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環境局環境政策部自然環境課の事業内容
1 あいち生物多様性戦略2030の推進について
県では、令和12年度までに取り組む生物多様性保全の施策の方向性を示す「あいち生物多様性戦略2030」を令和3年2月に策定した。この戦略に基づき、多様な主体のコラボレーション(協働)により、2050年の長期目標である「人と自然が共生するあいち」の実現を目指していく。
さらに、生物多様性を保全するための各種施策を推進するとともに、有識者、経済団体、行政などで構成する推進委員会において、戦略の推進状況の点検・評価を行う。
2 あいち方式2030の推進について
「あいち生物多様性戦略2030」の中核的取組として、科学的な知見に基づく多様な主体の協働により生き物の生息生育空間をつなぐ「生態系ネットワークの形成」と、県民の日常生活、企業や行政等の社会経済活動に生物多様性が組み込まれ、行動につながる「生物多様性主流化の加速」を両輪とする「あいち方式2030」による各種取組を推進していく。
(1) 生態系ネットワークの形成
ア 生態系ネットワーク協議会の取組の促進
大学・NPO・企業・行政等の多様な主体が、地域の自然のあり方や目指すべき姿について共通の認識を持って、生物多様性の保全のための行動をコラボレーション(協働)して進めるため、県が支援して立ち上げた県内9つの生態系ネットワーク協議会(知多半島、東部丘陵、西三河、尾張北部、新城設楽、東三河、渥美半島、西三河南部及び尾張西部)の取組を促進する。
イ 生態系ネットワーク成果共有化事業
協議会間で取組ノウハウを共有化するとともに、連携を強化するため、地区間交流会を開催し、協議会活動の活性化を図る。
生態系ネットワーク形成の成果を検証するため、指標となる動物や植物の生息生育のモニタリング調査を実施する。
ウ あいち森と緑づくり生態系ネットワーク形成事業
あいち森と緑づくり税を活用して、生態系ネットワーク形成を目的とするビオトープの創出等を支援する。
(2) 生物多様性主流化の加速
生物多様性に関わる県民やNPO、企業等に必要な情報(生き物の生息生育状況や人材など)を提供するシステムを構築し、情報を発信・共有していく。このシステムを活用し、多様な主体との連携により、湿地や里山の保全活動の促進、希少な動植物の保全などに取り組んでいく。
さらに、生物多様性の普及・啓発を進めていくため、県民サポーター制度を創設する。
3 あいちミティゲーションの推進について
開発に伴う自然への影響を回避、低減、代償の順に検討し、開発区域外も含めて自然環境の保全・再生を促す「あいちミティゲーション」について、これまでの実績を踏まえて、再整理し、「自然環境の保全と再生ガイドライン」(平成15年3月策定)を改定する。
大規模行為制度の運用と合わせて、開発事業者に対して指導・推奨をしていくとともに、生物多様性に取り組む企業を県が認証する制度化の検討をすすめる。
4 生物多様性に係る国際連携について
COP10の開催地である本県が世界の先進自治体に呼び掛けて、平成28年8月に設立した「愛知目標達成に向けた国際先進広域自治体連合」において、ウェブ会議等を通じた議論を行い、連携の強化を図るとともに、次期世界目標が採択されるCOP15及びその準備会合において、サブナショナル政府(州・県レベルの広域自治体)の貢献と役割の重要性をアピールする。
また、本県と環境分野に係る協定等を締結したサブナショナル政府との間で、情報交換・学生派遣等を通じて生物多様性保全の取組に関する交流を実施する。
5 SDGs推進に向けたユースの生物多様性保全活動の促進について
「愛知県SDGs未来都市計画」(令和元年8月策定)において「特に注力する先導的取組」と位置付けられた「ユース(大学生等)を核とした多様な主体の連携による生物多様性保全活動」を全県に拡大していく。具体的には、令和元年度に立ち上げた全県のユース活動組織を基盤として、県内各地で企業やNPO等が行う保全活動へのユースの参加促進を図る。また、「生物多様性とSDGs多世代フォーラム」を開催し、ユースを始め多様な世代・主体が、生物多様性を切り口としてSDGs推進に向けた課題等について対話・交流するイベントを開催する。さらにはCOP15にユースを派遣し、こうした取組の成果を世界に向けて発信する。
6 「国連生態系回復の10年(令和3年から令和12年)」に向けた取り組みについて
本県が全国に呼びかけて平成23年10月に設立した「生物多様性自治体ネットワーク」の幹事自治体として、国連の生物多様性回復の10年を見据えつつ、全国の自治体の取組向上に資する。
また、県内市町村における生物多様性戦略の策定を促進するための支援を行う。
7 東三河地域における自然再生の推進について
豊かな自然環境を有する東三河地域において、自然環境の保全・再生、自然の魅力を発信する地域環境リーダーの活躍を促進し、地域環境リーダーによる地域の教育機関と連携した普及啓発活動や自然環境保全イベントなど、自然環境保全活動の取組を推進する。
8 自然公園の管理等について
自然公園法及び愛知県立自然公園条例に基づき、工作物の設置等の各種行為について規制指導するとともに、自然公園の区域及び行為規制を広く一般に知らせるため、自然公園制札板を設置し、違反行為の防止に努める。また、順次、公園計画の見直しを行うなど、適切な管理に努める。
公園名 (指定年月日) |
公園関係市町村名 | 関係市町村数 | 区域面積(ha) |
---|---|---|---|
三河湾国定公園 |
豊橋市、岡崎市、豊川市、西尾市、蒲郡市、田原市、南知多町、美浜町、幸田町の各一部 | 9 | 9,457 |
飛騨木曽川国定公園 |
犬山市の一部 | 1 | 3,661 |
天竜奥三河国定公園 |
豊田市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村の各一部 | 5 | 14,959 |
愛知高原国定公園 |
瀬戸市、春日井市、豊田市、小牧市、新城市、設楽町の各一部 | 6 | 21,740 |
小計(4公園) | 18(実数) | 49,817 | |
渥美半島県立自然公園 |
田原市の一部 | 1 | 12,556 |
南知多県立自然公園 |
西尾市、常滑市、知多市、南知多町、美浜町、武豊町の各一部 | 6 | 8,649 |
段戸高原県立自然公園 |
設楽町の一部 | 1 | 3,781 |
振草渓谷県立自然公園 |
東栄町の一部 | 1 | 2,198 |
本宮山県立自然公園 |
岡崎市、豊川市、新城市の各一部 | 3 | 7,302 |
桜淵県立自然公園 |
新城市の一部 | 1 | 2,517 |
石巻山多米県立自然公園 |
豊橋市の一部 | 1 | 2,061 |
小計(7公園) | 13(実数) | 39,064 | |
計(11公園) | 21(実数) | 88,881 |
(注 令和3年4月1日現在)
9 自然公園施設等の管理について
(1) 自然公園施設
人と自然とのふれあいの場として国定公園内の2つの自然公園施設(茶臼山、伊良湖休暇村)について、施設の修繕を行うとともに、管理運営を指定管理者である一般財団法人休暇村協会に委託する。
伊良湖休暇村公園施設(愛称「いらご さららパーク」)については、この公園施設のテーマである自然再生の取組の重要性を来園者に理解してもらうため、自然観察サポーターを配置する。
(2) 東海自然歩道
自然豊かな余暇活動の場を提供するため、東海自然歩道(県内全長211km)を整備し、老朽化した施設の改修を行うとともに、管理を地元7市町に委託する。
10 自然環境保全に係る規制指導等について
(1) 自然環境保全地域
自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例に基づき、自然公園の区域以外に残されている天然林、貴重な動植物の生息地・自生地、特異な地質等のすぐれた自然環境を有する地域を愛知県自然環境保全地域(県内15地域、292.11ha)に指定し、自然環境の保全を図っている。
名 称 (指定年月日) |
所 在 地 (面積(ha)) |
特 質 |
---|---|---|
田之士里湿原 |
豊田市 |
中間湿原 |
蓮華寺寺叢 |
あま市 |
自然堤防及び常緑広葉樹林 |
小牧大山 |
小牧市 |
常緑広葉樹林 |
青鳥山 |
西尾市 |
はんれい岩地帯 |
吉祥山 |
豊橋市、新城市 |
角閃石片岩からなる特異地質 |
伊熊神社社叢 |
豊田市 |
針広混交林 |
小堤西池 |
刈谷市 |
カキツバタの群落 |
大沼 |
豊根村 |
落葉広葉樹林 |
白鳥山 |
設楽町 |
岩礫地特有の植生及び特異地質 |
茅原沢 |
岡崎市 |
落葉広葉樹林 |
壱町田湿地 |
武豊町 |
湿地植物群落等 |
山中八幡宮 |
岡崎市 |
常緑広葉樹林 |
海上の森 |
瀬戸市 |
貧栄養湿地の植生等 |
東谷山 |
名古屋市 |
常緑広葉樹林及び湿地植物群落 |
砦山 |
豊根村 |
ツガ、ヒノキの巨木群 |
計(15地域) |
13市町村 |
(2) 大規模行為届出制度
自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例に基づき、自然公園、自然環境保全地域等の区域以外の地域における宅地の造成、土石の採取等の開発行為で、その行為に係る土地の区域の面積が1haを超える場合に届出を義務付け、良好な自然環境の保全及び緑地の確保を図る。
11 希少野生動植物の保護について
(1) 指定希少野生動植物種の規制・監視
自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例に基づき、県内に生息又は生育する絶滅のおそれのある野生動植物種のうち、特に保護を必要とする18種を「指定希少野生動植物種」として指定し、個体の捕獲・採取等を禁止するとともに、監視・指導を行い、その保護を図っている。
また、これらの種のうち、特に生息生育地の保護が必要な4地区を「生息地等保護区」として指定し、保護区内における工作物の新築等の行為を規制するなど、生息生育地と一体的にその種の保存を図っている。
(2) 希少野生動植物の情報収集等
絶滅のおそれのある野生動植物種を明らかにするため、「レッドリストあいち2020」に掲載されている種の生態や生息生育状況などについて調査及び情報収集を行う。
12 移入種対策について
県内の生態系に著しく影響を与えるおそれのある特定外来生物や自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例に基づき公表した26種の移入種(外来種)について、ハンドブック・Webページなどを用いて被害防止等の啓発・情報提供を行うとともに、研修会や専門家の派遣により地域の駆除活動の促進を図る。
また、令和2年度に名古屋港で確認されたヒアリについて、国等と連携して調査啓発等の対応を行う。
13 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化について
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律に基づき策定した「第12次鳥獣保護管理事業計画」に従い、野生鳥獣の保護管理、有害鳥獣による被害の防止及び狩猟の適正化を図るとともに、次期計画となる第13次鳥獣保護管理事業計画(計画期間:令和4年4月~令和9年3月)の策定を行う。
(1) 鳥獣保護管理事業の推進
第12次鳥獣保護管理事業計画(計画期間:平成29年4月~令和4年3月)に基づき、鳥獣保護区の指定、市町村の鳥獣捕獲許可への助言、鳥獣生息調査、啓発事業、狩猟免許事務及び適正な狩猟に係る指導等を実施する。
(2) 第二種特定鳥獣管理計画の実施
生息数の増加や分布域の拡大により、特に管理が必要となる、カモシカ、イノシシ、ニホンザル及びニホンジカの4獣について、農林業被害の防止等を図るため、第二種特定鳥獣管理計画(計画期間:平成29年4月~令和4年3月)に基づき、関係部局、市町村、関係団体等と連携し、分布状況や捕獲等対策状況を踏まえた取組を実施する。
(3)指定管理鳥獣捕獲等事業の実施
生息数や生息地が増加拡大しているニホンジカの鳥獣管理対策を強化するため、認定鳥獣捕獲等事業者※を活用し、広域的かつ集中的な捕獲を行う。
※ 鳥獣の捕獲に係る安全管理体制が一定の基準に適合しており、適正かつ効率的に鳥獣の捕獲等を行う技能や知識を有する従事者を備えた法人として知事が認定した事業者
14 鳥獣に係る危機管理について
ツキノワグマの出没に対して、ドングリ類の豊凶調査による出没予測及び県民への注意喚起を行い、人身事故及び錯誤捕獲の防止を図る。また、錯誤捕獲の発生時には、速やかに専門家の指導・助言を得て、地元市町村と連携した安全な放獣等を行う。
野鳥の鳥インフルエンザの発生に対して、本県の「野鳥における鳥インフルエンザに関する危機管理マニュアル」に従い、農林水産局、市町村、環境省と連携し、死亡野鳥の検査の実施、高病原性鳥インフルエンザの公表、野鳥の監視パトロール等を行う。
15 弥富野鳥園について
弥富市上野町に位置する弥富野鳥園(約36ha)は、園そのものが野鳥の生息地、渡り鳥の飛来地であり、園内の生息地の保護を行うとともに、探鳥会の開催等により、県民の野鳥保護意識の向上を図る。また、鳥類保護センターとして、県内から持ち込まれる傷病鳥の保護や野鳥の生息調査等を行う。
16 温泉について
温泉法に基づき、温泉ゆう出目的の土地掘削許可、温泉ゆう出路の増掘又は温泉ゆう出量を増加させるための動力装置の許可、温泉採取の許可、公共の浴用又は飲用に供することの許可を行う。
なお、掘削許可、掘削許可の取消し、増掘又は動力装置の許可及び取消し等の処分については、同法に基づき環境審議会の意見を得て行う。