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「災害時におけるボランティアの受入体制とネットワーク化に関する報告書」
「災害時におけるボランティアの受入体制とネットワーク化に関する報告書」
阪神・淡路大震災でのボランティアの実態
1 ボランティア活動の実態
(1) 発災後の時間経過に伴うボランティア活動内容の推移
ア 発災後一両日の初動段階
・消火活動、生き埋めになった人々の救出、災害弱者の避難の支援等
・発災直後のボランティア活動に従事したのは、自らも被災した地域内住民と日本赤十字社(以下「日赤」という。)などの一部の専門ボランティアで あった。
イ 発災後数日間(概ね数日から1週間程度)の段階
・救援物資の運搬、炊き出し、水汲み、ボランティアの受入れ等
・行政による対応がまだまだ混乱している中で、ボランティアの受入れなどの大量の要員を必要とする作業については、数多くのボランティアが援助することで支えられた。
・救援物資の運搬等の作業は、これまで活動経験のないボランティアでも容易に従事できるものであったことから、数多くのボランティアが大きな力と なった。
・この時期からボランティアが集中して参集してくると考えられるため、発災後速やかに大量のボランティア希望者の受入れを円滑に行えるようにすることが重要である。
ウ 概ね1週間以上経過した段階
・入浴サービス、理容サービス、建物危険度の判定、広報紙の配付等
・被災者の個別ニーズに応じた支援が行われた。ボランティアの自由さと多彩さが、行政では必ずしも十分に対応できない個別ニーズに応じた支援を提供することを可能にした。
エ 概ね1か月を経過した段階
・被災家屋の片付け、家財道具の運搬、仮設住宅への支援、まちづくり 協議への参加、被災者のメンタル・ケア等
・まちづくり協議への参加には都市計画等の、被災者のメンタル・ケア には精神科医等の専門ボランティアの役割が相対的に大きくなった。
オ さらに時間が経過した段階
・継続的な取り組みが必要になってくるので、活動主体がボランティア から社会福祉協議会(以下「社協」という。)や自治体などに移行する。
・ボランティアは撤収をすべき時期になる。
阪神・淡路大震災におけるボランティア活動の参加数と活動内容のイメージ
(2) 参加したボランティアの特徴
ア 地域内ボランティアと外部ボランティア
イ 専門ボランティアと一般ボランティア
2 ボランティアの受入れの実態
3 阪神・淡路大震災におけるボランティア受入体制の課題
大規模災害発生直後は、被災地の行政だけで被災住民の支援を行うことは人的・物的にも限界を超えている。このような状況の中で被災地の速やかな自立や復興を進めるためには、公平を原理とする行政と自由で多彩な対応ができるボランティアとが、相互の活動原理の相違を認識しながら相互の協力関係のもとで被災者を支援することが極めて重要であることがわかった。
ところが、阪神・淡路大震災においては、多くのボランティアは、これまでボランティア活動をしたことはなく、どこで何をすればよいか不明のまま窓口を訪れた者が多かった。他方で、各地のボランティア受入窓口では、殺到するボランティアを登録する作業に忙殺されたことにより、結果的に多くのボランティアが指示待ち状態となり、ボランティア活動に結び付かないということが発生した。
そこで、以上のような阪神・淡路大震災におけるボランティアの受入れなどの実態から、ボランティアの受入体制の課題として次のような点が指摘できる。
(1) 総合的に連携のとれた活動体制
(2) ボランティア活動の自発性や事態への即応性を活かす自律的体制
(3) 現地における活動管理機能の充実
4 阪神・淡路大震災におけるボランティアのネットワーク化の課題
このことから、ボランティアのネットワーク化の課題として次のような点が指摘できる。
(1) ボランティア、住民、社協、行政の連携
(2) 地域住民の相互の助け合いの意識の醸成
(3) 実践的な訓練・研修の実施
災害時におけるボランティアの受入体制
1 受入体制づくりの基本的考え方
特に、阪神・淡路大震災では市役所を目指して多くのボランティアが集まったことから、ボランティアを支援することに徹するコーディーネーターを各市町村に配置できるように努め、さらに大規模災害発生後に速やかにボランティア支援本部を開設できるようにする必要がある。
2 具体的な対策を進めるための提言
県 | 市町村 | |
---|---|---|
(1) | 広域ボランティア支援本部 | 地域ボランティア支援本部 |
(2) | 広域コーディネーター | 地域コーディネーター |
(3) | 広域協力団体 | 地域協力団体 |
(1) 災害時のボランティア支援本部の設置
県及び市町村は、広域(地域)ボランティア支援本部に必要な資機材等を用意する必要がある。
(2) コーディネーターの配置
広域コーディネーターは、全体的な情報提供や後方支援等を行う。
地域コーディネーターは、ボランティアの受入れを行う。
(3) 協力団体の区分と役割
広域協力団体は、広域コーディネーターを派遣する。
地域協力団体は、地域コーディネーターを派遣する。
市町村は、地域協力団体の協力を得て、各団体ごとに派遣できるコーディネーターを予め確保しておく必要がある。
ボランティア受入システムをイメージ化したものです。
平常時からのボランティアのネットワーク化
1 ネットワーク化の基本的考え方
このため、県・市町村はボランティア間のネットワーク化を進めるととも に、県民のボランティア活動への参加意識を高め、災害時のボランティア活動において核となる人材であるコーディネーターの養成と相互の連携を推進する必要がある。
2 具体的な対策を進めるための提言
(1) ボランティアリーダー防災連絡会等の開催
(2) シンポジウム等の開催
(3) 普及・啓発(キャンペーン)
(4) コーディネーター希望者等の研修
ア 広域コーディネーター派遣予定者研修
イ 地域コーディネーター希望者研修
ウ 各市町村・防災関係機関担当者研修