主な展示作品
主な展示作品

時計
昭和31年(1956年)
京都国立近代美術館蔵
(写真:TADAYUKI MINAMOTO)
高さ40cm 幅34cm 奥行き10cm
本作は、1956年の日本美術院展で発表され、翌年に開催された第4回サンパウロ・ビエンナーレにも出品されました。
胴部の中心に大きく空いた円筒形の空洞には、くさび形のモチーフが多数取り付けられ、時計の針の動きが表現されています。そしてその周囲にはクランクや歯車を連想させる大小のモチーフが配置され、作品全体にリズム感を与えています。また、中空構造の複雑な形態からは、しっかりと素材の特性を理解し、造形に結びつけている様子がうかがえます。

寒山
昭和33年(1958年)
鳥取県立博物館蔵
(写真:TADAYUKI MINAMOTO)
高さ112cm 幅84cm 奥行き28cm
第29回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品された7作品のうちの一つです。作品タイトルの寒山は中国・唐代の僧の名で、しばしば禅画の画題として取り上げられ、経巻を手にした様子が描かれます。本作もその慣例に倣い、経巻を両手で広げる様子が表されています。 また、その広げた経巻には寒山が詠んだとされる詩が刻まれているのがわかります。自らも禅僧として得度(出家)した辻の世界観が遺憾無く発揮された作品です。

東山にて
昭和37年(1962年)
個人蔵
(写真:TADAYUKI MINAMOTO)
高さ68cm 幅118cm 奥行き15.5cm
辻は初期の作品群を手がけながら、外へ張り出す形は土の性質上、意図しない困難を抱えることに気づきました。そしてこの頃から扁平な形に空間の深まりを表す作風へ転換していきます。本作では壁状の造形に6箇所穴を空け、平面のなかに暗い穴を出現させることで、結果的に立体物としての確固たる量感を獲得しているのがわかります。タイトルの東山は、辻が戦後に活動拠点とした京都・東山のことで、周囲には登り窯が多数存在しました。この環境があったからこそ、数多くの陶彫は生み出されたのです。

緑陰讀書(りょくいんどくしょ)
昭和54年(1979年)
信州高遠美術館蔵
(写真:TADAYUKI MINAMOTO)
高さ17cm 幅48cm 奥行き17cm
環境問題によって京都の登り窯規制が進み、作品が焼けなくなった辻は、しばらく陶彫づくりから離れることになります。ふたたび陶彫を手がけるようになったのは電気窯を導入した昭和49(1974)年のことでした。この頃になると、身近な人物や自身の肖像を題材に、粘土遊びのような小型の作品をつくりました。本作も一見すると簡素なつくりで牧歌的な印象ですが、人の表情や動きを的確に捉えており、辻の造形感覚の鋭さを感じさせます。