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「災害時におけるボランティアの受入体制とネットワーク化に関する報告書」

ページID:0012812 掲載日:2009年1月29日更新 印刷ページ表示

「災害時におけるボランティアの受入体制とネットワーク化に関する報告書」

 阪神・淡路大震災におけるボランティアのめざましい活躍は、極めて意義のある画期的なできごとでした。県は、阪神・淡路大震災におけるボランティアの実態などに即して研究を行い、これらを踏まえて、平成8年3月に災害時におけるボランティアの受入体制などについて報告書を発表しました。その概要は次のとおりです。

阪神・淡路大震災でのボランティアの実態

1 ボランティア活動の実態

 被災地で活動を行ったボランティアの人数は、発災直後1か月で1日平均 2万人という多数に及んだばかりでなく、ボランティア活動の内容も多岐にわたり、また発災直後からの時間の経過に伴って活動内容も大きく変化していった。

(1) 発災後の時間経過に伴うボランティア活動内容の推移

 地震発生後の時間経過ごとに、ボランティア活動内容の特徴を概観している。

ア 発災後一両日の初動段階

・消火活動、生き埋めになった人々の救出、災害弱者の避難の支援等

・発災直後のボランティア活動に従事したのは、自らも被災した地域内住民と日本赤十字社(以下「日赤」という。)などの一部の専門ボランティアで あった。

イ 発災後数日間(概ね数日から1週間程度)の段階

・救援物資の運搬、炊き出し、水汲み、ボランティアの受入れ等

・行政による対応がまだまだ混乱している中で、ボランティアの受入れなどの大量の要員を必要とする作業については、数多くのボランティアが援助することで支えられた。

・救援物資の運搬等の作業は、これまで活動経験のないボランティアでも容易に従事できるものであったことから、数多くのボランティアが大きな力と なった。

・この時期からボランティアが集中して参集してくると考えられるため、発災後速やかに大量のボランティア希望者の受入れを円滑に行えるようにすることが重要である。

ウ 概ね1週間以上経過した段階

・入浴サービス、理容サービス、建物危険度の判定、広報紙の配付等

・被災者の個別ニーズに応じた支援が行われた。ボランティアの自由さと多彩さが、行政では必ずしも十分に対応できない個別ニーズに応じた支援を提供することを可能にした。

エ 概ね1か月を経過した段階

・被災家屋の片付け、家財道具の運搬、仮設住宅への支援、まちづくり 協議への参加、被災者のメンタル・ケア等

・まちづくり協議への参加には都市計画等の、被災者のメンタル・ケア には精神科医等の専門ボランティアの役割が相対的に大きくなった。

オ さらに時間が経過した段階

・継続的な取り組みが必要になってくるので、活動主体がボランティア から社会福祉協議会(以下「社協」という。)や自治体などに移行する。

・ボランティアは撤収をすべき時期になる。

阪神・淡路大震災におけるボランティア活動の推移イメージ

阪神・淡路大震災におけるボランティア活動の参加数と活動内容のイメージ

(2) 参加したボランティアの特徴

ア 地域内ボランティアと外部ボランティア

  ボランティア活動を行った人がどこから駆けつけたかを見ると、県内のボランティアは約3分の2であった。

イ 専門ボランティアと一般ボランティア

  これまで、ボランティア団体に所属したこ とやボランティア活動を行ったことがない一般ボランティアが多く参加した。

2 ボランティアの受入れの実態

  阪神・淡路大震災で被災した市町村においては、全国から駆けつけた大量 のボランティアが希望する活動と、被災者の多種多様な支援要請との調整がうまくできなかった市町村もあれば、より良い受入れのしくみへと次第に発展させていくことができた市町村もあった。

3 阪神・淡路大震災におけるボランティア受入体制の課題

 大規模災害発生直後は、被災地の行政だけで被災住民の支援を行うことは人的・物的にも限界を超えている。このような状況の中で被災地の速やかな自立や復興を進めるためには、公平を原理とする行政と自由で多彩な対応ができるボランティアとが、相互の活動原理の相違を認識しながら相互の協力関係のもとで被災者を支援することが極めて重要であることがわかった。
 ところが、阪神・淡路大震災においては、多くのボランティアは、これまでボランティア活動をしたことはなく、どこで何をすればよいか不明のまま窓口を訪れた者が多かった。他方で、各地のボランティア受入窓口では、殺到するボランティアを登録する作業に忙殺されたことにより、結果的に多くのボランティアが指示待ち状態となり、ボランティア活動に結び付かないということが発生した。
 そこで、以上のような阪神・淡路大震災におけるボランティアの受入れなどの実態から、ボランティアの受入体制の課題として次のような点が指摘できる。

(1) 総合的に連携のとれた活動体制

(2) ボランティア活動の自発性や事態への即応性を活かす自律的体制

(3) 現地における活動管理機能の充実

4 阪神・淡路大震災におけるボランティアのネットワーク化の課題

 阪神・淡路大震災では、長期にわたり多数のボランティアが窓口に殺到した。大量のボランティアを継続的に受入れるためには、多くのボランティア団体との間でのスタッフの派遣などの人的・物的応援協力関係が不可欠である。そのためには、日常的な各ボランティア団体のネットワーク化が必要である。
 このことから、ボランティアのネットワーク化の課題として次のような点が指摘できる。

(1) ボランティア、住民、社協、行政の連携
(2) 地域住民の相互の助け合いの意識の醸成
(3) 実践的な訓練・研修の実施

災害時におけるボランティアの受入体制

1 受入体制づくりの基本的考え方

 ボランティアの受入れは、被災地の多種多様な支援要請と、どこに、どのように、自分が活動できる被災地の支援要請があるのかわからないボランティアとを結びつけることである。このため、両者を結び付ける場所と、両者の要望を速やかに調整する専門的なボランティア(コーディーネーター)の確保が不可欠である。
 特に、阪神・淡路大震災では市役所を目指して多くのボランティアが集まったことから、ボランティアを支援することに徹するコーディーネーターを各市町村に配置できるように努め、さらに大規模災害発生後に速やかにボランティア支援本部を開設できるようにする必要がある。

2 具体的な対策を進めるための提言

次の三つについて提言する。
  県 市町村
 (1) 広域ボランティア支援本部地域ボランティア支援本部 
 (2) 広域コーディネーター 地域コーディネーター
 (3) 広域協力団体 地域協力団体

(1) 災害時のボランティア支援本部の設置

 大規模災害が発生したときに、県災害対策本部に広域ボランティア支援本部を、被災した市町村災害対策本部に地域ボランティア支援本部を設置する。
 県及び市町村は、広域(地域)ボランティア支援本部に必要な資機材等を用意する必要がある。

(2) コーディネーターの配置

 県は広域ボランティア支援本部に広域コーディネーターを、市町村は地域ボランティア支援本部に地域コーディネーターを配置する。コーディネーターは県又は市町村災害対策本部の職員と共同しながら、自律的にボランティアの支援を行う。
 広域コーディネーターは、全体的な情報提供や後方支援等を行う。
 地域コーディネーターは、ボランティアの受入れを行う。

(3) 協力団体の区分と役割

 県下にあるボランティア団体のうち、コーディネーターの派遣等の協力を得られる団体を、その規模、活動区域などにより、広域協力団体と地域協力団体に区分する。
 広域協力団体は、広域コーディネーターを派遣する。
 地域協力団体は、地域コーディネーターを派遣する。
 市町村は、地域協力団体の協力を得て、各団体ごとに派遣できるコーディネーターを予め確保しておく必要がある。
ボランティア受入システムの全体イメージ

ボランティア受入システムをイメージ化したものです。

平常時からのボランティアのネットワーク化

1 ネットワーク化の基本的考え方

 災害時においては、ボランティア活動は、多くの分野で同時に効率的かつ機動的に行わなければならないので、各種のボランティア団体相互における補完関係が必要である。また、大量のボランティアを迅速に受入れるためには、多くのボランティア団体との間でのスタッフの派遣などの人的・物的応援協力関係が不可欠である。そのためには、日常的な各ボランティア団体のネットワークが必要である。
 このため、県・市町村はボランティア間のネットワーク化を進めるととも に、県民のボランティア活動への参加意識を高め、災害時のボランティア活動において核となる人材であるコーディネーターの養成と相互の連携を推進する必要がある。

2 具体的な対策を進めるための提言

(1) ボランティアリーダー防災連絡会等の開催

 ボランティア団体や行政担当者等の災害時の連絡体制づくりなどについて意見交換を行うボランティアリーダー防災連絡会を開催する必要がある。また、協力団体のリーダー等にも研修会を開催する必要がある。

(2) シンポジウム等の開催

 一般県民を対象にシンポジウム等を開催し、防災についての啓発を兼ね て情報発信、参加協力の呼びかけを行う必要がある。

(3) 普及・啓発(キャンペーン)

 ボランティア参加の意識や活動を定着するために日常的にボランティア活動を見えやすくするための工夫が必要である。このため、コーディネーターの意識啓発、希望者の拡大のためにスタッフジャンパー等のキャンペーン事業を実施する必要がある。

(4) コーディネーター希望者等の研修

 コーディネーター希望者等に対して、受入れやネットワーク化などにつ いて、研修を実施する必要がある。
ア 広域コーディネーター派遣予定者研修
イ 地域コーディネーター希望者研修
ウ 各市町村・防災関係機関担当者研修

(5) その他の環境整備

 ボランティア団体の法人格の取得や税制上の優遇措置等、ボランティア休暇・休職制度の働きかけ、ボランティアを取り巻く被害救済制度の整備を関係機関に働きかける必要がある。

問合せ

愛知県 防災局 防災危機管理課

E-mail: bosai@pref.aichi.lg.jp