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スペシャルコラム

柏崎桃子さん

柏崎桃子さんプロフィール
1979年栃木県生まれ。高校在学中に妊娠し18歳で長男を出産。24歳で離婚を経験する。26歳でヘルパー2級(当時)、30歳で介護福祉士の資格を取得後、2015年に芸人を目指し上京。「ポッチャリすぎるシングルマザー芸人・ももち」として注目を集め、17年には書籍「どすこい!!ももち日和〜芸人母と、発達障がいの息子の奮闘記」を出版。自身の公式ブログが1日300万回閲覧を記録する。現在も介護関連の仕事を続けながらテレビ、講演会などで活躍中。

更新日:2021年6月
取材日:2021年5月25日

介護の仕事を続けながら、シングルマザー兼お笑い芸人と3足のわらじを履く柏崎桃子さん。軽度の発達障害がある長男のために学びが必要だと考えたことが介護職に興味を持ったきっかけでした。一時は他の職業に就いたものの介護の仕事に戻ったのは、その楽しさが忘れられなかったから。芸人活動を始めた理由も、有名になれば介護職の魅力を発信できるという思いがあるからです。何がそんなに柏崎さんを引きつけるのか。介護職の魅力についてうかがいました。

きっかけは“食べていくため”シングルマザーから介護職員へ

 私は軽度の発達障害がある息子がいます。息子がまだ小さなころ偏見の目で見られるたびに、自分が福祉のことを理解して説明できるようにしないといけないという思いがありました。おまけに離婚してシングルマザーとなり、親子2人で食べていかなくてはなりません。でも何をどう学べばいいのか?考えた末、いち早く学び、働けると思ったのが介護でした。
 まずヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取りに行きました。何から始めればいいのか悩んでいたときに、ポストにチラシが入っていたんです。自分にできるか不安でしたし、生活費を削ってまで資格を取る価値があるのかどうかも分かりませんでした。しかし、実家の祖母が認知症で、夜中に騒ぎ出して家族の生活が立ち行かなくなり、精神科の病院に入院させた辛い思い出があったことも背中を押してくれました。入院中の祖母を見舞っても、遠い目で外を見ている。すごく切なかった。亡くなった後も、自分に知識があったらもっと幸せな生活ができたんじゃないかって思っていました。

柏崎桃子さん

介護職員と利用者というより人間同士の関わり合いが好き

 資格を取った後、デイサービスで働き始めました。働き始めて2週間くらい経ったころ、何も教わらないまま、ある利用者さんの排泄介助を任されました。そのとき、自分自身でパニックになってしまうんじゃないかと心配したのですが、そうはならなかった。この人をきれいにしてあげなくちゃって思えたんです。送り迎えのときにその利用者さんのご家族とも会っていました。その方たちにも、このデイサービスに来て良かったと思ってもらえるようにしなければって思ったんです。
 慣れない仕事をしながら子育てとの両立で悩み、へこむことも多い中、利用者さんと一緒のときは本当に癒やされました。たとえ認知症があっても人生の先輩です。こちらが悩んでいる顔をしていると「元気ないね」って声を掛けてくれたり、話を聞いてくれる。利用者さんが笑わせてくれることもたくさんありました。スタッフと利用者というより、人間同士の関わりがすごく楽しくて、好きでした。
 結局、最初に働いた事業所は2か月で退職し、工場で働き始めました。それでもまた介護の仕事に戻ってきたのは、たまたまこの事業所が自分に合わなかっただけなんじゃないかと思ったからです。介護の仕事自体は100%好きでしたので、ハローワークで紹介してもらったデイサービスで再び働き始めました。

柏崎桃子さん

芸人になったのもダイエットも介護の魅力を伝える発信力強化のため

 介護の仕事は、介護職員が一方的にやってあげていると思うかもしれませんが、そうではありません。利用者さんは私の悩みに耳を傾け、頑張っているところを見てくれていて「よく働くなあ」と励ましてくれました。私たちが見ているようで、実は見てくれているのです。
 これまでデイサービス以外にも特養、有料老人ホーム、障害者の方のグループホーム、そしてデイサービス事業所の施設長を務め、医療・介護系の専門学校で1年間講師をやらせていただきました。今は介護関連の会社で介護職の方の相談に乗ったり、セミナーを開催したりしています。現場から2年くらい離れているので恋しくてたまらないです。
 介護の楽しさややりがいを、今後はもっと多くの人に伝えていけたらと思っています。そもそも芸人になったのも、ダイエットを頑張って自分に自信を持ちたい!と思っているのも、発信力を高めたいからです。そして、介護職に就きたいという人に対して胸を張って『介護は楽しいよ!』と教えたい。そう考えるとやはり実践できる場所があるといいですね。そして、今の自分を変えたい。いつか利用者さんとスタッフさんが笑顔で過ごせる施設を作りたい…。そのために努力を続けます。

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