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愛知県自然環境保全地域 大沼(おおぬま)

ページID:0538267 掲載日:2025年1月23日更新 印刷ページ表示

大沼の写真

大沼の自然

 大沼は、北設楽郡豊根村の富山地区を流れる漆島川右岸の急傾斜地に成立した自然林です。
 大沼を含む豊根村等の森林は、戦前から薪炭林として30年ぐらいの周期で伐採・更新が繰り返される広葉樹林でした。昭和30年以降、生活燃料が薪炭から石油に代わると、山の広葉樹林も多くはスギ・ヒノキの人工林に切り変わりましたが、大沼自然環境保全地域は、広葉樹二次林がそのまま保存されました。この地域は標高差が350mあり、この標高差の影響で植生の変化に富み、これらの植物に依存した特色のある昆虫類も生息する貴重な地域となっています。

大沼の紅葉の写真

大沼の紅葉

大沼の植生

 大沼の標高は、漆島川谷底の500mから右岸枝尾根の850mまでです。この標高範囲は中部地方の森林帯としては照葉樹林帯上部から冷温帯下部までにあたります。したがって大沼の森林では、標高差350mの斜面で暖帯カシ林要素から温帯ブナ林要素までのさまざまな種群を見ることができます。
 大沼地区の斜面下部にはツクバネガシ、アラカシ、ウラジロガシ、アカシデ、クマシデ、ヤマザクラ、コナラ、アサダ、モミ等の照葉樹、落葉樹、針葉樹の混交林が成立し、低木階以下にソヨゴ、シキミ、アセビ、ヒサカキ、ウラジロガシ、テイカカズラ、スズタケ等の常緑種群が見られます。また、漆島川に注ぐ数本の沢筋の礫堆積斜面にはケヤキ、トチノキ、ケンポナシ、ミズキ、イイギリ等の落葉樹が高さ15m以上の高木林を作っています。この渓側林の低木階にはチドリノキ、ウリノキ等が特徴的です。漆島川本流沿いの岸壁にはイワタバコ、ハコネシダ、クジャクシダ、カタヒバ、イワギボウシ等が着生し、稀にサジラン、トキワシダもみられます。岸壁上に根を張って生育する常緑樹のヤマグルマ、崩れた沢筋に侵入するフサザクラ群落、沢の礫地林下に群生するフタバアオイは、本県内では北設地域以外では分布の少ない種です。
 大沼地区の斜面上部は、標高700m以上に温帯性のブナが現れます。多くは直径20~30cmの太さですが、稀に直径50cm以上の大木も点在します。ブナと一緒に生育する樹木にはミズナラ、ミズメ、イヌブナ、アサダ、ウダイカンバ、アカシデ等の落葉樹があります。低山地に多いコナラも標高800m付近まで混生します。 

フタバアオイ

フタバアオイ(ウマノスズクサ科)

福島県以南の本州、四国、九州の温帯域に分布する林床に生える多年草で、県内では三河山間部のみに生育しています。本種は葵まつりで知られる京都賀茂神社の紋章として用いられ、徳川家の家紋三つ葉葵のルーツでもあります。

イワタバコ

イワタバコ(イワタバコ科)

湿った岸壁に着生下垂する暖帯・亜熱帯性の多年草ですが、森林の日陰がないと生育できないので県内では主に三河山間部に分布します。8月、ナス科のタバコにやや似た紫色の花をつけます。

アサダ

アサダ(カバノキ科)

全国的に分布しますが、県内では設楽山地等に分布が限られます。アサダの樹皮は粗く剥げて特徴があり、その材は重くて硬いので磨くと光沢がでます。アメリカでアイアンウッド、中国で鉄木の名があります。

ブナ

ブナ(ブナ科)

日本の温帯山地に広く分布しますが、本県では面の木峠、段戸裏谷地区にまとまった自然林が見られるのみです。東北地方の世界遺産・白神山地のブナは有名になりましたが、その日本海側チシマザサ-ブナ群団に比べて、太平洋側のブナ林は混生樹種が多く林床にスズタケが優占するのでスズタケ-ブナ群団として区分されます。

 

大沼周辺の動物

 大沼と周辺に生息している大型ほ乳類はニホンジカ、二ホンカモシカ、イノシシ等です。この3種が同じ場所に生息しているのは、かつては愛知県では北設地域だけでした。
 愛知県のニホンジカの生息地としては、本宮山を中心とした地域と、この大沼を含む富山地区を中心とした地域の二つがありましたが、現在は県東部を中心に生息域が広く拡大しています。また、ニホンカモシカも県東部を中心に生息域が拡大しています。

所在地(北設楽郡豊根村大字富山)

大沼位置図

大沼の広域図

地理院地図(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/)を元に加工して作成

大沼は、近年区域内で土砂崩れが発生しており、足場が非常に悪くなっています。

事故防止の観点から、立入は御遠慮願います。

愛知県大沼自然環境保全地域の保全計画(抜粋)

昭和53年3月24日指定
(指定時の計画書から抜粋しているため、内容が現状と合っていない箇所があります)

指定理由

 当該地域は、天竜川支流漆島川の右斜面に成立する落葉広葉樹等の天然林地帯である。
 愛知県内においては、ブナの天然林の残されている数少ない地域の一つで、植生の垂直分布がみられ自然環境としてきわめて貴重な存在である。また林内にはスギタニルリシジミなどの蝶類が生息しており、県内ではまれな生息地となっている。
 したがって、当該地域のすぐれた自然環境を保全するため、自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例20条第1項第1号のすぐれた天然林の占める区域、および同項第4号の植物の自生地及び野生動物の生息地として愛知県自然環境保全地域に指定するものである。

保全計画

1 保全すべき自然環境の特質
(1)植生
  漆島川右岸の急傾斜地に成立した温帯林で、標高500メートルから850メートルの稜線にかけて標高差350メートルの間を覆っている。
  標高700メートル付近より上部はブナを主とする落葉広葉樹林が極相に近い状態で成立している。700メートル以下では、ウラジロガシ等の常緑広葉樹林となるが、クマシデ、トチノキなどの落葉樹及びモミ等の針葉樹も多く混生している。
  このように、当地域は冷温帯と暖温帯の境界に位置しているため、植物の種類も極めて豊富で、植生の垂直分布の推移が典型的にみられるものとして、県内でも貴重な場所となっている。
(2)野生動物
  ブナ林の指標昆虫であるフジミドリシジミ、ブナ林に接するウラジロガシ林の指標昆虫であるヒサマツミドリシジミを同一地域内に産する、きわめて特色ある生態系を有している。また、天然記念物のカモシカ、県下では少なくなったシカ、ヤマネも生息している。
2 面積
地区別面積

特別地区

(全域野生動植物保護地区)

15.13 ha

大沼区域図

地理院地図(国土地理院)(https://maps.gsi.go.jp/)を元に加工して作成