主な展示作品
主な展示作品

鉄辰砂草花図壺
河井寬次郎
昭和10年(1935年)
やわらかな丸みを帯びたろくろ挽きの壺に、白化粧を施し、丸窓の中に伸びやかな筆致で鉄絵、染付、辰砂で草花文が描かれた優美な作品です。河井は初期の中国陶磁に倣った作風から、民藝運動に参画することで、民衆の工芸を手本としたものへと制作スタイルを大きく変えます。その中で生きる喜びと作る喜びを同居させた独自のスタイルを確立します。本作は、昭和12年のパリ万国博覧会に川勝堅一が河井に内緒で出品し、見事グランプリを獲得した、作家を代表する一点です。

白地草花絵扁壺
(前期のみ展示)
河井寬次郎
昭和14年(1939年)
型成形による堂々たる菱形の器形に菱形の口と高台が付き、器形の上下に施された鉄釉と鉄絵、辰砂、染付による草花文が踊るように描かれています。この作品は、川勝コレクションを象徴するもので、昭和32年(1957年)に開催されたミラノ・トリエンナーレ国際陶芸展で見事グランプリを受賞しました。ただし、本作は川勝が河井に無断で自身のコレクションの中から出品したものです。制作年と受賞年が大きく異なるのはそのためですが、河井と川勝の友情の証ともいえる1点です。

青瓷鱔血文桃形注
河井寬次郎
大正11年(1922年)
河井寬次郎は、京都市陶磁器試験場に勤務していた頃から、膨大な量の青磁や辰砂の釉薬の研究を重ねていました。本作は、その研究成果が発揮された作品で、大小の桃を象った形に注ぎ口がついた水注です。手捻りで成形し、厚く青磁釉をかけた後、鱔血文と称される銅系の赤い辰砂釉が全体に施されることで、赤と青の鮮やかな対比を見せています。この赤は、灰などが降りかからないように焼成時に作品一つずつを覆う「匣鉢」の内側に辰砂釉を塗り、銅の揮発する性質を応用して、器胎に赤みをつけたものです。

三彩双魚文瓶子
河井寬次郎
大正11年(1922年)
本作は、中国・唐時代に制作された三彩を手本としたもので、丸みを帯びた張りのある形に小さな口と四つの耳が付き、別に型で成形された2匹の魚の模様が胴部に貼り付けられています。唐三彩は、中国で20世紀初頭に行われた鉄道工事に伴って大量に出土したことから研究が進み、美術品としての価値も高まったものですが、河井は唐三彩の再発見からそれほど間をおかない時期に、高度に三彩の釉薬を使いこなしていることがわかります。

黄釉筒描花鳥文扁壺
河井寬次郎
昭和27年(1952年)
この作品で用いられている装飾技法は筒描と呼ばれるものです。はじめにスポイトのような道具で、粘土を溶かした泥しょうを絞り出して模様を描き、次に盛り上がった模様の輪郭線の内側を釉薬で面的に色分けします。この技法によって、河井の具象的かつ幻想的な花鳥模様が、生き生きとのびやかに表現されています。くすんだ黄色の地と、透明感のある多色の釉薬との対比が心地よい、河井の代表作の一つです。

三色打薬扁壺
河井寬次郎
昭和37年(1962年)
工業機械の部品などを参考に型成形された三つの面から成る変形の壺で、銀杏の葉形の口部から胴部にかけてなだらかに膨らみ、その膨らみが脚部に向かって急にすぼまっていきます。不安定と安定の間にある器形の絶妙なバランスに呼応するかのように、鮮やかな三色の釉薬が打ち付けられています。日本各地の窯業地で使われてきた装飾技法と当時の流行である抽象表現主義との関係もうかがえます。