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スペシャルコラム

石田竜生さん

石田竜生さんプロフィール
1983年7月27日富山県生まれ。大学卒業後、作業療法士として老人保健施設で勤務。その後、働きながら大阪よしもとの養成所に通い、フリーのお笑い芸人・舞台俳優としても活動。日本介護エンターテイメント協会を設立し「介護エンターテイナー」と名乗る。日本各地でボランティアやセミナーを開催すると同時にSNSを通じて全国に「介護☓笑い」のテクニックを伝えている。

更新日:2020年6月30日
取材日:2020年5月

作業療法士の資格を持ち、介護施設に勤務しながらお笑い芸人としても活躍している石田竜生(たつき)さん。介護現場を笑いでいっぱいにするために、芸人としての技術と作業療法士の知識を活かし、施設利用者のお年寄りはもちろん施設で働くスタッフにも笑顔になるリハビリ体操のノウハウを届けています。活動のモットーは「人生のラストに笑いと生きがいを」。「介護エンターテイナー」として全国を飛び回る石田さんに、「介護☓笑い」の取り組みを始めたきっかけや、活動に込められた思いをうかがいました。

夢だったお笑い芸人目指し養成所に入学

 高校時代にリハビリの仕事に作業療法士という国家資格があることを知って興味を持ち、卒業時に作業療法士の受験資格を得られる新潟の大学に入学しました。卒業後は資格を取得して、地元の富山県にある老人保健施設に就職しましたが、1年後に大阪に来ました。
 大阪に来た理由は、お笑い芸人になりたかったからです。子どものころからの夢をあきらめきれず、吉本興業の養成所(NSC)に入学しました。厳しい世界だと分かっていたからこそ、お笑い芸人が駄目でもまた働けると思って、作業療法士の資格を取得していたことが背中を押してくれました。NSC卒業後は芸人として定期的な給料が入ってくるわけではないので、作業療法士としてパートで働き、今でもパートは続けています。
 そんな僕にとっての転機は30歳のころ。お笑いの仕事は中途半端。作業療法士もお金を稼ぐためにやっている状態でした。自分を見つめ直し始めていたとき、友人が働いている有料老人ホームでのボランティアを依頼され、作業療法士の知識を活かしたオリジナルの体操をしたところ、それが利用者さんにすごく喜んでいただけてスタッフも大爆笑。これはいろいろな場で応用できるのではないかとひらめきました。介護と笑いを組み合わせて、施設でもっと楽しい体操やレクリエーションの時間をつくりたい!そう思ったことが「介護エンターテイメント」が生まれたきっかけです。

石田竜生さん

お年寄りを笑顔にする「介護エンターテイメント」

 「介護エンターテイメント」は自分の経験と学びが結びついて生まれたノウハウですが、これを発信したいと「介護エンターテイメント協会」を設立。2018年には一般社団法人となり、「人生のラストに笑いと生きがいを」をテーマに、同じ志を持つ仲間を増やそうとセミナー、講演会などを続けています。
 メンバーの中にはものづくりが得意な人もいれば体操が得意な人、ゲームが得意な人もいます。それぞれが得意なことを行い、シェアすることで力を合わせてお年寄りを笑顔にする介護エンターテイメントを広めていきたいです。
 ボランティアや講演会で、スタッフの方から「利用者さんのあんな表情、久しぶりに見た」とか「こんなに動けるとは思わなかった」など言ってもらえるとうれしいです。YouTubeやDVD を通して体操やレクリエーションを紹介しているのですが、講演会に参加してくれた90代の方が「いつもあなたのビデオを見て体操しています」と言ってくださって、そういう反応があると、やっていて良かったと思います。
 しかし、中にはなかなか溶け込んでいただけない方もいらっしゃいます。そういう方たちにどうアプローチをしたらいいのか、経験で学んだノウハウをセミナーやブログでお伝えしています。

石田竜生さん

自分の得意技を生かし、介護を楽しく!

 これまでのべ150か所にボランティアで伺い、講演会は300回くらい行っています。愛知県でも2017年11月「介護の日フェア」で講演させていただきましたが、参加者さんに真剣に耳を傾けていただき、すごく反応が良かった印象が残っています。僕自身が介護現場で仕事を続けていることが強みであると思っているので“現場で自分が苦労したことを伝える”これは今後も大切にしていきたいです。
 高齢社会の今、普通に生活していても介護が必要になることもありますし、企業も「介護」もキーワードにして物事を考えないと企業活動が成り立ちません。広い意味で介護は当たり前のものになり始めています。施設で働くことイコール介護というよりも、生きていく上で必ず必要なことだから学ばないといけない、考えないといけない世の中になっているのではないでしょうか。これから介護は、しんどい仕事というよりも生活の中で当たり前のことだよね、という形に変わっていくと思います。
僕は介護とお笑いをドッキングさせましたが、みんなそれぞれ得意なことがあります。介護の世界に興味を持っている皆さんも、ぜひ自分の得意技や強みを生かし、一緒に介護の仕事を楽しくしていきましょう!

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