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愛知芸術文化センター及び愛知県陶磁美術館の活性化に向けたアイデア募集の結果概要等について
1 趣旨・目的
愛知芸術文化センター(栄施設)(以下、「芸文センター」という。)は、名古屋市の中心部である栄に位置する、美術館、芸術劇場等からなる国内有数の大規模な複合施設であり、本県における文化芸術施策を展開する拠点施設として広く県民に親しまれている。
また、愛知県陶磁美術館(以下、「陶磁美術館」という。)は、広大な緑地の中に、昭和期の著名な建築家である谷口吉郎氏が設計した建物が配置され、国内屈指の陶磁専門ミュージアムとして、日本やアジアを始めとする世界各地の様々なやきものの魅力を紹介している。
一方で、芸文センターは、その立地を生かした施設一体としての集客力の強化や建物全体の空間の有効活用に課題を抱えている。また、陶磁美術館は、レストラン、茶室、ミュージアムショップといったサービス施設が撤退するなど、建物や広大な敷地といったポテンシャルを生かした事業展開に課題を抱えている。
そこで、芸文センター及び陶磁美術館の施設や空間・敷地を活用した活性化の手法について、柔軟な発想やアイデアを持つ民間事業者等の皆様から、施設活性化が図られる事業アイデアを提案していただき、今後の施設活用について具体化していく際の参考とすることとした。
2 アイデア募集及びヒアリングについて
(1) 実施方針
芸文センターは、芸術文化の振興及び普及を図るために設置した施設である(芸文センター条例(平成3年愛知県条例第2号))第1条第1項)。また、陶磁美術館は、陶磁文化の振興及び陶磁器に関する文化財の保存並びに住民の陶芸に対する教養の向上を図り、併せて陶磁器産業の発展に寄与するために設置した施設である(陶磁美術館条例(昭和53年愛知県条例7号)第1条)。
今回のアイデア募集は、両施設の設置目的に沿った事業案であることが望ましいとしながらも、施設の活性化による集客力の強化や賑わいの創出が図られるアイデアを幅広くお聞きするため、設置目的から離れたアイデア提案を含め、制約は設けないこととした。
(2) アイデア提案の対象範囲
芸文センターは、愛知県美術館(美術館ギャラリーを含む)及び愛知県芸術劇場(リハーサル室等を含む)を除いた部分とした。また、陶磁美術館は、展示室を除いた部分とした。
提案にあたっては、芸文センターについては建物全体を、陶磁美術館については敷地全体を、どのようなコンセプトの施設にしたいか、イメージをお聞きした。各区画の利用だけでなく、通路や吹き抜け、壁面などを含めた、全体的な空間活用によるアイデアについても積極的な提案を募集した。
(3) 実施方法
プロポーザルにより選定・契約した委託事業者のネットワークを活用し、委託事業者からの指名により実施する「依頼型ヒアリング」と、公募によりアイデア提案をいただいた事業者に実施する「公募型ヒアリング」を並行して行った。ヒアリングは対話形式とした。
なお、「依頼型ヒアリング」については、ヒアリングを実施後にアイデア提案書を受領し、「公募型ヒアリング」については、アイデア提案書を受領後にヒアリングを実施した。
【依頼型ヒアリング】
実施期間:2022年7月20日(水曜日)~2023年2月13日(月曜日)
実施方法:対面又はwebによる
ヒアリング事業者数:14者(芸文センター9者、陶磁美術館10者)[※]
【公募型ヒアリング】
実施期間:2022年11月7日(月曜日)~2022年12月23日(金曜日)
実施方法:対面又はwebによる
ヒアリング事業者数:7者(芸文センター7者、陶磁美術館4者)[※]
[※]1者で両施設のヒアリングを実施した場合があるため、計は一致しない。
3 実施結果
(1) ヒアリングを行った事業者数(2(3)の再掲)
計21者 【内訳】芸文センター16者、陶磁美術館14者
(2) アイデア提案をいただいた事業者数
計17者 【内訳】芸文センター15者、陶磁美術館7者
(3) ヒアリングによりいただいた主な現状認識(イメージ)
ア 芸文センター
○ 芸文センターのペデストリアンデッキを活用したい。
○ アートライブラリーを改変したら面白そう。
○ 栄地区に不足しているコワーキングスペースに活用できそう。
○ 栄地区の豊富な人流を引き込むことができれば、すでにある優良なコンテンツをさらに発信できるポテンシャルがある。
○ 建物が堅牢すぎて、根本的に雰囲気を変えるのは困難。
○ ポップカルチャーもターゲットとし、今まで来場していなかった層との接点を持つべき。
○ 動線がありすぎて、メイン動線が分からないので、その改善を図るべき。
○ オアシス21緑の大地からペデストリアンデッキでつながっているのに、雰囲気に差があるため空間的なつながりを感じない。オアシス21との距離を感じる。
○ 「知らない」「行ったことがない」人たちへの発信が課題。
○ 役所のような外観で、施設に目的のない人は近寄りがたい。
○ 「知っている人」しか近付けない雰囲気を施設全体から感じる。
○ 日常的に訪れたいと思える雰囲気がないので、気軽に立ち寄れる施設にしたい。
○ 美術館と劇場の存在感が大きすぎて、他のスペースへ目が向かない。
○ 空間が複合的だが、コンセプトを掲げ共感するヒトを囲い込むことが大事。
○ 多数の公演や展示を行っているが、現在の用途が限定的で、基本的には興味関心がある人が訪れる施設。働く人や学ぶ人、芸術文化と接点のない多くの一般県民が訪れる機会を生み出せていない。
○ 芸術が詰まったハコなのに、まちと分断されている。もっと、芸術が染み出してほしい。
○ 無機質なハコ。薄暗く古い印象。
○ 威風堂々な外観とはまた違った柔らかい中身づくりが重要。
○ 立地は抜群だが、周辺の賑やかさを日常的に取り込めていない。
○ 館のネーミングが重いので、変えたほうがいい。
イ 陶磁美術館
○ 建物の雰囲気が非常に良い。
○ ジブリパークや近隣人気商業施設との連携や動線確保ができれば、新たな需要が生まれるポテンシャルがある。
○ 2023年6月19日から2024年度末まで行われる改修工事に伴う休館期間終了後のリニューアルオープン時に、変わっている様子を見せたい。
○ ショップやレストランへの単体での出店は採算が取れない。館内で、ある程度の採算が取れる事業を実施し、その付随として出店する方法が考えられる。
○ 施設も大事だが、ブランディングも大事である。
○ 公式ウェブサイトは改善の余地がある。
○ 広い敷地を持て余しており、手入れが十分に行き届いていない。
○ 展示方法が「昔ながら」の仕方である。
○ 運営側の「このままでいいや」精神を感じてしまう。
※非公表を前提に提案をいただいているため、具体的なアイデアを掲載することはできないが、構想レベルにとどまらない、自社参画を前提とした前向きかつ具体的な提案を、両施設ともいただくことができた。
4 今後の展開
前述のとおり、具体的な参画意向を含んだ活用アイデアが複数提案され、民間事業者の参画可能性が十分に見込まれることから、2023年度以降、本格実施に向けた具体的な検討を進めることを予定している。
まずは、公募により選定した民間事業者に、実際に現地で実験的に事業を実施していただき、事業完了後、事業実施者へのヒアリング等を通し、実績や課題の分析、施設上・運営上の改善要望、事業実施者にとって魅力的に感じた点などを調査する。これにより、事業の採算性や文化施設の活性化に寄与しているかどうかの検証を行い、今後、県が両施設において民間による活性化事業を本格実施する場合の課題を整理していくことを想定している。
<参考>2施設の概要
施設名称 |
愛知芸術文化センター(栄施設) |
愛知県陶磁美術館 |
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外観 |
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住所 |
愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 |
愛知県瀬戸市南山口町234 |
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建物諸元 |
鉄筋鉄骨コンクリート造 地上12階地下5階建(一部鉄骨造) |
鉄筋鉄骨コンクリート造 地上3階 地下1階【※本館のみ記載】 |
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築年 |
1992年(平成4年) |
1978年(昭和53年) |
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敷地面積 |
18,173.11平方メートル |
280,480.47平方メートル |
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延床面積 |
109,062.07平方メートル |
20,968.60平方メートル |
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都市計画 |
都市計画公園区域 |
市街化調整区域 |
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用途地域 |
商業地域 |
指定なし |
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その他の 制限 |
準防火地域(一部防火地域) 名古屋市駐車場条例による整備区域に準ずる区域 |
森林地域あり 砂防指定地 |
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既存機能 |
美術館(博物館相当施設)、芸術劇場、 図書室、貸会議室等 |
博物館相当施設 |
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設置根拠 |
愛知芸術文化センター条例 地方自治法第244条に基づく公の施設 |
愛知県陶磁美術館条例 地方自治法第244条に基づく公の施設 |
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財産 区分 |
建物 |
行政財産(所有者:愛知県) |
行政財産(所有者:愛知県) |
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土地 |
名古屋市が所有 |
行政財産(所有者:愛知県) |
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運営形態 |
指定管理(美術館は県直営) |
県直営 |
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位置図 |