主な展示作品
主な展示作品

《志野茶碗》
荒川豊蔵
1957年
東京国立近代美術館蔵
腰部の丸い椀形の器形が、荒川豊蔵が生み出す茶碗の特徴をよく表している。荒川は、長石釉(志野釉)の見どころとして、細かなヒビ割れのような梅花皮や、ほのかに赤く発色する緋色などを大切した。この茶碗では、梅花皮に沿って鉄が滲み出ており、模様のような景色をつくり出している。また、施釉の際の指跡も残されており、制作の様子を窺い知ることもできる。第4回日本伝統工芸展出品作。

《色絵金銀彩四弁花染付風景文字模様壺》
富本憲吉(重要無形文化財「色絵磁器」保持者)
1957年
東京国立近代美術館蔵
胴部に染付で四つの丸の中に文字と絵柄が描かれた轆轤成形の磁器の壺。丸の外側には、植物のテイカカズラをもとにした、四弁花模様が連なっている。富本憲吉は本来五弁ある花びらを四弁の十字形に創作し、連続模様として用いた。模様の地を埋める銀泥には白金が混ぜられ、その上から赤絵の具、金彩・銀彩が施されている。初期の模様「竹林月夜」や後期の模様「白雲悠々」と、金銀彩四弁花を絶妙な配置と彩色で形作った優品である。

《志野茶碗》
鈴木藏(重要無形文化財「志野」保持者)
2019年
個人蔵
口づくりの動きの激しさが、この茶碗を知る上で重要な要素となる。成形は轆轤ではなく、土を板状にしたタタラを貼り合わせている。そして、縦方向の箆削(へらけず)りで抑揚をつけるが、場所によっては段差による凹凸も生まれている。この茶碗では鉄絵の具による絵付け、さらには焼成時による緋色が出ている。成形、絵付け、焼成のそれぞれのプロセスが一体となることで、現時点での鈴木藏の志野茶碗に対する考えが映し出されている。

《染付金魚鉢》
小枝真人
2018年
個人蔵
鉢の見込みに悠々と泳ぐ金魚が目を引く作である。ゆったりとした余白のなかに金魚を描き、豊かな空間と時間を紡ぎ出している。器形は素直な碗形に仕上げられており、見込みが静かな水面を思わせる一方、胴部には水のゆらぎを感じさせる稜線を削り出すことで全体に心地よい動きと緊張感を与えている。染付は多彩な絵付と比較すれば、白い素地に藍のみで描くという簡素な技法であるが、かくも洗練された奥深い世界を見せている。第65回日本伝統工芸展出品作。

《緑釉花器》
鈴木 徹
2019年
個人蔵
作者は緑釉の流れやすい性質を見極めて、現代の表現として確立している。本作ではその流れ落ちた様相を素直に見せるため、質朴な器形が選択されている。また2種類の緑釉の掛け分けによって表面に現れる無数の流紋は、「焼く」という行為が導き出す魅力を感じさせる。胴部中央には節を設けたことで流れ落ちた緑釉が溜まって帯となり、作品全体の印象を引き締める役割を果たしている。第66回日本伝統工芸展出品作。

《Nerikomi Porcelain Sparkle》
室伏英治
2013年
東京国立近代美術館蔵
練込とは、色の違う二つ以上の素地土を交互に重ね合わせたり、練り合わせたりすることで 模様を作る技法。合わせ方や練り方などによって木目や鶉手など複雑な模様ができる。室伏英治は透光性の高い磁土を用いた練込技法を中心に作品を制作しており、本作も一見するとわかりにくいが練込の鉢である。光にかざすと模様が浮かび上がるという不思議な加飾で、螺鈿のように輝いている。