本文
高次脳機能障害って何だろう
1 高次脳機能障害って何だろう?
- 交通事故で意識不明の状態になった
- 脳の病気にかかった
そのあとで、こんなことはありませんか?
- 認知障害
【記憶障害】 すぐに忘れる、新しいことを覚えられなくなった
【注意障害】 うっかりミスなど不注意が多くなった
【遂行機能障害】 毎日の行動や調理など、自分で計画を立てて物事を進められなくなった - 社会的行動障害
【固執性】 自己主張が強くなった、ささいなことにこだわるようになった
【感情コントロールの低下】 多少のことでイライラしたり、怒りっぽくなった
【欲求コントロールの低下】 欲しいと思うとガマンできない、金遣いが荒くなった
【依存性・退行】 すぐに親に頼るようになった、子どもっぽくなった
このような症状を、高次脳機能障害といいます。
2 高次脳機能障害はなぜ問題なのか?
原因となる主な疾患
問題点
- 身体的な障害を伴わない高次脳機能障害者は、
⇒ 身体障害者手帳による福祉サービスの対象になりません。
⇒ 外見では障害があることが分かりにくい、本人も自覚が難しい。そのため、誤解を受けやすく、「見えない障害」と言われることもあります。 - 若い人や働き盛りの人に多い。毎日の生活ではそれほど問題ない人も、仕事ではミスやトラブルを生じる場合が多い
⇒ 仕事に就いても続かないなど、社会参加に支障が出やすくなります。
一口メモ
<脳外傷は情報ネットワークの障害です>
関連づけて考えるのが苦手になります。そのため、
- 仕事などでこのような能力が要求された場合、対応できないことがあります。
- 言われ方が少し違うだけで混乱してしまうなど、周囲の人の言動や環境に左右されやすい傾向があります。
- 自分本位の解釈が多い傾向がみられる人もいます。
※ 家族や支援者は、接し方や対応方法のポイントを知ることが大切です。
3 高次脳機能障害に関する施策
- 高次脳機能障害の「診断基準」が、行政的な観点から策定されました。
- 高次脳機能障害と診断されれば「器質性精神障害」として、精神障害者保健福祉手帳の申請対象になります。
- 平成18年10月から、障害者自立支援法(現障害者総合支援法)に定める都道府県が行う地域生活支援事業として実施されています。
高次脳機能障害は少し前までは、見過ごされることもありました。しかし、平成13年度から17年度まで厚生労働省の『高次脳機能障害支援モデル事業』が行われ、それによって左記のような成果が得られました。
また、モデル事業の過程で高次脳機能障害に関する訓練マニュアルや支援マニュアルが作成され、効果的なリハビリテーションの流れが示されました。
都道府県が行う地域生活支援事業
- 都道府県は高次脳機能障害の支援拠点機関を置き、高次脳機能障害に関する専門的な相談支援、地域支援ネットワークの充実、研修等を行い、支援体制の整備を行います。
- 愛知県はこの事業を「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」として、県内2箇所に支援拠点機関を設置しています。
愛知県高次脳機能障害支援拠点機関
知っておきましょう
障害者手帳について
- 障害者総合支援法により、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(名古屋市は愛護手帳)のいずれかの障害者手帳を持っていれば(精神障害、難病等(332疾患)については診断書等でも可)、共通の福祉サービスが受けられます。サービスを受けるには障害支援区分の認定を受ける必要があります。
- 就労の際の障害者雇用率制度は、身体障害者、知的障害者、精神障害者のいずれかの障害者手帳を持つ方が対象となります。
※ 障害者雇用率制度:事業所は一定割合の障害者を雇用しなければならないという制度
介護保険について
- 脳血管疾患(特定疾患)を原因とする40歳以上の高次脳機能障害の方は、介護保険の申請ができます。
障害年金について
-
条件を満たしていれば、高次脳機能障害は障害年金(精神)の受給対象になります。診断書は、主治医であればどなたでも書いていただけます。
支援マップ(高次脳機能障害に対応可能な医療機関及び日中支援事業所一覧)について
- 高次脳機能障害の早期発見から適切な支援につなげるため、なごや高次脳機能障害支援センターでは高次脳機能障害に対応できる医療機関及び日中支援事業所を「支援マップ」として掲載しています。
※なごや高次脳機能障害支援センターが行った調査をもとにマップへの掲載に同意をいただいた機関・事業所の一覧です。
内容は掲載時点のものです。対応できる範囲などが異なりますので、事前に必ず各医療機関・事業所へお問い合わせください。
ガイドブック「高次脳機能障害について」
- このガイドブックでは、脳卒中や交通事故などの後、記憶力や集中力の低下など気になる症状がある方やご家族が、適切なアドバイスや支援に出会うことができるよう、利用できるサービスや相談窓口などの情報を掲載しています。
高次脳機能障害サポートファイル「マイ・ノート」
-
高次脳機能障害により自分の事をうまく伝えられない方たちが、必要なサポートを的確に受けられるよう、円滑に情報を伝達するために作成したノート(記録様式)です。
4 ご相談・問合せ先
なごや高次脳機能障害支援センター(愛知県の高次脳機能障害支援拠点機関)
- 高次脳機能障害者のリハビリテーションの流れ
受診(予約制)→検査→訓練・支援内容の検討→(医学的訓練)→(自立訓練)→(就労移行支援)→社会復帰支援 - 訓練・支援の内容
高次脳機能障害の程度や目標に応じて、必要な訓練・支援を行います。
【医学的訓練】 心理士、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)による訓練
【自立訓練】 日常生活や社会生活能力の向上に関する訓練(入所・通所)
【就労移行支援】 仕事を支障なく行えるようにするための訓練
【社会復帰支援】 地域の関係機関・事業所等と連携した就業(復職・新規就労)支援、就学(復学など)支援、施設(施設・作業所利用)支援、在宅(家庭生活・地域生活)支援など - 相談・問い合わせ
・各種相談
なごや高次脳機能障害支援センター(名古屋市総合リハビリテーションセンター内)
TEL 052-835-3814(直通)/052-835-3811(代表)
※ 高次脳機能障害者ご本人の具体的な訓練・支援方針については、受診・検査後に行います。
高次脳機能障害者愛知東部支援センター笑い太鼓(愛知県の高次脳機能障害支援拠点機関)
「笑い太鼓」は、高次脳機能障害のある方が日常生活や社会生活を営む上で起きる様々な問題をともに考え、主体性を持って対処できるようになることと、高次脳機能障害に対する地域の理解を広めることを目的として活動しています。
突然の事故や脳梗塞などの病気による入院、手術の後、「思うようにできない」「人との関係がうまくいかなくなった」「イライラしやすい、不安な気持ちになりやすい」「どうしていいかわからない」「将来のことが心配」といったことでお悩みではないでしょうか?
ご家族やお知り合いの方で、お心当たりのある方は、以下の支援センターにお気軽にご相談ください。
医療、福祉関係者からのご相談、ご紹介も受け付けております。
相談・問い合わせ先
高次脳機能障害愛知県東部支援センター笑い太鼓
TEL:0532-34-6098 FAX:0532-34-6099
住所:441-8013 愛知県豊橋市花田一番町72番地 東和西駅前マンション101号室
区役所・市町村担当窓口
- 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、介護保険などの福祉サービスに関する相談・手続きを行います。
※ 精神障害者保健福祉手帳については、名古屋市および中核市(豊田市、岡崎市、豊橋市)の場合は保健所又は保健センターが担当しています。 - 障害者総合支援法の障害支援区分の認定調査を行います。名古屋市の場合、障害者基幹相談支援センターが行っています。
保健所又は保健センター
- 精神保健相談員や保健師による精神保健福祉に関する相談・支援を行っています。
障害者基幹相談支援センター
- 障害者の地域生活を支える相談・支援機関です。名古屋市の場合は各区にあります。
高次脳機能障害関連団体
- 愛知県内には高次脳機能障害の方々の家族会があり、当事者作業所を開設しているところもあります。
- 家族会では当事者の立場からの相談なども行っています。
高次脳機能障害関連の主な書籍(関係分)
-
よくある50シーン別 高次脳機能障害のある人に"伝わる説明”便利帖
山田和雄・日比野敬明・稲垣亜紀・間瀬光人監修/稲葉健太郎・長野友里編/名古屋市総合リハビリテーションセンター(なごや高次脳機能障害支援センター)著 中央法規 3,080円 https://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/8825/ - 高次脳機能障害支援の道しるべ 学校生活編 深川和利監修 長野友里編 メディカ出版 2,800円
- 高次脳機能障害支援の道しるべ 就労・社会生活編 深川和利監修 稲葉健太郎・長野友里編 メディカ出版 3,000円
- 高次脳機能障害支援コーディネーターマニュアル
高次脳機能障害支援コーディネート研究会監修 中央法規 3,000円 - 脳外傷者の社会生活を支援するリハビリテーション
永井肇監修、阿部順子編 中央法規 3,000円 - 脳外傷者の社会生活を支援するリハビリテーション<実践編>
永井肇監修、蒲澤秀洋・阿部順子編 中央法規 2,800円 - Q&A脳外傷-本人と家族のためのガイドブック
日本脳外傷友の会編 明石書店 1,000円 - 知られざる高次脳機能障害-その理解と支援のために
松崎有子著 せせらぎ出版 1,500円 - チームで支える高次脳機能障害のある人の地域生活 蒲澤秀洋監修 阿部順子編 中央法規 2,400円
- 50シーンイラストでわかる高次脳機能障害「解体新書」 阿部順子・蒲澤秀洋監修 メディカ出版 2,800円
- いっしょにがんばろう!-脳外傷とどうつきあうか-家庭と職場のためのQ&A
脳外傷リハビリテーション研究会編 300円(取り扱いは脳外傷友の会「みずほ」) - みんなでささえよう!-くも膜下出血とどうつきあうか-家庭と職場のためのQ&A
くも膜下出血リハビリテーション研究会編 在庫分は無料(取り扱いは名古屋市総合リハビリテーションセンター)
5 高次脳機能障害診断基準(概説は抜粋)
診断基準
- 主要症状等
・ 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
・ 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。 - 検査所見
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。 - 除外項目
・ 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状を欠く者は除外する。
・診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
・先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。 - 診断
・1~3をすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
・高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
・神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。