第4 感染症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項

感染症に係る医療提供の考え方

(1)

 伝染病予防法を制定した当時には、感染症に対する有効な治療法が存在しないといった実情を背景として、患者を集団から隔離するという施策が基本となり、積極的に医療を提供していくといった視点に乏しかったことは事実である。しかしながら、近年の医学・医療の著しい進歩により、多くの感染症について治療が可能となった現在においては、感染症の患者に対して早期に良質かつ適切な医療を提供し、重症化を防ぐとともに、感染症の病原体の感染力を減弱し、かつ、消失させることにより周囲への感染症のまん延を防止することを施策の基本とする必要がある。

(2)

 実際の医療現場においては、感染症に係る医療は特殊なものではなく、まん延防止を担保しながら一般の医療の延長線上で行なわれるべきであるとの認識の下、良質かつ適切な医療の提供が行われるべきである。このため、感染症指定医療機関においては、感染症の患者に対しては、感染症のまん延の防止のための措置をとった上で、できる限り感染症以外の患者と同様の療養環境において医療を提供すること、通信の自由が実効的に担保されるよう必要な措置を講ずること、患者がいたずらに不安に陥らないように、十分な説明及びカウンセリング(相談)を患者の心身の状況を踏まえつつ行うこと等が重要である。

(3)

 第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関は、その機能に応じて、それぞれの役割を果たすとともに、相互の連携体制や、国立感染症研究所及び国立国際医療センターとの連携体制の構築をしていく必要がある。
 

県における感染症に係る医療を提供する体制

(1)

 知事は、主として一類感染症の患者の入院を担当させ、これと併せて二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、総合的な診療機能を有する病院のうち、法第38条第2項に規定する厚生労働大臣の定める基準に適合するものについて、その開設者の同意を得て、第一種感染症指定医療機関を、表3のとおり1か所指定する。この場合において、当該指定に係る病床は、原則として2床とする。
 また、患者の病状等から移送が困難な場合においては、法第19条第1項ただし書きの規定により、知事等が適当と認める医療機関に入院させ、国及び関係機関の協力を得て、患者の治療を実施し、感染症のまん延防止を図る。

(2)

 知事は、二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、総合的な診療機能を有する病院のうち、法第38条第2項に規定する厚生労働大臣の定める基準に適合するものについて、その開設者の同意を得て、第二種感染症指定医療機関に指定する。

(3)

 第二種感染症指定医療機関を管内の二次医療圏(医療法(昭和23年法律第205号)第30条の3第2項第1号に規定する区域をいう。以下同じ。)ごとに原則として1か所指定し、当該指定に係る病床の数は、当該二次医療圏の人口を勘案して必要と認める数とする。ただし、地理的条件、社会的条件、交通事情等に照らし、一つの病院に複数の二次医療圏の区域内の二類感染症の患者の入院を担当させることが効率的であると認められるときは、当該指定に係る病床が当該複数の二次医療圏の区域内の人口を勘案して必要と認める病床数の総和以上となる限りにおいて、当該病院について、当該複数の二次医療圏の区域内の二類感染症の患者の入院を担当させる第二種感染症指定医療機関として指定することができることとし、知事は表4のとおり9か所の病院を指定する。
 なお、医療計画(医療法第30条の3第1項に規定する医療計画をいう。)の見直しが行われた場合等にあっては、必要に応じて新たな病院を指定する等、医療を提供する体制を確保する。

(4)

 第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関は、その指定を辞退しようとするときは、法第38条第7項に基づき、辞退の日の1年前までに、知事にその旨を届け出なければならない。この場合、知事は必要な病床数に不足が生じないよう新たな病院を指定する等、必要な措置を講ずる。

(5)

 知事等は、感染症の患者の迅速かつ適切な移送のための体制の整備に努めるとともに、普段から消防機関等に対して、感染症等に関し、適切に情報を提供する等密接な連携を図り、感染症患者の移送及びまん延の防止対策に万全を期す。
 また、新感染症の所見がある者の移送及びまん延防止対策の実施に当たっては、国に積極的な協力を求めながら行う。
 さらに、消防機関が移送した傷病者が法第12条第1項第1号等に規定する患者であると医療機関が判断した場合には、医療機関から消防機関に対して、当該感染症等に関し適切に情報等を提供する。

(6)

 一類感染症又は二類感染症が集団発生した場合は、一般の医療機関に緊急避難的にこれらの患者を入院させることがあるため、県等は、そのために必要な対応についてあらかじめ定めるものとする。
(7)  新型インフルエンザ等の感染症の汎流行時に、地域におけるその治療に必要な医薬品の供給及び流通を的確に行うため、医薬品の備蓄又は確保に努める。
(8)  一類感染症、二類感染症等で、国内に病原体が常在しないものについて、国内で患者が発生するおそれが高まる場合には、県が当該感染症の外来診療を担当する医療機関を選定し、保健所が当該医療機関に感染が疑われる患者を誘導するなど初期診療体制を確立することにより、地域における医療提供体制に混乱が生じないようにすることについて検討する。

(9)

 県等は、国内において発生数が極めて少ない感染症が県内で発生し、その治療に当たり特別な医薬品が必要となった場合には、国と緊密な連携を図り、医薬品の確保に努める。
 

その他感染症に係る医療の提供のための体制

(1)

 感染症患者に係る医療は、感染症指定医療機関のみで提供されるものではなく、一般医療機関においても提供されることがあることに留意する必要がある。具体的には、一類感染症又は二類感染症の患者であっても、最初に診察を受ける医療機関は、一般の医療機関であることが多く、さらに三類感染症、四類感染症又は五類感染症については、原則として一般の医療機関において医療が提供されるものである。
 また、一般の医療機関においても、国及び県等から公表された感染症に関する情報について積極的に把握し、同時に医療機関内において感染症のまん延の防止のために必要な措置を講ずるよう努める。さらに、感染症の患者について差別的な取扱いを行うことなく、良質かつ適切な医療の提供がなされるよう努める。

(2)

 一般の医療機関における感染症の患者への良質かつ適切な医療の提供が確保されるよう、県等は、医師会等の医療関係団体と緊密な連携を図る。
 

関係各機関及び関係団体との連携

(1)

 感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供のため、一類感染症及び二類感染症に対応する感染症指定医療機関については、知事が必要な指導を積極的に行う。

(2)

 特に地域における感染症対策の中核的機関である保健所は、感染症指定医療機関や地域の医師会等の医療関係団体等との緊密な連携を図る。

(3)

 一般の医療機関は、多くの場合感染症の患者を診察する最初の医療機関となることから、当該医療機関での対応が感染症の予防の観点からも、感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供の観点からも極めて重要である。このため、県等は、それぞれ医師会等の医療関係団体との連携を通じて、一般の医療機関との有機的な連携を図る。


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