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第47回教育研究論文最優秀賞及び優秀賞受賞者について
論文については、平成26年2月発行予定の「<教育愛知>愛知県教育研究論文集」に掲載します。
最優秀賞
個人研究の部
- かかわり合いを通して技能を高め、できる喜びを実感する体育学習
-1年器械運動(マット運動)「合わせる・ずらす・組み合わせる 朝日中シンクロマット」の実践を通して-
刈谷市立朝日中学校 佐藤 裕一
【短評】
生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現する基礎を培うために、生徒たちが仲間と関わる中で課題解決を図り、技術を向上させ意欲を高めることを目指した、中学校1年生の体育科における研究である。授業開始前のアンケートで「好き」と回答する生徒が少なかったマット運動について、生徒たちの不安感や恐怖心を和らげ、運動を楽しむことができるよう、段階的な「シンクロマット」の単元を構想している点に工夫がある。体の動きを修正するための教具や視聴覚機器の活用、助言し合いながら技能の向上を目指すグループ活動など、多彩な手立てにより、生徒たちが楽しみながら意欲を高め、技能を向上させていく様子が、実践の記録からよく伝わってくる。先行研究に学び、学級全体の変容を「形成的授業評価」や「運動有能感に関する調査」の得点により捉えており、説得力のある検証を行っている。
共同研究の部
- 自らの判断で正しい行動ができ、より高い自己肯定感をもつ児童の育成
-身につけた社会性・規範意識を高める活動を通して-
大治町立大治南小学校 現職教研推進委員会 (代表 加藤 啓介)
【短評】
社会性や規範意識を高めて行動に反映し、自己肯定感をベースによりよい人間関係を築く児童の育成を目指した、小学校の全学年における共同研究である。社会性・規範意識を高めるための各学級におけるソーシャルスキルトレーニングや、自己肯定感を高めるための異学年交流による群読の活動などを計画・実行し、それぞれの活動について段階を設け深化を図っている。全体計画に基づいて各学年における目標と具体的な実践内容を決め、教材作成を行っており、各学年の児童が発達段階に応じた課題に取り組みながらも、全校で行う共同研究として統一感のある活動となるよう計画している。全校児童の変容は事前と事後のアンケート結果の比較により検証されているが、規範意識・自己肯定感のどちらについても高まっており、有効性が明らかである。共同研究として汎用性が高く、優れている。
優秀賞
個人研究の部
- 自分の考えを表現できる子の育成
-3年生社会科「店ではたらく人」における地域学習を通して-
瀬戸市立陶原小学校 水野 英紀
【短評】
互いに気心の知れた小集団の中に育ち、説明や主張をする力が十分でない児童たちに、思考力・表現力を身に付けさせようと考えた、小学校3年生の社会科における研究である。児童の身近にある商店街を体験的な学習の場として選び、調査と考察による学習を繰り返し行った後、実際に出店・販売の活動を行うという単元構想は、繰り返しの学習による効果が確認できるものである。また、出店の際には、国語や図画工作など他教科で身に付けた技能を活用する指導計画となっている点も評価できる。ペアによる取材活動、販売活動、話し合い活動などの手立てを用いた実践を通して、児童の考えがより深まったことが、ルーブリックを用いた評価や、児童全員の記述の分析から確認できる。調査活動や外部講師の招聘などに地域の力を十分活用しており、地域社会に対する理解と愛情を深める優れた実践となっている。
- 比べながら考え続ける子供の育成
-2年生活科 子供の思いを大切にした大根の栽培活動を通して-
岡崎市立竜海中学校 山内 美保
【短評】
「比べる」体験活動を通じて思考力を育て、児童の気付きの質を高めることを目指した、小学校2年生の生活科における研究である。児童が主体的に活動に取り組み、思考力を高めることを狙って、種まきの準備から収穫した大根を食べるまでの一連の活動をすべて体験するという長期の学習活動を設定している。対話によって児童の思いや考えを引き出しながら、様々な場面において「比べる」活動を行い、課題の解決法を考えさせている点が独創的であり、活動過程の記録により児童が自らの成長を振り返るようになっている点も、よく考えられている。継続した「比べる」体験活動により、児童が大根の生長を自らの課題として捉え、よりよい解決方法を考えて実践していく過程が的確に記述されており、指導者と児童とが共に楽しんで活動する様子が目に浮かぶ研究である。
- 論理的に読み取り、自分の表現に生かすことができる子の育成
-1年国語科「たねのたび~オリジナルずかんをつくろう~」の実践を通して-
西尾市立白浜小学校 伴 理香
【短評】
説明文を読む学習活動を通じて、論理的に説明する力の育成を目指した、小学校1年生の国語科における研究である。単元の終わりに図鑑を作るという目当てを児童にもたせ、「習得」の学習(読み取り)から「活用」の学習(図鑑の作成)へとつないでいく単元構想はよく考えられている。「習得」の学習活動においては、文型の確認に使う「問いの文」など、各段階におけるキーワードを整理して示しており、身に付けさせたい力を明らかにしている点が評価できる。また、「習得」と「活用」をつなぐ段階の学習活動も設定しており、全ての児童が円滑に図鑑作成に入れるよう配慮している点もよい。児童が内容を提示する方法を学び、自ら説明文を書けるようになっていくプロセスが明快に記述されており、参考になる研究である。
- 仲間とかかわり、課題を解決する中で、数字を学ぶ楽しさを実感できる生徒の育成
刈谷市立刈谷南中学校 木村 紘一朗
【短評】
生徒相互の意見交流を通して思考力や表現力を伸ばし、数学を学ぶ楽しさを実感させることを目指した、中学校1年生の数学科における研究である。線香やモビール、ランドルト環、紙の束などは、比例・反比例の学習によく使われる材料であるが、本研究の特長は、こうした材料を使う実験の計画を生徒自身に立てさせたり、実験結果を話し合って深める活動を設定したりすることによって、生徒の興味・関心を高め、課題解決力を伸ばす単元構想としている点にある。特に、線香やモビールを用いた実験において設定している、負の数が意味するものを考えさせ、その考えの正誤を実験によって確認させるという学習活動には独自性がある。研究計画、実践の記録など、一つ一つが丁寧に記述され、効果が分かりやすい研究となっている。
- 知的障害のある生徒の就労を踏まえた対人関係スキルの向上を目指した指導
-キャリア教育の「人間関係・社会形成能力」を中心に-
愛知県立豊川養護学校本宮校舎 渡辺 大倫
【短評】
発達障害及び知的障害のある生徒を対象に、対人関係スキルの向上を図った、特別支援学校高等部のキャリア教育に関する研究である。高等部に在籍する発達障害や軽度の知的障害の生徒に対しては、特に就労・自立を視野に入れた指導が求められている。本研究では職業的発達に関わる「4領域8能力」のうち、「人間関係・社会形成能力」に焦点化してその向上を図っているが、先行研究を活用し、身に付けさせたい力を意識して行うロールプレイや振り返りの活動によって、生徒が力をつけていく様子がよく伝わる。活動の事前事後に、県教育委員会が作成した「キャリア教育ノート」所載の評価尺度などを用いて生徒の変容を測定しており、説得力がある。また変容や成長を生徒に自己評価させる活動そのものが,生徒にキャリア発達を自覚させ,その重要性を認識させる手立てともなっている点が優れている。
共同研究の部
該当論文なし
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愛知県 教育委員会 総務課
総務・広報グループ
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内線3811,3810
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