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水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験の実施結果について
2024年7月23日(火曜日)発表
水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験の実施結果について
伊勢湾・三河湾では、これまでの排水規制により水質が改善されていますが、一方で漁業生産に必要な栄養塩の不足によるノリやアサリへの影響が指摘されています。
このため、愛知県では2022年度から2年間、三河湾沿岸2か所の浄化センターで放流水中の窒素とリンの濃度を増加させ、環境への影響やノリ、アサリへの効果を調査する「水質の保全と『豊かな海』の両立に向けた社会実験」を実施してきました(2022年10月25日発表済み)。
この度、2か年の実施結果を第4回愛知県栄養塩管理検討会議(6月27日開催)において検証し、下記のとおりとりまとめましたのでお知らせします。
1 社会実験の概要
(1)実施施設
愛知県矢作川浄化センター(西尾市港町1番地)
愛知県豊川浄化センター(豊橋市新西浜町1番3)
(2)実施期間
2022年11月から2023年3月まで(2022年度)
2023年9月から2024年3月まで(2023年度)
(3)実施内容
実施施設における放流水中の窒素・リン濃度の上限(窒素:10mg/L、リン:1mg/L)を、国の規制値上限(窒素:20mg/L、リン:2mg/L)まで緩和し、窒素・リン濃度を増加させる試験運転を実施しました。
なお、2017年度から2021年度までは、リンのみ従前の規制値上限まで増加させたリン増加試験運転を実施しています。
2 社会実験の実施結果
(1)環境への影響
社会実験の中断条件とした、浄化センター放流口近傍の水質モニタリング地点での顕著な窒素・リン濃度の上昇や極度の赤潮の発生は確認されず、環境への悪影響は見られませんでした。
(2)ノリ、アサリへの効果
【ノリの色調】
2022年度のノリの色調(L*値:色が黒く良いノリほど値が小さい)は良好であり、2023年度のノリの色調でも浄化センター放流口に近い調査地点(YN-1)で色調が良好でした。また、社会実験期間中はL*値の最大値が低くなっており、ノリの色落ちが軽減されたと考えられます。
【アサリ現存量(面積当たりの生息量)の推移】
9月からリン増加試験運転を行った2020年度以降、社会実験期間までを通じて、秋冬期における稚貝の減少が軽減され、どの地点でも現存量は高い水準となりました。一方、現存量の増加に伴い、春から夏の肥満度の低下が認められ、資源回復には現存量と肥満度の維持の両立が必要と考えられます。
【数値シミュレーションによる効果把握】
数値シミュレーションを用いて、社会実験の実施による各水質項目の増加範囲を算出したところ、増加した栄養塩(全窒素・全リン)や餌料(クロロフィルa)がノリ・アサリ漁場へ供給されていることが確認されました。
3 今後について
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極度の赤潮など環境への悪影響は見られず、ノリ及びアサリへの効果が認められたことから、2027年度まで社会実験を継続する予定です。(毎年9月から翌年3月まで)
4 その他
社会実験の結果の詳細については、以下の県水産課Webページで公表しています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/suisan/eiyouenkaigi-top.html
参考
1 漁業の状況
○社会実験を行った2か年(2022年度、2023年度)は、過去5年間(2017~2021年度)に比べ良質なノリが長期間出荷されました。
○1日1隻あたりのアサリの漁獲量(CPUE)は、2種類の漁法 (小型底びき網、腰まんが)とも増加傾向となっています。
※腰まんが漁法:ツメ付きカゴで海底を掻いてアサリを漁獲する漁法(下記写真を参考)
2 三河湾の窒素・リンの現状
〇全窒素・全リン濃度は、経年的に減少傾向にあります。
図3 三河湾の全窒素・全リン濃度の推移(公共用水域水質調査結果より)
3 海域における「栄養塩」とは
○植物の生育に欠かせない海水中の溶存物質で、特に窒素やリンが重要です。
○栄養塩が少ないとノリの色落ちや、二枚貝類などの餌となる植物プランクトン不足が生じ、アサリが生き残りにくくなることなどが起きます。
○高度成長期は「富栄養化」が問題となりましたが、現在では「貧栄養化」が指摘されています。
図4 色落ちしたノリ(右) 図5 餌不足で痩せたアサリ(右)
3 愛知県栄養塩管理検討会議について
(1)目的
2022年度から2年間実施される「水質の保全と『豊かな海』の両立に向けた社会実験」の結果を検証し、その結果を踏まえた今後の方向性を検討するとともに、海域ごとの漁業生産に必要な栄養塩濃度の提案や管理方策など、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理のあり方を検討することを目的としています。
(2)概要
○ 設置時期:2022年9月
○ 構成員
委員
・学識経験者(環境、水産関係4名)
・漁業関係者1名
・県(農業水産局、環境局、建設局)
・市町(豊橋市、西尾市、田原市、南知多町)
特別委員
・国関係機関(環境省、水産庁、国土交通省中部地方整備局)
・特別委員は検討項目に関する助言又は協力を行います。
(3)開催状況
○ 第1回愛知県栄養塩管理検討会議
開催日 :2022年10月24日
主な議題:社会実験の実施方法及び検証方法について
〇 第2回愛知県栄養塩管理検討会議
開催日 :2023年 6月26日
主な議題:2022年度水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験
の実施結果について
○ 第3回愛知県栄養塩管理検討会議
開催日 :2024年 2月9日
主な議題:2023年度水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験
の中間報告と漁業生産に必要な栄養塩濃度について
○ 第4回愛知県栄養塩管理検討会議
開催日 :2024年 6月27日
主な議題:水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験の結果と
望ましい栄養塩管理のあり方について
このページに関する問合せ先
愛知県 農業水産局 水産課
企画・環境グループ
担当:堀木、日比野
電話:052-954-6458
内線:3783、3784
メール:suisan@pref.aichi.lg.jp
愛知県水産試験場
企画普及グループ
担当:原、能嶋
電話:0533-68-5196
メール:suisanshiken@pref.aichi.lg.jp
愛知県 環境局 環境政策部 水大気環境課
調整・計画グループ
担当:中原、木佐
電話:052-954-6221
内線:3044、3059
メール:mizutaiki@pref.aichi.lg.jp
愛知県 建設局 上下水道課指導管理室
下水道管理グループ
担当:橘田、松岡
電話:052-954-6463
内線:2716、2714
メール:jogesuido@pref.aichi.lg.jp