充
社会人が大学等で専門的に学ぶきっかけとなること、様々な制約のある社会人にとって短期的な講座は受講しやすいこと、企業にとっても従業員を派遣しやすいことなどの利点がある公開講座、セミナー等の短期的な事業の拡充が期待される。実施に当たっては、次のような点についての検討が望まれる。
ア 社会人が受講しやすい土曜日、日曜日や夜間などでの実施
イ 時代の要請にこたえる専門的なテーマを連続して行う「連続講座」の開設
ウ 企業から派遣される従業員などの職業人のリカレント教育に対応した「集中講座」の開設
エ 職業人など時間に制約のある学習者、高齢者に配慮した交通の便のよい場所での開設
オ 公開講座での講義内容等学習情報のデータベース化の推進及び検索サービスの提供
カ 公開講座等の企画、運営への受講者の参加
(3) 施設開放の促進
附属図書館、体育施設、研究施設などの高度な教育・研究機能を有する大学等の各種施設を開放することにより、リカレント教育という視点から、社会人の自発的な学習活動を支援するなど、地域社会に対して積極的な支援をしていくことが重要である。
(4) 大学間の連携及び関係機関との連携
従来、リカレント教育への取組は個々の大学等においてそれぞれの実情に応じて行われてきた。現在はそのような個別の対応では社会の要請にこたえられないほどに学習ニーズが高まってきている。このことから、大学等の主体性を前提とした、大学間の連携や、企業、民間の生涯学習関連機関、行政等との連携が必要となっている。このうち、大学間の連携及び行政との連携については次のように考えられる。
ア 大学間の連携
大学等におけるリカレント教育推進の中核となる組織や機関として生涯学習センターやエクステンションセンターなどが整備されつつあるが、これらの組織・機関を始めとする大学等の代表者による実務的な会議を開催して、情報交換を行うこと、さらにそれぞれの大学等の特色を生かした学習講座の共催を検討していくことなども考えられる。現在、一部の大学間でリカレント教育に関する自主的な情報交換や研究などが行われているが、今後は社会の多様な要請に対応するために、このような大学間の自主的な連携が積極的に行われていくことを期待する。
イ 行政との連携
既にいくつかの大学等で、県や市町村との連携により地域の学習需要に対応した学習講座が実施されている。これは、大学等が主体となる場合と行政が主体となる場合があるが、いずれの場合においても、大学等の教育機能が地域に開放されることにより、社会人にとってリカレント教育が身近なものとなるため、こうした連携が一層進むことを期待したい。このうち行政が主体となって住民に身近な施設で行う学習機会の提供については、第3部第2章において述べる。
第4章 行政におけるリカレント教育の推進
1 行政におけるリカレント教育推進の現状
県や市町村では地域の生涯学習の推進のために、組織の整備、学習機会の提供及び学習情報の提供等の施策を展開している。地域の学習需要に対応するという行政に期待される役割から考えると、これらの施策は本報告でリカレント教育の対象とした高度で専門的な学習に対応したものばかりではないが、これらの施策が学習者のより高度で専門的な学習への意欲を喚起し、ひいてはリカレント教育の推進に寄与するということもできる。
こうした意味から、県や市町村で実施している生涯学習に関連する施策のうち、リカレント教育の推進とかかわりの深い施策の実施状況を考察することとする。
(1) 愛知県の現状
知事を本部長とする生涯学習推進本部において、県が実施する生涯学習に関連する施策を総合的かつ効果的に推進するための「愛知県生涯学習推進構想」が平成8年3月に策定されている。この構想において21世紀初頭を目指した施策の目標が掲げられ、教育委員会を始めとする県の各部局や職業能力開発施設等で事業が展開されている。
リカレント教育に関連する施策としては、大学等高等教育機関などと連携して開設する県民大学講座、在職労働者を対象とした新しい知識・技能を取得するための訓練、看護婦、助産婦、農業者、林業者、漁業者等の専門的な仕事に携わる人を対象とした研修などの事業が実施されている。さらに、県の伝統的工芸品産業に従事する後継者を育成するための助成事業も実施されている。
また、高等学校においては、開放講座の開設、単位制高等学校における科目履修生の制度などにより、社会人の再教育の機会が設けられている。
(2) 市町村の現状
市町村は、住民に最も身近な自治体として地域の実情に即した施策を推進することによって、生涯学習の振興に努めることが期待されている。その振興の母体となる組織として生涯学習推進本部などの行政内部の組織、又は有識者等を含めた生涯学習推進会議などがあるが、これらの組織の設置は都市部ではかなり進んでいるが、郡部では未設置の町村も多い。
学習機会については、地域の学習需要に応じて様々な形態で提供されているが、高等教育機関との連携によって、市民大学講座、生涯学習大学講座などの名称で、高度で専門的な学習講座が、公民館、図書館等の社会教育施設等で実施されている事例がある。
2 行政に期待される役割
リカレント教育に関して行政に期待される役割としては、学習情報の提供と相談、学習機会の提供、広報・啓発活動などの社会人への直接的な働きかけと、関係機関の連携の推進、学習需要の調査研究、学習成果の活用、地域間格差を是正するための取組などのリカレント教育の推進に向けた環境づくりとがある。これらのうち、学習情報の提供と相談等について、その期待される役割などを以下に詳述する。
(1) 学習情報の提供と相談
リカレント教育推進における行政の中心的役割として、情報提供と相談があげられる。これはリカレント教育による学習は学習者の自由な意思で行われるものであるから、行政としては学習者の意思を尊重し、その意思を実現できるよう側面から支援することが重要であるためである。
その際、リカレント教育は、企業、民間の生涯学習関連機関、大学等高等教育機関など様々な機関で実施されているので、それらの情報を総合的に提供していくことが必要である。そのために、行政がこれらの機関の情報をまとめた情報誌を発行することや県が設置を計画している生涯学習推進センターにおいて関係機関のネットワーク化を図り、マルチメディアを活用した総合的な情報提供をしていくことが期待される。情報提供のネットワークシステムについては、第3部第3章において述べる。
(2) 行政内部の連携と関係機関との連携
職業能力の開発については、企業、職業能力開発施設、学校等で行われているが、職業に関する総合的な学習体系を整備するためには、国における労働省、農林水産省、通商産業省、文部省などの関係省庁の連携が不可欠である。同様に県や市町村においてもリカレント教育関連事業を実施している関係部局の連携が必要である。
また、リカレント教育に関する学習機会は様々な機関で提供されているため、関係機関の連携が必要であり、行政もこの連携のための組織の整備に積極的に関与することが望まれる。関係機関との連携の具体的な方策については、第3部第2章において述べる。
(3) 学習機会の充実
学習によっては、現在の、あるいはこれからの社会の動きを反映して、高度で専門的な内容が、体系的にかつ多様に提供されていくことが要求されている。それぞれの学習機会を提供する目的に応じてこれらの要求にこたえられるよう学習内容等の充実に努める必要がある。とりわけ、科学技術の進展に対応するために、産業、医療、福祉、環境、教育など様々な分野で職業人等を対象にした学習機会の充実を図っていく必要がある。
(4) 行政内部のリカレント教育
行政においては、住民の学習意欲に対応したリカレント教育を推進するための学習環境の整備が求められているが、同時に行政内部においても職員に対するリカレント教育を充実させる必要がある。愛知県では、職員を対象として様々なリカレント教育が実施されており、その中には職員を大学院に派遣する研修制度もある。このように社会の変化に対応できる専門的知識を習得する機会の一層の充実を期待したい。
第3部 リカレント教育振興の具体的方策
第1部及び第2部において、リカレント教育が求められる背景、リカレント教育を実施する各機関における現状と課題及び今後への期待などを述べたが、ここではこれらを踏まえ、その振興の視点と具体的な方策についてまとめる。
第1章 リカレント教育振興の視点と配慮事項
1 リカレント教育振興の視点
リカレント教育は、本人の自発的意思に基づいて行うものであるので、学習に参加する意欲と能力のあるすべての人にとって平等に機会が得られるような学習環境の整備が必要である。そのためには、学習に当たって制約の多い障害者等への配慮をするとともに、社会人のそれぞれの特性に応じた視点での振興が重要である。
(1) 職業人の視点
職業人にとっては、技術革新の進展等に対応した高度で専門的な幅広い知識・技術や、伝統的な技術・技法の習得など職業上の学習が必要である。また、これとは別に仕事以外の分野でも、人間性を高め心豊かに生きるための学習が必要になっている。このような職業人に対して、時間的な制約等も考慮に入れたリカレント教育の推進が重要である。
(2) 女性の視点
女性が男性と共に家庭や社会で責任と役割を担う男女共同参画社会を築いていくための系統的、継続的な学習や職業能力の開発・向上にかかわる学習など、女性の社会参加と自己実現を促進するリカレント教育の推進が重要である。
(3) 高齢者の視点
本格的な高齢社会を迎えた現在、高齢者の再就職や社会参加を促進することは社会の要請であるとともに、高齢者自身の望むところにもなっているため、高齢者の生きがいにつながるリカレント教育の推進が重要である。
2 リカレント教育振興に当たっての配慮事項
リカレント教育の振興方策を進めるに当たって、次のような事項に配慮することが重要である。
(1) 学習ニーズの把握
職業人、女性、高齢者など学習者のニーズ及び産業界や地域社会のニーズを反映したリカレント教育の推進が重要であるが、そのためには、継続的な調査を実施するなどして、学習ニーズを的確に把握する必要がある。
(2) 人材配置
リカレント教育を実施する各機関では、キーパーソンとなる人材を配置して窓口を明確にするとともに、他の機関から収集した情報等を内部に確実に伝達できるよう体制を整える必要がある。
(3) 人材活用
学習ニーズの高まりに十分に対応するために、学校の教員のみならず、企業や官公署の実務経験者等をリカレント教育の指導者として登用することが大切である。また、高齢者の豊かな経験や能力を活用していくことも重要である。
(4) 受益者負担
公的な機関などにおいては、現在、無料又は教材費程度の負担で学習機会を提供することが多い。しかし、社会の要請に対応して、高度で専門的な学習機会を多様に展開するためには、受益者の適切な負担の在り方に関する検討が必要である。この場合、それぞれの機関において、目的、内容、対象者等の実情に応じて柔軟に対応できるように配慮をすることが望まれる。
第2章 学習機会の整備
1 学習機会の提供に当たっての環境整備
リカレント教育の学習機会は、第2部でその現状を考察したように、企業、民間の生涯学習関連機関、大学等高等教育機関(以下この項において「大学等」という。)、行政など様々な機関で提供されている。今後とも、それぞれの機関において学習者のニーズに対応した学習機会を着実に拡充していくことが重要である。
リカレント教育は、生涯学習がそうであるように、学習者の自発的な意思に基づいて行うことを基本とし、関係機関の自主的な取組が必要とされるものである。そのため、行政は、このような自発性や自主性に配慮しながら、学習者の意識の啓発を図るとともに、関係機関に働きかけて、相互の連携を進めたり学習者が学習しやすい環境づくりに努めたりすることも重要である。
(1) 関係機関の連携
社会人の多様で高度な学習ニーズにこたえ、関係機関がそれぞれの役割や実情に応じてリカレント教育を効果的に実施するためには、各々の機関の実施状況に関する情報交換を行ったり、リカレント教育推進に当たっての意見交換を行ったりする連携システムを構築することが必要である。そのために、現在愛知県が大学等との連携を進めるために生涯学習大学連絡会議を開催しているが、例えばこの会議に企業、民間の生涯学習関連機関との情報交換や意見交換の場を加えることによって、より総合的なリカレント教育の推進を図ることが考えられる。
(2) 学習に参加しやすい環境づくり
仕事、育児、介護等のために学習の場に参加しにくい社会人に対して、双方向のネットワークを活用した在宅学習講座などのような時間や場所の制約がない学習機会が多様に提供されると、自由な時間に好きな場所で学習することが可能になる。大学等を始め各リカレント教育実施機関において、様々な制約のある学習者に対応した多様な形態による学習機会の提供が検討されていくことを期待したい。
また、女性が家庭にひきこもりがちな子育てなどの時期は、特に社会とのつながりを必要とするときでもある。子育てをしながら、職業にかかわる専門的な知識や技術を習得したり、自己実現を図るための学習をしたいという要望はますます膨らんでいくと思われる。こうした状況の中で、学習機会を提供する機関が託児の制度を設けるなど、女性が参加しやすい環境を整備することも必要である。
2 住民に身近な施設での学習機会の提供
本県には、高等教育機関として大学、大学院、短期大学、高等専門学校及び専門学校が多数あり、さらに放送大学愛知地域学習センターも設置されている。これらの機関がそれぞれの実情によりリカレント教育の推進に取り組んでいることは第2部で考察したところである。このような高等教育機関等において提供されている学習機会が、住民に身近な施設で提供されると、地域住民、とりわけ遠くの大学まで通えない高齢者や、育児や介護をしている人々にとって学習への取組が容易になる。
そこで、県や市町村等が住民に身近な施設を活用した施策を進めることが必要である。具体的には、次のような施設の活用が考えられる。
ア 公民館等の活用
公民館、図書館、博物館などの社会教育施設、文化施設、スポーツ施設、地域のコミュニティセンター、労働者福祉施設、社会福祉施設などが地域住民に身近な施設として設置されている。そこで、県や市町村等が県内に多数ある高等教育機関等と連携して、地域住民のニーズに対応した高度で専門的な学習機会をこれらの施設を活用して提供していくことが期待される。
イ 学校の活用
小学校、中学校、高等学校などの学校施設も住民に身近な施設である。生涯学習の振興のため、これらの学校の教育機能を地域へ開放する学校開放事業の促進が求められており、施設を開放したり開放講座を開設したりしている事例もある。今後は、それぞれの学校の教育機能を開放するだけでなく、高等教育機関等と連携して、その人的・物的教育機能を活用して、より高度で専門的な内容の学習講座を提供していくことの検討も必要である。
県にあっては、地域におけるこのようなリカレント教育の円滑な推進のために市町村等を支援していくことが望まれる。
また、高等教育機関の設置状況などによりリカレント教育の学習講座を開設しにくい地域に対しては、県が設置を計画している生涯学習推進センターなどにおいて高等教育機関と連携した学習講座を開設し、それを新しいメディアを活用して身近な施設や自宅でも受講できようにすることなども考えられる。
3 地域の特性を生かした学習機会の提供
第1期の本審議会の答申において、生涯学習を振興するために、地域における史跡、伝統芸能などを学習資源として活用していくことを提言したが、リカレント教育の振興においても、これらの歴史的遺産や伝統的文化遺産を有効に活用していくことが望まれる。
本県には国、県及び市町村から指定を受けた文化財が多数あり、また、国から指定を受けた伝統的工芸品もある。このほかに、地域の豊かな自然環境もある。そこで、行政や関係機関がこれらの特性をリカレント教育の学習資源としても活用し、伝統的な技術・技法を学ぶ学習機会、郷土の歴史や自然を学ぶ学習機会を充実することが望ましい。このような方策により、地域に受け継がれてきた伝統的な技術・技法、文化、自然への関心が高まることが期待できる。
第3章 学習情報ネットワークシステムの構築
1 ネットワークシステムの構築の必要性
人々の学習活動が盛んになるにつれ、学習需要は多様化、高度化するが、それに対応して学習機会も企業、民間の生涯学習関連機関、大学等高等教育機関、行政などにおいて多様に提供されている。それらの学習機会が有効に活用されるためには、学習者が必要に応じて情報を入手できるような環境を整備することが必要である。
リカレント教育では、大学等高等教育機関における社会人特別選抜入試制度の導入などの社会人の受入状況や、いつ、どこで、何が開催されているかといった学習機会に関する情報、学習情報をどこで得られるかといった情報源に関する情報、学習教材や資料に関する情報などが必要とされる。リカレント教育における学習内容に関する情報は、多様化、複雑化しているということもでき、このような情報を迅速かつ的確に提供できるようにするためにはネットワークシステムの構築が不可欠である。
2 ネットワークシステムの構築に当たっての配慮事項
ネットワークシステムの構築に当たっては、整備のための基本事項、機器構成、システム、情報処理、運用管理、信頼性・安全性の確保などについて総合的に検討することが重要である。リカレント教育に関する学習情報は、生涯学習全般の情報提供システムの中で提供されていくことになると思われるが、その構築に当たって、リカレント教育にも関連して配慮が必要な事項として次のようなことが考えられる。
(1) 高度情報化への対応
今日のマルチメディアの発達には目を見張るものがあり、ネットワーク化の進展、機器の優れた操作環境などにより、高度で多様な情報通信システムは、企業や行政機関だけでなく一般の家庭にも普及しつつある。今では自由な場所から海外との双方向のネットワークシステムに接近することも可能である。そして、このような高度情報化に対応したシステムを構築すること、そのシステムを効果的に活用できる職員を養成することなどが重要になっている。
(2) 多様な学習機関の情報の収集と他のシステムとの連携
リカレント教育は、その専門性などから公的な機関や身近な地域の機関では学習機会が提供されていないこともあるので、学習者にとって入手したい情報はこれらも含め多様な機関の情報を対象とする場合が多い。そこで、公的な機関の情報のほかに、大学等高等教育機関の情報や民間の生涯学習関連機関の情報も収集して、提供していくことが必要である。
また、生涯学習に関連するシステムの運用については、学習者にとって情報が得やすいように、リカレント教育に関する情報を有する様々な機関の情報システムと有機的にネットワーク化して、マルチメディアに対応した総合的な情報提供システムを構築することが必要である。愛知県では、愛知芸術文化センターにおける芸術文化情報システムや愛知県女性総合センターにおけるウィルあいち情報システムのように、生涯学習に関連する情報を扱ったシステムを既に運用しているものもある。ネットワークを充実させていくためには、今後それらのシステムとの連携について検討していくことが必要である。
(3) キーワードによる検索
リカレント教育に関しては、これまで学んできたことをさらに高度に、専門的に学ぶわけであるから、学習の目的や内容がはっきりしている場合が多い。しかし、「働いているために夜間にしか時間がとれない」、「家族の世話等で家を空けられない」、「専門的な内容だから近くの施設で開設していない」といった制約も多いと言える。こうしたことを考えると、学習の目的や内容によりデータを検索できるよう情報を蓄積することが重要であると同時に、学習者にとって障害となっていることがらを解決する情報が得られるように、「夜間」、「在宅」などの特定の条件を示すキーワードからも検索できるようにすることが望ましい。
(4) 情報へのアクセス
学習情報ネットワークシステムの整備に当たっては、何よりも学習者がアクセスしやすいシステムとなるよう十分に検討していく必要がある。そして、情報提供・相談業務の充実とともに、担当職員の研修も重要であり、さらに、学習者が自ら情報を得やすいように各施設における来館者用の端末機の設置、パソコン通信との接続、学習者向けのメディア講座の実施などについて検討することも必要である。
3 愛知県生涯学習推進センター(仮称)への期待
愛知県が21世紀初頭の設置を目指して計画を進めている生涯学習推進センターにおいて、これまでに述べたリカレント教育に配慮した学習情報ネットワークシステムが構築され、情報提供や相談機能が十分発揮されることを期待したい。
また、同センターについては、第3部第2章などで言及しているように、新しいメディアを活用した学習機会の提供や調査研究等に積極的に取り組むことを期待したい。
第4章 学習成果の評価と活用
1 学習成果の評価の在り方
学習成果の評価として各機関ごとに学習の修了証が発行されることがあるが、これは、修了証の発行により学習者の学習意欲を高めることができるという考え方によっている。さらに、リカレント教育を実施している機関に共通する修了証の発行などの評価システムが開発されると、学習者にとっては修了証の対象となる学習機関への新たな関心や興味が起こり、学習の幅が広がることも期待できる。
また、修了証の発行以外の方策として、高等教育機関が行政など他の機関と連携して学外で開設した学習講座についても、授業時数や教育水準などを満たすことを条件に、高等教育機関の正規の単位として認定することも、リカレント教育の振興に効果が期待できる。
一方、リカレント教育の学習は個人の学ぶ目的が明確であるため、評価は必ずしも必要ではないという考え方もある。このように、リカレント教育における学習成果の評価については様々な考え方や事例があるので、リカレント教育の実施機関や愛知県が設置の計画を進めている生涯学習推進センターなどにおいて、その在り方などについて今後さらに研究していくことが必要である。
2 学位授与機構の活用
学位授与機構は、国立学校設置法(昭和24年法律第150 号)に基づき平成3年に設置された国の機関であり、ここでは、短期大学、高等専門学校卒業者等が科目等履修生として大学の単位を修得する等の方法により一定の学修を積み上げた場合、学位を授与している。この機関の活用が一層進むことを期待したい。
3 単位互換制度の促進
ある機関での学習の成果が、他の機関での学習の成果に相当すると認められるとそれぞれの学習の効果が一層高まることになる。大学間で行われている単位互換制度の促進は、社会人の学習機会の選択肢を広げることにつながり、高等教育がより身近なものになると期待される。
また、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)及び専修学校設置基準(昭和51年文部省令第2号)の改正により、一定の要件を備える専門学校での学修を大学における授業科目の履修とみなして単位を付与すること及び大学での学修を専門学校における授業科目の履修とみなすことも可能になっているので、こうした制度の促進も期待される。
4 学習成果の積極的な活用
リカレント教育における評価の方策として、学習成果を活用することが考えられる。具体的には、学習を修了した人を学習講座の講師に採用すること、学習相談員等のボランティアとして活用すること、または、学習によって得た専門的な知識や技術を発表する場を提供することなどが考えられる。今後県や市町村などの行政や関係機関がこのように学習成果を積極的に活用していくことを期待したい。
また、学習成果が社会的に広く通用する資格や大学の単位につながったり、職業生活や社会生活で活用できるようになったりして、学習成果の活用がさらに進むと、リカレント教育は、その魅力が一層高まって社会に定着していくものと思われる。
学習成果が職業生活や社会生活で活用されるためには、行政や企業を始めとする関係機関において、職員や従業員が学習してきた成果を受け入れるシステムを採用することが必要となる。「いつどこで学んだか」ではなく、「何をどれだけ学んだか」が適切に評価される生涯学習社会を目指すに当たっては、関係機関の連携によってこのような学習成果の評価や活用の方策が検討されていくことを期待したい。
おわりに
生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(平成2年法律第71号)が定められているが、この法律においても生涯学習に関する定義は示されていない。そのため生涯学習についての考え方は、学習者の数だけあるとも言われている。リカレント教育に関しても同様に、そのとらえ方は様々である。
この報告では、・対象者は、既に学校教育を修了した社会人、中でも職業人を中心とするが、女性や高齢者の視点も含めること、・実施機関は、高等教育機関を中心的な機関とするが、企業、民間の生涯学習関連機関、行政など様々な機関を含めること、・学習の目的は、職業能力の向上を目的とするもの及び人間性を豊かにするものとすること、・学習内容は、高度で専門的な内容とすることの4点を基本とした。
そのために、本報告でのリカレント教育はOECDで取り上げられた当時よりも幅広いものとなっている。それは、この報告が、行政、とりわけ県に対するリカレント教育の振興方策を提言するものであり、また、社会構造や経済構造など様々な変革が求められている今、人々がそれぞれに得た知識や技術を社会に還元していくことができる人間性の豊かさが問われているからである。リカレント教育の推進が、社会全体の活力を生み、それが新しい産業、技術、文化等の創出につながっていくことを期待するものである。行政を始め関係機関が、この報告における提言を踏まえ、それぞれの立場においてリカレント教育の振興に取り組まれることを期待したい。