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東三河漁協青年部連絡協議会による福江湾アサリ資源状況調査
背景と目的
渥美半島南部に位置する福江湾では、あさり漁業が盛んに営まれており、全国でも有数のあさり漁獲量を誇っていま
す。しかし、アサリは資源量の増減が激しく、漁獲量が多い年、少ない年があり、毎年、十分な漁獲量を安定的に確保
することが課題となっていました。このため、若手漁業者の活動組織、「東三河漁協青年部連絡協議会」が、資源管理
によるあさり漁獲量の安定化を目指して、平成30年度から、あさり資源状況調査をはじめました。
調査内容
調査地点は、アサリ漁場4地点(大阪、エビス、新切、夢沖)に設定しました。月1回、漁業者が自作した特製の採泥
器を使ってアサリをサンプリングし、採取した砂泥の中からあさりを回収し、個体数を数え、個体密度を調べました。ま
た、大きさ(殻長)、身入り(肥満度)状況についてモニタリングしました。
図1. 調査地点図
図2. 漁業者特製採泥器とサンプリングの様子
調査の結果
1 個体密度
・ 稚貝の発生が多い時期は、6・7月頃でした。ほぼ一年中漁獲されている福江湾のあさりは、わずか2カ月間の間に
発生する稚貝資源に支えられているという事がわかり、この時期に発生する稚貝資源を保護・管理していくことが
重要であることが分かりました。
・ 個体数の減耗は稚貝発生直後の8月に著しいことがわかりました。この時期の稚貝減耗を抑えることが、当湾のア
サリ資源管理をしていく上で、重要であると考えられました。
図3. アサリの個体数密度
2 大きさ
・ 時期によりますが、殻長35mm以下のアサリは、ひと月に概ね3~4mm殻長が成長することがわかりました。漁獲し
たアサリがあと何カ月で何mmまで成長するのかを理解することで、小型のアサリの自主放流の意識を高められま
した。
図4. アサリ殻長の成長
3 身入り
・ 5月~2月の調査期間で身入りの指標である肥満度の値が最も高かったのは2月で最も低かったのは10月でした。
肥満度が低い時期は、あさりが痩せて弱っている時期です。この時期に漁獲や台風等の風波による掘り起こし等
のストレスをかけると、あさりが死んでしまう可能性があることから、今後、対策を考えていく必要があります。
図5. 肥満度(身入りの指標)
資源管理活動の紹介
これまでの調査結果を参考にして、以下のようなアサリ資源管理を進めています。
袋網を用いたアサリの保護活動
波浪や害敵から守るため、袋網に入れてアサリの保護を行う試験をしています。
図6. 袋網に入れたアサリ
害敵生物の駆除活動
アサリを捕食するツメタガイの卵(通称:砂茶碗)を駆除しています。
図7. 駆除活動の様子とツメタガイの卵塊(砂茶碗)