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愛知県の主張・取組

ワークショップまとめ

名古屋大学大学院法学研究科教授〔県の在り方検討委員会副座長〕 後房雄氏

<テーマに関する具体的意見>

○現在、県の在り方検討委員会で、道州制や市町村合併などを含め、全体としての県のあり方を白紙から議論している。昨年に引き続いて今年も議論していくので、今日の議論はその参考にさせていただきたい。

○本日の感想ということでは、高度成長期までと今の状況とではかなり質的に変わっているということを改めて感じた。どの地域でも何をやるかは同じであり、国レベルで分かっていた時期は、県や市の区画が画一的であってもそう問題はなかったと思う。今は地域ごとに、どういった問題が重要かということが大きく違ってきている。

○日本も大体においては豊かになったわけで、基本的なことはもうできている中で、地域ごとに何を重視したいかとか、どういう問題がより緊急かということが重要になってきている。近代化の中でつくってきた区画、県や市町村という区画を越えて、あるいはまたがってやった方がいいという問題が明らかにいっぱい出てきており、それが今の市町村合併であるとか、道州制であるということの背景になっているというのは、この地域でも非常にはっきり出ているのではないか。

○Bグループでの議論にあったが、例えば働く場所が浜松市の企業であるが、生活は豊橋市というようにずれが生じた場合に、豊橋市の方にいろいろ経費がかかるが、その経費を浜松市の企業は払ってくれないというような、そういうずれが出てきている。これに取り組む上で、例えばどんな区画で政府をつくるのがいいのかというのは、かなり切実な問題であると思う。そうした点は、防災の問題にしても市街地の活性化の問題にしても同じで、問題ごとにどういうしくみがいいのかということは画一的には言えない。それぞれ工夫しなければいけない状況になっているということを、印象として感じた。

○その中で、どういうふうに切り分けていくかということが、今日本中で議論されており、そう簡単に答えが出るわけではないが、私自身が最近重要だと思っているポイントが2つあるので、それを簡単に紹介させていただきたい。

○一つは、政府、行政をどういう単位でつくるのかという場合に、「決定する」という役割と、「実施する」という役割を区別して考えた方がいいという問題である。要するに、決定するというのは税金を集めるとか、税金の使い方を決めるとかであるが、これは政府がやるしかない。しかし、実施というのは議論の中で出てきたように、NPOがやることもできるし、企業がやることもできるし、もちろん行政が直営でやるということもできる。必ずしも政府、行政が実施までやらなくてもいい。例えば、委託契約でちゃんとやってくれるのであれば頼めばいい。ただ、決めるというのは強制力をもち民主主義の問題であるので、これは政府で行うべきもの。ちゃんと選挙して代表者が決めることになるのではないか。

○今問題になっているのは、政府の区画をどうするかという話であるので、どこで決めたらいいかということが、政府をどうつくるかということと直結してくるわけである。そこのところを実は今、日本でごっちゃに議論しているところがある。確かに実施するうえでは、大規模の方が効率的であり、ひっくるめてまとめて一緒にやった方がいいということはよくある。しかし決定するうえでは、身近で自分たちのところに応じた形で、きめ細かく決定をしたいということは当然ある。そうすると単純化して言うと、どういうことをやるかはそれぞれの政府で決めて、実施はどこか大きなNPOなり企業なりに委託をするということであれば、別に大規模な政府はつくらなくても、決定だけをちゃんとやる政府さえあれば、実施はもっと大きなところにみんな頼むということもあり得る。

○政府をどういうふうにつくっていくかというときには、どこで決定するのがよいかという点を中心に考えるべきである。実施能力があるかどうかということは、これはもちろんあった方がいいが、必ずしも持ってなくていい。非常に極端な例であるが、アメリカでは職員のいない自治体が4千いくらある。議会しかない、実施するための公務員は一人もいない。実施は議会がどこかと契約してやってもらう。ただ、やるということは議会の民主的な正式な決定になる。実施するのはどこかに頼めばいい、あるいは隣の自治体と契約してやってもらうというようにして、職員がいない自治体というのが機能している。決定と実施を一旦分離して考えると、かなり想像力が広がるというのが一つのポイントである。

○もう一つは、日本では自治体というとすべての業務をやらないといけないというように考えるが、アメリカでは、学校関係だけを行う自治体をこういうふうにつくる、下水道を整備するだけの自治体をこういう領域でつくるというように、領域をずらして、事柄ごとに一つの機能だけを行う自治体をどんどんつくるというのが習慣としてある。

○日本は総合的に何でもやる自治体を一つつくって、基本的にそこで全部行うというふうにやってきているが、大体のことはそういう区画でやるのがちょうどいいけれども、教育だけは別のくくりでやった方が合理的であるとか、先ほど鳳来町の人の話のように、隣の静岡県側のあるところの小学生がこちら側の小学校がすぐ見えるのに電車に乗って静岡県の小学校に行かなければいけないという場合に、教育という、小学校区だけ区域を市町村域をまたがってつくって、それだけを行う自治体というのがあれば、その問題は解決できるかもしれない。

○日本でも実は一部事務組合とか、広域連合といった、そういう一つの機能だけをやるための仕組みというのをつくっているが、自治体は全部やるものだと今まで思いこんできたこともあって、日本ではあまり馴染んでいない。しかし、一つの機能だけの自治体と総合的な自治体という、両方の方法があるということを考えると、もう少し選択肢が広がるのではないか。

○そのようなポイントも含めて、近代化が終わり、地域ごとに非常に多様な問題が出てきている、あるいは今後も出てくるという中で、どのような政府の仕組みにしていったらいいかということは、100年単位で考え直す時期であろうと思う。検討委員会においても引き続き議論していくので、是非いろいろ機会をとらえて御意見をいただければと思う。

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