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愛知県における外部監査(平成20年度テーマ1)

ページID:0166112 掲載日:2017年6月21日更新 印刷ページ表示

テーマ1「公有財産の管理について」(結果の概要)

第1 外部監査の概要

1 選定した特定の事件

公有財産の管理について

2 事件を選定した理由

公有財産は県民から負託された重要な資産であり、常に良好な状態において管理し、その所有の目的に応じて効率的に運用しなければなりません。

総務省は、「新地方公会計制度実務研究会報告書」において「貸借対照表」「行政コスト計算書」等の作成を推奨しており、「地方自治体における新しい公会計整備の目的の一つは資産及び債務の適正な把握と管理であり、中でも資産価値の適切な評価は重要である。」としています。愛知県では、道路などの形態でも多くの公共用地を有しています。

このように公有財産の管理及び運用の重要性が高まってきていることから、特定の事件として選定しました。

第2 外部監査の結果

1 財産の範囲

(1)公有財産とは

公有財産とは地方公共団体の所有する財産のうち以下に掲げるもの(基金に属するものを除く)です(地方自治法第238条第1項)。

1 不動産
2 船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
3 前二号に掲げる不動産及び動産の従物
4 地上権、地役権、鉱業権、その他これらに準ずる権利
5 特許権、著作権、商標権、実用新案権、その他これらに準ずる権利
6 株式、社債、地方債及び国債その他これらに準ずる権利
7 出資による権利
8 財産の信託の受益権

公有財産は、行政財産と普通財産に分類されます (地方自治法第238条第3項)。行政財産は、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産です。普通財産は、行政財産以外の一切の公有財産です(地方自治法第238条第4項)。

公用に供する財産とは、普通地方公共団体がその事務又は事業を執行するため直接使用することをその本来の目的とした財産であり、公共の用に供する財産とは、住民の一般的共同利用に供することをその本来の目的とする財産のことです。

また、地方自治法第237条第1項において、財産を「公有財産、物品及び債権並びに基金」に分類しています。したがって、物品、債権並びに基金については財産には該当しますが、公有財産には該当しません。

(2)公有財産としての道路

道路については、道路法の規定により道路台帳が整備されるため、公有財産台帳を作成する必要はないとされていますが、公有財産であることにかわりありません。

今年度の監査においては、公会計改革における固定資産台帳整備の準備状況の確認の意味も含めて、公有財産全体を監査対象としました。

2 公有財産台帳登録

公有財産台帳の登録事務に関して、下記の問題点がありました。

a システム上の承認権限が制限されていない

b 普通財産の処分の事務処理に関しては入力作業と承認・更新作業を同一人物が実施可能

c 登録誤り及び登録遅延

d マニュアルの周知不足

また、公有財産台帳では、平成18年3月31日以前に取得された資産について「異動年月日」がすべて平成18年3月31日となっていました。これは、現行の公有財産管理システムに旧システムのデータを登録させる際、データ移行年月日だけを、異動年月日として登録したためです。現行システムにおいて過去の異動年月日の履歴データを保有し、システム上すべての異動履歴を一覧できる状態にすることが望まれます。

3 土地及び建物の管理及び活用状況

(1)    土地及び建物の個別検討結果のうち主要なものは以下のとおりです。

 (ア) 元建設技術研究所

建物取り壊し後は、公共事業の駐車場として短期間の貸付を行ってきましたが、継続的な使用は行われておらず、現在その利用方法を検討しています。

【意見】

立地条件の良好な土地です。大規模な公共施設の建設地としての利用方法が期待されるほか、売却した場合には、多額の売却収入も期待できます。土地の有効利用を行うべく、売却を含めた将来の土地の利用計画を策定することが望まれます。

 (イ) A緑地区域外県有地

この県有地については、約7,000平方メートルが公園緑地区域外県有地として残っており、そのうちの約8割は名古屋市等に対して都市計画道路、市道等として無償貸付しています。貸付を行っている土地以外の未利用地のうちの一部について、昭和20年代後半より無断使用が行われています。

【指摘】

県有財産が無断使用されていることに問題があります。相手方と文書を取り交わすなどして、期限を定めた売却交渉を行い、無断使用状態を早期に解消することが必要です。また、早期の解消が見込まれない場合は、退去を含めた検討が望まれます。

 (ウ) 元桃花台住宅

この土地は全6筆のであり、医師に分譲し医者村として利用する予定の土地3筆と県が開発事業用地として取得した土地3筆とがあります。医者村用地については、当初3区画について平成6年8月より分譲募集を開始し、平成7年3月に1区画の売却が行われました。その後、残りの2区画についても引き続き募集活動を行っています。しかし、まだ売却できていないため、引き続き受付を継続していくこととしています。

医者村用地については、用地造成の事業費をもとに3億円強の売却予定価格が設定されています。しかし、現在、分譲開始時期よりも地価は下落しています。加えて、医者村構想のコンセプトのため、売却先を医師へ限定しています。このような、実勢を加味しない価格設定や入居者の限定の結果、長年買い手がつかず、事業費の回収ができない状態が続いています。

【意見】

売却価格の設定を再検討するとともに、近隣住民に説明し、医師以外にも買い手の裾野を広げ、早期に事業費の回収を行うことの検討が必要です。

 (エ) C敷地

昭和45年6月に国への譲与申請により払い下げを受けて取得したものです。所有権保存登記以後30年以上にわたり、公有財産台帳への登録が行われていませんでした。現在、県有敷地内には無断使用物件が存在しています。無断使用の経緯の詳細は不明ですが、国から払い下げを受ける以前から現在の無断使用者が住居を建て居住を始めたものと思われます。現状、無断使用部分についてはその使用者に対して売却することを前提に交渉を進めています。

【指摘】

この県有地は所有権保存登記以後、30年以上にわたり、公有財産台帳への登録が行われていませんでした。取得した財産について漏れなく公有財産台帳に記載し、適切な管理を行うことの徹底が必要です。また、無断使用が行われているという問題があります。相手方と文書を取り交わすなど、期限を定めた売却の交渉により無断使用状態の早期解消が必要です。また、早期解消が見込まれない場合は、退去を含めた検討が望まれます。

 (オ) 木曽岬干拓公共施設用地

木曽岬干拓公共施設用地は、愛知県と三重県の県境を跨いで位置しており、愛知県と三重県とが共同でその管理を行っています。現在、平成22年度末の供用開始を予定している「わんぱく原っぱ」の盛土が行われている他、保全区においてビオトープ(生物が自立して生息できる地域)等の整備を行っています。

【意見】

事業は三重県との共同運営となる予定であり、権利義務、責任の帰属等の契約内容についても十分に留意する必要がありますが、現時点で検討・協議が行われていません。今後、共同運営時の権利義務関係、供用開始後の維持コストの負担等について、早急に協議を行うことが望まれます。

 (カ)その他

 

表1 個別検討結果要約
 区分 内容  施設名
 意見 適切な価格による早期売却が求められるもの 高蔵寺ニュータウン内県有地

 

 

元高等看護学院

 

 

元動物保護管理センター東三河支所新城詰所
 指摘 公有財産台帳における適切な記載及び管理 中川区内県有地

 

 

五条川廃川敷地
 意見 土地利用計画の早期作成 社会福祉施設用地
 意見 無断使用状態の早期解消 元愛知学園元B公園緑地
 意見 建物の今後の利用方針の明確化 元愛知県心身障害者更生相談所

元心身障害者コロニー公舎B・C

元尾張看護専門学校
 意見 適切な管理部署の検討 元県立大学
 意見 土地取得時期等の判断過程の明確化 日光川下流流域下水道日光川下流浄化センター
 意見 実習田としての利用に対する課題への対応 愛知県立稲沢高等学校実習地

(2)未利用土地・建物の問題点総括

未利用地の有効活用については、平成14年度に「県有財産検討会議」が組織され、有識者や民間の意見を取り入れつつ、長期間未利用となっている土地および建物の中から特にその処分に関して検討が必要なもの23件について、現場視察を踏まえた処分方法等の検討がなされ、それにかかる報告書が提出されました。その後、検討対象物件23件のうち19件に関しては売却や貸付などにより処分されましたが、残り4件については現在も未利用のままとなっています。

【意見】

「県有財産検討会議」は平成14年度に開催されて以来、その後、継続的な開催は行われていません。公有財産をとりまく環境は常に変化しているものであり、継続的な情報更新と対策が必要です。また、建物の有効活用及び処分方針に関して、全庁的な視点で判断しうる組織体制の構築が望まれます。その方法の一つとして、過去に未利用土地の活用について検討された「県有財産検討会議」のようなプロジェクトにおいて、建物利用について方針を決定していく方法も有効と考えられます。

(3)貸付財産・使用許可財産について                  

部局別貸付(使用許可)財産明細表には、貸付・使用許可期間を過ぎている案件が登録されたままになっているなどの不備が発見されました。管理台帳である部局別貸付(使用許可)財産明細表の登録内容のチェックの徹底が必要と考えます。

4 有価証券

(1)台帳管理

有価証券に関する公有財産台帳の記載に関して、証券の発行・不発行、保管場所、券種等の管理情報を充実させる必要があります。

(2)現物管理

有価証券の現物は、受領した株券を同銘柄ごとに金庫内に保管しているものの株数の整理及び封印はされていませんでした。株券を同じ種類の株券ごとに区分のうえ封印することで、実数の確認を効率的に実施することができるようになると考えられます。

(3)実質価格の把握

実質価額が30%以上下落している出資団体があります。有価証券及び出資による権利については、今後、実質価額を適切に把握することが必要です。

表2 平成20年3月末時点において実質価格と決算年度末在高を比較した場合、30%以上実質価格が減少していると考えられるもの(単位:千円)

対象

 

 

持分割合

 

 

平成20年3月末純資産額

 

 

実質価格

 

 

 

 

 

決算年度末現在高

 

 

実質価格の下落率

 

 

 

 

 

中部エイチ・エス・エス・ティ開発株式会社

 

 

3.33%

 

 

1,511,786

 

 

50,392

 

 

100,000

 

 

49.6%

 

 

衣浦臨海鉄道株式会社

 

 

39.27%

 

 

1,447,201

 

 

568,283

 

 

1,480,000

 

 

61.6%

 

 

桃花台新交通株式会社

 

 

46.00%

 

 

△3,571,565

 

 

△1,642,919

 

 

1,380,000

 

 

100. 0%

 

 

名古屋臨海高速鉄道株式会社

 

 

11.40%

 

 

4,818,853

 

 

549,349

 

 

1,789,800

 

 

69.3%

 

 

愛知高速交通株式会社

 

 

30.87%

 

 

331,018

 

 

102,169

 

 

2,197,550

 

 

95.4%

 

 

株式会社サイエンス・クリエイト

 

 

12.91%

 

 

535,457

 

 

69,113

 

 

200,000

 

 

65.4%

 

 

株式会社国際デザインセンター

 

 

32.97%

 

 

6,136,872

 

 

2,023,394

 

 

4,005,000

 

 

49.5%

 

 

蒲郡海洋開発株式会社

 

 

32.52%

 

 

△7,135,326

 

 

△2,320,731

 

 

4,276,000

 

 

100.0%

 

 

5 道路

(1)道路用地を管理する台帳について

道路用地については、平成15年度から建設行政システムにより契約管理及び予算管理の目的のために、年度ごと予算路線ごとの用地台帳を作成しています。しかし、この台帳は道路工事の着手や供用開始のデータとは関連付けられていないため、道路用地の現有面積等を把握することはできません。また、買収済道路用地については、通称「折り図」により把握されているものの、道路用地の現況を管理している台帳等はありません。

用地を取得したもののすぐには工事にかかれない場合もあります。長期にわたって工事が進まない場合もありますが、そうした土地の状況を把握できる台帳等は整備されていません。取得した道路用地の現況を把握できる台帳等を整備することが望まれます。

現在の道路台帳は、道路管理のため調製されるものであり、金額情報は要求されていません。道路台帳を調製しているために、公有財産台帳が調製されないことを考えると、公有財産管理の観点からは、今後、道路台帳についても公有財産管理のための要件を網羅することが必要と考えられます。道路はその性格から処分されることが前提とされていないとはいえ、公有財産管理の観点からも、また、財務書類4表の作成のためにも、金額情報が必要となります。道路台帳において公有財産台帳に求められる要件を追加し、取得価額、減価償却費等の金額を把握できるようにするか、道路台帳とは別に財産管理目的のための公有財産台帳を整備することが必要です。

これは、個別法の定めがあり、愛知県公有財産規則の適用の対象外となっている河川や港湾などの用地についても同様です。これらの現在、公有財産台帳の作成が要求されていない公有財産について、どのように公有財産台帳を調製し、どのような形で財産管理を進めていくかについての方針を、県として明確にしてゆく必要があります。

第3 結果に添えて提出する意見

1 台帳整備について

(1)公有財産台帳作成に係る内部統制について

公有財産台帳の登録事務の方法については各種の作成要領やマニュアルに定められています。しかし、台帳の記載内容の正確性を確保するための事務処理方法の周知について不十分な点があります。現状、公有財産台帳の入力及び承認は各部局で行われています。そのため、入力及び承認の際の誤りを発見するための事務処理をより詳細に説明する文書を作成し、これを全庁的に周知徹底する必要があります。

(2)財務書類4表作成のための固定資産台帳の整備について

現在の公有財産台帳は数量情報にとどまり、取得価額や財源を把握できず、資産管理の観点からは必要な情報が不足しています。また、道路台帳は道路の維持管理を目的とする台帳であることから、道路の敷地面積及びその内訳、曲線半径や、勾配など、道路の状況等が記載されますが、資産価額の記載は求められていません。

公会計改革においては、財務書類4表の作成・活用等を通じて、資産・債務の適切な管理を進め、未利用資産の売却促進や資産の有効活用等を内容とする改革の方向性と具体的な施策を作成することとされています。公会計制度改革の大きな目的として、資産管理の充実があります。現在の自治体の資産管理は、数量面のみの管理となっていますが、今後、設備の更新や投資の費用対効果の検討にあたっては、価格情報の把握も不可欠です。そのため、今後は公有財産台帳に価格情報等を加えた固定資産台帳の作成が必要となります。

また、現在の公有財産台帳は、資産の計上単位が「庁舎」、「教育施設」など大きな単位となっています。資産管理を適切に行う上では、実際に資産を取り替え・更新を行う単位で把握・登録する必要があります。また、資産の適正な費用配分のためには、耐用年数の異なる資産は別々に認識し、減価償却を行う必要があります。なお、固定財産台帳は財務書類の補助簿としての位置づけを持っており、固定資産台帳に記録された固定資産の合計額は貸借対照表と一致します。

愛知県においても、財務書類4表を作成する必要性から、固定資産台帳を適切に整備することが必要です。

現状の公有財産台帳登録上の必須項目と財務書類4表作成上最低限必要となる台帳項目は、下表のとおりであり、現状のままでは「取得額・取得相当額」「財源」「耐用年数分類」「耐用年数」等、多くの項目について、情報が不足しています。これらの情報を収集し、固定資産財産台帳を整備する必要があります。

表3 財務書類4表作成における公有財産台帳の必要入力項目(例として土地を記載)

財務書類4表を前提とした必須項目

 

 

現行の公有財産管理システム(注)

 

 

備考

 

 

公有財産番号

自動採番

主管課

自動登録

勘定科目

 

 

 

件名

 

 

 

耐用年数分類

 

 

 

耐用年数

 

 

 

取得年月日

 

 

 

異動年月日

 

 

 

供用開始年月日

 

 

 

取得額・取得相当額

 

 

 

予算執行科目

 

 

 

取得財源内訳

 

 

 

用途

 

 

 

所在地

 

 

 

公簿面積

 

 

 

(注)現行の公有財産管理システム欄における、「◎」は必須、「○」は自動登録、「△」は任意、「-」は項目なし、を表しています。

 

(3)道路用地の台帳管理について

現在、平成15年度以降に道路建設のために取得した土地に関しては、路線毎、取得年度毎の用地台帳及び図面が作成されています。しかし、取得した用地が、現在、更地であるか、工事が行われているか、道路となっているかといった状況を把握できる資料はありません。

道路用地として取得した土地が、工事の対象となり、供用されているかどうかを適時に把握することは、行政目的が適切に達成されているかを知る上で必要です。

道路として完成した後は、道路法に基づいた道路台帳が調整されていますが、未完成の部分についても、建設情報システムの土地取得データを活用し、路線毎に、未着工の用地の状況、工事中の状況を把握できる台帳を整備することが必要です。

2 普通財産の管理および意思決定の集約化について

現状、用途廃止により普通財産に変更された財産について、有効活用や処分に向けた検討を行うのは当該財産を管理する部局(課)となっています。公有財産規則では、普通財産に関する事務の所掌について、原則、総務部長が行い、例外的に依命通達に規定されるものについて、各部局長等が所掌することとなっています。しかし、実務上は、処分方針が決定した公有財産のみが財産管理課に移管されている状態にあり、普通財産に変更された財産についても各部局が管理し続けているものが多くあります。部局で管理される普通財産について、例外的に部局管理とされている理由を決裁書等により明確にすることが望まれます。

なお、普通財産に関する管理を集約化することにより、県有財産の有効利用に関する判断が県全体レベルでより機動的に行われることが期待されます。また、処分・有効利用に関する必要な手続のノウハウの蓄積が促進されることも期待されます。

普通財産の建物については、所管する各部局において利用方法・取り壊しの時期・方針が検討されているものがありましたが、建物の処分に関する意思決定を各所管課が行っていることにより、各課における予算措置の可否が建物の利用方法等の判断材料の一つとなってしまい、結果的に全庁的な視点からの有効活用の判断が阻害されているものが見受けられました。

建物の有効活用・処分方針に関して、全庁的な視点で判断する仕組みの構築が望まれます。その方法の一つとして、過去に未利用土地の活用について検討された「県有財産検討会議」のようなプロジェクトにより、建物の有効利用についても方針決定していく方法も有効と考えられます。

3 道路の効果的な整備にむけての取り組みについて

(1)計画から供用までの短期化に向けて

道路の整備に当たっては、用地の取得に向けて、地元計画説明会及び用地説明会の実施、用地測量、物件調査、土地評価、用地買収等のステップがとられます。この中で、事業の実施に向けて特に時間を要するのが地元計画説明会及び用地説明会における住民の理解、そして、実際の用地買収交渉であると思われます。公共事業の効率的な実施を図るためには、円滑かつ迅速に用地取得を実施することが不可欠であり、そのためには、道路構想の段階において、事前のアセスメントを行い、予定路線の補正をかけるなど、調査・準備について、一層の工夫を行うことが望まれます。

(2)事業費削減に向けて

現地視察を行った豊田市の事例では、本線部分は既に事業化が決定していたももの、付替道路については計画案の段階であり、正式な事業決定がなされていなかったことから、地元住民より相談があったものの、県も了承して、アパートが建てられることとなりました。この案件の場合、本線部分の事業認可は平成14年度、付替道路についての計画決定は平成16年10月であったことから、相談があった平成14年5月~9月の段階では、先行取得ができないとの判断が行われ、アパート建築についての了承が行われました。そして、平成16年10月及び平成17年3月に2棟のアパートが完成しています。更地を用地買収する場合と、アパートなどの居住者・建設物を伴う用地の買収・移転補償を行う場合とでは、コストも交渉の難しさも格段に異なります。

正式に事業化されていない以上、簡単に用地の事前取得を認めることは適切ではありませんが、たとえば、事業化の可能性が相当程度高い計画範囲内の土地に対して、特に、多くの人に影響を及ぼしうる建造物の建築などの相談があった場合については、事業化決定までの期間、計画の保留を要請する必要のある用地部分について、相当の賃料を支払うことにより、工事の見合わせについての了承を得た上で、早期に事業化の要否を決定する等の対応を行うことが考えられます。この方法によれば、コストの縮減を図ることができるうえ、関係する住民に対して、移転等の対応を依頼する必要もなくなると思われます。

(3)国の取り組みについて

平成20年3月に国土交通省から出された「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」では、事業のスピードアップに関して、次の事項を掲げています。

ア 合意形成・協議手続きの改善

(ア)構想段階からの合意形成手続の積極的導入・推進

事業ごとに事業プロセスの構想段階からの合意形成手続を導入・推進する。

(イ)関係機関との調整による協議手続の迅速化・簡素化

関係部局で協議手続の内容の必要性、妥当性も含めて点検・検討し、迅速化・簡素化を推進する。また、他省庁に関連するものについては、迅速化・簡素化に向けて調整を行う。

 

イ 事業の重点化・集中化

(ア)事業評価の厳格な実施による透明性の向上

a 新規事業採択時評価と再評価を厳格に実施し、真に必要な公共投資を選別することの観点から事業箇所を厳選する。

b 事業完了後の事業の効果や環境への影響等の確認を行う事後評価を厳格に実施し、同種事業の計画・調査のあり方等に反映する。

c 人命価値や環境への影響を定量的に評価することにより、より一層の適切な評価方法の構築を図る。

(イ)重点的な投資や事業の進捗管理の徹底による事業効果の早期発現

a 事業箇所の厳選による集中投資や施工方法の工夫等により事業効果の早期発現を図る。

b 早期完成の必要性や効果が高い事業について完成時期をあらかじめ明示宣言する等事業の進捗管理を徹底する。

 

ウ 用地・補償の円滑化

(ア)あらかじめ明示された完成時期を目標とした計画的な用地取得を実事業の計画段階から将来の供用までを見据えた周到な準備を行い、必要となる施策を適時適切に講じる「用地取得マネジメント(仮称)」を確立する。

(イ)用地取得業務の効率化のための民間活力の活用

用地取得業務で補償コンサルタント等の外部の専門家を幅広く活用する。

 

これらの国の取り組みは、愛知県の場合にも参考になると思われます。愛知県の場合、事業着手から30年を経過しても、完了していない道路工事も見受けられます。長期化の要因については、個別事情がいろいろあるとは思いますが、道路は全線が開通して初めて、本来の効用が発揮されます。事業管理の観点からも、あまり期間が長くなるようであれば、事業区間を分割して、小区画について、適切かつ確実に事業を完成してゆくことが望まれます。効率的かつ効果的な事業の推進に向けて、一層の対応が行われることを期待します。

問合せ

愛知県総務部総務課行政経営企画グループ
ダイヤルイン 052-954-6077
E-mail: somubu-somu@pref.aichi.lg.jp