本文
農林水産委員会審査状況(令和7年10月3日)
農林水産委員会
委員会
日時 令和7年10月3日(金曜日) 午後0時58分~
会場 第2委員会室
出席者
安井伸治、中村貴文 正副委員長
中野治美、須崎かん、島倉 誠、山田たかお、中村竜彦、浦野隼次、
鈴木 純、谷口知美、古林千恵、末永けい 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
付託案件等
議案
第132号 令和7年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳出
第6款 農林水産費
第133号 令和7年度愛知県県有林野特別会計補正予算(第1号)
第148号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金の変更について
第152号 損害賠償の額の決定及び和解について(愛知県立農業大学校)
第156号 愛知県森林公園のゴルフ施設の指定管理者の指定の期間の変更について
結果
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第132号、第133号、第148号、第152号及び第156号
閉会中継続調査申出案件
- 農林水産業の振興について
- 農地関係の調整及び土地改良について
- 緑化の推進について
- 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会の行政運営について
会議の概要
- 開会
- 議案審査(5件)
(1)理事者の説明
(2)質疑
(3)採決 - 委員長報告の決定
- 一般質問
- 閉会中継続調査申出案件の決定
- 閉会
主な質疑
議案関係
【委員】
愛知県森林公園のゴルフ施設の指定管理者の指定期間の変更について伺う。
説明を聞いたところ、事業契約書の規定に基づき今回のように決定したとあるが、まず規定の中身、内容はどうなっているのか、また、どのような計算で12年4か月という延長期間が算出されているのか改めて伺う。
【理事者】
事業契約書では、県は、PFI事業者に対して維持管理及び運営の方法の変更を求めることができ、その変更が県と事業者双方の責めに帰すことができない事由で事業者に追加的な費用負担が生じた場合は、県とPFI事業者が協議の上、今回の事業費に相当する費用を回収する期間として合意した期間を延長できるとされている。
期間の計算方法も事業契約書に規定されていて、PFI事業者がまず工事費用を算出する。そして直近3か年の利益の平均を現状の利益1.3億円とし、そこから期間延長により追加的に発生する費用8,000万円を差し引いたものを今後見込まれる利益5,000万円、それを基に回収期間を算定することになっている。追加的に発生する費用として、維持修繕費と運営管理費のうちのかかり増し経費3,000万円のほか、カート道に係る減価償却費5,000万円がある。こうした条件で算定した結果、今回延長する12年4か月間となった。
この条項は、PFI事業者が健全な運営を行いながら工事費用を回収できるよう規定したものである。
【委員】
今説明してもらったが、指定管理の延長期間の算出根拠をもう少し具体的に伺う。直近の3か年の実績を現状の利益としており、これには維持修繕費や運営管理費が反映されているはずであるが、今回さらに追加費用として年額3,000万円を計上しているのはなぜなのか、また、追加費用、年額3,000万円の内訳はどうなっているのか。
【理事者】
維持修繕費や運営管理費そのものは現状の利益に反映されているため、追加費用には含まれていない。当初の20年間の契約期間を超えるため、維持修繕費及び運営管理費のうちの物価上昇分のかかり増しとなる部分のみを計上している。その内訳は、施設整備費、人件費、施設管理委託費、光熱水費の消費者物価指数上昇分であって、それぞれ3.3パーセントで想定して計算した額である。
【委員】
事業契約書の契約期間延長の条文のとおりに対応すれば、財務上、資産と減価償却費の両方を計上して、事業者は6億円を投資し、また、6億円を減価償却として計上して、6億円を回収することになる。また、事業者の利益は、現状の1億3,000万から追加的に発生する費用を差し引いて5,000万としているが、事業契約書には、事業者の利益を確保するといった具体的な記載まではない。その場合、投資した6億円を回収するまでの期間延長が適当だという考え方もある。その解釈について県の考え方を伺う。
【理事者】
委員の示すとおり、事業契約書の条文には、事業者の利益確保に関する具体的な記載はない。協議の中では、事業者が利益を得ることを見込んでいないが、減価償却費等の必要な経費を計上することで、キャッシュフロー計算書上では現金資産となり、そういった意味では利益となり得る。
しかし、県として事業契約書に基づき算出したものであり、かつ安定的な経営のためには必要なものである。このため、減価償却費を追加的に発生する費用として見ることで、期間が長くなることもやむを得ないものと考えている。
【委員】
県の見解は分かった。事業契約書の規定に基づいて指定管理の期間を延長するとしているが、県が直営でカート道の改修工事を実施する選択肢もあったのではないか。その検討はどのように行われたのか。
【理事者】
事業契約書に規定される方法により対応することが原則ではあるが、長期の期間延長が必要となることから、契約に沿った方法以外に、改修工事に必要な6億円余りの経費を県が負担する方法も検討した。その場合、多額な工事費負担は、県有林野特別会計の経営に影響を及ぼすほか、ゴルフ人口の減少などによる将来のマーケットリスクを県が負うことになり、費用を回収するための収益が今後確保できるか、さらに、費用を回収するための新たな契約をどの事業者とどのような内容で締結できるかという懸念もある。
一方で、現行の事業契約書に基づく対応の場合、指定管理の期間が長くなるが、将来の様々なリスクや懸念を回避することができる。また、県有林野特別会計の安定的な経営が確保できることから、県としては、契約書の条項どおりに指定管理の期間を延長することが最適な方法と考えた。
【委員】
今回の対応、様々検討した上で決めたことは分かった。その一方で、今回のように、実質的に随意契約のような形での長期間の延長は、他の事業者が新たに参入する機会が減少するというか、機会がなくなる、また、愛知県森林公園のゴルフ施設をよりよいものにしていく可能性が失われる懸念も発生すると思うが、その点について県の考え方はどのようなものか。
【理事者】
今回の延長で他の事業者の参入機会が結果的に減少してしまうことは、委員指摘のとおりである。
愛知県森林公園のゴルフ施設は、約20年前に施設の建設、維持管理、運営等を事業者が行い、期間満了後は施設の所有権を県に移転する、いわゆるBOT方式のPFI事業を採用している。事業者は施設の利用者に公共サービスを提供し、その利用料金等を利用者から受け取ることで事業コストを回収する独立採算制を取っている。この方式を採用した経緯は、当時、クラブハウスの老朽化や利用者の減少などにより、県有林野特別会計において、県が自ら施設整備を行いながら健全にゴルフ施設を運営することが厳しい状況となり、県の財政支出を抑えつつ、民間資金を活用していくこととしたのが発端である。そのため、事業契約書では、県が費用負担することが極力生じないように設定している。
今回は、双方協議の結果、PFI事業者と合意の上、契約書の規定に基づいて期間延長を行うこととしたが、契約当初はこのような長期の期間延長となる工事を想定していなかったとも思われる。しかし、今回こうした事態が起きていることから、今後はこのようなリスクも想定していく必要がある。
ゴルフ施設をよりよいものへと変えていくことは非常に重要と考えているので、今後も、県民に親しまれ、安定したゴルフ場運営を継続できるよう、PFI事業者との連絡会議等において密接に調整を行いながら、施設の魅力向上に一層努めていく。
【委員】
愛知県森林公園のゴルフ施設は、昭和30年に県内3番目のゴルフ場として、また、全国2番目の公営ゴルフ場として開場して以来、70年余りにわたって、ゴルフ競技を一般の県民スポーツとしての普及啓発、ゴルフ人口の拡大と県民の健康福祉に寄与してきた施設である。20年前のPFIの導入によって、県の財政負担を抑えるとともに、センターハウスやベントグリーンなどの新たな施設整備がされて、公共施設としてのゴルフ場の経営が健全にされたことは、これは誰もが認める事実である。
ただ、今回の改修事業は、PFI導入当初は想定していなかったとは理解するが、そもそも指定管理契約は、その都度、議案として提出されるたびに、期間や金額等も含め、議会でその内容を審査して認めている。その観点からすると、今回のように改修費用が発生するからといっていたずらに契約期間が長くなることは、あまり好ましくないと思う。
そのような意味では、これからもこのような事案は、森林公園に限らず、どの部局でも発生するおそれがあるので、今後、県としてしっかりとどのように対応していくのか、我々が議決する重みも含めて、その点を十分に勘案してほしい。
あわせて、今回改修するカート道路は、ゴルフ場が開場した当時にできた施設で、私も最近行っていないので記憶が定かではないが、アンダーになっている部分の道路は、カートが通ると余裕がない。ゴルフ人口も高齢化してきており、現状のままだと、接触事故が起きることもあり得るのではないか。今回改修するに当たっては、安全面にも十分に配慮した、新しいカート道路を建設するよう要望する。
一般質問
【委員】
森林情報の整備と森林の境界明確化について伺う。
先日の本委員会の県外調査において石川県を訪れ、株式会社小松製作所では、林業の活性化の取組について調査した。その中で、ドローンで撮影した写真を基に、樹種やそこにある資源量などが把握でき、これまで現地での人手作業で行っていた森林調査が効果的に行える技術に興味を持った。
本県でも平成30年からスマート林業に取り組んでおり、その中で、航空レーザー計測による詳細な森林情報の整備が進められてきたと承知している。石川県ではドローンを使った写真による方法、本県では航空機によるレーザー計測を利用しており、手法が異なっている。
本県が進めてきた航空レーザー計測と、ドローンを利用する方法はどのような違いがあるのか。
【理事者】
森林情報の取得には、航空機かドローンかといった機材の違い、写真かレーザーかといったデータの違いによって様々な手法がある。
まず、航空機とドローンの違いとしては、航空機が高い高度から市町村や県といった広い範囲を対象として計測するのに対して、ドローンは、比較的低い高度で飛ぶことで航空機よりも詳細な計測が可能となるが、その代わり1回の計測範囲が数ヘクタール程度と狭くなる。
また、写真とレーザーの違いは、写真は、安価に撮影することができるが、樹木の葉などに隠れて地表が目視できないところの詳細な地形は把握することができない。一方、レーザーは、値段は高いが、葉の間などを通過したレーザーパルスを基に詳細な地形を把握することができるという違いがある。
それぞれに特性がある中で、本県では、全県の詳細な森林情報の把握を目的として、これまで航空レーザー計測に取り組んできた。
【委員】
航空レーザー計測にはドローンによる撮影にはない利点があることが理解できた。航空レーザー計測で得られた詳細な情報を県内全域で整備して、広く活用できることが重要だと考える。
詳細な森林情報の整備にどのように取り組んできたのか。
【理事者】
本県では、2018年度から国有林を除く県内全ての森林約20万6,000ヘクタールの航空レーザー計測とデータ解析を進め、2021年度に完了した。航空レーザー計測は、航空機より上空から森林に向けてレーザーを照射し、樹木や地面で反射したパルスデータを解析することによって、樹種や樹木一本一本の立っている場所、それぞれの高さといった森林資源情報や地表の凹凸、過去の崩壊跡地といった地形情報などの詳細な情報を把握することができる。
詳細な森林資源情報と地形情報に加え、県、市町村、林業経営体が保有する所有者や面積等のデータ、過去の伐採履歴などの情報を一元化して共有する森林クラウドシステムを2022年度から開発を進め、昨年度から本格運用を始めている。市町村や林業経営体は、このシステムに登載された森林情報を利用して、樹木の混み具合から間伐の必要な森林を抽出したり、施業に必要な作業道のルートを画面上で選定したりするなどの活用をしている。
【委員】
先ほどの石川県の調査では、ドローンで撮影した写真を基に、樹種などの違いから森林を区分して、公図などを参照しながら、それぞれの森林の境界を明らかにしていく技術も説明を受けた。
一方、本県では、私の地元である東三河地域において、森林資源の循環利用による東三河の振興を掲げて東三河森林ルネッサンスプロジェクトが進められている。令和6年2月定例議会で私の一般質問でも聞いたものの、その中で森林から新たな収益を生み出す手法として森林信託の導入の可能性が検討されたが、当地域の森林は地籍調査がほとんど行われておらず、森林の境界が適切に決められないところがあることから、森林信託の導入は難しいと聞いている。
また、私の聞いたところでは、森林の境界を測って決めるには、測量機器を持ち込んで何日も測量して、その結果を地図にしてから決めるため、費用も高額となることから、森林所有者が境界の明確化に積極的ではないとのことである。しかしながら、自ら所有する森林の境界を明確にすること、また、石川県の事例のように、新しい技術を使って効率的に森林の境界の明確化を進めていくことは重要だと考えている。
本県において、新しい技術を使った森林の境界明確化にどのように取り組んでいるのか。また、今後どのように進めていくのか。
【理事者】
航空レーザー計測の解析データから得られた詳細な地形情報や森林資源情報を活用することによって、尾根や沢などの地形や、樹種や木の大きさの違いなどによって、区切られた森林の境界を推測して図面上に示すことができる。集会場等へ森林所有者が集まり、図面を見て隣接所有者双方が納得すれば、これまでのように現地に出向いて境界を確認する必要がなくなり、省略することができる。
本県においても、2021年度に新城市で約35ヘクタール、2022年度に東栄町で約35ヘクタール、2023年度には瀬戸市で約53ヘクタールと幸田町で約31ヘクタールの森林において、このような手法を用いてモデル的に森林の境界明確化に取り組んできた。
今後は、これらのモデル事例を農林水産事務所の林業普及指導員が市町村や森林所有者に説明し、境界明確化を働きかけていくことで、県内に広げていきたい。具体的には、境界明確化のためのマニュアルを作成し、農林水産事務所に配布しており、このマニュアルを活用して市町村等へ働きかけを進めていく。こうした方法により、現地の立会いが省略でき、境界の明確化が効率的に進むことから、今後も市町村や地域の人々と連携して取り組んでいきたい。
【委員】
森林の境界の明確化は、自らの所有する森林の価値を適切に定めることにつながるとともに、境界が分からなかったことで進まなかった森林の施業が進むことにもつながる大変重要なことである。今後も森林の境界の明確化が進むよう、引き続き、県は市町村や森林所有者と連携して取り組むよう要望する。
【委員】
県内の木材利用促進とカーボンニュートラルの取組について伺う。
先日、本委員会にて新城市にある愛知県森林・林業技術センターを視察した。センターでは、林業従事者等に対して新しい知識及び技術研修を行い、生産性の向上並びに林業従事者の育成と資質の向上を図るための取組や、実際の教育のデモンストレーションも視察した。そこで、新たな取組であるエリートツリーの育成、栽培など、先進的な取組を見て、木材活用への期待が高まった。
愛知県では、戦後植樹された人工林の利用時期の到来、水源涵養、地球温暖化防止など多面的な機能を有する森林の保全、林業、木材産業の活性化のための様々な課題、木材の炭素を固定する性質による温室効果ガスの排出削減への貢献などを背景に、愛知県木材利用促進条例が令和3年10月15日に公布、令和4年4月1日より施行されている。国では令和3年に脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律が改正され、公共建築物だけではなく、民間建築物にも木材利用が広がりつつあり、町でも木のぬくもりを感じる建物を多く見かけるようになった。
県有林の主な場所及び総面積と、管理している樹木の種類の内訳及び適齢の利用時期に達している木材の割合を教えてほしい。
【理事者】
県有林野特別会計で管理している森林は、主に、林業経営を目的とした模範造林地、森林の公益的機能の高度発揮を目的とした治水関係林野地、県民のレクリエーションや憩いの場として利用される愛知県森林公園や愛知県民の森などがあり、豊田市や瀬戸市を中心に、12市町村に約6,000ヘクタールがある。
なお、愛知県の森林に占める県有林の割合は3パーセント未満となっている。そのうち、スギ・ヒノキ林が約2,100ヘクタール、広葉樹が主に生育している天然林は約2,400ヘクタールとなっている。また、利用期に達しているスギ・ヒノキ林の割合は、スギが87.3パーセント、ヒノキが55.2パーセントとなっている。
【委員】
木材利用促進のために、県有林ではなく個人所有の山林において植樹に対する指導などを、どのように行っているのか。
【理事者】
スギ、ヒノキを収穫し、木材利用を進めるに当たって、森林に生育する全ての木を伐採する皆伐を行った場合、新しい木を植樹せずにそのまま放置すると、土砂の流出などの荒廃が心配されるだけでなく、将来的に森林資源を確保できなくなる。
そこで、皆伐とその後の再造林をセットで考え、伐採前から植栽を計画し再造林が進むように、各地域の林業普及指導員が指導を行っている。森林の立地状況や所有者の意向を踏まえ、植栽樹種などの助言を行って、個人所有の山林は所有者本人が植栽樹種を決定する。例えば林道などの道路に近く、切り出した木材の運搬に有利な区域は、スギやヒノキを推奨し、将来にわたって木材生産が行えるよう働きかけている。
今後は、先日の県内調査で視察対象だったエリートツリーなどの苗木生産を進め、より低コストで森林の育成が図れるように推進していく。
【委員】
林野庁のホームページには、木材利用はカーボンニュートラルな社会の実現に貢献し、木材は製造時のCO2排出量が鉄やコンクリート等よりも比較的少なく、木材を使えば建築物のライフサイクル全体のうち、資材製造段階などの排出量を削減でき、また、建築物に長期間にわたり炭素を貯蔵できるとされ、森林資源の活用により、国内、地域で生産された木材を使えば、林業、木材産業の発展を通じて、地域の社会資源の維持、活性化に貢献できると記載がある。推進すべき取組であることは理解できるが、建築のためのコストが高いなどの課題もある。
森林における炭素蓄積量の経年別の年間吸収量の推移、何年程度の樹木を伐採し、新たに植樹するサイクルが炭素削減にベストとなるのか。また、炭素を蓄積した木材を利用した木造建築物と鉄骨建築物の1棟当たりのCO2排出量の比較があれば教えてほしい。
【理事者】
本県の森林の大半を占めるスギ・ヒノキ林では、炭素吸収量が最大となるのは20年生頃である。40年生頃までの若い森林が炭素をよく吸収し、その後、吸収量は徐々に下がっていく。伐った樹木を木材として加工し、住宅等の建築物や家具などにおいて長期間利用することで、多くの炭素を固定することになる。このため、多くの炭素を固定し、木材として利用しやすくなる大きさに育つ50年生頃に伐採し、再度植栽するサイクルが最も多く炭素を固定できると考えている。しかし、植栽やその後の保育にコストがかかるので、そこを考慮すると、実際には50年より長い期間で伐採している。
木材は、加工が容易な材料であり、木造は鉄骨造に比べCO2の排出が少なくなる。林野庁の資料によると、標準的な住宅1戸、約41坪になるが、これを建築する際の材料製造に係るCO2の排出量は、木造では5.1炭素トン、また、同規模の鉄骨造では14.7炭素トンとなり、木造は3分の1程度となる。
【委員】
樹齢が高いほうが炭素をより蓄積しているのかと思っていた。
木材は古くから住宅や家具等の材料として用いられ、木の香りや感覚は、人に癒やし、心地よさをもたらすことが経験的に知られている。木材利用促進には、林業従事者の育成やコストに関する課題も多くあると思うが、愛知県の木材をしっかり活用した建築の促進を引き続きお願いする。
【委員】
農業総合試験場の品種改良について伺う。今議会の本会議一般質問でも、議員から指摘があったように、近年の夏の暑さは異常であり、今年は平均気温が例年に比べて2.36度も高く、統計以来最高を記録しているとのことである。
9月12日に本委員会の県外調査で石川県の株式会社林農産を視察した。あちらの地域ではコシヒカリを多く作っているとのことであったが、水温が26度を超えると、米の粒が白く濁ったり、収量が減ったり、一等米の比率が下がるとのことである。その結果、商品化できる米の収量が落ちるので、米不足の要因の一つになっているのではないかと理解した。
この夏が異常気象という言い方をするが、もはや異常ではなく、今後もこのような気温が続くと思う。そこで、暑さに耐性のある品種に改良していくことになると思うが、本県においては、日本でも指折りの農業総合試験場があり、新技術や新品種の開発に積極的に取り組んでいると承知している。まず高温耐性品種の開発状況を教えてほしい。
【理事者】
農業総合試験場では、これまで夏の高温による米の品質低下に対応するために、高温耐性品種として、2013年に極早生品種のなつきらりを開発し、愛ひとつぶのブランド名で普及を進めている。2019年には、早生品種で粒が大きくて食味のよい、あいちのこころを開発し、本年、2025年産から本格的に生産が始まっている。
米以外の品目では、本県が日本一の産出額を誇るキク類において、2021年に開発した、夏の暑さによる立ち枯れに強いスプレー愛知夏3号は、その特性が広く受け入れられ、東三河地域を中心に盛んに栽培されている。
今後も、米に限らず、野菜や果樹、花卉などの園芸品目も、夏の暑さに強い新品種の開発に取り組んでいく。
【委員】
どれほど優れた品種が開発されたとしても、花のように見て分かるもの、商品棚に並んでいればそのよさが分かるものは普及が早いと思うが、食べてみなければ分からないものは、農家にとってはこれまで慣れ親しんだもの、消費者にしてみれば知名度などで選ぶ。水温が26度を超えると未熟の粒が増える事情を一般消費者は知らないため、何となくコシヒカリが選ばれてしまうと思う。
例えば米で言うと、現在では、先ほどの答弁にもあった、なつきらりが2013年に開発され、愛ひとつぶというブランド名で売り出されているほか、国が開発したにじのきらめきも、新しい乾田直播というまき方で、省力化もでき、極めて夏の耐性に強い品種も世の中にある。しかしながら、実際の愛知県の作付面積を見ると、去年の一等米の比率が50パーセントを超えているあいちのかおりとコシヒカリの2種類で作付けの6割を占めている。コシヒカリは、夏の高温に極めて弱く、昨年の一等米比率は2.8パーセントとのことである。依然として、今まで作っていた品種が作りやすいというところもあるだろうし、先ほど言ったような消費者の動向に左右されるところもあり、なかなか選ばれないこともあると思う。
先ほどの答弁にあった、2013年開発のなつきらりは、去年一等米比率が80パーセントを超えており、とてもいい品種がもう既にあるのになかなか浸透していないところが課題だと思う。なつきらりと、一等米比率が2.8パーセントしかないコシヒカリを炊いて、食べ比べてみれば、そんなに味も変わらない、どちらかというとなつきらりがおいしいとも聞いている。私は食べたことがないので分からず申し訳ない。そのように、劣らない一定の水準を超えているものであれば、安いほうがいいとなると思うので、生産者及び消費者に開発品種を選択させるための方策が求められるが、県の所見を伺う。

ブランド米「愛ひとつぶ」
【理事者】
本県が開発した品種を選択してもらう方策について、委員が挙げた水稲を例にすると、生産者に対しては、地域の特性を生かした生産のしやすさ、高温耐性や良食味など、開発した品種の特性を農業協同組合(JA)などの農業団体と連携してPRし、作付意向を高めるとともに、普及指導員による栽培技術支援等を通じて、作付面積の拡大を図っていく。
消費者に対しては、開発した品種の知名度の向上が重要と考える。特に愛ひとつぶのようなブランド化を進める場合は、メディアなどを活用し、県民の目に触れる取組が必要と考える。そのためには、関係機関との連携により、様々な機会を活用し、知名度向上の取組を実施する。特に最近はSNSによる情報発信が大きな力となるので、現在その準備を進めている。
【委員】
知名度を高めることは大変重要なポイントだと思うので、一生懸命頑張ってほしい。
最後に、米にかかわらず、これまでの日本の農産物の品種改良は、病害虫や高温への耐性など、重要な生育の品種改良とともに、主としてブランド化を念頭に置いた味の向上を重視して、収量の増加は相対的に優先度が低かったように思う。しかしながら、今後の世の中を展望してみると、避けて通ることができない農業人口の減少、高齢化で農家が減っていくという状況、そして、どうやってもうかる農業に転換していくのか。一方で、世界の人口はまだまだ増加してくる基調にある中で、国策として農産物の輸出を拡大する目標も掲げられている。
これらを踏まえると、例えば、6月定例議会の本委員会で例に出したが、イチゴのように、厳選された一粒に魂を込めて糖度を上げていく品種改良よりは、特級品に比べれば多少味は落ちるかもしれないが、世界基準から見れば依然とこれは美味しいという品質は維持しつつ、何より収量が増えるもの、この間のイチゴだと、せっかく愛知県で味のいいゆめのかを開発したのに、農家は収量が多い章姫を作付けしている。これが正直な、もうかる分岐点の考え方だと思う。そのため、味は維持しながら、収量が今の倍になるようなところに科学技術を投入していく。今までは、糖度アップや、すばらしい味を追求していたように思うが、それよりも量産していくところに研究を費やしていくべきと考えるが、品種改良の在り方について県当局の考えを伺う。
【理事者】
農業総合試験場では、新品種の開発に当たり、各地の農業改良普及課や、農業者、農業者団体等の関係機関から収穫量の増加や病害虫への耐性、高温への耐性、品質の向上など要望を踏まえて開発の方向を定めている。中でも、委員の示すとおり、収穫量の向上は、生産者の所得に直結する重要な要素であり、新品種選抜の際には重視している。
新品種の開発に当たっては、国や他の都道府県との連携も重要である。例えば農林水産省は令和8年度の予算の概算要求において、都道府県の試験場などが行う多収性や高温耐性、病害虫抵抗性といった革新的な特性を持つ新品種の開発を支援する方針を示している。
県としては、国の支援策も有効に活用しながら、生産者や消費者のニーズを踏まえつつ、収穫量の向上も含め、生産性の向上につながる新品種の開発を一層加速していきたい。
【委員】
大いに期待している。
【委員】
まず1項目めとして、県職員の農業の副業を導入してもらいたい。
先ほどから話もあるように、農業従事者、基幹的農業従事者が現状122万人程度で、5年後には40万人程度になるとの見込みがあり、それに対してどのような策をやっていくか。ICT、スマート農業、集約化などが言われているものの、現実問題として、今の農業水準を維持するためには間に合わないと思っているため、日本産の物を食べることに関してのメルクマールにしていかなければいけないと考える。その中で、打開策としては、公共事業として、公務員の人々が農業をすることを以前から伝えている。我々政治家もそうであるが、公務員は率先垂範して農業を直営ですることで民間にも広がりを見せるのではないかと思っている中で、石破茂総理大臣も今年の春ごろに、退役自衛官に対して、元々工作機械などの様々な資格なども持っていることもあり、株式会社パソナを通じて農業に取り組んでもらう情報も見た。株式会社パソナかと正直思うところはあったものの、いずれにしても、使える人材をどんどん使っていくことに関しては、大きい方向性としてそのようになっていくと思う。
県内でも最近いいニュースが流れて、豊橋市役所が産業部の職員に、試行的に農作業及び農作業に付随する作業を副業として認めていくことを打ち出している。ポイントは、農業振興として、農業の人材不足・人手不足解消を促進することと、農業に精通した市職員の人材育成につながる狙いがあるとのことである。
私の考えとしては、農林水産部局の職員に副業を認めていくよりも、それ以外の部局の県職員に、一次産業が今ぐらついている状況の中で知ってもらいたい。愛知県は万博からもう20周年で、愛・地球博20祭も最近閉幕したが、自然の叡智が大きなテーマだった。
ところが、医療福祉部局が、いつまでもコロナワクチンとかマスクを推進するような、自然とかけ離れたことを行っている。我々現代人も日々過ごす中で、1日も一瞬たりとも土に触れない生活を送っている。機械なら静電気を除去するためにアーシングが必要であるように、土に触れる機会を少しでもつくることを県職員に呼びかけたいという意味で、県職員が副業として、また当然農業を維持発展させるために、農業分野での副業を制度化していくことの所見を伺う。
【理事者】
豊橋市において、一部の市職員が副業として農作業に従事できるよう制度化し、9月から試行的に始めたことは報道で承知している。また、都道府県であれば、山形県のサクランボの収穫作業時に限定し、県職員が副業として協力しやすくする制度や、長野県がスキー、スノーボードのインストラクターなどと共に農産物の生産活動も副業の許可対象としていることは、新聞、記者発表資料により承知している。
原則として、県職員は地方公務員法により職務に専念する義務がある一方で、報酬を得て事業または事務に従事する場合、任命権者である知事の許可を受けなければならないことになっているが、その許可基準は人事局が所管しており、限定的に運用されている。現状において、本県で許可を受けて農業に従事している職員は、相続により農地を引き継いだ職員に限られている。
農業水産局としては、今後、農家や職員から農業の副業の制度化等の要望があれば、そうした要望があったことを人事局に伝えていきたい。
【委員】
人事局に問合わせてみたが、この分野に限らず、県職員の副業に関して、現状具体的な検討は行っておらず、今後行うとのことであった。副業は、デジタルなど、どの分野もいろいろあると思う。だが、一次産業という、自動車産業や製造業に隠れがちになっている愛知の誇れる農業をまず足元から盛り上げていく、つまり政策的に誘導していく意味で、農林水産部局として、人事局、総務局に、徹底的に、積極的に重要性を伝えてもらうことを要望する。
次に2項目めとして、企業における健康経営の支援について伺う。
近年、経済産業省で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に実践する健康経営を推進している。企業が健康経営を進める取組の一つとして、従業員の健康づくりの観点から、食生活の改善を促す取組がある。様々な経営者と話す中で、皆かなり意識が高く、健康経営を推進するためにどのようなことを行えるのか考えており、これから伸びる分野だと思っている。また、健康経営に取り組んでいる会社は選ばれる会社にもなり、人材不足解消にも、とても有効である。
その中で農業水産局として何ができるかを考えた際、愛知の地場の農林水産物や農業など、食の観点から健康経営の取組を企業に支援できないかの趣旨の質問である。私自身は、地元の春日井市主催の2025健康救急フェスティバルが9月に開催されており、行ってきた。栄養士会や地元の大学など様々なブースがあったが、野菜をもっと食べようとの呼びかけやブースが多かった。実際、愛知県の1人当たりの野菜消費量は全国ワーストだとこの前議論したが、地元のものを食べることと、健康づくりと、働いている会社での健康経営の取組は、横串でつながっていくと感じた。
なじみのある地産地消の観点を取り入れながら健康に配慮したメニューを提供するなど、私の知っている会社も、経済産業省の健康経営優良法人に認定されており、会社の中の事業の柱として農業を行っているわけではないが、会社の畑で取れた作物を従業員に配る、一緒に調理してレクリエーションとして食べるなどの取組事例が経済産業省のパンフレットに掲載されている。愛知県は健康経営を推進している会社を表彰するなどしているので、ぜひそういった企業を、農林水産部局としても応援してほしい。
企業において健康経営を実践するに当たり、地産地消の推進が重要であると思うが、県はどのように考え、取り組んでいるのか。
【理事者】
県では、いいともあいち運動の取組の一環として、企業における地産地消に対する理解醸成に向け、社員食堂で県産農林水産物を使用した料理を提供するメニューフェアを昨年度から実施している。昨年度は、株式会社デンソー及び碧海信用金庫の協力を得て、約1か月間で延べ4万7,000食以上の県産農林水産物を活用したメニューを提供できた。また、食堂の利用者を対象としたアンケートでは、地元の農林水産業に対する理解が深まった、愛知県産の食材を積極的に取り入れていきたいという声もあり、大変好評でもあった。
このため、今年度も引き続き企業と連携した社員食堂でのメニューフェアをこの11月から実施することを予定しており、こうした取組事例を広く周知することで、企業独自の取組となっていくよう発展させながら、さらなる企業の地産地消の推進につなげていきたい。
【委員】
続いて3項目め、健康ブームを活用して県の農林水産業、食の分野を推進していく観点から、発酵食や郷土食などの和食文化の推進について伺う。
今、健康経営を出したが、もう一つキーワードとして、大腸、小腸の腸の活動である腸活が民間で広がりを見せている。これは、食物繊維を取ろう、あるいは発酵食や乳酸菌が含まれたものを取ろうというものである。腸は第二の脳とも言われていて、腸が不健康だからメンタルが不調になってしまうという研究も広がっており、健康面から農林水産業を広げていくアプローチをぜひ取ってほしい。
愛知県ではみそや発酵食品が非常に盛んに昔から伝わってきていて、それらを活用した郷土食などの食文化も、もともと発達しているので、いいともあいち運動や、SNSで地元の郷土食とかを積極的に発信していることをすごくうれしく思っている。
今後、腸活を推進する観点から、どのように取り組んでいくのか。
【理事者】
愛知県では豊富な農産物と湿気の多い気候を背景に、江戸時代から醸造業が発展し、豆みそやたまりじょうゆなどの多様な発酵調味料が造られており、本県の独特の食文化を支えている。
あいち食育いきいきプラン2025においては、栄養バランスに優れ健康的な食事スタイルである和食文化を次世代に伝えていくため、郷土料理などを継承する取組を推進している。愛知の郷土料理にまつわる歴史やいわれなど取りまとめたレシピ集、あいちの郷土料理レシピ50選を作成し、郷土食の普及啓発を図っている。
今後もかけがえのない財産である本県の発酵食や郷土食などの和食文化が継承されるよう取組を推進していく。
【委員】
続いて4項目め、企業等の農業の参入、農業のアウトソーシングについて伺う。
現在、農業を取り巻く情勢で、農家、あるいは農地を持っている人が、相続などで担い手がいない農地をどうにかしたいという声がある。対応策の一つとして、近くの農家に縁を広げてもらうほか、地元の農業協同組合や不動産部に掛け合って見つけていく手法がある。とはいえ、所有者も努力しなければいけないとは思うが、どうしても適切な人が見つからないときもある。そのような話も今後出てくると思われる中で、今、市町村で、昨年末までに策定された地域計画では、受け手不在の農地は依然多いと聞いている。
そこで、企業やNPOなどの一般法人の農業の参入は、こうした課題を解決するための取組の一つだと考える。農機具の貸与などの取組はあると思うが、農作業自体をアウトソーシングして委託することは、農地に関する権利の設定、移転を伴わないので、もともと相続していた農地を移転しない、手放さない中でできるというメリットがあると思う。
民間でそのような農作業の受託し、収益を上げられる会社が広がれば、ビジネスチャンスにもなっていくと思うし、ニーズが出てくるのではないか。
2009年の農地法改正により、企業等の一般法人がリース方式によって農地を取得できる制度が創設された。現在はリース方式により自ら農業経営を行う企業等が増えていると聞いている。
そこで、本県における企業やNPOなどの一般法人の農業参入の状況はどのようになっているのか、また、今後の推進について県の所見を伺う。
【理事者】
委員の示すとおり、2009年の農地法改正により、リース方式による農地の権利の取得方法が創設され、農地を適正に利用することをリース契約の条件とした上で、企業やNPO法人といった多様な法人が農地を借りられるようになった。この方式を活用して農業に参入した法人数は、2018年には108法人であったのが、2023年には169法人となっており、増加傾向にある。作物の内訳は野菜が約40パーセントを占め、次いで果樹、花卉等となっており、多様な作物が栽培されている。リース方式による農地の権利の取得は、市町村農業委員会による農地法3条許可、農地中間管理機構が作成する農用地利用集積等促進計画のいずれの方法によっても行うことが可能となっており、関係機関と連携し、リース方式による農地の権利の取得を引き続き推進していく。
【委員】
次に5項目め、高齢の農業従事者の安易な免許返納の防止と、農業を続けてもらうための取組を伺う。
昨今、メディアやワイドショー等で、高齢者がいたたまれない事故を起こしたことがとても騒がれている。事故に遭われた人には御冥福とお見舞いを申し上げなければいけないが、残念ながら、若い人も現役世代の人もひどい事故をたくさん起こしているのに、人口ボリュームが多い高齢者だけが運転リスクがあるかのような風潮が蔓延していることに対して、非常に高い危惧を抱いている。
実際、運動能力や判断能力は個人差があるわけである。高齢者と一くくりにして、自治体もタクシー券というあめを持たせるなどして、高齢者の免許の自主返納を促すような、同調圧力が地域に広がっている。家族や地域の人に、あの人まだ運転していて大丈夫かみたいなことを言われており、自分たちが高齢になったときに、まだ運転できるし健康なのに、そのようなことを周りから言われ、そのような目で見られてしまうことは、非常に怖いことだし、高齢者がとてもかわいそうである。社会に出て行きづらくなる。私も春日市の高蔵寺に住んでいて、地元に高蔵寺ニュータウンがあるので、免許返納したらもう移動できないというような声もたくさん聞いている。だから、社会の風潮を一回疑ってみるというか、冷静に考えてみていかなければいけないなと思っている。
農業分野では、軽トラックや工作機械などには、当然免許が必要であるので、元気に農業を現役でしている人もこのような風潮の中で安易に免許を返納しなければいけないとなってしまうと、日本の農業そのものにも負の影響が出てしまうのではないかと気づいた。農業人口に歯止めをかけるためにも、元気な高齢者にはできる限り長く営農を継続してもらうことが重要だと思う。できれば、高齢者が安易に免許を返納しないような仕組みが取れたらいいと考えるが、県の所見を伺う。
【理事者】
まず、本県の基幹的農業従事者数は、2015年の5万5,448人から2020年は4万159人と、5年間で1万5,000人ほど減っている。一方で、65歳以上の高齢者の占める割合は、63.8パーセントから65.7パーセントと増加しており、高齢者が農業にとって大切な働き手となっている現状がある。これは全国的に見ても同様の傾向にある。
本県が関係機関・団体と協力して行っている農作業事故の調査において、2022年から2024年の3年間で457件の農作業事故が発生している。うち59パーセントの272件が65歳以上の高齢者によるものだった。特に被害の程度で見ると、死亡事故や重傷事故の8割が高齢者で、高齢者が重篤な事故に遭うケースが増えており、多いことも事実である。農業従事者の安全確保は最優先に取り組むべき事項であるので、特に高齢者に対しては交通安全を含めた農作業安全の重点的な働きかけを行うとともに、地域関係者による声かけや、見回り等を行い、高齢者が安全に運転できる体制づくりに取り組んでいきたい。
【委員】
続いて6項目め、農業ロボットについて伺う。
先日、デジタル化・地方創生調査特別委員会で川崎重工株式会社を視察した際に、最近、中国で対日抗戦の軍事パレードがあり、犬型ロボットがパレードを歩いていたとのことであった。また、中国だけではなくてインドやアメリカでも軍事パレードで犬型ロボットが歩いているとのことである。最近、中国のロボットはもう日本が追いつけないレベルであると知った。それは政府が徹底的にその分野にお金を出していることが主要因だと聞いている。ジェトロが先月ホームページに掲載したビジネス短信にも、山東省が500億元市場を目指してロボット産業を本格展開している記事があった。農業に関して言うと、山東省寿光市の動画を中国に詳しい人から見せてもらい本当に驚いた。自走型のロボットが農作業に従事していたり、あるいは中学生ぐらいの少年少女がリモコンで操作可能な農作業ロボットがあったりするなど、これはすごいなというところであった。私自身もデジタルやロボット関係分野に関して疎いというか、優先順位があまり高くないと思っていたが、このような様子を実際に見せられると、日本ももっとこのような分野に公共投資していかなければいけないという現実を感じた。世界の農業ロボット市場が、2024年には約74億ドルで、2032年には264億ドルに急成長することが予測されているそうである。
農業分野におけるロボットの活用、県当局として、中国や日本国内の状況をどのように把握しているのか。
【理事者】
中国では、ロボット産業の発展を加速化し、経済社会の持続的な発展を支えることを目的として、2021年に第14次五カ年計画ロボット産業発展計画を決定している。この計画に位置づけられた重点分野の中にも農業が含まれていて、今後も農業ロボットの開発に力を入れていくと考えられている。
一方、日本では、ロボット、技術、AI、IoT等の情報通信技術を活用したスマート農業技術の開発と普及に取り組んでいる。農作業の効率化や身体負荷の軽減などに取り組んでいる。内閣府や農林水産省の事業を活用し、行政、大学、民間企業などの連携の下で、ロボットトラクター自動走行システムやキャベツの自動収穫機、農業者を自動で追従する運搬用ロボット、施設園芸でのピーマンなどの果菜類を自動収穫するロボットなどの開発が現在進められている。
【委員】
スマート農業は、現在、普及指導員の指導の下で現場への普及が進められていると聞いているが、本県では、農業総合試験場とスタートアップなどの民間企業が共同で革新的な技術を開発するあいち農業イノベーションプロジェクトに取り組んでいる。2025年当初予算は1億8,000万円余りで、2024年、昨年の当初予算の約1億2,000万円から事業規模を大きくしているとのことである。
ただ、先ほども中国の話をしたが、愛知県は、農業県でもあり製造業の県でもあるので、事業予算を今の額の10倍とか100倍ぐらいに増やしてもいいのではないかと正直思っている。経済産業局とも連携できる分野でもある。県内で現状、農業用ロボットの導入状況と、農業総合試験場による農業用ロボットの開発に資する取組の現状を伺う。
【理事者】
2024年に県が行った調査では、既に生産現場において、水田や露地野菜におけるドローンや、施設内での環境制御を自動で行う統合環境制御装置、畜産業では搾乳ロボットなどの農業用ロボットの導入が進みつつある。
先日の農業新聞でも、県の農業総合試験場が民間企業と共同で開発を進めている全自動の除草機が掲載されており、農業用ロボットの開発は生産者にとっても関心の高い取組となっている。
あいち農業イノベーションプロジェクトは、県経済産業局が所管する革新事業創造戦略などの一環として進めている。農業用アシストスーツの社会実装化など実績を上げつつあり、様々な場面を活用して、成果をPRしている。
昨年開業したSTATION Aiにおいて、あいち農業イノベーションサミットを開催し、農業だけでなく様々な分野のスタートアップに対して情報を発信するなどしていて、今後も、経済産業局と連携し、革新的な技術の開発に取り組んでいきたい。
【委員】
愛知県としても、航空産業と自動車とロボットは、3本柱で進めていると聞いているので、農林水産部局も積極的に関わってほしい。ライバルになるかはわからないが、中国の現状も、見習えるところはしっかり見習い、危機感をもって意識を上げていく必要がある。農業従事者が減っていく現状において、成長産業になっていくと思う。
続いて7項目め、大麻の生産について伺う。
まず、戦後レジームの中で、戦後80年たった現状がある。これは農業の分野だけではなく、政策の幅が、国も県も自治体も非常に狭いと感じている。80年の中だけで考えるのではなく、戦前どうだったのか、あるいは江戸時代はどうだったのか、縄文時代や弥生時代はどうだったのかというところに、今後の国づくりのヒントがあると思う。
そのような中で今回大麻を取り上げるが、まず、戦前は、かつて日本の大麻の生産の状況はどうだったのか、ないし愛知県の状況はどうだったのかを伺う。
【理事者】
日本での大麻生産は、かつて繊維用や食用などに各地で栽培されていた。しかし、戦後GHQの指導により、1948年に大麻取締法が施行され、繊維、種子を採取する目的での大麻栽培は、都道府県知事が許可する免許制度が整備されていた。この法律により厳格な栽培管理が求められることになったため、現在は栽培地域が大幅に減少し、神事用や伝統工芸等の産業用として栽培していた栃木県や三重県など、歴史的・文化的背景を持った特定の地域のみが栽培地域となっている。
本県も、戦前は各地で栽培されていたと思われるが、詳細な状況は不明である。
【委員】
日本人は米よりも早くから大麻を栽培していたことが古い史跡からわかっている。説明があったように、手元の資料だと、1954年時点では、全国に3万7,000軒の大麻の栽培農家があった。現在は、全国で三十数軒ほどに減っている。最も栽培面積が大きい栃木県でさえも十数軒まで減少している状況で、日本のアイデンティティー、実際、麻、七味唐辛子にも入っているほか、種類は置いておいて、服などでも使われている。神事用でも使われている。日本人の生活の中に入り込んでいる。今でも使われているが、国内では残念ながら栽培農家はここまで減っている。また、高齢化などで栽培農家も次の世代が危ぶまれているとも聞いたことがあるので、これを復活させていくことが非常に大切になっていくと思う。
昨年度、関連の大麻の栽培に関する法律の改正が行われたと聞いているが、それをどのように把握しているのか。
【理事者】
今般の大麻取締法の改正は、2024年と2025年の2段階で実施された。2024年には、医療用大麻の使用を可能にする法整備が行われ、既に禁止されていた大麻の所持や譲渡に加えて、新たに大麻を吸う、食べるなどの使用行為も違法、罰則の対象になった。
2025年には、大麻草の栽培に関する規制が見直された。大麻取締法は、大麻草の栽培の規制に関する法律に改称され、栽培に関しては、栽培目的に応じて厚生労働大臣や都道府県知事が認可する免許区分が導入された。また、大麻を麻薬として位置づけ、所持、譲渡及び使用には、他の規制薬物と同様に、麻薬及び向精神薬取締法による規制に移行して、医療使用や乱用防止もこの法律で規制されることになった。
【委員】
この改定内容には、今の世界の潮流からすると逆行しているような内容も多々含まれている。例えば今説明があった医療用の大麻に関しても、海外では臨床で普通に使われている。また、芸能人が大麻を使った報道が時々センセーショナルに流れる。確かに今法律では禁止されているものかもしれないが、実際、海外では医療行為の中で、トラウマやPTSDの治療などに普通に使われているもので、それを日本人は使用できないことは非常に大きな損失だと認識しておく必要がある。
産業用大麻は、先ほど来から説明しているように、日常生活に実際広く使われているものであり、それを栽培する農家を増やしていくことが、まず第一歩として大事なのではないか。
さらに、大麻の栽培に関し、日本国内でも様々、論文や研究、国からの委託事業でも、窒素や重金属、放射能を吸収し、土壌改善につながる研究結果も出ている。大麻が自生していることにより、今よく言われている有機農業とか自然農をできるので、向精神作用が含まれない種を使った大麻栽培は、ほかの農業の品目に関してもよい効果が出てくるのではないか。
その観点から、大麻栽培の土壌に対しての効果をどのように県当局は把握しているのか。また、愛知県内でも大麻の栽培に関して推進していくことをどのように考えているか。
【理事者】
大麻栽培の効果は、土壌中の重金属の除去や硝酸性窒素が残留している土壌の改善等の研究事例が幾つか発表されており、大麻栽培による土壌改善効果の可能性が示唆されている。
本県の大麻栽培は、大麻取締法の施行以降、これまでに許可された事業者はなく、今のところ大麻栽培の要望もないと聞いている。
【委員】
隣の三重県では、伊勢の近くの明和町で、実際、公共の土地に民間の農業者が、大学や産業界が総出で応援の下、大麻栽培が普通に行われている。現場を見学に行ったところ、監視カメラなどもなく、ヘンプロードと言われるところで、中学生などが自転車で通っているような姿もあった。住民説明会等は事前に実施したそうであるが、特に大きい混乱もなく、大麻栽培が大々的に行われているという事例である。また、三重県議会が強力にバックアップした背景の話も聞き、愛知県でも同じことができると思う。大麻も農産物の一つなので、ぜひ農業水産局にも、農作物としての大麻栽培に意識を向けてもらいたいし、推進することを要望する。
続いて8項目め、米の先物取引や堂島取引所について伺う。
質問の趣旨としては、令和の米相場に関してである。気がかりなのが、米はもともと、江戸時代に遡ると、金融商品として位置づけられていたことについて、我々もしっかりと認識しておかなければいけない。かつては、金と銀と銭と米というものが通貨的な役割を果たしていた歴史がある。江戸時代に徳川吉宗の時代に先物取引が始まったと一般的に言われているが、問題は、昨年、大阪の堂島取引所に米平均先物が商品として上場したが、実際調べてみると、現物が全く関係ない。ただ、許認可には農林水産省も関係している。現物が関係ないのであればなぜ農林水産省が絡んでいるのかが非常に疑問である。
今、台湾有事もいわれていて、来年、再来年、政府の関係筋からも2027年に習近平が攻めてくると、にわかに言う人もいるが、実際、日本の政治家と日本のメディアとアメリカの一部の政治家は、台湾有事の茶番を起こそうとすることが狙いである。これは石垣島にも実際調べに行った。安倍政権のときから台湾有事が日本有事といってから、中国に向けた自衛隊のミサイル基地が配備された。中国当局も、台湾当局も、中国国民も、台湾国民も、台湾有事が起きるとは思っていないが、そのような言葉がメディアに出ると、結局日本国内の物価、米やガソリンのボラティリティーが大きくなるため、そこでお金もうけしようとする勢力が西側のグローバルリストと言われている人たちの中にいるのではないか。そこに付き合っているのが日本の政治家の与党、全員とは言わないが野党、あるいは日本のメディアである。海外では台湾有事が本当に起こると思っている人がいないような状況の中で、それが国内のリスク要因として心配している。
国民が米を食べられなくなる、値段が上がって食べられなくなることに関して、私は政治家としての立場、農林水産部局は生産振興という立場なので、消費者の価格までは目が届かないかもしれない。しかし、消費という観点からも見てほしい。米価格も注視していく必要があることがこの質問を取り上げた意図である。
そこで、株式会社堂島取引所の設置目的、及び大阪にある先物市場が歴史的に今に至るまでどのようなものだったのか。
【理事者】
江戸時代の米の取引だが、当時、大坂の堂島に開設されていた米市場で盛んに行われていて、1730年に8代将軍徳川吉宗の下で堂島米会所として公認されている。ここで形成された米価が全国主要都市の米相場の基準となっていた。
1869年には、明治政府により米価高騰の原因になったとして、堂島米会所は廃止されたが、その後、米取引の活性化のため復活が公認され、1893年には大阪堂島米穀取引所に改組された。
1939年に、戦中の米不足を受けて、米穀配給統制法が公布され、食糧管理制度が導入されたことで、大阪堂島米穀取引所は廃止されている。
現在の米の取引は、生産、集荷、卸売及び実需の各事業者のルートで行われているが、先を見通した経営や需要に応じた生産にとって将来の価格変動リスクの抑制になるとして、先物取引所の設置に期待を寄せる意見もあった。
そこで、2011年に、米、先物の恒久的取引の場として先物取引所が試験上場されたが、2021年に農林水産省は、取引参加者数の伸び悩みや取引銘柄の偏りなどの理由から上場を不認可とした。その後、2024年2月に再び農林水産省と経済産業省に認可申請がされ、前回の不認可理由の改善が認められて、同年6月に認可、8月にコメ指数先物取引が開始されている。
【委員】
先物商品が昨年上場してから、メディアも一斉に米がない、転売ヤーが悪いといって、連日ストップ高をつけていて、チャートを見ていると、青天井のような状態になっていて、現物への影響が気がかりである。我々の食卓が金融筋に翻弄されることはあってはならない。
愛知県の農業や米価への影響を伺う。
【理事者】
株式会社堂島取引所は、2024年8月に米の指数先物取引の運営を開始しているが、昨今の米価の高騰もあり、指数先物相場が一つの米価指標として注目されることが増えてきている。
しかし、取引規模が当初の期待水準にはまだ達しておらず、指数取引が生産者、流通業者になじみがないこと、また、売買参加者も限定的であることから、米の生産面には大きな影響はなく、現在のところ、愛知県農業や価格への影響は認められない。米の価格は、国が適正価格の議論を進めていることもあり、県としては、国に対して生産者が再生産可能な価格水準を確保できる政策の実施を要請している。
【委員】
メディアや金融筋に翻弄されることなく、生産者と消費者がつながり、今説明があったような、生産振興という観点から、適正なマーケットにて、取引が行われることをしっかりと注視してほしい。生産の観点から、生産力が衰えることのないような基本路線を今後もしっかりと着実に維持してほしい。
最後に、漁場環境への変化への対応について伺う。
先日、県内調査で愛知県水産試験場漁業生産研究所を視察した。私自身、海の環境を感じたときに、水温、気温の問題も当然あるが、そのことも含めて海の環境の変化を実感している。魚も昔と比べて少なくなったと個人的には感じている。海の環境が不可逆的かどうかも気になる。そして、栄養塩の話もあるが、問題は複合的であるため、しっかりモニタリングすることが大事になる。
2017年の8月に発生した黒潮大蛇行が、過去最長期間の7年9か月にわたり継続し、2025年4月に終息したと報道されているようである。このような海の環境の変化もある中で、県として漁場環境の変化にどう対応していくのか。
【理事者】
漁場環境の変化は、気候変動や黒潮大蛇行の影響により、本県海域でも水温の高い傾向が認められており、獲れる魚種や時季、場所の変化に加え、冬に行われるノリ養殖では生産期間が短くなっている。さらに、海の貧栄養化により、ノリの色落ちやアサリの減少などが見られている。
このような状況の中、魚家経営を安定させるには、環境や水産資源の変動に対応した操業や養殖をしていく必要があるため、県では、水産試験場において、自動観測ブイや調査船で得た海の情報を昨年度開発したポータルサイトAi-FISHにより漁業者へ迅速に提供し、活用してもらっている。
さらに、水温の影響を受けやすいノリ養殖では、高水温に強い品種の開発に取り組んでおり、漁業者に利用を促している。また、貧栄養化に対しては、浄化センターの放流水中の窒素・リン濃度を増加させる取組を実施している。さらに、水産資源の変動に左右されにくく、安定した収入が期待できるカキなどの新たな養殖業の推進により、経営の多角化などを図っている。
【委員】
稲作における節水型乾田直播栽培について伺う。前回も近いことを聞いた。
愛知県は、今、2年3作という方法と、集約、集積など、全国的にもかなり先進的な農業をしていることは百も承知の上で改めて伺う。
その理由は、今の2年3作という、愛知県として自信を持って作れる農業ではあるが、それが補助金ありきではなく、あくまでも市場性があって初めてそれが有効に活用されるべきだからである。実際に、大豆や小麦の価格が下がった際に、この政策を前に進めていくことは、保護政策のようになり、これまでの減反政策に似たようなものにならないよう、愛知県としてどうすべきかを考えておくという意味である。今の段階で2年3作を否定するつもりは全くない。
特に平野では集積、集約がものすごく進んでおり、1軒当たり30ヘクタール、40ヘクタール、50ヘクタール、100ヘクタールもある状況である。そのために、機械化などの投資をすると、製造コスト縮減や、余裕ができた人で作業分担できるなど、試験的なことがたくさんできており、2年3作にとても向いている。
愛知県では、今、農業総合試験場で開発された不耕起V溝直播栽培が進められおり、私の近所でも取り組んでいる人がたくさんいる。ただ、実際にたくさん取れるようになるまでには、相当な期間がかかった。
今回質問する節水型乾田直播は、これよりも難しい技術である。田んぼの中に水をあまり入れないので、草が生えてしまって米が取れないことあると認識している。実際、私の地元で様々な手法に取り組んでいる人がいるが、今年は植える時期が遅かったので、ひどい状況だった。先月、農林水産推進監にも現場を確認してもらったと思うが、とてもひどい状況だった。正直言って、米を作っているのか草を作っているのか分からないような田んぼも幾つもあったほか、失敗して種が全部寄ってしまい生えていない現場もあった。
節水型乾田直播は、全国的には一番早いところで、三、四年先行しているところがあり、そこはある程度安定した量が取れるようになりつつあるし、積極的に広めようとしている。
これらについて、愛知県としてしっかりデータを取り、しかるべきときに進めていけるようにしておくことが大事で、必要だと思う。今、私の地元でも、全部で10枚ぐらいの田んぼを、水を入れたり入れなかったりと試しているが、全てがアナログで記録もしっかり取れておらず、今のままの状態でデータを蓄積してもそれが実用的にならないかもしれない。まして、水を入れないことは、変数が多く、条件がものすごく変わるので、たくさんのデータを確実に取っていく必要がある。
その部分は、農林水産省もかなり力を入れており、来月収穫の際には担当者が現場を見に来る。全国的にも各所で実施しているにもかかわらず、愛知県に来る理由としては、大きな田んぼで先進的につくっているところが多いので、ここで成功できればかなり期待が持てるだろう、相当なコスト低減ができれば輸出にも回せるだろうと、今回視察するようである。
そのためには、現場でのテストも重要だが、ある程度の条件をたくさんのデータとして取り込み、AIにシミュレーションさせることだって可能だと思うし、もう少し今の段階で行政が力を入れることで、愛知県でこの技術が確立される可能性があると思っているし、できるだけ早く愛知県が大規模に始めたという状況をつくるべきだと思っている。
県として、節水型乾田直播をどのような技術だと考えているのか、そして、今からでは大変だが、1年に1作しかできないので、今後どんな支援が行えるのか。
【理事者】
まず、委員からの説明にあるように、愛知県内では不耕起V溝直播栽培が普及している。県内水田面積の約15パーセントに当たる3,800ヘクタールで導入されており、直接田んぼに種をまく直播栽培は、愛知県が全国でも最も普及が進んでいる地域である。一般的な移植栽培、田んぼに苗を植える栽培方法に比べて、春先の苗作りと、田植が不要で、労働時間が3割ぐらい削減でき、農家の労力削減になっているため、普及している。ただ、移植栽培に比べると、春先に水を張らないために、特に畑地雑草が多くなることが不耕起V溝の弱点である。
委員からの説明のある節水型乾田直播は、慣行の乾田直播と比較して、普通の乾田直播だと苗がある程度生育した時点で水を入れるが、節水型はほぼ全期間にわたって水を張らないため、V溝直播栽培以上に水を使わないことで、畑地雑草対策が必要になる技術である。節水型乾田直播は、水管理の省力化ができるため、軽労化が可能な技術としてだけでなく、乾田化におけるメタンの生成が少なくて済むため、温室効果ガス削減にもつながり、非常に有力視されている技術である。
このため、移植や慣行の乾田直播栽培に比べて安定生産が難しく、雑草等の対策が非常に難しい技術であるが、今現在、国として生産者を交えて官民挙げて技術確立に取り組んでいる技術である。
節水型乾田直播栽培は、この先、水があまり利用できない地域などで限定的に普及が進むと考えており、本県でも活用可能な技術である。意欲を持って技術確立に取り組む生産者の活動に対して、V溝直播栽培より難しい雑草管理、あるいは播種の方法など、様々な技術の取組収量調査など栽培試験に引き続き農家に協力していきたい。
【委員】
今年はもう収穫が近い時期であるので、ここから何ができるかということはあるが、できるだけたくさんのデータを取り、現場で繰り返し作るよりも、試験場でもデータを基に様々なことに取り組んでいると思うので、協力してもらいたい。水が足りない時期もたくさんあるし、畑が放置されているところもたくさんあるし、平らではない場所でも生産できる可能性もある。トライすることで、生産性向上や、耕作放棄地がなくなる可能性もあるので、真剣に取り組んでいくことを要望する。
【委員】
近年の酷暑で食卓への影響が様々あるが、その中でも今回は畜産関係について伺う。
あいちの畜産のリーフレット2025年版によると、農業産出額のうち畜産が約30パーセントを占めており、全国11位の愛知県は全国有数の畜産県である。そして、飼育頭数や飼育羽数でも、乳用牛が全国8位、肉用牛も18位、豚が12位、鶏とウズラは全国5位で、その分この暑さの影響も大きいのではないか。
各種報道や映像で数年前から家畜への影響が取り上げられているが、家畜も本当にこの暑さで辛そうである。田原市では熱中症で立ち上がれなくなっている牛が取り上げられていた。それから、豚舎の中では、全ての豚が暑さで横たわっていたり、鶏は汗腺がないため、暑さを逃がそうとして一生懸命脚を伸ばしたり、羽を広げたりしている映像もあった。
山形県内では、今年の6月1日から8月15日に、猛暑による熱中症の疑いで死んだ家畜が、鶏が約6,500羽、豚や牛で約80頭に上るとのことである、まず、酷暑により本県の家畜への影響はどのようになっているか。
【理事者】
家畜の生産性を維持するためには適切な飼育環境が必要で、近年の夏の酷暑は家畜の生産には厳しい環境となっている。
酷暑による家畜への影響を、県農業改良普及課が畜産農家へ聞き取りしたところ、牛、豚、鶏、全ての家畜で食欲が低下し、餌の摂取量が減っており、少なからず悪影響が出ていることが判明した。
具体的には、乳用牛、ホルスタイン種は、乳量の低下、人工授精などの繁殖行為で実際妊娠が成立した割合、いわゆる受胎率が低下していた。また、肉用牛、豚、ブロイラーでは発育低下による出荷遅延、採卵鶏では採卵率の低下による卵の出荷量の減少などが見られた。
【委員】
かなりの影響が見られたということだが、生産されてないと、食卓や、スーパーに行っても豚肉も高くなるなどの影響が出ているほか、農家も大変ではないかなと思う。
熊本県の農業情報サイト、アグリくまもとには、家畜の適温域と臨界温度について、牛や豚は適温域が4度、5度から20度ぐらい、鶏はもう少し高く、13度ぐらいから25度ぐらいということだが、牛、豚、鶏も我慢できない臨界の温度が、乳用牛で25度、肉用牛で30度、豚で27度、採卵鶏で30度から32度、肉用鶏で28度と示されていた。
人間に対しては、連日熱中症警戒アラートが出ていたが、家畜にとっても熱中症警戒アラートが連日出ているような状態ではなかったかなと思う。酷暑対策として畜産現場ではどのような対策が実施されていたのか。
【理事者】
現場で実施されている暑熱対策として大型換気扇により強制的に換気すること、送風機により家畜に直接風を当てて体温を下げること、細霧装置により気化熱で畜舎内温度を下げることなどが挙げられている。
また、涼しい時間に餌を与え、餌の摂取量を増やす取組も実施されている。特に乳用牛では、水分が多く消化率が高い県産の青刈りトウモロコシサイレージを与えることで、牛の食欲が増進し、餌の摂取量を増やす取組も行われている。
さらに、畜舎の屋根に石灰を塗布して畜舎内温度を下げる手法が用いられており、近年では、ドローンを活用し、畜舎の屋根に遮熱塗料などを噴霧する技術が開発されている。
【委員】
農家が対応可能な手法を紹介してもらったが、どれも費用が発生する。これまで様々な感染症や、飼料の高騰などで大変厳しい状態にある中で、畜産農家は、費用の発生に加え、生産量は減少するため、ダブルパンチになっているのではないか。先ほど示された機材のほか、豚や牛に一生懸命水をかけている映像もあり、水代だけでもすごく大変だなと思う。そこの費用面なども含めて、県はこれまで畜産農家に対して、酷暑対策としてどのような支援をしてきたのか、そしてこれから県としての支援策も、さらに必要であると思うが、どのように取り組んでいくのか。
【理事者】
これまでも県は、家畜保健衛生所及び農業改良普及課が、相談のあった畜産農家に対して、先ほどの各種対策を現場で技術的に指導している。
また、現在、酪農の暑熱対策への支援として、国の中小酪農経営等生産基盤・飼養管理改善対策事業が措置され、中小の酪農家に対し、暑熱対策の資材や機器を共同購入する場合において、その経費の一部が補助されており、今年度は27戸が対象であった。
次に、今後の取組は、引き続き、暑熱対策の技術的支援を行うとともに、近年の酷暑により全国的に全ての家畜において暑熱対策が必要となっていることから、県としては、国に対して全畜種を対象とした暑熱対策事業の創設を働きかけていく。また、農業総合試験場での暑熱対策の試験研究や暑さに強い乳用牛の種畜供給などを検討していく。
【委員】
これまでも相談に対して指導してきた。今後も対応していく。それから、酪農に対しては、これまでも国の予算があってそれで対応してきたが、まだ今の段階で牛以外はそうした補助がないので国に働きかけていくという答弁であった。国が対応してくれなかったら県はどうするのか心配になる。先ほどからいろいろ話題に上っているが、この暑さは多分来年もまたその後も続いていくと思うし、この暑さが続く中で、牛や、家畜も弱るが、農家も弱ってしまう状況だと思う。県として相談以外に何か対応するのか。
【理事者】
県はこれまでと同様に農業改良普及課が相談に乗る。また、先ほども答弁したが、農業総合試験場での暑熱対策の試験研究も開始し、また、国で暑さに強い乳用牛も開発されてくると思うので、それを導入すること、さらに、国も今後の対策で暑熱対策を重要視していくとのことであるので、国と一緒になって働きかけながら支援していきたい。
【委員】
国と一緒になって支援していくとのことであった。先ほどは、愛知県森林公園でも暑熱対策という言葉が出てきた。これからは、家畜にとっても暑熱対策はとても大事なことになるので、まずは一生懸命国に働きかけて、県としても取り組んでほしい。
【委員】
再度であるが、エネルギーの森について伺う。
9月11日、先ほどから、2回ぐらい出ているが、委員長の配慮で県外調査に行き、石川県の株式会社小松製作所で木質バイオマスの取組を視察した。省エネルギーと地域資源を活用する取組として、木質バイオマスボイラーを設置して、石川県森林組合連合会との連携により、地域の山林から未利用間伐材チップを燃料に使って、工場内の発電や冷暖房に利用していた。
愛知県内でも木質バイオマスの取組を進めていると思うが、木質バイオマスに関する利用者側の発電所と、木材生産者のそれぞれのニーズを伺う。
【理事者】
県内の主な木質バイオマス発電所では、輸入の木質チップ、ペレット、PKSというアブラヤシの実から油を搾った後の殻を乾燥させたもの、それに加えて、未利用材などの国産の木質チップを発電用の燃料として使用している。これらの総量は、2024年度で約140万トンとなっている。この量は、本県の木材生産量、18万7,000立方メートルをチップ量に換算した約9万トンからすると約15倍の量であって、発電所のニーズは高い状況にある。
一方、生産者は、育てた木を建築用材をメインに出荷したい意向がある。しかし、伐った木は、有効利用の観点から、建築用材として使った残りの端材や、曲がりなどがある建築用材に向かない材を燃料用のチップとして発電にも利用している。
【委員】
発電所の燃料調達に当たり、輸入と国産の割合、そして県産の割合はどのようになっているか。
【理事者】
一般社団法人バイオマス発電事業者協会のまとめた2024年度の資料によると、県内の主なバイオマス発電所で使用する燃料約140万トンのうち、輸入の木質チップ、木質ペレット、PKSを合わせると、8割の約110万トン、一方、国産木質チップは2割の約30万トンである。そのうち県産チップは約1万8,000トンであり、国産チップの1割以下の割合である。
【委員】
県内の木質バイオマス発電所で使用される燃料が莫大で、輸入の割合がこれほど多く、県産チップが少ない状況であるならば、木質バイオマスを目的とした森林を整備することも必要と考える。
また、地球規模の温暖化による気候変動対応の観点でも、再生可能エネルギーである木質バイオマスの利用推進は重要である。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の提唱するエネルギーの森の取組は、地域の気候に合った新たな燃料となり得る成長の早い樹種を選定し、その樹種の苗木を植えて育てて短い伐採サイクルで利用していく、エネルギー資源としての森林を整備するものである。NEDOでは、エネルギーの森を推進するため、日本の各気候帯に適応した樹種を選定して実証事業を行っている。本県は温帯気候に属しており、その気候に適する樹種を選定して、新たな森づくりを進めることも有効である。
この実証事業は、近県では三重県、長野県などで始まっているが、愛知県においても、木質バイオマスを供給していくため、エネルギーの森実証事業も含め研究していくべきではないかと考えるが、県としてエネルギーの森を進めるに当たり、課題と今後の取組を伺う。
【理事者】
本県の木材利用の方針は、主に建築用材の利用を推進しているが、あわせて、バイオマス利用も重要である。バイオマス燃料用材は収穫までの期間が短いというメリットがあるが、建築用材に比べると単価が低くなるため、燃料材として利用していくためには、低コストで、かつ安定的な供給が必要であり、建築用材よりも植栽場所が限られてくる。
他県の事例でも、奥地の山林ではなく、道路から近く、斜面の緩い平らな区域でキリやユーカリを植栽し、実証を行っている。
今後も引き続き、先進的に取り組んでいる県などの調査を進めながら、エネルギーの森の採算性等を考え、適した樹種や植栽場所等の実証や研究の実施を検討していく。





