本文
2022年度 食と緑の基本計画推進会議 結果概要
日時
2022年8月23日(火曜日)午後2時から午後3時30分まで
場所
愛知県庁 本庁舎6階 正庁
出席者数
構成員12名
会議の様子
座長 名古屋大学大学院生命農学研究科 徳田教授
協議事項
「食と緑の基本計画2025」の推進について
構成員からの主な発言
- 愛知県農村生活アドバイザー協会 加藤会長
- 有機農業の推進に関して、県は主にどのような理由で進めているのか。例えば、化学農薬や化学肥料が手に入りにくい状況になった場合の備えとしての有機農業への転換を進めているのか。または、生物多様性に配慮するための環境負荷軽減なのか。
- 私自身は、食の安心安全を大切にしたいと思っている。また、ホタルの保護活動をとおして、環境負荷軽減は生物多様性にとても有効と実感しており、有機農業推進賛成派の1人であるが、有機農業は慣行農業に比べて手間がかかり、収量も落ちるなど、農家の負担が大きくなることも承知している。以前、「生き物が豊富にいることがなぜ良いのか?」と聞かれて、有機農業の推進と絡めてうまく説明できなかったことがある。こんな時の模範解答があれば教えていただきたい。
- その他、有機農業の推進と生物多様性と農家の生活のバランスを保つには、消費者の皆さんにも、有機農産物を理解し、選んで買ってもらえるような世の中になる必要があると思う。一足飛びにはいかないと思うが、消費者に対して、有機農業への理解を進めていくにはどうすればよいか、教えていただきたい。
愛知県農業協同組合中央会 加藤代表理事理事長
- 食と緑のレポート2022の26ページにある緊急プロジェクトに書いてあるように、世界的に飼料価格が上昇しており、農畜産物を生産するために必要な燃油、肥料、飼料、そして出荷資材とあらゆる生産資材が高騰しているところである。このような中、愛知県においては、30ページの➅にあるように、追加的な取組として燃油、飼料、肥料等資材の高騰対策の推進として、昨年度全国に先駆けて、施設園芸用燃油価格高騰対策支援金による燃油の価格補填やヒートポンプ等の設備整備など、燃油対策を措置していただいたところである。また、畜産の飼料に対する配合飼料価格の高騰対策支援金も措置していただいた。それぞれの対策については、多くの農家が非常に感謝をしているところである。
- しかしながら、農畜産物の生産費については、このような支援をいただいてもまだ価格が上昇しているところであり、すでに一部では離農者も出始めるなど、他の農家も今後、営農継続に深刻な影響が懸念されているところである。
- このことは、食と緑の基本計画2025の目標の1番目に掲げている農業産出額3,150億円の達成や食と緑が支える県民の豊かな暮らしづくり条例の第三条の基本理念にある「将来にわたって安全で良質な食料等の安定的な供給が確保され、かつ、その適切な消費及び利用が行われること」が難しくなっていくと考えている。そこで、2点申し上げる。
- 1点目は、食料の安定的な供給の確保には、農業生産者の確保と農地の維持が重要と考えているが、県として、既存の農業生産者の営農継続や新規就農者の育成、また優良農地ほど転用されるケースが多くなってきているが、優良農地を維持、確保するためにどのような支援策を考えているか教えていただきたい。
- 2点目は、農家が農業を継続していくためには、県民や食品事業者に農畜産物を再生産することの重要性について御理解をいただくことが大変重要であると考えている。そのためには、県民の皆様に積極的に県産の農畜産物を選んで購入していただく、県産県消の取り組みを進める必要があると考えているが、県としてどのような考えを持ち、今後、県民や食品事業者が継続的に県産県消に取り組んでいただくためにどのように取り組んでいかれるのか教えていただきたい。
津島市立天王中学校 兼子校長
- 学校給食についてお話させていただく。私の地区では地元の特産品であるレンコンを使ったレンコンチップが給食に出ることがある。カリッとしてとても美味しく、子供たちにはとても好評である。学校給食では、定期的に地元の食材を使った料理が出るが、以前、給食に「いがまんじゅう」が出たことがあり、西三河地域の郷土料理とは知らなかった。
- また、最近は食材に好き嫌いを示す子供が増えている。昔のように、無理に完食させるようなことはなくなったが、好きなものだけを食べて、嫌いなものは残していくと食に対する興味関心を失っていくのではないかと危惧している。私が「いがまんじゅう」を知ったように、県内の他の地域にも、それぞれの地元を代表する食材や料理があり、こういった他の地域のものを、給食に出せるようになると、食を通じて子供たちも農業や食べ物に関心を持つようになり、残食も減るのではないかなと思っている。
- 食を通じて子供たちに農業や農産物に関心を持ってもらえるように、県内の様々な地域の特産物を使った学校給食の提供について検討をお願いしたい。
名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター 杉山特任准教授
- 脱炭素の取組について、農業県である愛知県としても農業分野での脱炭素の取組は無視できないものと考えている。脱炭素というのは化石燃料からのエネルギー転換を目指すもので、農業分野のどこでどれだけ化石燃料を使っているのかを明らかにして、どのようなロードマップで取り組んでいくのか検討が必要と思われる。また燃料が高騰している今がエネルギー転換を進める意味では好機ではないかと思う。
- 県のヒートポンプの導入支援は、CO2削減にも繋がる取組であり、こういったコベネフィット(一つの活動がさまざまな利益につながっていくこと)による取組も積極的に取り入れていただきたい。そこで、県の農業分野における脱炭素の取り組みについてお聞かせいただきたい。また、気候変動などこれまでの経験に基づかない事象がこれからどんどん起こってくると思われるので、あわせて適応策にも力を入れていただきたい。
- もう1点は、愛知県産の農林水産物を優先して購入したい県民の割合が低いという結果について、これはぜひ上げていただきたい取組である。以前、ドイツに出張した際に、現地のスーパーでは地元産品に地元の商品であるということがわかりやすく表示されており、地元産品を選びたい人が選びやすいという仕組みができていた。最近では、SDGsの認知度が高まっているので、地産地消がSDGsにも資するものとして愛知県産を購入していただくようなPRをするなどして、愛知県産=いいともあいちを選んで購入してもらう消費者を増やすための取り組みについて、より一層の推進をお願いしたい。
公益財団法人愛知県農業振興基金 鈴木理事長
- 今年の5月に農業経営基盤強化促進法が改正され、地域の農地利用の青写真ともいえる「人農地プラン」が「地域計画」として法定化されたところである。「人農地プラン」では担い手の農地の集積集約化に力が注がれており、本来、その前に議論すべき、どのような農業をその地域で展開していくのかという議論がおざなりになってしまっていると感じられることが多々あった。
- 今回の「地域計画」の検討には、様々な関係機関や団体が参画することになっており、県については普及指導員によるコーディネーターや新規就農者への情報提供の役割が示されたわけであるが、先ほど申し上げた点に則って、担い手とそれ以外の農業者を合わせて、地域として持続的に運営していけるように、人材面・経営面からの分析検討をしっかり行っていただいて、それを踏まえた計画となるように指導・支援をお願いしたい。
- 愛知県は全国有数の農業県である。県内各地に産地が展開しているが、その産地を支えているのは地域である。地域農業が持続できてこそ産地の発展も担保されると考えている。このような観点から、県においてはこの「地域計画」づくりに大いに関わっていただいて、とくに普及指導員の活躍を期待したい。
愛知県土地改良事業団体連合会 竹下事務局長
- 食と緑のレポート2022の4、5ページにある(2)進捗管理指標の中で、私どもの土地改良に関わる取り組みが6ヶ所あり、それについて2021年の実績値はどれも、年度計画を上回る二重マルという実績を上げていることを、まずもって感謝申し上げる。そして私の方から3点ほど申し上げたい。
- 1点目は燃油価格高騰に伴う電気代の高騰について、県内には用水機場や排水機場が数多くあり、電気代の高騰は用排水機場の運営に、多大な影響を与えている。とくに用水機場は、灌がい期間中ずっと使用しているという状況である。土地改良区からは電気代の高騰が維持管理費の増大に直結してくるという話しも聞いており、用排水機場の維持管理費の負担軽減をお願いしたい。
- 2点目は、明治用水頭首工の漏水事故について、国、県、土地改良区などにおいて対応が続いているところである。県内には、明治用水以外にも頭首工が数多くあるため、施設の抜本的な整備を可能として、将来にわたり施設機能が十分に発揮されるよう、事業展開をお願いしたい。
- 3点目は、多面的機能支払制度について、これは農業活動と地域住民との生活を深める
- 重要な事業ととらえている。地域住民に、農業用水施設が地域の安全で豊かな暮らしに寄与していることを知ってもらうことはとても大切であり、地域全体で農地周辺の草刈など、活動していくことは、農地の保全にも繋がるため、この取組が今後も継続していくことが重要と考えている。連合会としても、多面的機能支払交付金の活動組織の運営が円滑に進められるよう、希望される活動組織への支援業務を行っているところであるが、活動組織の役員の高齢化などもあり、なかなか活動の継続が思うようにいかないこともある。今後、愛知県と一緒になって活動組織への支援について考えていきたいのでよろしくお願いしたい。
愛知県森林組合連合会 前田代表理事専務
- 森林林業分野について発言をさせていただく。今年の8月上中旬の豪雨によって、東北北陸地方では、浸水や土砂災害など大きな被害を受け、改めて災害対策の必要性を感じているところである。愛知県ではこの食と緑の基本計画の中で、森林関係の災害対策について目標を定めて進めている。具体的には食と緑のレポート2022の進捗管理指標の2(2)の「災害に強く安全で快適な環境の確保」の中で、㉔山村地域の防災・減災対策面積については、400haの目標に対して425haと目標を達成しているが、㉖の森林・農地・干潟浅場の整備・保全面積における森林で実施面積については、4,000haの目標に対して、2,616haと目標の65%程度の実績となっている。前期の計画においても4,000haの目標を掲げておられたが、目標を下回っていたと記憶している。
- 間伐については、木材生産だけではなく森林保全のために非常に重要な施業と認識しており、我々森林組合系統においても、あいち森と緑づくり事業をはじめ、各種事業により積極的に取り組んでいるところである。引き続き目標達成に向けて、県と連携していく所存であるが、結果として目標に届かない状況が続いている。
- そこで、県として間伐の実施面積が目標に届かないことが続いていることについて、どのように分析され、その対応についてどのように考えているか、お聞かせいただきたい。
愛知県漁業協同組合連合会 間瀬代表理事常務
- 食と緑のレポート2022の重点プロジェクト3「水産業の生産力強化」で、本年度は干潟・浅場や魚礁漁場の造成面積の拡大、クルマエビなどの放流種苗の増産による栽培漁業の拡充など、様々な施策に着実に取り組んでいただいているところではあるが、伊勢湾・三河湾においては近年、アサリの生産量減少やノリの色落ちなど、魚介類・海藻類の生育不良が顕著に見られるようになっており、漁場生産力が低下して地区によっては漁業者が廃業に追い込まれそうな深刻な状況ともなっている。
- これは海の栄養がなくなっているということが原因で、漁場生産力の回復のためには必要な栄養塩類の確保が重要であると漁業者は考えている。栄養塩類の確保に関する方向性としては、レポートの36ページ➂の下水道放流水の窒素、リンの濃度増加試験運転の実施、並びに海域における適正栄養塩レベルの解明と、管理技術の開発ということで記載があるが、漁業生産に必要な栄養塩類の確保は喫緊の課題である。スピード感を持って取り組んでいただきたいと思っているのでよろしくお願いしたい。
愛知県農業経営士協会 山本副会長
- レポートの進捗管理指標によると、新規就農者の確保は9割ほど達成をされているが、廃業される方もかなり多く、喫緊の課題と思われるため提案させていただく。まず新規就農者への支援について、農業を始めようとした際の設備投資への支援は始まってはいるものの、ハウス等の施設を作るには補助の金額が少なく、現状では新たな施設を作るのが困難な状況であるため、さらなる支援を検討願いたい。
- また新規就農者を育成、定着させるために、JA西三河で行われているような「いちごスクール」の取り組みや、親方制度のようなものがあると良いと思う。新規就農者が親方農家のもとで農業経営等を学び、その後独立を目指すが、親方の助けで農地や空きハウスを探し、独立後も地域の団体や生産農家のバックアップがあることで、安心して農業に取り組むことができている。
- また、農業大学校について非農家の生徒が増えていると聞いている。卒業後、せっかく農業を学んだにもかかわらず、そのまま普通の会社に勤めるのはもったいないので、農業の方面に進んでいただけるような仕組みづくりをお願いしたい。
- また先日、農業経営士協会と、県との話し合いの農政懇談会の中で出たことであるが、空きハウス等について、新規就農者が借りたくても貸す方、借りる方ともに相場がわかりづらく、マッチングが進まない状況にあるということであった。他県では地域の実情に応じた査定ができるシステムがあると聞いている。愛知県でも、本県に合った農地施設等の査定ができるアプリ等を作成して、貸し手と借り手のマッチングがしやすく、公平に貸し借りができる環境を整えていただきたい。
- 最後に、私は畜産農家であり、レポートの進捗管理指標に食育推進ボランティアから食育を学んだ人数という項目があるが、畜産農家はつねに生き物と接しているので、畜産農家も食育推進ボランティアとして、小学校、中学校、高校で食育関係の取組もできるのかなと思うのでよろしくお願いしたい。
愛知消費者協会 吉田会長
- 農業と比べて、林業や水産業というものは、新規就業者が少なく担い手の確保対策が重要と考えている。子供のころに、農業を見たり体験したりする機会は多くあるように感じるが、林業、水産業の体験機会は少ないと感じている。消費者となっても、農業と比較して、林業、水産業に親しむ機会は少ない。子供が将来、職業を選択する上で体験したことのない仕事には取っつきがたいと感じている。そのために、例えば私の地元では、緑地などの散策路を整備する人たちがいて、そういうボランティアの方たちとも多く触れ合って、身近なところで、こういった作業を知ってもらったり、体験してもらったりすることが大事だと考えている。体験や経験が将来の仕事に繋がることもあると考えている。
- 林業や水産業について、消費者に対してどのように興味を持ってもらえるか、また子供への教育や人材育成にも繋がるような取組をお願いしたい。
- 農業、林業、水産業は子供たちの心の成長に大きく関わるものだと思うので、ぜひいろいろな面で、大変かとは思うが尽力いただきたい。
オーガニックファーマーズ名古屋 吉野代表
- 今、農家の3分の1が60歳以上という現状、そして10年後がどうなるかということを非常に心配している。一方で、新規参入で農業を始める人もいて、私はそういう人たちのサポートをしてきた。レポートでは計画値に対して80%から100%の新規就農者が生まれたということであったが、2020年センサスを見ても、農家は概ね減りつつあることは間違いない。こうして確保した少ない就農者たちの中で、非農家出身者の多くはなかなか農地を借りることができなくて、ようやく借りられても非常に条件の悪い土地で一生懸命頑張っている。農地の確保を含めて、新規参入者が就農しやすい体制整備を進めていくことはできないか。
- 2点目は、新規参入者は農地を確保することが難しいだけでなく、ようやく借りた農地が条件不利地や水田である場合が非常に多い。野菜を栽培したいという新規参入者が多いということもあると思うが、水田をやりたくても機械がないので、まず新規では取り組めない。水田だったところで野菜を栽培するのは非常に難しく、その一方で日本のように水田が多いところでは、さまざまな田畑転換の技術があると思うので、そうした技術を集めて、新規就農者が借りた土地でうまく栽培できるための技術指針や指導に取り組んでいただくことをお願いしたい。
- 3点目は、県の農起業支援ステーションができて、そのことに大変感謝している。有機で就農したい人があると、私どもにも相談していただけるようになり、うまく連携できているように感じている。ただし、現在、私どもは完全なボランティアで対応しており、また、研修生を受け入れている農家も自分でやれば経営がうまくいくところを新規就農者に任せることで失敗したりするなど、なかなか難しい面が多く、大変な負担をかけていると感じている。できれば受け入れ農家に、最低限の経費だけでも支援していただくことはできないか。他県、隣の岐阜県の場合、県独自に驚くような金額を新規就農希望者を研修生として受け入れた農家に支援しており、それで若い農家も参画して、新規就農者を育てているわけだが、このままだと愛知県の受け入れ農家が、減っていく一方ではないかということがとても懸念されるので、ぜひそういうことができるように検討いただきたい。
- 最後に、毎年お願いしていることではあるが、農業大学校に有機農業の授業を1コマでもよいので実施してほしいとお願いしてきた。今年、1時間だけいただいて私が、お話しさせていただくことになったが、みどりの食料システム法案も成立したところであり、有機農業コースの設置について御検討いただきたい。
欠席した構成員の意見について事務局から紹介
トヨタ自動車株式会社アグリバイオ事業部農業支援室 灘波主査
- レポートにあるプロジェクトの取り組み状況の記載について、取組実績にはやったことが書かれているが実績に対する評価がないものがある。次年度取組計画を実施するにあたって、何が課題なのかを明確にする必要がある。また、主な取組事項に掲げた内容を達成するために、何が足りないのかがよくわからないため、本当の課題に対してできたこと、できなかったことを書くと、もっとわかりやすくなると思う。
- それから課題と今後の方向性、2022年度の計画の記載がごちゃごちゃになっているところがある。そもそも課題と今後の方向性は違うものである。課題を書く場合には、何が課題なのかが一番大事であり、計画に対応して課題を書くのではなく、なぜそれをやるのかという視点で考えると、課題が見えてくる。
- また、今後の方向性を書く場合には、これまでやってきたことを継続するのか、終わらせるのか、課題があるから考え直すのかを意識して整理していただきたい。
県側の発言
農政課長
- 始めに農政課から難波委員から御意見をいただいたプロジェクトの取組状況や記載方法等についてお答えする。
- いずれの御意見も、基本計画の目指す姿や目標を達成していくために、大変重要な観点であると認識している。
- 本日の御意見を踏まえ、プロジェクトで課題が明確になっていない取組については、目標達成に向けた要因分析をしっかりと行い、何が課題なのかを明確にして記載するとともに、また今後の方向性などの記載についても、取組の進捗状況や課題を意識して整理していきたいと考えている。
食育消費流通課長
- まずJA愛知中央会の加藤委員から御意見いただいた地産地消の推進、並びに名古屋大学の杉山委員から御意見いただいた、愛知県産を選んで購入してもらう、消費者を増やす取組について一括してお答えする。
- 地産地消については、地域で生産された新鮮な農林水産物をその地域で消費するという取組であり、消費者、生産者相互の理解促進、県産品の需要拡大だけではなく、輸送距離が短くなるため、エネルギーやCO2の排出量が削減できるなど様々なメリットがあるものである。県では地産地消の取組である「いいともあいち運動」や「あいまる」をつけていろいろなところで活動しているところである。生産者や消費者など、様々な方と連携してイベントやPR活動を行っているところだが、その認知度は残念ながら24.2%であり、県民の皆様に十分御理解いただいているという状況ではないと思っている。こうした状況を踏まえ、本日の杉山委員から御意見いただいたように、県では最近のSDGsの認知度の高まりを捉え、地産地消がSDGsへ貢献するということを県民の皆様に広くPRをしていく。そういうことで地産地消を実践いただき、愛知県産を選んで購入してもらえるという取組を進めたいと考えている。具体的には、今年の11月から「地産地消あいちSDGsキャンペーン」の取組を進めていく。この中身については、このキャンペーンにアンバサダーという形でモリゾー・キッコロを任命するキックオフイベントをはじめ、「いいともあいち推進店」を巡るスタンプラリー、それから他部局とも連携しながらいろんな取組を進めてまいりたい。
- 次に加藤委員から御意見があった、食品事業者に対する取組、これも大変重要であると考えている。県内の飲食店や小売店などに継続的に地産地消に取り組んでもらうことを目的に、こうした事業者が県内の生産者から新鮮な農産物を購入して共同で配送するシステムづくりについて検討を進めているところである。JAグループ愛知やいろいろなところで、県産県消・地産地消といった取組が進められており、県でもこうした方々とも連携を図りながら、取組を進めてまいりたい。また、集中的に県民に向けてキャンペーンに取り組むことで地産地消の継続的な実践を促してまいりたいと考えている。
- それから、兼子委員から御意見いただいた、地域特産物の学校給食への提供について、県内の各市町村では独自に給食メニューを決定し、使用する食材の選定がなされている。県では、食の大切さ、農林水産業、食育に対する理解醸成を図るとともに、地産地消を進めるという観点から、学校給食における地域産品の利用を推進しているところである。具体的には教育委員会において「愛知を食べる学校給食の日」を年3回、それ以外にも学校給食献立コンクールを行っている。本県においては、市町村や教育委員会、給食センター、JAなどに入っていただき、意見交換を開催するということで地域の実情に応じた取組を支援しているところである。こうした取組により本日、兼子委員からも御意見あったように「いがまんじゅう」をはじめ、蒲郡産の魚「メヒカリ」のフライや、高浜市の郷土料理でもある「とりめし」など、他の市町村でも郷土料理が提供される状況になっていると伺っている。とくに郷土料理については、各地域の産品を上手に活用して地域に根付いたものであり、郷土料理を理解、継承するために、本県では「愛知の郷土料理レシピ50選」を作成し、情報提供を図っているところである。引き続き教育委員会等とも連携して学校給食における地元産食材、さらには郷土料理など、各地域を含めた県産農林水産物の導入促進ができるよう、市町村に対する情報提供や市町村とのマッチング等、こうした取組を進めてまいりたいと考えている。
- それから、山本委員からの御意見について、愛知県の食育推進ボランティアは健全な食生活の指導、農林業体験の指導を行っていただくボランティアとして県に登録された方々であり、昨年度末で1,046人が登録している。こうした方々に様々な取組を進めていただいているが、昨年度はコロナの影響により、当初12万人の目標に対して、結果としてボランティアから食育を学んだ人は27,000人であった。コロナ禍ということで対面での食育活動、調理実習、学校での活動といったものができなかったと思っているが、県ではこういう状況の中でも、対面も含めリモートや、いろいろなやり方があると思っており、様々な方法を考えてまいりたいと考えている。また食育推進ボランティアの方にも多く参加いただけるよう、こうした取組をPRし、各種団体へ働きかけを進めてまいりたい。
農業振興課担当課長
- 最初にJA愛知中央会の加藤委員からいただいた、優良農地の確保、維持に関する御意見についてお答えする。
- 農地は農業生産にとって重要な要素であり、とくに集団的農地や基盤整備事業を行った優良農地については、農業振興地域の整備に関する法律、いわゆる農振法であるが、この法律に基づいて、農用地区域として設定することで、優良農地を良好な状態で維持保全し、かつ、その有効利用を図っているところである。農振法上の農用地区域は農業上の利用を確保すべき土地として指定されており、農業上の用途が定められている。このため、原則としてその用途以外の使用はできず、その他の用途に使用するためには、農用地区域からの除外を行う必要がある。農用地区域からの除外については市町村が行うが、これには県の同意が必要であり、同意にあたっては、他法令の許可見込みがあるか、除外が辺縁部であるか、利用集積に影響がないか、農道や用排水路の機能に影響はないか、ほ場整備事業から8年を経過しているかなど、農振法上の要件をすべて満たす場合に限り同意することで、各地域の計画的、合理的な土地利用との調整を図っている。また農地を農地以外のものにする農地転用の許可に際し、農地法では、集団的農地及び良好な営農条件を備えている農地は、原則として許可できない基準となっており、こうした関係法上の基準等を適切に運用することで、優良農地の確保と計画的な土地利用に努めていきたいと考えている。
- 次に鈴木委員から御意見があった、「人・農地プラン」の「地域計画」についてお答えする。本県農業は、都市近郊地域、中山間地域、また水田作地域、畑作地域等、その地域特性は多様であり、各地域が直面する問題も様々である。このため改正法に基づく「地域計画」の話し合いにおいては、各地域の問題を見える化した現状地図を作成し、現行の「人・農地プラン」をベースとしつつ、明確となった諸課題への対策を各地域で検討していただき、その解決方策を目標地図に落とし込めるよう、市町村、農業委員会を支援するとともに、JAなどの関係機関が、市町村や農業委員会と協力して取り組むことができる体制づくりを進めてまいりたい。
- また、就農相談窓口である農業大学校や農業改良普及課では、本人の意向を確認した上で、新規参入者を積極的に受入れる「地域計画」を策定した地域へ新規参入希望者を紹介し、就農後は地域の担い手として活躍できるよう、技術経営面の支援をしてまいりたい。
- なお「地域計画」作成に向けた協議の場では、当該区域における農業の将来のあり方として、高収益作物への転換、輸出向け農作物への生産、有機農業の導入などについて、地域の実情を踏まえた上で協議をすることとなっている。また、農地の受け手についても、半農半Xや、農業参入法人といった多様な担い手を位置づけることを検討することになっており、こうした経営人材面での新たな展開方向を含め、地域農業をどのように維持発展していくかが明確となった「地域計画」が策定されるよう、県としても支援をしていきたい。
農業経営課長
- 大変多くの方から御意見をいただいたので、順にお答えする。最初に農村生活アドバイザー協会の加藤委員から、有機農業に関する御意見について、まず有機農業の位置付けであるが、本県では有機農業を環境と安全に配慮した農業の特徴的な取組の一つと位置付けており、環境負荷軽減という観点から推進をしている。
- また生物多様性についての御意見について、農林水産省が生物多様性戦略というものを策定しており、その中の文面によると「農林水産業は、工業などの他産業とは異なり、自然に順応する形で、自然に働きかけて、上手に利用し、循環を促進することによってその恵みを享受する生産活動であるという中で、生物多様性と物質循環が健全に維持されるということにより成り立つもの」であり、「農林水産業を持続可能なものとして、維持・発展させていくためには、生物多様性を守らなければならないということを認識することが重要」ということである。こうしたことから、生産場面では有機農業を始めとした環境と安全に配慮した農業を推進することにより、生物多様性が保全されるということ、それから消費の場面では消費者一人一人の消費活動が身近な自然を守り、持続可能な生産基盤を維持することに繋がるということをPRしていくことによって、理解を促進してまいりたいと考えている。
- 続いてJA愛知中央会の加藤委員から、新規就農者や既存の農業者への支援に対する御意見について、新規就農者の育成は、就農相談窓口として、昨年度、農業大学校に農起業支援ステーションを設置し、就農に向けた具体的なビジョンづくりをサポートする体制を強化したところである。県内8ヶ所の農業改良普及課に設置している農起業支援センターと連携して、新規就農希望者の就農相談や情報提供など、円滑な就農に向けた支援を行っていく。また、新たに農業を始める方の機械や施設の初期投資の負担を軽減するために、国が新たにメニュー化した補助事業があるので活用の支援をしていく。
- さらに食料の安定的な供給に向けての御意見に対して、担い手が減少する一方で経営規模は拡大してきている。さらにその中で生産性を向上しなければいけないということにおいては、一つはスマート農業の普及を進めるということ、それからもう一つは農業総合試験場と大学やスタートアップが連携して新しい農業イノベーションを創出する「あいち農業イノベーションプロジェクト」を昨年9月に立ち上げており、JA愛知中央会も研究会のメンバーとして一体となって進めており、こうした取組が既存の農業生産者の営農継続に繋がるように進めてまいりたいと考えている。
- 続いて杉山委員から、農業分野における脱炭素の取組についての御意見について、先ほど申し上げた「あいち農業イノベーションプロジェクト」においては、6つのテーマを設定して取組を進めており、そのテーマの一つに、未来へつなげるサスティナブル農業の実現というテーマがあり、その中で脱炭素を目指す取組も対象としている。今年度、それぞれのテーマに基づいた技術提案をスタートアップから募集をしたところである。現在内容を精査中であり、その結果次第にはなるが、こうした脱炭素に繋がるような技術開発についても取り組んでまいりたいと考えている。
- 続いて山本委員から、新規就農者の育成、農業大学校の卒業生の進路、それから、農地や施設が公平に貸し借りできるような環境整備ということに関する御意見について、まずJAあいち三河の「いちご塾」では地域の関係機関が一丸となって就農前の研修から就農時の農地や施設のあっせん、それから就農後のフォローアップ、こうしたことまできめ細かにサポートする体制ができており、こうした取組を県内の各地に横展開をしてまいりたいと考えている。
- それから次に、農業大学校について、御発言にあったとおり非農家出身の学生が増加傾向にあり、近年では学生の約7割は非農家の出身である。非農家の学生が就農したい場合は、新規参入ということになるため、先ほど御説明した農起業支援ステーションが就農相談を行い、各種支援制度の活用など支援をしているところである。一方、就職を希望する学生に対しては、就職説明会の開催、個別の進路指導を行うという体制をとっているところである。農業大学校には、農業法人や農業関連企業からの求人が非常に多く集まっているため、卒業後は農業法人で農業に従事したり、JAをはじめとする農業関連企業に就職するなど、ほとんどの学生が農業を支える仕事についている。今後も引き続き、学生の農業分野への進路選択に取り組んでまいりたい。
- それから次に農地や施設の貸し借りについて、こちらは新規就農者確保のみならず、産地の生産力の維持発展においても、非常に重要な課題だと考えており、関係課室や関係機関と連携して、検討の場を設けてまいりたいと考えている。
- 続いて、吉野委員から御意見のあった、新規就農が就農しやすい体制整備、水田における野菜栽培、研修受入農家への支援、農大での有機農業教育についてお答えする。
- まず新規就農者の体制整備について、新規就農相談窓口として農起業支援ステーションや農起業支援センターがあり、こちらで効果的に相談対応をするため農地を含めた就農関連情報の収集に努めており、こういった情報を一元化して迅速な対応ができるようにしたいと考えている。
- また、先ほどお話があった農業経営基盤強化促進法の改正では「地域計画」を関係者が地域で話し合って策定することになるが、新規就農者の情報も関係者と共有することにより、スムーズな農地の確保も実現できるのではないかと考えており、連携して取り組んでまいりたい。
- 次に水田での野菜栽培について、大原則としては排水対策というのが必須になる。ただ、具体的な技術的指導については、栽培される品目が何なのか、それから、その土地の土壌の状況がどうなのか、そういったことによって若干対策が異なるため、具体的なことについて地域の農業改良普及課等に御相談いただければと思う。また、技術指針については、以前に水田営農技術指針を取りまとめており、必要に応じてこれも情報共有しながら対応してまいりたいと考えている。
- それから研修の受け入れということで、御意見のとおり、とくに有機農業者は家族労働力のみで営農する者が多く、農の雇用事業、今年からは雇用就農資金という名前になったが、このような制度が使いにくいという声も承知をしている。県としては、こうした国の事業が研修生の受け入れ農家にとって使いやすいものになるよう、国にも働きかけてまいりたい。今後も現場の御意見を頂戴できればと思っている。
- それから最後に、農業大学校における有機農業教育について、カリキュラムについては、それぞれ毎年のように見直しをかけ、来年度のカリキュラムを作っているところである。
- また、御意見で有機農業コースというお話もあった。コースとなると少し長期的な考えが必要になるため、今後の検討の一つにはさせいただきたいと思うが、実習を伴うことになるとほ場の確保等の必要もあるため、またいろいろと御指導いただければと思っている。一度、担当には要望があることを伝えておきたい。
園芸農産課長
- 杉山委員から御意見のあった農業分野における脱炭素の取組についてお答えする。本県では平成24、25年ごろに燃油価格が高騰した際、国が創設をした施設園芸等燃油価格高騰対策を活用して、ヒートポンプや被覆カーテンなどの省エネ設備の導入を進めており、化石燃料の削減に取り組んできた。この対策では、農業者のグループが、化石燃料の削減を目標に掲げた省エネルギー推進計画を策定し、計画に基づいて省エネ設備を導入するというものであり、その結果、平成25年から27年の3ヵ年で、県内に約5,200台のヒートポンプが導入されている。また令和3年度からの2ヵ年においては、施設園芸省エネルギー化施設設備整備事業を措置しており、これは単県の事業であるが、化石燃料を15%以上削減する燃油削減計画を作成し、計画に基づいてヒートポンプ等の導入を進めており、この2ヵ年で約130台のヒートポンプが導入される予定となっている。なお今年の7月に、国がみどりの食料システム戦略を推進するための法律を施行しており、施設園芸については2050年までに化石燃料を使用しない施設への完全移行を目指すこととしているため、今後も農林水産省の施策と連携しつつ化石燃料の削減に努めてまいりたいと考えている。
- 次に山本委員から御意見いただいた新規就農者への設備投資への支援について、本県では、農業生産力の強化に意欲があっても、国の採択要件を満たすことができない産地を支援するために、県独自の補助制度として、あいち型産地パワーアップ事業を創設している。対象品目は産地戦略を策定した稲、麦、大豆、野菜、花き、果樹及びお茶など、すべての品目であり、栽培施設の整備などを補助対象としている。なお補助率は3分の1である。このあいち型産地パワーアップ事業では、2018年から2022年までの4年間で新規就農者6名を支援しており、うち5名がハウスの新築である。また、国にも産地生産基盤パワーアップ事業というものがあり産地全体で生産性を10%以上向上させるといった産地パワーアップ計画を策定した場合に、新規就農者も含めて栽培施設の整備が補助の対象となっており、補助率は2分の1であるが、この事業を活用して新城市で新規就農者1名がハウスの整備を行っている。新規就農者の状況やケースに応じて、できる支援策をとってまいりたいと考えているので、また御相談をいただきたい。
水産課長
- 水産業に関する御意見についてお答えする。はじめに、間瀬委員から御意見いただいた漁業生産に必要な栄養塩量の確保については、2017年度から県の矢作川浄化センターと豊川浄化センターにおいて下水道放流水中のリン濃度を増加させる試験運転を継続して実施している。この効果については、水産試験場の調査において、ノリの品質やアサリの生き残りが向上していることを確認しており、地元の西三河地区の漁業者からは、アサリが増えてきているとの声もいただいている。今年度は、昨年度と同様に9月からリン濃度を増加させる試験運転を実施することに加え、11月からは、リン濃度を昨年より更に増加させ、加えて窒素濃度も増加させる試験運転を計画している。リンや窒素の海への拡散状況や、ノリ、アサリへの効果を把握、検証し、速やかに今後の方向性を検討していく。
- 次に、吉田委員から御意見いただいた、水産業の担い手確保のための子供を中心とした消費者への教育・人材育成に繋がる取組については、昨年度、小学生を対象に漁業者などによる出前授業を行い、合計600名以上の児童に参加いただいている。また、水産試験場では、中学生を対象に漁業体験等を行う少年少女水産教室も毎年開催している。さらに、昨年度からは、より広く愛知県産の水産物や水産業を学ぶ機会を持っていただくため、県内小学生の5年生全員を対象に、水産業の普及啓発用の教材を配布している。学校で水産業を学ぶ際に使用する教科書には、日本の水産業を説明する記述のみであることが多く、愛知県の水産業を学ぶことができなかったことから、愛知県の水産業を学習するのによい教材であると先生方から高い評価をいただいている。これらの取組は、継続的に実施することが重要と考えているので、今年度も引き続き実施し、消費者の意識啓発や教育、人材育成につなげてまいりたいと考えている。
農地整備課長
- 竹下委員からいただいた御意見についてお答えする。まず、電気代の高騰に伴う、用水機場、排水機場の維持管理費への影響について、昨今の世界情勢の影響などによる燃料費や電気代の高騰は、用水機場、排水機場の維持管理費の増大を引き起こし、適切な維持管理の懸念材料となっている。用水機場は田んぼや畑に水を届け、それから排水機場は、田んぼや畑からの排水ばかりでなく、地域から出る排水も担う重要な施設である。こうした用水機場や排水機場の維持管理費に対しては、県単独費の土地改良事業で支援をしているところである。県の財政は依然として厳しい状況が続いているが、用水機場、排水機場の維持管理が適切に行われるように予算の確保に努めていく。
- 次に、明治用水頭首工関連、多面的機能支払制度については、御要望にこたえられるよう、引き続き愛知県土地改良事業団体連合会と連携を密にして取り組んでまいりたい。
林務課長
- 吉田委員からいただいた御意見のうち、林業についての消費者への意識啓発、子供への教育、人材育成につながる取組についてお答えする。近年、SDGsやカーボンニュートラルといった観点から、林業、木材利用に対する関心が高まっており、林業振興や木材の利用促進を進める上で、追い風が吹いていると感じている。そのような中で様々なイベントの開催や出展により、木に親しみながら、木材の良さや木材利用の意義、環境への貢献などを消費者に伝える取組を行っている。近いところでは今度の10月1日、2日に、モリコロパークでWOODコレクション2022inあいちを開催する。ぜひお越しいただければと思う。また7月20日にはウインクあいちで愛知県木材利用促進シンポジウムを開催したところである。
- 次にもう1点、御意見いただいた、子供の頃から林業に親しむことについては、将来の人材育成にとって大変重要だと認識している。県の林業普及指導員が中心となり、様々な形で森林・林業への理解を深める機会を提供している。例えば、小中学校の訪問授業や、間伐をする体験、また林業関係科のある高校生に対しては、実際に林業用の機械を扱うなどの体験学習も行っている。また、お話いただいた「岩屋緑地に親しむ会」についても、平成13年の発足時から、農林水産事務所の林業普及指導員が活動を支援し、体験学習にも協力している。さらに、あいち海上の森センターでの体験プログラムの他、あいち森と緑づくり事業では、一般の方から参加を募り、「森と緑づくり」の取組を見て、感じてもらう、体感ツアーを毎年行っている。しかしながら、先ほどお話いただいたように、まだまだ少ないという印象である思うので、こうした取組をしっかりPRしながら、継続すること、そして、さらなる機会も模索しながら、引き続き、消費者への啓発、次世代を担う人材の育成とつなげていきたいと考えている。
森林保全課森と緑づくり推進室長
- 前田委員から御意見いただいた間伐実績の目標に届かなかった分析対応についてお答えする。間伐実施面積が低調な原因については、間伐材の有効利用の観点から、切り捨て間伐から利用間伐へシフトしたこと、及びあいち森と緑づくり事業において実施する林業活動では整備が困難な人工林において、防災減災対策として、道路沿いや河川沿い、集落周辺を重点的に間伐したことにより、施業のコストが増加したことが挙げられる。とくに集落周辺や道路沿いの森林においては、1筆当たりの面積が小さいことが多く、関係する森林所有者が多くなる傾向にあり、同意取得に要する作業手間が増えることも要因の一つとなっている。対応としては、目標面積が達成できるよう、高性能林業機械の活用により間伐施業の省力化に取り組みつつ、スマート林業の推進により、施業の効率化を進め、コストの削減を図っていく。具体的には、林業普及指導員が中心となり、生産性向上プロジェクトを実施し、林業経営体に対し間伐施業等の生産性を上げ効率アップを図り、より多くの利用間伐が実施できる力をつけるよう指導を続けている。スマート林業では、これまでは現地を踏査しなければわからなかった詳細な地形について、航空レーザ計測データを解析した地形図を活用し、森林所有者との立ち会いに利用して、間伐事業地の同意取得を効率的に行うよう取り組んでいる。また、2019年から、譲与が始まった森林環境譲与税を活用した市町村による間伐が進むよう、各種研修会の実施を通じ、市町村職員のスキルアップを図るとともに、林業経営体の育成に取り組むなど支援を図っていく。
- なお、目標面積については間伐が必要な森林の面積をもとに算出しており、県としても、目標がクリアできるよう、間伐関係事業の予算確保に努めている。とくに造林補助事業については、今年度は当初予算と補正予算を合わせて、過去5年間で最大規模の予算を確保しているので、作業の平準化に取り組むなど、これまで以上の間伐実施に向けて、協力をお願いする。
座長総括
徳田座長
- 最後に協議事項のまとめとして私から2、3申し上げたい。本日の皆様のからの御意見等については大きく3点に分けられると思う。
- 1点目はいわゆる地産地消を、この県内における生産と消費をいかにつなぐかということがあったかと思う。
- 2点目としては生産振興に関わる点で、とくに多かったのは、新規就農者に対する支援。それに合わせて、地域での合意づくりや耕作放棄等、農地の流動化等ということである。
- 3点目としては有機農業等も含めて、あるいは脱炭素ということでの環境対応ということだったかと思う。
- 個々それぞれ個別にあったが、とくに現在この3点は別々の問題というよりも、非常に関連した問題ということがより明確になってきたかと思う。このコロナ禍やあるいはウクライナ侵攻等に伴う食料価格、資材価格の高騰の中ではその関連性がより強くなってきたのではないかと思う。地産地消についても、やはり今回新型コロナ禍でのサプライチェーンの問題、あるいは学校等の中では、いかにすべての県民に対して安定的に食料を供給するかという点で、地場の生産、それをいかにつなぐかということが非常に大きな課題になっている。また、環境についてみると、やはり環境問題、とくに資材高騰等の問題も非常に強く関連しているかと思う。
- 脱炭素ということであるが、それはやはり資材、とくに化学肥料等をいかに削減していくかということが、長期的には大きく必要になってきていると思う。またこれからの担い手形成ということを考えても、いわゆる経営的に成り立つということと合わせて、いかにこれからの農業の形態と合わせて、今後の農業のあり方も含めて考えていくことが、とくにこれから求められてくると思っている。そういう意味では現在短期的にとくに資材価格高騰等を考えると、いかに今の状況を打開していくか、何とか切り抜けていくかという短期的な課題と、それと合わせて長期的、とくに脱炭素等を考えると長期的な展望をいかに持つかということが合わせて求められていると思う。昨年公表された農林水産省のみどりの食料システム戦略においては、2050年目標と非常に長期の目標が掲げられている。そういう意味でいうと、この食と緑の基本計画2025は言わば中期的な課題の目標になっている。当然、この課題・計画をいかに達成していくかということと同時に、長期的な視野、とくに策定時には、十分に想定しえなかったような事態の中で、長期的なところも考えていく必要があると思っている。
- マスコミ報道等において、農林水産省でも基本法の改正についての議論を今年度から始めると聞いている。そういう意味でいうと、今後の国の動きもにらみながら、県としても現状を今回の発言やこの先も含めてしっかり把握し、念頭に置きながら、この計画の推進をお願いしたいと思っている。